防諜講演資料 (防諜參考資料)
書誌情報
:
https://dl.ndl.go.jp/pid/1880707
出版者 内務省
出版年月日 [1941]
※「ログインなしで、閲覧可能」だ。
※ キャプチャしたものを、貼っておく。






































『小林秀雄が現代日本語の「論理的すぎて余白がない」という限界と格闘し、古文のような強靭な余白(語りすぎない批評…
『古典日本語(古文)から現代日本語への変化の中で、文章における「余白」の性質は、「言語システム(文法)が強制す…
『「断定しない、余白の批評」が日本語の散文文学において高度な批評性へと昇華された背景には、日本語という言語が持…
『島内裕子教授は、『批評文学としての枕草子・徒然草』などの著作を通じて、日本の「散文文学(随筆・物語)」を単な…
『『枕草子』の「をかし」と『徒然草』の「俳諧性(はいかいせい)」は、どちらも日本文学を代表する「笑い」や「おか…
『国文学者であり、放送大学名誉教授の島内裕子氏は、著書『徒然草の変貌』などで、兼好法師が描く人物像に細川幽斎の…
防諜講演資料 (防諜參考資料)
書誌情報
:
https://dl.ndl.go.jp/pid/1880707
出版者 内務省
出版年月日 [1941]
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情報戦の教科書-日本を建て直すため『防諜講演資料』を読む 単行本(ソフトカバー) – 2024/2/10
https://www.amazon.co.jp/%E6%83%85%E5%A0%B1%E6%88%A6%E3%81%AE%E6%95%99%E7%A7%91%E6%9B%B8%EF%BC%8D%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%82%92%E5%BB%BA%E3%81%A6%E7%9B%B4%E3%81%99%E3%81%9F%E3%82%81%E3%80%8E%E9%98%B2%E8%AB%9C%E8%AC%9B%E6%BC%94%E8%B3%87%E6%96%99%E3%80%8F%E3%82%92%E8%AA%AD%E3%82%80-%E7%A5%9E%E8%B0%B7%E5%AE%97%E5%B9%A3/dp/479260754X
『目 次
第1章 『防諜講演資料』から見る戦争の形
◦『防諜講演資料』
戦争の形は三つある
◦秘密戦の必要性と可能性
◦秘密戦の実例二、三
暴力を用いない「戦い」があるということ
◦秘密戦の攻防及び諜報、宣伝、謀略の意義
◦スパイの正体は?――覆面の男ではなくて合法的な組織の網――
スパイ&防諜組織の実態〜FBI・CIA・MI6・GRU、そして公安〜
◦諜報のやり方――国民が別に秘密ではないと思っている事柄を集めて――
第2章 情報戦そして経済戦
日本人はなぜ情報に関して無用心なのか?
◦恐るべき文書諜報――新聞、雑誌、図書、地図、絵葉書等からよい資料を取る――
現代の情報戦 〜SNSと世論誘導〜
◦宣伝のやり方――目的は国民思想の破壊――
マスコミ、テレビは嘘をつく〜日本の情報教育を考える〜
◦経済謀略による破壊活動
経済謀略への警戒
◦日本人をスパイの手先にするには
現代社会にも数多く実在するスパイ
◦防諜の主体は国民――国民の一人一人が防諜戦士――
なぜ敵に絡めとられてしまうのか?
コミュニティーを崩壊させる情報戦
◦防諜と法規との関係――法規を守っただけでは防諜は出来ない――
「スパイ防止法」がない国、日本
◦写真防諜
プロパガンダ写真で印象操作
司法の世界にも情報戦(法律戦)あり
第3章 国民の心構えこそが最大の防衛
◦防諜は国民の心構え一つ
日本人の意識が変わる時が来た
◦防諜はいかにしてやるか
◦個人の防諜心得
◦団体の防諜 ◦要は真の日本、真の日本人となること 真の日本人になろう
第4章 教育こそが国の基本
◦学校における防諜教育 日本人を変えていく「教育」の意識改革 答えのない問題に直面した時のために「教育」がある 教科書から消えた「日本神話」と「英雄伝」
第5章 防諜と国際社会
◦防諜とは何か 戦後レジームを守る「敗戦利得者」たち 目覚めのきっかけは、米大統領選挙とコロナ 』
大統領ゼレンスキーは、戦場への、新しいアプローチを希求している。
https://st2019.site/?p=21846
『Tom Balmforth 記者による2024-2-9記事「Ukraine’s popular ‘Iron General’ replaced as war grinds on」。
大統領ゼレンスキーは、戦場への、新しいアプローチを希求している。そのため古顔のザルジニー総司令官を解職した。木曜日。
