歴史は終わらなかった?フランシス・フクヤマが語る「2.24後」

歴史は終わらなかった?フランシス・フクヤマが語る「2.24後」
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220725/k10013728891000.html

 ※ 今日は、こんなところで…。

『冷戦終結の後、著作「歴史の終わり」で、政治制度の最終形態は自由民主主義であり、それが広がれば安定した政治体制が作られて歴史は終わる、と発表して注目を浴びたアメリカ・スタンフォード大学の政治学者、フランシス・フクヤマ氏。

「歴史の終わり」の出版から30年。しかし、世界はその後、想定もしていなかったさまざまな波乱に見舞われ、民主主義の力が失われつつある時代に突入しています。

なぜこうした事態が起きているのか?そして、ロシアがウクライナ侵攻を開始した2月24日以降の世界はどうなっていくのか?先月、オンラインでフクヤマ氏にインタビューしました。

(NHKスペシャル「混迷の世紀 取材班」)

「プーチンの戦争」 歴史は終わらなかったのか?
Q.
プーチン大統領がしていることは、冷戦後の国際秩序に対する挑戦ともいえると思います。あなたは「歴史の終わり」で民主主義が世界に広がっていくと記しましたが、歴史は終わらなかったのでしょうか?

フランシス・フクヤマ氏

その答えは、今回の戦争の結果がどのようなものになるかにかかっています。

プーチン大統領がウクライナの大部分を掌握することになれば「権威主義的な国家が残虐行為を通じて力を発揮することができる」ということが証明されてしまいます。それは今後にとって非常に悪い教訓になります。世界中の権威主義的な勢力が、隣国に対してどうふるまうべきか、ある種のモデルを与えることになるからです。

一方、ウクライナが、少なくとも2月24日以降に占領した領土からロシアを追い出すことができれば、民主主義が大きな道徳的な力を持っており、その力によって攻撃に抵抗できるということを証明できると思います。

今回の戦争で、NATOだけではなく日本や韓国を含む世界の民主主義国が驚くほどの団結を示していることに私は注目しています。

アメリカの衰退と民主主義の退潮

Q.
この先の行方は戦争の結果にかかっているという事ですね。
歴史の中の現在をとらえた時に、私たちはいま冷戦後の世界を生きていると思いますか?それとも新たな冷戦の始まりを見ているのでしょうか?

フクヤマ氏

私たちは移行期のただ中にいると思います。

冷戦後はアメリカのパワーに支配されていた時代だったと思いますが、今、振り子は逆方向に振れていて、中国やロシアに代表される権威主義的な政府が力をつけています。

その一因は、近年、アメリカや他の民主主義国が多くの失敗を犯したことにあります。イラク戦争などの外交政策の失敗、リーマンショックに端を発した金融危機による格差や不平等の拡大などがそうした事態を招いています。その結果、世界中の民主主義への支持と連帯を弱めているのです。

私はアメリカの国内問題が、民主主義にとって最も大きな脅威の1つになっていると考えています。ポピュリズムが台頭し、リベラルを支持する人とそうでない人たちの間では分断が激しくなっており、アメリカ政府は首尾一貫した政策をとれなくなっています。そのため国際的な役割を果たせなくなっているのです。

左:2008年金融危機 右:2003年イラク戦争

いま世界では、いくつかの異なる要因が同時に起こっています。

ロシアと中国は権力を強固にして、権威主義的な政治の在り方を他の国に広めてきました。それによって、民主主義社会の中でもポピュリスト運動の高まりがおきていると思います。

ハンガリー、ポーランド、インド、トルコなど、世界の多くの地域で、ポピュリストの政治家が、権力を使って自国の自由主義的な制度、法の支配などを弱体化させています。

そして、残念ながらそうしたことは、自由民主主義の中心だったアメリカ国内でも起きています。今ではアメリカ国民の多くが、自由や民主主義の原則を信じなくなっています。
これまでアメリカは、民主主義国の代表として自分たちが成功した政治・経済体制である、つまり手本であるということを示すことを武器に、外交を進めてきました。

世界の間で、そのような認識が薄れるにつれて、他の国々の間で民主主義への期待が弱まることになるのは当然なのです。

中国の台頭と権威主義の広がり

フクヤマ氏

いま、世界には民主主義の国々と権威主義的な傾向がある国々の間に事実上の分断があるように思えます。アメリカと中国が、それぞれの政治体制の代表です。両国は協力しようとすることもできますが、基本的な価値観の分断があるために、協力できる範囲は制限されるでしょう。

私の中国に対する見方は、この30年で大きく変わりました。

2013年に習近平氏が国家主席になったとき、彼が中国の政治の方向性を大きく変えました。中国の独裁体制が強化され、中国の人たちの個人の自由が大幅に低下しました。

中国はハードパワーとソフトパワーの両方を通じて世界に影響を及ぼしています。

ハードパワーの面では、中国が推し進める経済圏構想「※一帯一路」が、重要な外交政策のプラットフォームです。この一帯一路によって多くの発展途上国を友好国にしており、それらの国々に影響力を発揮できるようになっています。

また中国は、アメリカのようにソフトパワーも持っています。今から15年~20年前に中国からアメリカの私の研究室に来た中国人の学生のほとんどが、中国を最終的にはアメリカのようにしたい、民主主義国家にしたいと言っていたのを覚えています。しかし最近ではそうした中国人はほとんどいません。彼らは自分たちのシステムのほうが優れていると考えています。そして、中国がアメリカのようになることを望んでいないのです。

※一帯一路…習近平国家主席が打ち出した経済圏構想。アジアとヨーロッパを陸路と海上航路でつなぐ物流ルートを作り、貿易を活発化させ、経済成長につなげる。

Q.
中国は世界の自由民主主義への脅威になると思いますか?

フクヤマ氏

すでに脅威になっています。

中国は1997年に、英国が香港を返還するための条件として香港の政治体制を尊重することを約束しましたが、新型コロナのパンデミックの最中に、彼らは実質的にそれらの約束を撤回する香港国家安全維持法を施行しました。

そして今、もともと香港は非常に自由な社会であったのに、独裁を押しつけています。香港の民主化運動の指導者の多くを逮捕し、他の多くの人々を海外に逃亡させました。そして、中国は台湾に対しても同様のことをしようと考えていると思います。

2.24後の世界 どこへ向かうのか?

Q.
この先、権威主義はさらに広がり、民主主義は衰退してくのでしょうか?世界の見通しをどう考えますか?

フクヤマ氏

アメリカの民主主義が衰退してきている中で、中国とロシアは自分たちが提示するシナリオを世界に浸透させてきています。アメリカに代表される民主主義は時代遅れであり、将来を担うのは自分たちであるというシナリオです。

そうした中で、ロシアのウクライナ侵攻は、権威主義的な意思決定が大惨事につながる可能性があることを示したという意味で、重要な教訓になっていると思います。何万人もの人々の死と無意味な破壊、そして人間の自由と命の完全な喪失を招いてしまう可能性が明らかになったのです。

民主主義国の人々は、権威主義はそのような重大な結果を招く可能性があることを、再認識する必要があると思います。

フランシス・フクヤマ氏
Q.
今後の世界はどうなるのでしょうか?私たちは今後も民主主義を享受できるのでしょうか?

フランシス・フクヤマ氏

率直に言って、それは私たちが今日、そして将来に下す決定にかかっています。

民主主義的か権威主義的か、どちらの方向に進んでいくかということは、リーダーや有権者、社会が下す決定にかかっています。そして、その決定がどのように行われるかによって、世界の状況は大きく変わる可能性があると思います。

ですから、世界をより民主的でより自由な方向に導くことができるかどうかは、私たちにかかっているのです。

これからはかつてない地球規模の課題に直面する世紀になります。気候変動は各国の政治に影響を与えるでしょう。アフリカ、インドをはじめ大きな影響を受ける地域で、数多くの難民や移民が生まれることにつながりかねません。

こうした逃れられない課題に対して、新たな解決策が求められる世紀になるのです。

NHKスペシャル 混迷の世紀 「プロローグ “プーチンの戦争” 世界はどこに向かうのか」
2022年7月31日放送

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ボルチモア

ボルチモア
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9C%E3%83%AB%E3%83%81%E3%83%A2%E3%82%A2

『ボルチモア(英語: Baltimore)は、アメリカ合衆国のメリーランド州にある同州最大の都市。どの郡にも属さない独立都市である。ボルティモアとも表記する。古くから天然の良港として知られ、1729年に南部産タバコの輸出港として開かれて発展した。首都であるワシントンD.C.の外港としての機能を有する大西洋で極めて重要な港湾都市であり、2020年にイギリスが発表した「グローバリゼーションと世界都市研究ネットワーク」(GaWC)ではガンマ+の都市に評価されるなど、東海岸の世界都市に数えられる。』

 ※ 一部省略。以下は、抜粋。

『歴史

詳細は「ボルチモアの歴史」を参照

アメリカで最も古い都市の1つであり、1729年に誕生した。南北戦争の舞台にもなり、国歌や星条旗もこの地で生まれた。1830年に全米で初めてボルチモア・オハイオ鉄道(B&O)が開通した。魚種の豊富な優れた漁港として知られたが、ペンシルベニア炭田の開発により工業が発展し、後に造船・鉄鋼などで財政を潤し、また貿易港として発展し、ピークには人口100万人に迫る勢いを見せた。 』

『治安

1960年代から施設の老朽化と主産業の構造不況によって中心地から人口が流出し、スラム街が発展し、治安の悪化が進んだ。そこで市は30年にもわたる再開発計画を実施、これはウォーターフロント開発の先駆ともいわれている。とりわけインナーハーバーの一新を図り、工業、貿易とともに多数のレジャー施設を建設した。インナーハーバーには大型ショッピングセンターや全米屈指のボルチモア国立水族館、海洋博物館などがあり、活況を呈している。一方、肝心の中心地の空洞化は依然として深刻で、治安改善はさほど進んでいない。

