日鉄vs宝山・トヨタ、異例の提訴に「中韓スパイ」の影

日鉄vs宝山・トヨタ、異例の提訴に「中韓スパイ」の影
編集委員 渋谷高弘
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGH14EEA0U1A011C2000000/

 ※ こうやって、「虎の子技術」がダダ洩れしていけば、企業の業績は傾き、従業員の給料は低下する…。

 ※ 「知財窃盗」は、他人事じゃ無いんだ…。

 ※ ちなみに、下記で語られている「ポスコvs.宝山製鉄」の訴訟は、当時、ネットで散々情報流通してた…。

 ※ オレも、随分見たよ…。

『日本製鉄は14日、電動車のモーターに使う電磁鋼板に関する特許権を侵害したとして、トヨタ自動車と中国の鉄鋼メーカー、宝山鋼鉄を東京地裁に提訴した。日本の大手企業、それも材料メーカーが顧客企業を訴える特許係争は極めて異例だ。何が日鉄を駆り立てたのか。期待の脱炭素技術「電磁鋼板」でのつばぜり合いには、中国や韓国の産業スパイが暗躍した過去が浮かび上がる。

Nikkei Views
編集委員が日々のニュースを取り上げ、独自の切り口で分析します。

同日午後、日鉄がトヨタを特許侵害で訴えたとの発表が流れた後、産業界に驚きの声が広がった。知的財産の世界では、2011年から18年まで続いた米アップルと韓国サムスン電子のスマートフォンを巡る世界規模の特許訴訟のように、先行する欧米企業が日本を含めたアジア企業をたたいたり、欧米企業同士が殴り合ったりすることが多かった。
日本企業同士の特許訴訟、経済安保が招く

日本企業、それも産業界を代表する大手メーカー同士が特許侵害で争うのは極めて珍しい。そもそも日本は1970年代から2000年代半ばにかけて、世界最多の特許出願大国だった。2020年の日本の特許出願件数は30万件弱で、中国の約140万件、米国の約65万件に次ぐ第3位だ。

一方、日本国内の特許訴訟は年間170件程度(2017年)で、米国の20分の1以下、中国の約100分の1という低水準にとどまる。特許大国の日本で、なぜこれほど特許訴訟が少ないのか。もちろん日本企業に特許侵害がないということではなく、警告したり水面下で交渉したりして解決するのが一般的だからだ。

相手が顧客企業であれば紛争を避けて取引を続けることが優先されるし、競合企業との間にも知財の利用を相互に認める「クロスライセンス契約」がある。紛争になってしまうと互いに製品が作れなくなる恐れがあったからだ。

今回、日鉄はそんな「常識」を飛び越え、競合会社の宝山鋼鉄どころか最大顧客のひとつであるトヨタと事を構えた。要因のひとつは、電磁鋼板が電動車のモーターに使われる脱炭素時代のキーテクノロジーのひとつだからだ。今後、世界中で膨大な需要が広がる上、半導体などと並ぶ経済安全保障技術とも見込まれる。電磁鋼板は特殊な製造工程を経るため、つくるのが難しく、品質の安定を維持するには独自の技術やノウハウが要る。日鉄からみれば、簡単につくれるはずのない製品だ。

電磁鋼板はハイブリッド車や電気自動車に不可欠な部品になっている(写真はトヨタの4代目「プリウス」、2015年)

電磁鋼板は、韓国や中国の鉄鋼会社にコスト競争を仕掛けられている日鉄にとって、高付加価値製品のひとつだ。宝山が特許侵害の疑いのある製品を作り続け、トヨタへの供給が決まったことは看過できない。製造元の宝山のみならず、顧客のトヨタを巻き込んだのは、他の自動車メーカーに対するけん制もあるのだろう。

電磁鋼板技術巡る日中韓の暗闘

日鉄の異例の決意の背景には、電磁鋼板を巡る過去の技術流出に対する苦々しい思いも見え隠れする。1980年代以降、日鉄の電磁鋼板技術が韓国や中国の産業スパイによって不正に持ち出されたとされる事件だ。

2012年4月、新日鉄(現・日鉄)は「電磁鋼板に関する当社の営業秘密情報を盗まれた」として、同社の元技術者と韓国の鉄鋼大手ポスコを不正競争防止法違反で東京地裁に訴えた。

日本の大企業が、国内外を問わず同業他社を「営業秘密を盗まれた」と訴えたのは極めて異例だ。というのは、技術者や退職者を通じた海外への技術流出はかねて指摘されていたが、証拠をつかむことが難しく、裁判になることはまれだった。新日鉄住金がポスコを提訴できたのは、韓国での、ある「産業スパイ事件」が発端だった。

その産業スパイ事件とは、ポスコの元従業員が同社の電磁鋼板の秘密情報を、今回の被告企業である中国の宝山鋼鉄に不正に売り渡したとされる問題だった。この元ポスコ従業員は2008年に韓国の高裁で有罪判決を受けたが、衝撃的だったのはその裁判の中で行った証言だった。

秘密情報「ポスコが新日鉄から盗み出した」

「私は無罪だ。ポスコが私に盗まれたと主張している秘密情報は、もともとポスコが日本の新日鉄(現・日鉄)から盗み出した秘密情報だ。私はポスコが新日鉄から盗んだ秘密を、中国の宝山鋼鉄に渡しただけなのだ」。このように元ポスコ従業員は主張した。

この証言が契機となり、当時の新日鉄住金は日本で同社の元技術者がポスコ側に秘密情報を渡していた証拠を押さえることに成功した。だから元技術者やポスコを訴えることができたのだった。同時に新日鉄住金はポスコを米国で特許侵害で訴えた。ポスコは反論し、逆に韓国で新日鉄住金の主張は不当だと反訴した。

これらの訴訟は15年9月に突然、終結した。新日鉄住金が「韓国ポスコと和解した」と発表したのだった。ポスコが新日鉄住金に300億円という、過去、日本企業が知財関連で得た最大規模の和解金を払ったことから考えて、ポスコによる産業スパイ行為はあったと考えるのが自然だろう。

ポスコ→宝山への情報流出あった?

日鉄によると、かつてポスコに技術流出したのは「方向性電磁鋼板」に関する情報で、今回の訴訟で宝山が侵害していると主張しているのは「無方向性電磁鋼板」に関する特許だ。同じ電磁鋼板でも異なる技術だという。

技術の違いはあるものの、新日鉄住金とポスコの訴訟で明らかになった事実を踏まえると、新日鉄(現・日鉄)が1980年代から取り組んできた電磁鋼板に関する研究開発の秘密情報がポスコに流出し、さらにポスコから宝山鋼鉄に流出した可能性もある。そこから生まれたかもしれない技術や特許が発展し、今、トヨタに供与され、日鉄との間で問題になっている可能性も否定できない。

日鉄は、様々な技術が宝山に流出した可能性について「コメントできない」(広報センター)としている。

トヨタの長田准執行役員は14日、「今回の提訴は材料メーカー同士で協議すべき事案であると認識しており、弊社が訴えられたことは大変遺憾」と述べた。加えて「当該の電磁鋼板についても、取引締結前に他社の特許侵害がないことを製造元に確認のうえ、契約している」と話した。

脱炭素社会に向けたキーテクノロジーである電磁鋼板を巡る攻防は、これまで表立って争うことを良しとしなかった日本の大企業の慣習を打ち破った。日本の特許訴訟史上、画期的な出来事といえる。先端技術を巡る日本企業と海外企業との争い、そして日本企業同士の振る舞いも新たな段階に入った。

【関連記事】

・日本製鉄、トヨタと中国・宝山を提訴 鋼板特許侵害で
・知財訴訟、大口客トヨタも的 日本製鉄「虎の子」保護へ

編集委員が独自の切り口で分析「Nikkei Views」一覧へNikkei Views 』

おすすめ

〔お知らせ〕

※ 雑用と浮世の義理仕事に、見舞われている…。

※ それで、当分の間(2週間くらいか)、投稿の数を減らすことになると思う…。

※ そういうことで、ご了承願います…。

〔アノマリー〕

アノマリー
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%8E%E3%83%9E%E3%83%AA%E3%83%BC

『アノマリー(英: anomaly)とは、ある法則・理論からみて異常であったり、説明できない事象や個体等を指す。科学的常識、原則からは説明できない逸脱、偏差を起こした現象を含む。すでに説明できるようになった現象でも、アノマリーあるいは異常という名称がそのまま残ったものも多い。

超常現象学では、超常現象 [1] についての科学的研究を行う。計算機科学における異常検出とは、関連データから不正データを検出する手法一般に関する事柄である。

下記にアノマリーに関連する語句を示す。』

『経済学
伝統的経済理論のアノマリー

危険回避に見られるアノマリー(小さな値では、危険回避度はほとんど0でなければならない)[3]

指数的割引のアノマリー[4]
伝統的理論ではアノマリーであるが、行動経済学、進化経済学としては説明理論がある。
行動経済学が発見したアノマリー

・連言錯誤(リンダの問題) ※「リンダ問題」、アノマリーの一類型だったんだな…。

「リンダ問題」を解く 脳といのちに挑む量子生命科学
https://http476386114.com/2020/12/28/%e3%80%8c%e3%83%aa%e3%83%b3%e3%83%80%e5%95%8f%e9%a1%8c%e3%80%8d%e3%82%92%e8%a7%a3%e3%81%8f%e3%80%80%e8%84%b3%e3%81%a8%e3%81%84%e3%81%ae%e3%81%a1%e3%81%ab%e6%8c%91%e3%82%80%e9%87%8f%e5%ad%90%e7%94%9f/

心の会計

行動ファイナンスが発見したアノマリー[5]

ロイヤル・ダッチ・シェルの株価(イギリスの株価とオランダの株価の乖離)

週末効果

季節効果

アナウンス効果

会計学が発見したアノマリー

会計発生高アノマリー

経験値から得られた格言

相場に関連する経験値が積みあがった結果、格言のように季節に連動したアノマリーがいくつも言われる[6]。

「節分天井、彼岸底」

年明けから上昇してきた相場が2月初旬に天井となり、3月初めの時期までは下げやすいことを現した格言。江戸時代から言われている[6]。

「戎天井、天神底」

大阪市北浜で言われる格言。1月にえびす神社で十日戎が開催される時期に相場が高値をつけやすく、7月に大阪天満宮で天神祭が開催される時期に相場が底値を付けやすいことを現す格言[6]。

「5月に売り抜けろ」「感謝祭で買って新年に売れ」 ※ かの有名な、「セル・イン・メイ」だ…。

ウォール街で言われているアノマリー[6]。

サザエさん効果

日曜夜のテレビアニメ『サザエさん』の視聴率が景気と連動しているという大和総研による調査報告[6]。』

ロシア、米英豪の新枠組み批判

ロシア、米英豪の新枠組み批判

「境界構築」と国連演説
https://nordot.app/814626798280196096?c=39546741839462401

『【モスクワ共同】ロシアのラブロフ外相は25日、米ニューヨークの国連総会で一般討論演説を行った。米英豪3カ国のインド太平洋地域における安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」を念頭に「欧米の秩序の押しつけは、西側とその他の国々に境界線を引く恐れがある」と述べ、米国が専制主義国家と見なす中国やロシアに対する排他的なブロックを構築しようとしているとして批判した。

