みずほシステム障害、混乱の16時間 原因なお特定できず

みずほシステム障害、混乱の16時間 原因なお特定できず
報告書案
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB30CH50Q1A830C2000000/

 ※ この記事の書き方だと、「物理ディスク(※ HDDベースか、SSDベースかまでは不明)」が正・副同日で「機器故障」したのが、主たる原因ということだ…。

 ※ しかし、そういう「物理機器」は、どの金融機関でも同じように使用しているハズだ…。

 ※ それなのに、みずほだけが「大規模システム障害」になるのは、何故なのか…。

 ※ そこいら辺が、さっぱり分からんな…。

※ ネットで拾った画像だ…。

※ 通常、金融機関が「合併・統合」すると、「規模の大きいところ」の「基幹勘定系システム」に寄せて行く…。

※ しかし、みずほの場合、それが「できなかった」らしく、「基幹勘定系システム」をそれぞれ残した…。

※ そして、それを「リング状につなぐ」システムである「MINORI」という新システムを開発した…。

※ おそらく、旧「基幹勘定系のシステム(COBOLで書かれたものも、残存していると思われる)」の細部まで「分かっている人」も、「その資料」も、もはや残ってはいないんだろう…。

※ そこいら辺が、根本的な問題なのか…。

『みずほフィナンシャルグループ(FG)で8月19日夜に起きた機器故障に端を発したシステム障害は頼みのバックアップがことごとく稼働しない誤算が重なり、復旧までに16時間を要した。すでに今年4度の障害を起こしてきたみずほは最悪の事態を想定し、早めに判断・行動するという教訓を生かせたのか。日本経済新聞が独自入手した報告書案から混乱ぶりを再現した。

システム障害発生と顧客対応に関する事実認識

8月19日午後7時40分に物理ディスク装置の一つが故障し、ミラーディスクに切り替わるとともにスペアディスクへのコピーが始まった。午後8時52分に切り替え先のディスクでも故障が発生し、同53分に業務統合チャネル基盤で複数のエラーが発生した。同基盤の停止に伴い営業部店端末のすべてが使えないことを踏まえ、午後10時2分に障害一報を発信した。

システム障害を伝えるみずほ銀行の張り紙(20日午前、大阪市中央区)

国内営業部店の運営を統括する法人業務部・個人業務部は8月19日午後9時20分に企画管理部より障害情報の共有を受け、速やかに翌20日の営業部店実施事項を検討した。午後10時30分以降、継続的に開かれた部会などを通じて状況把握につとめ、午後11時10分には法人業務部・個人業務部はエリア長らとのミーティングを始めた。

復旧が翌日の営業開始までに終わらない場合に備えて、営業部店の役職者以上に翌朝の午前7時30分までに出勤させると判断し、午後11時20分に営業部店長に指示した。

8月20日午前6時の第2回非常対策PT会議で、システムの復旧めどは午前11時で、開店時間を超過するとの報告を受け、お客様告知とコールセンターの開設時間を午前8時30分とし、同時刻にホームページに告知掲載した。メディアへの情報発信はホームページ掲載のタイミングで各社に連絡した。

記者会見対応は、度重なる障害に伴うおわびを含めて、適切な状況説明が必要との観点から必要な要員をあらかじめ確保した。8月20日午前10時45分ごろ、坂井辰史社長、藤原弘治頭取を主な説明者とする記者会見を同午後5時から開く方向で検討を始めた。

システム障害について謝罪するみずほFGの坂井社長(左)とみずほ銀行の藤原頭取(20日、東京・丸の内)

店頭などでは大きな混乱にこそ至らなかったものの、システムの全面復旧は午前11時58分となり、国内の他行向け円建て仕向け送金・海外向け円建て仕向け送金で、日銀ネットのシステム時限である午後2時55分までに送信が完了しなかった。

8月19日午後11時42分にカードの紛失登録依頼の電話を受けたものの、端末による紛失設定ができず、翌20日午前8時57分に他行ATMで50万円が引き出される不正があった。

障害発生の原因分析と2~3月に起きた障害との関係

今回の障害は物理デスクの故障が直接の原因だが、2つのディスクが同日故障した理由が偶然か、他の要因が内在しているかは現時点で不明であり、さらなる調査・確認を進めていく必要がある。復旧に向けた対応を進めるなかで、営業部店の開始時刻を意識したタイムマネジメントが十分でなく、対応案を比較した上で、判断時限をあらかじめ設定する対応ができていなかった。

現在、最重要・重要決済業務を担い原則停止不可のシステムについて、9月末を期限に保守期限を超過している機器の有無を確認している。他社で採用が見送られている機器の情報をベンダーから収集するなど、定期的にハード機器の点検を行い、予防保守へ生かす取り組みを検討している。

ディスク機器について、保守期限超過がないことは確認済みだが、今回の障害を踏まえて、ベンダーによる点検結果(ディスクの使用年数、故障回数、故障率など)を管理し、予防保守に活用するなどの追加対応が必要と認識している。

これまでの稼働確認は「顧客に不都合な仕様」などの観点で行ったため、MINORI(みのり)本体とチャネル系システムとの間に位置する業務チャネル基盤は点検対象外としていたが、今回の障害を踏まえて、点検範囲を再検討する。

今回のように自動切り替えが想定通り作動しないケースでも迅速に復旧させる手順・マニュアルが整備されているか、追加点検が必要だ。対応手順の選択の誤りが発生しており、外為事務処理の時限を意識した復旧対応力の継続強化が必要と認識している。

改善・再発防止策

みずほ銀行は6月15日に一連のシステム障害を踏まえた再発防止策を公表し、「多層的な障害対応力の向上」とそれを支える「人と組織の持続的強化」について組織全体として取り組んできた。しかしながら、2月、3月のシステム障害に続き、今回の障害が起きたことを重く受け止め、みのりの特性を踏まえた適切な管理体制が構築されているか、リソース配分・運営がシステムリスクへの潜在的な影響を与えていないか、有事における対応体制は適切に構築されているか、顧客影響が十分に配慮されているかなどの観点から、経営レベルでの一層の管理体制の強化に取り組んでいく。

予防的な観点から、ハードウエア機器の経年劣化・故障回数・故障率などについて定期点検の実施などの追加対応を検討する。これまでの総点検のカバー範囲を確認するとともに、みのり本体とチャネル系システムをつなぐ基盤系システムを点検対象とすることや、実機での稼働確認を追加検討する。

ハード故障の原因を踏まえ、みのりシステムについて、当初想定した設計になっているか点検を検討する。顧客影響が顕在化していない初期段階においても、最大影響を想定し、対外告知に必要な対応を確認のうえ、告知予定時刻の前倒しを検討する。SNSによるプッシュ型告知はホームページ告知と同時並行的に準備を進めることを徹底する。

【関連記事】
・みずほ報告書の全容判明、システム「設計通りか点検」
・みずほシステム障害頻発、浮かぶ3つの課題 』

二階幹事長の交代検討 首相、9月にも党役員人事

二階幹事長の交代検討 首相、9月にも党役員人事
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODE305V20Q1A830C2000000/

『菅義偉首相は自民党の二階俊博幹事長を交代させる検討に入った。二階氏は30日に首相官邸で首相と会談した際、自身の交代を含めた執行部の刷新を進言した。首相は9月にも党役員人事を実施する日程で調整する。

二階氏は会談で「この局面を打開するのは人事しかない」と述べ、幹事長交代を容認する考えを伝えた。首相は謝意を示した。

二階氏は安倍前政権から幹事長を5年程度務め、党内から交代を求める意見が出ていた。安倍晋三前首相と二階氏は衆院選の候補者調整を巡って対立している。首相は9月17日告示の党総裁選前にも党役員人事を断行することも視野に入れる。

菅内閣は支持率の低迷が続いている。次期衆院選が迫るタイミングで党運営の要となる幹事長らを交代させて党の清新さを印象づける狙いがある。党役員人事にあわせ、内閣改造に踏み切るべきだとの声もある。

二階氏は2020年9月の総裁選でいち早く首相を支持し、今年9月の総裁選でも首相再選をめざす意向を示していた。

総裁選への出馬を表明した岸田文雄前政調会長は「総裁を除く党役員は1期1年、連続3期まで」と語り、二階氏の再任を否定していた。

首相は早急に後任人事に着手する。総務会長や政調会長、選挙対策委員長らの交代の是非も検討する。首相周辺からは新たな顔ぶれに中堅や若手、女性議員の積極登用を促す意見があがっている。

首相は次期衆院選を巡る日程の調整も進める。党内で衆院解散のない任期満了選挙として10月21日の任期満了前の「10月5日公示・17日投開票」とする案が浮上する。総裁選で選ばれた新総裁が10月に衆院を解散する選択肢も残る。

【関連記事】
・「次の自民党総裁」 世論調査が映す支持基盤 
・二階氏、任期制限に不快感 岸田氏は安倍氏らに支援要請

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室橋祐貴のアバター
室橋祐貴
日本若者協議会 代表理事

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分析・考察 細田派、麻生派が菅総理支持を表明しない中、大きな決断に出ましたね。ご自身は勇退する代わりに、息子を後継として公認してもらう、という形でしょうか。

ただ、党内力学的には大きな一手ですが、党内人事が変わっても菅内閣であることに変わりはなく、世論の支持率が大きく変わるとは限りません。出来レースではなく、正面切って総裁選で議論を交わすことが、支持率転換にとっても重要だと思われます。

2021年8月31日 11:00いいね
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菅野幹雄のアバター
菅野幹雄
日本経済新聞社 ワシントン支局長・本社コメンテーター

