アメリカは、ファーウェイを潰すつもりなのか…

 『ファーウェイはZTEの二の舞になるか カナダ当局が創業者の娘を逮捕』https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/120600908/?n_cid=nbpnbo_mlpum&P=2

  『ファーウェイ製品、使っているだけでも取引停止 米政府、強める圧力』https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38606180W8A201C1SHA000/?nf=1

 『英BT、5Gで華為製品使用せず 3G・4Gからも排除』https://jp.reuters.com/article/bt-group-huawei-tech-idJPKBN1O42V1Kirin

 ファーウェイは、「1987年 – 任正非をはじめとする元人民解放軍所属の軍事技術関係者が集い創業[17]、携帯電話のインフラ整備に必要な通信機器を開発するベンダーとして中国深圳市に設立」という経緯からも分かる通り、ずっと中国人民解放軍との深い繋がりがあると見られてきた企業だ( https://ja.wikipedia.org/wiki/ファーウェイ )。

 そして、「情報を抜きまくっている」という噂の絶えなかった企業だ。

 さらには、最近、中国がIT器機の心臓部である、CPU(MPU)の製造でも、メキメキ実力をつけつつあるという事情もある。

 現段階で、世界のCPUは、大きく分類して、2種類のものに分けられる。一つは、PC用のインテルのcoreプロセッサやAMDのRyzenなんかに代表されるもの。もう一つは、スマホ・タブレット用のクアルコムのsnapdragonなんかに代表されるものだ( https://ja.wikipedia.org/wiki/Snapdragon )。

 後者のスマホやタブレット用に採用されているものは、そもそもの設計がArm社だ。ソフトバンクの孫さんの買収で、一躍脚光を浴びた企業だ。

 Arm社のビジネスモデルは、MPUの設計だけに特化し、そのライセンスの販売で収益を上げる、というものだ。そのライセンス販売形態は、様々あるようだ。その中には、製造データを販売する、というものもある。顧客は、その製造データを購入すれば、半導体製造装置を購入しておけば、その製造装置にセットするだけで、Arm社設計のMPUを製造することができる…、という話しになっている。

 むろん、周辺のメモリ周りの設計や、GPUとの連携の設計は、ライセンス販売形態で認められている場合もある。上記のクアルコムのSnapdragonも、そういう独自の仕様を加えた製品だ。

 そして、ここに来て、ファーウェイのMPUの製造は、急速に実力をつけて来ている。

 『980Kirin 980はHuawei史上最速のプロセッサ。パフォーマンスはSnapdragon 845超え!』( https://www.gizmodo.jp/2018/08/huawei-kirin-980.html )

 アメリカがこういうことを警戒するのは、むろん、AI絡みの話しだ。AIは、
artificial intelligence の略で、これを日本語に訳す時、「人工知能」という訳語を当てたから、誤解してる人も多いが、別に人間様のような「知能」を持つものでも、「思考」したりするものでも、ない。

 やってることは、単なるデータ(特に、行列データ)の変形・演算(ベクトル演算)にすぎない。それを、電子的に、えんえんと疲れを知らずに、高速で連続してやっている、にすぎない。

 だから、こういうベクトル演算に特化したGPUとの親和性が高かった。一時、仮想通貨ブームの時に、マイニングがおお流行りで、グラボ(エヌビディアのGeForceとか、RadeonのHD7シリーズとか)が買い占められたりして、品薄になり、ちょっとした騒ぎになったりしたろ? 

 そもそも、GPUなるものは、本来の演算器であるCPU(Central Processing Unit 中央演算装置)が苦手としている、ベクトル演算部分を処理すべく切り分けられたものだ(graphics processing unit の略だ)。

 コンピューティングの世界が進化していくと、文字情報のみを処理すればよかった時代は、過ぎ去り、表示も3D表示が求められるようになった。

 特に、3Dのコンピューターゲームが、おお流行りとなった(FPSとか、TPSとかだな)。こうなってくると、XYZ軸それぞれの座標の行列データを、忙しく出し入れし、演算することが要求されてくるんで、従来のCPUでは、追いつかなくなって行ったんだよ。こういうベクトル演算を専門に受け持つべく、開発されたのが、
GPUってわけだ。

 そして、現在ではAIに脚光が当たっている。

 現AIのディープラーニングにおいては、人間のニューロン構造を模した、何層もの階層を備え(「中間層」とか、「かくれ層」とか、言うらしい)、それぞれに行列データを持ち、一定のアルゴリズム(まあ、「関数」と言ってもいいか…)に従って、それらの行列データを変形・演算していく…。「重み付け」とか言って、各パラメーター間の取扱いに区別を設けたり、「再帰」とか言って、演算結果を、狙っているものと合致しているのか検証したりもするらしいぞ…。

