米中首脳、衝突回避へ駆け引き 国連総会舞台に

米中首脳、衝突回避へ駆け引き 国連総会舞台に
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN2234Q0S1A920C2000000/

『【ニューヨーク=中村亮、北京=羽田野主】バイデン米大統領と中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席が21日(米東部時間)、対立を深める両国の関係のあり方を巡って国連総会の演説で駆け引きを繰り広げた。習氏は気候変動対策をめぐる米欧との協調の可能性をちらつかせた。バイデン氏も中国との「新冷戦を志向しない」と発言。衝突回避に向けた対話のシグナルを送った。

習氏は国連総会の一般討論でビデオ演説し、海外で石炭火力発電所を新設しない考えを表明した。これは米国のケリー大統領特使(気候変動問題担当)が8~9月に訪中し、中国共産党の序列7位の韓正(ハン・ジョン)副首相らとオンラインで協議した際に中国側に求めた内容とされる。

国連総会の一般討論で習氏が演説するのは2年連続だ。今年はもともと副首相クラスが出る予定だったが、急きょ習氏の登板が決まり、演説の日程も繰り上がった。米欧の関心の高い気候変動問題でトップ自らが協調姿勢を示すことで、さらなる米国との関係悪化を回避する思惑が透ける。

バイデン氏は演説で中国を念頭に「大国は競争が衝突に発展しないように、関係を慎重に管理する責任がある」と呼びかけた。バイデン氏は9月に習氏と電話協議し、緊張緩和に向けて努力することで一致した。台湾海峡や南シナ海では米軍の艦船が往来し、中国も軍事演習をくり返しており、偶発的衝突のリスクが高まっている。それだけに米中双方とも対立のエスカレートへの危機感は強い。

ただ、政策面では米中の立場の隔たりは大きい。バイデン氏は気候変動対策では「今後10年間が世界共同体としての我々の将来を決定づける」と語り、中国に協力を訴えた。

習氏は二酸化炭素(CO2)の削減目標について「2030年までに排出量がピークを迎え、60年までに実質ゼロを達成するには厳しい努力が必要だが、全力を尽くす」と述べるにとどめた。昨年表明した削減目標をなぞった形で、目標の深掘りを求めてきた米国に譲らない姿勢をみせた。

【関連記事】
・バイデン氏「米中新冷戦を志向せず」 初の国連演説
・習氏、海外の石炭火力建設中止を表明 国連演説で

民主主義など基本的な価値観を巡る対立も改めて浮き彫りになった。バイデン氏は「権威主義者は民主主義の時代の終わりを主張しようとするが間違っている」と断言した。バイデン氏は民主主義陣営と、中ロを軸とする強権主義陣営が競争状態にあるとみており、同盟国に結束を改めて促した。

一方で習氏は米軍のアフガニスタン撤収後の混乱を念頭に「外部からの軍事干渉と民主改造が際限のない害を及ぼすことを改めて証明している」と批判した。米国によるアフガン民主化の失敗例を挙げて、民主主義が最善の政治体制ではないと訴える狙いがあったとみられる。

米主導の対中包囲網づくりを揺さぶる構えもみせた。米国と英国、オーストラリアの新たな安全保障の枠組みを念頭に「小さなサークル作りを切り捨てなければならない」と発言した。豪州が潜水艦配備を巡る協力国をフランスから米英に乗り換えたことについて、仏や欧州連合(EU)が強く反発している。

バイデン氏は欧州との関係の立て直しに追われた。21日にモリソン豪首相やジョンソン英首相とそれぞれ会談し、対中政策で協力を深化させることで一致した。ブリンケン米国務長官は22日、ニューヨークでEUのボレル外交安全保障上級代表と会談し、米英による豪州の原潜配備への支援に理解を求める見通しだ。

マクロン仏大統領は国連総会での演説を取りやめた。米国との関係悪化が理由との見方が出ている。米仏首脳の電話協議は22日に開かれる見通しだが、関係修復には時間がかかる可能性がある。

【関連記事】
・米豪首脳、対中国へ欧州と協力 潜水艦問題の火消し急ぐ 
・マクロン氏、国連総会演説取りやめ 米に反発か 』

[FT]米失業給付の上乗せ終了 人手不足解消は期待できず

米国で数百万人が受給していた連邦政府による失業保険給付の上乗せは9月6日に終了したが、就業者の大幅な増加につながる可能性は薄いことがフィナンシャル・タイムズ(FT)の分析やエコノミスト、業界アナリストによる調査から浮かび上がった。

米クリーブランド連邦準備銀行のメスター総裁は9月、子どもの世話が復職の妨げになっている可能性が高いとの認識を示した=AP

9月までの特別加算措置により失業者は2021年、州による失業給付に加えて連邦政府から週300ドル(約3万3000円)を受給していた。その終了で750万人超が新型コロナウイルス禍対策の特例措置を受けられなくなった。

給付打ち切ったほうが雇用増の結論導き出せず

連邦政府による追加給付は政治的対立を招き、多くの共和党幹部は失業者の復職を妨げ、経済回復を阻む全国的な人手不足を悪化させていると主張していた。

6月に22州が上乗せを前倒しで打ち切り、夏の半ばまでにさらに4州が追随した。図らずも、継続している州との対照実験のような状況に至った。

FTが米労働省の月次統計をまとめたところ、追加給付を打ち切った州は継続した州よりも早く雇用が増加したという結論は導き出せなかった。多くの州が上乗せの早期終了を打ち出した5月から8月までの非農業部門の就業者数の増加率は、両グループとも約1.3%だった。

「失業給付が労働力の供給と雇用の増加を妨げていたとの捉え方は完全に間違っている」と英調査会社オックスフォード・エコノミクスのチーフ米国エコノミスト、グレゴリー・デイコ氏は指摘する。「確かに要因の一つではあったが、唯一の要因ではなかった」

20年の大部分を通じて、連邦政府は失業給付に週600ドルを上乗せした。インターネット経由で単発の仕事を請け負うギグワーカーやその他の自営業者、パートタイムで働く人も、コロナ禍の影響で雇用に制約を受けた人々とともに補償を受けていた。

米投資調査会社エバーコアISIのピーター・ウィリアムズ氏によると、それらすべてを合わせた20年3月~21年8月の給付額は8500億ドルに上る。

連邦政府による特例措置の終了は労働市場の回復の重大な局面と重なった。旺盛だった雇用の拡大が8月に失速し、わずか23万5000人の増加にとどまったのだ。

それぞれ約100万人の雇用増となった6、7月からの大幅な減速で、何が人々の復職を妨げているかが大きな焦点となっている。

10代の就職増加、実態を隠す要因にも

追加給付の早期終了はわずかながら失業者の復職を促したとする調査結果も出ている。だがエコノミストらは、そうした効果があったとしても大きくはなく、一時的なものであるはずだと警鐘を鳴らす。雇用の回復を妨げている深刻な人手不足は解消しにくいものであることをうかがわせる。

求人情報サイトを運営する米インディードのチーフエコノミスト、ジェド・コルコ氏は連邦政府の雇用統計の分析から、5~8月の失業者の減少ペースは追加給付を打ち切った州のほうがわずかに速くなっていたことを突き止めた。

だがその差は、追加給付を継続した州での雇用増によって縮まっていた。そうした州での就業者の増加は、失業者よりも労働市場の外にいた人々(積極的に求職活動をしていない非就業者)によるものだった。

そうした州では欠員を埋めるのに10代の若者が大きな役割を果たした。米マサチューセッツ大学のアリンドラジット・デュベ教授(経済学)は、追加給付を継続した州では7月に10代の就職者数がほぼ2倍の水準に及んでいたことを明らかにした。

同教授によると、一部の州では新たに労働市場に加わる人たちが満たしていたかもしれない求人を失業者が満たす「混雑効果」が生じる恐れが懸念材料だという。

「雇用の創出ではなく職を得る人を代えるというようなもの」で、雇用状況が実際よりよくみえることになっているかもしれないという。

米コロンビア大学の研究者カイル・クームス氏とデュベ教授らの研究チームは4月時点で失業給付を受けていた低所得労働者1万8000人余りの、匿名を条件にした銀行口座記録を対象に調査した。調査に基づいた同チームの最近の研究論文によると、連邦政府の追加給付を早期終了した州の雇用状況にはわずかな差しか表れていないという

8月までに、追加給付を継続した州では調査対象者の22%が復職した一方、打ち切った州では26%が復職していた。

子どもの世話も復職の妨げに

復職を難しくしているのは、むしろ他の諸要因だ。追加給付を早期終了した諸州は、インド型(デルタ型)の変異ウイルスによる打撃が特に大きい地域と重なっている。8月にこれらの州でレジャー・ホスピタリティー分野の雇用が減少する一方、それ以外の州では増加した。

「多くの人の復職を妨げているのは、恐らく実生活とコロナ禍に伴う日常生活の変化だろう」とみるのはスイス金融大手クレディ・スイス・グループのチーフ米国エコノミスト、ジェームズ・スウィーニー氏だ。「労働供給が実態を伴うように変わるには、感染が減ってコロナ禍に対する人々の恐怖感が薄れる必要がある」

米クリーブランド連邦準備銀行のメスター総裁は9月、子どもの世話が復職の妨げになっている可能性が高いとの認識を示した。学校再開でそうした制約が和らぎ、さらなる労働市場の拡大につながるはずだという。

追加失業給付の終了が労働市場にもたらす影響は限定的にとどまることを踏まえて、エバーコアのウィリアムズ氏は当面の雇用増を多くても月間20万~25万人にとどまると予測している。

エコノミストたちは今、コロナ禍前よりも失業者が530万人多い状況の中で、支援の縮小がもたらすかもしれない影響を検討するようになっている。

「追加給付の終了は、各世帯の雇用状況を改善するより、家計に打撃をもたらす恐れがある」とオックスフォード・エコノミクスのデイコ氏は警鐘を鳴らす。

By Colby Smith & Christine Zhang

(2021年9月22日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

(c) The Financial Times Limited 2021. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.英フィナンシャル・タイムズ(FT)と日経新聞の記者が、アジアのテクノロジー業界の「いま」を読み解くニュースレター「#techAsia」の日本語版をお届けします。配信は原則、毎週金曜。登録はこちら。
https://regist.nikkei.com/ds/setup/briefing.do?me=B009&n_cid=BREFT053

米、ハイチ出身者に滞在許可か AP報道

米、ハイチ出身者に滞在許可か AP報道
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN22EJF0S1A920C2000000/

『【メキシコシティ=宮本英威】米政府は、米南部テキサス州に押し寄せたハイチ出身者の一部に滞在を認めたもようだ。米政府の担当者が21日、AP通信の取材に匿名で明らかにした。「非常に、非常に大きな規模」だといい、数千人に達した可能性がある。60日以内に移民局への出頭を求められているという。

メキシコとの国境地帯にあるテキサス州デルリオには先週から1万4000人規模が押し寄せた。仮設キャンプが設けられて、政情が不安なハイチを中心に、キューバやベネズエラ、ニカラグアからの人々もいる。

米政府は19日以降、500人以上をハイチの首都ポルトープランスに強制的に送還した。マヨルカス米国土安全保障長官は20日に送還を加速する考えを示していた。

ただ国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は21日、米政府による強制送還を念頭に「難民申請の機会を否定している」と懸念を表明した。こうした国際社会の反応を受けて、米政府が対応を緩和した可能性もありそうだ。

【関連記事】
・米、ハイチからの移民を強制送還
・米テキサス州に難民1万人 政情不安のハイチから避難 』

FOMC声明要旨 「改善進めば、購入ペース早急に緩和」

FOMC声明要旨 「改善進めば、購入ペース早急に緩和」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN22EON0S1A920C2000000/

