もっと恐ろしい話しがある…。

それは、MAV(micro air vehicle 超小型無人飛行機)に関する話しだ。

 パトリシア・コーンウェルに、「検屍官ケイ」シリーズってのがある。
 弁護士免許かつ医師免許を有する検屍官ケイが、数々の「サイコパス」を相手にして、微細な証拠物から真犯人を突き止めていく、という筋立てだ。
初期の三-四作目くらいまでは、相当な傑作だと思われ、ジジイも好きで、大分文庫本を買った。
  しかし、最近は、訳者が変更になったり、年齢の設定を若返らせたりして(大体、年に1作くらい出版してたんだが、長期のシリーズになったんで、最初の年齢の設定(45、6才? )から17、8才位も年取ったことになって、ちょっとアクションさせるには、無理な年齢になってしまった。そこで、小説中の年齢の設定を若返させることにしたらしい)、文章の調子も、昔とは随分違ってしまった…。それで、なんかつまらなく感じるようになって、離れた…。
 そのコーンウェルの第何巻かに、このMAV絡みの話しがあるんだよ。
 その時はただ、「ふーん…。」という感じで、面白く読んだんだが、事実に基づく題材だったんだな…。この人は、徹底的に取材してから書くので、有名だった…。その筋から、情報提供を受けたんだろうな…。

中央やや右よりの、黒い物がMAVだ。
拡大すると、こんな感じ…。
人間の手のひらと比較すると、このサイズ…。
鳥型のタイプもある…。

この鳥型には、監視カメラが仕込んであって、ターゲットの監視映像を送ってよこすことができる…。

電線に鳥みたいな物が留まっている場合、それが本当に鳥なのか、確認する方がいいんじゃないか? 特に、その筋の監視対象になるような心当たりがある人は…。

むろん、上記の虫型の場合、爆薬を仕込んでおいて、首筋のところで爆発させて暗殺する、という使い方もできる…。

ウルサく虫がたかって来る場合、本当にそれが虫なのか、確かめたほうがいいんじゃないか…?

中国がAIや無人機で、覇権を握る可能性はあるのか…。

結論から言えば、「無いことでは、無い。」

まず、中国側の論者の主張するところを、見てみよう。

【AI開発でなぜ中国が短期間の間に米国の水準に追いつき追い越せたか。その理由は何か。-中国側の論者】

一、中国のAI研究者の数は驚異的なスピードで増えていること。

二、中国は大量のAIデータを生み出していること。データが増えれば、より優れた製品と高度のAIが得られる。 中国人のモバイル決済は米国人の50倍、商品の注文数は米国の10倍。これがAIモデル開発のための重要な参考データになっている。

三、中国は米国のコピー時代を終え、新しい特性を開発し始めたこと。微博、淘宝はツィッターやイーベイよりも機能性の高い製品とサービスを生み出している。

四、中国人はデータのプライバシーを気にせず、道徳上の問題に対する認識が薄い。企業は危険を顧みず、実行することでビジョン実現に専念していること。

五、中国政府は「トライ・アンド・エラー」を認めており、AI企業に巨額の資金援助をしていること。企業は資金調達にかかる時間を短縮でき、より速やかに開発に専念できる。

六、中国は国全体が大胆な冒険精神を持っていること。消費者も企業も政府も中国経済がデジタルへの変換で輝かしい未来を拓けると確信していること。』  http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55053

 日本側の論者でも、警鐘を鳴らす論稿は、出ている。次は、宮崎正弘氏の書評だ。本の宣伝と受け取られるとイヤなんで、あえて書名は伏せておく。興味のある人は、リンクで飛んで、自分で確認してくれ。

『半導体もAIも半熟過程の中国が、しかし最先端の米国と伍すことが可能なのは、AIが経験工学ではないからだ。
 兵藤氏は独自の情報網から、そう予測されるのだ。
固定電話時代からいきなり携帯時代に突入した中国は、消費においても、現金からカード時代をこえて、いきなりスマホ決済時代に突入したように、設計図とソフトを米国から盗み出して、見よう見まねの自給体制を確立し、ファーウェイが世界の奥地で使われているように、世界を席巻できる。
 悪夢が現実、まだ中国に夢を描いて出て行ったAIならびIT産業は、いずれ米国が仕掛ける新ココムによって制裁の対象にさえなる。』  http://melma.com/backnumber_45206_6770403/