ザルジニーの考え方は、CNNに対して2月1日に本人が語っている。ザルジニーは、大軍である露軍と、小兵力の宇軍が戦うためには、ドローンを筆頭とした先端的な技術的イノベーションだけが恃みになると考えている。
ザルジニーは、ウクライナが国家総動員体制になっていないことが不満である。もっと徴兵すべきなのに政府がそれをためらっていることが不満である。すでに動員されている将兵は、交替が来ないので疲れ切っているとザルジニーは考えている。
ザルジニーの軍歴は1990年代にさかのぼる。つまりウクライナがソ連から分離独立した後に、ウクライナ軍に入って将校になった。
2014年の侵略にさいしては東部国境を守った。
2023-11にザルジニーは言った。戦況は消耗戦モードに入っており、それはロシア軍にとっておあつらえむきだと。ゼレンスキーは戦線が膠着しているという対外イメージを嫌い、ここから両者間にヒビが入った。
2022後半、露軍は、ハルキウとヘルソンでの苦戦を経て、塹壕陣地を構築するようになった。これで宇軍の前進を止めた。
※まだまだ情報が少ないが、ロイターのこの2本の記事だけから判定すると、前のイギリス首相にそそのかされて南部で機動攻勢をかけようとしたのがザルジニーで、その失敗の責任をしかし自分では取ろうとせず、政府が50万人追加徴兵しないことへもっていこうとしているために、ゼレンスキーが馘を切ったのか。
ただし英米とのリエゾンとしてはザルジニーは使えるから、政府は外交ポストを用意するつもりなのか。
シルスキーの「砲兵主義」は正しい。
ロシア人やウクライナ人にはその流儀がいちばん向いている。
英米の軍事アドバイザーはまったくわかってないのである(オースティン長官もわかってない口なので、なんの指導もできなかった)。
とは申せシルスキーにも野戦重砲の弾薬が地面からは湧いてこないことが分かってない。分かっていたらとっとと「迫撃砲主義」に切り替えていたはずだ。
ここで政治家の「教養」が問われる。
ゼレンスキーに軍事史の教養があったら、政治主導でその切り替えのイニシアチブを取れていたはずなのだ。
政治家は作戦に口を出す前に補給の世話を焼かねばならない。それを自力でどうしたらいいかわからず、まったく米国におまかせにするしかない無能なのである。
だから米議会が紛乱すると、たちまち兵站が窮する。交替しなければならないのは、軍事史の教養がない政治リーダー、お前だ。
しかし、ウクライナには、その交替候補者が、ひとりもいないのだ。』
オレクサンドル・シルスキー上級大将は2019からウクライナ陸軍の総司令官だった。
https://st2019.site/?p=21846
『ロイターの2024-2-9記事「Five facts about Oleksandr Syrskyi, Ukraine’s new army chief」。
オレクサンドル・シルスキー上級大将は2019からウクライナ陸軍の総司令官だった。木曜日、ザルジニーのあとがまとして、全軍の総司令官に就任した。
生まれは1965年である。
1980年代に旧ロシア領からウクライナに引っ越した。
ソ連軍将校としてモスクワの高級指揮学校に入り1986年卒。砲兵を5年指揮した。
よってシルスキーの戦術は、基本的にソ連流である。
2014年からドネツクとルハンスクでロシアの侵略者との戦闘を指揮。2019に全ウクライナ陸軍の指揮を任された。
2022-2~3月にキーウを守りきったので4月に国家英雄勲章を貰っている。
2022-7にハルキウ方面での反攻を計画・指揮。かなりの面積を奪い返している。
2023前半、バフムトの防衛を指揮。相手はワグネル。ほとんど潰滅させた。そこに価値があると本人は主張した。批判者は、バフムトはすでに瓦礫の山なので守る価値は無いと腐していたが。
シルスキーの信条。いちばん重要なのは兵隊たちの士気だと。ゆえに頻繁に最前線を訪問している。
西側記者に答えたところでは、睡眠時間は毎日4時間半。リラックスのためにはジムへ行く。
シルスキーは妻帯者で、息子が2人いる。』
神谷宗幣『情報戦の教科書』(青林堂)
元気印の神谷宗幣(参政党党首。参議院議員)が諜報、防諜のワンダーランドに挑んだ。本書の副題は「日本を立て直すため『防諜講演資料』を読む」となっている。
この防諜講演資料とは昭和16年に内務省が発行した国民向けの啓蒙書である。戦前、日本人が読んでいた情報戦のテキストのようなモノで、現代日本では目に見えない、静かなる日本侵略の様相があるから、大いに参考とするべき基調な資料だと言える。
神谷議員は国会図書館で公開されている資料をみつけ「戦前の日本人はなんて意識が高かった」のかと驚いた、と書きだしている。
「情報、経済、メディア工作」などのスパイの実態を日々目撃しているが、昔の情報戦の基本が変わっていないことを私たちは認識できるのである。
防諜とは何か?