『【ワシントン=長沼亜紀】22日発表された米連邦公開市場委員会(FOMC)の声明要旨は以下の通り。

米連邦準備理事会(FRB)はこの試練のときに米経済を支え、雇用の最大化と物価の安定という目標を推進するために、あらゆる手段を使うことを約束する。

(新型コロナウイルス)ワクチン接種の進捗と力強い政策支援を受け、経済活動と雇用の指標は引き続き強さを増している。パンデミックによる打撃がもっとも大きかった産業はこの数カ月改善しているが、コロナウイルスの感染増で回復ペースが落ちている。物価上昇率は、主に一時的な要因を反映して高まっている。経済および米国の家計と企業の信用の流れを支える政策措置もあり、金融情勢は全般に依然として緩和的だ。

景気の動向は、依然としてウイルスの拡大状況に左右されている。ワクチン接種の普及により、公衆衛生の危機が景気に及ぼす影響は引き続き小さくなる可能性が高いものの、経済の先行きへのリスクは残っている。

FOMCは雇用の最大化と長期的な2%のインフレ達成を目指している。物価上昇率がこの長期目標を下回る状態が続いていることから、当面は2%よりやや上のインフレ達成を目指す。そうすることで、インフレ率が長期的に平均で2%になり、長期インフレ予測が2%で安定するようにする。

これらの成果が出るまで金融政策の緩和的スタンスを維持すると予測している。

FOMCは(政策金利である)フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを0~0.25%に据え置くことを決定した。労働市場の情勢がFOMCの雇用最大化の判断と一致する水準に達し、インフレ率が2%に上昇して当面は2%をやや上回るところで軌道に乗るまで、この目標レンジを維持することが適切と予測する。

FOMCは昨年12月、雇用最大化と物価安定の目標に向けてさらなる大きな前進を遂げるまで、国債保有を少なくとも月800億ドル、ローン担保証券の保有を少なくとも月400億ドル増やし続けると表明した。その後、経済はこれらの目標に向けて前進している。経済の改善がおおむね予想通りに進めば、資産購入のペースを早急に緩和する必要があると判断する。こうした資産購入は円滑な市場機能と緩和的な金融情勢の促進を助け、家計と企業の信用の流れを支える。

金融政策の適切なスタンスを判断するにあたって、FOMCは引き続き、景気見通しについて経済指標が示す意味を注視する。目標達成を妨げるリスクが現れた場合は、金融政策のスタンスを適切なものに調整する準備がある。公衆衛生、労働市場の状況、インフレ圧力・インフレ予想の指標、金融動向や国際情勢を含めた幅広い情報を考慮して判断していく。
決定はパウエル議長及びウィリアムズ副議長を含む11人のメンバー全員の賛成による。』

FRB議長「22年末には利上げに適した状況に」

FRB議長「22年末には利上げに適した状況に」 会見要旨
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN22ET40S1A920C2000000/

『米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は22日、米連邦公開市場委員会(FOMC)終了後に記者会見を開いた。中期的な経済・政策見通しについて、「FOMC参加者の半数が(ゼロ金利政策の解除に)望ましい経済状況が2022年末には実現すると考えている」と述べた。主な発言と質疑応答は以下の通り。

きょう、我々は政策金利をゼロ近傍に据え置き、一定量の国債購入を維持すると決めた。金利とバランスシートに関する我々の力強いガイダンス(指針)と合わせて、金融政策が、経済が回復をなし遂げるまで強く支えることを保証するだろう。ワクチン接種の進捗と前例のない財政出動も強く回復を支えている。

経済活動の指標や雇用指標は引き続き改善している。21年前半の実質国内総生産(GDP)は(年率)6.4%増と力強いペースで、後半も力強いペースを維持すると広く期待されている。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の打撃を最も受けた分野も改善しているが、感染拡大が回復を遅らせている。

家計による消費は経済再開を受けて年前半はとりわけ急速に増えたが、7~8月は感染拡大で特に旅行や飲食店で減速した。産業によっては、短期の供給制約が活動の足かせとなっている。特に世界的な半導体不足で生産量が減っている自動車業界で深刻だ。こうした状況を踏まえ、FOMC参加者は21年の経済成長率予測を6月時点と比べいくらか下方修正した。それでも依然として強い成長率を予測している。

雇用情勢は改善し続けてきた。8月は特に娯楽やホテル産業などパンデミックの影響を受けやすい分野で雇用の回復が鈍った。子供のケアの必要性やウイルスへの恐れが重荷となっているようだ。今後数カ月でこうした要因は薄れ、より急速な雇用増につながるだろう。FOMC参加者は雇用情勢が改善し続けるとみている。

物価上昇は進んでおり、落ち着くまで数カ月は高い物価上昇率が続くだろう。経済再開で消費が持ち直すのに伴い、特に短期的な供給制約が物価の上昇圧力となっている。供給制約は予想より大きく長引いているため、FOMC参加者は21年の物価上昇率予測を上方修正した。供給制約の影響は今こそ目立つが、次第に薄れ、物価上昇率は我々の長期的な目標(2%)に向けて下がっていくだろう。予測の中央値は21年は4.2%だが、翌年には2.2%に下がる。

金融政策の枠組みでは物価の安定と最大雇用の実現に向けた我々の能力を高めるために、期待物価上昇率が固定されることが重要だ。もし物価上昇の道筋や、長期的な期待物価上昇率が実際に、長期にわたって我々の目標を超えるような兆候があれば、金融政策の構えを調整する用意がある。

FRBの施策は米国人のための最大雇用と物価安定の促進という我々の使命によって導かれる。金融システムを安定させることにも責任がある。資産購入は重要な施策であり続けた。パンデミック初期に金融安定性と市場機能を保つよう支えた。経済を支えるための緩和的な金融緩和環境を醸成するのに役立った。我々は本日の会合で、我々の目標に向けての進捗を議論した。20年12月に資産購入に関するガイダンスを導入してから、経済は目標に向かって前進した。

このまま予想通りの幅広い進展が続けば、FOMCは、購入の減額が早急に正当化されるとの判断を下すだろう。我々は経済状況が我々の基準を満たした際の適切なテーパリング(量的緩和の縮小)のペースについても議論した。まだ何の決定も下していないが、参加者は概して回復が軌道に乗る限り、来年の中ごろに終える緩やかなテーパリングが適切であろうとの見方を示した。我々がバランスシートの拡大を終えても、長期債の保有を増やしたことは緩和的な金融環境を支え続けるだろう。

今後の資産購入の減額の時期やペースは、政策金利の引き上げの時期に直接的な示唆を与えるものではない。金利に関しては、異なる、より厳重な一連の評価を経る。我々は労働市場が最大雇用と評価できる水準に達するまでは、政策金利の誘導目標を引き続き現状の0~0.25%で維持するのが適切だと考えている。物価上昇率は2%に達し、しばらくの間2%を適度に超えるような軌道だ。

FOMC参加者の半数はこれらの望ましい経済環境が22年末までに実現すると考えている。その結果、適切な政策金利の水準の予測の中央値は、22年の下限値をわずかに上回る。参加者は24年にかけて政策金利が長期的な見通しを少し下回る水準まで上がる、緩やかな金融引き締め策を予測している。

これらの予測は委員会の決定や計画を示すものではなく、今後数年の経済がどこに向かうのか誰も確信を持ってはいない。あらゆる予測より重要なのは、最大雇用と物価安定目標を達成するまで金融政策は極めて緩和的であり続けるという事実だ。

一問一答
――テーパリングに向けた経済状況をどう見ているか。9月に、想定していた雇用回復が見られない場合は。

「物価と雇用で『さらなる著しい進展』が見られるかについてだが、物価上昇率は我々の目標を上回る水準に上昇しており、基準が満たされたと判断している。問題は完全雇用だ。雇用は目標の50~60%程度まで到達したといえる。多くのFOMC参加者が雇用はかなり進展したとみているが、もう少し進展がみたいという者もいる。私自身は目標達成間近だと見ている」

「物価と雇用の両方の目標を達成したと我々が判断したら、テーパリングを始める。決定する時期は早ければ次の会合になるかもしれない。経済が想定通りに回復して適切と判断すれば、次回の会合で容易に前進できるだろう。多くの参加者は既に『さらなる著しい進展』が満たされていると感じており、私自身もほとんど満たされていると考えている。個人的には非常に力強い雇用統計を確認する必要はないと思うが、良い(9月の)雇用統計を期待している」

――テーパリングの開始時期についてこれまでどんな議論がなされたか。利上げの時期に関してはどうか。

「もっと早くテーパリングを始めたいという意見もあった一方で、早めると金融システムの安定性が懸念されるとの意見もあった。ただ22年半ばまでにはテーパリングを終えるのが適当という点では参加者の幅広い支持を得た。利上げの判断は労働市場の状況次第だ。労働市場は多くで逼迫を示している一方で、ひずみもある」

「こうした不均衡は物価上昇率を2%を緩やかに上回る状況に導くだろう。22年を通じて物価上昇率が(2%よりも)大きい状況を保てば利上げの条件はそろう。22年以降の物価上昇率は2.1~2.2%程度と小幅の上振れにとどまるとみている。22年末の経済予測をみると、何人かは非常に低い失業率を予測しており、強い労働市場を意味する。参加者の中で23年まで利上げをしないとみるのは1人だけだ。利上げ時期の見通しは比較的統一されているといえる」

――物価上昇が想定外に加速した場合、テーパリングを終える前に利上げを迫られる可能性はあるか。

「それは予測していない。必要な場合は、テーパリングの速度を調整することが可能だ」
――テーパリングの後、バランスシートの縮小などは検討するのか。

「テーパリングにはいくつか考慮しなければならない関連する問題がある。バランスシートの規模もその1つだが、まずは緩和縮小の決定をしてから、これらの問題に取り組みたい」

――企業債務についてどの程度懸念しているか。(中国の不動産大手)中国恒大集団の債務問題は、警戒を促すものとみなすか。

「米国企業による債務不履行は現状極めて少ない。中国恒大集団の状況は、新興国市場で非常に大きな債務を抱えている中国固有の状況に思える。米国による直接の投融資は多くなく、米国の企業部門とあまり関連付けられるとは考えていない」

――米議会が連邦政府の債務上限を引き上げない場合、経済への影響は。

「米国が期日通りに債務を返済できるよう、債務上限を適切に引き上げることは非常に重要だ。(引き上げに)失敗すれば、経済や金融市場に深刻な打撃を与える可能性がある。米国は債務不履行に陥るべきではない。失敗した場合、FRBなどが市場や経済を守ることができると考えるべきではない」

――自身のFRB議長の再任可能性について、ホワイトハウスと話し合ったか。

「米国民のための日々の職務に集中しており、その件にはコメントすることはない」

――金融監督統括の副議長にはどのような役割があるのか。現クオールズ副議長が10月に任期を終えた後の方針は。

「ドッド・フランク法(米金融規制改革法)によって作られた役職で、規制の枠組みを設定する責任がある。新たに就く人が現在の規制や監督状況を踏まえて、適切な変更を提案することは正しく、私はそれを歓迎する。任期に関しては新しい情報を持ち合わせていない」

――ダラス地区連銀のカプラン総裁などFRB高官が株式の売買をしていた事実を把握していたか。適切だと思うか。

「把握はしていなかった。米国民の信頼を維持することは我々の任務を遂行する上で欠かせない。よってFRB高官による金融商品の保有などが倫理規定に反するかの調査を指示した。規定では銀行株の保有禁止や、FOMC直前と開催中の取引禁止、FRB高官による金融商品の売買や保有についての開示などが定められている。この枠組みは長らく適用されてきたが、国民の信頼を維持するのに不十分との意見もある。今後、状況を徹底的に精査し、規定を厳しくするか検討する」

