『分岐点の先にベラルーシ国境があり、その先にポーランドとドイツなどがある。
ただしこの陸上線が機能停止しても、「ノルドストリーム1」が生きている。』
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Kamil Galeev 氏の長編連投。2029-4-21
https://st2019.site/?p=19253※ これは、絶対読んどいた方がいい…。
※ ここに書かれていることが「真実」なら、そういうことを前提に「戦略」を組み立てる必要がある…。
『 ※カミル・ガリーフ氏が投稿頻度を上げている。相当に注目されているので、本人の心にも火がついたのか。次回寄稿までインターバルが9日くらいあるだろうと思って油断していたら、知らぬ間に3編くらい加わっていた。
まずそのひとつを斜め読みする。前半部分、近代以前のウクライナ前史も興味深いが、そこはすっとばす。ウクライナは北米に似ている。入殖者が新しい国家を造ったのである。
ロシアは辺境国家である。そこには、近代システムの一部だけを輸入するということはできない。システム全部を、先進コア地域から導入するしかないのだ。
たとえばドンバスの、今分離を唱えている2地域が工業化したのも、2人の英国人のおかげだった。木炭製鉄のレベルからいっきょに、コークスを使う近代製鉄を導入してくれたのだ。
また、サンクトペテルスブルグとモスクワのあいだに120以上の架橋をして鉄道を通してくれたのは、一米国人であった。
故・ウォラースタインの弟子のダールギアムは、ソ連時代にモザンビーク共産主義者の宣伝について論文を書いたがそれはソ共中央委員会から発禁にされていた。彼は米国に移住してからコーカサスについてのすばらしい論文を書いている。
それを要約するとこうだ。
ロシア帝国は過去も現在も、辺陬帝国であり、先進地の外国人による「全部一括技術指導」を丸呑み移植するのでなかったならば、みずからは、新発明を大成させられない。
コアな先進国にある「既成の解決法」をそっくり一括で輸入ができるだけなのだ。
マリウポリの製鉄工場の煙突にはわざわざ米国から運ばれてきたピンク色の煉瓦が使われていた。ドイツから輸入すればもっと質の良い煉瓦を安価に調達できたのに、あくまで「システム一括」でないとロシア人は、新技術を機能させられないのだ。「いいとこどり」は、できないのである。
リベットの1本まで、すべて米国製であるという。
この流儀を導入したのは、じつはレーニンである。
レーニンは1914年に米国工場の「テイラー・システム」について書いている。それは機械が人間を奴隷化するシステムだというのだが、一方で、そのシステムの先にしか、工業国はないこと、したがってそれが、中央独裁による社会主義への第一歩であることも察していた。
ボルシェビキはロシアを工業化させるのは迂遠だと考えた。それよりも、西欧の工業中心を征服して吸収してしまえばよいと考えた。その思い付きは、しかし、失敗した。
理念的には、すぐにも西欧工業のコア〔ルール地方など〕を征服すべきである。しかしそれは現実には無理である。
1921にレーニンは論じた。まず「国内ブルジョア革命」の段階に進めないと、社会主義革命へは届かぬ、と。
レーニンは、「社会主義」ではなく「国家資本主義」を公式に採用したのである。
1921にこのことがハッキリし、ソ共内部に路線論争が生じ、スタがのしあがった。しかしこの話はまた後日。
1920年にロンドンに、英国法にしたがう「全ロシア企業株式会社」が創設された。これがソ連の対外交易の窓口会社、第一号である。
すぐに気付いたこと。もはや英国は世界の工業のトップランナーではなくなっている。米国だ!
米国からの技術導入のためには1924に「Amtorg」社がつくられた。米国法にしたがうが、かんぜんにソ連政府が統制していた。
スタは1927にこの社長として、オデッサ生まれでチューリッヒで経済学を学んだザウル・ブロンを据えた。
ブロンが声をかけたのが、デトロイトの工場設計技師アルバート・カーン・
スターリングラードのトラクター工場は、カーンがつくってやった。アメリカからすべての設備を運んで現地で組み立てたのだ。雛形は「インターナショナル・ハーベスター社」のミルウォーキー工場。それをそっくり複製した。
同様、WWII中におけるソ連最大の「マグニトゴルスク鉄工製作所」は、インディアナ州にあったUSスチール社の工場を「完コピ」移植したものであった。だから独ソ戦は、クルップに対するUSスチールの勝利であったわけだ。
ではプーチンは2000年から2010年代にかけて、どのようにロシア産業を復興させたか。これについて語るには書籍1冊分になるだろう。どこかの会社で出版してくれませんか〔と記者がよびかけているぞ! 日本で買ってやれよ〕。
マリウポリの「イリイチ製鉄所」も、米国工場のコピーだった。1917に国家が接収したとき、レーニンの名前(イリイチ)に変えられたのだ。
アゾフスタールは1930年代にスタが建てさせた。全面協力したのがアルバート・カーンだった。
1937から38にかけて、スタの粛清が吹き荒れた。ザウル・ブロンはこのとき銃殺されている。
ウォラーステイン理論から導きだされる予言。ロシアは、外国先進地から何かをまるごとセットでコピー移植するのでないかぎりは、独力で高速進化することは不可能な土壌をもっている。そしてそれを指導できるのは軍人であって、産業人ではない。
ブレジネフ時代には、戦前の米国に代わって、西欧から技術が輸入されていた。
※沿海州に不時着した「B-29」のリベット穴にいたるまですべて「完コピ」して「ツポレフ4」をこしらえたというエピソードを思い出すよね。』
