世界のメタンハイドレート開発の現状

アメリカに、「U.S.DEPARTMENT OF ENERGY」ってお役所がある            ( https://www.energy.gov/ )。

その傘下に、「The National Energy Technology Laboratory」という研究所がある( https://netl.doe.gov/ )。ここは、世界各国からエネルギー資源開発に関する研究や開発途中で得られたデータの論文なんかを受け付けて、定期的に刊行物(最近は、電子データ)にまとめて、世界各国の研究者や一般人がアクセスできるようにしている機関だ。むろん、自分自身でも研究・開発におけるデータを作成し、定期的に発表したりしている。

そこで、「Methane Hydrates」という検索をかけて、ヒットしたのが次のpdf だ。

・『2017-Methane-Hydrate-Primer[1].pdf』 

『Fire in the Ice, Volume 18 Issue 1』                             ( https://www.netl.doe.gov/node/6991 )

特に、1個目は、非常に参考になるんで、興味のある人は、自分で読んでみてくれ。一部を、紹介する。

まずは、お約束の「燃える氷」の画像と、原子モデルから。

次は、世界のメタンハイドレートの推定分布のマップ。

別に日本周辺にのみ分布する… 、というわけではなく、広く世界に分布していると推測されている。

特に注目点は、インドだ。人口13億人を抱え、おそらく中国を抜いて世界最大の人口を抱える国になるだろうと推測されている。だが、エネルギー資源という点では、日本同様「貧資源国」という位置づけだった。しかし、メタンハイドレートに関しては、アラビア海側(西海岸側)、ベンガル湾側(東海岸側)両者に分布しているだろう、と推測されている。これを開発できたら、エネルギー安全保障上の大きなアドバンテージとなる。日本に接近を図っているのも、うなずけるな…。

次は、そもそものメタンハイドレートや、石油や天然ガスの成り立ちの説明がこちら。

植物の堆積物や動物の死骸なんかの有機物が、地中に埋まって、地下の圧力と地熱によって、徐々に炭化水素物に変化して行き、ガスやなんかになって地層中を移動して行き、地層の形態によっては、石油になって溜まったり、天然ガスとして溜まったり、メタンハイドレートとして溜まったりする…、という話しのようだな…。

次は、その中でも特にメタンハイドレートについて、地層どういう形態の部分に溜まるのかという話し。ほぼ、水面下の話しのようだな…。

だと、砂や泥との分離が大変そうだ…。だと、肝心のメタンハイドレートの混じり具合が僅少で、商業ベースに乗りにくそうだ…。が、いわゆる「表層型」だろう。分離は容易そうだが、大量に存在する場所の探索が難しそうだ…。は、斜面に沿って濃集したもので、大量に存在することは見込まれるんじゃないか…。しかし、採集は、水平掘りの技術が必要となるだろうな…。は、睦土だから極地に近くて気温が低い場所じゃないと、ハイドレート状にはなかなか成ることが難しいだろう…。こうして見ると、大量に濃集し、かつ、採集も容易という場所は、なかなか難しいもののようだな…。

そういうことで、の海底の傾斜面に濃集したものを、さらに説明したのがこちらだ。

採集方法は、結局のところ、在来型の資源である石油や天然ガスを採集するように、縦坑を掘ってパイプ突き刺して、採集を図る…という方法が、最も現実的、ということになる。

その方法と、ハイドレートの形態との組み合わせを、検討したのがこちら。

こういう風に、垂直に縦坑を掘って、パイプを突き刺すやり方だと、ハイドレートの層が相当に厚みがあるものでないと、回収できる量が僅少で、なかなか商業ベースには乗りにくい…、と言う話しになってくる…。

そこで、シェールガス・オイルの採集に使ったような水平堀りを応用する、という構想も生じてくる。実際、そういう水平堀りマシンのようなものも、構想されているようだ…。

ただ、シェールの場合は、薬剤を注入して頁岩の中にある生成途上の炭化水素物を、溶かして、その液体と一緒に吸引する…、という方法を採る。

この時、パイプの周辺は、強力に薬剤まみれになって、環境汚染の懸念が生じるんだが、地中のことだから、まあ大丈夫だろう…、とされている。

しかし、同様のことを海中でやっても、大丈夫なものだろうか…。周辺海域で漁をしたり、養殖をしたりしている人達は、強力に反対するだろうな…。

せいぜい、近隣の海水を汲み上げて、注入するというところまでだろう…。そうすると、今度は、そうやって溶かしたハイドレートの中に、メタンは充分に存在するのか…、なんてことが問題になってくるだろう…。