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分析・考察 遠い米国からのコメントで恐縮ですが、当地をはじめ世界から注目されるニュースになると思います。

二階幹事長自ら交代を「進言」したことの裏側には何があるのか、興味があります。幹事長刷新を売り物にしようとした岸田氏に先手を打つ格好であり、下村氏の出馬断念と相まって「菅体制」の継続を巡る自民党内の力学の強まりといえるのでしょうか。

幹事長は秋の衆院選の責任を取る立場で、もし秋の結果が振るわなければ次期幹事長の責任が問われます。「自民党の論理」がもたらした動きだとしたら、それを日本の有権者がどう評価するかも見ものです。中国に近いとされる二階氏。日中関係でもどんな変化があるのでしょうか。

2021年8月31日 7:32 (2021年8月31日 7:33更新)
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[FT]チェコ「海賊党」、政権奪取うかがう 10月議会選

[FT]チェコ「海賊党」、政権奪取うかがう 10月議会選
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB302FW0Q1A830C2000000/

『15年前、既存政党に反旗を翻して欧州政界に突如出現した「海賊党」はその後ずっと政治の主流になれずにいた。だが10月8日に実施予定のチェコ議会選挙で、同国の海賊党は欧州連合(EU)で初めて国政与党になるかもしれない。

ドレッドヘアが特徴のイワン・バルトシュ氏。海賊党を率いて10月の議会選で政権奪取に臨む=ロイター

ドレッドヘアが特徴のイワン・バルトシュ氏(41)が率いる同党は「市長と無所属」党(STAN)と連合を組んでいる。右派政党連合との協力など選挙後の連立工作次第では、実業家出身のバビシュ首相が党首を務める与党「ANO」を政権の座から追い落とす可能性がある。

元IT技術者のバルトシュ氏は他の多くの海賊党員と同様、政治の現状への不満から政界入りを志した。同氏はチェコの既成政党が経済力の高い西欧各国との差を縮めようとする取り組みを妨害していると感じていた。

「政治のプロでもない腐敗した人々が我々の人生を決めることに我慢できなかった」と同氏は首都プラハの同党事務所でのインタビューで語った。「チェコには優れた人々、明敏な頭脳、能力の高い労働者が存在するのに西欧の夢に追いつけない」

チェコ海賊党は2009年に設立。00年代半ばにインターネット上の著作権規制強化への反対運動から欧州各地で生まれた「海賊党」の一つだ。しかし他国の仲間とは異なり、すぐに単一争点の政党から脱皮した。10年と13年の議会選挙では議席を獲得できなかったものの、17年には得票率11%で議会第3党となった。

30%近い支持率

21年に入り、同党とSTANの連合は世論調査で30%近い支持率となり、ANOを抜いて一時は有権者から最も支持される政治グループとなった。

支持率が急上昇した背景には、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)への政府の対応に対する市民の怒りの広がりがあった。21年初めには事態が深刻化し、同国は3月に人口比での累計死者数が世界最悪となった。

「コロナ危機によりこの国の統治がいかに混乱しているか明らかになった」とバルトシュ氏は政府を批判した。「死なずに済んだはずの3万人が亡くなった」

だがパンデミックの影響が落ち着くと、ANOの支持率は回復した。ここ数週間、海賊党・STAN連合の支持率はANOと中道右派連合「SPOLU」に次ぐ3位に下がっている。

実業家出身のバビシュ首相は海賊党を選挙戦最大の標的と位置付けている=ロイター
バビシュ氏は海賊党を最大の標的とし、保守的な有権者への脅威となる革新的イデオロギー主義者だと表現している。6月には同党が広い家に住む市民を移民と同居させようとしていると主張したほか、8月には同党が「イデオロギー的に誤った信念」を宣伝しているとも話した。

ドイツ外交問題評議会のシニアフェロー、ミラン・ニシュ氏は「選挙戦を海賊党への攻撃と位置付けたバビシュ氏に対し、同党は何の対応もできないでいる」と指摘した。「自ら綱領に掲げた課題が争点となるよう演説内容や選挙戦略を再構築できておらず、防戦に回っている」

強気保つバルトシュ氏

バルトシュ氏は強気を保っており、海賊党は他のどの政党より激しく虚偽情報の攻撃を受けていると主張。返す刀で、チェコにとって真のリスクはバビシュ氏が選挙後も政権を維持するため極右政党や共産主義者と手を組むことだと言い募った。バビシュ氏本人は否定するが、同氏には自らの企業グループに関する詐欺や利益相反疑惑があり、主要政党の一部からは嫌悪されているとさえバルトシュ氏は明言した。

バルトシュ氏はさらに、バビシュ氏が政権を維持すればチェコはEU主要国からさらに遠ざけられ、EU内で仲間はずれにされると警告した。「チェコを東欧の元共産主義国の遺物を陳列する博物館にしたくない。進化し、成長し、協力する西欧の一員になりたい。そうした将来への課題を自国だけでは克服できない」とバルトシュ氏は話した。

他の中欧諸国と同様、チェコにとって課題の一つは西欧の多国籍企業に安価な労働力を提供する経済モデルから、自国企業がバリューチェーンの上位に位置するモデルに移行させることだと同氏は主張した。「製品を組み立てる国から経済の中枢を担える国にチェコを変えていきたい」

一方で、依然としてエネルギーの3分の1近くを石炭に依存するチェコをより環境に優しい国にする必要があるとも指摘。そのためにEUが50年までに温暖化ガス排出量実質ゼロを目指す「欧州グリーンディール計画」の一環として加盟国に分配する資金を有効利用すべきだと述べた。

「グリーンディールの資金は50年になっても雇用を創出できる企業を育成するために配分される。環境に責任を持たなければ経済発展の余地は少ない」と同氏は力説した。「それが世の中の流れなら、それに従うのはイデオロギーの問題ではない。賢明な判断だ」

By James Shotter

(2021年8月29日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

(c) The Financial Times Limited 2021. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.

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【関連記事】
・チェコ下院選、大衆迎合党が第1党に
・アイスランド首相が辞任表明 総選挙の結果受け
・欧州危機対応めぐり、ドイツ与野党に温度差
・欧州の小政党、影響力は限定的 』

北朝鮮、寧辺核施設を再稼働か

北朝鮮、寧辺核施設を再稼働か IAEAが報告書
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM305PR0Q1A830C2000000/

『【ソウル=恩地洋介、ワシントン=中村亮】北朝鮮が北西部にある寧辺(ニョンビョン)の核施設で、7月初めから原子炉を再稼働させた兆候のあることが、国際原子力機関(IAEA)の報告書で明らかになった。2018年に当時のトランプ米政権と対話を始めて以降、中断していた核開発を再開した可能性がある。

報告書は衛星写真などをもとに、北朝鮮による最近の核開発状況を分析した。IAEAは今回の報告書を基に9月13日から始まる理事会と、同20日から始まる総会で北朝鮮問題を議論する。

寧辺は、原子炉や研究施設、核燃料工場などが集積しており、核開発の心臓部と呼ばれる場所だ。報告書は、冷却水の排出など黒鉛減速炉が稼働した兆候を観測したと指摘した。18年12月から今年7月初旬までの約2年半の間には、こうした兆候は確認されなかったという。

寧辺の黒鉛減速炉は5千キロワットの出力があり、過去の核実験で使ったプルトニウムはここで生産されたとみられている。原子炉から取り出した使用済みの核燃料棒を再処理することでプルトニウムを抽出できる。

報告書によると、使用済み核燃料の再処理施設に蒸気を供給するプラントも2月から7月にかけて5カ月間稼働した。過去の事例と比較すると、5カ月の間にプルトニウムが再び抽出された可能性も排除できないという。

ウラン濃縮施設があると推定される平壌近郊の「カンソン」でも、建設作業が続くなどの動きが捕捉された。

報告書は、黒鉛減速炉と再処理施設の稼働の兆候を「深刻な問題だ」と強調した。核計画の放棄を求める国連安全保障理事会の決議に違反すると指摘している。

米国や韓国の当局は、北朝鮮がすでに20~60発の核兵器や、核兵器を製造可能なプルトニウムを50キログラム程度保有していると見積もっている。北朝鮮はさらなる核戦力の拡大をテコに、米国や国際社会の関心をひき付けたい考えとみられる。

北朝鮮は過去に寧辺核施設の稼働と中断を繰り返し、米国や周辺国との交渉カードとして利用した。07年の6カ国協議では、3つの核施設を無能力化させることで合意。08年に黒鉛減速炉の冷却塔を爆破したが、核心部分には手をつけず、13年に原子炉の再稼働を宣言した。

トランプ政権下の18年に始まった米朝交渉では、金正恩(キム・ジョンウン)総書記が寧辺を交渉の切り札に使おうとした。

19年2月にベトナムのハノイで開いた2回目の米朝首脳会談で、金正恩氏は経済制裁の解除と引き換えに寧辺核施設を廃棄すると提案した。トランプ氏が他の核施設も廃棄するよう求めたため、会談は決裂した。

バイデン政権は北朝鮮に「前提条件なしの対話」を呼びかけている。先に韓国を訪れたソン・キム北朝鮮担当特使は「いつでもどこでも北朝鮮側と会う準備ができている」と語り、交渉復帰を促した。

ただ、北朝鮮指導部はバイデン政権への不信感をあらわにしている。「戦略的忍耐」を唱え、北朝鮮を事実上無視したオバマ政権の政策を継承していると疑っているためだ。接触には応じない姿勢を示す。

金正恩氏は年明けの朝鮮労働党大会で、核を増強する路線への回帰を表明した。北朝鮮外務省はホームページに掲載した今月28日付の記事でも「最強の戦争抑止力を不断に備蓄していく」と主張。米韓合同軍事演習の実施を理由に「国家防衛力と先制打撃能力を強化する必要性を痛感した」などと核・ミサイル開発を正当化した。