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『雑報によると、4-15にセバストポリで、キロ級×2隻にカリブルのキャニスターを積み込んでいる作業が撮影されている。
※さっさと沈底式機雷をクリミア半島周りに敷設しろよという話。無人の半没艇にやらせりゃいいだろう。
また、ロシア国内を飛ぶ双発民航機の「スホイ・スーパージェット100」は、エンジンのスペア部品を西側から買えないために、飛行が続けられなくなった。他の国内旅客機の機種も、秋までには同じ理由で飛べなくなるという。』
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退役陸軍中将であるテリー・ウルフに、対ウクライナの軍事支援を統括させるhttps://st2019.site/?p=19249
『Svetlana Shkolnikova 記者による2022-4-22記事「Retired Army general appointed by White House to manage military aid for Ukraine as country braces for Russian assault」。
金曜日ホワイトハウス発表。退役陸軍中将であるテリー・ウルフに、対ウクライナの軍事支援を統括させると。同盟国の分まで調整すると。 ウルフは小隊長から軍司令官までぜんぶ体験してきた。冷戦末期のドイツには10年駐留した。イラクにも三度、派遣された。』
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露軍は、キロ級の潜水艦を黒海に4杯もっている
https://st2019.site/?p=19249『2022-4-23記事「Navy of Russia uses Project 877 Paltus submarines to strike targets in Ukraine with Kalibr cruise missiles」。
露軍は、キロ級の潜水艦を黒海に4杯もっていて、その各艦には4発の「カリブル」対艦ミサイルがあるが、このたびその1隻が、複数のカリブルをウクライナの陸上に向けて発射した。英『タイムズ』報。』
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ロシア軍の最も脆弱な資産
https://st2019.site/?p=19238『 Chuck de Caro 記者による2022-4-21記事「Elon Musk, “Veteran Brain Banks,” and Satellite-Guided Ukrainian “Stay Behind” Units」。
ウクライナのゲリラは、ロシア軍の最も脆弱な資産であるところの、「燃料パイプライン」を破壊し寸断するべきである。
そのために米国内の元特殊部隊員たちはスターリンクを使ってウクライナのパルチザンに直接に具体的な作戦の助言ができる。
たとえば民間のマクサーの衛星画像を、適宜に提供してやれるはずだ。もっとも警備手薄で脆弱な箇所は今、どこか……等。市街戦では、タイヤを燃やすと、敵軍のサーマルイメージを使えなくしてやることができる。そうした細かな、具体的な知恵を伝授しよう。
※クリミア半島への天然ガスの供給は、ウクライナ領を通る系統1本で、ロシア本国から送られている。このパイプラインをウクライナ政府は止めているのか動かしているのか、それが知りたい。』
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ゴルゴが教える 命の危険から身を守る三原則
学び×海外安全マニュアル(2)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOKC0833Q0Y2A400C2000000/





『外国に滞在中、もしくは渡航予定のある日本人向けに情報発信をしている外務省海外邦人安全課の足立秀彰課長に聞く「海外安全マニュアル」。
今回は、外務省が提供する海外安全情報配信サービス「たびレジ」の活用法など現地での情報収集や現地での心構えについて、海外での危機管理に詳しい「あの男」の金言と共に教えてもらいます。
「大臣に呼ばれて来たのだが……」。人気漫画「ゴルゴ13」の主人公、デューク東郷が東京・霞が関の外務省の大臣室を訪れる。テロの脅威が欧米やアジアにも拡散し、海外での日本人の安全対策が急務となるなか、「あの男」の力を借りるべく外相が直々に呼び出した――。
外務省が動画と冊子で提供している「ゴルゴ13の中堅・中小企業向け海外安全対策マニュアル」の冒頭シーンだ。
在外邦人もテロの標的に
外務省が安全対策マニュアルとして提供している「ゴルゴ13」の漫画は、2016年7月にバングラデシュの首都ダッカで起きた飲食店襲撃テロをきっかけに作られました。
このテロでは日本人7人を含む20人以上が犠牲になり、在外邦人の安全確保が急務の課題として認識されるようになりました。
海外に展開している日本企業の中で、中堅・中小企業の安全対策をサポートする必要があることがわかりました。大企業では出張者、駐在員の安全確保にあたる部署もありますが、規模の小さい企業では手薄になりがちな分野です。
外務省海外安全ホームページでは、人気漫画「ゴルゴ13」とタイアップしたマニュアル動画を公開している
「ゴルゴ13」シリーズは企業トップを務める中高年層に人気があり、デューク東郷が語る危機管理には説得力があります。
21年3月の改訂で新型コロナウイルス対策を加え、内容をアップデートしています。外務省のホームページから動画を閲覧できますのでぜひ、渡航前の準備や滞在中の心構えの参考にしていただきたいです。
滞在先で安全情報を自動受信