(米州総局=大島有美子、伴百江、長沼亜紀、野村優子)

【関連記事】
・FRB、量的緩和縮小11月にも決定 利上げも前倒し示唆
・FOMC声明要旨 「改善進めば、購入ペース早急に緩和」』

「恒大問題は中国特有」パウエル氏発言好感(NY特急便)

「恒大問題は中国特有」パウエル氏発言好感(NY特急便)
米州総局 宮本岳則
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN22EZD0S1A920C2000000/

『22日の米株式市場は買い戻し優勢の展開となった。米連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は11月にも量的緩和縮小(テーパリング)の開始を決めると表明したが、市場のほぼ想定内の内容だった。中国恒大集団の債務不安について「中国特有の問題」と発言したことも、投資家に安心感をもたらした。
「米国株は『FOMCでサプライズなし』を見越して上昇していた」。米サスケハナ・インターナショナル・グループのデリバティブ戦略共同責任者、クリストファー・マーフィー氏はこう指摘する。ダウ工業株30種平均は反発して始まり、声明公表前に上げ幅は一時、400ドルを超えていた。特にエネルギーや素材関係など景気動向に左右されやすい銘柄の上昇が目立った。

マーフィー氏が注目したのはデリバティブ(金融派生商品)市場の動きだ。22日の朝方、10月以降の米株相場上昇を見越したオプション取引に5000万ドル(約55億円)が投じられていた。午後も同様の取引が見られたという。中国恒大問題を受けて、ダウ平均は20日に7月以来の下げ幅を記録したが、「大口投資家が上昇再開を見込んで動いた」と分析する。

2013年5月に当時のバーナンキFRB議⻑が意図せず引き起こした市場の動揺を教訓に、パウエル議長は時間をかけて「地ならし」を進めてきた。8月のジャクソンホール会議の演説では、利上げとテーパリングを切り離して考えていることを強調し、テーパリング決定の自由度を高めた。こうした戦略が功を奏し、市場の「サプライズなし」予想につながっていたとみられる。

パウエル議長はこの日の記者会見でテーパリングについて「来年半ば」までに終えるのが適当との見解を示したうえで、11月にも開始を決定すると表明した。終了時期は市場の予想よりもやや早かったが、「(パウエル氏の発言は)想定内で、驚きはない」(インバーネス・カウンセルのティム・グリスキー氏)といった受け止めが支配的で、ダウ平均は高値圏で終えた。

市場の関心はテーパリングよりも、中国恒大問題に向かっていた。パウエル議長は記者会見で恒大のデフォルト(債務不履行)不安は「中国特有の問題」と指摘したうえで、米企業債務への懸念にはつながらないとの見解を示した。さらに米国の投資家が直接保有する恒大債は「それほど多くない」とも述べた。パウエル氏の楽観的な発言を受けて、ダウ平均は上昇した。

「中国当局は近く中国恒大の債務再編で介入し、10月に緩和へ踏み切る」――。ウォール街ではこんな見方も浮上し、同問題への警戒感は朝方から後退していた。パウエル議長の発言も心理的な後押しになったようだ。米雇用の伸び鈍化、債務上限を巡る米政治の混迷――。株高持続のハードルは確実に高まっているが、22日の値動きを見る限り、投資家の買い意欲は根強いといえる。

(ニューヨーク=宮本岳則)』

NYダウ反発、338ドル高 FOMC想定内で安心感

NYダウ反発、338ドル高 FOMC想定内で安心感
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN00001_T20C21A9000000/

『【NQNニューヨーク=古江敦子】22日の米株式市場でダウ工業株30種平均は5営業日ぶりに反発し、前日比338ドル48セント(1.0%)高の3万4258ドル32セントで終えた。中国の不動産大手、中国恒大集団の経営不安が和らぎ、買いが入った。午後に結果が発表された米連邦公開市場委員会(FOMC)は、テーパリング(量的緩和の縮小)の年内開始が示唆されるなどほぼ想定通りの結果となり、買い安心感が広がった。

中国恒大は23日が期日の人民元建て社債の利払いを実施すると発表した。金融システムや中国経済への悪影響がひとまず回避できるとの見方から、投資家心理が持ち直した。中国での売上高が大きい航空機のボーイングや化学のダウなど資本財や素材銘柄が買われた。米原油先物相場の上昇で石油のシェブロンも高い。

午後にFOMCの結果が発表されると、ダウ平均は上げ幅を一時520ドルに広げた。声明では景気回復が予想通りに進めば「資産購入ペースを緩めることが近く正当化される」と明示し、次回11月のFOMCでのテーパリング開始決定が示唆された。パウエル議長は記者会見で「資産購入縮小の時期とペースは、より厳格なテストに従って判断する利上げの時期についての直接的なシグナルではない」と述べ、利上げには慎重に臨む姿勢を改めて強調した。

市場では「ほぼ想定通りの内容となり、金融政策の先行き不透明感が払拭された」(大和キャピタル・マーケッツアメリカのシュナイダー恵子氏)と指摘された。FOMCに向けて積み増していた売り持ち高を解消する動きにつながった。

FOMC参加者による政策金利見通し(ドットチャート)では利上げ開始時期が来年に前倒しされた。利上げは株式にとって逆風だが「政策が後手に回り、インフレ加速が経済を冷やす懸念が払拭され、むしろ買い安心感につながった」(CFRAのサム・ストーバル氏)との声も聞かれた。

ハイテク比率が高いナスダック総合株価指数は続伸し、前日比150.449ポイント(1.0%)高の1万4896.847で終えた。スマートフォンのアップルやソフトウエアのマイクロソフトが買われ、半導体のエヌビディアなども上げた。長期金利の低下も高PER(株価収益率)銘柄が多いハイテク株の買いを後押しした。』

FRB、量的緩和縮小11月にも決定 利上げも前倒し示唆

FRB、量的緩和縮小11月にも決定 利上げも前倒し示唆
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN2046G0Q1A920C2000000/

『【ワシントン=大越匡洋】米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は22日、米連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で、量的緩和縮小(テーパリング)の開始を次回会合がある11月にも決定する見通しを表明した。FOMCは景気減速と高インフレが同時に進むなか、ゼロ金利の解除時期を2022年に前倒しする可能性を示した。

【関連記事】
・FOMC声明要旨 「改善進めば、購入ペース早急に緩和」
・テーパリング「次回会合で決定も」 FRB議長
・FRB議長「22年末には利上げに適した状況に」 会見要旨

FOMCの声明はテーパリングに関し、経済回復が予想通り進めば「資産購入ペースを緩めることが早急に十分な根拠を得るだろう」との判断を示した。FRBは現在、米国債を月800億ドル、住宅ローン担保証券(MBS)を同400億ドル購入している。パウエル議長はテーパリングを「来年半ば」までに終えるのが適当との見解を示した。

新型コロナウイルスの感染が再拡大しているのに加え、中国不動産大手、中国恒大集団の経営不安から世界の金融市場に不安が広がっている。異例の金融緩和政策の正常化への道のりは平たんではない。

今回のFOMCは正副議長や理事、地区連銀総裁ら参加者18人がそれぞれ中期の経済・政策見通し(SEP)を提示した。22年に利上げを見込むのは9人となり、利上げによってゼロ金利を解除する見通しが中央値となった。前回6月の予測では23年にゼロ金利の解除を見込んでいた。23年、24年は中央値で年3回ずつの利上げを見込む。

パウエル議長はテーパリングの開始がそのまま利上げの検討を意味するわけではないとし、急速な金融引き締め観測が市場に広がるのをけん制した。恒大集団の問題は「高水準の債務を抱える中国に特有のようだ」とし、米国への影響は現時点で大きくないとの見方を示した。来年2月に任期が切れる自身の再任に関しては「言えることは何もない」と述べた。

デルタ型の感染拡大や財政出動の息切れを受け、景気の減速リスクが高まる一方、供給制約が長引き、インフレの加速が続く恐れが拭えない。

今回、FOMCは21年10~12月期の実質国内総生産(GDP)が前年同期比5.9%増えると予測し、前回6月予測(7%)から下方修正した。22年は3.8%、23年、24年はそれぞれ2.5%、2.0%の成長を見込む。FOMCの声明は新型コロナの感染拡大が「回復ペースを鈍らせている」と指摘した。

一方、物価上昇率は21年10~12月期に4.2%を見込み、6月予測から0.8ポイント上方修正した。22年以降に目標の2%をやや上回る水準に落ち着いていく筋書きを描く。雇用の見通しは失業率が22年以降に3%台に低下すると予測した。

インフレが高進し、テーパリングを終える前に利上げを迫られる可能性については「私の見通しではない」と答えた。

21~22日に開いたFOMCはゼロ金利政策の維持を決め、短期金利の指標であるフェデラルファンド金利(FF金利)の誘導目標を0~0.25%に据え置いた。量的緩和政策も継続する。投票権を持つパウエル議長ら11人の全会一致で決めた。』

これから「みずほ銀行」に起こる、ヤバすぎる現実

これから「みずほ銀行」に起こる、ヤバすぎる現実…システムの「爆弾」を誰も処理できない(2021.09.17)
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/87384

※ みずほの「システム障害」問題が、こういう「構造」から生じているのだとしたら、いくら「業務改善命令」や「行政命令」を連発したところで、解決に向かうとは到底思えない…。

※ 金融庁の「強制介入」も、同じことだ…。

※ 「構造」を変更するためには、そもそもの「旧三行」の主導権争い(マウント合戦)にメスを入れて、真の「システム統合」を図る必要がある…。

※ しかし、それは「みずほの株主」がやるべきことで、たかが「監督官庁」の「金融庁」がやるべき仕事じゃ無いだろう…。

※ そして、その入り組んで複雑な「株主間」の利害調整が、つかなかったことが、現在に至る混乱・問題を引き起こしている「真の原因」なんだろう…。

※ 「株式会社」とは、つまるところ、「利益獲得目的組織」にすぎない…。

※ 各「株主」は、自己の「利益獲得」を目的として、出資している…。

※ しかし、あまりに「我を張って」、自分だけの「利益」を追求しだすと、その目的遂行のための「器(うつわ)」自体を壊してしまう…。

※ 普通は、そうならないうちに、ギリギリのところで「妥協」して、矛を収め、「器(うつわ)」自体が壊れるのを、回避するものなんだがな…。

※ おそらく、みずほの場合は、旧幕藩体制における各藩のように、ある程度「独立独歩」で、「他行の領域」から上がる「利益」を当てにしなくても、「自分のところの領域」を回して行ける体制が、ずっと「順送り」されてきたんだろう…。

※ しかし、そういう「三行体制」が行き詰ってしまっていることは、もはや誰の目にも明らかになっているように見えるな…。

『今年8月に発生したみずほ銀行のシステムトラブル。実は19年前にもこれに似たケースが起こっていたことを【前編】『「みずほ銀行」のシステム障害はなぜ防げなかったのか…エンジニアを見下す「悪しき体質」』で報じた。多発する「システム障害」の爆弾を抱えた同行は今後どうなっていくのか…?