 それで、こういうディープラーニングに最適化されたユニットを、NPU(neural processing unit)と言うらしい(まあ、結局のところは、CPUユニットと、GPUユニットの組み合わせ、というのが実体のようだな。ここら辺が、けっこう詳しい。 『ニューラルプロセッサに対抗するArmのMali GPU』 https://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/kaigai/1111755.html)。

 上記画像は、上記リンクの後藤さんの記事からお借りした。

 AIのディープラーニングでよく出てくる、「猫の画像認識」モデルの概念図だ。一番左に、大量のネコや犬やライオンなんかの画像データがある。丸い円形が、そのネコの画像を構成している「要素」を抽出したもの(耳がピンと立っているとか、鼻があまり出てないとか、目が丸っこい、蹄は無い…とかだな)。そして、それらを「行列データ」として、格納・保持しておく。

 そして、次の層に送る。次の層では、前の層よりも要素の数が少なく(絞り込まれて)なっていて、かつ、ちょっと図だとわかりにくいが、線が太いものと細いものがあるだろう? これが、「重み付け」というやつで、行列データを変形するときに、大きく変形したり、小さく変形したりすることを、試みるんだ。まあ、大きく変形したものは、その要素を重視した、ということに該当するんだろう。

 こういうことを何層か重ねた後に、最終的に変形された行列データ(どの要素を抽出したのか、その要素間のどれを重要視したのか、どの要素をどれだけ大きく変形したのか…、を含んでるデータだ)が出力されてくるわけだが、それに「ネコです」とか、「ネコでないです」とか、判定を下すわけだ(ラベル貼りとか、言ってるようだな)。

 これを人間がやると、「教師あり学習」(むろん、最初の画像データに、そういうラベルを貼っておいてもかまわない。プログラム的に、最終出力データを出力した時に、その領域を参照するようにしておけばよい)と言うことになる。

 こういうことを、グルグルとループさせて、何回も何回もやらせるわけだ。なにしろ、疲れたり、飽きたりすることはないわけだからな…。電力が途切れない限り、続けさせることが、できるってわけだ。

 そうやって、だんだん正解(「これはネコです」という判定)の精度が上がったもの、要素の抽出や、重み付けが上手くいったものが、「ネコ判定画像認識モデル」となる、というわけだ。

 そういう成功した行列データの変形モデルを使って、今度は新たな画像を与えて判定させると言うわけだよ。うまくすれば、正解率8割とか9割で「ネコか、ネコでないか」を判定できるという話しだよ。

 そういうことができるものを「AIチップ」とか称して、「画期的な新製品!」とか、「人工知能チップ搭載!」とか、喧伝してるわけだよ。

 まあ、それはいいんだが、問題なのは、このAIの技術は、軍事にも応用が可能だという点だ。

 「アイアンマン」とかで、ロボットスーツが話題になった時があった。しかし、そんなロボットまで行かなくても、AIによって自律的に操縦される4輪駆動車にマシンガンを積んだ無人兵器部隊が、敵陣に突っ込んで、重機を乱射する…。AIによって自律的に操縦されるドローンや無人機部隊が、爆弾や小型ミサイルを発射しまくる…。AIによって自律的に操作されるキラー衛星が、GPSを司る通信衛星に突っ込んできて、破壊する…。そういう悪夢のような世界は、身近に迫っている感じだろ? 

 アメリカは、多分そういう光景を警戒しているんだろう…。そういう悪夢の実現は、どうやっても阻止するというつもりなんだろう…。

“アメリカは、ファーウェイを潰すつもりなのか…”. への1件のコメント

  1. 中国がAIや無人機で、覇権を握る可能性はあるのか…。 – ジジイがあれこれ考えた

    […] 要は、中国ではプライバシーなんかに考慮を要せず、好きなだけ個人の情報を収集でき、「ビッグデータ」を揃えられる、ってことだ。  ジジイあれこれの投稿でも上げておいた( https://http476386114.com/2018/12/07/%e3%82%a2%e3%83%a1%e3%83%aa%e3%82%ab%e3%81%af%e3%80%81%e3%83%95… )が、現AIは、単なる「行列データ」の変形・演算に過ぎない。結局、どれだけ多量の質の高い「行列データ」を揃えられるか、の勝負になっているんだよ。この点で、中国には、優位性がある。 […]

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