寧辺の再稼働は、今後の非核化交渉を見据え、バイデン政権に向けて核開発の意思を誇示するためとの見方が強い。韓国・北韓大学院大学の梁茂進教授は「寧辺が引き続き有効な交渉カードであることを対外的にアピールする狙い」と分析している。

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峯岸博
日本経済新聞社 編集委員・論説委員

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分析・考察 「寧辺」は決裂に終わったハノイでの第2回米朝首脳会談で金正恩総書記がすでに切ったカード。来たるべきバイデン米政権との再決戦に向け、タマ込めをしているのではないでしょうか。

バイデン政権内でも、完全核放棄の「CVID派」を、北朝鮮との行動対行動で段階的に非核化を進める「核管理派」が説得して優勢になっているとの分析があります。

一方で、北朝鮮指導部は目下、コロナ対策に追われています。中国の影響力増大による中朝共闘色が強まっている現在、北朝鮮核問題が米中交渉のカードとして扱われる展開も予想されます。

2021年8月31日 8:23いいね
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ミャンマー最大都市で8カ所爆発

ミャンマー最大都市で8カ所爆発 現地報道
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM305B00Q1A830C2000000/

『ミャンマーの最大都市ヤンゴンで30日早朝、8カ所で相次いで爆発があった。複数の現地メディアが報じた。爆発による死傷者は伝えられていない。このうち1カ所は商業施設が集まるレーダン地区の大型交差点で、大きな白煙があがる画像がSNS(交流サイト)で拡散した。

ミャンマーでは5月以降、政府施設や治安部隊を狙った爆弾事件が増えていたが、商業地区での爆発は珍しい。ヤンゴン市内には治安部隊が出動し、警戒態勢を強化した。

現地報道によると一連の爆発は午前5時から6時にかけて起きた。犯行の主体などの詳細は判明していないが、少なくとも1カ所は電力関係の事務所が狙われたとみられる。

ミャンマーでは、2月にクーデターを起こした国軍に対する市民の抵抗運動が続いている。治安部隊の弾圧で、平和的な抗議デモや公務を放棄する「不服従運動」を続けることが難しくなり、一部の市民の間では武装して国軍の統治体制を攻撃すべきだという声が高まった。

国軍や警察当局は、こうした武力抵抗をテロ行為とみなしている。国営テレビなどを通じて情報提供を呼びかけ、テロに関係があるとみなした市民の身柄拘束を強化している。』

中国経済衰退論を取り締まり 主要SNS、景気減速で情報統制

中国経済衰退論を取り締まり
主要SNS、景気減速で情報統制
https://nordot.app/805037605592514560?c=39546741839462401

『【杭州共同】中国の短文投稿サイト、微博(ウェイボ)など主要な会員制交流サイト(SNS)は30日までに、中国経済の衰退を吹聴する書き込みや、経済政策を「歪曲」する投稿を取り締まると一斉に宣言した。中国メディアが報じた。政府の方針を受けた措置。景気の減速感が強まる中、習近平指導部は経済分野でも情報統制を強めている。

 国家インターネット情報弁公室は27日、経済情報の取り締まりキャンペーンを10月26日まで実施すると決定。中国人民銀行(中央銀行)などと連携し、デマや金融不安をあおる情報を流したウェブサイトやアカウントを法律や規定に基づき処罰すると発表した。』

中国、アントなど監視強化 新サービスは事前報告義務に

中国、アントなど監視強化 新サービスは事前報告義務に
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB064VH0W1A800C2000000/

『【上海=土居倫之】中国が決済サービス会社の規制を強化する。9月から新しい規制を施行し、新商品・サービスの提供や新規株式公開(IPO)など幅広い分野で中国人民銀行(中央銀行)への事前の報告を義務付ける。支付宝(アリペイ)や微信支付(ウィーチャットペイ)など中国のスマートフォン決済は社会インフラとなっており、大規模な決済事故の発生などによる金融システムの不安定化を回避する。

人民銀が9月1日から「非銀行決済機構重大事項報告管理弁法」を施行する。同弁法は決済市場の安定性を維持することを目的としており、重大事項の事前・事後報告を求めている。

重大事項に該当する内容として、IPOや増資のほか新しい決済商品やサービス、海外企業などと協力した国際決済サービスの提供などを挙げている。IPOについては中国ハイテク企業が多く採用する「変動持ち分事業体(VIE)」の仕組みを用いた海外上場も含む。海外拠点の開設や一定規模以上の対外投資も対象だ。いずれも5営業日~30日前までに書面での報告を求めている。

情報漏洩や資金洗浄(マネーロンダリング)の発覚など突発事件については発生から2~24時間以内の事後報告を求める。報告を怠ったときは人民銀が罰則を科す。

決済サービス会社を巡っては、人民銀が2010年に「非金融機構決済サービス管理弁法」を施行した。ただその後のスマホ決済などテクノロジーの急激な発展に法規制が追いつかず、監督体制が不十分なまま規模やサービス範囲が急激に膨らんでいた。これがアリババ集団傘下の金融会社、アント・グループが、金融監督当局から、全面的な監督の受け入れや必要なライセンス取得を求められる要因のひとつとなっていた。

中国では一部で現金の受け取りを拒む店舗があらわれるなど、スマホ決済はすでに社会的に不可欠なインフラとなっている。決済サービス会社の規制強化を大規模な決済事故の防止や個人情報保護の徹底につなげ、金融システムの不安定化を防ぐ。

半面、新しい弁法が重大事項と定める内容は網羅的だ。報告にとどまるとはいえ、実質的に人民銀が決済サービス会社の経営に深く関与できる内容となっている。決済と資産運用、信用情報をもとにした個人融資を結びつけるなどこれまでのような革新的な決済サービスが生まれにくくなる可能性がある。

人民銀は顧客情報の確認の不備などを理由に7月、中堅決済サービス会社、中金支付に計1526万元(約2億6000万円)の罰金を科した。金融監督当局はここにきて金融システムの安定と消費者保護を理由に決済サービス会社への締め付けを急激に厳しくしている。アリペイを運営するアントやウィーチャットペイを運営する騰訊控股(テンセント)にとっては強い逆風となる。

アジアBiz
シンガポール、ギグワーカーの保護策を導入へ (15:30)
カンボジアにセブンイレブン1号店 タイのCPオール(14:44)』

中国、ゲームは「週末1日1時間」

中国、ゲームは「週末1日1時間」 強まる青少年管理
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM308P70Q1A830C2000000/

『【広州=比奈田悠佑】中国のメディアやゲーム産業を管轄する国家新聞出版署は30日、未成年者(18歳未満)によるネットゲームの利用を厳しく制限する方針を発表した。ゲーム企業に対し、未成年者へのサービス提供を週末や祝日などに限定して時間も1日1時間までとするよう求める。学校での教育内容に加え、家庭の生活でも青少年の管理が強まる。
未成年者のネットゲーム利用は金曜、土曜、日曜と祝日の夜8時から9時までに限定する。実名による利用登録も厳格化するよう求める。国家新聞出版署は2019年に未成年者のネットゲーム利用に関して、祝日に1日3時間、それ以外の日は1時間半を超えてはならないとするといった規制を打ち出していた。その規制をさらに厳格化する。

中国政府は青少年に対する思想教育を進めている。上海市では9月の新学期から習近平(シー・ジンピン)国家主席の思想を題材にした教材を使う授業を小・中・高生の必修科目として新設する。北京市も今月、当局の認可を受けていない外国教材を義務教育で使用することを禁ずる方針を打ち出した。

教育内容に加え、しつけなど家庭内の教育を充実させる法律についても政府は議論しており、子供の生活を細かく管理する方向に動いている。生活面の管理や思想教育の強化を通じて、若者の共産党への関心を高める狙いがある。

ゲーム企業は当局方針をくみ、先手を打って未成年者の利用時間や課金の制限など自主規制を敷いていた。例えばネット大手の騰訊控股(テンセント)は今月3日にも未成年者のゲーム利用を祝日は1日2時間まで、それ以外は1時間までに順次制限する方針を発表していた。国家新聞出版署の新ルールはさらに厳格なものだ。

テンセントは30日、日本経済新聞の問い合わせに対し「当局の最新の要求を厳格に順守する」とコメントした。テンセントは今月実施した2021年4~6月期決算の発表の場で、同社の中国におけるゲーム売上高のうち16歳以下の利用者の比率は2.6%だと明かした。各社ともゲーム事業の収益における子供の比重はそれほど大きくはないとみられるが、当局の監視の目が厳しくなる中で難しい対応を迫られる。

【関連記事】
・中国「片付けは自分で」しつけを法律に 学力偏重是正
・テンセント、海外出資に活路 中国の規制避け収益分散

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「This is the real story of the Afghan biometric databases abandoned to the Taliban」

Eileen Guo & Hikmat Noori 記者による2021-8-30記事「This is the real story of the Afghan biometric databases abandoned to the Taliban」
https://st2019.site/?p=17386

『タリバンが押収したデバイスの中にHIIDE、すなわちバイオメトリック端末があった場合、どうなるのか?
 そのシステムは、米兵が調べたアフガン人1人について、指紋、彩虹、顔面イメージなど40項目もの個人情報と紐付けていた。DNAによって親類や先祖まで分かってしまうのである。

 ただし端末を拾っても、その中にはデータは入っていない。端末は、入力や照合の道具なのである。データが入っているサーバーは、どこか別な場所にある。それが米国内であれば、DoDの専門部署が外部からの不正アクセスを防護しているはず。