2019年7月にドナルド・トランプ大統領は、「(ボルチモアは)全米一危険で、どんな人間も住みたがらない」と批判した。これはボルチモアを地盤とするトランプ批判の急先鋒であるイライジャ・カミングス下院議員を罵倒する中の発言であったが、市の黒人の人口比率が50パーセントを超え、犯罪率も全米3位の高さを見せていた背景もあり、人種差別であるとして物議を醸すこととなった[1][2]。 』

『地理

ボルチモアはアメリカ東海岸のチェサピーク湾から遠くないパタプスコ川(英語版)沿いに位置し、メリーランド州の北部中央部の一部である。

アメリカ合衆国統計局によると、この都市は総面積238.5km2(92.1mi2)である。このうち209.3km2(80.8mi2)が陸地で29.2km2(11.3mi2)が水地域である。総面積の12.240%が水地域となっている。 』

『人口動勢
ボルチモア市
年代別人口 [1]

1790年 – 13,503人
1800年 – 26,514人
1810年 – 46,555人
1820年 – 62,738人
1830年 – 80,620人
1840年 – 102,313人
1850年 – 169,054人
1860年 – 212,418人
1870年 – 267,354人
1880年 – 332,313人
1890年 – 434,439人
1900年 – 508,957人
1910年 – 558,485人
1920年 – 733,826人
1930年 – 804,874人
1940年 – 859,100人
1950年 – 949,708人
1960年 – 939,024人
1970年 – 905,759人
1980年 – 786,775人
1990年 – 736,014人
2000年 – 651,154人

1830年代・1840年代・1850年代のアメリカ合衆国の国勢調査において、ボルチモアは全米の人口で2番目に大きな都市であった。また、1980年代の国勢調査よりそれぞれの国勢調査で全米の人口でベスト10位以内に入った。しかし1950年代から1970年代をピークにその後は人口が年々減少しており[3]、2000年現在の国勢調査[4]では、この都市は人口651,154人、257,996世帯及び147,057家族が暮らしている。人口密度は3,111.5/km2 (8,058.4/mi2) である。1,435.8/km2 (3,718.6/mi2) の平均的な密度に300,477軒の住宅が建っている。この都市の人種的な構成は白人31.63%、アフリカン・アメリカン64.34%、先住民0.32%、アジア1.53%、太平洋諸島系0.03%、その他の人種0.67%および混血1.47%である。人口の1.70%はヒスパニックまたはラテン系である。

ボルチモアは半世紀近くにも渡って人口減少が続いていたが、2012年は人口が1430人増加、2013年は313人の微減となっており、市は人口減少は下げ止まったと見ている[3]。

この都市内の住民は24.8%が18歳未満の未成年、18歳以上24歳以下が10.9%、25歳以上44歳以下が29.9%、45歳以上64歳以下が21.2%および65歳以上が13.2%にわたっている。中央値年齢は35歳である。女性100人ごとに対して男性は87.4人である。18歳以上の女性100人ごとに対して男性は82.9人である。

この都市の世帯ごとの平均的な収入は30,078米ドルであり、家族ごとの平均的な収入は35,438米ドルである。男性は31,767米ドルに対して女性は26,832米ドルの平均的な収入がある。この都市の一人当たりの収入は16,978米ドルである。人口の22.9%および家族の18.8%は貧困線以下である。全人口のうち18歳未満の30.6%および65歳以上の18.0%は貧困線以下の生活を送っている。 』

ナンシー・ペロシ

ナンシー・ペロシ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8A%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%9A%E3%83%AD%E3%82%B7

『ナンシー・パトリシア・ペロシ[注 1](英語: Nancy Patricia Pelosi、旧姓ダレサンドロ(D’Alesandro)、1940年3月26日 – )は、アメリカ合衆国の政治家。第60・63代アメリカ合衆国下院議長。民主党所属で、サンフランシスコの5分の4を含むカリフォルニア州第8区から選出されている。アメリカ合衆国史上最初の女性の下院議長であり、イタリア系アメリカ人としても最初である。』

『来歴

メリーランド州ボルチモア出身。父親はメリーランド州の下院議員とボルチモア市長を務めたトーマス・ダレサンドロ・ジュニア(Thomas D’Alesandro Jr.)。1963年9月、ポール・ペロシと結婚[1]。夫はのちに実業家として大きな成功を収める[2]。5人の子供を育てた。

1987年、下院議員選挙に民主党から立候補し初当選。カリフォルニア州サンフランシスコなどを選挙区とし、11回当選を果している。2003年、リチャード・ゲッパートの引退に伴い当時少数党だった下院民主党のリーダーである下院院内総務となった。

2006年の中間選挙で民主党が下院で過半数を獲得したことにより、2007年1月、ペロシは女性として初[注 2] の第60代下院議長[注 3] に就任した[注 4]。以後2008年の大統領選挙における民主党勝利、連邦議会選での躍進まで、大統領選に勝利したオバマと並んでブッシュ政権末期における民主党躍進の象徴的存在の一人であった。

しかし2010年の中間選挙にかけてオバマ政権の支持が低迷するに従って、リベラルな信条を優先して雇用問題を軽視した元凶として批判を浴びるようになり、対立野党の共和党のみならず民主党内からも批判を受けるなど、この批判が本選挙での下院民主党の苦戦を招く一因となった[3]。その中間選挙において民主党は、下院では60議席以上を失う歴史的大敗を喫して過半数を失い、下院多数党の地位を共和党に明け渡すこととなった。これにより、ペロシ自身も2011年1月に開かれる新しい連邦議会(第112期合衆国連邦議会)では、下院議長の座を共和党のジョン・ベイナー院内総務に譲り退任することが確実となった。歴史的に見て、下院議長を務めていた議員は自ら出身政党が選挙に敗北し少数党となった場合、多くは一介の議員に戻っており[注 5]、引き続き院内総務やナンバー2の院内幹事[注 6] など下院少数党指導部の要職を務めるケースは非常に稀であったが[注 7]、ペロシは第112期連邦議会でも院内総務を務める意欲を示して院内総務選挙に立候補し[4]、2010年11月17日の下院民主党議員総会において行われた選挙で当選を果たした[5]。2015年旭日大綬章受章。

2018年12月、2019年1月から始まる第116議会での8年ぶりの下院議長復帰に向けてリーダーシップの長期化や高齢化を懸念する反対派と任期を最大2期4年と上限を設定することや民主党下院の指導者の任期を通常3期(最大4期)に制限することなどで合意した[6]。

2020年のアメリカ大統領選挙で、民主党候補であるジョー・バイデン前副大統領への支持を表明した[7]。2021年1月3日、第4期目の下院議長に選出された。

同性愛者の人権を訴える行進に参加(1987年、ワシントン)

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バラク・オバマ大統領と(2009年2月12日)

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ポーランドのエルビエタ・ウィテク下院議長と(2020年3月3日)

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ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領、ドミトロ・クレーバ外相らと(2022年4月30日)[8]

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領、ドミトロ・クレーバ外相らと(2022年4月30日)[8]

主要政策

内政政策

ペロシは中絶や同性婚を擁護するリベラル派とみられている。また、2002年の「対イラク戦争容認決議案」には反対票を投じている。経済政策では石油関連企業向け優遇税制の見直し、中産階級向け減税、又1997年以来時給5.15ドルに据え置かれている最低賃金の引き上げなど、格差是正を主張している。後述の中国ほどでないがベトナム社会主義共和国政府がベトナム共産党の一党独裁の体制の下で反体制派、宗教活動家、民主運動家らを弾圧している事にも批判しており、これによりペロシは共産主義独裁体制には批判的と言える。2008年12月のイスラエルによるガザ空爆では「米国は友好的民主国家を力強く支えるべきだ」と主張し空爆を支持、親イスラエル姿勢を強調した。
対中政策

ペロシは中華人民共和国政府の人権抑圧政策に厳しい態度をとっており、天安門事件やチベット動乱における中国政府の行為を強く批判しているため、民主党内では最も中国に厳しい議員の一人とも言われている。1991年の訪問で天安門広場で「中国の民主化のために犠牲になった人たちへささぐ」と中国語と英語で書かれた幕を掲げ、天安門事件の弾圧を批判したことがある。2008年は中国の人権問題を理由に、ジョージ・W・ブッシュ前大統領に北京オリンピック開会式の出席をボイコットするよう迫った。2009年の訪中の際にペロシの前に数十人の陳情者が「ペロシ、中国の人権に関心を持って」などと共産党の腐敗を訴えたが警官に拘束される場面を目撃しており[9]、さらに清華大学で講演を行ったが、中国の人権問題に関する言及はなかった。2009年にダライ・ラマ14世の訪米の際にオバマ大統領は会談を見送ったが、ペロシは下院外交委員長を務めた故トム・ラントスにちなんで創設された人権賞を贈った[10]。

2019年6月12日、香港で逃亡犯を中国本土に引き渡す条例の改正案(2019年逃亡犯条例改正案)をめぐり大規模なデモが発生したことに触れ、一国二制度の枠組みの中に十分な自治権が存在するか再評価する法案の提出を議会に呼び掛けた[11]。

2021年5月、ペロシは新疆ウイグル自治区の人権侵害問題を取り上げる中で「北京冬季五輪を各国首脳は欠席するべき」とする外交的ボイコットを提唱。これにアメリカ政府も同調[12]し、オリンピックとパラリンピックに政府関係者を出席させない方針を採った。こうした対応について、中国外務省は「スポーツの政治化は五輪精神に反し、すべての国のアスリートの利益を損なう」と述べ非難した[13]。
対日政策〜広島訪問

2008年9月2日には広島市で行われたG8下院議長会議のため訪日し、参加各国議長とともに平和記念公園の原爆死没者慰霊碑に献花を行った。これまで同慰霊碑に献花を行った現職の米要人としては過去最高クラスの人物である[注 8]。さらに各議長は広島平和記念資料館を訪れ、被爆者の体験談も聞いた[14]。バラク・オバマの広島訪問に対しては「大統領を誇りに思う。核兵器の拡大を防ぐために指導力を発揮している」と高く評価した。
対ロシア