要は、中国ではプライバシーなんかに考慮を要せず、好きなだけ個人の情報を収集でき、「ビッグデータ」を揃えられる、ってことだ。
 ジジイあれこれの投稿でも上げておいた( https://http476386114.com/2018/12/07/%e3%82%a2%e3%83%a1%e3%83%aa%e3%82%ab%e3%81%af%e3%80%81%e3%83%95%e3%82%a1%e3%83%bc%e3%82%a6%e3%82%a7%e3%82%a4%e3%82%92%e6%bd%b0%e3%81%99%e3%81%a4%e3%82%82%e3%82%8a%e3%81%aa%e3%81%ae%e3%81%8b/ )が、現AIは、単なる「行列データ」の変形・演算に過ぎない。結局、どれだけ多量の質の高い「行列データ」を揃えられるか、の勝負になっているんだよ。この点で、中国には、優位性がある。

 次に、無人機による攻撃の現状を、見てみる。

 まず、米軍の無人機攻撃からだ。

悪名も高い米軍のMQ-9だ。「リーパ-(死神)」とか言う、ニックネームがついている…。
こっちは、MQ-1(プレデター 捕食者)だ。ミサイルが、見えてるな…。

こういうもので、次々と中東やアフガンでテロリスト(と、アメリカが称する勢力)を、攻撃して来たわけだ…。

そして、その操縦の様子は、次のような感じのものだ…。

空調の効いた部屋で、画面を見ながら操縦・攻撃し、任務が終われば、サッパリとシャワーを浴びて、日常生活を送る…、というわけだ。無人機には、カメラが積んであり、衛星回線を通じて画像は、遠く離れたアメリカの無人機用の空軍基地まで送信され、その画像を見ながらこちらのコントローラーからの操縦命令も、衛星回線を通じて無人機側に送られる、というわけだ。仕組みとしては、プレステでオンラインゲームをやるのと、殆んど変わらない…。

むろん、問題が無いわけでは、無い。人間が目視で攻撃目標を捕捉するのと異なり、あくまで積んでるカメラからの映像で判断する…。それを衛星回線でやり取りするわけだから、遅延・送受信不良の問題はつきまとう…。誤爆で、民間人が巻き込まれる事例が多く生じて、厳しい批判にさらされた…。オバマ政権も、末期には、中東やアフガンでの無人機攻撃に対する中止命令を、出さざるを得なかった…。

ただし、無人機の開発自体を中止したわけではない。現在も、着々と開発中だ…。まだ、実戦配備はされていないようだが、開発中のものを紹介しておく…。

こっちは、X-47Bだ。

次に、中国の無人機開発の現状を見る。

軍事パレードに登場したものだ。胡錦濤さんのようだな…。ミサイルのようにも見えるが、「中国 無人機 パレード」でヒットした画像なんで、無人機なんだろう…。その数に、驚くな…。
なんか一見すると、茶色い地面にラジコン模型機をならべたようにしか見えないが、どうしてどうして、同時に自律の編隊飛行の世界記録を打ち立てた(米軍の記録を、超えた)という記念すべき画像なんだよ。

中国・軍事用ドローン119機「集団飛行」に成功…米軍の記録を抜く
https://roboteer-tokyo.com/archives/9159

虹彩-5、と呼ばれているものだ。まあ、MQ-1のソックリさんだな…。
翼竜と呼ばれているものだ。ミサイルの登載が可能のようだな…。
利剣と呼ばれているものだ。X-47のソックリさんだな…。
BZK005と称されている偵察機だ。先般、尖閣付近に飛んできて、防空識別圏に侵入したんで空自がスクランブルをかけた…、という事案があったろう。それが、これだったと言われている。

こういう風に、画像を見る限り、中国は着々と無人機開発のピッチを上げているように見受けられる…。それが何故可能なのかという考察だが、中国側の論者が言うようにAI開発における優位性、だけではないようだ…。