 それよりも懸念されているのは、アフガニスタン政府が抱えていたデータベースの方だ。そこには百万人単位で自国民の個人情報が登録されているのだ。

 米国政府が、アフガン政府に資金を提供して、APPSというデータベースを構築してやった。「アフガン・パーソナル & ペイ・システム」の略。

 このAPPSを使って、アフガン政府は、軍人と警察官に給与を支払っていたのである。
 公安系の人物が誰なのか、ぜんぶタリバンにバレてしまうだろう。

 APPSは2016年から構築されはじめた。背景には「ゴースト・アーミー」、すなわち腐敗したアフガン政府官僚が、存在しない兵隊や警察官をリストに書き加えて、その給与〔ほとんど米国や日本が出していた〕を中抜きする悪事の横行があった。
 APPSにあらためて登録された軍人と警察官の数だけでも、50万人以上。

 新兵がひとり採用されると、ただちに、APPSのデータベースに登記された。
 そうした個人情報は、当人が軍隊や警察を退職したり、死亡したあとも、ぜんぶ、残るようになっている。

 この膨大なデータを、今回のような非常事態時に消去破棄する方法は、システム構築を請け負った米国民間企業のエンジニアたちは、まったく考えてもいなかった。

 そしてこのAPPSのデータフィールドの中には、アフガン政府内務省が保管しているバイオメトリック・データに照会アクセスするための各人のID番号が含まれている。これがヤバいかもしれない。

 各将兵が受けた専門教育の分野も、わかってしまう。

 アフガンでは新兵が入隊するには、部族長級の2名による身元保証が要る。その部族長の名前も、このデータベースを見れば、バレバレだ。

 どういうわけか、この軍人データベースには「好きな果物」「好きな野菜」を書き込むフィールドまである。そんなことまで、タリバンに把握されてしまうのだ!

 タリバンの側でもじつは「IT」はとっくに駆使されている。すでに2016年に、タリバンがクンドゥスでバスの乗客多数をつかまえて、指紋照合スキャナーによって、処刑すべき人物を選り分けていた、という証言があるのだ。

 米軍が無人機による爆殺ミッションを決行するときに参照しているのはABIS=自動バイオメトリック・アイデンティフィケイション・システム という。このデータベースはDoDが管理している。
 それによく似たシステム「AABIS」を、アフガニスタン政府の内務省が、持っていた。もちろんABISに準拠して構築したのである。

 詳しい人によると、AABISは2012年時点においてアフガニスタン国民の80%の個人情報をカバーしていたという。人数にして2500万人となろう。

 AABISとは別に「e-tazkira」というシステムも構築の途中にあった。これはアフガンの全国民に電子IDカードを持たせようという計画であったが、620万人くらい登録されたところで、政府が消滅した。

 アフガン政府は、選挙の不正投票行為を防ぐために、バイオメトリック・スキャナーを使うつもりであった。2019年の選挙が、インチキだらけだった。

 現代では、端末などリスクではなく、むしろ、データベースそのものが、社会の巨大リスクたり得る。

 ※この記事を読んでいて、日本の「デジタル庁」とやらが将来やらかしそうな失敗が心配になってくるのは、俺だけかい?』

茂木外相 アフガンの大使館機能ドーハに移す方針

茂木外相 アフガンの大使館機能ドーハに移す方針 米軍撤退で
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210831/k10013234561000.html?utm_int=detail_contents_news-related_001

『茂木外務大臣は閣議のあとの記者会見で、アメリカ軍のアフガニスタンからの撤退が完了したことなどを受けて、一時閉鎖した日本大使館の機能を、タリバンとのパイプを持つ、カタールのドーハに移す方針を明らかにしました。

この中で茂木外務大臣は、アメリカ軍のアフガニスタンからの撤退が完了したことについて「軍を中心にした退避オペレーションというフェーズから、新たなフェーズに入っていくと考えている。出国を希望される方々の安全な退避のために、どういう手段がとり得るのか考えていきたい」と述べました。

そのうえで茂木大臣は、一時閉鎖したアフガニスタンの大使館について「仮の事務所をトルコのイスタンブールに置いているが、今後はおそらくタリバンが政治事務所を置いているカタールで、いろいろなコミュニケーションが行われることになる」と述べ、大使館機能をカタールのドーハに移す方針を明らかにしました。

また、茂木大臣は、記者団が、自衛隊機を派遣したタイミングが適切だったか質問したのに対し「状況が刻々と変化するなか、日本として取り得る手段を考え、派遣も決して遅かったとは思わない。空港近くで自爆テロが起こったことによって、退避を希望していた方々が、まだ退避できない状況にいることは残念だ」と述べました。』

アフガニスタンからの退避 派遣の自衛隊機の撤収決定

アフガニスタンからの退避 派遣の自衛隊機の撤収決定 岸防衛相
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210831/k10013234941000.html

『アフガニスタン情勢の悪化を受け、岸防衛大臣は、日本人などを国外に退避させるために派遣していた自衛隊機について、輸送の終結を命じ、撤収させることを決めました。』

タリバン関与、国益次第 大使館機能はカタール移転

タリバン関与、国益次第 大使館機能はカタール移転―米国務長官
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021083100357&g=int

『【ワシントン時事】ブリンケン米国務長官は30日、アフガニスタン駐留米軍の撤収完了を受けて国務省で声明を発表し、同国で実権を握ったイスラム主義組織タリバンへの今後の対応は、米国の国益に基づいて決めると強調した。アフガンで拘束された米国人の解放や国の安定に寄与すれば新政権と連携できると指摘。ただ、タリバンが主導する政権を承認するかどうかは言及しなかった。
タリバン幹部「歴史つくった」 首都に歓喜の銃声響く―アフガン

 ブリンケン氏は「米国によるアフガン関与の新しい章が始まった」と述べ、米軍撤収後は軍事でなく外交を通じてアフガンに関わっていく方針を示した。
 アフガンには退避を望む米国人100~200人が残留しているとし、これらの人々やアフガン人らの退避支援を「継続する」と明言。タリバンは安全な退避を約束したと主張した。
 また、在アフガン大使館の活動を停止し、領事業務や人道支援など大使館機能をカタールの首都ドーハに移転することを明らかにした。』

[FT]タリバン内の過激派と通じる「ISホラサン州」

[FT]タリバン内の過激派と通じる「ISホラサン州」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB303OZ0Q1A830C2000000/

『バイデン米大統領は、2001年の米同時テロの首謀者ウサマ・ビンラディン容疑者をかくまった国からテロの脅威を取り除く仕事が終わったと強調し、混乱している米軍のアフガニスタン撤退を正当化した。そして8月26日、あるジハード(聖戦)主義組織がバイデン氏に恐ろしいメッセージを送った。

カブール市内で警備に当たるタリバン兵=ロイター

過激派組織「イスラム国」(IS)系の「イスラム国ホラサン州」(IS-K)が、首都カブールの空港周辺で起きた自爆テロで犯行声明を出した。少なくともアフガニスタン人100人、米兵13人、英国人2人、そして別の英国市民の子供1人が死亡したテロ攻撃は、情報機関から何度も警告が出ていた中で起きた。

米国の撤退で勢いづいているIS-Kは、15年に最初に活動を活発化させた。国際テロ組織アルカイダから分派し、その後そのライバル組織に育ったISがイラクとシリアにまたがる広範な地域を制圧し、「カリフ国家」の樹立を宣言した1年後のことだ。

アフガニスタンは長年、タリバンからアルカイダに至るまで、過激なイスラム主義運動の拠点になってきた。これらの組織への対応が米国とアフガンによる治安維持活動の焦点になってきたが、IS-Kはアルカイダのパキスタン支部元メンバーのほか、タリバンや同組織と関係がある武装集団「ハッカニ・ネットワーク」から離反した戦闘員によって形成された。

組織名のホラサンとは、パキスタン、アフガニスタン、中央アジア、イラン、インドとロシアの一部にまたがる地域を指す呼称で、IS-Kはこの地域を未来のカリフ国家と見なしている。

ハッカニ・ネットワークと接点

タリバンは独自のイスラム主義の目的を追求しており、アフガンの統治よりもグローバルなカリフ国家の樹立を望んでいるIS-Kとタリバン指導部は敵対関係にある。また、IS-Kはタリバンを米国と関係を持っていると批判してきた。

タリバンは、今回の米軍撤退につながった合意を実現するためにトランプ政権と交渉した際、アルカイダやその他の過激派組織が米国とその同盟国に攻撃を仕掛ける拠点としてアフガニスタンを使うことを阻止すると約束した。

タリバンにIS-Kと対峙する能力や意思があるかどうかは、この約束の履行で重大な試金石となり、タリバンが切望している国際的な認知を得られるかどうかを左右する決定的な要因になる。

だがアナリストらによると、タリバンは以前、過激派に対する作戦に乗り出したことがある一方で、IS-Kはタリバンの関連組織であるハッカニ・ネットワークとの結びつきが疑われている。タリバンにはしばしば対立し合う勢力が複数存在している。

昨年6月に発表された国連の報告書では、IS-Kが犯行声明を出したテロ攻撃の大半でハッカニ・ネットワークによる一定の「関与、援護、技術的支援の提供」の痕跡があるとする加盟国のコメントが引用されていた。タリバンは1週間前にアフガニスタンで権力を掌握して以来、ハッカニ・ネットワークをカブールの警備に当たらせている。

アフガン情勢を分析しているインド政府高官は、ハッカニ・ネットワークは「どんなイデオロギーとも無縁の組織的な犯罪集団」であるため、IS-Kとタリバンの双方と関係があることは意外ではないとし、「IS-Kの活発なメンバーは全員、以前ハッカニ・ネットワークに所属していた洗練された戦闘員だ」と話す。