「幾百万の大軍を動かして、陸に、海に、空に、血みどろの聖戦を続けつつある、国家の総力を挙げての武力戦と相呼応し、かつそれ以上に重大な結果をもたらす、武器なき戦争に国家の全知全能を動員する防衛戦であって、もし防諜が不十分であったなら、いかに武力戦において大勝しても、わが国は滅亡することになる」
すなわち秘密守秘という最低限度のレベルではなく、銃後の国民が必死に戦い抜くべき『武器なき戦争』である、と簡潔に本質を述べている。
戦争には「武力戦」と「秘密戦」があり、戦争の入り口は秘密戦という『情報戦』から始まる。つまり「敵を自分の都合のよいようにコントロールする」。これが孫子の言う『上策』である。
つぎに食糧や燃料を止める経済封鎖が、孫子のいう『中策』に該当する「経済戦争」だ。
こんにちでいえば経済制裁、海上封鎖、サプライチェーン寸断である。欧米がロシアに対して、或いはアメリカが中国に対して実行している経済封鎖は、事実上の戦争である。
『下策』が直接の軍事対決となる。
ウクライナ戦争の過程を振り返っても、まさしくこの順番で展開された。ロシアは上策を『ハイブリッド戦争』と定義した「グラシモフ・ドクトリン」の実践から開始し、気がつけばクリミヤ島はロシアが奪回していた(グラシモフは参謀総長)。
大東亜戦争の経過を段階を追って概括すると(1)移民排斥がカリフォルニア州から始まり日系人は収容所へいれられた。(2)日本の知識人、学生がマルクスにかぶれた。(3)軍縮会議などで巧妙に日本の軍備縮小が決められた。(4)米英ソ連がシナの反日抗日派をテコ入れし資金と武器をあたえた(5)日本へABCD包囲網を形成し、経済的圧迫と日本経済の疲弊をねらった。これらが『秘密戦争』の範疇にはいる。
中国は「超限度戦争」を仕掛けている。
とくに力点をおいているのが英米と日本。第一段階が政治家とメディア工作である。かれら『売国奴』は脳幹が侵されたか、でなければカネに転んだか、あるいは女性問題で脅かされたか、敵のスパイを結果的に演じるのである。
危機に直面した日本に必要なのは国民の自覚であり、そのためには教育が重要だとする結論は基本的な心構えとして傾聴に値する。
◎☆□☆ど□☆☆□く☆◎☆□し☆□△◎ょ◎□☆◎
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「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和六年(2024)2月10日(土曜日)
通巻第8125号 <前日発行>
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著者は元防衛省情報本部主任分析官。
ウクライナvsロシア戦いを「情報戦」に絞り込んで、とくにプロパガンダ、フェイクニュースを如何に見つけ出し、どう処理、対応するかに本書の焦点が当てられている。
いち早く入手した情報を正確に評価し、適切に処理する方法やフェイクニュースの認知と拡散原因の分析方法など、さすがに専門家の解析が光る。
戦争の勝敗は物理的なアングルから言えば損傷、犠牲、消耗、武器残など、目に見える。数字が物理的な状況を物語り、どちらが勝ったか、勝敗が明確に分かる。
ただし双方が大本営発表であり、西側のメディアはウクライナ贔屓であり、宇宙衛星や通信回線から物理的な証拠を積み上げていくしかない。
さて、目に見えないのが「情報戦」である。勝敗も、作戦効果も「数字化」ができないからよくわからない。
本書は後者「情報戦」をロシアvsウクライナ戦争に絞り込んで解明しつつ、フェイクニュースに欺されないための訓練、その情報処理のノウハウを具体例をあげて懇切に解説する。
フェイクニュースがSNS空間を飛び交っているが、そこには「いいね!戦争」と「ナラティブの戦い」があるという。
情報に「いいね」のボタンを押す。そのシェアによって次の状況が導かれる場合がある。イスラエルのガザ攻撃にしても「人質救出」「奇襲テロへの報復」から「ジェノサイド」へと世論の激変があった。
くわえて映像操作がなされた。別の残虐場面のフイルムを生成AIや、チャットGPTですぐさま加工し、世論の動向を左右する。
となると冷静かつ客観的な判断は難しい。このSNSという新しい情報空間が旧来のメディアの影響力を凌ぐ規模となった。したがって政治家からセレブ、芸能人から経済評論家など何億もの人々が参戦し、侃々諤々の議論をかわす「戦場」となった。
この新しい戦場で「情報戦」が激越に戦われているのである。
また「ナラティブの戦い」とは物語の原義を超えて、「人々に強い感情、共感を生み出す、真偽や価値判断が織り混ざった伝播性の強い通俗的な物語」を意味し、特徴は「シンプル」「共鳴」「目新しさ」であるという。
ロシアはゼレンスキーらを「ネオナチ」とするナラティブが効果上がらずと見るや、「テロリスト」と呼び方を変えた。
フェイク画像はTIKTOKに投稿され、世界中に拡散する。ユーザーは10億人だからニューヨークタイムズが逆立ちしても適わない。
実例として著者の樋口氏はウクライナのフェイク画像、爆撃に様相画面をあげる。
「これは国外で取られた映像に2020年にレバノンで起きた爆発事故の音声を重ねた」フェイクだった。
また本書はノルドストリーム爆破事件を克明に追及し、事故の発生から各国の対応、捜査の進展ぶり段階を追って解析すると同時に当時の国際情勢、とりわけ米英独の思惑、ロシアからのパイプラインで潤っていた西欧の経済事情、ロシアにとって爆破は何の利益にもならないことなどをチャートといくつかのポイントで通信簿をつけるように評価していく。すると、残る疑惑は米国とウクライナの仕業だったということになる。
セイモア・ハーシェは、CIAの仕業だとしたが、追跡調査が為されていない。それにしても、パイプラインの破壊でガス輸入を絶たれ、致命的打撃を喰らったはずのドイツが、なにも反応していないのは摩訶不可思議である。
複雑怪奇な情報戦争の実態を要領よく解題した本である。
◎◎み○☆や◎☆ざ○☆き◎☆◎ま○☆さ◎☆ひ◎◎ろ○☆
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「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和六年(2024)2月10日(土曜日)