こんな風に、メタンハイドレートと言う新エネルギー資源は、確かにそこに存在し、試掘に成功する事例も生じているが、存在形態多種・多様で、一つの採掘技術だけで攻略できると言うものでも無いもののようだ…。

しかし、机上の計算では、大量に存在するエネルギー資源で、在来型のエネルギー資源が枯渇する事態に備え、あるいは、枯渇を先延ばししようとして各国が競って、開発に走り出しているのが現状だ。

こんな風に、計算上は、大西洋太平洋メキシコ湾に大量のメタンハイドレートが眠っている…、と見積もられている(meanって、この場合、「平均」という意味のようだ)。

各国での取り組みを示したマップが、こちら。民間主導で、企業連合で取り組む例が多いようだ。

むろん、韓国の研究者達も、参戦して来ている。

次は、JOGMEC南海トラフ試掘に成功した時の、画像だ。

アメリカも、工程表を作成して、鋭意、開発に取り組んでいる。

アメリカの場合、海底では無く、アラスカの陸上で、取り組んでいるようだ…。

ここまでが、1個目の『 2017-Methane-Hydrate-Primer[1].pdf 』からの紹介だ。

次からは、2個目の『 Fire in the Ice, Volume 18 Issue 1 』(https://www.netl.doe.gov/node/6991  )から、紹介する。

日本国は、エネルギー資源大国になるのか…。

特に注目は、例のメタンハイドレートだ…。

「燃える氷」とか言われている。見かけは、シャーベット状の雪塊みたいなものだが、中にメタンガスが閉じ込められていて、火を付けると、燃える…。

パイプで採取されると、こんな感じ…。

分子構造は、こんな感じ。

メタン分子は、水分子と非常に親和性が高く、水分子が一定の高圧・低温状態でシャーベット状になると、こんな風に、中に閉じ込められるらしい…。

特に珍しいものではなく、一定の条件が揃えば、必ず存在するものらしい…。

商業ベースに乗せるとなると、メタンハイドレートが固まって存在し、大きな群となって存在しているようなところを発見し、ローコストで採集しないといけない、と言う話しになってくる…。いわゆる、「濃集帯」と言われているものだ…。

上記のパイプで採取されたメタンハイドレートの画像は、そういう「濃集帯」をうまく探索・発見できて、そういう場所にパイプを刺したから採取できた例だ。

しかし、実際には、そういう風にうまくいくものでもない。

現実には、砂の層に混じっていたり、砂と泥の層に、ほんの僅かばかりのメタンが混ざりこんでいたりしている…。

こうなってくると、10トンの岩石から、ほんの数グラムの金を採取する、のと同じような話しになってくる。しかも、「メタンガス」の価格は、到底「金」の価格には、及ばない…。到底、商用ベースには乗らない…、という話しになる…。

また、採集に大がかりな装置を必要とする、となると、ドンドンとコストは、かさんでくる…。

現在、メタンハイドレートのコストは、通常の天然ガスの価格の10倍以上と言われている。 http://www.mh21japan.gr.jp/mh/06-2/

しかしまあ、エネルギー資源価格は、世界情勢の激変でいつ高騰するか分からないものだ。また、エネルギー安全保障の面から言っても、キチンと予算をつけて地道に研究・開発しておくべきものだろう…。

そこで、国の支援の下、独立行政法人なんかで基本計画を立てて、工程表を策定して、鋭意、研究・開発を推進することにしている。

注目してほしい点が、2点ある。

第一に、1枚目には「砂層型」というものにしか言及していなかったのが、2・3枚目では、「表層型」というものにも言及していることだ。「砂層型」とは、文字通り砂の層にメタンハイドレートが混ざり込んでいるタイプだ。これだと、砂と一緒にメタンハイドレートを吸って、後に分離する…ということになって、装置も大がかりになり、技術的な難易度も高くなる…。

しかし、メタンハイドレートの存在タイプには、「表層型」と言われるものもあり、文字通り、海底面(あるいは、湖底面)上に、ゴロゴロと雪塊状のメタンハイドレートが転がっているようなものだ。こんな感じのものだ。

日本海側の佐渡周辺の海底には、こういう表層型のメタンハイドレートが存在しており、例の青山繁晴さんが、早くから注意を喚起していて、早く開発に取りかかるように長いこと促していた。

しかし、政府はなかなか重い腰をあげようとせず、何故か太平洋側ばかり探索・開発していた…。一説には、中○や韓○に気兼ねして、その顔色を伺っていたと言われている…。しかし、青山氏は、2016年6月に参議院議員(比例区)に立候補表明を行い、当選し参議院議員となり、同年11月に委員会質疑も行った( https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9D%92%E5%B1%B1%E7%B9%81%E6%99%B4 )。そういうことで、2016年からやっと日本海側のメタンハイドレートの探査・開発・研究にも予算がつくようになったんだよ。そういうことが反映されているのが、2、3枚目の工程表というわけだ。

