注目されるようになった経緯は、1970年代の米国での外交官のハイ・パフォーマーの研究と、バブル崩壊後の日本でのビジネスでの成果の見直しということだった。ヨーロッパにおいては、どうなのか。

『アメリカと日本におけるコンピテンシーの歴史を正確に捉えられていますね。まさにその通りで、アメリカではマクレランド教授らによる外交官の研究、日本ではバブル崩壊後の成果主義導入に伴って注目されました。

では、ヨーロッパ(英国やEU諸国)におけるコンピテンシーはどのように発展したのでしょうか。

一言で言うと、アメリカが「個人の行動特性(ハイパフォーマーの観察)」を重視したのに対し、ヨーロッパは「国や業界が定める職業基準(仕事そのものの要求水準)」としてコンピテンシーを発展させました。

ヨーロッパにおける導入の経緯と特徴を大きく2つに分けて解説します。

  1. 英国(イギリス)の経緯:国家資格制度(NVQ)との連動

ヨーロッパの中で最も早く、かつ組織的にコンピテンシーを取り入れたのはイギリスです。

1980年代後半、当時のサッチャー政権下で導入が始まりました。

  • 背景:産業競争力の低下

1980年代のイギリスは、労働者の職業スキルが標準化されておらず、国際的な競争力が低下していました。

そこで政府主導で労働者の能力を底上げする改革が叫ばれました。

  • 国家職務資格(NVQ)の創設(1986年〜)

イギリス政府は、各業界で「この仕事をするには何ができなければならないか」という職業基準(Occupational Standards)を定めました。

この基準をクリアしていることを証明する資格制度がNVQ(National Vocational Qualification)です。

  • ヨーロッパ流の「コンピテンシー」の誕生

このNVQの根底にある考え方が、イギリスにおけるコンピテンシー(英国では主に Competence と綴られます)です。

「その職務において、期待される成果やパフォーマンス基準を達成する能力」として定義され、教育や職業訓練の評価軸として爆発的に普及しました。

  1. 大陸ヨーロッパ(EU)の経緯:国境を越えた「互換性」の追求

1990年代以降、EU(欧州連合)の統合が進むにつれて、コンピテンシーはさらに異なる目的で発展します。

それは、「国ごとの資格や能力を、ヨーロッパ全体で共通のモノサシで測る」ということです。

  • 背景:労働移動の自由化

EU内では人が国境を越えて自由に働けるようになりました。

しかし、「フランスの資格を持つ人が、ドイツで同じように働ける能力があるか」を証明するのが難しいという問題が発生しました。

  • 欧州資格枠組み(EQF)の導入

そこでEUは、国や教育機関ごとの「学歴(インプット)」ではなく、「最終的に何ができるようになったか(アウトプット=学習成果/コンピテンシー)」で個人の能力を評価する仕組み(EQF: European Qualifications Framework)を構築しました。

📋 アメリカ流とヨーロッパ流の決定的な違い

同じ「コンピテンシー」という言葉ですが、大西洋を挟んでアプローチが大きく異なります。

項目 アメリカ流(Behavioral Approach) ヨーロッパ流(Functional Approach)

主な発祥地 アメリカ(マクレランドら) イギリス(政府・産業界)、EU

焦点 「人」(成果を出す人の行動・動機) 「仕事」(職務で求められる基準・成果)

目的 企業の採用、ハイパフォーマーの育成 職業教育、国家資格の標準化、労働移動

アプローチ 優れた人を観察して、特性を抽出する 職務を分析して、必要な最低基準を定義する

綴りの傾向 Competency(主に複数形はcompetencies) Competence(主に複数形はcompetences)

※現在では、欧米ともに両方の視点を取り入れたハイブリッド型が増えていますが、歴史的なルーツとしては上記のような違いがあります。

ヨーロッパでは「国家や社会のインフラ」としてコンピテンシーが発展したという側面が強いです。

さらに詳しく知りたい特定の国(イギリス、ドイツ、フランスなど)の事例や、この違いが現代の企業人事(採用や評価)にどう影響しているかなど、気になる点はありますか?
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