通巻第8125号 <前日発行>
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プーチン大統領、沈黙を破ってかく語りき
アメリカを本当に動かしているのは誰か、プーチンは把握している
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2024年2月6日に行われたタッカー・カールソンのプーチン大統領への独占インタビューにおける主要なプーチン発言は次の通り。
「ロシアはあなた方の敵ではありません。私たちは戦争を望んでいません。平和の準備はできています」と平和論から始めたインタビューで、プーチンはすぐさまバイデン批判に転じた。
「彼は国を運営していないと確信しています。それを確認する有力な情報源はありますが、誰が見ても明らかです。バイデン氏の選挙勝利を(私が)祝って以来、(ホワイトハウスの)誰からも電話がありません。冷戦時代よりもコミュニケーションが冷たくなっているのは不可解です。アメリカは今、暗黒の時代に突入しています。説明責任を果たせない指導者がいるのです」
(何故ウクライナへ侵略したのかと問われて)「侵略したのか、それとも侵略されたのか? 歴史を見てください。そこに住んでいる人々を見てください。歴史的に見れば、侵略されたのは我々であり、今は反撃しているだけです。土地と人々はロシア人であり、私たちはもともと私たちのものだったものを再び手に入れるでしょう」。
(トランプへの期待は?)「トランプ氏が大統領だった頃は良好な関係でした。戦争はありませんでした。私たちの関係は絶頂期にありました。ロシアは(トランプ再登場に)準備をしています。彼はウクライナでの戦闘を終わらせると約束しており、私たちはその考えを支持しています。トランプ氏は決して我々を侮辱していないからです。彼はロシアを尊敬しています。私たちは友好と信頼の立場から始めるでしょう。そうすれば、すべての問題は解決可能です」。
(ゼレンスキー氏についてどう思いますか?)「彼がロシアでコメディアンだった頃、彼のジョークに笑ったことを覚えています。再び笑いに戻りましょう」。
(イーロン・マスク氏についてはどう思われますか?)「マスク氏をビジネスマンとして見ています。彼は巨万の富を築き、多くのファンを持っています。彼はユニークな思想家であり、買収されることのない個性の持ち主です。それを恐れる人もいます。米国内に(マスクの)敵がいることは明らかです。500億ドルの資産を剥奪されたことは、特別扱いのシグナルが出されたと言えます」。
(ロシアと中国が手を組んで米国に対抗するような事態を想定していますか?)「経済的な意味ですか、それとも軍事的な意味ですか? どちらも望んでいません。米国と衝突することは私たちの利益にはなりません」。
当然と言えば当然すぎるほどに予測された回答が続いた。
だが、言葉は穏やかでもプーチンがバイデンとゼレンスキーをよく観察し、ジョークを含む余裕の批判なのである。
放映直後、米国の左翼メディアは小さく報じるか、あるいは無視した。一方、ロシア国内では大多数が見て、「タッカーは本物のジャーナリストね」「ロシアへの偏見を解いて呉れた」と評価する街頭インタビュー(「スプートニク」)、賞賛に満ちた『プラウダ』とは別にリベラル派の『モスクワタイムズ』は冷ややかな反応だった。
さて筆者の印象と言えば、プーチンはアメリカを本当に動かしているのは誰々かを冷静に分析し認識していること。その情報解析能力の高さ、しかも巧妙に穏健な語彙で、示唆に富む回答をしていることだった。
バイデン大統領いかに大声上げて追加予算を呼号しても、ウクライナ支援予算は議会を通過しない。おんな戦争屋(ヌーランド)、廊下鳶の軽量級(ブリンケン)が走り回ってもアメリカの民意はバイデンの戦争政策から離れた。議会を動かしているのはトランプである。まるで闇将軍のごとくに。
世論をニューヨークタイムズがリードしてきた時代は終わり左翼プロパガンダより、タッカー・カールソンが保守陣営の指標となった。そしてこうした発言を支え、アメリカの言論の自由を守っているのはイーロン・マスクであるとう現実、その軽量化できない力関係をプーチンはふかく認識している。
◎◎み○☆や◎☆ざ○☆き◎☆◎ま○☆さ◎☆ひ◎◎ろ○☆
国際物理オリンピック過去問シリーズ ルES公 ハ
————————————- 物理教育は今
落ちないばねの不思議——国際物理オリンピック2019の理論問題
落ちないばねの不思議――国際物理オリンピック2019の理論問題 (jst.go.jp)







東辻浩夫f (totsiyi-09@t.okadai.jp)
物理オリンピック日本委員会の活動に参加して約9年で
あり,国際物理オリンピック(IPh〇)への日本代表派遣に
オブザーバーとして随行したのは2019年イスラエル大会
が初めてである.したがってIPhOの現場によく通じてい
るわけではないが,代表を選ぶ過程である「第1,第2物
理チャレンジ」の,後者にかかわってきた経験も踏まえて,
感じるところを述べたい.
取り上げるのは2019年の理論第1問の力学である.第2
問はマグネトロン,第3問は熱・音響エンジンで,力学,
電磁気,熱の分野構成は標準的である.°解答時間は5時
間,配点は各10点満点であるが,第1問,第2問,第3問
の順に難しかった.
また,当然ながら力学分野は毎年出題
されているが,例年に比べてもやや難しかったと思われる.
「ばね」は高校における力学で弾性カと波動の項目に必
ず登場する.前者では,ばねの長さが]で自然長が”の
とき,張力Fは伸びx = L~L.に比例係数(ばね定数)kで
比例し,
F = kx = kL〇– (1)
L〇
と表されると説明される.また,後者の縦波の説明で,上
式はx<0のときも含むことが分かる.重力加速度の大きさ
がgのとき,質量mを「軽い」ばねに吊り下げると,kx = mg
で釣り合い,伸びはx = mg/kとなる.
この問題では,はじめに,Fと]の次の関係が図1で示
される.
F = kL (£>Z〇) (2)
これは,式(1)でを〇としたものにあたり,「スリンキー」
「公益社団法人物理オリンピック日本委員会,岡山大学名誉教授
あるいは「ゼロ長ばね」と呼ばれる,という説明がある.