マニュアル動画と冊子でデューク東郷が繰り返し言及する「たびレジ」というサービスがあります。
外務省が14年から提供している海外旅行者・出張者らに向けた海外安全情報配信サービスです。
在留届の提出義務の対象となっていない3カ月未満の短期渡航者が対象で、パスポートに記載されている氏名や連絡先など必要事項を入力して登録すれば、旅行期間中に自動的に現地の安全情報や緊急の速報が日本語で送られてきます。
万が一、渡航先で大規模な事件や災害が発生したら、登録した情報が安否確認にも利用されます。
滞在中の連絡先と宿泊先は渡航前に親しい方と共有していただき、さらにはホームページで簡単に入力できるたびレジにも登録してほしいです。
配信される現地の危険情報に気をつけて、テロや事件の可能性のある場所には近づかないように心がけてください。
海外では常に「ここは日本ではない」という意識を持つことが最も重要です。
日本は世界の中でも治安のいい国のひとつです。
そのため、海外渡航する日本人には「隙」がみられるケースがあります。
空港やホテルのロビーでは、自分の荷物から目を離さないことはもとより、不審者や不審物にも注意を払う必要があります。
「命が助かってよかった」
たとえばスマートフォンを操作しながら路上を歩いたり、貴重品の入ったリュックサックを背負ったまま行動したり、といった状況はいずれも、海外では犯罪者に狙われやすくなります。
気づいたらすでにリュックサックの中身が無くなっていたという被害も後を絶ちません。
もし歩行中にスマートフォンを奪い取られそうになったら、決して抵抗せずそのまま渡してください。旅先での情報収集に欠かせない重要な持ち物ではありますが、何よりも大事なのは命です。
犯人は1人に見えても、周囲に仲間がいて、抵抗を続ければ武器を持ち出すことがあります。要求に応じないと、犯人を刺激して凶器による暴行につながる恐れがあります。スマートフォンを盗まれたとしても、「命が助かってよかった」と思ってほしいです。
「ゴルゴ13×外務省」の中でも、「安全のための三原則」として、
①目立たない
②行動を予知されない
③用心を怠らない――ことを注意喚起しています。当たり前のことのようですが、慣れない海外では常に意識して自身の行動を確認することが必要です。
宗教への侮辱や服装違反は厳罰
犯罪者やテロリストは、目立つ人物を標的に選ぶ場合があります。
渡航先・赴任先では必要以上に華美な服装や宝飾品を身につける、目立つ車に乗る、公共の場で大声で話すといった標的とされる可能性を高める行為は危険です。
現地の文化や風俗、法律への配慮も求められます。
社会全体で宗教が重要な役割を占めている国では、宗教に対する侮辱や服装の規定違反などは厳しく罰せられたり、周囲の反感をかうことになったりします。
例えば、イスラム教の国での「ビールで乾杯」といった行為は、外国人や異教徒に悪意を持つ組織の標的になりかねません。文化・風俗の違いから、日本の常識では犯罪とは考えられないことでも、諸外国では通報されてしまう可能性もあります。
また、ツイッターやインスタグラムなどのSNS(交流サイト)への書き込みにも注意したいところです。
自身の名前や勤務先などの個人情報とともに、小まめな書き込みによって、滞在場所や今後の予定などを不特定多数の人に知られてしまう恐れがあります。
危険レベルの高い地域では特に、誘拐などの犯罪を誘発する要因になりかねません。
旅先で撮ったすてきな写真をアップしたい気持ちはわかりますが、情報を公開するタイミングをずらすなど、安全のためには工夫が必要です。
安全のために現地の情報を把握し行動することが求められる(モスクワの空港出発ロビー)=ロイター
ほかにも、海外で自身の安全を守る心得として、デューク東郷はこんなことも言っています。
「死の恐怖…… 恐怖だけが我々を危険から遠ざけてくれる……」「臆病のせいでこうして生きている」
旅慣れていても、有事に備えた訓練を受けていたとしても、油断は大敵です。
一番大切なのは、用心を怠らず、危険な場所には近づかないことです。
海外ではとにかく、情報収集と安全の三原則に留意して、「自分の身は自分で守る」「予防が最良の危機管理」という心構えと慎重さを忘れずに行動していただきたいです。
連載記事一覧はこちら https://r.nikkei.com/stories/topic_story_22040800?n_cid=DSST001
多様な観点からニュースを考える
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。
上野泰也のアバター 上野泰也 みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト コメントメニュー
貴重な体験談
筆者は学生時代に4回訪れたヨーロッパ・北アフリカを中心に、世界各地をフリーで長期間旅行した経験がある。
大きなアクシデントには幸い見舞われなかったものの、夜間の外出で自転車の男につけられるなど、これは危ないかなと、ひやりとしたことも何度かあった。
常に心がけているのは、「ストレンジャー」であるように見せないこと。人前で地図やガイドを調べたりしない、外国人だとすぐわかるような服装は絶対にしない、実は道に迷っていてもわかっているふりをして歩き回るなど、悪いやからのターゲットにならないよう、常に気を配った。
治安が相対的によくない中南米ではなおさらである。地元の人の親切に出会う機会は減るが、やむを得ない。
2022年4月26日 7:44 』
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「デザインで行政に貢献していきたい」デジタル庁CDO浅沼尚さんのデザインプロセスとは?