隠れていた「古の言語」

全体像の見えない「バベルの塔」と化したみずほのシステム。その成り立ちとは、どのようなものなのか。

過去に2度、みずほは大きなシステム障害を起こしている。1度目は前編でも触れた、’02年の3行統合に伴う混乱だ。

統合時、みずほは旧3行が使っていた複数の異なるシステムを生き残らせたまま、「ゲートウェイ・システム」と呼ばれる中継プログラムでそれらを繋ぎ合わせるという方針を打ち出した。

みずほ銀行のATMコーナー(Photo by gettyimages)Photo by gettyimage

だが、この建て付けそのものに難があった。当時の事情を知るみずほ行員が言う。

「勧銀は富士通製のメインフレーム(大型コンピュータ)の『STEPS』を’88年に導入していました。また興銀は日立製のシステム『C-base』を、富士銀行は日本IBM製の『TOP』をそれぞれ持っていた。

普通、銀行が合併してシステムを統合する時は、顧客や預金などの情報をどれか一つのシステムに全て移行する『片寄せ』という方法を取ります。

しかし、みずほは合併後も『同じ担当の役員が3人いる』と揶揄されるくらい、よく言えば旧3行が対等、悪く言えばバラバラだった。そのため、各行のシステム、ひいてはベンダーとの取引を温存しようとしたのです」

統合直前、旧勧銀のSTEPSと、富士銀のTOPを並立させ、別のコンピュータでつなぐことが決まったが、あえなく失敗。それが統合時に発生した障害の原因だった。

このとき、事後処理にあたった情報系子会社の元社員は驚いたという。』

『「勧銀のシステムの一部に、’71年に第一銀行と日本勧業銀行が合併した時に作られたとみられる部分が残っていたのです」

この部分は、’80年代まで盛んに使われていたプログラム言語「COBOL」で書かれていた。’00年代には使いこなすエンジニアが激減し、「化石」と呼ばれた言語である。

「当時ですら、わかるエンジニアが現場にいなかった。もちろん設計図や手引の類いも見当たりませんでした」

たとえるなら、古い時計を部品交換のため開けてみたら、交換したい部品が古すぎて替えが利かず、やむなく油を差して閉めた、というような話だ。だがこの時は、気に留める者もいなかった。

複雑怪奇な「キメラ」
2度目の大規模障害が起きたのは’11年3月15日、東日本大震災の直後だ。災害義捐金の振り込みがひとつの口座に殺到し、システムが一度に対応できるデータ量の上限を超えてしまった。

エラーに対応しているうちに、他の取引のデータも渋滞を起こし始め、遅れてゆく。際限なく積み上がる未送信データを処理するため、ATMの全面停止を繰り返し、行員たちは夜を徹して手作業で数字を入力した。未処理の金額は一時、8300億円分にも達した。

「当時のみずほのシステムは『バッチ処理』といって、夜間に取引データをまとめて自動処理し、朝に各支店へ送信する仕組みをとっていましたが、これが機能しなくなった。

バッチ処理自体、とっくの昔に時代遅れになった手法ですが、みずほは何らかの理由でこだわっていたのです」(ITジャーナリストの佃均氏)

データの手入力が終わったあとでシステムが予期せず再起動し、振り込みや引き落としが二重に発生するミスも多発。結局、沈静化するまでに1週間もかかった。』

『これら2度の致命的な障害に懲りて、みずほは前述した新システム「MINORI」の開発に着手したというわけだ。いや、金融庁の叱責と業務改善命令に押される形で、着手せざるを得なかったというほうが正しいだろう。’11年6月のことだ。

MINORIは約4000億円の費用をかけて8年後の’19年7月に完成した。業界では、「史上初めて、銀行が自社の勘定系システムを全面再構築した」と話題になった。

だが、どうやら実態は異なる。一から作り直した「新築」ではなく、既存の「塔」をさらに建て増しした「改築」だったと考えなければ、説明がつかない謎があるのだ。

先に触れたCOBOLがいまだに使われているのである。

「ITベンダーの間では、かねて『なぜみずほは、わざわざ高齢のエンジニアを雇ってまでCOBOLを使い続けるのか』が疑問視されていました。MINORI導入時にCOBOLを使った部分をなくして、別のプログラム言語で書き換えてもよかったはずなのに、それもしなかった。

それはつまり、なくさなかったのではなく『なくせなかった』のではないか。勧銀時代から抱える古い重要プログラムやデータが、いまだにMINORIの内部で生きているからではないか—そうとしか考えられないのです」(前出・佃氏)

事実、全面改修を経たはずのMINORIのシステム構成は、不自然なほど複雑怪奇だ。普通預金を司る機器は日本IBMが作るが、その上で走るソフトは富士通が作る。他行との接続を司るシステムは、機器を日立と富士通が作ってソフトをNTTデータが作る。各業務のシステムをベンダーが分割して作り、さながら怪物「キメラ」のようになっている。

これが意味するのは、おそらく’11年に金融庁から業務改善命令を受けた時点で、みずほのシステムは根本的な再構築がもはやできない状態だった可能性だ。

古い部分と新しい部分が幾重にも折り重なり、さらに開発元も複数のベンダーにまたがっていた。しかも、この時すでにみずほは延べ3000億円近くをシステム改修に投入していた。20年以上も二人三脚を続けてきたベンダーを切り捨て、一から作り直すわけにはいかなかったのだ。

いまや、システムの全容を知る者はみずほにも、ベンダーにもいない。』

『もう、誰にもわからない

前出と別のみずほ行員が言う。

「最初に勧銀にSTEPSを売り込んだのは、ソフトウェアエンジニア出身で’90年代に社長を務め、辣腕で鳴らした秋草直之氏でした。

彼は勘定系システムの開発とメンテナンスを請け負うことで、勧銀・みずほから安定的に巨額のカネを引き出す仕組みを作った。一方のみずほは、時が経つにつれて膨らむコストを損切りできず、両者は共依存関係になっていった。富士通に経産省の後押しがあったことも、みずほの意思決定を鈍らせました」

秋草氏をはじめ、’80年代に銀行のシステム開発に携わった技術者たちは、いわば日本のシステムエンジニアの「第一世代」の人々だ。だが、この5年ほどで、彼らは次々と鬼籍に入っている。

今回、勧銀・みずほのシステム開発に携わったと思しき複数の元エンジニアにコンタクトを試みたが、いずれも故人となっていた。判明した中で唯一健在の人物は、6月に脳梗塞を発症し、取材が難しい状態だった。

「2025年の崖」という言葉をご存知だろうか。この年までに、’80年代に開発された企業の古いシステムの根幹を知る人が業界を離れ、あるいは亡くなり、ブラックボックス化する。みずほのシステムは、その最大にして最悪の事例と言える。

【前編】『「みずほ銀行」のシステム障害はなぜ防げなかったのか…エンジニアを見下す「悪しき体質」』の冒頭で罵られていた富士通のエンジニアも、5年ほど前に業界を去った。彼はこう話す。

「みずほは障害が起こるたびに、人為的なミスが原因の『人災』だと言いますが、的外れもいいところです。もう何十年も前から、爆弾は作動していた。人災などではなくて構造的な問題だと気づいていないのは、みずほの人たちだけですよ」

バベルの塔の基礎がどうなっているのか、そしてどこがグラつきの原因なのかを知る人は、もはや語る術を持たない。みずほは手探りで、いつ終わるとも知れぬ修繕を繰り返すほかない。崩壊の日に怯えながら。

『週刊現代』2021年9月11・18日号より 』

みずほシステム、金融庁が「強行介入」 基幹系改修も

みずほシステム、金融庁が「強行介入」 基幹系改修も
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB222KV0S1A920C2000000/

『金融庁は22日、システム障害が相次ぐみずほ銀行と持ち株会社のみずほフィナンシャルグループ(FG)に業務改善命令を出した。みずほは障害の原因を解明できず、金融当局がシステムを実質管理する異例の処分となる。金融庁が関与を強めても、障害発生の防止につなげられるか不透明な面は残る。

金融庁はみずほのシステム運営を細かく監督し実質的に管理する。幹部は「みずほに原因究明を一任するのはもはや困難」と強調する。

具体的には、みずほがすでに金融庁に提出しているシステム改修計画を書き込んだ工程表の再検証と見直しを求めた。システムが安定して稼働するために不要不急だと判断すれば、改修や更新を延期してもらう。

みずほの基幹システム「MINORI」は日本IBM、富士通、NTTデータ、日立製作所の大手4社が参画して作った。金融庁内のシステム検査部隊は複雑に入り組んだシステムを点検することになる。数十人規模のチームで、普段は民間銀行のシステムを検査しているほか、サイバーセキュリティー対策に携わっている。他の金融機関への検査といった通常業務を抱える中で、みずほ関連の業務に回せる人手は限られている。

一方、過去に起きた不祥事の要因や責任を明確にするため立ち入り検査は継続する。22日の処分はあくまでシステム改修時の障害発生を防ぐことが目的で、現時点で経営責任を問うものではないとの位置づけだ。今後の検査で法令違反やガバナンス(企業統治)の欠陥などが見つかれば、金融庁はさらなる行政処分を検討する。

継続する検査の焦点は、システム障害が相次いだ根本的な原因だ。8月に発生した5回目の障害では、機器故障時に備えたバックアップシステムが作動せず複数のエラーが発生した。みずほが4500億円を投じて完成したMINORIの構造上の欠陥があるとの見方も金融庁内でくすぶる。場合によっては大規模な改修が必要となり、みずほにコスト負担が発生する可能性がある。

経営体制見直しも焦点だ。3月半ばまでに起きた4件の障害を踏まえ、みずほは6月15日に坂井辰史社長が役員報酬の50%を6カ月、銀行の藤原弘治頭取は50%を4カ月減らすなどの処分を公表した。相次ぐ障害発生でトップを含めた組織刷新を求める声も出ている。次の作業時にシステムが停止する懸念のある更新作業がいくつか迫っており、金融庁関係者は「次の障害が起きたら経営責任は避けられない」と話す。

システム障害を繰り返すみずほに向けられる視線は厳しさを増している。日銀の黒田東彦総裁は22日の記者会見で「大変遺憾で、金融庁と連携して実態把握につとめていく」と語った。

今回の処分は「銀行の箸の上げ下げまで口を出す」と言われた旧大蔵省時代の護送船団方式に先祖返りしたと受け取られかねない。「過剰介入ではないか」と話す他のメガバンク関係者もいる。

金融庁担当者は22日、「(システム障害の)真因の分析、その結果に基づく対応が重要だ」と話した。みずほだけでなく、金融育成庁への脱皮を目指している金融庁も試されている。

【関連記事】
・みずほ銀行へ異例の処分 なぜ金融庁がシステム管理?
・銀行システムに「完璧」なし 国内で年1500件の障害発生
・金融庁、みずほに業務改善命令 システムを実質管理 』

〔本当はヤバいウレタンマスク…。〕

ウレタンマスクの超アップ画像に「すかすかだ」「すごい説得力」 小5の夏休み研究にネットで称賛の声
https://maidonanews.jp/article/14418556?p=26312279&ro=14418556&ri=0

実験で新事実「ウレタンマスク」の本当のヤバさ
ウイルス専門家、西村秀一医師が徹底検証(2021/02/03 9:30)
https://toyokeizai.net/articles/-/409607

『昨年12月、国立研究開発法人「理化学研究所」(理研)のスーパーコンピューター「富岳」による、マスク素材ごとの飛沫防止効果のシミュレーションが発表された。

これによれば、感染していればウイルスを他者にうつす可能性のある「吐き出し飛沫量」のカットは、不織布マスクで約80%、ウレタンマスクは約50%。うつされるかもしれない「吸い込み飛沫量」は、不織布が約70%、ウレタンは約30~40%しかカットされないらしい。