2022年5月1日、、ロシアによる侵攻が続くウクライナを訪問。キーウでゼレンスキー大統領と会談し、ウクライナへの支持を表明した[15]。なお同年前月にはブリンケン国務長官、オースティン国防長官が同様にウクライナを訪問して大統領と会談を行っていた[16]。
エピソード

2020年のトランプ大統領の一般教書演説で、終了後即座にトランプ大統領から渡された原稿を破り捨てた[17]。
2020年7月、何者かがフェイスブックとYouTube上に、ペロシの音声を改変した記者会見ビデオを投稿。フェイスブック側は「部分的に虚偽」との警告を出し、YouTube側は映像そのものを削除した[18]。
2020年8月31日、地元のサンフランシスコでマスクを着用していないまま美容院の店内に入り、サービスを受けたことが発覚。サンフランシスコでは、新型コロナウイルス対策によるロックダウン措置の一環として、美容室の屋内での営業は禁止されていた[19][20]。
2021年1月8日、2020年の大統領選で負けたトランプ大統領の精神状態を不安視し、トランプ大統領が核兵器を使った攻撃命令を出すことなどを防ぐためとしてマーク・ミリー統合参謀本部議長と協議した[21]。』

米中首脳電話会談――勝敗は「ペロシ下院議長の訪台」次第

米中首脳電話会談――勝敗は「ペロシ下院議長の訪台」次第
https://news.yahoo.co.jp/byline/endohomare/20220730-00307944

『7月28日夜、習近平・バイデンの電話会談があったが、米中の勝敗と今後の世界のゆくえはペロシ下院議長が訪台するか否かで決まる。中国があれだけ抗議した中で行われたからだ。

◆ペロシ下院議長の訪台に対する中国側の尋常ではない抗議

 ペロシ米下院議長が台湾を訪問する予定があると最初に報じたのはイギリスのフィナンシャル・タイムズで、7月18日のことだった。すると翌19日の定例記者会見で中国外交部の趙立堅報道官は直ちに反応し、「断固として反対する」と激しい顔で叫んだだけでなく、その後も複数回にわたって抗議を表明し、しまいには「可能な限りの無慈悲な懲罰を与えると思え」という趣旨の言葉を使うようになり、抗議表明がエスカレートしていった。

 抗議をしたのは外交部だけではない。

 中国国防部の報道官までが<もしペロシが訪台すれば、中国の軍隊は絶対に座視しないと思え>と宣告し、「レッドラインを超えるな」という勢いだった。

 国防部までが抗議表明したのは、相当に危険領域に入っているという事態を表している。

 一方、7月20日、バイデン大統領は記者会見でペロシの訪台に関して聞かれ、「軍(国防総省)があまり賛成していない」という趣旨のことをムニャムニャと言葉を濁しながら言っている。

 電話会談が始まる前の7月27日のBloombergは、ペロシのアジア訪問には、日本、インドネシア、シンガポールへの訪問が含まれる予定だが、台湾訪問の可能性は、公式の旅程から外れたままであると関係筋が述べていると書いている。ペロシ自身は「安全上の懸念を理由に」旅行スケジュールについて公表することを避けているという。

 多くのメディアは、ペロシが訪台すると、これは1997年に共和党のギングリッチ下院議長が訪台して以来のこことなると報道しているが、中国の元政府高官を取材したところ、ギングリッチの場合は、きちんと北京を訪問して、「挨拶」をした上で台湾を訪問しているので、「こんなことは初めてだ!1997年の情況とはわけが違う!」と立腹している。

 調べてみると、たしかにギングリッチの場合は1997年3月29日に江沢民国家主席に会い、同じ日に李鵬首相にも会っていて、その上で3月30日に東京に向かい、その後、4月2日に台北に行って李登輝総統に会っている。

 したがって、中国政府の元高官が言う通り「わけが違う」のかもしれない。

 今般は、このような中で行われた米中首脳電話会談なので、一つの可能性として考えられるのは、水面下で「ペロシ訪台をやめた」とアメリカ側が譲歩したからこそ習近平はバイデンと電話会談することを承諾したのかもしれないことが考えられる。しかし、もうひとつには、ペロシは下院議長としてバイデンの指令下にはない独自の決定権を持っているので、あるいは29日にワシントンを出発したと言われているペロシのアジア歴訪は、「台湾」を含んでいる可能性も、完全には否定できない。

 となると、米中首脳電話会談の勝敗は、「ペロシ下院議長の訪台」如何(いかん)にかかっているということになる。

 つまり、会談前に「ペロシの訪台を取り下げなければバイデンとは会談しない」と習近平が突っぱねたのであれば、この時点で条件闘争において習近平の勝ちだし、ここまで抗議したにも拘(かか)わらず、結局ペロシが訪台するとすれば、習近平のメンツは丸つぶれになるということだ。

◆中国側が発表した米中首脳電話会談の内容

 7月29日の00:05に中国外交部が発表した電話会談の内容によれば、米中首脳は双方の懸念事項について率直なコミュニケーションと交流を行ったとのこと。

 習近平は、「世界の混乱に直面して、国際社会と国民は、中国とアメリカが世界の平和と安全を維持し、世界の発展と繁栄を促進する上で主導的な役割を果たすことを期待している」と述べた上で、以下のようなことを言っていると報道している。

 ●戦略的競争という視点から米中関係を定義し、中国を最大のライバルとみなすことは誤算を生み、中国の発展を誤読することにつながる。双方は、あらゆるレベルのコミュニケーションを維持し、既存のコミュニケーションチャネルをうまく利用して、協力をこそ促進するべきである。

 ●現在の世界経済情勢は困難を極めており、米中はグローバル産業のサプライチェーンの安定性を維持させ、世界のエネルギーと食糧安全保障の確保など、主要な問題についてコミュニケーションを維持すべきだ。ルールに反して意図的に連鎖を断ち切れば、アメリカ経済にも災いをもたらし、世界経済をより脆弱にさせるだろう。

 ●特定の地域の熱くなった問題点を煽るのではなく、その温度を下げるために努力すべきで、コロナと経済衰退のリスクを下げるべく国連を中核とする国際システム及び国際法に基づく国際秩序を維持するよう支援すべきである。

 ●台湾問題に関する中国の原則的立場を重視すべきだ。台湾海峡の両側が「一つの中国」に属するという事実と現状は明確であり、「一つの中国」原則は中米関係の政治的基盤だ。 我々は、「台湾独立」という分裂と、外部勢力の干渉に断固として反対し、いかなる形態の「台湾独立」勢力にもいかなる余地を与えない。台湾問題に関する中国政府と中国人民の立場は一貫しており、中国の主権と領土の一体性を断固として守ることは、14億人以上の中国人の確固たる意志である。もし中国の民意に逆らって火遊びをすれば、大やけどを負うことになるだろう。

 これに対してバイデンは、以下のように述べたという。

 〇米中協力は、両国の国民だけでなく、すべての人々にも利益をもたらす。アメリカは中国との円滑な対話を維持し、相互理解を促進し、誤解を回避し、利益を共有する分野で協力し、相違を適切に管理したいと考えている。

 ○私は、アメリカの「一つの中国」政策が変わっていないこと、また、アメリカが台湾の「独立」を支持していないことを改めて述べたいと思う。

 その上で両首脳はウクライナ危機などについても意見交換を行い、習近平は中国の原則的立場を改めて表明した。両首脳は、この電話は率直で深く、今後もコミュニケーションと協力を継続するために、連絡を取り合うことに同意したと、中国外交部は報道している。

◆アメリカ側が発表した米中首脳電話会談の内容

 アメリカ時間7月28日、ホワイトハウスは米中首脳会談に関する内容を以下のように発表した。その概略を示す。

 ○バイデン大統領は本日、中華人民共和国の習近平国家主席と会談した。この呼びかけは、米中間のコミュニケーションを維持し深め、責任を持って私たちの違いを管理し、私たちの利益が一致する点では協力するというバイデン政権の努力の一環である。

 ○この呼びかけは、3月18日の2人の指導者の会談と、米中両国高官の間の一連の会話に続くものだ。両首脳は二国間関係やその他の地域的および世界的な問題にとって重要なさまざまな問題について話し合い、特に気候変動と健康の安全に取り組むために、今日の会話をフォローアップし続けるようチームに命じた。

 ○台湾について、バイデン大統領は、「アメリカの政策は変更されておらず、アメリカは、現状を変更させる一方的な動きや、台湾海峡の平和と安定を損なうことに強く反対する」と強調した。

◆ペロシの動きに関して

 7月29日に行われた中国外交部定例記者会見において、記者が「米中首脳会談中にペロシ下院議長訪台に関する話題は出ましたか?」と質問したのに対して、趙立堅報道官は「皆さんご存じのように、このたびの電話会談はペロシ下院議長が訪台を計画しているという背景の下で行われたのだ」と回答し、質問をはぐらかした。

 アメリカのペンシルバニア州にいる友人からメールが来て、ペロシはもう82を過ぎていて年齢的に次はないので、自分の後継者に関してバイデンに圧力をかけるため、嫌中行動を強行しようと、一種の交換条件を提示しているという要素があると知らせてきた。

 次期政権がバイデンになるとは限らないし、バイデンの支持率が低迷しているので民主党が勝つとは限らないのではないかと聞いたところ、「ペロシは自分の夫がNVidiaの株を購入することに関してインサイダー取引があったのではないかという批判を浴びている(すなわち、アメリカでのCHIPS法案が成立する直前に株を購入してぼろ儲けをしている)ので、その批判をかわすためにバイデンや民主党に対して利益交換をしているとも言われている」と教えてくれた。

 加えて、ペロシが呼び掛けた訪台代表団に関しては、少なからぬ議員が「都合が悪いので」などと言い訳をして断っているという情報も飛び交っている。

 あるいは、バイデンとしては、習近平には「台湾独立を支持しない」と言いながら、ペロシ訪台に関しては下院議長としての意思決定なので、自分にはどうしようもないとして逃げる可能性もなくはない。