https://www.wantedly.com/companies/bcgdv/post_articles/357799








『今回のゲストは、今年9月に設立されたデジタル庁にてCDO(Chief Design Officer)に就任された、Japan Digital Design株式会社の浅沼尚さん。
これまでのデザイナーとしてのキャリアの変遷や、CDOやCXO(Chief Experience Officer)としての役割、普段から実践しているデザインのプロセスについてうかがいました。
■ プロフィール
浅沼 尚(あさぬま・たかし)
デジタル庁 Chief Design Officer、Japan Digital Design株式会社 Chief Experience Officer。
2018年から三菱UFJグループ戦略子会社においてCXO(Chief Experience Officer)としてデザインチームの組成、三菱UFJグループと協業による新サービス開発の体験デザイン、従業員体験デザインを中心とした組織開発に従事。
2021年9月からデジタル庁のCDOに就任。
大手企業のインハウスデザインとデザインコンサルティング経験を活かし、大規模プロジェクトにおいてデジタルプロダクトからハードウェアまで幅広い領域でデザインプロジェクトに参画。
IF Design Award、Red Dot Design Award、グッドデザインアワード等、国内外のデザイン賞を受賞。
花城 泰夢(はなしろ・たいむ)
BCG Digital Ventures, Partner & Director, Experience Design。
2016年4月、BCG Digital Ventures Tokyo の立ち上げから参画。東京拠点のExperience Designチームを牽引し、ヘルスケア、保険、消費財、金融などの領域で新規事業立ち上げやカスタマージャーニープロジェクトを実施。
日本のみならず、韓国でも金融や小売業界にて新規事業立案やカスタマージャーニープロジェクトを行ってきた。UI/UXを専門領域としている。
CXOとして一番大事なのは組織のカルチャーをつくること。
花城:デジタル庁でCDOに就任されたことをはじめ、浅沼さんのデザイナーとしてのキャリアの変遷が気になる方は多いと思います。
これまではどのようなキャリアを歩まれてきましたか?
浅沼:キャリアはちょっと特殊かもしれません。
デザインコンサルティングの仕事はここ5年ほどで、もともとはメーカーのインハウスデザイナーとして活動していました。
2017年頃からデザインファームで金融、航空、リテール、流通などでUXのコンサルティングに従事し、その後、MUFGの戦略子会社Japan Digital Design株式会社で新サービス開発や金融サービスの体験デザインを行っています。
そして今年の9月から政府の仕事を始めることになりました。
花城:政府の仕事を始める前に、金融業界を経験しているんですね。
金融サービスのデザインをしていた経験が行政に役立ったりもするのでしょうか?
浅沼:そうですね。
金融業界は、タイムラインや仕事の進め方が特徴的ですし、他の業界と比べると開発費も大きく社会インフラとしての責任も負っています。
そういう意味で、政府の仕事に近しいものはあるかもしれません。
花城:デザイナーとしての役割も、過去と比べて変わってきているんですか?
浅沼:はい、私は工業デザイナーからキャリアを始めているのですが、比較的歴史の長いクラシカルな領域なので、一人前になるまでに5年、10年は当たり前なんです。
当時はUXデザインの明確な定義がないなか、デザイナーはあたりまえのようにUXデザインと近似したアプローチでデザイン業務をしていました。
製品開発においてあたりまえのようにUXデザイン的なことをやりながら、デザインマネジメントやデザインディレクターとしての経験も積んできた。
大雑把に言うと、そんな感じのキャリアです。
花城:ちなみに「Chief Experience Officer」のような肩書きになったのはいつ頃からですか?
浅沼:ここ数年の話なので、2018年くらいからですね。
「CXO」のようなタイトルを設置すると、会社としてデザインに注力しているという姿勢を対外的に示せると思うんです。そういう意図もあり、戦略的につけたという背景がありました。
花城:浅沼さんの考えるCDOやCXOの役割はなんだと思いますか?
浅沼:これまでの自分の業務を俯瞰してみると、次の4つが挙げられるかなと思います。
組織に魂が宿るためには、3つ目の「カルチャー」の部分が特に大切だと思っています。
花城:僕も企業のインハウスデザインを支援したり、組織づくりの支援をしたりするのですが、取り組みの中でもとりわけ難しいのが「カルチャー」だと思います。
もともとあった企業文化や働き方も活かしながら、「アジャイル」や「ヒューマンセントリックなものづくり」といったトレンドも組み込もうとすると、組織内から思わぬ抵抗にあったり、周囲の理解を得ていくのがなかなか大変です。
カルチャーづくりのポイントはありますか?