資金と新兵獲得も

シンガポールのS・ラジャラトナム国際研究院のテロ専門家であるラファエロ・パントゥッチ氏は、IS-Kはタリバンの復権を利用して組織の知名度を高め、資金と新兵を呼び込む力を強めるかもしれないと考えている。

「結局のところ、テロリズムとは反エスタブリッシュメント(支配層)であり、タリバンは今やエスタブリッシュメントだ」と同氏は言う。「このため問題は、IS-Kが育ち、発展するのに絶好な環境が生まれる要素がすべてそろっていることで、それが恐らく今後起きるだろう」

昨年の国連報告書は、IS-Kがアフガニスタン国内の拠点である北東部ナンガルハル州で米軍とアフガン政府軍に敗北したため、同国内に戦闘員は2200人しかいないと推計していた。

だが、IS-Kはまだ重大な脅威で、今年5月にカブールで大きな被害が出たテロ攻撃を2件実行したとみられている。そのうち1件は、自動車爆弾と迫撃砲を使った学校襲撃事件で、女子生徒を中心に少なくとも80人の死者が出た。

また国連報告書は、IS-Kがタリバンと米政府が交わした合意につけ込み、自分たちが信頼の置ける唯一のジハード主義運動だとアピールする可能性もあると警鐘を鳴らした。「アフガン和平プロセスにおける(IS-K)台頭の主なリスクは、国内唯一の反抗的なテロ組織として自分たちを売り込む能力、ひいては新たな戦闘員と資金を呼び込める能力にあるかもしれない」と指摘した。

報告書によると、IS-Kは威嚇や暴力での脅し、そして決して実現したことがない高賃金の約束によって戦闘員を確保する一方で、強奪や課税、さらに「おそらく木材や鉱物資源の開発」によって資金を調達してきた。

現地に米国の要員不在

バイデン大統領は、米軍司令官らにIS-Kの「(人的)資源、指導部、施設」を攻撃する計画を立てるよう指示したと述べ、カブールでのテロ攻撃への報復を誓った。だが大統領にとって大きな課題は、現地に米国の要員がおらず、米国の情報活動が妨げられ、タリバンが権力を掌握した状況で、謎めいた組織を追跡することだ。

26日のテロ攻撃の数時間前に、米国と同盟国の情報機関からまとまった警告が出されていた。欧米諸国の政府高官にとっての懸念材料は、カブールの空港近くで攻撃を実行した銃撃犯と自爆テロ犯はタリバンの検問所を通過したに違いないことだ。

英国防省の対テロ部門をかつて率いたチップ・チャップマン退役少将は、これは予期せぬ事態ではなかったと指摘する。過激派組織に対処することを誓ったタリバンの合意にもかかわらず、「内部の人物がいかがわしい取引をする可能性は常に存在する」と話す。

米ニューヨークのシンクタンク、ソウファン・センターのテロ対策専門家であるコリン・クラーク氏は、「オーバー・ザ・ホライズン」と呼ばれる国外拠点からの軍事作戦は、米国は通信傍受などの形で現地に「耳」を持っているかもしれないが、米軍撤退後は「目」を持たないために、実行が複雑になると言う。

「アフガニスタンは週末の間に崩壊し、誰もそれを想定していなかった。情報活動で予想できなかったとすれば、IS-Kのような組織の復活を把握できるとは思えない」

By Andrew England, Helen Warrell and Amy Kazmin

(2021年8月27日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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自爆テロ犠牲の米兵13人、バイデン氏が遺体出迎え
米、アフガン空爆でIS系幹部2人殺害 対テロ強硬姿勢
アフガン、新たなテロ「可能性高く」 バイデン氏
タリバン、外国人の出国確約 日米欧90カ国が共同声明 』

「戦争の効用に疑問」

「戦争の効用に疑問」 米メディア、アフガン撤収で
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN310LH0R30C21A8000000/

『【ニューヨーク=大島有美子】米軍が30日にアフガニスタンからの撤収を完了したことを米主要メディアはトップニュースとして速報した。米国の世論は撤収を支持しており、「戦争の効用に疑問を投げかける結果となった」(CNN)など、約20年続いた米史上最長の戦争に対して批判的な総括が目立った。米兵の死亡や、米軍に協力したアフガニスタン人の退避が間に合わなかったことなどを挙げ、撤収の不手際に対する指摘も上がった。

「緊迫し、混乱した血なまぐさい撤収が終わった」。CNNは「2兆ドルを投じ、約2000人の米兵を犠牲にした戦争は、親(世代)も子供も殺した」と戦争の長さを表現した。戦争を終えてもなお、アフガンに端を発するテロへの脅威に対処できているか疑問が残るとした。

米ブルームバーグ通信は「9月11日に同時テロから20年を迎えるとき、アフガンはタリバンの支配下にあるだろう。2001年に特殊部隊がアフガンに到着した際には想像しなかったことだ」として、想定外の結果に終わったむなしさをにじませた。

米紙ワシントン・ポストは14日以降の約12万人の撤収は「史上最大級の空の移動」としつつも、治安悪化と空港の混乱により、米国人や米軍に協力したアフガン人数千人が置き去りにされた点を今後の懸念として挙げた。

米CBSによると、アフガンでの従軍経験を持つ退役軍人には、アフガンの協力者から「助けてほしい。タリバンに殺される」とのメッセージが毎日届くという。退役軍人は「我々を守ってくれた人が危険にさらされている」と苦悩を語った。

米CBSの世論調査(8月18~20日に実施)によると、米国民の63%が撤収に賛成し、反対は37%にとどまる。

米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは「バイデン米大統領にとってアフガン撤収は20年の大統領選時の公約で、とっくに戦争に飽きていた有権者の支持を幅広く得るものだった」とした。一方で「無秩序な撤収が、始まったばかりの大統領職で最大の外交政策上の危機をもたらした」と、今回の撤収がバイデン政権に与える負の影響も指摘した。

【関連記事】
・米軍、アフガン撤収完了 米最長の20年戦争が終結
・米軍アフガン駐留、失われた「大義」 世論が離反
・安保理決議「アフガン人と外国人の出国保証を」』

米軍アフガン駐留、失われた「大義」 世論が離反

米軍アフガン駐留、失われた「大義」 世論が離反
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN02ENV0S1A700C2000000/

『【ワシントン=永沢毅】バイデン米政権がアフガニスタン戦争を「撤収」という形で終わらせた背景には、もはや戦争の大義が見いだしにくくなっていることがある。戦闘の長期化で米兵の犠牲者が拡大し、戦況の偽装工作も民意の離反に拍車をかけた。歴代政権が先送りを重ねてきた撤退の決断をバイデン氏に迫った。

【関連記事】米軍、アフガン撤収完了 米最長の20年戦争が終結

2001年10月に米英両軍がアフガン空爆を始めた直後、米紙ワシントン・ポストの世論調査によると米国民の94%が軍事行動を支持した。1812年の米英戦争以来となる米本土への直接攻撃に米世論は憤激し、ブッシュ大統領への支持率も93%と空前の高水準を記録した。

「1週間で終わるか、3年かかるか分からない」。ブッシュ氏自身が手探りであることをみとめたアフガン戦争に、米世論はお墨付きを与えた。

11年5月、オバマ政権は「テロとの戦い」の転換点を迎える。パキスタンに潜伏していた同時テロ事件の首謀者、ウサマ・ビンラディン容疑者の殺害成功だ。アフガン戦争の主要な任務の一つをほぼ10年かけて達成し、区切りをつける機会となるはずだった。バイデン政権のアドバイザーも「このタイミングで区切りをつけるべきだった」とみる。

オバマ大統領は撤収目標を達成できなかった=AP

ただ、イスラム主義組織タリバンが勢力を増すなかで現地の治安情勢は改善せず、米軍は駐留を続行した。オバマ政権は自らの任期満了前の16年末としていた撤収目標の見直しを余儀なくされた。後を継いだトランプ政権もマティス国防長官やマクマスター大統領補佐官ら軍人出身の幹部が主導して早期撤収に反対し、むしろ増派を進めた。

当初の米国民の熱狂は消えうせ、関心すら薄れるなかでもはや戦争自体が自己目的化しているかのような様相も呈した。19年末に米紙ワシントン・ポストが報じた米政府の内部報告書で、軍事作戦の成功を装うために歴代米政権が統計データを改ざんしていた疑いが出た。支援資金が「目的もなしに使われていた」との証言もあった。

トランプ大統領は軍人出身の幹部が撤収に反対して増派を進めた=AP

アフガン戦争に関与する4人目の米大統領となったバイデン氏に選択肢はそれほど残されていなかった。撤収に伴う混乱が批判を浴びたが、タリバンによるカブール陥落後も撤収そのものへの支持は高い。米CBSテレビの世論調査(8月18~20日に実施)によると63%が撤収に賛成し、反対は37%にとどまる。

テロとの戦いに力を割かれた米国は中国の台頭を許した。足元ではグローバル化に政府不信も相まって白人労働者層の間で反エスタブリッシュメント(支配層)の機運を醸成し、トランプ大統領誕生の土壌を作った。米国のいまを形作った起点はこの戦争にある。』

米軍、アフガン撤収完了 米最長の20年戦争が終結

米軍、アフガン撤収完了 米最長の20年戦争が終結
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN014VT0R00C21A7000000/