 そうは言っても現実問題として、ウクライナ戦争を仕掛けたバイデンとしては、ウクライナに何としても勝ってもらわないと困るが、アメリカのLNG(液化天然ガス)産業関係者と武器製造業者だけはぼろ儲けしていても、物価高騰などによりアメリカ経済は疲弊しているので、ここに台湾衝突が加われば対処しきれず、中間選挙も大統領選も失敗する可能性が高くなるので、ペロシの訪台はバイデン政権にメリットをもたらすとは思えないという側面は否めない。

 あと数日で趨勢は決まるだろう。

 この視点でゆくえを見守っていきたい。
遠藤誉
中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士

1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。日本文藝家協会会員。著書に『もうひとつのジェノサイド 長春の惨劇「チャーズ」』、『ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略』、『 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』、『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。』

ロシア人(民族)の人口比率

ロシア人(民族)の人口比率
http://dvor.jp/russkie.htm

『旧ソビエト連邦では全人口の約半数をロシア人が占めていました。ソ連解体後のロシア連邦では、領土が縮小した分、ロシア人の全人口に対する構成比率は高まり、その割合は全人口の約80%と言われています。

2002年10月9日の国勢調査結果では、全人口1億4517万人のうちロシア人は1億1589万人を数え、79.8%を占めていることが判りました。しかしロシア連邦には21の民族共和国があるように、様々な民族地域を領内に抱えており、ロシア人の分布は一様ではありません。
この国勢調査結果によると、ロシア人の人口は中央連邦管区の各州で90%以上の「純ロシア地域」を形成する一方で、南連邦管区の北カフカス諸共和国では少数派のところが多く、特にイングーシ共和国では僅か1%を数えるに過ぎない少数民族となっています。

では、このような民族共和国では一様にロシア人が少数派になっているのかと言えばそうでもなく、ハカシア共和国の80%、カレリア共和国では77%、ブリャート共和国でも70%がロシア人によって占められています。』

具体的な動きが出てきたロシア分割論 : 机上空間

具体的な動きが出てきたロシア分割論 : 机上空間
http://blog.livedoor.jp/goldentail/archives/29303919.html

『ロシアを少数民族単位で分割して、34の国家に割るという要望を提案する「ロシア自由国家フォーラム」が開催されました。フォーラムですから、具体的に要望を通す後ろ盾があるわけでもなく、単に各民族の代表者が集会を開いて、一つの案を提唱したというだけですが、いよいよロシア分割案というものが、現在ロシアに含まれている地域からも、持ち上がってきました。

この背景には、ロシアが提唱する共産主義の理想に反して、実はスラブ民族が一級市民扱いされる一方で、領土内の他民族が差別されている現実があります。もともと、共産主義は思想で繋がった市民の連携が建前なので、宗教・民族による差別が無く、世界市民というくくりで平等に国民が暮らす国家を提唱しています。

しかし、現実は、酷いもので、今回の戦争で先鋭化しましたが、最前線に送り込んで突撃させるのは、地方から招集してきたスラブ民族以外の他民族です。実際、戦争中でも、モスクワに住んでいる市民は、普段と変わりなく生活し、撤退したマクドナルドのハンバーガー店では、事業を引き継いだロシア企業が売っているマックモドキを、普通に談笑しながら、頬張っています。戦時下で、スローガンやプロバガンダは増えましたが、物価が上昇して、物不足が進んだ以外、戦争を感じさせる雰囲気は皆無です。

しかし、戦果を出す為に、ろくな装備を与えられず、毎日のように突撃をやらされているロシア軍の他民族部隊は、多くの戦死者を出しています。ロシア国内で、戦争が余り問題にならないのは、死んでいるのが、スラブ人ではなく、それ以外の周辺地域のイスラム教徒だったり、他民族だからです。つまり、死んでも文句が出ない人間を弾除けに使っています。

これで、不満が出ないわけもなく、今までは、少なくても中央政府から、資金の援助があったので、従っていた地方の人々も、金の切れ目が縁の切れ目というわけで、反抗する動きが出てきています。金もくれない、不平等を押し付け、搾取をするなら、ロシアという国家に従属する必要は無いと考えても、当然です。そして、スターリン時代に貪欲に取り込んだ民族単位で、ロシアを分割すると、34の地域になるという事なのです。

国を構成するには、最低限のリソースが必要なので、この案は非現実的ですが、「ロシア5分割案」というのは、かなり昔からあります。ロシアを弱体化させるのに、国家分裂させるというのは、当然ながら思い浮かぶ方法で、一定の支持を集めていました。で、ロシアが国際法を無視した傍若無人を続けるなら、国連の常任理事国から追い出して、国家を分割する事で、発言権を無くすという選択肢も、本当に薄い影に過ぎませんが、動きとして出てきたという事です。

何かと国家の歪を最終的に押し付けられて、未だに水道も下水も、下手すると電気すら通じていない地方の貧しい他民族は、ロシアに従属している意味が無いんですね。逆らうと、迫害されるので、文句を言っていないだけです。この戦争で、ロシアの権威が失墜すると、そうした民族の独立の動きは、確実に出てくると思われます。

実際、ロシアに金が無いかと言うと、オリガルヒと呼ばれる経済貴族は、宮殿のような家に住み、どこに出かけるにしても運転手付きの高級車で移動し、海外に別荘を何棟も所有し、クルーザーやプライベート・ジェットも持っています。つまり、共産国と言いながら、冨の独占と貴族が存在しているのです。その格差は、アメリカにも負けていません。むしろ、酷いかも知れません。一応、アメリカは、行政の貧困者向けの救済制度がありますからね。フードスタンプは、食費も稼げない人達向けに、無料で食券を配る制度です。

想念の中にだけ存在する、平等で博愛な理想国家なんて、厳しい現実の前では、クソの役にも立たないという事です。』

パウエル議長の一言の破壊力 : 机上空間

パウエル議長の一言の破壊力 : 机上空間
http://blog.livedoor.jp/goldentail/archives/29298299.html

『日本時間で昨日の早朝に、FRB議長であるパウエル議長の米国政策金利についての発言があったのですが、これが、ものすごい破壊力で、市場の流れを変えています。政策金利自体の発表は、日本時間で明朝の3時にありました。ポイントは、0.75の利上げ。これは、市場が予想している範囲を出ていなかったので、円安は進行するどころか、少し後退しました。とは言え、日本円との金利差は開くので、円高に動いたと言っても30pipsくらいです。

問題は、その30分後に話された、パウエル議長の発言です。基本的には、各種経済指標を検討して、慎重に事を進める。予め方針を決めて、その通りに動くような事はしない。その時々の情勢で、どんな選択肢も取りうるという、何とも慎重な展開だったのですが、最後に付け加えた一言で、世界のマーケットが動きました。「今後、インフレが落ち着けば、利上げのペースを落とす。アメリカ経済は、依然として頑強であり、失業率も低い。まだ、利上げには耐えうる」という「見解」を示しただけなのですが、これで、ニューヨーク・ダウは、500ドル以上跳ね上がり、円高が2円進行しました。今現在では、4円も円高ドル安になっています。債券市場も活況を呈して、断続的に買いが入り、海外ヘッジファンドと日銀の間で繰り広げられていた戦いは、逆回転が入って、ほぼ海外ヘッジファンドの負けが確定しました。

日本国債の金利は、0.175%と、防衛ラインの0.25%を大きく割り込み、恐らく日本国債に売り圧力をかけていた海外ヘッジファンドは、神風に翻弄されたモンゴル帝国の侵略軍並にパニック状態になっていると思われます。いや、実際、個人で日本国債の売りに張っていた投資家は、屍累々だと思います。既に、発表前で、ほぼ決着が着いていた日銀と海外ヘッジファンドとの戦いですが、完全にトドメを刺しにきてますね。海外ヘッジファンドは、ものすごい損失を出したと予想されます。

この動きを、どう解釈するかは、人それぞれでしょうが、現代の世界経済が、いかに実態とかけ離れて、感情で動いているかを示す好例と思われます。米ドルは基軸通貨ではありますが、その金利に対して、政策金利の責任者が「見解」を述べただけで、債権・株・通貨レートで、合わせて何十兆円の資金が、動くのです。

具体的にアメリカのインフレが鈍化しているという経済指標は、何ひとつ出ていないので、今後もドルの政策金利は上がり続ける可能性が高いのですが、まるで年初からのサイクルが逆転したかのような動きです。言ってしまえば、今の株高は、フェイクになるかも知れないという事です。次回のFRBの政策金利の発表は、9月になるのですが、ここで0.75ポイントの金利引き上げが続くようならば、更に逆回転して、今度は株安に転換する可能性もあります。つまり、相場が不安定で危険な状態です。

うまく乗れた人は、この数日で、大儲けしたでしょうが、逆に大損した人も出ているでしょう。経済を取り巻く客観的な環境から見て、この相場の動きは、余りにもイレギュラーです。いやぁー、怖い。怖い。今の円高基調は、単なる短期のトレンドで終わるかも知れませんが、この勢いだと、130円/ドルを切って、125円辺りまで円高が進むかも知れません。しかし、冷静な目で環境を見ると、その後にまた円安に進むでしょうねぇ。だって、何一つインフレ解消の具体的な根拠が出ていないのですから。』

学問のすすめ 福沢諭吉

学問のすすめ 福沢諭吉
https://www.aozora.gr.jp/cards/000296/files/47061_29420.html

『「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」と言えり。

されば天より人を生ずるには、万人は万人みな同じ位にして、生まれながら貴賤上下の差別なく、万物の霊たる身と心との働きをもって天地の間にあるよろずの物を資り、もって衣食住の用を達し、自由自在、互いに人の妨げをなさずしておのおの安楽にこの世を渡らしめ給うの趣意なり。

されども今、広くこの人間世界を見渡すに、かしこき人あり、おろかなる人あり、貧しきもあり、富めるもあり、貴人もあり、下人もありて、その有様雲と泥との相違あるに似たるはなんぞや。