スリンキーはIPhOレベルの問題集では,しばしば題材と
なっている.ガ以下ではスリンキーを単にばねと呼ぶ.
問題はA, B, Cに分かれている.解いてみる方もおられ
ると思うので,まず,問いの要点を()内の配点ととも
にまとめて示す(実際の問題•解答はJPhOのホームペー
ジなどにある3)).
質量Mの一様なばねの各部を自然長のときの端からの
距離£(〇<£<“)で表し,£ = 0が吊り下げた時の下端にな
るとする.また,パラメータa = kLjMg(く’)を定義する.
静力学
A.1(0.5)自然の状態で長さ△£の微小部分の,ばねが
外力ドで引き伸ばされたときの長さ△マは?
A.2(0.5)△£を△マまで伸ばすのに必要な仕事△匠は?
A.3(2.0)このばねを吊り下げたときの全長Hをん〇と
αで表せ.
続いて,A.3の吊り下げた状態から上端を切り離したと
きの運動について,図2を示して説明してある.切り離す
と上から徐々に落ちていき,ばねの上部には自然長に戻っ
たかたまりが生じる.かたまりの長さは徐々に伸びるが,
その下の部分は静止したままである.下端は全部がかたま
りになってから動き出す.
図2
左:スリンキーの自由落下中に撮影した連続写真.右:ばねの自由
落下中の移動する部分(part I)および静止している部分(part 11).3)
物理教育は今落ちないばねの不思議
637
©2020日本物理学会
動力学
B.l(2.5)自然の長さ”に戻るまでの時間ん(およびそ
の数値)は? {k=1.02 N/m, L〇 = 0.055 m, M= 0.201 kg,
g = 9.80 m/s2)
B.2(2.5)静止したままの部分の質量が(£/”) Mのと
き,動いている部分の速さの(のがの(の=M+3で
あることを示し,定数れ8を£〇, g, αで表せ.
B.3(0.5)B.2に基づいて,動いている部分の速さの最
小値”minを求め,L〇, a, A, 8で表せ.
問題の最後は,
エネルギー論
C (1.5)放してから地上に達する直前までに熱となる
力学的エネルギー Qを求め,L〇, M, g, αで表せ.
Aでは自重で吊り下げた状態について問う.A.1で,微
小部分△£について張力と長さの関係を問い,それをもと
に,A.2, A.3で蓄えられるエネルギーと全長を求めさせて
いる.ばねが変形する様子を想像すれば,ばねの張力が元
の長さとの比に比例することに気付くであろう.A.2では,
(△ソー察)2に比例した解答は〇点とするよう採点要領
(marking scheme)で指示されており,図1の正確な理解を
求めている.F(£ + A^) -F(€)を△£で表し,質量が一様分
布していることから次の式を得る.
dF(C) _ M
A.3では,張力ドは各部分で異なり,F<kし〇すなわち
ev〇し〇では,ばねは変形しない(伸びない)ことに注意す
る必要がある.このことはBで図2をよく見れば気付く.
ばねの微小部分に着目するよう誘導しており,前提とは
していないが,局所的な張力の満たす微分方程式の想定を
暗黙に要求しているともいえる.これはIPhOなどの問題
の一つの特徴である.日本の教科書では,巻末に「発展」
として,「微分•積分を使った物理」のような表題で説明
されている,簡単な常微分方程式に基づく扱いに相当する.
第2物理チャレンジの理論の作問でも,テーマの選択や難
易度とともに議論になることがあるが,教科書の「発展」
にあるような簡単な常微分方程式の誘導は許容されると考
えている.4)
Bで問われているのは,一見,複雑な運動であるが,ば
ねに働くタ、カは重力だけであるから,ばねの重心に着目す
ると自由落下である.このことに気が付けば,図2につい
ての説明から重心の位置が求まり,解が得られる.出題の
意図は重心が自由落下することに気付くかを問いたい,で
あると思いたい.しかし,ここでも,ばねの各部の高さが
与えられたとき,重心(モーメント)を求める積分が必要
になる.また,積分は単純だが,の(のと重心の速度の違
638
©2020日本物理学会
いなど,この計算には間違えやすいところがある.
答えの
関数形を与えたのはそれを考慮したためかと思われる.
一方,B.3では,伸びないままであった〇3<aし〇の部分と
合体して,全長が”に戻った直後が最小であるが,合体
する直前を答える不注意が誘われそうである.
上端を切り離しても,切り離したという信号がまだ伝
わってこない部分はそのままで,落ちない.このような動
画を掲載しているサイトもあるので,グ見慣れている参加
者もいたかもしれないが,多くは「これは面白そうだ」と
思ったのではないか.
最後に,Cでエネルギー保存について問う.外力の仕事
は自然長にもどったばねの運動エネルギーになるが,A.2
で問うたばねに蓄えられたエネルギーが保存されない.
全体を通じて,物理は単純で面白い.しかし,計算は間
違えやすい.パラメータαが含まれた答えが出ても正しい
かどうかを形からは判断しにくいので,慎重に確かめる必
要がある.IPhOでは,そのような判断ができるような問
題では差がつきにくいのだろう.
それぞれの設問の解答は次のとおりである.