【ワシントン=中村亮】バイデン米大統領は30日の声明で「20年間にわたる米軍のアフガニスタン駐留が終了した」と明らかにした。掃討をめざしたイスラム主義組織タリバンが復権し、米史上最長の戦争は敗走に近い形で幕を閉じた。国際テロ組織がアフガンを拠点に米国本土を再び攻撃するリスクは消えていない。

バイデン氏は声明で、アフガンの首都カブールの空港で米国人やアフガン人の国外退避を支援した米兵に対し「米史上最大の空輸任務を実行した」と謝意を示した。米東部時間31日午後1時30分(日本時間9月1日午前2時30分)にアフガン戦争の終結について国民向け演説を行う。

米軍がアフガンの国外に退避させたり退避を支援したりした米国人やアフガン人などの数は12万3000人に上る。ブリンケン国務長官は30日の演説で「米国の軍事面での戦いは終わった。米国のアフガンに対する新しい関与のチャプターが始まる」と強調した。米国の在アフガン大使館を閉鎖し、カタールの首都ドーハでタリバンとの対話を進めていく。

アフガンでは100~200人の米国人が出国できずに残っていると明らかにした。アフガン戦争で米国に協力したアフガン人について「期限を設けずに彼らとの約束を守る」と断言。退避を望む米国人と並んで退避支援を続けるとした。

タリバンに対して自由かつ安全な移動に関する合意を履行するよう改めて求めた。タリバンが求める経済支援などを念頭に「我々の対応は言葉ではなく行動に基づいて決まる」と指摘し、米国との協力を促した。

一方、タリバン報道官は米軍撤収について「私たちの国は完全な独立を手に入れた」とツイッターに投稿した。タリバンがカブールを制圧して以降、「恐怖政治」が復活するリスクが浮上している。

バイデン氏は4月、約2500人のアフガン駐留部隊を撤収させると表明した。部隊を5800人規模に増やし、米国人に加えてアフガン戦争で米国に協力したアフガン人の国外退避を8月末まで進めると説明してきた。欧州や日本も自国民らを退避させた。

泥沼の戦争を批判的にみる世論に配慮し、バイデン氏はアフガン撤収を貫いた。2001年の開戦直後はテロとの戦いを米国民の大半が支持したが、巨額の戦費や米兵の犠牲を伴う戦争に一般国民は恩恵を感じず熱気は冷めていった。バイデン氏が副大統領を務めたオバマ政権は16年末までの撤収を目指したが、治安悪化を受けて断念していた。

タリバン復権でアフガン民主化の取り組みは失敗に終わった。アフガン戦争を通じて根付きつつあった女性の権利や報道の自由が後退する可能性が高まっている。バイデン氏は軍事力を通じて「国家建設に関与しない」と繰り返し主張しているが、民主主義や人権を重視する外交方針に逆行する。

国際テロ組織の監視が難しくなる公算も大きい。オースティン米国防長官は6月中旬の議会公聴会で、国際テロ組織アルカイダなどが2年以内に米本土への脅威になる恐れがあると証言した。米軍はタリバン復権でこの時期が前倒しになると警戒する。8月下旬には過激派組織「イスラム国」(IS)系勢力が米軍を標的に自爆テロを実行。過激派が勢いづいて、米欧でテロを起こすリスクがくすぶっている。

アフガン戦争は01年9月の米同時テロをきっかけに始まった。アフガンを拠点とするアルカイダがハイジャックした民間機をニューヨークの世界貿易センタービルに衝突させた様子は世界に大きな衝撃を与えた。

当時のタリバン政権はテロの首謀者であるアルカイダのウサマ・ビンラディン容疑者の引き渡しを拒否。ブッシュ政権(第43代)はテロとの戦いを宣言した。北大西洋条約機構(NATO)は北大西洋条約第5条が定める集団的自衛権を史上初めて行使し、米国を支持した。

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・米メディア、アフガン撤収「戦争の効用に疑問」
・米軍アフガン駐留、失われた「大義」 世論が離反
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池内恵のアバター
池内恵
東京大学先端科学技術研究センター 教授

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ひとこと解説 リベラリズムと民主主義を、米国の富と文化の誘惑と、究極的には米軍の人事力による強制力によって、世界に広めるプロジェクトの壮大な挫折として、アフガニスタン介入は記憶されるでしょう。

国の上澄みの何%かを欧米流に染め上げることはできても、草の根のターリバーンはほとんど不変のまま戻ってきた。

カタールに亡命していた政治部門・対外交渉部門が今表に出ていますので、それなりに話が通じるように見えますが、「国内派」「武装闘争派」が今後実際の国内統治を行った時にははるかに厳しい現実が見えてくるでしょう。

2021年8月31日 14:32いいね
19

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中満泉
国際連合 事務次長・軍縮担当上級代表

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別の視点 様々な視点から議論されるアフガニスタン問題。私自身数年深く関わった国であり、色々な意味でまだ衝撃の中にいる。

対テロ、邦人・協力者保護も大事だが、国内ではコロナ危機の中保健医療システムが崩壊の淵にあり、旱魃で農村が疲弊し食糧事情への懸念も大きい。

都市では物価高騰の中預金引き出しができずに混乱が広がる。女性教員数が足りず、女児教育は事実上ストップするだろう。

アメリカの「20年戦争」後のアフガニスタンをどう安定させるのかを考えるべきだ。WHOは今日、パキスタンから輸送機の提供を受けて医療支援を届けた。国連は留まり支援を続ける。困難だが、アフガニスタンの人々にも国際社会の安定のためにも、必要なことだ。
2021年8月31日 11:59いいね
41

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中林美恵子
早稲田大学 社会科学部教授
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貴重な体験談 アメリカが世界の警察官から実際に降りた瞬間といえるだろう。

ウサマ・ビンラディン容疑者殺害から約10年。撤収は先送りされ続けてきた。9.11当日、私は上院予算委員会で公聴会の準備中だった。あの瞬間に財政問題は吹っ飛び、国土安全保障省設立作業が始まり、対テロといえば予算は天井知らずになった。

各人のデスクには星条旗の小旗、数ある窓ガラスには大きな星条旗。政府主催の犠牲者メモリアルサービスではオフィスの皆がTV前に集合し涙した。

その年、中国は好条件でWTOに加盟。米議会ではそれを審議する余裕さえなかった。アフガンの苦い経験が、今後の民主主義と強権主義の闘いにどう活かされるのか。民意の影響も大きい。

2021年8月31日 10:27いいね
60

青山瑠妙のアバター
青山瑠妙
早稲田大学大学院アジア太平洋研究科 教授
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ひとこと解説 アフガンの20年戦争は終わった。

しかしバイデン大統領の撤収政策に批判が集まり、戦争はアフガンの国家建設のためのものではなかったという発言も物議を醸し、政権にとって大きな痛手となった。

今後、アフガンでISISなどの活動が活発化するのは必至で、中東、中央アジア、東南アジア、南アジアの情勢にも影響を与えるだろう。海外で経済活動を展開している日系企業もその動きを注視していく必要がある。

2021年8月31日 7:49 (2021年8月31日 8:39更新)
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59

菅野幹雄のアバター
菅野幹雄
日本経済新聞社 ワシントン支局長・本社コメンテーター
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ひとこと解説 当地の午後4時半すぎにマッケンジー中央軍司令官が記者会見で撤収完了を発表した瞬間が「20年戦争」の終結を告げる歴史的な節目となりました。

ブリンケン米国務長官は直後の声明で米軍の戦いに終止符を打つと同時に「新たな外交面のミッション」が始まったと強調しました。

「終戦」とはいえ、米国の民間人の一部はなおアフガンに残されています。タリバンも相手とした「新たな外交」が本当に機能するのかも不明です。バイデン米大統領が誇らしげに発表するような展開とは程遠い、混乱の結末といえます。

2021年8月31日 7:21 (2021年8月31日 12:35更新)
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慎泰俊のアバター
慎泰俊
五常・アンド・カンパニー株式会社 代表取締役
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分析・考察 アフガニスタンで直前まで活動していた軍人いわく、すでに現地はこの20年とは全く違う国に変わってきたようです。

例えば、こんな出来事が起きているとのことです:タリバンがアフガニスタン人が乗っていた車を止め、全員の荷物をチェック。押収したAさんの携帯電話にアメリカ人の番号が入っていた。その番号にタリバンが電話し、相手が電話に出たため、Aさんはその場で射殺。

2021年8月31日 10:38いいね
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岩間陽子
政策研究大学院大学 政策研究科 教授
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今後の展望 批判は集まっていますが、更なるテロの再発は回避した形で、なんとか作戦を終了させました。

ただ、新しいアフガニスタン政策作成が、ここから始まらねばなりません。

国際社会にとって最悪のシナリオは、内戦の激化とその結果として大量の難民流出。

相対的にましなシナリオは、国内が落ち着き、人道支援が治安が確保された状況で入ることができ、出入国が制御されて安全な形で確保され、アフガニスタンが国際社会からの働きかけにオープンである状態だと思います。

その状況を確保するために、国際社会は、日本は何ができるか考えねばなりません。全く関与をやめて、隔絶された状態のアフガニスタンにはするべきではありません。

2021年8月31日 10:27 (2021年8月31日 10:27更新)
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新井紀子
国立情報学研究所 教授
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分析・考察 アフガン在留邦人・関係者救出では、日本は欧米だけでなく韓国にも大きく遅れを取った。2004年のイラク人質事件から何も学べていないことが残念でならない。

グローバル時代には、外務省が「渡航リスク高」に指定している地域にも、企業やNGO等は人を派遣せざるを得ない。「危険地域に行ったほうが悪い」という紋切型の批判は通用しないのだ。