その次第はなはだ明らかなり。

『実語教』に、「人学ばざれば智なし、智なき者は愚人なり」とあり。

されば賢人と愚人との別は学ぶと学ばざるとによりてできるものなり。

また世の中にむずかしき仕事もあり、やすき仕事もあり。そのむずかしき仕事をする者を身分重き人と名づけ、やすき仕事をする者を身分軽き人という。

すべて心を用い、心配する仕事はむずかしくして、手足を用うる力役はやすし。

ゆえに医者、学者、政府の役人、または大なる商売をする町人、あまたの奉公人を召し使う大百姓などは、身分重くして貴き者と言うべし。』

 ※ 中、略。

『学問とは、ただむずかしき字を知り、解し難き古文を読み、和歌を楽しみ、詩を作るなど、世上に実のなき文学を言うにあらず。

これらの文学もおのずから人の心を悦ばしめずいぶん調法なるものなれども、古来、世間の儒者・和学者などの申すよう、さまであがめ貴むべきものにあらず。

古来、漢学者に世帯持ちの上手なる者も少なく、和歌をよくして商売に巧者なる町人もまれなり。これがため心ある町人・百姓は、その子の学問に出精するを見て、やがて身代を持ち崩すならんとて親心に心配する者あり。無理ならぬことなり。畢竟その学問の実に遠くして日用の間に合わぬ証拠なり。

 されば今、かかる実なき学問はまず次にし、もっぱら勤むべきは人間普通日用に近き実学なり。

譬えば、いろは四十七文字を習い、手紙の文言、帳合いの仕方、算盤の稽古、天秤の取扱い等を心得、なおまた進んで学ぶべき箇条ははなはだ多し。

地理学とは日本国中はもちろん世界万国の風土道案内なり。

究理学とは天地万物の性質を見て、その働きを知る学問なり。

歴史とは年代記のくわしきものにて万国古今の有様を詮索する書物なり。

経済学とは一身一家の世帯より天下の世帯を説きたるものなり。

修身学とは身の行ないを修め、人に交わり、この世を渡るべき天然の道理を述べたるものなり。

 これらの学問をするに、いずれも西洋の翻訳書を取り調べ、たいていのことは日本の仮名にて用を便じ、あるいは年少にして文才ある者へは横文字をも読ませ、一科一学も実事を押え、その事につきその物に従い、近く物事の道理を求めて今日の用を達すべきなり。
右は人間普通の実学にて、人たる者は貴賤上下の区別なく、みなことごとくたしなむべき心得なれば、この心得ありて後に、士農工商おのおのその分を尽くし、銘々の家業を営み、身も独立し、家も独立し、天下国家も独立すべきなり。』

夫れ兵の形は水にかたどる。

孫子 6 虚実篇  7/7、軍隊の形は水のようなもの
http://sloughad.la.coocan.jp/novel/master/achaina/sonshi/sonsh067.htm

『夫兵形象水、

夫れ兵の形は水にかたどる。

軍隊の形は水のようなものである。

水之形、避高而趨下、兵之形、避實而撃虚、

水の行は高きを避けて下きに趨く。 兵の形は実を避けて虚を撃つ。

水は高い所から低い所に流れていく。 軍隊の形は敵の守りの固い「実」の部分を避けて守りの薄い「虚」の部分を攻撃する。

水因地而制流、兵因敵而制勝、

水は地に因りて行を制し、兵は敵に因りて勝を制す。

水は地形によって流れを決め、軍隊は敵の形によって勝利を制する。

故兵無常勢、水無常形、能因敵變化而取勝者、謂之神、

故に兵に常勢なく、常形なし。 能く敵に因りて変化して勝を取る者、これを神と謂う。
軍隊に決まった勢いというものは無く、決まった形も無い。 敵の出方次第で柔軟に対応し、勝利を得る。これこそ神妙というものだ。

故五行無常勝、四時無常位、日有短長、月有死生、

故に五行に常勝なく、四時に常位なく、日に長短あり、月に死生あり。

木火土金水の五行のうち、これだけで勝てるというものはなく、春夏秋冬の四季は絶えず移り変わり、日の長さだって長短があるし、月にも満ち欠けがある。』

近松門左衛門の「虚実皮膜論」

近松門左衛門の「虚実皮膜論」
https://text.yarukifinder.com/kobun/4453

『近松門左衛門の「虚実皮膜論」の現代語訳になります。学校の授業の予習復習にご活用ください。

近松門左衛門の「虚実皮膜論」の現代語訳

 ある人の言はく、「今時の人は、よくよく理詰めの実じつらしき事にあらざれば合点がてんせぬ世の中、昔語りにある事に、当世受け取らぬ事多し。さればこそ歌舞伎の役者なども、とかくその所作しよさが実事じつじに似るを上手とす。立役たちやくの家老職は本ほんの家老に似せ、大名は大名に似るをもつて第一とす。昔のやうなる子どもだましのあじやらけたる事は取らず。」

ある人が言うことには、「この頃の人は、十分に論理的で事実めいたことでないと納得しない世の中で、昔話にあることにも、今の世では承知しないことが多い。だからこそ歌舞伎の役者なども、とにかくその演技が実際の在り方に似ているのを上手(な役者)とする。立役(善人の男の役)の家老職(を演じる役者)は本物の家老に似せ、大名(を演じる役者)は(本物の)大名に似る(ようにすること)をもって第一とする。(この頃の人は)昔のような子どもだましのふざけたこと(演技)は認めない。」(と。)

 近松ちかまつ答へて言はく、「この論もつとものやうなれども、芸といふものの真実の行き方を知らぬ説なり。

近松が答えて言うことには、「この論はもっとものようだが、芸というものの本当の在り方を知らない説である。

芸といふものは実と虚うそとの皮膜の間にあるものなり。

芸というものは事実と虚構との、皮膜の間(皮と肉との境目のような微妙なところ)にあるものである。

なるほど今の世、実事によく写すを好むゆゑ、家老は真まことの家老の身ぶり口上こうじやうが写すとはいへども、さらばとて、真の大名の家老などが立役のごとく顔に紅脂べに、白粉おしろいを塗る事ありや。

なるほど今の世は、(歌舞伎の役者なども)実際の在り方を念入りにまねることを好むので、家老(役)が本当の家老の身ぶり話しぶりをまねるとはいっても、だからといって、本当の大名の家老などが立役のように顔に紅脂、白粉を塗ることがあるだろうか。

また、真の家老は顔を飾らぬとて、立役が、むしやむしやと髭ひげは生えなり、頭ははげなりに舞台へ出て芸をせば、慰みになるべきや。皮膜の間と言ふがここなり。虚にして虚にあらず、実にして実にあらず、この間に慰みがあつたものなり。

(いや、ない。)あるいは、本当の家老は顔を飾らない(から)といって、立役が、もじゃもじゃと髭は生えたまま、頭ははげたままで舞台へ出て芸をするならば、(観客の)満足となるだろうか。(いや、ならないだろう。)皮膜の間というのは、この点である。虚構にして虚構でなく、事実にして事実でない、この間に(観客の)満足があったものである。

 絵空事とて、その姿を描くにも、また木に刻むにも、正真しやうじんの形を似するうちに、また大まかなるところあるが、結句けつく人の愛する種とはなるなり。

絵空事といって、その姿を(絵に)描くにしても、あるいは木に彫るにしても、実物そのままの形に似せる中に、同様に大ざっぱなところもあるのが、結局人の愛するもととなるのである。

趣向しゆかうもこのごとく、本の事に似る内にまた大まかなるところあるが、結句芸になりて人の心の慰みとなる。文句のせりふなども、この心入れにて見るべき事多し。」

(芸の)工夫もこのように、実際のことに似る中に同様に大ざっぱなところもあるのが、結局(本物の)芸になって人の心の満足となる。(浄瑠璃の中の)会話の言葉なども、この心構えで見なければならないことが多い。」(と。)

【難波なには土産】

脚注

立役 善人の男の役。敵役、女形などに対する役柄をいう。
皮膜の間 皮と肉との境目のような微妙なところ。
文句のせりふ 浄瑠璃の中の会話の言葉。

出典

虚実皮膜ひにく論

参考

「精選古典B(古文編)」東京書籍
「教科書ガイド精選古典B(古文編)東京書籍版 2部」あすとろ出版 』

『難波土産』より 虚実皮膜の論
http://from2ndfloor.qcweb.jp/classical_literature/naniwamiyage.html

『原文

 ある人のいはく、
「今時の人は、よくよく理詰めの実らしきことにあらざれば合点せぬ世の中、昔語りにあることに、当世受け取らぬこと多し。さればこそ、歌舞伎の役者なども、とかくその所作が実事に似るを上手とす。立ち役の家老職は本の家老に似せ、大名は大名に似るをもつて第一とす。昔のやうなる子どもだましのあじやらけたることは取らず。」

 近松答へていはく、
「この論もつとものやうなれども、芸といふものの真実の行き方を知らぬ説なり。芸といふものは実と虚との皮膜の間にあるものなり。なるほど、今の世、実事によく写すを好む故、家老はまことの家老の身振り、口上を写すとはいへども、さらばとて、まことの大名の家老などが、立ち役のごとく顔に紅、おしろいを塗ることありや。また、まことの家老は顔を飾らぬとて、立ち役が、むしやむしやとひげは生えなり、頭ははげなりに舞台へ出て芸をせば、慰みになるべきや。皮膜の間といふがここなり。虚にして虚にあらず、実にして実にあらず、この間に慰みがあつたものなり。

 絵空事とて、その姿を描くにも、また木に刻むにも、正真のかたちを似するうちに、またおほまかなるところあるが、結句人の愛する種とはなるなり。趣向もこのごとく、本のことに似るうちに、またおほまかなるところあるが、結句芸になりて、人の心の慰みとなる。文句のせりふなども、この心入れにて見るべきこと多し。」
現代語訳

 ある人が言うことには、
「最近の人は、よほど理論的でもっともらしいことでなければ納得しないこの世の中では、昔話にあることを、現在では受け付けないことが多い。そうであるからこそ、歌舞伎の役者達も、とにかく演技の動きが実際に似ているのを名人だとする。成人男子役者の家老職は本物の家老に似せて、大名は大名に似ているのを第一にする。昔のような子供だましのふざけたことはやらない。」