実は、こういう「表層型のメタンハイドレート」の採取には、大手ゼネコンの清水建設が2009年3月に、ロシアのバイカル湖で成功しているんだよ( https://www.shimz.co.jp/company/about/news-release/2009/753.html )。

左上の筒みたいなもの(チャンバー)に、その下の画像では、白っぽいものがギッシリ詰まっているだろう。それが、湖底の表層面にあったメタンハイドレートだ。

こういうタイプにおいては、水面上にリグを建設し、パイプを突き刺す…、というのでは無く、潜水艇でメタンハイドレート群を探索し、潜水艇からマニピュレータを操作して採取する…、という採取方法になる。その存在形態に応じて、多様な技術が必要になってくる…。

そんなわけで、またまた日本国は、潜在的なエネルギー資源大国になる可能性も出て来た…、というわけだ。

去年、安倍さんが国連で演説したとき、国内メディアはこぞって「ガラガラで、閑散としていた。」とクサした。

しかし、演説後の通路では、行列を作って殺到して、大変だったらしいぞ…(皆さん、目が光っていて、ちょっと怖いが…)。

そりゃそうだ…。従前からの技術大国だったのが、それだけでなく、潜在的な鉱物資源大国、潜在的なエネルギー資源大国、おまけに低利の金利でお金も貸せる金融大国…、ともなれば各国が殺到するだろう…。

しかし、こういう新エネルギー資源は、現状の地政学的な秩序をも一変させる可能性を秘めている。アメリカにおけるシェールガス・オイル革命に見るとおりだ( https://http476386114.com/s=%E3%82%B7%E3%82%A7%E3%83%BC%E3%83%AB )。

上記工程表に、「国際情勢をにらみつつ、技術開発を進める。」とあるのは、そういうことも考えながら慎重に進めて行く…、ということだ(これが、注目点の第二だ)。

現資源国側としても、「自前の資源が採掘できることになったから、もう貴国からは、購入しません。」と言われても、困るだろ?

また、アメリカのシェールガスだって、日米の安全保障での協力関係を考えたら、一定程度は購入せざるを得ないだろ?日本側の巨額の貿易黒字なわけだしな…。

いずれにせよ、充分慎重に考慮して、日本国及び日本国民にとっての国益が最大になるように、うまいこと舵取りして行って欲しいものだ…。

もう一つ、ここの海域が重要である理由

それは、「海底鉱物資源」というものに関わるからだ。

こういう物だ。

そして、その分布図がこちら。

なぜこの海域にこういう海底鉱物資源が生成されるのか、という成り立ちを説明したのが、こちら。例の、プレート・テクトニクス理論によるようだな…。

日本国は、長いこと「無資源国」「貧資源国」という規定のされ方をされて来た。しかし、「海底鉱物資源」と言う観点からは、とてつもない「資源国」の可能性を、秘めている国なんだよ…。

睦土は狭小だが、広大な「排他的経済水域(EEZ)」を保有しているからな…。

睦土の10倍以上の面積だ…。

まあ、今のところは、水深2000から6000メートルのところに存在している資源だから、「絵に描いた餅」的なものでもあるがな…。

しかし、着々と研究・開発に取り組んでいるし、きっといつか、商業ベースに乗る日もやって来ることだろうよ…。

 ※ 画像元の.pdfがあったURL。
https://www.jogmec.go.jp/content/300059269.pdf

海底資源研究開発センター
https://www.jamstec.go.jp/shigen/j/exploration/

『海底からの鉱石回収に成功、世界初-「国産」資源の開発進展に一歩』
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-09-26/OWVEEF6S972Q01

『国力の回復-日本が資源大国になる日-』
https://ameblo.jp/mb58076655/entry-11935247867.html

オセアニア、南太平洋海域における日本のシーレーンを考える

前に、「日本を中心とする海上物流ルート」のマップを、上げたことがあった。

『厳しい安全保障環境を踏まえ、情報収集能力の強化を明記』
https://http476386114.com/2018/08/29/%E3%80%8E%E5%8E%B3%E3%81%97%E3%81%84%E5%AE%89%E5%85%A8%E4%BF%9D%E9%9A%9C%E7%92%B0%E5%A2%83%E3%82%92%E8%B8%8F%E3%81%BE%E3%81%88%E3%80%81%E6%83%85%E5%A0%B1%E5%8F%8E%E9%9B%86%E8%83%BD%E5%8A%9B%E3%81%AE/ 