以来、街中や電車内でウレタンマスクをしている人を注意する、「ウレタンマスク警察」と呼ばれる人まで現れていると報じられている。行き過ぎた”警察行為”は厳に慎みたいところだ。       

しかしながら、専門家からは「ピッタリ装着できるウレタンマスクは脇漏れしないものの、不織布は脇が開いている人が多いので(効果は)あまり変わらない」といった意見も。口元がゴワゴワせずつけやすく、色も選べてファッショナブルなのが気に入られたのか、依然として若者を中心にウレタン派は多いようだ。

そこに異を唱える人が現われた。

国立病院機構仙台医療センター臨床研究部ウイルスセンター長の西村秀一医師である。ウイルスセンターは国内では数少ない臨床ウイルス学の研究施設であり、全国の医療機関から依頼を受けたウイルス分離などの仕事のほか、独自の設備を用いた呼吸器系ウイルス感染の研究を行っている。

「『PCR検査せよ』と叫ぶ人に知って欲しい問題」(2020年5月12日配信)でもマスクの重要性を説いた西村医師、実は先頃、マスクの素材ごとに飛沫防止効果がどう違ってくるかという実験を行ったという。ウレタンマスクはOKなのか、はたまたNGなのか──。

マスク素材で「飛沫防止効果」はこんなに違う

──「富岳」もマスク素材ごとの飛沫防止効果を調べていますが、コンピューター上のシミュレーションです。実際に実験をされたのですね。

(図)西村秀一医師より提供

クリーンルームの中で、喘息などの治療薬吸入器具として使われているネブライザーからヒトの出すエアロゾルを模したものを発生させて、それをそれぞれのマスク素材がどれくらい通すかを試しました。』

『喘息治療や気管支炎の治療でシューシューと出てくる薬剤のミスト(蒸気)を吸い込みますよね。あの状態がミストの発生側です。一方、ミストの受け取り側は、人がつけた状態のマスクではなく、各素材そのものを切り出し、筒の片方に隙間なく張り、反対側から空気を吸わせ、素材を通過してくるエアロゾルの粒子の径(粒子の大きさを表現するもの)ごとの濃度をレーザー粒子計測器で測りました。

(図)西村秀一医師の実験結果より

──上図の「マスク別除去性能」がその結果ですね。衝撃でした。ウレタンマスクの素材である「ポリウレタン」は、5um(マイクロメートル)以下の粒子だと除去率1%以下。ほぼ効果がないことがわかります。

(図)西村秀一医師の実験結果より

そうなんです。逆に不織布マスクは一番小さい0.3~0.5umで90.8%、最大の5.0以上の粒子は99.1%の除去率が確認されました。医療従事者がつけるN95や医療用サージカルマスクはそれ以上に高い値ですが、一般の方が生活圏で使うのは、この程度の不織布マスクで十分機能すると考えます。

ちなみに実験で使用したマスクは、医療用サージカルマスクが当院で使用しているもの。不織布マスクは、VFE(ウイルス濾過効率)が99%カットの表示があった一般的なものです。ポリエステル、ポリウレタンマスクは、一層式でインターネットなどで買えるもの。いずれも、素材表面や内部に特殊な加工がされていないものを選択しました。

不織布マスクを上下左右に、顔に密着させれば、エアロゾルをほとんど吸い込まずに済みます。エアロゾルは科学用語で、口から呼気や咳とともに出て空中にある粒子のすべてを指します。それを出さないこと、吸い込まないことが感染の伝播防止に重要です。

今回は「吸い込み」しか実験はできませんでした。が、互いに不織布マスクであれば出す側も出す粒子が少なく、また吸込み側も吸い込みがかなり少ないわけです。これに2メートルのソーシャルディスタンスがあれば、感染はかなりの確率で防げるでしょう。ただ、マスクの付け方が悪いと、素材のせっかくの性能を生かせません。

マスクのずれや隙間は、過敏になりすぎなくていい

西村秀一(にしむら・ひでかず)/国立病院機構仙台医療センター臨床研究部ウイルスセンター長・臨床検査科長兼ウイルス疾患研究室長。1984年山形大学医学部医学科卒。医学博士。アメリカ疾病予防管理センター(CDC)客員研究員、国立感染症研究所ウイルス一部主任研究官などを経て、2000年より現職。専門は呼吸器系ウイルス感染症。『史上最悪のインフルエンザ―忘れられたパンデミック』(みすず書房)、『感染爆発―見えざる敵=ウイルスに挑む』(金の星社)、『ワクチン いかに決断するか――1976年米国リスク管理の教訓』(藤原書店より今月再出版の予定)などの訳書や論文多数(写真:西村秀一氏提供)

──布(ガーゼやポリエステル)マスクは、10~20%台の除去率でやはり心もとないですね。

ガーゼマスクは、アベノマスクを使いました。咳や呼気などが体内から運んできて口から出たばかりの飛沫の粒子は大きいので、布やガーゼマスクでも止まります。でも、一方で防御にはあまり役立ちません。まあ、2割でも3割でも阻止してくれることを考えれば、何もしないよりはましですが。

──不織布でも、マスクが不意にずれたり、脇に隙間ができやすいものもあります。

つけ方が大事ということはそのとおりですが、一般生活ではあまり神経質にならなくてもいいです。特別なことをしない限り漏れをゼロにすることは不可能です。確かに顔面とマスクの隙間から入るものもあるけれど、密着の意識を持って着けているのであれば入ってくるのはそう大量ではなくなります。患者が出す1回の咳の中の生きているウイルスの量もそんなに多くはないので、あとは運でしょうか。』

『ただし、周りを多くの人に囲われている状況では、エアロゾル濃度が高くなり、もしその中にウイルスを出している人がいたら、どんなマスクをしていてもリスクは高くなるし、密着度が悪ければなおさらです。そうなると、大事なのは換気です。

居酒屋やテレビなどで顔の高さくらいまでパーテーションを設置していることがありますが、パーテーションの高さ云々の問題ではありません。とにかく頻繁に換気をして、空気、すなわちその中にあるエアロゾルを滞留させないことです。

──ところで、なぜこの実験をしてみようと思われたのですか? 理由を教えてください。

「富岳」による飛沫防止効果の映像が昨年発表されましたが、僕らがテレビなどで再三観ていたものは、あくまでシミュレーションなわけです。それが真実である保証が必要です。コンピューターがはじき出しているものなので、計算式もわからないしそれだけでは確認しようがない。私は、理論科学者ではなく実験科学者なので、実際にやった結果を重んじます。

それに、映像の粒子はエアロゾルなのに、すべてウイルスのように受け取られる向きもあった。例えばインフルエンザを例にとっていえば、スーパースプレッダーに相当する患者でも一度の咳で何十個も生きているウイルスを出すような人はいません。ましてやあそこに示された大量のエアロゾルがウイルスなわけがありません。

映像として、また計算された数値としてわかりやすいけれど、わかりやすいということはむしろ科学的には危険なこともあります。実証できる実験データが必要だと思ったのです。

今回私たちがやったのは、人がマスクをつけた状況ではないし、吸い込みだけ、それも素材の性質だけに限られるのですが、それでも実測データとしてある程度参考になるはずだと考えました。これが1つ目の理由ですね。

ウレタンマスクはスカスカ
──その結果、ウレタンマスクの防御性能がわかりました。これは想定内でしょうか?

想定の範囲内です。ただ、ここまで(除去性能が)低いとは、という驚きはありました。ウレタンは着け心地はいいのですが、呼吸がしやすい。それは言い方を変えればスカスカだということで、実はずっと心配していました。

それに、昨年12月に発表された富岳のシミュレーション結果でウレタンマスクは吐き出しも吸い込みもカット率が低かったのに、若者たちを中心にみなさんまだ使い続けています。ここに警鐘を鳴らしたいという考えはありました。

それはシミュレーションの計算結果として出された数値がまだ甘いからかもしれない。そうだとしたら、もしかしたらこれが、若者たちの間の感染が多い理由の1つになっているのかもしれない。それをあらためてほしい。今回の実験をするに及んだ2つ目の理由です。

そもそもマスクの性能を考えると、人々がマスクに期待することは、まず「自分がかからないこと」、要するに防御です。これがまったくダメとなると、どんな人だって少しは考え直すでしょう。一方、公衆衛生の面から願うのは「ほかの人みんながかかってほしくない、広がってほしくない」から、マスクをつけましょうということです。』

『──なるほど。今現在、第3次感染がなかなか収まらないのは、人々の「コロナ慣れ」があるかと思います。今までかからなかったのだから、大丈夫だろう、と。無論、過度に恐れることはありませんが、今一度「感染の防御」を注意喚起しなくてはいけませんね。

テレビなどを観ていると、出演者がマウスガードをつけています。それを見かけてしまうと「あれでいいんだな」と感染対策の見本と勘違いしてしまうかもしれません。しかし、断言します。マウスガードはマスクの代用にはなりません。エアロゾルを介した感染に対する防御には無力です。感染対策にはなっていません。

──改めてお話をまとめると「うつらないマスク」の最強は不織布マスクなんですね。わが家も今日から不織布に切り替えようと思いますが、ウレタンの着け心地も手放しがたいです。また、不織布だと肌がかぶれるという声もネット上で見かけます。ウレタンの上に不織布をつける二重マスクでもいいでしょうか?

構わないと思います。戸外でウォーキングをするときなど、他人とほぼ会わないときはウレタンや布マスクでいい。というか、堂々とマスクを外していいです。ウレタンマスクを寒さ対策とか、すっぴん隠しの目的で使うことには異論ありません(笑)。それに、つねにマスクをつけなくてはいけないわけではありません。運動や移動などで外を歩いているときは、マスクをポケットに入れてもいい。自転車での移動も同じですね。

「使ったマスクを触らないように」は都市伝説

──よく見かける「鼻マスク」はどうでしょうか? マスクを下げて鼻を出している状態ですね。

理屈からいえば、感染を広げない目的なら鼻マスクの状態でも、万が一ご自分が感染していても、よほどのことがない限り周囲に広げはしません。ただし、防御という意味では、口呼吸でない限り無防備状態と同じで、自分は吸ってしまうので感染者と接触した際に感染してしまうリスクは高いです。せっかく不織布マスクをつけていたとしても、防御になりませんね。

また、「使ったマスクを触らないように」というのは都市伝説です。あれは、咳をしている患者と対峙する医療現場での話で、一般生活の中に落とし込む話ではありません。普通に社会生活をしていてマスクの表面にウイルスがついたりはしません。たとえマスクで捉えたとしてもそれは表面ではなく、マスクの断面のどこかです。

画像をクリックすると、長期戦の様相を呈してきたコロナ禍の今を追う記事一覧にジャンプします

また、一般の人たちに対して「ドアノブに触るな」などというけれど、ドアノブで感染している証拠も出てきてはいません。気になるなら消毒すればいいですが、学校などで椅子などをあんなに拭く必要もありません。

とにかく、うつさない・うつらないマスクを正しくつける。換気をする。そして、密を避ける。これで乗り切ってください。アリバイ気味で的を外した対策に惑わされることなく、また過剰な怖れにおののくことなく、正しく防御することは、自分でやりようがあります。自分の知識と努力でできるのです。』

トルコ、アフリカ進出加速 経済回復へ中国追う

トルコ、アフリカ進出加速 経済回復へ中国追う
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB211NJ0R20C21A9000000/

『【イスタンブール=シナン・タウシャン、井上航介】トルコの官民がアフリカ市場への進出を加速させている。旧オスマン帝国の版図だった北部を中心にインフラ事業を受注し、中国を追う。政情不安でリスクの高い国は多いが、米欧企業の影は薄く、相対的に競争は激しくない。新型コロナウイルスの打撃からの経済回復を急ぐなか、アフリカ重視の姿勢を強める。