 ロシア国内には、同国を「主要な脅威」とする米欧の軍事同盟、北大西洋条約機構(NATO)になぞらえ、オーカスが「東のNATOになり得る」(ロシア有力紙)との警戒感がある。』

NYダウ反発、338ドル高 FOMC想定内で安心感

NYダウ反発、338ドル高 FOMC想定内で安心感
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN00001_T20C21A9000000/

『【NQNニューヨーク=古江敦子】22日の米株式市場でダウ工業株30種平均は5営業日ぶりに反発し、前日比338ドル48セント(1.0%)高の3万4258ドル32セントで終えた。中国の不動産大手、中国恒大集団の経営不安が和らぎ、買いが入った。午後に結果が発表された米連邦公開市場委員会(FOMC)は、テーパリング(量的緩和の縮小)の年内開始が示唆されるなどほぼ想定通りの結果となり、買い安心感が広がった。

中国恒大は23日が期日の人民元建て社債の利払いを実施すると発表した。金融システムや中国経済への悪影響がひとまず回避できるとの見方から、投資家心理が持ち直した。中国での売上高が大きい航空機のボーイングや化学のダウなど資本財や素材銘柄が買われた。米原油先物相場の上昇で石油のシェブロンも高い。

午後にFOMCの結果が発表されると、ダウ平均は上げ幅を一時520ドルに広げた。声明では景気回復が予想通りに進めば「資産購入ペースを緩めることが近く正当化される」と明示し、次回11月のFOMCでのテーパリング開始決定が示唆された。パウエル議長は記者会見で「資産購入縮小の時期とペースは、より厳格なテストに従って判断する利上げの時期についての直接的なシグナルではない」と述べ、利上げには慎重に臨む姿勢を改めて強調した。

市場では「ほぼ想定通りの内容となり、金融政策の先行き不透明感が払拭された」(大和キャピタル・マーケッツアメリカのシュナイダー恵子氏)と指摘された。FOMCに向けて積み増していた売り持ち高を解消する動きにつながった。

FOMC参加者による政策金利見通し(ドットチャート)では利上げ開始時期が来年に前倒しされた。利上げは株式にとって逆風だが「政策が後手に回り、インフレ加速が経済を冷やす懸念が払拭され、むしろ買い安心感につながった」(CFRAのサム・ストーバル氏)との声も聞かれた。

ハイテク比率が高いナスダック総合株価指数は続伸し、前日比150.449ポイント(1.0%)高の1万4896.847で終えた。スマートフォンのアップルやソフトウエアのマイクロソフトが買われ、半導体のエヌビディアなども上げた。長期金利の低下も高PER(株価収益率)銘柄が多いハイテク株の買いを後押しした。』

これから「みずほ銀行」に起こる、ヤバすぎる現実

これから「みずほ銀行」に起こる、ヤバすぎる現実…システムの「爆弾」を誰も処理できない(2021.09.17)
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/87384

※ みずほの「システム障害」問題が、こういう「構造」から生じているのだとしたら、いくら「業務改善命令」や「行政命令」を連発したところで、解決に向かうとは到底思えない…。

※ 金融庁の「強制介入」も、同じことだ…。

※ 「構造」を変更するためには、そもそもの「旧三行」の主導権争い(マウント合戦)にメスを入れて、真の「システム統合」を図る必要がある…。

※ しかし、それは「みずほの株主」がやるべきことで、たかが「監督官庁」の「金融庁」がやるべき仕事じゃ無いだろう…。

※ そして、その入り組んで複雑な「株主間」の利害調整が、つかなかったことが、現在に至る混乱・問題を引き起こしている「真の原因」なんだろう…。

※ 「株式会社」とは、つまるところ、「利益獲得目的組織」にすぎない…。

※ 各「株主」は、自己の「利益獲得」を目的として、出資している…。

※ しかし、あまりに「我を張って」、自分だけの「利益」を追求しだすと、その目的遂行のための「器(うつわ)」自体を壊してしまう…。

※ 普通は、そうならないうちに、ギリギリのところで「妥協」して、矛を収め、「器(うつわ)」自体が壊れるのを、回避するものなんだがな…。

※ おそらく、みずほの場合は、旧幕藩体制における各藩のように、ある程度「独立独歩」で、「他行の領域」から上がる「利益」を当てにしなくても、「自分のところの領域」を回して行ける体制が、ずっと「順送り」されてきたんだろう…。

※ しかし、そういう「三行体制」が行き詰ってしまっていることは、もはや誰の目にも明らかになっているように見えるな…。

『今年8月に発生したみずほ銀行のシステムトラブル。実は19年前にもこれに似たケースが起こっていたことを【前編】『「みずほ銀行」のシステム障害はなぜ防げなかったのか…エンジニアを見下す「悪しき体質」』で報じた。多発する「システム障害」の爆弾を抱えた同行は今後どうなっていくのか…?

隠れていた「古の言語」

全体像の見えない「バベルの塔」と化したみずほのシステム。その成り立ちとは、どのようなものなのか。

過去に2度、みずほは大きなシステム障害を起こしている。1度目は前編でも触れた、’02年の3行統合に伴う混乱だ。

統合時、みずほは旧3行が使っていた複数の異なるシステムを生き残らせたまま、「ゲートウェイ・システム」と呼ばれる中継プログラムでそれらを繋ぎ合わせるという方針を打ち出した。

みずほ銀行のATMコーナー(Photo by gettyimages)Photo by gettyimage

だが、この建て付けそのものに難があった。当時の事情を知るみずほ行員が言う。

「勧銀は富士通製のメインフレーム(大型コンピュータ)の『STEPS』を’88年に導入していました。また興銀は日立製のシステム『C-base』を、富士銀行は日本IBM製の『TOP』をそれぞれ持っていた。

普通、銀行が合併してシステムを統合する時は、顧客や預金などの情報をどれか一つのシステムに全て移行する『片寄せ』という方法を取ります。

しかし、みずほは合併後も『同じ担当の役員が3人いる』と揶揄されるくらい、よく言えば旧3行が対等、悪く言えばバラバラだった。そのため、各行のシステム、ひいてはベンダーとの取引を温存しようとしたのです」

統合直前、旧勧銀のSTEPSと、富士銀のTOPを並立させ、別のコンピュータでつなぐことが決まったが、あえなく失敗。それが統合時に発生した障害の原因だった。

このとき、事後処理にあたった情報系子会社の元社員は驚いたという。』

『「勧銀のシステムの一部に、’71年に第一銀行と日本勧業銀行が合併した時に作られたとみられる部分が残っていたのです」

この部分は、’80年代まで盛んに使われていたプログラム言語「COBOL」で書かれていた。’00年代には使いこなすエンジニアが激減し、「化石」と呼ばれた言語である。

「当時ですら、わかるエンジニアが現場にいなかった。もちろん設計図や手引の類いも見当たりませんでした」

たとえるなら、古い時計を部品交換のため開けてみたら、交換したい部品が古すぎて替えが利かず、やむなく油を差して閉めた、というような話だ。だがこの時は、気に留める者もいなかった。

複雑怪奇な「キメラ」
2度目の大規模障害が起きたのは’11年3月15日、東日本大震災の直後だ。災害義捐金の振り込みがひとつの口座に殺到し、システムが一度に対応できるデータ量の上限を超えてしまった。

エラーに対応しているうちに、他の取引のデータも渋滞を起こし始め、遅れてゆく。際限なく積み上がる未送信データを処理するため、ATMの全面停止を繰り返し、行員たちは夜を徹して手作業で数字を入力した。未処理の金額は一時、8300億円分にも達した。

「当時のみずほのシステムは『バッチ処理』といって、夜間に取引データをまとめて自動処理し、朝に各支店へ送信する仕組みをとっていましたが、これが機能しなくなった。

バッチ処理自体、とっくの昔に時代遅れになった手法ですが、みずほは何らかの理由でこだわっていたのです」(ITジャーナリストの佃均氏)

データの手入力が終わったあとでシステムが予期せず再起動し、振り込みや引き落としが二重に発生するミスも多発。結局、沈静化するまでに1週間もかかった。』

『これら2度の致命的な障害に懲りて、みずほは前述した新システム「MINORI」の開発に着手したというわけだ。いや、金融庁の叱責と業務改善命令に押される形で、着手せざるを得なかったというほうが正しいだろう。’11年6月のことだ。

MINORIは約4000億円の費用をかけて8年後の’19年7月に完成した。業界では、「史上初めて、銀行が自社の勘定系システムを全面再構築した」と話題になった。

だが、どうやら実態は異なる。一から作り直した「新築」ではなく、既存の「塔」をさらに建て増しした「改築」だったと考えなければ、説明がつかない謎があるのだ。

先に触れたCOBOLがいまだに使われているのである。

「ITベンダーの間では、かねて『なぜみずほは、わざわざ高齢のエンジニアを雇ってまでCOBOLを使い続けるのか』が疑問視されていました。MINORI導入時にCOBOLを使った部分をなくして、別のプログラム言語で書き換えてもよかったはずなのに、それもしなかった。

それはつまり、なくさなかったのではなく『なくせなかった』のではないか。勧銀時代から抱える古い重要プログラムやデータが、いまだにMINORIの内部で生きているからではないか—そうとしか考えられないのです」(前出・佃氏)

事実、全面改修を経たはずのMINORIのシステム構成は、不自然なほど複雑怪奇だ。普通預金を司る機器は日本IBMが作るが、その上で走るソフトは富士通が作る。他行との接続を司るシステムは、機器を日立と富士通が作ってソフトをNTTデータが作る。各業務のシステムをベンダーが分割して作り、さながら怪物「キメラ」のようになっている。

これが意味するのは、おそらく’11年に金融庁から業務改善命令を受けた時点で、みずほのシステムは根本的な再構築がもはやできない状態だった可能性だ。

古い部分と新しい部分が幾重にも折り重なり、さらに開発元も複数のベンダーにまたがっていた。しかも、この時すでにみずほは延べ3000億円近くをシステム改修に投入していた。20年以上も二人三脚を続けてきたベンダーを切り捨て、一から作り直すわけにはいかなかったのだ。

いまや、システムの全容を知る者はみずほにも、ベンダーにもいない。』

『もう、誰にもわからない

前出と別のみずほ行員が言う。

「最初に勧銀にSTEPSを売り込んだのは、ソフトウェアエンジニア出身で’90年代に社長を務め、辣腕で鳴らした秋草直之氏でした。

彼は勘定系システムの開発とメンテナンスを請け負うことで、勧銀・みずほから安定的に巨額のカネを引き出す仕組みを作った。一方のみずほは、時が経つにつれて膨らむコストを損切りできず、両者は共依存関係になっていった。富士通に経産省の後押しがあったことも、みずほの意思決定を鈍らせました」

秋草氏をはじめ、’80年代に銀行のシステム開発に携わった技術者たちは、いわば日本のシステムエンジニアの「第一世代」の人々だ。だが、この5年ほどで、彼らは次々と鬼籍に入っている。

今回、勧銀・みずほのシステム開発に携わったと思しき複数の元エンジニアにコンタクトを試みたが、いずれも故人となっていた。判明した中で唯一健在の人物は、6月に脳梗塞を発症し、取材が難しい状態だった。

「2025年の崖」という言葉をご存知だろうか。この年までに、’80年代に開発された企業の古いシステムの根幹を知る人が業界を離れ、あるいは亡くなり、ブラックボックス化する。みずほのシステムは、その最大にして最悪の事例と言える。

【前編】『「みずほ銀行」のシステム障害はなぜ防げなかったのか…エンジニアを見下す「悪しき体質」』の冒頭で罵られていた富士通のエンジニアも、5年ほど前に業界を去った。彼はこう話す。

「みずほは障害が起こるたびに、人為的なミスが原因の『人災』だと言いますが、的外れもいいところです。もう何十年も前から、爆弾は作動していた。人災などではなくて構造的な問題だと気づいていないのは、みずほの人たちだけですよ」

バベルの塔の基礎がどうなっているのか、そしてどこがグラつきの原因なのかを知る人は、もはや語る術を持たない。みずほは手探りで、いつ終わるとも知れぬ修繕を繰り返すほかない。崩壊の日に怯えながら。

『週刊現代』2021年9月11・18日号より 』

みずほ銀行へ異例の処分 なぜ金融庁がシステム管理?