A.1(0.5)
Ay =—A£(F > kL〇), Ay = A€(F < kL〇)
紅0
A.2(0.5)
心=地(△ソ2ー破)
A. 3 (2.0)
TY
B. l (2.5)
tc= I— (1-a)3 =0.245 s
\I 3ga
B.2(2.5)
A =丑,B = -lLz〇
3a Ua K
B.3(0.5)
〇min =(1 – a) +3
C (1.5)
〇=以卯。(1ーげ⑵+1)
6a
3.普通のばねではどうなるか
この問題では,はじめからゼロ長ばねとしている.この
ため,吊り下げたとき,最下部に伸びない部分が生じ,釣
り合いを少し複雑にしている.では,普通のばねではどう
なるであろうか.釈迦に説法だが,スリンキーとの比較の
ため敢えて示す.
一様な伸びのとき,ばねの張力と長さの関係は式(1)で
あるから,点£ =”で吊り下げると,微小部分△£の長さと
日本物理学会誌 Vol. 75, No.10, 2020
全長は次のようになる.
全体の伸びは”/2aで,同じばね定数をもつ軽いばねの端
に質量Mを吊り下げたときの1/2である.
さて,このばねを上端€ = £〇で切り離したらどういう運
動をするであろうか.各部分の上方への変位を”(£”),
i<〇 (€) = u (ん0)とすると
1 夕2
(。 <£<ん〇).
し〇 2a
運動方程式は
M )”(£,/) _ d2u(£, /) _ 1
kL0 dt2 ° df a
となり,u = Ul~gt2/2とおくと,肉(5 は斉次の波動方程
式を満たす.
/ = 0に上端を切り放すと,上下端は自由端となる.“〇(£)
を-Z〇<£<£〇に用い,その外では周期2″の周期関数
(“〇(£ +2”) =“〇(£))として定義域を拡張すれば,運動方
程式の解は,c=(k”%として,次のようになる.
u(£, i) = — g」+ & 3〇(£ — ci) + “〇(£ + ct)]
0 く ctくL〇 — e では,
u U, t) = — + —-— (£2 + c2/2) =-= “〇(•£)
2 2aL0 2aL0
となり,上端を切り離しても,0<c/=[(“ルが勺:〇レ<
(“-£)であれば落ちない.ばねの各部分には重力と上下
からの張力が作用しているが,切り離したという信号が速
さ&”細でばねを経由して上端(, = “)から伝わるま
では張力は変化せず,釣り合ったままである.
一方,0<” —£<cM〇では,
m)=二一“”此
2aL〇 a
duU, t) _ し〇~£
–:–_—< u
dl aL〇
で,(£ = “を除いて)ばねは縮んでいる.
教科書の波動の項目では,弦巻ばねの一方の端をある瞬
間に押したり引いたりすると,その端から疎密波が伝わっ
ていく様子の図が出ている.同じことであるが,上端を切
り離してからしばらくは動かない(落ちない)ことを見れ
ば,媒質が近接作用によって力を伝えるときの速度が有限
であることの効果をより実感できるであろう.釣り合いで
の伸びの形や運動方程式やその解は知らなくても,落ち始
めるまでの時間はばねの振動が伝わる速度だけで決まるの
で,現在の高校教科書の範囲でも問うことができると思わ
れる(教養課程の物理履修者には具体的に解いてほしい).
このIPhOの問題では落下するときの振る舞いを図2で
説明している.一見,不思議であるが,普通のばねでも同
じような現象があるから,後者を考えたことがあれば納得
できると思われる.し
4.スリンキーの方が簡単?
この問題の重要な要素は,ばねにスリンキーを使ったこ
とである.この場合を”⑸と表すと,問題A.1のように,
張力と伸びの関係は式(2)から
kL〇 血ジ⑵=F(e) — kL〇, (F > kL〇),
血如)= °, (F く kL〇)
d£
であるから
“貞の=¢了〇)2 , 0 <(“乙 〇 —a)<(l —α)
2aL〇
—。 , — a< 或|Lq — a) < 0
となる.
このように,0<£/”<aではばねは伸びない.こ
れが,釣り合い時のスリンキー効果である.
—+ gt2/2に対する運動方程式は同じ形であるが,解は
次を満たす必要がある.
(力・)> 0 (3)
d£ ~
これが運動時のスリンキー効果である.
上端(€ = !〇)の境界条件は普通のばねのときと同じく自
由境界条件である.また,C = aL〇では(初双)措あ(£)= 0で
あるから,M〇 =1とM〇-ct = 0を自由境界と考えれば,
113)を|加0-al<(l-α)に用い,その外には周期
2(1-α)”の周期関数として”rの定義域を広げて,解は
次で与えられそうである.
“⑸(£, i)=—,ヽ + [購)以一赤)+ 我)(£ + ct)]
確かに,aL〇<£<L〇-ctでは,次のようにばねは落ちない.
が幻¢,)= ー妃+ °ー”。)2 +(づ2 =借)(の
しかし,aL〇<L〇-ct<£<L〇 では,
林t)=『毒ユ<ルいL。), 2aL〇 a “)(£,‘) L〇-£
——_—-< 0
d£ aL〇
となる.舟S)はe=L0-ctで”⑸(£,」= 〇)と連続してい
るカキ£ = Lo以外では式(3)を満たさず,•とともに式(3)
の左辺が負の部分は上端から広がる.このように,この
M(S)« i)はスリンキーの場合の解になっていない.このこ
とは普通のばねの場合に〇 く で縮んでいたことか
ら明らかである.
IPhOの設問では,上端から(&双)”⑸(£”)= 〇の領域が
広がるとして,広がる速さを問うている.収縮した部分が
広がるのは一種の衝撃波であるが,重心の自由落下から設
問のようにうまく運動が解ける.考えている系における外
カと内力の作用の違いに着目するのは常套手段とも言える
物理教育は今落ちないばねの不思議
639
©2020日本物理学会
が,IPhOに参加した代表に限らず学んでほしい.