と言うのは、上記画像からも見て取れるように、米軍機のソックリさんがあまりに多い…。どうやってその設計図を手に入れているのか…。

むろん、米軍はあちこちの戦線に無人機を投入しているから、敵側に鹵獲されてしまう、という事案も生じる…。

『(※ 2009年)九月十三日、米軍がアフガニスタンで使用している無人攻撃機の一機が制御不能に陥り、カザフスタンや中国方面に向かう事故が発生。米軍はすぐさま、有人戦闘機を発進させ、無人機を追尾し、ミサイルで撃墜して事なきを得た。 米軍は昨年、中国やアフガン国境地域を偵察中にプレデター機を墜落事故で失っている。この墜落地点が中国国境から二十キロ程度だったことから、米軍内では「中国に機体を持ち去られた可能性もある」と懸念されていた。 実際、米誌ディフェンス・ニュースでは今年八月、中国軍がすでに米機をコピーして無人機開発に乗り出していると伝えている。同誌によれば、昨年十一月、広東省珠海で開催された航空ショーで明らかに米軍機を模倣したと見られるデザインの無人機モデルが展示されたという。これらを受け、米軍は今回、撃墜という強硬措置を取ったとみられる。』
https://www.fsight.jp/5232 

この例では、有人機で撃墜して事なきを得たようだが、最近でもイラン側に無傷で鹵獲され、すぐさま中国が調査団を送った、という記事を読んだぞ。イランと中国は、反米という点で利害が一致してるんだよね。

それだけでなく、アメリカは中国がハッキングや例のスパイチップなんかで、軍事機密情報を盗んでいる…、と疑っている。ファーウェイ潰しも、こういうAI・無人機絡みで捉える必要があるだろうな…。

中国は、無人機を開発・実戦配備しているだけではない。中東やアフリカの独裁的な国々に、無人機を売り込んでいるんだよ。兵器ビジネスで稼いでもいるんだ。

【中国、各国へ無人機の売り込み】
中国がサウジで無人攻撃機の製造修理へ
https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-29

イエメンで中国製無人機が反政府指導者を爆殺―専門家「商機到来」
https://news.goo.ne.jp/article/recordchina/world/recordchina-RC_651222.html

中国無人機の脅威(※ 5年前の記事)
https://plaza.rakuten.co.jp/foret/diary/201307040000/

中国製無人機「翼龍」 アラブ、ウズベキスタンに輸出(※ 6年前の記事)
https://www.excite.co.jp/news/article/Searchina_20121116047/

しかしまあ、日本が平和ボケしている間に、世界は遙か彼方の遠い方に、行ってしまったんだなあ、というのがジジイの感想だ…。

アメリカはソフトバンクがArm社を買収した時点からマークしてた…、という情報があったんで、紹介しとく。

http://fukadamoe.blog.fc2.com/blog-entry-4059.html

 これが本当だとすると、Arm社設計・開発のcoretexシリーズのライセンスが、ファーウェイと関係が深いとされるソフトバンクを通じて、ファーウェイに流れていくことを、買収の段階から警戒してた、ってことになる。

 まあ、実際にKirin( https://www.gizmodo.jp/2018/08/huawei-kirin-980.html )とか、開発してるわけだからな…。そういうことに、どの程度ソフトバンクが噛んでたのかは、知らないが…。

 いずれ、ソフトバンクは、ちょっとマズい立場に立たされた、ということになるんじゃないのか…。

マシン語の話し

 ※ Javaの話しとか、サイバー攻撃の話しの記事を読むとき、ある程度は理解しといたほうがいいと思われるのは、「マシン語」とか、「コンピューターが、動作する仕組み」とかの話しだ。                          『2段階方式で脱Java、JACICがオラクルと特別契約』
https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/00001/01412/?P=1

  それで、以下の投稿は、今年の3月に作ったものなんだが、まあ今でも役に立つところはある、と思われるので、紹介しとく。                  http://www.sankei.com/world/news/180316/wor1803160018-n1.html 
         
 『韓国の仲介で、米朝首脳会談が行われるような流れになってる感じだが、その裏で北朝鮮は活発に韓国にサイバー攻撃を行っていた訳だ。韓国の出方を探って、交渉を自国に有利に運ぼうという作戦だろう。
 その手口なんかをちょっと詳しく解説してるのが、以下の記事だ。このサイトは、ウイルス・マルウエアやダーク・ウェブ(ウイルスやマルウエアを有料で販売したりしてる、危ないサイト)、それらの作者への匿名でのインタビュー記事なんかが載ってるんで、結構参考になる。
(『北朝鮮のサイバー攻撃グループ「APT37」が活発化』
 https://the01.jp/p0006529/ )

それで、これらの記事に出てくるちょっと専門的な用語について、説明しておく。                                     
※ https://tech.nikkeibp.co.jp/it/article/lecture/20070820/279875/  画像は、ここからお借りした。