みずほ銀行へ異例の処分 なぜ金融庁がシステム管理?
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB221WR0S1A920C2000000/

『金融庁は22日、システム障害が相次ぐみずほフィナンシャルグループ(FG)とみずほ銀行に対し、業務改善命令を発動した。システム運営を事実上、当局が管理する異例の措置となり、具体的な内容や今後の展開を総ざらいしてみた。

①金融庁が出す具体的な行政処分は?

みずほFGとみずほ銀に対して、業務改善命令を出した。みずほは今年2月以降、少なくとも7回のシステム障害を起こしており、運営体制の見直しを求める。みずほがシステム障害で業務改善命令を受けるのは、2002年の発足以来3回目だ。

銀行法26条にある「その他監督上必要な措置」を使って、システム運営を細かく監督して実質管理していく方針だ。具体的には、みずほがシステムの改修計画を書き込んだ「工程表」を金融庁に提出し、それを当局が1つずつ細かく精査して不要不急と判断すればストップをかける。みずほが今年2月にシステム障害を起こした原因は、デジタル口座への大量の移行作業だった。準備作業やバックアップ体制が十分か、金融庁が事前にチェックすることになる。こうした措置を銀行にとるのは初めてだ。

システム障害について謝罪するみずほFGの坂井社長(左)とみずほ銀行の藤原頭取(8月、東京・丸の内)

②なぜ異例の行政処分に踏み切る?

最大の理由は、みずほ自身がシステム障害の原因を把握し切れていないことだ。8月に起きた5回目の障害では、機器故障時に備えたはずのバックアップシステムが作動せず、複数のエラーが発生した。金融庁高官は「みずほに原因究明を一任するのはもはや困難だ」として「強力な監督体制に切り替える」という。

金融庁が「無策」ととられるリスクを避ける狙いもありそうだ。今年春にはじまった金融庁検査は既に半年がたとうとしている。その間もシステム障害は繰り返し起きており、行政処分を打つタイミングを逸しつつあった。通常の業務改善命令は「不祥事の幕引き」との位置づけだが、今回はシステム管理を通じて検査を続け、金融庁が原因究明へ一段と深く踏み込む。

③金融庁はシステムを管理・監督できるの?

金融庁にも数十人規模のシステム検査部隊がある。霞が関の官僚ではなく、外部から募ったシステムエンジニアらが中心だ。普段から民間銀行のシステムを検査したり、サイバーセキュリティーの防止策を練ったりしており、ある程度の実績はある。

ただ、みずほの基幹システム「MINORI」は日本IBM、日立製作所、富士通、NTTデータの大手4社が参画し、複雑に入り組んでいる。みずほ自身もITベンダーも制御しきれないからシステム障害が多発しているとみられ、金融庁が厳密に管理できるわけではない。原因究明も難航する可能性があり、巨大な情報システムを運営する日銀に援軍を頼む案も浮かんでいる。

システム障害を伝えるみずほ銀行の貼り紙(8月、東京都中央区)

④みずほは今回の処分を受けてどう対応するのか?

業務改善命令を受ければ、通常は1カ月ほどで経営体制の見直しなど「業務改善計画」を金融庁に提出する。今回はシステムの管理・監督のため、金融庁の検査は年末まで続く可能性がある。システム障害の根本原因が不明のままでは、経営体制のどこに責任があるのかも見通せず、業務改善計画そのものを出すタイミングを探ることになる。

一つの焦点は経営体制の見直しだが、みずほ内でも金融庁内でも、組織・人事案が一本化されていない。みずほは長引くシステム障害問題で社内の士気が著しく落ちており、一定の「けじめ」が必要になってきた。みずほ銀は藤原弘治頭取が引責辞任する組織刷新案を今春にまとめたが、金融庁検査が長期化して人事案そのものが宙に浮いている。

もう一つの焦点は、4500億円かけて完成させた基幹システム「MINORI」をどうするかだ。金融庁内には基幹システムそのものに欠陥があるとの見方があり、抜本的な改修を迫られる可能性もある。原因究明の行方次第では、新たなコスト負担も発生しかねない。

⑤海外ではこのような事例はあるのか?

米国では米連邦準備理事会(FRB)も今年2月、資金決済システムが3時間以上も動かなくなる大規模なシステム障害を起こした。ただ、米国内では大きな社会問題とはならず、ミスの受け止めについての風土の違いがある。日銀幹部は「FRBのような障害が日本で発生すれば、国会にも呼ばれて詰問されるだろう」と話す。日本は金融資産が預金に偏っており、民間銀行部門への要求水準は高い。それがシステム障害への厳しい目につながっている面がある。

また、海外の行政処分は罰金が中心だ。2015年にはニューヨーク証券取引所でもシステム障害が起きたが、関連した処分は1400万ドル(約15億円)の罰金だった。大手米銀も不正営業などで罰金処分を受けることがあるが、行政が直接的に経営体制の刷新を求めたり、システム運営を管理したりする例は聞かない。

金融庁のデータでは、日本の金融機関全体で年間1500件ものシステム障害が起きている。完全無欠にシステムを運営するのは極めて困難で、障害発生後の顧客対応などがむしろ重要になる。

みずほのATMがストップした8月には、セブン銀行もシステム障害を起こし、給与振り込みが遅れるなど1億円分の取引に影響が出た。金融庁幹部は「事例だけをみれば、セブン銀の案件も顧客に影響した」と話すが、それでもみずほへの処分が重くなるのは、システム障害が止まらないためだ。みずほは新銀行発足直後の02年、さらには11年には東日本大震災の直後にも大規模な障害を起こしている。「負の歴史」が、当局や顧客の目線を厳しくしている。

⑥みずほFGの株価や業績への影響は?

今年度の株価推移を見るとほぼ横ばい圏で、低金利下で銀行株は軒並み上値が重い。システムトラブルが起きたATMはリテール事業と関係が深いが、長く続く低金利環境下ではそもそも十分な収益を上げることが難しくなっている。みずほFGの21年4~6月期の連結純利益は前年同期比約2倍の2505億円だった。

ただ、事態の収拾が長引けばレピュテーション(評判)に傷がつき、投資信託販売や法人取引への影響も懸念される。デジタル分野での成長投資の速度が落ちたり、人材をひき付ける魅力が低下したりしていくと、中長期の成長力を下押ししかねない。

(金融グループ長 河浪武史)

【関連記事】

・みずほ銀行のシステム、金融庁が管理へ 異例の行政処分
・金融庁・みずほ、背水の陣 システム障害究明へ異例処分

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野崎浩成
東洋大学 国際学部教授

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分析・考察 取れる行政措置は、銀行法24条報告(報告徴求命令)、業務改善命令、業務停止命令と、問題の深刻さや経営姿勢等に基づき重くなります。

みずほはシステム事案において度重なる業務改善命令を受けており、次の段階となると一部業務停止命令が視野に入ります。しかし、同行のシステムは金融市場および社会生活に多大な影響を及ぼすため、「次の段階」の措置が実質的にない状況です。

このため、「管理」は異例ではありますが、当局としての監督上の責任を果たすために苦肉の策と言えます。

みずほは、「管理」まで追い込まれたことをシステム上の問題としてではなく、全ての管理態勢および文化の見直しの奇貨とすべきでしょう。

2021年9月22日 13:25いいね
44 』

〔エチオピア、関連…。〕

ティグレ州
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%86%E3%82%A3%E3%82%B0%E3%83%AC%E5%B7%9E

アクスム王国
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%AF%E3%82%B9%E3%83%A0%E7%8E%8B%E5%9B%BD

エリトリア
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%AA%E3%83%88%E3%83%AA%E3%82%A2

※ ここも、山岳国家だな…。

※ 「人類発祥の地」からは、ごく近い…。

※ それだけ、大昔から人が定住していた…、ということになる…。

※ 「赤道直下」の「高山地帯」なんで、様々な気候区分がある…、という話しになる…。

※ こういう「大気の循環」が、原因だったな…。

※「ナイル川」の源流に位置していて、ダム建設に関連して、エジプトと大揉めに揉めているんだったな…。

※ 言語区分(≒民族区分)の様子…。

※ ヨーロッパ語が出てくるのは、お定まりの「植民地支配」の影響だ…。

※ こんな感じ…。

※ エチオピアは、数少ない「独立国」だった…。

※ 各勢力の緩衝地帯になったんだろう…。

※ 山岳国家であることも、影響したんだろう…。

※「商品作物」の栽培の様子…。

※ エチオピアでは、コーヒー栽培か…。

[FT]「利上げ派」と「利下げ派」に分かれる新興国

[FT]「利上げ派」と「利下げ派」に分かれる新興国
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB060GB0W1A900C2000000/

『1年前、新興国は新型コロナウイルスの感染拡大を抑え込むためにロックダウン(都市封鎖)を実施しても自国経済は耐えられるかという問題に直面したが、先進国は巨額の財政出動を実施してその板挟みから逃れた。

ブラジルは物価上昇を抑えるため今年、政策金利を複数回引き上げた=ロイター
今、途上国が直面する大きな課題は、物価上昇を抑えるために利上げを実施すべきかどうかだ。やはり西側諸国の中央銀行がこれまで先送りしてきた問題だ。

新興国は西側諸国より、すでに経済の安定が物価上昇によって脅かされている。一因は世界的な食料価格の急騰だ。国連食糧農業機関(FAO)が算出する食料価格指数 は10年ぶりの高水準に迫っている。