浅沼:イレギュラーなのであまり参考にならないかもしれませんが、CXOになった翌年にコーポレートカルチャーのチームをつくり、そこのヘッドも兼任させてもらったですよね。
デザインチームとカルチャーチームの両方の権限を持たせてもらったかたちです。
「カルチャーは大切」ということを経営層に啓蒙することはとても重要です。
トップにカルチャーへの理解を促し、お金と人と時間をかけるべき経営資源であることを伝え続けました。
カルチャーづくりをするなら、ハイレイヤーなマネージャーたちを巻き込むことが必須だと思っています。
花城:なるほど!経営層にも理解を得ていく為にカルチャーチームをつくるのはいいですね。
カルチャーチームは何人くらいの規模だったんですか?
浅沼:チーム自体は3人だったのですが、大事なのは社長直下に部署をつくるということです。
「会社の方針」というメッセージになるので。やっぱりカルチャーがないと人材が定着しないし、プロダクトやサービスをつくる上で迷った時に拠り所になるものがなくなってしまうので。最近では、戦略つくるよりカルチャーつくったほうが早いなんて思ったりしています。
花城:それはめちゃくちゃ共感します。
カルチャーづくりには横断的に物事を見えるデザイナーがやるから相性がいいですよね。
それから、「つぎのCXOやCDOのポジションをつくる」というのはどういうことですか?浅沼:今って「CXO」や「CDO」の存在が認知され始めた時期だと思うんですよね。
「CXOをつくってみたけど意味なかったね」とならないように、ポジションとしての価値や存在意義をきちんと示していくことが大切だと思っています。
まずは、つくってみる。デザインプロセスの考え方
花城:次は、浅沼さんのデザインのプロセスをお聞きしたいです。
普段どのようにプロジェクトに関わっているのか、秘伝のタレ(笑)を教えていただけますか。
浅沼:特殊なことはぜんぜんしていません。私はいわゆるデザインシンキングのプロセスに則っているのですが、「ダブルダイヤモンド」のプロセスを「トリプル」にしています。
金融サービスのような規模の大きなサービスを動かすとき、プロトタイプフェーズと開発フェーズを混同してしまうことってよくあると思うんですよ。
基本的にはプロトタイプでソリューション検証をしてから開発のフェーズに進まなければいけないんだけど、検証しないで本開発に着手してしまう。
花城:そこを一緒にしないためにダブルダイヤモンドにひとつ加えて「トリプル」に切り分けたんですね。
浅沼:そうです。
「お客さんのニーズを捉えていますね」「課題解決の検証もできましたね」という二つのゲートを通った上で初めて「開発して、グロースさせていきましょう」という段階を踏むべきだと思うんです。
それに、明確なプロセスにまとめることで、デザイナーが入るべきタイミングの見極めや適切なデザイン活動ができると思っています。
花城:BCGDVでも顧客への理解からはじまり、AsIs(現状の姿)とToBe(あるべき姿)を可視化しながら、プロトタイプで解決策をどんどん形にしていき、そこから開発へと繋げていくのでプロセスは非常に近いですね。
ちなみに、③(開発実装・評価)まで進んで「2マス戻る」みたいなこともあるんですか?
浅沼:さすがに「2マス」はないですね(笑)。
でも、②(ソリューション発想・検証)で検証してみたらビジネスとして成り立たなそうだと分かり、①(顧客理解・課題定義)に戻ることはあります。
それでも、実装してしまってから気づくよりはマシですよね。検証の結果「できない」と分かることは一つの知見だと思っています。
花城:それぞれの期間はどれくらいですか? 「顧客理解」に1ヶ月、「ソリューション検証」が1ヶ月、「実装・開発」が1年とか?
浅沼:いい線ですね。金融サービスは開発に1年くらいかかるものも多いですね。
花城:なるほど、金融となると基幹システムとの連携やセキュリティも含めると長期の開発期間がどうしてもかかりますね。
ソリューションを産み出していく際のデザインをするときに心掛けていることはありますか?
浅沼:「Thinking(仮説) ⇄ Doing(検証)」と書いたのですが、デザイナーの立場としては「まずはつくってみよう」という姿勢を大切にしています。
頭でっかちにならないで、まずは手を動かしてみる。
花城:プロトタイプ思考にはすごく共感します。
僕もプロジェクトにおいては「Thinking」と「Doing」の往復を高速で繰り返すようにしています。
リサーチと並行しながら、得た気付きをもとにDay1からプロトタイプをつくっていくことで「Thinking」の深みが増していくんじゃないかと思ってます。
エンジニアとデザイナーでイテレーションしながらプロダクトを進化させていくことで理想の顧客体験に近づくはずなので。
社会的意義が大きいのにビジネスになりにくい分野に、デザインの力で取り組んでいく
花城:普段は、どんなインプットをされているんですか?