「コンパイル」:本来は、「翻訳する」とか「置き換える」、ってな意味だ。
 コンピューターは、結局CPU(Central Processing Unit 中央演算装置)で電子の0(電子がない)と1(電子がある)の情報(電子があると、電流が多く流れる。電子がないと、電流が少なく流れる。電子の有る無しを、電流の流れに置き換えて(交流の山と谷を、1と0と判定して)操作してるだけのもんで、8bitとか16bitとか32bitとか64bitとかいうのは、一度に処理できる「0と1の個数」を指している。
 8bitだと、一度に00101100みたいな8個の0と1の羅列を処理できるっていう話しで、16bitだとこれが16個という話しになる(bitというのは、1組の0と1という単位。デジタルの2値って、このこと)。32bitは32個、64bitは64個の0と1の羅列…という話し(32個の箱や64個の箱の中に、それぞれ0または1が入ってる、というイメージ)。
 だから、コンピューター(CPU)は、そもそもがこういう0と1の羅列しか取り扱えない。8bitのマシンは、00101100とか00101000とかしか取り扱えない。こういう、CPUで処理させようとする0と1の羅列を、「マシン語」という。
 コンピューター(CPU)の処理は、大体が指定されたデータの場所(アドレスという)のデータに対して、一定の処理をする(「命令」)という形になる(※ こういう0と1の羅列を、「データの場所」と「命令」に分けて取扱う(データの場所と命令を、混在させて取扱う)という仕組みを思いついた人が、フォン・ノイマンって人だ。まあ、天才の一人だな。イギリス国籍のユダヤ系の人だ。それで、このタイプのコンピューターを「ノイマン型」と言う)
 大体において、8bitの場合は上位4bitが「データの場所」を指して、下位4bitが「命令」を指していたり、レジスタ(CPU内部のデータを一時置いておく場所。まあ、高速メモリってな感じのもんだ)を2本使って、8bitの「データの場所」+8bitの「データの場所」計16bitのデータの場所という風に扱う場合もあるようだ。
 こんな風に、同じ0と1の羅列でも、それがどんな意味か、どういう「データの場所」の指定なのか、どういう「命令」なのかは、そのCPUで違う(CPUの設計・製造メーカーが、それぞれの設計・製造思想に基づいて設定してる)わけだよ。
 それで、このマシン語は、0と1の羅列で「00101100」とか「00101000」みたいなもんだから、これでプログラムを作るのは大変だ。まあ、初期の頃はシコシコやったらしいし、これでプログラムを作れる名人みたいな人もいたらしい(今でも、ソニーのプレステは、どっちかというとこのマシン語寄りでプログラムを作ってるという話しだ。そっちの方が、真似されにくいんで、わざとそういう風にしてるという話しも聞いた。だから、今でもXboxでは作り出すことが難しいタイプのゲームを作ることができて、競争力を保持してるという話しを聞いたことがあるぞ)。
 しかし、プログラミングの生産性は上がらないし、当然ミスも多くなる(0と1の1個でもミスったら、アウトだ)。いくら何でも酷くね、って話しになった。
 それで、登場したのが「プログラミング言語」だ。もう少し人間にも分かりやすい言語で書いて、それを「マシン語」に置き換えたらいいんじゃね、っていう発想だ(この、マシン語への翻訳・置き換えをコンパイルと言い、コンパイルするソフトを、コンパイラと言う)。
 最初に登場したのは、「アセンブリ言語」だ。
 例えば、「mov A B」(AをBに、移動する(move)する)、「comp A B」(AとBを比較(compare)する)、「add A B」(AにBを加える(add)する)みたいな感じで記述した。
 使われた記述が、「mov」「comp」「add」のような英単語を省略したようなもんなんで(英語圏の人にとっては)理解しやすいもんだったが、「A B」の部分が、前述した「レジスタ」に限定されていた(各CPUの内部に一般のプログラマーが自由に使える、高速メモリってな感じのものー(「汎用レジスタ」と言う)が設置されているんだが、CPU毎にバラバラ(前述のように、各CPUメーカーが、それぞれ勝手に設計・製造してた。今でも、そう)なんで、CPUが異なるマシンに向けて移植が大変だった)。また、命令がCPUのできる処理とほぼ1対1対応だったんで、あまり複雑な処理を記述するのに向かなかった。アセンブリ言語をマシン語に変換するソフトを、アセンブラ(コンパイラと対をなしてる感じだな)というらしいのだが、オレは使ったことはない。大体、アセンブリ言語も本で読んだことがあるだけだ。
 それで、1973年(たかだか、45年前の話しだ)に開発されたのが「C言語」だ。
「#include
int main(void)
{
printf(“Hello, world!\n”);
return 0;
}」
ってな感じのもんだ。
 ざっと意味を説明しようとしたんだが、長くなったし、あまり興味もなかろうと思うんで、省略する。
 上記の記述のプログラムをコンパイルして実行すると、使っているマシンのディスプレイに「Hello World!」って表示される。
 上記の記述をコンパイラでコンパイルすると、マシン語に変換されて、各CPUで実行することができる、ってわけだ。』