西アフリカのギニアで起きたクーデターの2日後の7日、ルワンダ外相との共同記者会見に臨んだトルコのチャブシオール外相は「アフリカから手を引け」と指摘した。同氏は軍の一部がコンデ大統領(当時)を追放したクーデターの背後に、かつての植民地勢力がいた可能性を示唆し、非難した。

トルコのエルドアン大統領は8月、コンデ氏をイスタンブールに招き、両国関係の将来を協議していた。ギニアはアルミニウム原料のボーキサイトをはじめ鉱物資源に恵まれている。チャブシオール氏の発言はアフリカを重視するトルコの姿勢を象徴する。

アフリカでトルコが大使館を置くのは43カ国で、2002年の12カ国の4倍近くに増えた。エルドアン氏は首相として政権を握った03年以降、アフリカの28カ国に計38回訪れた。トルコと同様にイスラム教徒の多い国ではモスク(イスラム礼拝所)の建設を支援してきた。旧オスマン帝国の後継として、トルコを「アフリカとユーラシアをつなぐ国」と呼ぶ。

トルコの輸出企業の多くは対アフリカ貿易の競争が緩いと考える。米欧企業はビジネスリスクからアフリカと距離を置きがちだ。トルコ統計局によると、同国からアフリカへの輸出は20年が約152億ドル(約1兆7000億円)で、最近の底だった16年より約3割増えた。アフリカからの輸入額は20年が約73億ドルで、トルコの大幅な輸出超過が続く。

ギニアのコンデ大統領(当時、右)をイスタンブールに招いたトルコのエルドアン大統領(8月)=ゲッティ共同

トルコ商務省によると、同国企業が20年にアフリカで受注した鉄道、道路などのインフラ整備は約20億ドルで、前年を5割近く上回った。アフリカに食い込む中国にはなお及ばないとみられる。

旧オスマン領だった北部での事業がなお多いが、トルコの官民は人口の多いサハラ以南の開拓を目指す。

一方、トルコの資金力には陰りがみえる。新型コロナで経済が停滞し、通貨リラの対ドル相場も低水準だ。チャブシオール氏は日本経済新聞の取材に「アフリカの人口は世界で最も若く、活力がある。(進出では)中国を含め、あらゆる国と協力する用意がある」と答えた。

エルドアン政権は人権を重視するバイデン米政権との緊張も指摘される。だが、米国務省の政策立案スタッフ経験者の一人は、トルコが「アフリカやアジアとは良好な関係を維持している」と指摘する。

この記事の英文をNikkei Asiaで読む 』

アルジェリア、脱石油遅れ ブーテフリカ氏「負の遺産」

アルジェリア、脱石油遅れ ブーテフリカ氏「負の遺産」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR193DV0Z10C21A9000000/

『【カイロ=久門武史】17日に84歳で死去した北アフリカの産油国アルジェリアのブーテフリカ前大統領は、約20年に及んだ長期政権で内戦を収束させた半面、世界が脱炭素にカジを切るなか、脱石油が遅れた。2019年の同氏退陣後も政官財に軍部がからむエリートの支配体制は維持され、経済停滞と社会の閉塞感は続いている。

ブーテフリカ氏は1954~62年の対仏独立闘争に加わり、99年の大統領選で初当選した。イスラム過激派との内戦を終わらせて一定の安定を回復し、2011年に本格化した中東の民主化運動「アラブの春」でも政権は揺るがなかった。14年に4選を果たしたが、前年に脳卒中を患ってから職務の大半を首相が代行するようになっていた。

この間に世界では温暖化対策への意識が高まった。世界最大の原油輸出国サウジアラビアも16年に脱石油の改革構想を打ち出したが、アルジェリアは出遅れた。

ブーテフリカ氏が19年に5選出馬を表明すると抗議デモが全土に広がり、辞任を余儀なくされた。後任のテブン元首相はブーテフリカ体制を内部で支えてきた。軍が支持しており、「プーボワール(権力)」と呼ばれる不透明な支配体制は温存された。

20年、国会議員の任期を2期までに制限する憲法改正案の是非を問う国民投票で投票率は約24%に低迷し、テブン政権への有権者の不信感を印象づけた。

アルジェリアはいまも輸出収入の9割を石油・天然ガスが占める。産油国のなかでも各種経済指標は悪い部類だ。財政収支は09年から赤字が続く。経済は石油相場次第で、公的債務は膨らむ傾向だ。新たな産業の育成は進まず、失業率は15%近い。』

スーダンでクーデター未遂

スーダンでクーデター未遂 反乱軍の数人拘束
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB2199C0R20C21A9000000/

『【カイロ=共同】スーダンの地元メディアは21日、スーダンでクーデター未遂があったと伝えた。軍が事態を制御しており、反乱を起こしたとみられる軍人数人を拘束したという。スーダンは2019年4月、大規模デモでバシル前大統領の長期政権が崩壊し、軍民の共同統治が行われている。

共同統治側にある軍は首都ハルツームで戦車を展開し、市民に対しクーデターの試みに抵抗するよう呼び掛けた。

スーダンではバシル政権崩壊後の19年8月に軍民の統治機構である評議会が発足し、軍出身のブルハン議長が就任した。』

[FT]メルケル首相の16年 ドイツはどう変わったか

[FT]メルケル首相の16年 ドイツはどう変わったか
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB221QF0S1A920C2000000/

『8割もの支持率を誇るメルケル氏の恐らく最も特筆すべき功績は、100万人以上の難民を受け入れたこととともに、女性や高齢者の雇用機会を大幅に拡大させたことだろう。

だが、26日に実施される連邦議会選挙(総選挙)後のドイツにメルケル氏が残す遺産はよいものばかりではない。危機管理能力は優れていたものの、首相在任中はビジョンに欠け、よりグリーンな経済への移行やデジタル化への対応も進まなかったというのがメルケル氏に対するよくある批判だ。

「奇跡的」な経済成長

05年以来、ドイツの1人当たり国内総生産(GDP)は英国、カナダ、日本、フランスの2倍のペースで成長した。

今日のドイツは「2度目の奇跡的な経済成長」を謳歌しているとオランダ金融大手INGのマクロリサーチ責任者、カーステン・ブルゼスキ氏は表現する。失業率は約20年振りの低水準に下がり、7割近くのドイツ人は自身の経済状況に満足していると答えている。

ドイツの経済成長率は他の主要国を上回る  1人当たりの実質GDP(購買力平価ベース、2005年=100) (出所)OECD、リフィニティブ

だが、この成功は全てメルケル氏のおかげだとは言えない。クレディ・スイスの欧州担当チーフエコノミスト、ネビル・ヒル氏によれば、土台の大半は前任者のシュレーダー前首相による改革の下で築かれていた。英シンクタンク、欧州改革センターのチーフエコノミスト、クリスチャン・オーデンダール氏は、ドイツにおける2度目の奇跡的な経済成長は「メルケル政権が何もしなくても」実現していたという。

そのうえ、今やユーロ圏GDPの4割を占めるドイツの製造業は、台頭する中国におんぶに抱っこの状態だ。輸出におけるドイツの中国依存はユーロ圏で突出している。

ドイツの対中輸出依存はEU最大  輸出額に占める対中国の割合(%、12カ月移動平均) (出所)リフィニティブ、IMF国際貿易統計

とはいえ、メルケル氏はドイツが経済成長を遂げるのをただ見守っていただけではない。09年の金融危機の際には、自動車買い替え補助金制度で自動車の売り上げを下支えするなどして経済を保護した。就業時間の短縮や休業で目減りした給与を政府が補填する「クルツアルバイト(時短勤務)」制度に数十億ユーロを注ぎ込むという決断も、同様に経済を救った。

その成果の一つとして、ドイツは雇用創出に成功している。

ドイツでは大半のグループで就業率が上昇した  就業率(%、4四半期移動平均)  [左上]女性(20〜64歳)[右上]外国生まれ(20〜64歳)[左下]高齢者(65〜69歳)[右下]就業率の上昇に結実した(20〜64歳) (出所)EU統計局、リフィニティブ
雇用が拡大

メルケル時代の最大の功績が並外れた雇用創出の速さであることは間違いなく、特に女性で顕著だ。現在、ドイツの女性の労働力参加率は、育児制度の改善に支えられて主要7カ国(G7)で最高だと英調査会社オックスフォード・エコノミクスのドイツ担当リードエコノミスト、オリバー・ラカウ氏は説明する。

ドイツの女性の労働力参加率はG7最高  25〜64歳の女性(%) (出所)OECD

同様に際立つのが、移民の就業率の上昇だ。戦火を逃れてシリアやアフガニスタン、イラクを脱出した100万人以上の難民を受け入れ、ドイツ社会に溶け込ませるという15年に掲げた政策を固持するのは、メルケル氏にとって勇気のいることだった。「我々にはできる」との言葉通り、同氏はそれをやってのけた。

メルケル首相はドイツに多数の難民を受け入れた  欧州各国への難民申請(千人)  (出所)EU統計局

ただし、雇用の質という面では見劣りする。低賃金の仕事に就いている労働者の割合が高いという状況は過去20年間でほとんど改善していない。女性の雇用も依然としてパートタイムが多く、ドイツの代表的な株価指数DAXの構成銘柄には最高経営責任者(CEO)が女性である企業が1つしかない。

債務は少ないが、ビジョンも投資も乏しい

新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)にもかかわらず、ドイツは以前とほぼ同じくらい豊かだ。09年に憲法(基本法)に盛り込まれた財政収支均衡原則のおかげもあって、財政赤字は比較的低水準に抑えられており、政府会計はおおむね健全だ。

だが、全てが順調に見えるものの、「ドイツ経済は大きな構想に揺さぶられなかった」とも言えると独保険大手アリアンツのシニアエコノミスト、カタリナ・ウテルモール氏は指摘する。経済成長と雇用拡大の一方で、現代化はほとんど進んでいない。公共投資が低水準であるせいでドイツは将来への準備が不足しているという批判もある。

ドイツの公共投資は他の主要国より低水準  一般政府総固定資本形成の対GDP比(%) (出所)リフィニティブ、欧州委員会AMECOデータベース

11年に日本で発生した福島第一原発の事故以降、ドイツでは再生可能エネルギーへの移行が加速し、35年に石炭火力発電の全廃する計画も打ち出した。それでも他の欧州連合(EU)諸国に比べて遅れが目立つ。

1人当たりの温暖化ガス排出量はEU平均を上回り、再エネ比率は低く、新車(乗用車)の二酸化炭素(CO2)排出量も多い。

ドイツはグリーン経済の各指標で下位に沈む  [上]新車(乗用車)の走行1キロメートル当たりのCO2排出量(グラム)[中]輸送部門における再エネ比率(%)[下]年間1人当たり温暖化ガス排出量(トン)  (ビジュアルジャーナリズム)Liz Faunce(出所)EU統計局

デジタル経済への移行でも同様のことが言える。投資不足により高速ブロードバンドの普及率が低く、接続速度の地域間格差が解消せず、ブロードバンドのモバイルデータ消費量もEUの平均を下回っている。

これらの分野には「必要な注意が向けられていない」とオーデンダール氏は指摘する。ブルゼスキ氏も「投資の不足は恐らくメルケル氏の経済政策が後に残す最大の弱みだろう」と述べる。

ドイツはデジタル経済への移行でも後れを取る  EU各国のデジタル経済・社会サブ指数(2020年) (出所)欧州委員会通信ネットワーク・コンテンツ・技術総局

コロナ以前から、ドイツは脱炭素化の着手、通信の改善、教育の加速、インフラの強化に推計4500億ユーロ(約57兆7000億円)の公共投資が必要だとされており、脆弱なインフラは今夏発生した洪水の阻止の失敗にもつながった。実際、メルケル氏の後継を争う候補者の一部は、投資強化の必要性をスローガンに掲げている。

ウテルモール氏は「新型コロナ危機は(メルケル氏の)欠点を拡大して見せた。次期政権はグリーン化やデジタル化が確実に成功するよう、その欠点に取り組む必要があるだろう」と述べている。

By Valentina Romel

(2021年9月20日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

(c) The Financial Times Limited 2021. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.