こうした物価高騰は、2010~11年にかけてアラブ諸国で民主化運動「アラブの春」が広がる前にも起きている。英調査会社テリマーで新興国市場を担当するストラテジスト、ハスナイン・マリク 氏は「前回は中東だった。次は南米やアジアのどこかで起きないと、誰が言えるだろうか」と語った。

インフレ対応をめぐり、新興国の中銀はタカ派とハト派に分かれている。南米だけを見ても、主要国の物価上昇率はいずれも中銀のインフレ目標をすでに上回っている。

ブラジルは利上げ後も物価上昇止まらず

ブラジルやロシアといったタカ派的な国は今年すでに複数回の利上げを実施し、物価抑制に向けて動き出している。

食料価格が急上昇する中で下院選挙を今月実施するロシアでは、インフレは特に厄介な問題だ。ロシア中銀は先週、世界の物価上昇を抑え込めなければ2008年のような世界的な金融危機の再来を招くと発言し、タカ派的な一面を示した。

今年に入って 政策金利はすでに2.25%引き上げられて現在は6.5%。10日には追加利上げも予想されている。

ブラジル中銀も物価上昇の抑制に乗り出し、2%の記録的な低水準にあった政策金利を4会合連続で引き上げている。

しかし、ブラジルの通貨レアルが貿易相手国の通貨に対して下落し、ボルソナロ大統領の新型コロナ対策や一段と非民主主義的になる発言を投資家が警戒する中で、物価上昇は続いている。

トルコは中銀総裁を相次ぎ解任

これに対し、トルコやポーランドなどのハト派的な国では、政府が公然と景気対策を打ち、物価が急上昇している。

ポーランドでは、保守与党「法と正義(PiS)」が掲げる積極財政のもとでインフレ率が5.4%と10年ぶりの高水準に達している。これを受け、元中銀総裁や政府に批判的な人々は、物価上昇を抑え込まなければ「大惨事」を招きかねないと警鐘を鳴らした。

ハト派的なグラピンスキ中銀総裁は今週、利上げは「リスクが非常に高い」と発言した。8日の政策決定会合では、政策金利を0.1%に据え置いている。

トルコでは、4~6月期の実質国内総生産(GDP)が前年同期比で22%近く増加し、8月の消費者物価指数(CPI)総合指数が前年同月比 19.25%上昇した。

カブジュオール中銀総裁はこれまで、インフレを上回る水準に政策金利を維持する方針を示していたが8日、判断材料とする消費者物価指数をこれまでの総合指数からコア指数に変更すると発言した。同国ではコア指数の方が総合指数より低めに出るため、これまでの判断基準を引き下げた形になる。現在の政策金利は19%に設定されている。

英ブルーベイ・アセット・マネジメントのティモシー・アッシュ氏 はカブジュオール総裁が「最も早い段階で利下げする」と予想する。「金利の敵」を自認するエルドアン大統領は19年以降、金融政策の引き締めペースが速すぎるとして中銀総裁を3人解任した。

ロックダウンの厳しさが左右

アナリストらは、新型コロナの感染拡大を封じ込めるために政府が実施したロックダウンの厳しさがインフレ動向を決める要因になっていると指摘する。

インドのように経済活動を止めようとしなかった国の方が経済成長率もインフレ率も高くなっているというのだ。

「感染拡大という痛み、新型コロナの入院患者や死亡者の大幅増を甘受したということは、裏返せば自国経済の息を止めなかったということ。つまり経済活動が維持され、インフレ率が押し上げられたということになる」とテリマーのマリク氏は語った。

これに対し、厳しいロックダウンを実施した南アフリカやアジアの一部の国では逆の現象が起きている。

デフレ色が強まっている国も

目下、世界でも特に厳格なロックダウンを敷いているタイでは、8月のインフレ率がマイナス0.02%と下落に転じた 。南アフリカは昨年厳しいロックダウンを実施したにもかかわらず感染が広がり、物価上昇率は7月に直近3カ月で最低水準になった。

格付け会社S&Pグローバル・レーティングで新興国市場を担当するリードエコノミスト、タチアナ・ルイセンコ氏は、こうした国では「デフレ傾向が非常に強くなっている」とみる。

新型コロナの新規感染者をゼロに抑え込むため、隔離措置や検査などを徹底した中国では、世界の需要増加を背景に生産者物価が上昇している。ただ消費者物価の上昇率は1%前後に下がり、中国人民銀行(中央銀行)は景気回復の腰折れを防ぐために金融政策を緩和するとみられている。

経済停滞と物価の不安定化のどちらが耐えがたいかという問題は、世界各国の政策決定者に共通する。だがインフレが制御不能になった場合、大きな打撃を受けるのは間違いなく新興国市場の方だ。

タカ派陣営国の中でも現在、政策金利がインフレ率を上回っているのはロシアだけだ。他の国々が物価上昇を抑えようと思えば、もっと大幅な利上げが必要になるだろう。

By Jonathan Wheatley

(2021年9月9日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

(c) The Financial Times Limited 2021. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.

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関連リンク

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ハンガリー中銀、3カ月連続利上げ 政策金利1.5%に 』

〔ボーキサイトからのアルミニウムの精錬〕

https://www2.nhk.or.jp/school/movie/clip.cgi?das_id=D0005401570_00000

高等学校化学I/金属の精錬
https://ja.wikibooks.org/wiki/%E9%AB%98%E7%AD%89%E5%AD%A6%E6%A0%A1%E5%8C%96%E5%AD%A6I/%E9%87%91%E5%B1%9E%E3%81%AE%E7%B2%BE%E9%8C%AC#:~:text=%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%9F%E3%83%8B%E3%82%A6%E3%83%A0%E3%81%AE%E7%B2%BE%E9%8C%AC%E3%81%AF%E3%80%81%E9%89%B1%E7%9F%B3%E3%81%AE%E3%83%9C%E3%83%BC%E3%82%AD%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%88%E3%81%8B%E3%82%89%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%9F%E3%83%8AAl%202%20O%203%20%E3%82%92%E6%8A%BD%E5%87%BA%E3%81%99%E3%82%8B%E5%B7%A5%E7%A8%8B%E3%81%A8%E3%80%81%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%9F%E3%83%8AAl%202%20O%203,%5D%E3%81%8C%E5%BE%97%E3%82%89%E3%82%8C%E3%82%8B%E3%80%82%20%E6%AD%A3%E7%A2%BA%E3%81%AB%E3%81%AF%E3%83%86%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%92%E3%83%89%E3%83%AD%E3%82%AD%E3%83%89%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%9F%E3%83%B3%E9%85%B8%E3%83%8A%E3%83%88%E3%83%AA%E3%82%A6%E3%83%A0%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%86%E3%80%82%20%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%9F%E3%83%B3%E9%85%B8%E3%83%8A%E3%83%88%E3%83%AA%E3%82%A6%E3%83%A02Na%20%5BAl%20%28OH%29_4%5D%E3%81%AE%E6%BA%B6%E6%B6%B2%E3%82%92%E5%86%B7%E5%8D%B4%E3%81%97%E3%80%81%E5%8A%A0%E6%B0%B4%E5%88%86%E8%A7%A3%E3%81%8C%E3%81%8A%E3%81%93%E3%82%8B%E3%81%A8%E6%B0%B4%E9%85%B8%E5%8C%96%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%9F%E3%83%8B%E3%82%A6%E3%83%A0Al%20%28OH%29%203%20%E3%81%AE%E6%B2%88%E6%AE%BF%E3%81%8C%E6%9E%90%E5%87%BA%E3%81%99%E3%82%8B%E3%80%82

〔マイケル・シャーマー〕

マイケル・シャーマー
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%82%B1%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%83%BC

『マイケル・ブラント・シャーマー(英: Michael Brant Shermer、1954年9月8日 – )は、アメリカ合衆国のサイエンスライター、科学史家。The Skeptics Society(懐疑派協会)の創設者であり、雑誌 Skeptic(疑似科学と超常現象を科学的に調査・追究することで知られる雑誌)の編集長である[1]。The Skeptics Society は55,000人以上の会員を有する[2]。

2004年4月から、サイエンティフィック・アメリカン誌に懐疑主義のコラムを連載している。以前はキリスト教根本主義者だったが、現在は自身を不可知論者で[3] 無神論者で[4][5]、ヒューマニズムの信奉者だとしている[6]。

シャーマーはまた、自身をリバタリアンだとしている[7]。 』

「ワクチンは殺人兵器」というデマを信じる人が大量発生するのは、人類の残念な宿命である

「ワクチンは殺人兵器」というデマを信じる人が大量発生するのは、人類の残念な宿命である
https://news.yahoo.co.jp/articles/d14379966cf169470b5a8e6be5e348cea1663884?page=2

『■デマを拡散する「ワクチン陰謀論者」

 諸外国に比べて遅れていたが、日本の新型コロナウイルスのワクチン接種も少しずつ軌道に乗ってきている。菅義偉首相は「1日100万回接種」を目標に掲げて、自衛隊運営の大規模接種センターや職域接種などの実施もあり、8月9日時点で接種回数は1億回を超えた。

【この記事の画像を見る】

 ところが、この新型コロナワクチンをめぐる不穏な動きが世の中では散見される。それがワクチン陰謀論である。

 ワクチンを打つと5Gに接続できるという程度のデマならばネガティブな影響は少ないかもしれないが、ワクチンが人口削減のため生物兵器だとする陰謀論や、ワクチンがヒトDNAを改変するといったデマまで広まっている。

 この新型コロナ騒動全体についていえるように、ウィルスによる健康被害や死亡率、あるいは治療や予防に関するデマが拡散され、多くの人々の恐怖心を煽ったのと同じように、ワクチン陰謀論も今後の感染症対策にネガティブな影響を及ぼしかねない。

 それでは、なぜ人々はこうした陰謀論にはまってしまうのだろうか。そのカギを解くカギが、進化論や科学史の研究者マイケル・シャーマーが論じる、パターン性(patternicity)と、その一種のエージェント性(agenticity)である。

■トランプを「光の戦士」だと信じた支持者たち

 実は陰謀論を信じたいと思う人間の本性は、そのほかのオカルトや幻想にしばしば魅了される我々のホモサピエンスとして備えた心の仕組みと共通している。今年の初頭に流行った陰謀論はトランプ陰謀論であり、これによって情緒的保守が既に選挙で負けているトランプ大統領がなぜかまだ負けていないと主張し続けた。

 彼らは、トランプ元大統領はまだアメリカ大統領選で負けておらず、いつか表舞台に舞い戻ってくる「光の戦士」だと思っていたのである。あるいは、共産主義国は地上の楽園で、そこに行けば資本主義世界のなかにみられる、様々な苦しみから逃れられると思っていた者もいる。

 拉致被害者なんていないと信じられていた頃、日本でも、そうした人物は北朝鮮に自分から渡っていったが、その圧政に気づいたときには、時すでにおそしであった。

 「Xファイル」の主人公フォックス・モルダーのようにUFOの存在を信じたい人もいる。医療行為でいえば、癌が治せると信じて高額のお金をオカルト療法に投じる人もいる。しかしいったいなぜ、我々はこうした非科学的な信念体系を信じてしまうのだろうか。そこには何か科学的な理由やメカニズムがあるのだろうか。

