『この記事の対立点を一言でいうと、
「相続税の公平性を優先するのか、それとも中小企業の事業承継への配慮を優先するのか」
という問題です。
国税庁と自民党・中小企業団体の間で、かなり考え方が異なっています。
(国税庁案の主張)
国税庁は現行制度に大きな問題があると考えています。
現行の非上場株評価では、
大会社 → 類似業種比準方式
中会社 → 併用方式
小会社 → 純資産方式
など会社規模によって評価方法が異なります。
その結果、
同じ価値の会社でも評価額が大きく違う
組織再編や従業員移管で「大会社」に見せる
持株会社を利用する
などの節税スキームが可能になっていると国税庁は指摘しています。
そこで国税庁は、
会社規模による区分をやめ、収益力を重視する「残余利益方式」へ一本化する方向
を示しました。
(自民党・中小企業側の反論)
これに対し、
・日本商工会議所
・全国商工会連合会
・自民党の中小企業関係議員
などは強く警戒しています。
理由は、
① 株価が急上昇する恐れ
収益力の高い会社ほど評価額が大きくなるため、
優良な中小企業では
自社株評価額が2倍~5倍近くになる可能性
が指摘されています。
その結果、
・相続税負担が急増
・後継者の納税資金不足
が起こりかねないと主張しています。
② 成長企業ほど不利になる
現在の制度では、
利益を出して企業価値を高めても評価額への反映は限定的です。
しかし国税庁案では、
利益の大きい企業ほど株価が上昇するため、
経営者から見ると
「会社を成長させるほど相続税が増える」
という構造になります。
このため
事業承継前は利益を出し過ぎない方が得
という歪んだインセンティブを生むという批判があります。
③ 中小企業政策との整合性
日本は長年、
・事業承継税制
・納税猶予制度
・後継者支援
などで中小企業の承継を促してきました。
ところが評価額だけ先に引き上げれば、
政府全体としては矛盾するとの主張です。
有識者会議でも
「評価(時価の算定)と事業承継政策は分けて考えるべきか」
が大きな論点になっています。
自民党決議案の「白地から議論を」の意味
記事でいう
「白地から議論を」
とは、
国税庁が事実上示している
・類似業種比準方式の廃止
・残余利益方式への一本化
を前提にするな、
という意味です。
つまり、
「国税庁案ありきではなく、
・現行制度の部分修正
・スキーム対策だけの実施
・事業承継税制とのセット見直し
も含めてゼロベースで考えろ」
というのが自民党側の立場です。
(本質的な対立構造)
構造的に言うと
国税庁 自民党・中小企業側
公平性重視 承継重視
時価に近づけたい 税負担増を避けたい
節税スキームを封じたい 中小企業への影響を懸念
評価方法を一本化したい 現行制度を大幅には崩したくない
という対立です。
投資や制度設計の観点から見ると、これは単なる税制論争ではなく、
「非上場企業の株式を市場価値に近づけて評価するのか、それとも日本の事業承継政策の一部として意図的に低く評価し続けるのか」
という思想的な対立と言えます。
実は欧州でも過去にほぼ同じ論争があり、評価は時価ベースで行い、その後に「事業承継税制」で負担を調整する方向へ移った国もあります。
国税庁はその考え方に近く、自民党の一部は「まず事業継続が先」という立場です。』