英フィナンシャル・タイムズ(FT)と日経新聞の記者が、アジアのテクノロジー業界の「いま」を読み解くニュースレター「#techAsia」の日本語版をお届けします。配信は原則、毎週金曜。登録はこちら。
https://regist.nikkei.com/ds/setup/briefing.do?me=B009&n_cid=BREFT053 』

侮れない中国TPP「300日計画」

侮れない中国TPP「300日計画」 習主席と李首相も連携
編集委員 中沢克二
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK212C30R20C21A9000000/

『中国が環太平洋経済連携協定(TPP)への加盟を正式に申請した。一見、唐突にみえる習近平(シー・ジンピン)政権の行動だが、その裏には300日にわたる周到な計画と準備があった。日本政府には米国不在となったTPPを苦労してまとめあげた成功体験がある。しかし、中国の戦略的な動きを十分、把握したうえで、先回りできなければ、かつての大きな功績も雲散霧消しかねない。

中国はバイデン米大統領がTPP復帰を目指すと予測していた(20日、ニューヨーク)=AP

「(2020年11月中旬までに)米大統領選でバイデンの当選が確実になり、東アジアの地域的な包括的経済連携(RCEP)も妥結した時点で、21年秋を目指すTPP11への加盟申請計画が(中国)指導部内で大筋、共有された」。中国の対外経済政策に詳しい信頼できる関係筋はこう明かす。

バイデン政権に先手、NZとシンガポールに照準

この計画の肝は、新型コロナウイルス禍を克服したバイデン政権が22年にはTPP復帰に動く可能性を考え、その前の21年9月、または10月に中国が先手を打つべきだという政治判断だった。

国家主席の習近平が20年11月20日、オンライン開催だったアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で「TPP11参加を積極的に考える」と公式に表明する直前、正式申請に向けた「300日計画」が始動していたことになる。ここにはTPP加盟に意欲をみせる台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン)民主進歩党政権をけん制する思惑もあった。

中国の全人代の閉幕式を終え、李克強首相(右)と言葉を交わす習近平国家主席(3月11日、北京の人民大会堂)=共同

中国トップの表明は唐突ではなかった。対外経済政策としては、RCEP交渉を仕切った首相の李克強(リー・クォーチャン)ときちんと連携がとれていた。李は、習発言に先立つ20年5月の段階でTPP参加に「中国は前向きで、開放的な態度だ」と話していた。

習と李をつなぐキーマンは、習が信頼する副首相の劉鶴(リュウ・ハァ)と、商務省の次官で国際貿易交渉代表の兪建華である。司令塔は国務院(政府)に置かれ、重要事項を判断する際は必ず会議が開かれた。

「300日計画」の最初の標的はニュージーランド(NZ)だった。同国はTPPに発展した原協定の4当事国(ほかはシンガポール、ブルネイ、チリ)の一つで、現在も大きな役割を担っている。域外国が加盟意思を通知する際の寄託国で、中国が正式な加盟を申請した先もNZだ。21年のTPP委員会の議長国である日本ではないのもポイントだった。

中国は何かと関係がギクシャクしていたNZとの意思疎通を重視する方向にカジを切っていた。習によるTPP参加検討の表明から間もない21年1月には、NZ側のメリットが大きい2国間の自由貿易協定の改定に署名した。中国との関係が悪化してゆくオーストラリアとは対照的な対応なのが興味深い。

シンガポールのバラクリシュナン外相(右)と会談する中国の王毅・国務委員兼外相(シンガポール、13日)=AP

加盟申請直前の最後の根回しは、やはり原協定当事国のシンガポールだった。同国が22年にTPP委員会の議長国になることを見越した接触でもある。国務委員兼外相の王毅(ワン・イー)は9月中旬、シンガポールを訪問。現地報道によれば、外相会談で中国のTPPへの興味に対して「歓迎する」という言葉をシンガポール側から引き出した。

決め手はアフガン情勢

原協定4当事国のうち、ブルネイとチリは国内手続きが未完了である以上、中国としていまの段階でできる根回しは果たしたことになる。中国は、マレーシアが中国加盟に向けた交渉を支持したように、東南アジアの多くの国は交渉入りに反対しないとみている。驚くのは中国側が「最終的には日本も中国の交渉入りに真っ向から反対できない」と読んでいることだ。

中国にとってTPP加盟申請は国際政治・経済戦略上、主導権を確保するための重要な手段である。英国に加盟申請で先を越されたとはいえ、時期の設定は中国の命運に関わる。そして9月中旬の正式申請に至る最後の決め手は、アフガニスタン情勢だった。

中国指導部は、アフガンからの米軍撤収に伴う混乱でバイデン米政権にTPP早期復帰を考える余裕がまだないと分析。20年からのスケジュールに沿い、11月にオンラインで開かれる予定のAPEC首脳会議の前に手を打った。

ここで問われるのは、習政権として、高いハードルを課すTPPに入るために徹底的な国内改革に踏み切る用意があるかどうか、である。

「皆、誤解している。(中国の)国内政治情勢を考えればいま、直ちに真心を持ってTPPに入る気などさらさらない。ギリギリの交渉をする用意もない。そもそも交渉入りさえ全加盟国の同意が必要なのだ。仮に交渉入りしても、肝心な部分はズルズルと引き延ばしになる」。中国の「本気度」に疑問を呈する識者の声は、一面の真実を言い当てている。

ここ数年、中国ではTPPの方向性とは逆の施策が次々と打ち出された。大きな国有企業同士の合併は典型例だ。民間の大企業には独占禁止などを理由に罰金を科したり、分割を迫ったりしているのに、国有企業への補助金問題には手がついていない。

1990年代からの世界貿易機関(WTO)加盟交渉は、国有企業を中心とした国内改革と同時進行の国運をかけた真剣勝負だった。今回のTPP加盟申請にはそこまでの覚悟がみえない。中国は、TPPが志向する企業や個人による国境を越えた自由なデータの流通には否定的で、国家安全を理由に規制強化に動いている。この流れで、9月にはデータ安全法を施行した。

TPPに反対してきた左派を利用する矛盾

習近平が進める「左旋回」の路線、統制強化を支える有力なグループは左派だ。過去、彼らは一貫してTPPに反対してきた。国有企業への補助規制といったTPPの規則は「主権の侵害につながる」という理屈だった。

全国政治協商会議の閉幕式に臨む劉鶴・副首相(左)と習氏(2019年3月、北京)=横沢太郎撮影

対外強硬策が特徴の「戦狼外交」を支持してきた中国内の学者らもTPPを「新型資本帝国統治」につながると批判してきた経緯がある。政治情勢を考えれば、いま中国がTPPに名乗りを上げるのはある種の自己矛盾だ。

一方、別の関係者は「(TPP加盟申請は)中国はあくまで『市場経済国家』としてとどまる、という(国の)内外へのアピールでもある」と指摘する。急激に社会主義へ傾斜する中国に疑問の目が向けられているのを強く意識した防御的な行動でもあるというのだ。

習近平がトップとしての続投を目指している2022年以降、さらに次の次の共産党大会がある27年まで見据えれば、TPP加盟申請と今後の交渉が国内改革へのテコに使える場面が出てくるかもしれない。

様々な側面を持つ中国のTPP長期戦略は決して侮れない。9月末の自民党総裁選を経て誕生する日本の新たな首相は就任早々、政治・経済両面で中国にどのように対処するのか決断を迫られる。(敬称略)

中沢克二(なかざわ・かつじ)
1987年日本経済新聞社入社。98年から3年間、北京駐在。首相官邸キャップ、政治部次長、東日本大震災特別取材班総括デスクなど歴任。2012年から中国総局長として北京へ。現在、編集委員兼論説委員。14年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。』

[FT]中国不動産暗転、経済全般に波及

[FT]中国不動産暗転、経済全般に波及
政策当局は不動産価格抑制と融資規制で長期戦の構え
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM216K60R20C21A9000000/

『ほんの数週間前まで、中国東部の山東省・済南市にある3件の住宅開発プロジェクトの販売は好調だった。だが、例年なら新築住宅販売が繁忙を極める9月に入り、そのムードが冷え込んでいる。

中国恒大集団が開発を進める洛陽市の集合住宅街。8月の新築住宅価格は前月比0.2%の上昇にとどまり、開発業者は販売に苦戦した =ロイター

当局が住宅ローンの引き締めに動くなか、プロジェクトの販売は横ばいないし減少しており、デベロッパーは多少の損失を出しても成約にこぎ着けようと値引きに動いている。

中国電建地産集団の済南支部で不動産仲介を担当するチョウ・ミャオ氏は「政府の政策は住宅購入を支援していない」と語る。「多くの人は当局がいずれ融資規制を緩和すると見込んで、住宅購入の計画を来年に先送りしている」という。

900万人の人口を擁する済南市の状況は、中国全土の不動産セクターに広がる冷え込みの一端にすぎない。不動産分野は数十年にわたって中国の経済成長を支えてきたが、現在は不動産融資の抑制や価格統制を目指す中国政府の圧力を受けている。

世界最大の負債を抱える不動産開発会社で、中国の都市化を進めるテコの役割を果たしてきた中国恒大集団が経営危機に直面している。このことは、中国の経済モデルの重要な部分に対応する政府の不安定な立場を浮き彫りにしている。

中国政府は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)に当初は利下げで対応したが、ここ1年は特に不動産開発会社の借り入れを厳しく制限し、資産バブルのリスクの芽を摘もうとしている。

政府はまた、住宅ローン融資に制限を加え、大都市の家賃に上限を設けている。済南市では住宅ローンの審査に2カ月はかかるとされる。当局が融資に独自の制約を課しているためだ。

先週発表された公式統計によれば、8月の中国の主要70都市の新築住宅価格は前月比0.2%上昇と、8カ月ぶりの低い伸び率にとどまった。他の統計も、土地取引の急減を浮き彫りにしており、政府の施策が効き始めている状況が明らかに示されている。

米金融大手バンク・オブ・アメリカ(バンカメ)によると、多くのエコノミストは、この不動産指標の減速は中国の国内総生産(GDP)の28%を占めるセクターに深刻なリスクをもたらすとみている。不動産セクターはコモディティー(商品)需要や労働需要、借り入れ需要の規模から、世界で最も重要な景気指標の一つになっているという。

70年代のFRBの政策に類似

ただ、野村の中国担当チーフエコノミスト、ティン・ルー氏は「今回はこれまでとは違う」とみている。同氏は最近、中国の不動産統計の「急速な悪化」を指摘し、1970年代の米国でインフレ抑制に動いたポール・ボルカー元米連邦準備理事会(FRB)議長の金融政策と類似性があると見ている。

香港の恒大集団の物件広告の前を歩く女性。同社の債務危機で、中国経済における不動産の重要性が明らかになった =ロイター
「深刻なリセッション(景気後退)や金融危機が起きれば、もちろん(当局は)ある程度規制の手を緩めるだろうが、まだそこまではいっていない」という。