浅沼:今回まとめてみて、コロナ禍でうまくインプットできていないなと改めて気付かされたのですが、個人的に心に残るインプットの手段は、人、本、実体験の3つくらいです。
やっぱり人と会って話した内容は、自分が行動するときに影響しますよね。
デザイナー同士でコミュニケーションするときも、そのときのトレンドを踏まえようとすると、やっぱり「話す」が一番早いんですよね。
花城:本だと、どうしても半年から1年くらい情報が遅いと感じることもありますよね。
その点、現場で活躍するデザイナーの生の声や意見は貴重ですよね。
浅沼:「本」は、体系化されているので学びやすいですよね。
デザインでも業界が変わると、かなり勉強しないといけないです。
一般的な業界のルールや、ビジネスの成り立ちのようなところを新たに学ばないといけない。
プロジェクトによってはビジネスコンサルティング会社が出しているようなレポートを3年分くらい読むこともあります。
花城:それから、実体験ですね。
浅沼:はい、自分の中に残るという意味で、実体験は影響力が大きいですよね。
最近って、物の売買がかんたんになりましたよね。気になったガジェットは一旦買って使ってみる。それで、ダメだったら数ヶ月で売っちゃうというやり方をしています。
花城:これから挑戦していきたいことは何かありますか?
浅沼:ここ数年は、デザインでどのように社会に貢献できるかについて考えています。
企業のなかで新規事業のデザインを行ってきましたが、企業にいるとそもそも取り組むのが難しい領域があることが分かってきました。
その一つが、社会課題の解決といわれる領域です。この図は、書籍『ビジネスの未来 エコノミーにヒューマニティを取り戻す(山口周著)』からの引用です。
出典:『ビジネスの未来 エコノミーにヒューマニティを取り戻す』山口周・プレジデント社
浅沼:横軸が「問題の普遍性」で、縦軸が「問題の難易度」です。
問題の普遍性が高いということは、解決するとスケールしやすいので、収益性が高くなりやすいですよね。
一方で、普遍性が低いということは個別対応になりでスケールしにくいので、収益性を上げるのが難しくなります。
そして縦軸は、問題が難しければ難しいほど必要な投資額が大きくなる。現在の資本主義活動のなかでは、必然的に「経済合理性限界曲線」という線の内側しか解決できなくなる傾向にあります。
企業活動においては、問題の普遍性が大きくて、難易度が比較的低いもの、図でいうと右下の部分はスイートスポットで、みんながやりたがる事業領域ですよね。
一方で、比較的少人数しか困っていなくて、解決するために多くの投資が必要な左上の部分は、現在の資本主義の考え方でいうと「儲からない」領域でなかなか手がつけられないんですよね。
でも、ここを本当に切り捨てていいのかというのは最近考えています。
花城:なるほど。「問題の難易度が高いけど、収益性が低い」領域で何か具体例はありますか?
浅沼:例えば、高齢者福祉や児童教育の世界ですよね。
個別性が高いのでみんなに同じものを渡してもなかなか解決できないけど、カスタマイズしようとすればお金がかかるので、本当はすぐにでも着手したほうがいいのに放置されがちなんです。
それから「難病」とか「地域の過疎化問題」などは、社会的意義が大きいのに、ビジネスにはなりにくい。
こういう領域での課題を解決できるような活動に携われるといいなと、最近は考えています。
花城:BCGDVでも、SDGsや企業の環境への取り組みをイノベーティブにサポートしていく”Green Ventures” という取り組みを始めました。社会課題に向けた動きは今後も加速していきそうです。
それでいうと、行政への取り組みも浅沼さんの中ではデザインで挑戦していきたい領域ということですね。。
浅沼:そうですね。
行政や社会課題解決の分野においてデザインで貢献するというのは、チャレンジングでありながらもやり甲斐があるデザイン領域だと思っています。
花城:今回、浅沼さんとお話してデザイナーのキャリアとしてCDOやCXOへの道があることや、まずは「カルチャー」に取り組むことへの重要性を伺うことができました。
デザイナーだからこそ部門を横断したり、カルチャーの基点づくりになっていけるのだと改めて思いました。
そして行政を含め、まだまだデザインの手が届いていない領域でのチャレンジで社会に貢献していく姿を感じることができたので、今後のご活躍も期待しています。
BCG Digital Venturesでは一緒に働く仲間を募集しています
ビジネスグロース プロダクトマネージャー エクスペリエンスデザイナー
「デザインで行政に貢献していきたい」デジタル庁CDO浅沼尚さんのデザインプロセスとは?