 近松門左衛門が答えて言うことには、
「この論はもっとものようだけれども、芸というものの本当のありようを知らない考えだ。芸というものは、本当と嘘の境界にあるものなのだ。なるほどたしかに、現在は、実際の様子をよく再現することを好むから、家老は本物の家老の振るまい、話し方を再現するとはいっても、だからといって、本物の大名の家老などが、役者のように顔に紅や白粉を塗ることがあるものか(いや、ない)。あるいは、本物の家老は顔を飾り立てないからといって、役者が、もじゃもじゃとひげが生えた状態で、頭は禿げたままで舞台へ出て芸をしたら、(観客は)満足するだろうか(いや、しない)。境界というのは、ここのことだ。嘘だが嘘では無い、本当だが本当では無い、この微妙な境界部分に観客の満足があるのだ。

 絵空事といって、その様子を描くのにも、あるいは木に彫るのにも、本当の形を真似する中に、また大雑把なところもあるのが、結局人が愛する根源となるのだ。(芸の)趣向もこのように、本物を真似ている中に、また大雑把なところがあるのが、結局芸になって、人々の心の満足になる。(浄瑠璃の)台詞なども、この心構えで見るのがよいことが多い。」
作品

『浄瑠璃文句標註 難波土産』

穂積以貫 作の、人形浄瑠璃についての研究・案内書。
近松門左衛門自身が記した芸能論は見つかっておらず、近松の創作に対する姿勢を知る上で『難波土産』は非常に重要な資料である。

穂積以貫は、もともと儒学者だが浄瑠璃にハマり、竹本座の近松門左衛門との交際を持った。近松から聞いた芸論を書き留め、浄瑠璃の制作にも関わっていたようだ。
次男は近松門左衛門に弟子入りして、近松半二を名乗った。 』

 ※ まず、「きょじつひにくろん」と読むようだな…。「ひまくろん」じゃ、無いのか…。

 ※ 次に、「近松門左衛門」の記述では無く、「穂積以貫(ほづみいかん)」という人の記述なんだな…。『近松門左衛門自身が記した芸能論は見つかっておらず、近松の創作に対する姿勢を知る上で『難波土産』は非常に重要な資料である。』と言うことだ…。

 ※ 世の中、知らんことばっかりだ…。

ウソは健康的に接種すべきものであって、ウソで身の回りを固めると人生が破綻する

ウソは健康的に接種すべきものであって、ウソで身の回りを固めると人生が破綻する
https://blog.tinect.jp/?p=77629

『疲れている時にTwitterをやっていると、つい惹き付けられてしまうものがある。それはなろう系の漫画の広告である。

なろう系とは小説の一大ジャンルだ。

現実社会ではしがない生活をしていた人間がトラックにはねられて異世界に転生した結果、異能を発揮して無双したり、よくわからないけど何らかの天啓に恵まれてハチャメチャに強くなって、それまで冷遇されていた現実から一転して救世主みたいにチヤホヤされるというアレだ。

このなろう系はよく「努力が嫌いな現代人が、読んで気持ちよくなる為のもの」という風に揶揄される事が多い。

というか僕自身もそう思っていた節があり、正直読むのを避けていた。

しかし実際に読みすすめてみるとである。これが妙に癒されるのだ。

あんなに散々揶揄していたくせに、こんなに楽しんで読んでるだなんて何事だ!と怒られること必死である。いや…正直スマンかった…お前、めっちゃ面白いよ…

いったいなんでこんなに楽しいのだろうかと頭を捻ってみたところ、一つの結論がでた。
それは報酬の前借り効果である。

現実世界は結果反映まで時間がかかりすぎる

現実世界は大変である。大なり小なり、苦労していない人間などこの世にはいない。

僕もいま振り返ると笑っちゃうぐらいにラクチンな環境にいた頃だって、日々「シンドい」と思っていた。

このシンドさは実はある状況に似ている。

それは修行である。巨人の星からドラゴンボールに到るまで、強くなる人間はみな厳しい修行にハァハァしつつ、その成果として大リーグボールやらかめはめ波といった成果を手にしていた。

私たちは心のどこかで、大変な思いをしたら、それ相応の報酬がある事を心のどこかで期待している部分がある。

実際には報酬を受け取るには、きちんとしたプロジェクトを立ち上げて、かつ正しい努力をそれなりに長い年月積み重ねてゆかねばならないのだけど、そういう事をやったかどうかは別に、やっぱり心はどこかで「ご褒美」を欲しがっている。

既に疲弊した身体に、無双はものすごく気持ちいい

そういう疲弊しきった身体に、なろう系の物語は清涼飲料水のように染み渡る。

「現実世界ではもうチョー頑張った。もうマジ限界。恩赦プリーズ」

そういう状態の脳みそに、異世界転生して超絶ハイスペックでもって無双する状態を物語として流し込むと、脳が本当に物凄く喜ぶ。

「よく頑張ったね!努力の結果として、あなたは世界を揺るがす剣聖になれました!」

そういう文脈でもって”なろう系”を読むと、なんだかハチャメチャに頑張った現実世界における努力の対価を受け取っているかのように脳が錯覚する。

まあ実際には全然関係がないのだが、物語というのは自分の都合の良いように読むものである。

そうやって異能でもって世界中から称賛されているという感覚を味わい、美しいヒロインとイチャイチャするようなファンタジーにしばらく身を置くと、不思議なことにあんなに疲労困憊でゼーゼーいっていた脳が

「もう、もう元気になったから大丈夫だぜ。いっちょ次、頑張っちゃう?」

とか言い始めるのだから、不思議である。

まあ実際にはすぐまた疲れるのだが、疲れたらまた同じことを繰り返せばそれでよいのである。

なろう系…それは社会修行で疲れ果てた人間への、ご褒美ユンケルなのである。

自分の人生にウソを介入させてはいけない

「物語に癒やされるだなんてばっかじゃないの?」

「虚構に逃げても、何もいいことなんてない」

「現実から逃げるな!」

若い頃の自分は、よくこんな事を思っていた。

いま思うと「若者よ。そう生き急ぐな」と生暖かい目でみたくなってしまうのだけど、ウソや虚構といったものはそう一概に悪いだけのものではないと大人になった今は真剣に思う。

ウソや虚構は意識的に摂取しているうちは極めて健全だ。

感動的な物語にフルコミットして涙を流してもいいし、ヤクザモノの映画をみて絶対にありえなさそうな任侠道に憧れるのもいい。

しかし世の中には絶対についてはいけないタイプのウソや取り入れてはいけないタイプの虚構がある。

それは自分語りだ。他ならない、自分自身の人生をウソで塗り固めて構成した先にあるのは、純度100%の地獄である。

世の中にはびっくりするぐらいウソツキがたくさんいる

「人間は、意外と言われた言葉を額面通りにそのまま信じてしまいがちである」

これは岡田斗司夫さんという漫画・アニメの評論をする方が言われていた事だ。

連休中に彼が書いたガンダム完全講義を通読して、僕は自分がいかに相手の言葉をそのままの意味でしか理解していないという事を痛感させられた。

岡田さんは有名なシャア・アズナブルの「認めたくないものだな。自分自身の若さ故の過ちというものを」や「坊やだからさ…」といったカッコいいセリフが、実は物凄く深い意味があるという事をこの講義で徹底的に解説している。

その解説力には舌を巻くばかりなのだけど、考えてみると自分も基本的には相手の言ってる事をほとんど疑って聞いた事がない。

しかしである。じゃあ自分自身がウソをついていないかというと…これがまあ、よくついているのである。

ヤバいウソは基本的にはつかないが、じゃあ本音だけ垂れ流しているかというと、そんな事は全然ない。

このように自分自身もウソツキを大なり小なりやっている状況にあるわけなのだけど、こんなのは全然カワイイ方である。

インターネット博覧会であるTwitterでは、実はウソツキが膨大に列をなしており、虚構をまるで真実かのように真顔で主張する人たちが山のようにいる。

過去にも某超有名外資系投資銀行勤務を騙って巨額の詐欺を働いていた人など、枚挙にいとまがない。

普通の人は他人のウソを見抜けない

じゃあその人達のウソを自分自身がちゃんと見抜けていたかというと、これがまた驚くことに見抜けていなかったのである。

かつて2ちゃんねるの創始者であるひろゆき氏が語った有名なフレーズに「ウソをウソであると見抜けない人には2ちゃんねるを使うのは難しい」というものがあるが、現実問題として普通の人間にはウソを見抜くのは無理である。

それ故に…M資金のような詐欺が何度も何度も繰り返されるわけだし、それ故にインターネット上ではウソで塗り固めた人生でもって承認欲求を荒稼ぎする人たちが山のようにいる。

とはいえ、バレないウソはない

「それならウソをつきつづけられるのなら最強なのでは?」

実際にそれができるのなら確かに最強なのだけど、現実問題としてウソを完璧に貫き通せる人などほぼ居ない。

よく「ウソを一つつくと、そのウソを守るのにまた別のウソをつかなくてはならなくなる」という言葉があるが、虚構に虚構を積み重ね続けるのは実際問題として人間の能力を超えている。

小説のように最初から最後まで虚構で成り立つ世界ならまだしも、現実というファクトがある世界において、そこにウソを設置するのは物凄く難しい。

だいたいにおいてファクトだけが精神に残るという事もあって、ウソはついた事すら忘れ果ててしまう事が多い。

それ故にウソツキは自分がついたウソと矛盾するようなウソを無意識でもってよく言ってしまう。

そういう状況になってから、カンの良い誰かに「いやお前それウソじゃん」と指摘された瞬間から、ウソツキの人生は崩壊する。

そこで「ごめんなさい。すみませんでした」とやれる人間などまずおらず、ウソツキはゴチャゴチャと言い訳を始め、そしてぶっ壊れる。

この段に至って、ウソツキが真人間に戻れる確率はほぼ0%だ。

大抵の場合において「あっ(お察し)」な存在へと一般的には認知されるようになり、虚構の中で生き続ける残念な人間がこの世に爆誕する。

ウソツキの行く末は地獄以外にはどこにもない。

ウソが上手くいってしまった時ほど、その上手くいってしまったウソからもたらされる快感に吐き気を催せるようになるべきだ。それができないと、貴方の人生も「あっ(お察し)」である。