そこから、オセアニア・南太平洋海域近辺のシーレーンを、切り出したのが、次のマップだ。

特に、資源大国オーストラリアからの資源の運搬が重要だ。

そこで、日本とオーストラリア、ニュージーランド間の貿易関係を、検討する。

なお、画像はこのサイトからお借りした。 http://blog.livedoor.jp/veritedesu/archives/1881030.html 

まず、オーストラリアの貿易相手国から、見て行こう。

次は、貿易品目

次は、日本の輸入品目に占めるオーストラリア・ニュージーランドの割合だ。

まず、石炭

次は、鉄鉱石

次は、天然ガス

次は、食料関係で、まずは、牛肉

次は、小麦

最後は、羊毛だ。

こんな風に、重要な資源を輸入し、日本からは自動車、石油製品、機械類なんかを輸出してるわけだから、ここの海域のシーレーンの確保がいかに重要か、と言う話しになるわけだ…。

日仏2+2から、南太平洋海域における各国の利害関係を考える

太平洋国家・日仏の海洋協力拡大
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/15143 

『2019年1月11日、第5回日仏「2+2」(外務・防衛閣僚会合)が、フランスの北西部ブルターニュ地方にあるブレストという町で開催された。ブレストは、フランス第2の軍港である(第1の軍港は地中海に面すトゥーロンである)。日本からは、河野太郎外務大臣と岩屋毅防衛大臣が、フランスからは、ジャン=イヴ・ル・ドリアン欧州・外務大臣、フロランス・パルリ軍事大臣が出席した。同会合後には、33項目にわたる「第5回日仏外務・防衛閣僚会合 共同声明」が発出された。』 とのことだ。

もう5回も開催されたんだな…。

ブレストって、こんな位置。

こんな風に、フランスが日本への接近を図っている背景には、むろん、南太平洋におけるフランスの海外領土・権益の確保の狙いがある。

ジジイも、ずいぶんこの海域の諸国については、投稿を上げておいたが、この機会にまとめておこうと思う。

まず、南太平洋諸国のマップからだ。

南太平洋諸国のマップ
https://http476386114.com/2018/08/28/%E5%8D%97%E5%A4%AA%E5%B9%B3%E6%B4%8B%E8%AB%B8%E5%9B%BD%E3%81%AE%E3%83%9E%E3%83%83%E3%83%97/ 

この海域諸国においては、中国と台湾が、熾烈な承認争いを繰り広げた。

中台と南太平洋諸国の星取表
https://http476386114.com/2018/08/28/%E4%B8%AD%E5%8F%B0%E3%81%A8%E5%8D%97%E5%A4%AA%E5%B9%B3%E6%B4%8B%E8%AB%B8%E5%9B%BD%E3%81%AE%E6%98%9F%E5%8F%96%E8%A1%A8/ 

残念ながら、台湾の旗色は悪く、次々に中国支持の国が増加し、もはや台湾支持は、4か国くらいしか、残っていないようだ…。

トンガも、1998年に中国陣営に入った…。

『トンガ、第二のハンバントタになるのか!!』
https://http476386114.com/2018/08/15/%E3%80%8E%E3%83%88%E3%83%B3%E3%82%AC%E3%80%81%E7%AC%AC%E4%BA%8C%E3%81%AE%E3%83%8F%E3%83%B3%E3%83%90%E3%83%B3%E3%83%88%E3%82%BF%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%82%8B%E3%81%AE%E3%81%8B%EF%BC%81%EF%BC%81%E3%80%8F/

トンガ、債務問題の続報
https://http476386114.com/2018/08/28/%E3%83%88%E3%83%B3%E3%82%AC%E3%80%81%E5%82%B5%E5%8B%99%E5%95%8F%E9%A1%8C%E3%81%AE%E7%B6%9A%E5%A0%B1/

それで、フランスとしては、この海域が完全に中国の支配下に入った場合、自国の権益がこれまで通り確保できるのか、懸念が生じて、日本への接近を図っている、と言うことなんだろう…。

中国が考えていることは、次のようなことだろう…。

中国が考えていること(戦略)
https://http476386114.com/2018/08/28/%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E3%81%8C%E8%80%83%E3%81%88%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E3%81%93%E3%81%A8%EF%BC%88%E6%88%A6%E7%95%A5%EF%BC%89/ 

そして、何よりも、中国としては、太平洋に自由に出入りしたい…。

そして、それを強力に阻んでいるのは、どこの国なのか…、という話しだ…。

太平洋に出たい、中国
https://http476386114.com/2018/08/28/%E5%A4%AA%E5%B9%B3%E6%B4%8B%E3%81%AB%E5%87%BA%E3%81%9F%E3%81%84%E3%80%81%E4%B8%AD%E5%9B%BD/