協力者の安全を保障できない国に、リスクを冒して協力する現地人などいないという現実を知る欧米は、今、コロナより優先順位を上げて本件について議論している。

安全保障について国会で踏み込んで議論する前に、国家としての日本は、今回の撤退の混乱から学ぶべきことが山ほどある。

2021年8月31日 10:12いいね
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峯岸博
日本経済新聞社 編集委員・論説委員

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別の視点 「20年戦争」の終結は日本にとっても重い意味をもちます。米同時テロ発生の翌日に小泉純一郎政権は米国への「強い支持」を表明。テロ特措法を制定し、集団的自衛権論争があった中でインド洋での米艦などへの自衛隊による給油活動に踏みきりました。
テロの翌年には東京でアフガニスタン復興支援国際会議を開催するなどアフガン再建支援に積極的にかかわり、今日まで多額の資金をアフガン支援につぎ込みました。

「20年戦争」が不本意な形で終わり、テロ再燃への不安はむしろ強まっています。日本政府はテロとの戦いとともに、アフガンでの経緯を検証し、グローバル化時代の海外邦人や協力者の救出・保護のあり方を問い直す必要があります。

2021年8月31日 8:07いいね
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米軍、IS勢力への攻撃に「忍者爆弾」使用か

米軍、IS勢力への攻撃に「忍者爆弾」使用か
特殊な「ヘルファイア」ミサイルは着弾寸前に刃が放射状に突出し、標的を切り刻む
https://jp.wsj.com/articles/u-s-used-a-special-hellfire-missile-in-afghanistan-airstrike-on-islamic-state-11630301506

※ これな…。

『【ワシントン】米国防総省は、アフガニスタンで28日実施した過激派組織「イスラム国(IS)」系勢力への攻撃で、爆薬を搭載しない特殊な「ヘルファイア」ミサイルを使用した。カブール空港で先週発生した自爆テロに対する報復攻撃だという。米当局者2人が明らかにした。

 今回の攻撃は、ペルシャ湾岸地域から飛び立った軍用ドローン(無人機)「リーパー」によって行われ、ISのアフガニスタン支部組織と関係を持つ武装勢力2人が死亡、1人が負傷した。

 国防総省は、標的となった人物の身元をいずれも明らかにしていない。ISは、米兵13人とアフガン市民約200人が死亡したカブール空港での攻撃について犯行声明を出している。

 この攻撃で米国が使用した「R9X」と呼ばれるミサイルは、弾薬を搭載しない。爆発ではなく、ミサイルの殻の内側に格納された6枚のブレード(刃)が着弾寸前に放射状に突出し、標的を切り刻む。これにより軍の指揮官は標的をピンポイントで攻撃し、民間人が犠牲になる可能性を減らすことができる。(※ 無料は、ここまで。)』

ステルス機を時代遅れにしたドローン攻撃 : 世界のニュース トトメス5世
https://http476386114.com/2020/01/20/%e3%82%b9%e3%83%86%e3%83%ab%e3%82%b9%e6%a9%9f%e3%82%92%e6%99%82%e4%bb%a3%e9%81%85%e3%82%8c%e3%81%ab%e3%81%97%e3%81%9f%e3%83%89%e3%83%ad%e3%83%bc%e3%83%b3%e6%94%bb%e6%92%83-%e4%b8%96%e7%95%8c/

参勤交代の最大の弊害は国許を顧みない若殿が育ったこと

参勤交代の最大の弊害は国許を顧みない若殿が育ったこと
https://www.nippon.com/ja/japan-topics/c08610/

 ※ この話しも、時代小説読んでると、頻出する…。

 ※ 帝国的統治の要諦は、「分断して統治せよ。」だ…。

 ※ 国侍と江戸侍(定腑(じょうふ)の者)の不仲は、幕府にとっては「シメシメ…。」だったろう…。

 ※ 統治していく上で、最も困難なのは、「被統治者の頭の中」を作り変え、操作することだろう…。

 ※ それが、「国もの」と「江戸もの」の二種類に分かれていたら、やり易かっただろう…。

 ※ それとなく、「競争心を煽って」対抗させることも可能だったろうからな…。

 ※ 「幕府瓦解の危機」が迫っても、藩論は四分五裂…。なかなか「一つにまとまること」は、難しかったろう…。

 ※ 逆に、「討幕運動」及び「御一新」後は、強力に「何らかの求心力のシンボル」を必要とし、「錦の御旗(菊のご紋)」が駆り出されたということも、ありそうだ…。

※ 藤田東湖氏、初めてご尊顔を拝する…。徳川斉昭候(慶喜氏の親父)の「懐刀」と言われた人物だ…。

※ こういうお顔のお人だったんだな…。

『浅野内匠頭は「田舎侍」にあらず

長矩と容保二人に限ったことではない。江戸幕藩体制下の藩主たちは、ほぼ例外なく江戸藩邸で生まれ、江戸で成長した。

藩主は参勤交代によって国許と江戸とを往復するが、妻子は江戸に居住することを命じられていたからだ。人質である。世継ぎは江戸で生まれ、江戸で若殿として養育されるのである。

『忠雄義臣録第三』より。吉良に斬りかかる長矩を描いている。なぜこのような暴挙に及んだかについて、長矩は調べに対し「私的に遺恨あり、前後を忘れ、討ち果たそうと及んだ」と述べたという。藩の存亡、藩士・領民の存在は頭からすっぽり抜けていた。

東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

『忠雄義臣録第三』より。吉良に斬りかかる長矩を描いている。なぜこのような暴挙に及んだかについて、長矩は調べに対し「私的に遺恨あり、前後を忘れ、討ち果たそうと及んだ」と述べたという。藩の存亡、藩士・領民の存在は頭からすっぽり抜けていた。

家督を継いで晴れて藩主の座に就くと、父と同じく国と江戸を行き来し、その子どもはまた江戸で誕生し、江戸で育つ。

参勤交代によってできた奇妙なシステムだ。

何しろ若殿は「お国」を知らない。もちろん江戸家老や側近から特徴や事情は「聞かされて」はいたろうが、実際に「見る」ことなく育つ。このあたり、親の代から引き継いだ選挙区は地方にあるが、東京で生まれ育った現代の2世議員も、全く同じだろう。

こうして育った若殿が、長じて藩主となると、どうなるか?

江戸が好きで、田舎を避けるようになるのは想像に難くない。

日本近世史学者の大石学氏(現東京学芸大学名誉教授)に取材する機会を得た際、大石氏は藩主たちのこの特徴を熱心に語った。藩主たちにとっては、「江戸こそが“ホーム”であり、国許が“アウェー”」だと。

また、史書にもそのような記載が散見されることも説明してくれた。

8代将軍・徳川吉宗に仕えた儒学者の荻生徂徠(おぎゅう・そらい)は自著『政談』で、「(大名たちは)いずれも江戸育ちにて、江戸を故郷と思う人なり」と書いている。

江戸幕府の公式史書『徳川実紀』も、江戸後期の実態をこう綴る。

「妻子をも、みな府内(江戸)に置くことゝなりしかば、封地(領国)にあるよりも、参府(参勤で江戸に行くこと)を楽しむ時情となれり」

冒頭に書いた浅野長矩は、吉良上野介(きら・こうずけのすけ)に「田舎侍」と罵倒(ばとう)され松之廊下で刃傷に及んだといわれるが、長矩は鉄砲洲(現在の東京都中央区)の赤穂藩上屋敷で誕生した正真正銘の都会っ子だったのだ。

『築地八町堀日本橋南絵図』。赤枠の部分が鉄砲洲。青く囲ったあたりに赤穂藩上屋敷があった(嘉永〜文久期の絵図なのですでになくなっている)。鉄砲洲のすぐ左下の赤く塗られたエリアが本願寺で、現在の築地・銀座にほど近い。国立国会図書館所蔵

元禄時代に刊行された大名の評判記『土芥寇讎記』(どかいこうしゅうき)は長矩をこう評する。

「政道は幼少より成長したいまに至るも、家老にまかせきり」

政道、つまり国許の藩政に、長矩は興味もなかったことがうかがえる。

藤田東湖が批判した「定府の人」の性質

一方、江戸かぶれの藩主や、江戸藩邸詰めの藩士たちを、国許はどう見ていたのだろう?

『土芥寇讎記』は、肥前平戸藩の藩士たちについてこう記す。

「江戸詰めは江戸生まれの(国許から見れば)新参者が多く、藩主松浦鎮信(まつら・しげのぶ)は器量良しを好むので容姿端麗の者が多いが、彼らは国許へ行くことを嫌がる」

鎮信は平戸藩初代藩主で、天文18(1549)年生まれ、慶長19(1614)年没。戦国期〜江戸初期の大名だ。全国の大名が江戸に参勤するのは関ケ原の戦い(慶長5 / 1600年)で家康が勝利してからだが、そのわずか14年後には、すでに江戸詰めの藩士は国へ帰ることを嫌がっていたというのである。当然、国許も彼らを嫌っていたろう。

時代はぐっと下って幕末、水戸の烈公・徳川斉昭(とくがわ・なりあき)のブレーンだった藤田東湖(ふじた・とうこ)も『常陸帯』(ひたちおび)で、「定府の人(江戸藩邸の藩士)は水戸の人を田舎者と嘲(あざけ)り、水戸の士は定府の人を軽薄者と謗(そし)り政事の妨(さまたげ)となりぬれば」と述べ、江戸詰めと国許藩士の確執が藩政の妨げになっていると批判している。