ウソをウソだとわかって楽しく利用できないと、現実を良く生きるのは難しい

ウソは使ってもいいけど、それを快感につなげてはならない。

これが僕のウソに対する結論である。

世の中にはどうしてもウソが必要となる時がある。末期がんで一縷の望みすらない人間が希望にすがっている時

「いや、おまえ絶対に助からないから」

と言うのは誠実なのではなく単なるバカだ。

そういう人にウソをつきたくないのなら、例えば「確かに世の中、何がおきるかはわかりませんからね」などと言って共感する方が絶対にいい。

世の中の多くのウソは優しさで満ち溢れている。

なろう系は血湧き肉躍る体験を読者にもたらしてくれるし、転職の際に「家庭の事情で…」とテキトーにウソをでっち上げるのだって、まあお互いが納得する為の一つのよい手段である。

このように、誰かを優しさで包む為のウソはインスタントな形で一時的な使用で終わる性質のものだ。

その後でバレたとしても、そこまで事がハチャメチャにこじれる事はないだろう。

一方で己の快楽の為につくウソは本当にヤバい。

覚醒剤の乱用者が強い刺激を求めて使用量がどんどん増えるかのごとく、ウソにウソが乗っかってトンデモナイ事になる。

行き先も同じく地獄である。誰もが「自分だけは絶対に大丈夫」と思い、どうにもならなくなってから破滅する。

ウソをウソだとわかって楽しく利用できないと、現実を良く生きるのは難しい。僕はそう思う。

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【著者プロフィール】

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高須賀

都内で勤務医としてまったり生活中。

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noteで食事に関するコラム執筆と人生相談もやってます

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〔インド北部の王朝、変遷〕

マウリヤ朝
http://www.y-history.net/appendix/wh0201-042.html

クシャーナ朝
http://www.y-history.net/appendix/wh0201-051.html

グプタ朝
http://www.y-history.net/appendix/wh0201-066.html

ヴァルダナ朝
http://www.y-history.net/appendix/wh0201-080.html

デリースルタン朝
http://www.y-history.net/appendix/wh0503-005.html

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%83%AB%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%B3%E6%9C%9D

ムガル帝国
http://www.y-history.net/appendix/wh0804-004.html

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A0%E3%82%AC%E3%83%AB%E5%B8%9D%E5%9B%BD

バングラデシュ

バングラデシュ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%87%E3%82%B7%E3%83%A5

『バングラデシュ人民共和国(バングラデシュじんみんきょうわこく、英語 People’s Republic of Bangladesh、ベンガル語: গণপ্রজাতন্ত্রী বাংলাদেশ)、通称バングラデシュは、南アジアにある共和制国家。首都はダッカである。

北と東西の三方はインド、南東部はミャンマーと国境を接する。南はベンガル湾(「インド洋の一部)に面する。西側で隣接するインドの西ベンガル州、東側で隣接するインドのトリプラ州とともにベンガル語圏に属する。ベンガル湾に注ぐ大河ガンジス川の下流部を有する。

イギリス領インド帝国の一部からパキスタンの飛地領土(東パキスタン)を経て独立し、イギリス連邦加盟国のひとつである。 』

『概要

国名のバングラデシュとはベンガル語で「ベンガル人の国」を意味する。国内最大の都市は首都のダッカであり、他の主要都市はチッタゴン、クルナ、ラジシャヒがある。バングラデシュは南アジアにおけるイスラム圏国家の一つである。バングラデシュの人口は1億6,468万人で、都市国家を除くと世界で最も人口密度が高い国であり、人口数は世界第8位となっている。

元々はインドの一部であったが、インドが1947年にイギリスから独立するに当ってイスラム教徒とヒンドゥー教徒との対立が深まり、イスラム教徒地域を「パキスタン」として独立させる構想が浮上した。これにより1955年に東パキスタンとなったが、パキスタン本土とは遠く離れた状態であったことや宗教のみで両地域を統一しておくこと自体が困難である点から分離独立が叫ばれ、1971年にパキスタンから独立した。

豊富な水資源から米やジュートの生産に適し、かつて「黄金のベンガル」と称された豊かな地域であったが[4]、インフラの未整備や行政の非能率から、現在はアジアの最貧国に属する[5]。しかし近年は労働力の豊富さ、アジア最低水準の労働コストの低廉さに注目した、多国籍製造業の進出が著しい。第三国への輸出のほか、人口の多さからスマートフォンなどはバングラデシュ国内市場向けにも生産されている[6]。新興国として期待されるNEXT11の一つに数えられている。なお、バングラデシュでは貧困も続いている。 』

バングラ陸軍は「TB2」を買おうとしている。

バングラ陸軍は「TB2」を買おうとしている。
https://st2019.site/?p=20037

『AFPの2022-7-27記事「Bangladesh to buy Turkey’s Bayraktar TB2 combat drone」。
   バングラデシュの新聞が報じたところによると、バングラ陸軍は「TB2」を買おうとしている。

 トルコとバングラは1981年から軍事協力関係あり。これまで装甲車、野砲の弾薬、多連装ロケット砲などを売っている。』

7-17にギリシャ国内のカヴァラ市に墜落した、ソ連時代の古い輸送機「アントノフ12」。

7-17にギリシャ国内のカヴァラ市に墜落した、ソ連時代の古い輸送機「アントノフ12」。https://st2019.site/?p=20037

『Sasa Dragojlo 記者による2022-7-26記事「Crashed Plane was Flying Arms for Polish-Owned Bosnian Company」。

   7-17にギリシャ国内のカヴァラ市に墜落した、ソ連時代の古い輸送機「アントノフ12」。乗っていた8人が死亡した。積荷は、セルビア製の兵器だった。行き先はバングラデシュ。その商談をまとめたのは、ボスニアに拠点を置く、ポーランド資本のの武器商社「メタレクスポルト-S」であった。

 積荷は11.5トンあった。セルビア製の弾薬。

 最終的な書い手はバングラデシュ国防省。
 弾薬はサラエボで搭載された。サラエボには、「メタレクスポルトS」の子会社の「BA メタレクスポルト」がある。

 このアントノフ機の運航会社が「メリディアン」というウクライナの企業であったことから、仕向け地はウクライナだったのではないかと人々は思った。しかし、違うという。
 この弾薬売買の商談は2021年にまとまっていたのだ。つまり今次ウクライナ戦争が始まる前。

 弾薬の詳細。60ミリの訓練用の迫撃砲弾。82ミリの訓練用迫撃砲弾。82ミリの照明弾の迫撃砲弾。

 この弾薬の工場出荷価格は60万2790ドル。
 このような小口の荷物を飛行機でバングラデシュまで運ぼうとしたのには合理性がある。今、欧州からコンテナ1個をバングラまで海送すると、15万ユーロもかかってしまうのだ。そんなカネはバングラには無い。小型輸送機で運べるなら、バングラにも払える運賃でおさまるのだ。

 墜落した機体は製造されてから50年も経ていた古いものだった。1973年以降は製造されていない型式である。
 墜落パイロットからの無線連絡によると、双発エンジンのうち1基が火災になったらしい。そして、緊急着陸は、間に合わなかった。』

10年前、スリランカの経済はめっちゃ調子よかった。

10年前、スリランカの経済はめっちゃ調子よかった。
https://st2019.site/?p=20037

『Anne O. Krueger 記者による2022-7-28記事「Sri Lanka debt crisis is a lesson for all countries」。

    10年前、スリランカの経済はめっちゃ調子よかった。成長率6.5%は世界一だった。それを緩慢な人口増加率の中で達成していた。2019においてもなお成長率は3%を越えていた。

 ところが2019年に政権交替が起きた。この政権は大規模な減税を打ち出した。
 結果はすみやかにあらわれた。2020と2021の政府予算は大赤字。その額はGDPの10%以上だった。
 それまでずっと5%だったインフレ率が、5月には39.1%、7月には54.6%になった。
 追い討ちをかけたのが、2021春に発表した「肥料輸入の禁止」。
 そんなことをしたらコメの収量は20%減るし、茶の輸出も激減するのに。

 新コロのおかげで、海外からの観光客も絶えた。これもあって、同国は外貨が用意できなくなってしまい、必要なものを輸入できなくなった。

 2021年末にはこの国は経済的に終わっていた。5月、デフォルト宣言。

 破綻の淵から立ち戻り、まともな安定成長ができるようになっている先例がある。2002年以降のブラジルだ。IMFに言われる前にやらなくてはいけない「痛い改革」をさっさとやれ。ブラジルを見本にせよ。それ以外に、抜け出す道はないのだ。』

バングラデシュ、IMFに45億ドルの融資要請=現地紙

バングラデシュ、IMFに45億ドルの融資要請=現地紙
https://news.yahoo.co.jp/articles/a5b78c8d37ca27d6e7022091b2ac78cfb808fdd3

『[ダッカ 26日 ロイター] – バングラデシュが国際通貨基金(IMF)に45億ドルの融資を要請した。現地紙デイリースターが26日報じた。

同紙によると、国際収支や予算面で資金が必要なほか、気候変動対策に充てるため融資を要請した。カマル財務相が24日にゲオルギエワIMF専務理事に書簡を送ったという。

同国経済は長年にわたり高成長を遂げてきたが、ロシアとウクライナの戦争を受けたエネルギー・食料価格の高騰で輸入への支払いと経常赤字が膨らんでいる。

中央銀行のデータによると、昨年7月から今年5月の経常赤字は172億ドル。前年同期は27億8000万ドルの赤字だった。

南アジアではスリランカが過去70年で最悪の経済危機に直面しているほか、パキスタンでは外貨準備が急速に減少している。』

北朝鮮、韓国と対決姿勢 金正恩氏「尹政権は最も非道」

北朝鮮、韓国と対決姿勢 金正恩氏「尹政権は最も非道」
しぼむ対話、南北緊張へ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM283G60Y2A720C2000000/