■陰謀論的な発想を生み出す「2つのパターン性」

 それは、我々の脳の中には非科学的な発想を無意識のうちに信じてしまう仕組みがあるからである。本質的に私たちはパターンを探す動物である。我々は脳のなかで自動的に、AとB、BとCをつなげて考えるのであり、こうした仕組みは関連付け学習(association learning)と呼ばれるものである。

 つまり、私たちは自動的に物事のなかにパターンや関係を見いだすのであり、こうした迷信を信じてしまう背後にある一つの原理をパターン性(patternicity)という。パターン性とは、意味のあるなしにかかわらず、与えられた情報から何らかのパターンを見つけだそうとする傾向のことを指す。

 「パターン性」がはたらくときに2種類の間違いが想定される。一つ目のミスは偽陽性(ここではタイプIエラーと呼ぶ)である。これは、パターンが存在しないのに存在すると信じこむ事である。もう一つのミスは偽陰性(ここではタイプIIエラーと呼ぶ)である。こちらは、パターンが存在するのに存在しないと信じこむことを指す。

 ここで以下のシナリオを考えてみよう。あなたは狩猟採集時代の原始人で、100万年前のアフリカのサバンナを歩いているとする。そこで、目の間の草むらの中でガサガサという音が急に聞こえる。あなたはそこで瞬間的に考える。

 草むらのなかにいるのは、危険な肉食動物だろうか。あるいはただ単に風が吹いただけだろか。言うまでもなく、これらのいずれかを判断して、逃げるかとどまるかを決めることは、狩猟採集時代のサバンナで暮らすあなたの人生にとって決定的に重要な決断である。』

『■どちらのパターンを選択するべきか

 草むらの音が肉食動物だと考えて、実際はただの風だったら、あなたの予想は間違っており、タイプIエラー(偽陽性)になる。このとき、あなたは殺されることなく、ただ単に逃げることのコストがかかるだけである。換言すれば、あなたは単に慎重で用心深いだけだったということである。

 しかし、その逆のシナリオを考えてみよう。つまり、もしあなたは目の前の草むらから聞こえたガサガサという音を、単に風が吹いて草むらが揺れたことで発せられた音だと判断したが、実際には、実はその草むらに危険な肉食動物がいた場合はどうだろうか。

 こちらはタイプIIエラー(偽陰性)のシナリオであるが、言うまでもなく、この時、あなたはライオンの餌食にされるだろう。端的にいって、あなたはダーウィン的な自然淘汰の原理によって抹消されることになる。

 もしそうであれば、狩猟採集時代において、ヒトの脳はサバンナで歩いていて草むらがガサガサゆれたとき、いかなる形で判断するのが、生き残るうえで合理的であっただろうか。

■自然淘汰によって獲得されたパターン化思考

 それは10回中9回が単なる風の音だったとしても、毎回ライオンがいると疑って、毎回走って逃げた方がサバイバルのために有利だっただろう。さらにいえば、そうした判断はいちいち意識的・理性的にどうしようと悩んでいたら、時間がかかってしまい、そんなことを考えているうちにライオンに食べられてしまう。

 そこで、自然淘汰は我々の脳に、草むらのガサガサという音を聞くと自動的に、ライオンが隠れているという最悪の状況をパターン化して想起させるような仕組みを与えた。これがパターン性と呼ばれる脳のしくみである。

 このパターン性はもちろん、狩猟採集時代における草むらの音のみに反応するものではない。すなわち、パターン性があるため、ヒトはしばしば宗教、イデオロギー、陰謀論といった論理性や合理性を欠く言説のなかに何か意味があると考えてしまい、しばしばそれらに夢中になる。

 つまるところ、パターン性という脳のしくみが、我々が非科学的な言説に対して意図も簡単に騙されてしまうことの一つの理由なのである。

 このパターン性と関連する重要なバイアス――正確にはその一種――がある。それがエージェント性である。』

『■ただの出来事に何者かの意図を感じてしまう「エージェント性」

 もう一度、あなたは狩猟採集時代における原始人で、目の前の草むらがガサガサゆれたというシナリオを考えてみよう。

 あなたは狩猟採集時代の原始人で、100万年前のアフリカのサバンナを歩いているとする。そこで、目の間の草むらの中でガサガサという音が急に聞こえる。あなたはそこで瞬間的に考える。

 草むらのなかにいるのは、危険な肉食動物だろうか。あるいはただ単に風が吹いただけだろうか。このとき、草むらの音が肉食動物だと考えて、実際はただの風だったら、あなたの予想は間違っていてタイプIエラー(偽陽性)であった。

 もしそうであれば、あなたは殺されることなく、ただ単に逃げることのコストがかかるだけである。そして逆に、あなたは目の前の草むらから聞こえたガサガサという音を、単に風が吹いて草むらが揺れたことで発せられた音だと判断したが、実際には、その草むらに危険な肉食動物がいた場合は、タイプIIエラー(偽陰性)のシナリオであった。

 この時は言うまでもなく、さらには間違いなくあなたはライオンの餌食になる。実はこうしたシナリオを考えるとき、脳では草むらの音とライオンの存在の関係性についてのパターン性のみならず、もう一つのことに無意識のうちに注意を払うようになっている。それが、エージェント性である。

 エージェント性とは、目の前で起きていることが、意図をもった生き物によって引き起こされていると思いこむようなバイアスのことを指す。すなわち、我々は、特に意味のないランダムな現象にたいして、意図があると思い込んでしまうような認知の歪みを有しているのである。

■エージェント性の典型例である「知性ある宇宙人」

 エージェント性は広義にはパターン性から派生するバイアスともいえるが、ここで重要なことは、人間には、何かランダムな現象をみたとき、そこに意図を無理やり、自動的に見いだそうとする傾向があるということである。

 たとえば、このケースでいえば、風は生き物ではないが、ライオンという危険な捕食者は意図をもって動きまわる動物である。エージェント性とはパターンに意味や意図、主体性を持たせることを意味する。

 魂、幽霊、神、悪霊、天使、宇宙人、インテリジェント・デザイン、政府の陰謀、その他、我々の生活を支配していると信じられている様々な見えない存在に意図を見いだしてしまうバイアスが、エージェント性である。

 このエージェント性がアニミズムや宗教、その他様々な非合理的なイデオロギーの根源にある。宇宙人はなぜか人類よりも進んでいて高潔で、我々を救うために地球に来るという話や、人間は神が創造したものだという発想がこれらの典型例であろう。』

『■なぜ「誰かが背後で糸を引いている」と考えてしまうのか

 様々な陰謀論を引きおこすのは、このエージェント性やパターン性といった、進化政治学や進化心理学といった進化論が明らかにするヒューマンネイチャー(human nature)である。

 人間はしばしば、誰かが背後で糸を引いており、事件の真の原因は別のところにあると思ったり、本当はそのような意図を持ってなかったとしても、歴史上の指導者が何か悪意や善意を持っていたかのように思ったりしてしまう。

 ジョン・F・ケネディの暗殺は陰謀だったのか、それとも単なる単独犯の犯行だったのか。犯人は、マンホールに隠れており、直前に飛び出して狙撃したという話もある。ただし、リンカーンの暗殺は陰謀であったのであり、全てのパターンを一律に却下することもできない。

 真珠湾陰謀論については稿をかえて論じるが、ローズベルトの意図と帰結の判断についても歴史学の状況をしっかりとおさえて議論をする必要があろう。つまるところ、陰謀の中にはしばしば真実もあるのだが、エージェント性やパターン性に駆られた情緒的な議論は、しばしば主張が横滑りして事実が歪曲されたものに陥ってしまう。

■「ワクチンは殺人兵器」と語るインフルエンサーたち

 そして、冒頭で示唆したように、エージェント性やパターン性のため、我々は新型コロナワクチンの客観的リスクの評価に誤り、しばしばワクチン陰謀論におびえることになる。

 SNS上は、新型コロナワクチンを接種すると5Gに接続されるという説があたかも事実かのように議論され、新型コロナワクチン普及の背後には秘密結社があり、これが世界支配を目論見ていると疑ってかかるものもいる。

 インフルエンサーや政治家のなかには、「ワクチンは殺人兵器」「打つと5年以内に死ぬ」などと主張したり、SNS上でそもそもコロナは架空のもので、真犯人は別のところにあるなどと論じたりもする。』

『■人間に備わったバイアスを自覚することが重要

 こうした奇妙なワクチン陰謀論は、その原因(すなわちエージェント性やパターン性)を特定せず、社会で起きている表面の現象だけをみていると、どのように対処したらよいのかが分からないかもしれない。

 親や教師であれば、子供たちにどう説明したらよいのか分からず当惑していることだろう。みんながパニックに陥っているなら、本当にワクチン陰謀論は正しいのではないか、と錯覚してしまう危険もある。

 しかし、その背後にエージェント性やパターン性といったバイアスがあり、我々にはこうしたナンセンスなオカルト的言説に魅了されてしまう本性があるということがわかれば、こうした社会全体がこうした陰謀論に踊らされているからといって、この動向それ自体に必ずしも真理が含まれているわけではないと、自信をもって伝えることができるようになる。

 誤った言説に対する最高のアンチテーゼは学術的に正しい科学的な知見であり、この際は、エージェント性やパターン性といったバイアスが重要なのである。

 こうしたバイアスは真珠湾陰謀論、トランプ陰謀論、9.11同時多発テロ陰謀論(ブッシュ政権がテロの犯人)など、様々な陰謀論の背後にある究極的な原因であり、つまるところ、新型コロナのワクチン陰謀論はその一種に過ぎない。

 多くの人が進化の過程で人間に備わったパターン性やエージェント性といったバイアスを自覚し、ワクチン陰謀論の誘惑を克服して、科学的に妥当な医療行為を選択するようになることを祈ってやまない。


伊藤 隆太(いとう・りゅうた)
広島大学大学院 人間社会科学研究科助教
コンシリエンス学会学会長。博士(法学)。2009年に慶應義塾大学法学部政治学科卒業。同大学大学院法学研究科前期および後期博士課程修了。同大学大学院研究員および助教、日本国際問題研究所研究員を経て今に至る。政治学、国際関係論、進化学、歴史学、政治思想、哲学、社会科学方法論など学際的な研究に従事。主な著作は、『進化政治学と国際政治理論 人間の心と戦争をめぐる新たな分析アプローチ』(芙蓉書房出版、2020年)。』

NATOが米本土に初の統合軍司令部JFC- Norfolk

NATOが米本土に初の統合軍司令部JFC- Norfolk
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-07-19

『対露潜水艦作戦を主に大西洋と北極圏をカバー
司令官は上記作戦専門の米海軍第2艦隊指揮官と兼務
主要幹部には海軍士官がずらり

Milley NATO.jpg15日、NATOの新たな統合軍司令部(JFC- Norfolk:Joint Force Command Norfolk)がヴァージニア州Norfolkで完全運用態勢に入り、Norfolk港に停泊中の米海軍強襲揚陸艦USS Kearsarge上で行われた式典で、司令官のAndrew Lewis米海軍中将やMark Milley米統合参謀本部議長がその意義を式辞の中で語りました