Akiko Tanaka
BCG Digital Ventures / Recruitment Manager
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48Akiko Tanakaさんのプロフィール https://www.wantedly.com/users/90649363
Akiko Tanaka
BCG Digital Ventures / Recruitment Manager 』 -
石倉デジタル監の交代発表 事務方トップ、後任に浅沼氏
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA260XR0W2A420C2000000/※ 何回も、繰り返し言っていることだ…。
※ 「デジタル化」とは、「コンピュータ」の支援を受けるということだ…。
※ 日常の業務において、どこが「コンピュータの支援を受けること(≒コンピュータにやらせること)」が可能なのか、「絶えず、探ること」「絶えず、考えること」が必要不可欠となる…。
※ そのためには、「コンピュータとは、何なのか」「限界は、どこにあるのか」を把握していることが不可欠だ…。
※ 昨今では、これに、「インターネット」の仕組み、「ネットワーク」の知識なんかも、必須となる…。
※ そういう知識基盤の上に、前述のように、「絶えず、業務のコンピュータ化」を探っていく…。
※ そういう「ベクトル」が無いところに、ヒト・モノ・カネを注ぎ込んでも、ダメの皮だ…。

『デジタル庁は26日、事務方トップのデジタル監を交代する人事を発表した。2021年9月の同庁発足から務めた石倉洋子氏が4月26日付で退任する。チーフ・デザイン・オフィサー(CDO)を務める浅沼尚氏が後任に就く。
牧島かれんデジタル相は同日の記者会見で、石倉氏が退任する理由に言及した。「デジタル庁立ち上げという当初の役割を果たし次の世代に引き継ぐと本人から申し出があった」と説明した。
浅沼氏は商品やサービスのアイデアづくりから企画、開発などに一貫して関わるデザイン部門を歩んできた。直近は三菱UFJフィナンシャル・グループのフィンテック子会社に在籍した。デジタル技術を使った新サービスの開発などを担ってきた。
牧島氏は「国民目線のサービスの提供に必要な知見を備えている」と評価した。およそ600人の職員で発足したデジタル庁は700人規模にまで拡大した。
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・「会議に出たくない」 デジタル庁、民間出身職員が反発
・「お手並み拝見だ」 デジタル庁、試される突破力
・「結局アマゾンか」 デジタル庁、クラウドで米2社選定Twitterで最新情報を発信
政治・外交 最新情報はこちら https://www.nikkei.com/politics/?n_cid=MCH999多様な観点からニュースを考える
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。
柯 隆のアバター 柯 隆 東京財団政策研究所 主席研究員 コメントメニュー
ひとこと解説
この人事が失敗した一番の原因は、年輩の方を差別するつもりはないが、デジタル庁といわれるぐらいだから、もっと若い方に託すべきではなかったのか。
かつての経歴は輝かしかったかもしれないが、体調もあまり優れないことを考えて、本人も苦しかったはずだった。
このポストは役所との折り合いも重要だが、同時に、国際社会と行き渡らないといけない。前政権の平凡さは明々白々
2022年4月26日 11:07
梶原誠のアバター
梶原誠
日本経済新聞社 本社コメンテーター
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最近は毎日、海外出張から帰国した人から「帰国した際の日本の空港での手続きが外国より煩雑でかなわない」という不満を聞きます。
同じ事を何度も聞かれたり長い間待たされたり。
一時間半で解放された米企業のトップは、「短くて良かったですね」と日本人に言われて激切れしたそうです。
デジタル化の遅れが原因です。大型連休で海外旅行から帰った多くの人々の不満が爆発するかもしれません。立ち止まっている余裕はありません。
2022年4月26日 11:39
蛯原健のアバター
蛯原健
リブライトパートナーズ 代表パートナー
コメントメニューひとこと解説
任命責任云々という声もあまりメディアからも野党からも聞かれない。
本件がそれほどマスメディアで大きく取り上げられないこと自体が皮肉にも日本のデジタル化、DXの遅れを物語る象徴ではなかろうか。
2022年4月26日 11:22 』
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Google「万能AI」の威力 数百万タスク・多言語対応
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC185010Y2A410C2000000/※ 『PaLMのニューラルネットワークのパラメーター数は5400億にも達する。』…。
※ 『グーグルは5400億パラメーターのPaLMをトレーニングするために、自社開発した専用AIチップである「TPU v4」を6144個搭載した巨大スーパーコンピューターを使用している。』…。
※ 現状は、まだ、そういうものだ…。
※ そういう「巨大システム」を動かすための、「電力消費」は、どのくらいのものなんだろう…。

『米グーグルが数年にわたって開発を進めてきた人工知能(AI)「Pathways(パスウェイズ)」の実力が明らかになった。Pathwaysは1つの機械学習モデルが最大数百万種類のタスクに対応できるという「万能」もしくは「汎用」のAIだ。従来のAIが1モデル1タスクの専用品であるにもかかわらず、タスクを処理する性能は汎用であるPathwaysが上回った。驚くべき威力だ。
グーグルは4月4日(米国時間)、自然言語処理に関する複数種類のタスクを処理できる「Pathways Language Model(PaLM)」を発表した。自然言語による質問応答や文章生成などができる言語モデルと呼ばれるAIをPathwaysによって実装した。言語モデルは近年、BERT(バート)やGPT-3などがめざましい成果をあげたことで注目されている。