アメリカは、ファーウェイを潰すつもりなのか…

 『ファーウェイはZTEの二の舞になるか カナダ当局が創業者の娘を逮捕』https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/120600908/?n_cid=nbpnbo_mlpum&P=2

  『ファーウェイ製品、使っているだけでも取引停止 米政府、強める圧力』https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38606180W8A201C1SHA000/?nf=1

 『英BT、5Gで華為製品使用せず 3G・4Gからも排除』https://jp.reuters.com/article/bt-group-huawei-tech-idJPKBN1O42V1Kirin

 ファーウェイは、「1987年 – 任正非をはじめとする元人民解放軍所属の軍事技術関係者が集い創業[17]、携帯電話のインフラ整備に必要な通信機器を開発するベンダーとして中国深圳市に設立」という経緯からも分かる通り、ずっと中国人民解放軍との深い繋がりがあると見られてきた企業だ( https://ja.wikipedia.org/wiki/ファーウェイ )。

 そして、「情報を抜きまくっている」という噂の絶えなかった企業だ。

 さらには、最近、中国がIT器機の心臓部である、CPU(MPU)の製造でも、メキメキ実力をつけつつあるという事情もある。

 現段階で、世界のCPUは、大きく分類して、2種類のものに分けられる。一つは、PC用のインテルのcoreプロセッサやAMDのRyzenなんかに代表されるもの。もう一つは、スマホ・タブレット用のクアルコムのsnapdragonなんかに代表されるものだ( https://ja.wikipedia.org/wiki/Snapdragon )。

 後者のスマホやタブレット用に採用されているものは、そもそもの設計がArm社だ。ソフトバンクの孫さんの買収で、一躍脚光を浴びた企業だ。

 Arm社のビジネスモデルは、MPUの設計だけに特化し、そのライセンスの販売で収益を上げる、というものだ。そのライセンス販売形態は、様々あるようだ。その中には、製造データを販売する、というものもある。顧客は、その製造データを購入すれば、半導体製造装置を購入しておけば、その製造装置にセットするだけで、Arm社設計のMPUを製造することができる…、という話しになっている。

 むろん、周辺のメモリ周りの設計や、GPUとの連携の設計は、ライセンス販売形態で認められている場合もある。上記のクアルコムのSnapdragonも、そういう独自の仕様を加えた製品だ。

 そして、ここに来て、ファーウェイのMPUの製造は、急速に実力をつけて来ている。

 『980Kirin 980はHuawei史上最速のプロセッサ。パフォーマンスはSnapdragon 845超え!』( https://www.gizmodo.jp/2018/08/huawei-kirin-980.html )

 アメリカがこういうことを警戒するのは、むろん、AI絡みの話しだ。AIは、
artificial intelligence の略で、これを日本語に訳す時、「人工知能」という訳語を当てたから、誤解してる人も多いが、別に人間様のような「知能」を持つものでも、「思考」したりするものでも、ない。

 やってることは、単なるデータ(特に、行列データ)の変形・演算(ベクトル演算)にすぎない。それを、電子的に、えんえんと疲れを知らずに、高速で連続してやっている、にすぎない。

 だから、こういうベクトル演算に特化したGPUとの親和性が高かった。一時、仮想通貨ブームの時に、マイニングがおお流行りで、グラボ(エヌビディアのGeForceとか、RadeonのHD7シリーズとか)が買い占められたりして、品薄になり、ちょっとした騒ぎになったりしたろ? 