さらに、江戸詰めの人の性質は「狡黠」(こうかつ)で、「剛毅朴訥」(ごうきぼくとつ / 意志が強く飾り気がない)の気風を失っていると手厳しい。

水戸藩は定府大名だが、他藩にも同様の批判があったろう。

(左)藤田東湖 / 『水藩人物肖像図』(右)松平容保 /『幕末・明治・大正回顧八十年史』国立国会図書館所蔵

江戸と国許に確執が生じたのは、江戸で消費する藩費が莫大な額にのぼっていたことが原因だったと、前回書いた。そのことに悩んでいさめようとした結果、藩主に疎まれた人物もいた。幕末の会津藩家老・西郷頼母(さいごう・たのも)だ。

頼母が仕えた会津藩第9代藩主・松平容保は、時代劇などでは不器用だが幕府への忠義に厚い「義」の君主として描かれる。だが、領国では別の評価があった。

そもそも容保は美濃高須藩主・松平家の出身である。それが父の弟が治めていた会津に養子として入った。こう書くと、美濃から遠く会津の地に赴いた印象を受けるが、前出の大石氏よると、江戸の四谷(現在の東京都新宿区)にあった高須藩邸から、和田倉門内(現在の同千代田区)の会津藩邸に引っ越しただけだったという。

江戸藩邸では、徳川宗家に絶対的臣従を貫くという会津の家訓を徹底して叩き込まれた。嘉永4(1851)年、数え16歳で初めてお国入りし、翌年に藩主の座に就いた。

幕府への忠義とプライドに満ちた若き殿様には、中央政府での功名心もあった。文久2(1862)年には京都守護代まで拝命し幕末の動乱に身を投じ、江戸藩邸に加えて京都でも、湯水のごとく藩費を使った。

領民は年貢に喘いだ。国許の人々に、容保はどう映ったろう?

家老の頼母がいさめても聞く耳は持たなかった。その後、官軍が会津に侵攻してくると、頼母は白河口の戦いなどの敗戦の責任も負って、追放される。

参勤交代は東京一極集中の源流

江戸(容保の場合は京都でも)で暮らし、国許を知らない殿様の誕生。国を留守にする藩主に従い、都会風を吹かす側近。彼らと国許の間には、修復しようのない溝があった。

参勤交代の最大の弊害は、ここにあった。

決して幕府が強要したことばかりではない。妻子を人質として江戸に滞在させたことに諸問題の原因あったのは事実にせよ、江戸で生まれ育った嫡男に国を顧みる教育をできなかったこと、また、江戸藩邸での支出を抑制できなかったことなど、諸藩にも問題はあった。

問題の根底にあるのは、江戸で味わった華美な生活と、その暮らしを維持しようとする虚栄心、見栄ではなかったろうか。

藩は財政状態を好転させるために、江戸藩邸の経費切り詰めと倹約を模索した。だが、実際に首尾よく運んだのは、上杉鷹山(うえすぎ・ようざん)が藩主の時期の米沢藩など数少ない。

政治の中心も、人もカネもすべて東京に投下される「一極集中」は、江戸時代の参勤交代にその源があったのではないだろうか。

参考資料 / 『近世日本の統治と改革』(吉川弘文館)

シリーズ「参勤交代のウソ・ホント?」は今回が最終回です。ご愛読ありがとうございました。

バナー画像 : 会津藩主の参勤交代行列図。右上に磐梯山、2段目中央に藩主が乗った駕籠がある。東北の“要”を担った譜代大名の行列を忠実に描いた壮麗な作品。江戸時代後期作。会津若松市立会津図書館所蔵

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小林 明KOBAYASHI Akira経歴・執筆一覧を見る

1964年、東京都生まれ。スイングジャーナル社、KKベストセラーズなど出版社での編集者を経て、2011年に独立。現在は編集プロダクション、株式会社ディラナダチ代表として、旅行・歴史関連の雑誌や冊子編集、原稿執筆を担当中。主な担当刊行物に廣済堂ベストムックシリーズ(廣済堂出版)、サライ・ムック『サライの江戸』(小学館)、『歴史人』(ABCアーク)、『歴史道』(朝日新聞出版)など。

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GAFAを作った「01年」 米同時テロ20年と人材吸引力

GAFAを作った「01年」 米同時テロ20年と人材吸引力
本社コメンテーター 中山淳史
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD25C040V20C21A8000000/

『米ニューヨークで起きた同時テロから9月11日で20年になる。

あの日は早朝の当番でマンハッタンにある日本経済新聞の米州総局にいた。「セスナ墜落か」のテロップがCNNテレビに流れたのは午前9時前。しばらくして飛び込んできたのが、2機目の旅客機が世界貿易センタービルに衝突する衝撃の映像だった。

事件から半年間は世界中の都市で航空便が乱れた。効率経営の象徴だった「ジャストインタイム方式」によるモノの流れも滞り、企業には「BCP(事業継続計画)」という言葉が一気に広まった。「挑まれた国家」。米紙ニューヨーク・タイムズに載った記事は今も記憶に鮮明だが、挑戦されたのは米国だけではなく、グローバル化した世界だった。

第一生命経済研究所の永浜利広首席エコノミストは「この20年の世界の変化は多くが同時テロ事件に起因する」と見る。景気浮揚を狙った米国の金融緩和は住宅ブームを経て2008年のリーマン・ショックへの流れを作った。

海外ではアフガニスタン、イラクへと戦線が広がり、今日のアフガン混乱を生んだ。米国の戦費増加は11年の米国債格下げの一因にもなった。

中国のWTO加盟も01年

01年は米国と対立を深める中国が世界貿易機関(WTO)に加盟した年でもあった。中国はこれを機に資本財への積極投資を進め、「世界の工場」と呼ばれるようになる。リーマン危機後の世界経済をけん引したのは中国だった。

この20年をチャンスに変えたのは米国の企業の中にもあった。特に目立ったのがIT(情報技術)大手のGAFAである。

4社が設立されたのは、アップルが1976年、アマゾン・ドット・コムが94年、グーグル(アルファベット子会社)が98年、フェイスブックが04年だ。だが、業績の指数関数的な伸びは00年代初めから半ばにかけて始まる。

決定づけたのは主に2つだ。高速大容量の通信技術の革新を背景にインターネット人口が増加したこと、同時テロでも止まることのなかったグローバル化が一段と進展したことだ。

アップルには中国のWTO加盟も飛躍する要因となった。同社は中国を中心にサプライチェーン(供給網)を世界に広げ、やはり01年に運用が始まった通信規格「3G」も駆って、「iPhone」を07年に生み出す。

iPhoneの供給網は部品の移動距離(延べ)が月と地球を7往復する長さに匹敵するという。中国はそうしたアップルの供給網の拡大と軌を一にして、資本財から消費財まであらゆるモノを自国で内製できる力をつけていく。

最大の消費地でもある中国での動きは、国境をまたぐモノの貿易量の伸びが経済成長率を下回る「スロートレード」の一因をつくった。新興国に輸出して稼ぐ日本などの先進国は大きな試練に直面した。

アップルなど3社、株式報酬を本格支給

GAFAが築いた分業体制、いわゆる「最適化された世界」はモノやカネを超えた領域にも及んだ。ヒトだ。不断の技術革新を実現するには、優秀な人材を世界中から引き寄せ、定着させる必要がある。その「吸引装置」の働きをしたのが、報酬制度だった。

GAFAが毎年、経営幹部だけでなく、従業員にも広く自社株を割り当てていることはあまり知られていない。現金の給与に上乗せする「株式報酬」だ。フェイスブックを除き、アップルなど3社が株式報酬を本格的に支給し始めた時期は、01年ごろだった。

米国ではアップルなど多くの企業が株式報酬を導入しているが日本の大企業ではまだ少ない

企業が1年間に発行済み株式の何%を従業員に与えたかを示す割合を「バーンレート」と呼ぶ。報酬コンサルタントのペイ・ガバナンスによれば、アップルの19年のそれは0.83%。その時点の株式時価総額が100兆円だったとして計算すると、8300億円相当の自社株が、社員に行き渡ったことになる。

投資運用会社、みさき投資の中神康議社長がペイ・ガバナンスの集計値をもとにアップルとソニーの1人当たりの株式報酬を比較している。アップルは8300億円のうち2%が経営幹部向け。98%の従業員向けも役職や成果によって金額は異なるようだが、あえて総額を均等に割って単純平均すると、19年の株式報酬は1人約600万円だ。

一方、その年のソニーのバーンレートは0.26%で、同様に計算すると、株式報酬は1人約6万円。制度の対象は経営幹部が中心とみられるが、アップルと同様に従業員数で割って平均した。

株式報酬は今では多くの米国企業が導入しているが、日本の大手企業の採用例はまだ少ない。導入していても経営幹部向けに限るストックオプション(新株予約権)などの場合が大半だ。

テック人材の約5割が外国人

この差は大きいかもしれない。アップルの場合、時価総額は現在約270兆円に達している。勤続が長い人ほど保有する株の価値も上がったほか、今後も毎年、新たな自社株が支給される。

米カリフォルニア州によれば、シリコンバレーを含む同州北部のハイテク地帯、ベイエリアで働く「テック人材」は約5割が外国人だという。GAFAから競うように広がった報酬制度の吸引効果は絶大だったと言えるだろう。

日本企業はGAFAを超える「最適化された世界」を構築し、大きな成長の波に乗れるのか。重い課題が突きつけられるばかりの20年でもあった。

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中山 淳史

自動車、電機など産業動向、経営トレンドに精通。編集委員、論説委員などを経て2017年2月より現職。「GEと東芝」「移動の未来」などで講演多数。2001年の米同時テロをニューヨーク駐在時に取材。アルゼンチン留学も。

GAFAを作った「01年」 米同時テロ20年と人材吸引力(10:00)
「循環経済」でルールを握れ 欧州が狙う脱炭素の次(18日)』