この問題では,スリンキーは(引双)”⑸¢か=〇になる
と瞬時に収縮する,と仮定する簡単なモデルに基づいた解
析に誘導している.その仮定を緩めると,実際のスリン
キーの落下のデータとより合うモデルになる,という解析
もある.7)
波動方程式を正面からもちだすのはIPhOのシラバス8)
との関係が微妙である.したがって普通のばねの落下をそ
のまま問うことは難しいかもしれない.
一方,スリンキー
の場合は普通のばねと同じ扱いでは解がうまく求まらない
が,適切に誘導すれば初等的な方法で解ける.そこで後者
を問題にしたが,本当は波動方程式で記述される現象を出
題したかったのかもしれない.
5•おわりに
この力学の問題は他の分野の問題に比べて難しく,1/2
程度得点できた代表もいたが,平均的に得点はあまり高く
なく,特にBが難しかった.
これは他の多くの国の代表も
同じであると思われる.
また,第1問であり,問題の面白
さもあるので,他の比較的易しい問題への時間配分ができ
にくかったようである.
この問題の中心はBであり,そのような配点となってい
る.
Bで求められていることは,物理としては,この系に
働くタ!・力が何かと,それによる運動を把握することである
が,解を求めるには,重心の移動を具体的に求めなければ
ならない.
採点要領では,物理的な考察に比べて後者の配
点が大きめであり,工夫できないかと感じる.
IPhOのシラバスでは,解析(Calculus)の項では常微分
方程式に言及していないが,力学(Statics, Dynamics)の項
で重心や慣性モーメントを積分で求めることを含んでい
る.
砂例えば,局所的な変位(伸び)から全体の変位を求
めるのは,単なる積分ともいえるが,この問題を解く上で
は必須である.
物理オリンピックに関係する場面に限らず,一般に,物
理現象を積極的に使い,物理と微分•積分の両方の理解を
深めるのにもっと役立てたらどうかと感じている.
微分・
積分の履修者には,適切な具体例として役立つであろうし,
物理の例から出発して微分•積分を教えることもできるの
ではないか.
物理を履修する生徒も,おもちゃとしてスリンキーを目
にした,あるいは触ってみたことがあると期待する.また,
普通のばねは誰でも知っている.
しかし,理系の教育を受
けた社会人でも,パズルとして,弦巻ばねを自重で吊り下
げ,手を離したらどうなるかを聞いてみると,手を離した
瞬間に下端も落下を始めると思う人も多いようである.
こ
のようなありふれた素材の,ちょっと意外な振る舞いに気
付かせ,それが,力学の簡単な原理で求まることを示して
いる点で,面白い問題である.
高校生や中学生に,物理(あるいは理科一般)に興味を
もってもらうためには様々な方策が考えられる.
ノーベル
賞などの報道で注目される現象や原理を取り上げるのもー
つである.
一方で,身近な現象や素材を用いて,物理(理科)
的な考察により「なるほど」と思わせるのも一つの方法で
ある.
IPhOの問題にも,身近に経験できる現象で,一見不
思議だが,細かい計算はすぐには追えないにしても,こう
考えれば理解できそうだ,というようなものがあってよい.
参考文献
1) 実験を含む他の問題の紹介は,杉山忠男,日本物理学会誌75, 355
(2020)にある.
2) 例えば,P. Gnadig, G. Honyek, and M. Vigh, 200 More Puzzling Physics
Problems with Hints and Solutions (Cambridge Univ. Press, Cambridge,
2016);伊藤郁夫監訳,赤間啓一,他訳,『もっと楽しめる物理問題
200 選 Part 1,11』(朝倉書店,2020).
3) 和訳は http://www.jpho.jp/ipho.html U,元の英文は https://www.ipho2019.
org. il/problems-solutions/ にある.
4) 物理チャレンジでは,中学理科から高校物理の範囲を基本とし,その
範囲を超える問題には解説やヒント,誘導をつけて出題される(http://
http://www.jpho.jp/junbi.html),問題例は JPhO ホームページ(http://www.jpho.
jp/syllabus.html)にある.例えば,2019年第2チャレンジの理論問題(解
答時間は5時間)の各問の表題は,第1問テニス壁打ち,第2問流体の
流れと砂の流れ,第3問電気回路,第4問電磁波と重力波・
5) 例えば,「スリンキーの落下」,「落ちないばね」,”Slinky Fall (Drop)”
などで検索すると多数の動画が見つかる.
6) 普通の ばねの場合の例に,https://www.youtube.com/watch?v=8NP-
NB7kW-I (Spring Fall/バネで繋がれた粒子の落下運動)がある.
7) この問題で誘導している解法は,例えば,M. G. Calkin, Am. J. Phys.
61,261(1993).仮定を緩めた解は,例えば,R. C. Cross and M. S.