 そもそも、GPUなるものは、本来の演算器であるCPU(Central Processing Unit 中央演算装置)が苦手としている、ベクトル演算部分を処理すべく切り分けられたものだ(graphics processing unit の略だ)。

 コンピューティングの世界が進化していくと、文字情報のみを処理すればよかった時代は、過ぎ去り、表示も3D表示が求められるようになった。

 特に、3Dのコンピューターゲームが、おお流行りとなった(FPSとか、TPSとかだな)。こうなってくると、XYZ軸それぞれの座標の行列データを、忙しく出し入れし、演算することが要求されてくるんで、従来のCPUでは、追いつかなくなって行ったんだよ。こういうベクトル演算を専門に受け持つべく、開発されたのが、
GPUってわけだ。

 そして、現在ではAIに脚光が当たっている。

 現AIのディープラーニングにおいては、人間のニューロン構造を模した、何層もの階層を備え(「中間層」とか、「かくれ層」とか、言うらしい)、それぞれに行列データを持ち、一定のアルゴリズム(まあ、「関数」と言ってもいいか…)に従って、それらの行列データを変形・演算していく…。「重み付け」とか言って、各パラメーター間の取扱いに区別を設けたり、「再帰」とか言って、演算結果を、狙っているものと合致しているのか検証したりもするらしいぞ…。

 それで、こういうディープラーニングに最適化されたユニットを、NPU(neural processing unit)と言うらしい(まあ、結局のところは、CPUユニットと、GPUユニットの組み合わせ、というのが実体のようだな。ここら辺が、けっこう詳しい。 『ニューラルプロセッサに対抗するArmのMali GPU』 https://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/kaigai/1111755.html)。

 上記画像は、上記リンクの後藤さんの記事からお借りした。

 AIのディープラーニングでよく出てくる、「猫の画像認識」モデルの概念図だ。一番左に、大量のネコや犬やライオンなんかの画像データがある。丸い円形が、そのネコの画像を構成している「要素」を抽出したもの(耳がピンと立っているとか、鼻があまり出てないとか、目が丸っこい、蹄は無い…とかだな)。そして、それらを「行列データ」として、格納・保持しておく。

 そして、次の層に送る。次の層では、前の層よりも要素の数が少なく(絞り込まれて)なっていて、かつ、ちょっと図だとわかりにくいが、線が太いものと細いものがあるだろう? これが、「重み付け」というやつで、行列データを変形するときに、大きく変形したり、小さく変形したりすることを、試みるんだ。まあ、大きく変形したものは、その要素を重視した、ということに該当するんだろう。

 こういうことを何層か重ねた後に、最終的に変形された行列データ(どの要素を抽出したのか、その要素間のどれを重要視したのか、どの要素をどれだけ大きく変形したのか…、を含んでるデータだ)が出力されてくるわけだが、それに「ネコです」とか、「ネコでないです」とか、判定を下すわけだ(ラベル貼りとか、言ってるようだな)。

 これを人間がやると、「教師あり学習」(むろん、最初の画像データに、そういうラベルを貼っておいてもかまわない。プログラム的に、最終出力データを出力した時に、その領域を参照するようにしておけばよい)と言うことになる。

 こういうことを、グルグルとループさせて、何回も何回もやらせるわけだ。なにしろ、疲れたり、飽きたりすることはないわけだからな…。電力が途切れない限り、続けさせることが、できるってわけだ。

 そうやって、だんだん正解(「これはネコです」という判定)の精度が上がったもの、要素の抽出や、重み付けが上手くいったものが、「ネコ判定画像認識モデル」となる、というわけだ。

 そういう成功した行列データの変形モデルを使って、今度は新たな画像を与えて判定させると言うわけだよ。うまくすれば、正解率8割とか9割で「ネコか、ネコでないか」を判定できるという話しだよ。

 そういうことができるものを「AIチップ」とか称して、「画期的な新製品!」とか、「人工知能チップ搭載!」とか、喧伝してるわけだよ。

 まあ、それはいいんだが、問題なのは、このAIの技術は、軍事にも応用が可能だという点だ。

 「アイアンマン」とかで、ロボットスーツが話題になった時があった。しかし、そんなロボットまで行かなくても、AIによって自律的に操縦される4輪駆動車にマシンガンを積んだ無人兵器部隊が、敵陣に突っ込んで、重機を乱射する…。AIによって自律的に操縦されるドローンや無人機部隊が、爆弾や小型ミサイルを発射しまくる…。AIによって自律的に操作されるキラー衛星が、GPSを司る通信衛星に突っ込んできて、破壊する…。そういう悪夢のような世界は、身近に迫っている感じだろ? 

 アメリカは、多分そういう光景を警戒しているんだろう…。そういう悪夢の実現は、どうやっても阻止するというつもりなんだろう…。