NATOの複雑な軍事機構については、外務省作成のわかりやすいパワポ資料でお勉強いただくとして、ざっくり申し上げると・・・

●ブラッセルに連合軍最高司令部(SHAPE)があり、その下に
・欧州大陸を見る統合軍司令部JFC- Brunssum(オランダ)
・地中海を見るJFC- Naples(イタリア)
・大西洋&北極圏を見るJFC- Norfolk(米)が誕生

分かりやす~い外務省作成のNATO説明パワポ資料
→https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100156880.pdf

Milley NATO3.jpgJFC- Norfolk司令官Lewis米海軍中将は、北大西洋での対ロシア潜水艦作戦を用に2019年末に創設された米海軍「第2艦隊」の司令官を兼務しており、つまりのところ、この「JFC- Norfolk」はロシア潜水艦対処をNATOとして行う作戦司令部だと考えてOKです

ですから「JFC- Norfolk」は、米海軍「第2艦隊」が完全運用体制を確立した2019年12月末に「初期運用態勢」を確立し、約1年半後の7月15日に「完全運用態勢」確立して作戦司令部が正式発足に至ったという流れの中にあります

米海軍「第2艦隊」は任務が対露潜水艦作戦に絞られ、基本的に潜水艦情報を集約して作戦指揮することに特化していることから人員が200名程度と小規模ですが、「JFC- Norfolk」がどの程度の規模なのか不明です。おそらく、「第2艦隊」に欧州NATO加盟国からの潜水艦作戦関係者が派遣増強されて構成されているものと推察します

NATO Norfolk.jpgご紹介している写真は15日の式典の様子や式典後の司令官による部隊視察の様子ですが、Milley米統合参謀本部議長以外は海軍の白い制服を着た勤務者ばかりであることが見て取れます

以下では、15日の式典でのLewis新司令官やMilley議長のスピーチの一部をご紹介しますが、同議長が20分間もスピーチして、将来の大規模紛争を避けるために一丸となって取り組む必要があると強調しています(以下では概要のみ紹介ですが、Defense-News記事が多く引用してますので興味のある方はリンクから見てください)

15日付Defense-News記事によれば
Lewis.jpg●Lewis司令官は「第3の統合軍司令部となるJFC- Norfolkの創設は、北米と欧州を結ぶリンクを構築し、NATOの集団安全保障を望まれる全方位態勢に深化させるものである」、「JFC- Norfolkは初の北米所在のNATO統合軍司令部として、NATO内で大西洋の重要性を訴え、即応態勢を維持することに貢献する」と式典で述べた
●そして同司令官は「我々はもはや、WW2後に確保していた大西洋のコントロールを維持できていない」、「気候変動によるハリケーンなど強力な自然災害や、北極圏での氷の融解に起因する地下資源等を巡る争いの激化などが懸念材料として浮上してきている」、「我々はこの水域で脅威に直面している。(ロシアや中国は)大西洋の北極圏から南極に至る地域でプレゼンスを増大させている」と情勢認識を語った

Milley NATO2.jpg●Milley米統合参謀本部議長は、「JFC- Norfolkの任務は、有事に大西洋で戦うことである」、「WW2の歴史を振り返れば、ドイツのUボートに連合軍の海上輸送が苦しめられた苦い経験がある」、「欧州における将来戦の成否や、ひいてはNATOの生存は、この新コマンドの成否によるところが大である」と述べ、
●「今後世界は不安定な時代に入ってゆく。WW2後に世界秩序を支えてきた国際協力のシステムを、幾つかの国やテロ組織やならず者国家が脅かそうとしているからだ」、「我々は今後10~15年に起こる技術革新がもたらす戦いの変化に乗り遅れることなく、相手に先んじて新技術に習熟して使いこなし、軍事ドクトリン改革を並行して進めることで、優位を確保し、大規模紛争を防止する必要がある」と訴えた
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トランプ政権時代に、NATO欧州諸国の国防費のGDP比率で大いにもめ始めましたが、その件に関しMilley議長は、「即応態勢の維持と装備近代化のバランスが重要だが、相手の近代化速度は急激であり、将来を考える時、組織全体で焦点を当て取り組むべきだ」と間接的な表現にとどめています

NATO.jpg外務省の資料を眺めてみると、いかにもNATOは複雑な組織です。NATO事務局長がいて、軍事機構には軍事委員会委員長がいて、ブラッセルの連合軍最高司令部(SHAPE)の下には、JFCのほかにも陸上司令部がトルコに、海上司令部が英国に、航空司令部がドイツに、統合支援司令部がドイツに・・と大変です。

とにかく、米本土にNATOの統合軍司令部が初めて誕生したという点で意義あることだと関係者は強調していますが、作戦指揮や作戦統制が円滑に行われるよう祈念申し上げます

分かりやす~い外務省作成のNATO説明パワポ資料(12ページ)
日本とNATOの関係を整理した説明も
→https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100156880.pdf

2019年末発足の米海軍「第2艦隊」について
→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-03

NATO関連の記事
「NATO会議の雰囲気は変わるか?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-02-17
「アジアやNATOにGDP2%要求」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-19
「B-52が全NATO諸国でプレゼンス飛行」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-29-1
「NATO70周年の首脳会合は葬式の様相に?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-18-1

バイデン政権の国防姿勢関連
「オースチン長官が米軍態勢見直し指示」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-02-06
「国防副長官が所信を述べる」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-02-03
「バイデン政権で国防政策はどう変わるのか」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-09

応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997

ブログサポーターご紹介ページ
→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1

タグ:NATO Mark Milley Andrew Lewis Joint Force Command Norfolk JFC- Norfolk USS Kearsarge』

中朝貿易額8割減 21年1~6月

中朝貿易額8割減 21年1~6月、北朝鮮経済の苦境続く
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM180AU0Y1A710C2000000/

『【大連=渡辺伸】中国税関総署は18日、北朝鮮との貿易総額が2021年1~6月期は6572万㌦(約72億円)だったと発表した。前年同期比84%減で、新型コロナウイルスの感染拡大前の19年同期と比べて95%減った。北朝鮮の新型コロナ対策の一環である中国からの人やモノの入境制限が響いた。

北朝鮮は貿易の9割以上を対中国が占める。6月単月の中朝間の貿易総額は1413万㌦で、前年同月比で85%減った。単月べースでは20年秋以降、数百万㌦~1千万㌦台にとどまる月が多い。19年は毎月2億㌦以上で推移していた。

中朝間では船による輸送は一部で動いているが「貿易は止まっている」(丹東市の貿易商社)とされる。コロナ前まで盛んだった北朝鮮から中国への加工品の輸出も停止している。』

〔「日本人は貧しくなっている」はホントか?〕

 ※ 情緒的な「ご託宣」なんか、いくら聞いてもしょうがない…。

 ※ 経済・財産的な「ご高説」ならば、まず「フローの話し」なのか、「ストックの話し」なのか、そこから始めないと…。

 ※ やたら、GDPを振り回すヤツがいる…。
  しかし、そういうヤツに限って、それの「作り方」「計算方法」すら知らないからな…。

 ※ 最後は、「GDPが3倍だから、オレの方が3倍偉いのだ!」とか言い出すから、救われない…。

「日本人は貧しくなっている」はホントか? 世界で最も成功した「社会主義国家」と言われるワケを言おう(小田切尚登)
(2019年12月30日)
https://www.j-cast.com/kaisha/2019/12/30375986.html?p=all

『「日本人は貧しくなっている。貧富の差も広がっている」――。こういう話をよく耳にする。確かに、国税庁の民間給与実態調査によれば、日本の2018年の平均年収は441万円で、2007年の437万円からほとんど増えていない。世界の多くの国で所得が大きく伸びてきた中で、日本の不振は明らかだ。

だが、本当に「日本人が貧しくなっている」とまで言えるのだろうか?

そこで今回は、データを元に他国との比較をしてみたいと思う。数字はクレディスイスの「グローバル・ウェルス・レポート2019」のものを使う。大事なことは、所得ではなく「富」を見るということ。ここでいう富とは純資産、つまり資産から負債を引いたものである。

海外と比べて「お金がない!」という人は……

じつは日本人の富裕層は多かった?

所得は変動していくが、富はその結果として得られる「今の姿」を示している。とりたてて資産のない年収400万円の30歳サラリーマンよりも、自宅とそれなりの金融資産があり、年金生活をしている65歳の元正社員のほうが豊かであろう。

今の年収よりも、どれだけ蓄えがあるかのほうが重要なのである。

まず、富裕層を見てみよう。このレポートによると、日本には100万ドル(1億1000万円)超の富を持ついわゆる100万長者が300万人以上いる。

米国の1860万人、中国の440万人に次いで世界第3位である。それらに次ぐ4位が英国の240万人、5位がドイツで210万人だから、日本は金持ちの多い国であるといえる。

しかもクレディスイスの予想では、2024年までの5年間で日本の100万長者は71%増えて510万人になるという。同じ時期の米国の伸びは23%、中国は55%と予測されているので、遠くない将来に、富裕層の数で日本が中国を再び追い抜かす日が来るかもしれない。

一方で、日本には純資産が5000万ドル(55億円)を超える超富裕層が少ない。超富裕層では米国が8万人超いて圧倒的に多く、次いで中国が約1万8000人、ドイツが約7000人という順番になっている。しかし、日本は4000人弱だ。日本にはそこそこの資産家は多いが、超のつく大金持ちは少ないということだ。

日本は米中独英に比べて、富が平等に分配されている
では、富の平均から下位グループはどうだろうか。世界でGDPトップ5か国の成人一人当たりの富の平均値と中央値は、以下のようになっている。

kaisha_20191225163707.png

日本は平均値こそ米国や英国を下回るが、中央値でみると唯一10万ドルを超えていて、これらの国の中でトップだ。つまり、平均的な日本人は豊かであるということである。富がより平等に分配されていると言ってもよい。

世界で最も豊かな国はアメリカだ。そんなイメージを持っている人が多いだろう。しかし、アメリカは貧富の差が大きい。中位の人の比較では、日本人はアメリカ人よりも7割近くも多くの富を有しており、圧勝している(ただし、世界にはオーストラリアやカナダなど中央値で日本をさらに上回る国が他にあることに注意)。

富の分布について、もう少し細かく見て行こう。

kaisha_20191225163733.png

日本には富が110万円未満の人が全体の5%しかいない。それに対して米国では27%、ドイツでは41%もいる。一方、日本人の53%が1100万円以上の富を有するのに対して、英国で1100万円を超えるのは50%、米国は43%、ドイツが38%だ。つまり日本は、110万円以下しか純資産がない人が少なく、一方で過半数の人が1100万円以上の純資産を持つ。非常に好ましい状態にあると言えるだろう。