ルー氏は、8月の新築住宅販売件数が30都市で前年同月比24%減少し、100都市で土地使用権の販売高が53%急減したという統計に注目している。いずれの指標も9月上旬にはさらに悪化したという。

販売の落ち込みは恒大集団にも打撃を与えている。約2兆元(約34兆円)の負債を抱える同社は、サプライヤーや債権者への支払い義務を果たすため、現金を切実に必要としている。先週はデフォルト(債務不履行)の見通しが高まるなか、怒った投資家が資金の返還を求めて深圳市の本社に押しかけた。

9月15日、ローンや金融商品の返済を求めて広東省深圳にある恒大集団本社の前に集まる人々=ロイター

恒大を取り巻く問題は、中国の金融システムに対する不動産セクターの重要性を浮き彫りにしているが、同社や何百という国内の同業他社の弱さは経済全般にも深刻な影響を及ぼすだろう。不動産投資は2020年に7%増加し、他の主要国を上回る不動産主導の景気回復を支えた。

そうした経済的な貢献の裏側には不安定化の兆候があり、規制当局による警告につながった。深圳市などの大都市で価格が急騰するなか、政府は不動産開発会社の負債を制限する「レッドライン」を発表するとともに、今年初めには銀行の住宅ローン融資に制限を設けた。

物件を値下げする香港の不動産業者=ロイター

ここ数年、中国は住宅投機の抑制に動いている。王蒙徽・住宅都市農村建設相は1月、中国は不動産を景気の下支えには使わないと発言し、住宅は投機ではなく「居住」のためのものだとする習近平(シー・ジンピン)国家主席の17年のスローガンを改めて強調した。政府は最近、先の規制が意図しない価格上昇を招いたことを受け、大都市における土地の入札を中止した。

不動産は「共同富裕」の要

バンカメのアジア経済調査責任者、ヘレン・チャオ氏は「今回、政策当局は信用抑制策をより粘り強く堅持しようとしているようだ」との見方を示した。不動産の減速は「主に政策引き締めに起因する」という。

中国政府はその一方、「共同富裕」を推進するうえで不動産は重要な部分であると考えている。住宅都市農村建設省は先週、同セクターを3年かけて調査すると発表し、従来の教育やハイテクなどさまざまなセクターの管理を強める政府の取り組みを一段と強化した。
中国経済は、パンデミックからの裾野の広い景気回復はまだ不完全であるうえ、最近の新規感染の増加に伴う混乱で長引く消費の弱さが露呈している。その状況で、経済に掛かる圧力が一段と高まっている。

野村のルー氏は、土地購入の落ち込みが、不動産投資や建材需要だけでなく、開発会社に土地を販売する地方政府の収入にも重くのしかかるとみている。だが、「共同富裕」の推進と、不動産に対する中国政府のアプローチとの関連を指摘する向きは少なくない。

豪投資銀行マッコーリーの中国担当チーフエコノミスト、ラリー・フー氏は「中国政府が考えているのは、経済的な点だけではない」と指摘する。「悪い統計が2~3カ月程度続いても(金融政策が)緩和されることはない」という。

膨大な経済活動や雇用、富を創出してきたセクターの長期的な弱さに中央・地方政府がどう対処するのか、統計以外ではまだはっきりしていない。済南市のあるプロジェクトでは、発売から2年程たった集合住宅の3分の1がいまだに売れ残っている。販売単価は1平方メートルあたり1万9100元と、採算ラインとされる2万元を下回っている。

「当社の最優先事項はキャッシュフローの改善だ」。開発会社の関係者はこう語った。「収益性は二の次」

By Thomas Hale and Sun Yu

(2021年9月21日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

(c) The Financial Times Limited 2021. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.

英フィナンシャル・タイムズ(FT)と日経新聞の記者が、アジアのテクノロジー業界の「いま」を読み解くニュースレター「#techAsia」の日本語版をお届けします。配信は原則、毎週金曜。登録はこちら。
https://regist.nikkei.com/ds/setup/briefing.do?me=B009&n_cid=BREFT053
【関連記事】

・中国恒大、23日の元建て債利払い実施へ 39億円
・中国、住宅ローンに総量規制 不動産バブル対策
・恒大処理が占う「習経済」 危機回避と格差是正で苦悩
・世界同時株安、見えぬ中国恒大処理 リスク連鎖に警戒
・[社説]中国恒大を巡る不透明感の払拭が急務だ 』

中国恒大、23日の元建て債利払い実施へ

中国恒大、23日の元建て債利払い実施へ 39億円
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB221PB0S1A920C2000000/

『【上海=土居倫之】中国の不動産大手、中国恒大集団は22日、期日を23日に控えた人民元建て債の利払いを実施すると発表した。金額は2億3200万元(約39億円)。恒大を巡っては1兆9665億元(約33兆4000億円)にのぼる負債を巡り信用不安が浮上しており、債券の利回りが急上昇していた。

【関連記事】
・世界同時株安、見えぬ中国恒大処理 リスク連鎖に警戒
・よくわかる中国恒大 4つのポイント

恒大が22日、利払い実施を発表したのは、発行額40億元の人民元債で深圳証券取引所に上場している。同時に利払い日が到来する米ドル債の利払い実施の有無については現時点で未公表となっている。年内の社債の利払い額は、米ドル債が計6億3110万ドル(約694億円)、人民元債が計3億5380万元となっている。元本は22年1月30日にドル債3億ドルの満期が到来する。

一方、22日の上海株式市場で、上海総合指数は小幅に下落して始まった。恒大向けの貸付金が多いとされる中国の民営銀行、民生銀行が一時前週末比約2%下落するなど恒大問題が依然として重荷となっている。不動産大手の万科企業も小幅に下落する場面があった。

恒大が上場する香港株式市場は22日休場している。

【関連記事】恒大処理が占う「習経済」 危機回避と格差是正で苦悩』

恒大処理が占う「習経済」

恒大処理が占う「習経済」 危機回避と格差是正で苦悩
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM214NR0R20C21A9000000/

【北京=川手伊織、羽田野主】中国共産党の習近平(シー・ジンピン)指導部が中国不動産大手、中国恒大集団の経営不安への対応に苦慮している。中国の格差問題の是正をめざして富裕層たたきをする中で、巨大企業グループの救済には安易に踏み込めない。金融危機の引き金を引けば、2022年秋の党大会で習氏の3期目の続投にも響きかねない。

中国共産党の機関紙、人民日報は21日付の1面で恒大集団に一切触れなかった。官製メディアは一様に政府の対応に口をつぐんだままだ。

習指導部が静観するのは格差是正へ「共同富裕(ともに豊かになる)」のスローガンを掲げたことと無関係ではない。富裕層からの所得再分配を強化し、貧困層を引き上げるとともに中間層を分厚くする構想だ。その実現へ規制を強めるのが富裕層の投機対象になりやすい不動産だ。

中国では昨年、新型コロナウイルス対応の金融緩和で不動産価格が高騰。不動産シンクタンクの易居不動産研究院によると、中国主要50都市の不動産価格は20年時点で平均年収の13倍と、15年の10倍から跳ね上がった。

価格高騰で都市部の生活コストは高止まりし、市民は不満を募らせている。金融危機の回避を優先して恒大を支援すれば、習指導部は結局、不動産投資でもうけてきた富裕層を守るのだと国民に受け取られかねない。

一方で中国国家統計局によると21年1~6月の国内総生産(GDP)のうち不動産業は7%を占める重要産業だ。これが揺らげば中国経済全体への影響は大きい。

投機の過熱を警戒した中国当局は昨年夏に不動産業界の資金調達規制を導入、住宅ローンの総量規制などで消費者のマンション売買も制限した。不動産会社は金融機関からの資金調達も売却による回収も難しくなり、資金繰りが急速に悪化。中国工商銀行の不動産向け不良債権比率は6月末に4.29%と前年同期の1.41%から急上昇した。

不動産向け融資は銀行融資全体の約2割を占めており、恒大が行き詰まれば連鎖的に中国の金融システム不安が高まる懸念がある。ただ習指導部の経済運営方針から、恒大を即座に支援することは考えにくい。

市場関係者は「広東省の国有企業などが資本支援に乗り出すとしても、恒大が非中核資産の売却を終えてからだ」とみる。金融当局が窓口指導を通じて恒大への売掛債権を持つ建設会社などの資金繰りを支えるなどの方策はありうるが、市場の不安解消にはほど遠い。

一方で中国政府は資金ショートによる恒大の唐突な破綻を警戒しているとの見方もある。米ブルームバーグ通信は先週、「住宅都市農村建設省が主要債権銀行に『20日が期限の利払いを行わない』と伝えた」と報じた。

習氏の沈黙の背景に、同氏が距離を置く党の青年組織、共産主義青年団(共青団)と恒大のつながりを指摘する声もある。

恒大集団が創業した広東省は「共青団の地盤」といわれる。習氏は党内を1強で固めるが、共青団の流れをくむ李克強(リー・クォーチャン)首相や胡春華(フー・チュンホア)副首相と溝があるとの見方は絶えない。党内の事情を知るある有識者は「意に沿わない部下の地盤沈下には手を貸さないということではないか」と語る。

習氏は権力維持のため、共同富裕路線を堅持しつつ金融危機も回避するという難しい手綱さばきを迫られている。

【関連記事】

この記事の英文をNikkei Asiaで読む

台湾有事「6年以内」に現実味 前米軍司令官

台湾有事「6年以内」に現実味 前米軍司令官 
習政権の長期化念頭に
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN21DMO0R20C21A9000000/

『米インド太平洋軍の司令官を2021年春まで務めたフィリップ・デービッドソン氏は日本経済新聞の取材に応じ、中国が今後6年以内に台湾を侵攻し、力づくで併合する展開が「一段と現実味を帯びている」と語った。根拠として「2027年に到来しうる習近平(シー・ジンピン)体制の節目」を挙げ、中国の内政事情が動因になるとの認識を示した。

デービッドソン前司令官は退任前の3月、米上院軍事委員会の公聴会で中国による「6年以内」の台湾侵攻の可能性に言及し、米軍内の危機意識を示す発言として注目を集めた。同氏は「ミサイル、サイバーや訓練の能力、兵力の相互利用や後方支援の向上といった中国人民解放軍の変化は、中国がその道を選択すれば6年以内に台湾を侵攻する能力を備えることを示している」と述べた。

デービッドソン氏は6年後の「2027年」を特定した背景として、習近平・中国国家主席の長期指導体制への思惑があると指摘した。習氏は国家主席の任期を2期10年までに制限した規定を憲法改正で撤廃しており、22年の共産党大会で3期目の続投を決める可能性がある。27年は次の節目となりうる。前司令官は「政治的将来を習氏が自分で決め、そこに支持が集まるかどうかは27年までの時間軸次第だろう」と語り、長期の統治に向けたカギを握る台湾問題が火種になりやすいとの見方を示した。

歴代の米政権は台湾問題で当事者による「平和的解決」を支持する姿勢をとる「戦略的あいまいさ」を保ってきた。中国の脅威が増すなか、台湾侵攻の可能性をにらんで米国がさらに踏み込んだ姿勢をとるべきだとの意見が米国内にはある。デービッドソン氏は「常にどんな戦略をとるかの分析が欠かせない」と見直しの必要性に触れる一方で「ここ数年、戦略を変更するかどうかの考慮がなされ、現時点では戦略を維持するという合意がある。私はその合意に従う」と語った。

中国の軍事力の増大については「能力の向上とともに兵器の数も増え、米国と日本との差も縮まっている」と認める一方で「現時点では米日が勝っている」と明言した。

(ワシントン支局長 菅野幹雄)』