1モデル1タスクの専用品である従来の言語モデルで別のタスクを処理させるには、それ用の機械学習モデルを改めてトレーニング(訓練)し直す必要があった。
それに対してPaLMは1つの機械学習モデルで、質問応答や文書生成、多段階の論理的な思考、翻訳、ソースコード生成、ソースコード修正、さらにはジョークの解説といった様々なタスクを処理できる。さらに1つのモデルで、英語だけでなく多言語によるタスクに対応可能だ。
グーグルはPaLMのトレーニングに、7800億単語(トークン)からなる文章を使用した。これらはウェブページや書籍、ウィキペディア、ニュース記事、ソースコード、ソーシャルメディア上の会話などから収集した。このうち書籍とニュース記事は英語だけだが、それ以外については多言語の文章が含まれる。
GPT-3を上回るベンチマーク性能
PaLMは多芸であるだけでなく、1つひとつのタスクの処理性能も高い。グーグルが29種類の自然言語処理に関するベンチマークを試したところ、29種類中の28種類でこれまでの最高(SOTA)を上回る成績を収めたという。
グーグルが倒したライバルとして挙げた言語モデルの中には、同社自身が2021年12月に発表したこれまでで最高成績の言語モデルであるGLaMや、米オープンAIが20年に発表して世界に衝撃を与えたGPT-3、米マイクロソフトと米エヌビディアが共同開発して22年1月に発表したMegatron-Turing(メガトロン・チューリング)NLGなどが含まれる。
従来の言語モデルも、大量の文章によってモデルをトレーニングした後は、数十~数百文例の「わずかな訓練(Few-shot training)」を加えることで、他のタスクにも対応できる。
しかしPaLMの場合は追加のトレーニングがない「0-shot」の状態であっても、多くのタスクで高性能を発揮できる。またタスクによっては、PaLMにFew-shotのトレーニングを追加すると、性能が向上することがある。
PaLMの特徴は機械学習モデルの巨大さだ。PaLMはBERTやGPT-3と同様に、自己注意機構(SA)であるTransformer(トランスフォーマー)を多段に積み重ねるニューラルネットワーク構造を採用する。
PaLMのニューラルネットワークのパラメーター数は5400億にも達する。BERTのパラメーター数は3億4000万、20年の発表当時では巨大といわれたGPT-3は1750億であり、過去最大級の規模だ。マイクロソフトとエヌビディアによるMegatron-Turing NLGは5300億パラメーターだったので、それよりもさらに大きい。
グーグルは5400億パラメーターのPaLMをトレーニングするために、自社開発した専用AIチップである「TPU v4」を6144個搭載した巨大スーパーコンピューターを使用している。
Pathwaysが示した「規模の力」
グーグルはPaLMに関して、ニューラルネットワークの規模が大きくなればなるほど性能が向上する「規模の力」が働くと説明する。
グーグルは今回、5400億パラメーターのPaLMモデル(PaLM 540B)だけでなく、80億パラメーターのPaLM 8Bと620億パラメーターのPaLM 62Bも用意し、それぞれの性能を比較した。するとPaLM 8BよりもPaLM 62Bの方が、PaLM 62BよりもPaLM 540Bの方がベンチマーク性能は向上するとの成果が得られた。
またグーグルは620億パラメーターのPaLM 62Bのベンチマーク性能が、1750億パラメーターであるGPT-3の性能を上回ったとも主張している。ライバルに比べて性能が高いのは、単にパラメーター数が大きいだけではなく、アーキテクチャーそのものが優れているからだとの主張である。
グーグルがPathwaysの開発を明らかにしたのは、19年7月のことだ。同社におけるAI開発を統括するジェフ・ディーン氏が来日した際の記者会見で、「1つの機械学習モデルで数百~100万種類のタスクを処理できるようにする研究が現在進んでいる。私はその研究の方向性に非常に興奮している」と明かしていた。
そしてディーン氏は21年10月に公表したブログ記事で、グーグルが最大数百万種類のタスクを処理できるAIアーキテクチャーであるPathwaysを完成させたと発表した。しかしこの時点では、Pathwaysで何ができるのかは明かされていなかった。そして今回PaLMの成果を発表することで、自然言語処理の領域におけるPathwaysの実力を明かした。
PathwaysはAIの応用領域を大きく広げる存在になるだろう。これまでの専用型AIの場合は、新しいタスクに対応するにはそれ用の学習データを大量に用意する必要があり、それがAI応用の課題になっていた。様々なタスクに対応できるPathwaysは、この課題を解消できる可能性がある。その威力は計り知れない。
Pathwaysにも苦手なタスク
もっともグーグルが公表した論文からは、PaLMの課題もうかがえる。まずPaLMの「規模の力」が機能しなかったタスクもあった。
グーグルが公表した論文によれば、PaLMではパラメーター数が増えるにつれタスクを処理する性能が上がる傾向があるものの、試したタスクの中にはパラメーター数を増やしても性能があまり向上しなかったものもあった。
つまりPaLMには苦手なタスクがあったということだ。具体的には質問応答のタスクの中でも、行き先案内に関するタスクである「navigate(ナビゲート)」や、数学的証明手法を実世界に応用するタスクである「mathematical_induction(数学的帰納法)」などが苦手だった。
また今回PaLMが示したのは、自然言語処理という範囲に限定した万能さだ。実はディーン氏は21年10月のブログ記事で、Pathwaysは様々な感覚(senses)に1つのモデルで対応できると予告していた。テキストデータを扱う自然言語処理だけでなく、画像や音声といった様々なタスクで高性能を発揮してこそ、Pathways本来の万能さが示されたといえるだろう。
Pathwaysはどこまで万能なのか。Pathwaysの行く先に「汎用人工知能(AGI)」が存在するのか。これからの進歩が楽しみだ。
(日経クロステック/日経コンピュータ 中田敦)
[日経クロステック2022年4月15日付の記事を再構成]
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