日本は富の偏在が少なく、相当程度の平等を達成した国だ。純資産が低い層が少なく、かといって超富裕層も非常に少ない。平均的な日本人は1000万円を超える純資産を保有していて、世界的には非常に豊かな部類に入る。このところ停滞しているとはいえ、日本は世界のほとんどの国がうらやむような富の分配が実現した国だといえよう。

世界で最も成功した「社会主義国家」と言われるゆえんである。(小田切尚登)』

「悪夢」の衝撃、環境一変

「悪夢」の衝撃、環境一変 主体的戦略追求の必要―ニクソン・ショック
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021071400699&g=int

 ※ こういうことは、過去に何度も繰り返されたし、これから先も繰り返されるだろう…。

 ※ 「覇権国の世界戦略」というものは、「周辺国」の国家戦略なんか、「忖度」しないものなんだ…。

 ※ それどころか、「遠慮会釈も無しに」、「戦略変更」されるものだ…。
 
 ※ だから、日頃から「その世界戦略を、予想しておく」ことが、死活的に重要となる…。

 ※ 「実行すること」は、「覇権国」じゃなければ到底ムリだ…。

 ※ しかし、「考えておくこと」「頭の中を探っておくこと」は、「周辺国」でも可能である…。

 ※ その「読みの精度」が、「国家の死命」を制する…。

『1971年のニクソン米大統領の中国訪問発表は、中華民国(台湾)と深い関係を築いていた日本を激しく揺さぶった。国際環境を一変させる大国外交の力を目の当たりにした日本は今、米国の戦略を透徹した視点で見極めた上で、主体的に国家戦略を追求できるかどうか試されている。

対中、関与から競争へ 「ニクソン・ショック」50年、協調模索も深まる対立―米

 当時の佐藤栄作首相が牛場信彦駐米大使を通じニクソン氏の声明発表予定を知ったのは、発表の数分前とされる。「『朝海の悪夢』が現実になった」。牛場氏はこの後、ジョンソン米国務次官にこう語った。「朝海の悪夢」とは、頭越しの米中和解を突然告げられることへの不安を漏らした朝海浩一郎元駐米大使の発言を指す。

 佐藤氏は約9カ月前の70年10月にニクソン氏と行った会談で、対中政策の将来の発展について「緊密な連絡と協議を続ける」ことで合意していた。はしごを外された形となった佐藤氏は、情報収集力などをめぐって批判にさらされ、72年7月に退陣。後継の田中角栄首相は就任から3カ月を待たずに訪中し、米国に先んじて中国との国交正常化を実現させた。

 今日の米中関係は、当時とは逆の道をたどっている。バイデン米政権は「中華民族の偉大な復興」を掲げて強国路線をひた走る中国を「専制主義」と見なし、対決色を強める。一方で、日米関係は十分成熟しており、佐橋亮・東京大東洋文化研究所准教授は「(新たな)『ニクソン・ショック』は起きない」とみる。

 ただ、良好な日米関係は、必ずしも日本の外交・安全保障戦略の多角化につながるわけではない。佐橋氏は「米国は今後ますます中国に厳しくなり、中国もアジア各国に踏み絵を迫るようなアプローチを始めようとしている。どっち付かずの対応は難しくなっている」と指摘する。

 日本が直面しているのは、こうした制約の中で、米国追随にとどまらない地域・国際秩序のビジョンを描くという課題だ。日米は年内に再び外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)を開催する予定で、国家安保戦略や防衛計画の大綱の改定も取り沙汰されている。一連の過程で、対中抑止強化に加え、人権を含む普遍的価値の位置付けや経済安保などをめぐり広範な議論を交わす必要が出てきそうだ。 』

ラオスの小規模社会集団における人口動態・再生産・生業変化の相互関係の解明

ラオスの小規模社会集団における人口動態・再生産・生業変化の相互関係の解明
http://www.geog.lit.nagoya-u.ac.jp/prelic/prelic1.html

 ※ ラオスとか、あまりよく知らない国だ…。

 ※ ちょっと、調べた…。

 ※ 学術的な研究は、結構なされているようだ…。

 ※ 大学や、シンクタンクの論文が、多くヒットした…。

 ※ その一つを、紹介しておく…。

※ この図は、上記の論文中にあったものでは無いが、検索中に見つけて、参考になるんでキャプチャした…。国家体制を、「民主主義vs.独裁」「資本主義vs.社会主義」という軸で斬ったものだ…。

※ ラオスは、まあ、「小型の中国」と言ったところか…。

※ ミャンマーは、一時「民主化した」と喧伝されて、米・日寄りの国家体制になったハズだった…。

※ 今また、「軍政」が復活して、先祖返りしたという話しになるのか…。

※ タイも、「軍事政権」に戻ったな…。

※ シンガポールは、資本主義ではあるが、「開発独裁」に近い国…。

※ ロシアは、マルクスレーニン主義的な「社会主義国」では無くなったが、「警察力」「情報機関」を駆使しての「監視・統制国家」…。

※ サウジアラビアは、イスラムの「ワッハーブ主義」による「非民主主義国」…。やっと、最近、女子が車を運転することを認めたな…。

※ スウェーデンは、「社会民主主義」国家だったのか…。

※ この「対立軸」、けっこう使えるな…。

※ 北朝鮮が欄外なのは、ここはまた「主体思想・主体主義」を標榜するんで、「キム王朝」とも称される、ちょっと異色の国家体制だからだろう…。

『終了したプロジェクト(Prelic 1)について
課題名
ラオスの小規模社会集団における人口動態・再生産・生業変化の相互関係の解明 (Prelic 1)

研究費種目
日本学術振興会 科学研究費補助金 基盤研究(A)(海外学術)
期間
2013年4月1日〜2017年3月31日

研究の背景

ボズラップによる農業発展段階論と現実世界

人口変動、再生産、生業変化の相互関係の把握は、グローバル化時代の人類の生存基盤を考える上で極めて重要な研究です。しかし、生存基盤に関わる人口と食料といった問題に関しては、人口の増加に伴って人びとは農業集約化を進展させるとしたBoserup(1965)による農業発展段階論しか示されていません。実際、人類は農業集約化を進展させ、過去40年間で穀物生産を倍増することに成功しました。そして、計算上は世界の全人口に十分な食料が行き渡ることになっています。ところが、現実には8.7億もの人びとが栄養失調の状態にあります。これは、国家スケールでの統計を用いて人口変動と食料供給の関係を論じても、それは机上の空論に過ぎないことを表していると言えます。

Boserup, E. 1965. The Conditions of Agricultural Growth: The Economics of Agrarian Change under Population Pressure. Chicago: Aldine. [ボズラップ, E. (安沢 秀一, 安沢 みね 共訳) 1991.『人口圧と農業―農業成長の諸条件』ミネルヴァ書房.]

小規模な社会集団を分析する重要性

実際の人びとの営みは、小規模な社会集団を基本単位として繰り広げられています。しかも、近年はグローバル化に伴う情報化や近代化が一層進んでおり、家族計画が浸透し、公衆衛生も改善されており、食料生産だけが人口を規定する要因になっていません。したがって、人口と経済・社会・文化・疾病・衛生との関係、およびそれらが人口動態に及ぼす研究が求められています。しかし、先進国のような住民登録制度が整い、国勢調査が実施されている国々を対象とした研究成果は蓄積されているのですが、各種統計の整備が遅れている新興国や途上国を対象とした研究はほとんど実施されていません。現在、世界人口の多くが新興国・途上国で占められており、それらの国々の小規模社会集団の動態把握が人口を扱う様々な学問分野の関心を引いています。

これまでの問題点

ところが、統計未整備国の集落において個人単位の完全なデータを取得するには、多くの労力と時間が必要とされるため、これまでは生業変化の断片的な情報から人口変動の要因を推測することしかできませんでした。本研究プロジェクトのメンバーによるタイとラオスの集落を対象に実施したサンプル調査では、出生率低下の原因は、家族計画と医療・公衆衛生の普及のみならず、若年層の出稼ぎによる晩婚化も関係していることが示唆されました。また、ラオス南部の集落で実施した本研究プロジェクトの事前調査では、出稼ぎが進展した要因には、分割相続によって農地が細分化され、一人あたりの経営耕地面積が縮小していることも関係していることが分かりました。すなわち、人口と生業変化だけではなく、世帯の再生産も含めて、各要因は相互に関係しあっており、各要因間の相互関係の分析が小規模社会集団の動態把握には欠かせないのです。

fig1

プロジェクト準備

そこで、これまで小規模社会集団の生業変化、人口動態、ライフコースなどの解明を実施しているメンバーが集まって何度か研究会を開催し、さらにラオスでの事前調査を実施して、本研究を着手する準備を行ってきました。ラオスは、移行経済の最中で急速に貨幣の重要性が高まっており、現金獲得のために生業構造を変化させている社会集団がある一方で、未だに完全な自給自足的な生業を営む社会集団も多くみられます。同じ国民国家の枠組みで異なる生業構造を有する社会集団を対比させながら、人口、再生産、生業変化を論じることができるラオスは本研究プロジェクトで最も適した地域であると言えます。

研究目的

そこで本研究では、ラオスにおいて、自給的な天水田を営む地域および焼畑を営む地域の2つを対象に、人口動態・再生産・生業に関する各要因間の相互関係(右図)を分析し、どのような変数が小規模社会集団の動態に影響しているのか解明することを目的としました。この目的を達成するため、ラオス側のカウンターパート機関と共に対象とする小規模社会集団の全構成員を対象に、個人単位での出生・死亡・婚姻・移動・教育・夫婦間の性交渉・収入・支出などのデータ、さらに農地一筆単位の土地所有データを過去に遡って取得しました。ラオスは、過去にベトナム戦争による動乱と社会主義化、そして移行経済などの重要なイベントが含まれており、政治・経済・社会の変化に伴い、人びとがどのような対応をしてきたのか、人間と社会の関係の総合的な解明が可能となります。

研究の意義

本研究は個人レベルでのデータ分析を通し、ライフコースや土地の獲得戦略、経済的な地位、都市・農村間の移動と出生力との「具体的な因果関係を検証する」こと、そして小規模社会集団の動態に影響する変数を解明する点に特徴があります。個人レベルのデータは、それより上の集団レベルのデータに容易に接合することができ、幅広い応用も期待されます。

ラオスのような後発開発途上国では、いままさに工業化や情報化が始まろうとしていますが、これまでは近代的な経済社会との関連を強く意識されずに研究が行われてきました。ラオスの小規模社会集団のような伝統的社会を対象に近代的な経済社会の枠組みをいかに組み込んで分析をするかが問われており、今回の研究には大きな意義があります。さらに、新興国・途上国では、各種統計の精度を検討したりするなど、統計に取り組んでいる自国の研究者が非常に少ないのが現状です。今回、現地の研究者や政府機関の実務家と共同で作業することで、統計から理解できること、現地で実態を調査しないと理解できないことなどを議論し、ラオスの統計の精度向上や統計利用技術向上などにつなげられることにも意義を見いだすことができます。