 ※ 今日は、こんなところで…。

『【ソウル=甲原潤之介】北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記が韓国との対決姿勢を鮮明にした。朝鮮中央通信によると、27日に朝鮮戦争休戦69年の記念行事で演説し、韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の防衛政策を名指しで非難した。韓国は米国と8月の合同軍事演習を通じて抑止力強化を打ち出す方針だ。南北の緊張が一段と高まるのは確実だ。

韓国大統領府国家安保室は28日、金正恩氏の演説について「大統領の実名をあげて韓国政府を威嚇する発言をしたことに深い遺憾の意を表明する」というコメントを発表した。そのうえで「いかなる挑発にも強力に対応する態勢を整える。北朝鮮が対話の道に出るよう促す」と表明した。

大統領に5月就任した尹氏を金正恩氏が名指しで批判したのは初めて。演説で「尹錫悦が政権をとる前後に言い放った妄言を正確に記憶している。歴代のどの保守政権をもしのぐ極悪非道な同族対決政策に執着し、朝鮮半島を戦争の境目に導いている」と述べた。

尹氏は文在寅(ムン・ジェイン)前政権の南北融和路線を転換し、米韓同盟による北朝鮮の抑止を重視する政策を採用する。米国の核兵器で相手の核使用を抑える「拡大抑止」の拡充も掲げる。8月下旬には4年ぶりに野外訓練を交えた米韓合同軍事演習を計画する。

金正恩氏はこうした尹政権の方針に反発した。相手による攻撃の兆候を捉えて基地などを先に攻撃する「先制打撃」や、米国の戦略爆撃機を韓国に展開する議論などを具体的に取り上げた。先制打撃、ミサイル防衛、相手への報復という3段階で防衛する韓国の「3軸体系」にも触れ、「危険な試みだ」と強調した。

そのうえで自らを「核保有国」と明示し、「絶対兵器(核兵器)を保有するわが国を相手に軍事行動をあれこれ言うのは危険な自滅的行為だ」と述べた。韓国が先制打撃に出るならば「尹政権と彼の軍隊は全滅するだろう」と警告した。

金正恩氏は尹政権発足後、南北関係に言及していなかった。だが、27日の演説で立場を鮮明にしたことで、南北間の対立は決定的になった。

韓国・慶南大の林乙出(イム・ウルチュル)教授は「韓国と米国が軍事演習を頻繁に実施すればするほど、北朝鮮はより深刻なレベルの安全保障の危機をもたらすだろう」と指摘する。「韓米両国が強硬姿勢のほかに明確な解決策を提示できておらず、朝鮮半島情勢はさらに悪化せざるを得ない」との見方を示す。

過去の例を見ても、韓国の保守政権下では南北の緊張が高まりやすい。李明博(イ・ミョンバク)政権だった2010年には北朝鮮が韓国の延坪島(ヨンピョンド)を砲撃する事件が発生した。韓国の兵士2人と民間人2人が死亡した。

韓国の政治情勢も朝鮮半島の緊張を高める要素になる。尹政権の支持率は発足時の50%台から30%台に下落した。支持率の低迷が続く場合、保守層の関心を維持するうえで北朝鮮との対決姿勢を緩めるのは困難になる。

金正恩氏は「最も大きな危険の前に立たされた政権と言われるのを避けたければ、最初から我々を相手にしないことが得策だ」と述べた。尹政権を対話の相手とみなしていない事実は、こうした発言からもうかがえる。

北朝鮮による7回目の核実験に向けた布石との見方もある。日米韓はすでに、北朝鮮が準備を終えたとの認識を共有している。

金正恩氏は演説で、朝鮮戦争を「民主主義陣営と帝国主義陣営の対決」と表現した。北朝鮮を「民主主義」、米国を「帝国主義」と位置づけたうえで「米国とのいかなる軍事的衝突にも対処する用意ができている」と語った。

韓国・漢拏(ハンラ)大の鄭大珍教授は、金正恩氏が演説を通じて「北朝鮮の観点による国際認識を強調し、自らの軍事活動の正当性を確保しようと努めた。追加の核実験を控え、米国と対決する局面だという見方について、中国とロシアにも共感してもらう狙いがある」と解説する。 』

台湾と協力「安倍氏後」探る 議員外交の動き相次ぐ

台湾と協力「安倍氏後」探る 議員外交の動き相次ぐ
安全保障軸にパイプ構築
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA25A4V0V20C22A7000000/

『日本の国会議員が台湾を訪問する動きが活発になってきた。台湾は安全保障上の重みが増す半面、政府間の外交関係がないため、議員外交がパイプの役割を持つ。日台協力を重視した安倍晋三元首相が亡くなった影響も踏まえ、新たな軸を探る。

自民党の石破茂元幹事長ら超党派の「日本の安全保障を考える議員の会」のメンバーが27日から台湾を訪れた。同党の浜田靖一元防衛相、長島昭久衆院議員、日本維新の会の清水貴之参院議員も加わる。

台湾の外交部(外務省)は同日に「訪問を心から歓迎する」との声明を発表した。

蔡英文(ツァイ・インウェン)総統や頼清徳副総統との会談のほか、国防部(国防省)も訪れる。軍関係者と台湾海峡での中国軍の動きや台湾の防衛体制など巡り意見を交わす見通しだ。総統府直轄の国家安全会議(NSC)の幹部とも会う。

石破氏は「安全保障を目的とした議員の台湾訪問は珍しい。実地で知識を得たい」と話す。議員の会に所属する国民民主党の前原誠司元外相は「安保に関しては与野党関係ない。現実的な安保政策はどの立場であっても必須だ」と語る。

自民党の鈴木馨祐衆院議員も25日から訪問した。現地の会合に出席し、日本側の台湾を巡る動きなどを説明した。5月には自民党青年局の議員団が台湾を訪ねた。

相次ぐ日本の議員訪問に台湾側も蔡総統をはじめ政府高官が積極的に対応している。

超党派の議員連盟「日華議員懇談会」の古屋圭司会長は27日の取材に「8月に事務局長の木原稔衆院議員と台湾を訪問し、政府関係者と会談する」と明かした。日華懇はかねて国交のない台湾との関係構築を進めてきた組織だ。

21年夏には自民党と台湾の与党、民主進歩党(民進党)の外交・防衛政策の責任者が協議した。日本側は外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)の「与党版」と位置づける。

台湾は沖縄県与那国島からおよそ110キロと近い。仮に中国が台湾に侵攻すれば日本も無縁ではいられない。日本にとっても台湾有事を念頭に置いたパイプづくりや情報収集は不可欠だ。

米バイデン政権は非公式の代表団を台湾に頻繁に送る。最近は国防部幹部とも面会する例がある。日本の議員の動きも米国と歩調をあわせる一環になる。

ペロシ米下院議長は8月に台湾を訪問する計画を立てる。現職の米下院議長の訪台が実現すれば1997年以来となる。

日本政府は1972年の日中共同声明を経て中国を「中国唯一の合法政府」と認定した。台湾との関係は「非政府間の実務関係として維持している」との立場をとる。政府高官らの公的な会談はなく、国会議員らが要人との交流を担ってきた。

近年の台湾との関係構築を中心的に進めたのが安倍氏だった。首相退任後に顧問を務めた日華懇を軸に活動した。生前には参院選後に台湾へ訪問する意欲も示していた。

日本と米国、台湾の議員の連帯も探った。2021年夏には日米台の議員有志による「戦略対話」を実現した。21年12月に台湾で開かれたシンポジウムにオンライン参加し「台湾有事は日本有事であり、日米同盟の有事でもある」と訴えた。

蔡総統とも親交があり、今年3月にはオンラインでウクライナ情勢や日台関係について話しあった。安倍氏の葬儀には頼副総統が私人の立場で来日して参列した。

台湾との関係は歴史的に自民党の清和政策研究会(現安倍派)に所属した議員との関わりが深い。2000年に台湾の李登輝元総統の来日問題が浮上した際は当時の森喜朗首相の働きかけで01年に実現した。

安倍氏の祖父、岸信介氏は1957年に首相に就任すると初の海外訪問先に東南アジアと台湾を選んだ。

高市早苗政調会長は24日、日台関係を巡り講演し「安倍氏の遺志を同志議員と引き継いで台湾と一層強固な関係を構築したい」と語った。自民党には安倍氏の死去の影響を危惧する声もある。

長島氏は「安倍氏が象徴的に引っ張る姿でなくなるかもしれないが、より裾野を広げるため各議員が強い絆を台湾と築くのが大事だ」と話す。

【関連記事】台湾との関係「安保協力が重要」 日華懇・古屋圭司会長

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第1列島線とは 米中が対峙する軍事ライン きょうのことば

第1列島線とは 米中が対峙する軍事ライン きょうのことば
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB276740X20C22A7000000/

『▼第1列島線 中国が勢力圏を確保するため、海洋上に独自に設定した軍事的防衛ラインの一つ。九州沖から沖縄、台湾、フィリピンを結び南シナ海に至る。中国が台湾有事を想定し、米軍の侵入を防ぐ自国防衛の最低ラインとしている。

米国は第1列島線を安全保障上の脅威と捉え、対抗軸の構築を進めている。米インド太平洋軍は第1列島線に沿って、ミサイル網などを整備することを視野に入れる。台湾海峡の安定は地域の安全と平和に深くかかわることから、日本も射程1000キロメートル超の巡航ミサイルを配備することを目指す。

中国がさらに外洋に設定したのが「第2列島線」だ。小笠原諸島や米領グアムを経由してパプアニューギニアに至る防衛ラインで、海洋安全保障を巡り、米国との対立が激しくなっている。

【関連記事】

・米陸軍、アジアに新部隊配置検討 サイバーや防空強化
・米軍、対中国へ分散戦略加速 補給体制と連動カギ
・台湾併合が招く悪夢 米中秩序、逆転の引き金に 』