新型コロナ対応で浮かんだ亀裂 菅氏「失権」 重み増す今井補佐官

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(ポイント)
・改正インフル特措法に関する与野党折衝の場に、菅さんがいなかった。
・2月27日に首相は電撃的に全国小中学校などに対する休校措置を要請したが、政府関係者によると今井氏は菅氏不在の内部会議でこの対応を発案。国民行動を左右する重要政策の判断にも関わらず、「危機管理の要」には事後承諾で済まされた…、という話しだ…。
・「官邸主導」と呼ばれる安倍政権の運営には特徴がある。首相は思い入れの深い外交分野に深く関与する一方、内政分野全般は菅長官や首相側近の今井氏による総合調整に任せることが多かった。菅氏もかつて「この内閣で本当のことを知っているのは、総理以外は俺と今井だけだ」と語っていた。
・「桜を見る会」をめぐっても、鉄壁とも言われた菅氏の説明ぶりはいつになくたどたどしい印象を与えていた。先の政府関係者は「桜関連の対応は安倍事務所と今井補佐官で仕切っている。菅氏はそこでの決定事項を伝えられている形」と明かす。
・ラインの一角を占めていた菅氏の「空白」を埋めるように、新型コロナ対策で台頭しているのが今井補佐官ら、経済産業省出身の官邸官僚ら。先の休校要請のほか、第2弾の緊急対応策実施を表明した2月29日の首相会見の内容は彼らを中心に突貫作業で取りまとめられた。
・『霞が関幹部は、緊急対応策に当たって今井氏らの突出ぶりを示すエピソードを明かした。
 新型コロナの拡大に伴う需要増により、医療機関でのマスク不足も深刻化。今井氏の指示を受けた官邸官僚は医療用マスクを「2500万枚」確保するよう、厚生労働省に要請した。
 ただ、中国からのマスク輸入が減少したことで、厚労省は「2500万枚には根拠がなく、実現は難しい」と官邸側に再考を求め、結局1500万枚を順次医療機関に配布することで折り合った。
 厚労省は急きょ、国が保有するマスク250万枚を医療機関に放出するとしたが、新型コロナは全世界に拡大、従来のマスク輸出国も次々と禁輸措置を検討している。同省は、一般用マスクの医療用への転用をメーカーに打診。ただ実現しても、一般用マスクの供給減につながる可能性もあり、「今井氏の仕切りは強引過ぎる」と先の幹部は話した。』
・『かつて「俺と今井だけ」と菅氏が称した両氏の関係は、どこでこじれたのか。別の政府関係者は、「決定的だったのは官邸での小泉進次郎氏の結婚発表だった」と指摘する。
 昨年8月、小泉氏は夫人となる滝川クリステル氏を伴って官邸で菅氏を訪ね、「電撃婚」を公表。「総理にも会っていったら」との菅氏の言葉に従い、予定にはなかった首相とも面会した。
 当時、菅氏は「令和おじさん」として知名度が高まり、「次期首相」にも擬されるように。自民党内では事実上の「菅派」と位置付けられる若手グループの活動が活発化した。
 同年9月の内閣改造・自民党役員人事に当たって、菅氏は首相の意中だった「岸田文雄幹事長」起用案をつぶし、太いパイプを持つ二階俊博幹事長の留任を実現。人事の駆け引きが続く中、菅氏の振り付けによる官邸内での人気政治家のパフォーマンスに、「首相と心中する」と公言する今井氏は「黒子としての立場を離れ、『ポスト安倍』を見据えた菅氏の変化を見て取った」(政府関係者)という。』
・『国内での感染収束の見通しはなく、政府も一丸での対応を余儀なくされている。菅氏も例外ではなく、「コネクティングルーム出張」で一躍有名人となった腹心の和泉洋人首相補佐官が中小企業向け金融支援策などの具体化に携わっている。』
・とはいえ一度歯車がくるった菅、今井両氏の関係が修復する兆しは見えず、「今やまともな話が成り立たない」(霞が関幹部)。
・新型コロナによる流動的要素も残るが、秋にも行われるとされる内閣改造では官房長官交代と、満を持しての「岸田幹事長」起用論が取り沙汰される。
 菅氏はかねて「岸田さんで選挙は乗り切れない」との立場。首相は後継として岸田氏への傾倒を強めており、取り巻く状況は厳しさを増すようにも見えるが、与党幹部は「首を切られる前に自ら辞めれば話は違う。新型コロナの収束めどが立った辺りで、政府対応の責任を取って辞任すると言えば、一気に政局の中心になる」と指摘する。
・露わになった亀裂の深刻さを最も敏感に受け止めているのは麻生太郎副総理兼財務相のようだ。麻生氏は最近、周辺にこう話したという。「あまり菅を追い詰めるなよ。野に放てばどう転ぶか分からねえぞ」。

(考えておくべきこと)
1、安倍さんの「賞味期限」。菅さんが、官房長官でいる限りは、菅さん自身が「反乱」を起こすことは、なかなか難しかろう…。
2、幹事長が、二階さん以外の人になった時、政局は一気に流動化する…。そういう事態になるのか…。
3、岸田さんは、どういう「戦略」で動くのか…。強引に、「幹事長」取りに動くのか…。

 ただ、安倍さんの「賞味期限」は、国際政治の状況に、強く影響される…。トランプ氏は再選されるのか…。プーチン氏は、首尾よく「永世大統領」へと道を開く憲法修正に成功するのか…。習近平氏は、首尾よく「権力闘争」を勝ち抜けるのか…。ムンジェイン政権は、4月15日の総選挙で勝利できるのか…。ヨーロッパのコロナ禍は、どういう形で収束するのか…。事態は、現状では流動的だ…。