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研究方法

「生業班」、「人口変動班」、「再生産班」の3つの班を構成して、ラオスの2つの小規模社会集団を対象に、生業、人口変動、再生産に関わると考えられる様々なデータを取得するための現地調査を4年間実施しました。さらに、各要因は相互に重なり合っており、調査項目に関しても重複するため、全メンバーが研究の進捗や問題点などを報告し、情報を共有するための共同研究会を年2回程度開催することで情報の共有化を図りました。

対象地域

ラオス中南部(右図)のサワンナケート県ソンコン郡で自給的な天水田を営む「調査地1」およびセポン郡で自給的な焼畑を営む「調査地2」を選定しました。生業形態の違いから両地域を比較することも試みました。

「調査地1」は、自給的な天水田を主業とするラーオ族で、タイへの出稼ぎが多くみられます。ラオス中南部の中心都市であるサワンナケート市街地からおよそ1時間の距離ですが、サワンナケートへの通勤者はいません。「調査地1」からは、バンコクに多くの出稼ぎに出ていることから、バンコク周辺でも調査を行いました。

「調査地2」は、自給的な焼畑を営むモン・クメール語派の少数民族のマンコン族の集落です。タイへの出稼ぎは見られず、現在でも自給自足的な焼畑耕作で食料を自給し、林産物採取などで現金収入を得ています。

研究成果

成果は、人文地理学会、日本地理学会、日本人口学会、International Geographical Union (IGU)などで、研究成果を公表いたしました。これまでのプロジェクトの年度報告書と成果に関して、ご関心を持って頂いた方は、日本学術振興会『KAKEN』にアクセスしてください。

【日本学術振興会】 【日本地理学会】 【人文地理学会】 【日本人口学会】

Copyright© 2014 Population dynamics, reproduction and livelihood changes in small-scale communities of Laos (Prelic)』

ハイチ大統領、武装集団が暗殺

ハイチ大統領、武装集団が暗殺
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB07C6F0X00C21A7000000/

『【サンパウロ=共同】カリブ海のハイチからの報道によると、同国のモイーズ大統領が7日未明、首都ポルトープランス近郊の自宅に押し入った武装集団に暗殺された。ジョゼフ暫定首相が発表した。

大統領夫人も撃たれて病院で治療を受けている。武装集団の身元は不明だが、スペイン語や英語を話していたという。

ハイチでは昨年から議会が機能不全に陥り、今年2月にはクーデター未遂が起きるなど政治や社会の混乱が続いている。』

ハイチで大統領暗殺 暫定首相は非常事態を宣言
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN07EQA0X00C21A7000000/

『【メキシコシティ=宮本英威】カリブ海の島国ハイチで7日未明、モイーズ大統領が武装集団から襲撃を受けて暗殺された。ジョゼフ暫定首相は同日、2週間の非常事態を宣言して空港を閉鎖する措置をとった。9月に大統領選を控える中、不安定な政治や社会情勢が続いてきたハイチはいっそう混乱を深めそうだ。

モイーズ氏は現地時間7日午前1時(日本時間同午後2時)頃、首都ポルトープランス郊外の自宅で襲われて亡くなった。53歳だった。同氏はバナナ輸出業者から転身して、2017年2月に大統領に就任していた。

モイーズ氏の妻も銃撃されて負傷しており、米マイアミで治療を受ける。ロイター通信によると、警察当局は7日夜、銃撃戦の末、容疑者4人を射殺し、2人を拘束した。ジョゼフ暫定首相は「警察と軍が管理している」と強調し、国民に対して冷静な対応を呼びかけた。

ハイチのエドモン駐米大使は武装集団の犯人像について「よく訓練されたプロの集団だ」との見解を示した。ハイチの公用語はフランス語とクレオール語だが、武装集団はスペイン語や英語を話していたという。

国際社会からは暗殺を非難する声明が相次いだ。国連のグテレス事務総長は「暗殺を最も強い言葉で非難する。犯罪の加害者は裁判にかけられなければならない」と指摘した。バイデン米大統領は「凶悪な行為を非難する。ハイチの安全を確保するために支援する準備がある」との声明を公表した。』

『南米コロンビアのドゥケ大統領は「民主的な体制を保護するため」に米州機構(OAS)に対して使節団を送る必要性について言及した。

ハイチでは政治混乱が続いていた。2月7日にはモイーズ氏の殺害を計画していたとして国家警察幹部を含む23人が逮捕された。モイーズ大統領の任期を巡って与野党は激しく対立している。モイーズ氏の退任を求めるデモが大規模化して、2月には混乱の中で死者も出た。

ハイチ大統領の任期は5年だ。モイーズ氏は22年2月までの任期を主張してきた。ただ野党は前大統領の任期が満了した16年2月を起点に、21年2月の退任を求めていた。モイーズ氏は大統領権限の行使で政策を打ち出しており、反発も強かった。

世界銀行によると、ハイチの人口は19年時点で1126万人。1人当たり国民総所得(GNI)は1330ドルと、世界の最貧国の一つとして知られる。10年の大地震では30万人以上の死者が出て、16年には大型ハリケーン「マシュー」で1000人以上が亡くなった。新型コロナウイルスの感染拡大も重荷になっている。』

ジョヴェネル・モイーズ、ハイチ大統領、自宅での攻撃で暗殺

ジョヴェネル・モイーズ、ハイチ大統領、自宅での攻撃で暗殺-政府の声明
https://www.newsweek.com/jovenel-moise-haiti-president-assassinated-home-government-statement-1607476

『(Google翻訳文)
ハイチのジョヴェネル・モイーズ大統領が暗殺されたと、同国暫定首相の事務所が水曜日早くに発表した。まだ正体不明の加害者が彼の家で大統領を殺した。妻のマーティン・モイーズ夫人が負傷し、病院に搬送された。

クロード・ジョセフ暫定首相はフランス語でモイーズの死を確認する声明を発表した。

「2021年7月6日火曜日または7時7日の夜、スペイン語を話す身元不明の個人のグループが共和国大統領の私邸を攻撃し、国家元首に致命傷を負った。銃声で負傷したファーストレディーは、彼女のケースが必要とするケアを受けている。

「この凶悪で非人道的で野蛮な攻撃を非難し、クロード・ジョセフ暫定首相とCPSN(国家警察最高評議会)は、人口に冷静さを求める」

ニューズウィークニュースレターのサインアップ>
「国の国家安全保障状況はハイチの軍隊ハイチ国家警察の管理下にある。全ての措置は、国家の継続性と保護を確保するために講じられます。

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ハイチはまだウイルス症例スパイクとして最初のCOVIDワクチンを待っています
一時的な地位移民は永住権を持つ資格がない:SCOTUS

Haiti President Killed
2020年2月7日、ハイチのポルトープランス郊外、ペション・ヴィルにある自宅でインタビューを行ったハイチのジョヴェネル・モイーズ大統領。モイーズは自宅で暗殺され、最初の女性は政治的に不安定な中で入院しました。
AP写真/デュー・ナリオ・チェリー,ファイル


2018年、同国の立法選挙は、モイーズの任期がいつ終了すべきかなど、紛争に続いて遅れた。大統領はその時から法令で判決を下し、強い反対に直面していた。今年初めに彼の支配に対する大規模な抗議と、最近のギャングによる誘拐の増加に反応して、大規模な抗議行動があった。

モイーズは大統領の任期が2022年2月に終わる予定だと主張したが、彼の反対派は前任者のミシェル・マーテリーが辞任してから5年後の2021年2月7日に任期を終えるべきだったと主張した。彼の辞任を求める声もあった。

熱帯暴風雨エルザは、カリブ諸島をヒットする設定続きを読む熱帯暴風雨エルザは、カリブ諸島をヒットする設定

モイーズは2015年の大統領選挙で勝利したが、詐欺の告発と新しい世論調査が行われる中で無効になり、彼は勝利した。その後、2017年に就任。

彼はまた、行政府を強化するハイチ憲法の変更案に対する批判に直面している。国は、地方選挙や立法選挙と一緒に9月に質問に関する国民投票を行う予定です。

ハイチは西半球で最も貧しい国であり、先月症例が急増し始めたため、最近COVID-19パンデミックに苦しんでいます。国家はまだワクチンを待っている。

モイーズはハイチの政治に入る前は実業家で、自動車部品やバナナ生産の販売に携わっていました。彼はバナナを輸出する役割のためにネグ・バナンまたは「バナナマン」の愛称で呼ばれ、ドナルド・トランプ元大統領と比較しました。

「トランプ大統領と私は起業家であり、起業家が望んでいるのは結果なので、我々は我々の人々のために提供することを確実にするためにすべてを整えることを願っています」と、Moiseは2017年の次期大統領が言いました。

ニューズウィークはハイチ大使館にコメントを求めた。

更新 7/7/21 8.10 a. ET.m: この記事は、より多くの情報と画像を含むように更新されました。

ジョヴェネル・モイーズと最近のハイチの抗議行動の画像。』

都議選、自民が第1党 自公で過半数には届かず

都議選、自民が第1党 自公で過半数には届かず
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC015EY0R00C21A7000000/

『任期満了に伴う東京都議選(定数127)が4日、投開票された。自民党が議席を伸ばし、第1党となった。小池百合子知事が特別顧問の地域政党「都民ファーストの会」は後退し、自民と議席数が拮抗。自民、公明両党は過半数に届かなかった。共産党、立憲民主党は堅調だった。

42選挙区に271人が立候補した。無投票となった小平市を除く41選挙区で投票が行われた。投票率は42.39%と2017年の前回に比べて8.89ポイント下がり、過去2番目に低かった。

自民は前回敗れた中央区などで議席を獲得した。現有25議席を上回ったが、上積みは小幅にとどまった。自民と選挙協力した公明は現有議席と同じ23人を擁立し、全員が当選した。

都民フは議席を減らしたが、自民に拮抗する勢力を確保した格好だ。当初は現有議席を大幅に割り込むとの見方もあったが、選挙戦の最終盤に小池氏が一部選挙区の応援に入るなどてこ入れの効果が出た。』

『共産党は現有の18から議席数を伸ばした。立憲民主党は中野区や武蔵野市などで勝利し、現有7議席から上積みして2ケタに乗せた。地域政党の東京・生活者ネットワーク、日本維新の会も議席を獲得した。

国民民主党、れいわ新選組、嵐の党は議席を獲得できなかった。

都議選の結果は直後の国政選挙に大きく影響した例もあり、今秋に想定される衆院選の前哨戦としても注目を集めた。各党とも幹部が選挙区の応援に入るなど、国政選挙並みの態勢で臨んだ。

選挙戦ではワクチン接種の加速をはじめとする新型コロナウイルス対策のほか、苦境が続く事業者への支援、東京五輪・パラリンピックへの対応が主な争点となった。

期日前に投票したのは142万5192人。17年の前回に比べて5%増加し、過去最多を更新した。コロナ禍で投票所の「密」を懸念し、早めに投票した有権者も多かったとみられる。

東京都選挙管理委員会によると、6月24日時点の選挙人名簿登録者数は1151万3990人だった。』