Wheatland, Am. J. Phys. 80,1051(2012),およびそれらに引用されてい
る文献・
8) https://www.ipho-new.org/statutes-syllabus/
(2020年5月4日原稿受付)
日本物理学会誌 Vol.75, No.10, 2020
640
©2020日本物理学会
「争われた兵站」:入門 (AUSA)
https://milterm.com/archives/3518
『024年2月8日 / 最終更新日時 : 2024年2月8日 軍治
米陸軍協会の地上戦力に関する論稿を紹介する。最近では、ロシア・ウクライナ戦争の教訓からこれまでの戦い方を見直しの提言などを紹介しているAmos C. Fox氏であるが、今回は陸軍の兵站を取り巻く環境が非常に厳しいとの認識に立ったうえで米陸軍の戦力構造を考察する上での考慮事項を論じた米陸軍協会のHP上に掲載されたものである。
敵対者あるいは敵からの脅威にさらされた中での兵站を、Contested Logisticと述べ、9.11以降の脅威をあまり意識しないですんだ兵站環境ではないとしている。
Contested Logisticを「争われた兵站」と和訳していて読みにくい点もあるかと考えるが、大意は汲み取っていただけると考える。陸軍も海上輸送の機能を自ら整備すべきとの考えも参考になる。(軍治)』
『「争われた兵站」:入門
CONTESTED LOGISTICS: A PRIMER
February 02, 2024
by LTC Amos C. Fox, USA
Landpower Essay 24-1, February 2024
Ausa.org
エイモス・フォックス(Amos Fox)はレディング大学の博士課程在籍中で、フリーライター、紛争学者としてAssociation of the United States Armyに寄稿している。
戦争と戦いの理論(theory of war and warfare)、代理戦争、将来の武力紛争、市街戦、機甲戦、ロシア・ウクライナ戦争などを研究・執筆。エイモスは『RUSIジャーナル』や『Small Wars and Insurgencies』など多くの出版物に寄稿しているほか、英国王立サービス研究所の『Western Way of War』、『This Means War』、『Dead Prussian Podcast』、『Voices of War』など数多くのポッドキャストにゲスト出演している。
要約:IN BRIEF
▪ 争われた兵站というコンセプトは、陸軍部隊に3つの個別の課題、a)脅威、b)環境、c)自分自身(oneself)を突きつける。
争われた兵站における作戦を現実のものとするためには、これら3つのカテゴリーに互いに考慮しながら対処しなければならない。
▪ 米陸軍の作戦はほとんど常に迅速であるため、陸上だけでなく、空や水上での戦地内輸送(intra-theater transport)を可能にする部隊構造の構築を検討すべきである。
▪ 防護、欺瞞、隠蔽(masking)は、米陸軍が争われた兵站を図面から実戦に移すために真剣に取り組まなければならない重要な投資である。
はじめに:INTRODUCTION
争われた兵站という言葉は、9.11以降の武力紛争期に米軍とそのパートナーが争われない兵站に慣れてしまったことを意味している。
実際、争われた兵站は目新しいものではない。むしろ、それが先進国間の大規模な武力紛争における兵站の標準的な状態なのである。
兵站が争われないかもしれないという考え方は、9・11以降の戦争が軍事的思考に与えたもう一つの悪影響である。
確かに、ウィリアム・シャーマン(William Sherman)将軍が米南北戦争中に南部全域の補給線を壊滅させたことは、大陸レベルでの争われた兵站の一例である。
世界規模で見れば、ドイツ軍は第一次世界大戦中、米国とその同盟国に対して無制限潜水艦戦やその他の方法を用いて戦略的兵站(strategic logistics)を混乱させた[1]。
さらに第二次世界大戦中、大西洋の制海権をめぐる争いは、北アフリカとヨーロッパに展開する人員と軍備をめぐる争いで、争われた兵站の重要な部分を占めていた。
さらに、地中海の支配権をめぐる連合国と枢軸国の争いは、北アフリカ、イタリア、そして戦争全体における連合国の最終的な勝利にとって重要な問題であった[2]。
リッチモンド・ハモンド(Richmond Hammond)は次のように指摘する。
基本的に、地中海の支配は、世界規模の戦争における重要な通過ルートとして、対立する両連合国にとって不可欠であった。
連合国にとって、地中海は東西を結ぶ重要な大動脈であり、さまざまな戦域間で人員と物資を比較的迅速かつ効率的に移動させることができた。
単に争うこと……地中海における枢軸国の勝利の結果は、連合国の最大の強みの一つである世界的な機動性を大きく削ぐことになる[3]。
争われた兵站は、現代戦の新たなしわ寄せではなく、武力紛争の深さと広さを通して、立案者、戦略家、産業界が格闘してきた問題であることを理解することが重要である。
例えば、ドイツのUボートが大西洋を徘徊していた時代と今日で唯一大きく異なるのは、兵站の動きを探知するために利用可能な技術であり、それに応じて国家の兵站ネットワークを遠距離から打撃するために利用可能な技術である。
さらに、米国南部、大西洋、地中海での成功は、現代の争われた兵站のコンセプトが解決しようとしている問題を特定する出発点となるはずである。
敵の戦闘員がその努力を積極的に拒否しようとする環境下で、いかにして長距離の兵站を行うかという問題自体には、技術的解決策と非技法的解決策の両方がある。
本稿は、争われた兵站に対する答えを提供しようとするものではなく、志を同じくする人々がこの問題を総合的に考えるきっかけとなるような情報を提供しようとするものである。
まず、争われた兵站の問題を検証する。これらの問題は、脅威、環境、そして自分自身によってもたらされる課題に焦点を当てている。
この問題を検討するにあたり、記事では陸軍の第1騎兵師団を想定した展開を用いて、そこにある考え方を説明している。
第2に、本稿では、争われた環境(contested environment)での作戦行動に関する米軍の特殊性を検証する。
確実な兵站(assured logistics)は確実な移動の副産物であり、これらの要素はいずれも争われた兵站を検討する際の重要な考慮事項である。
第三に、この記事は、陸軍の上級指導者が、兵站が確保されているとは言い難い将来の戦場で活動するための重要な考慮事項であると述べていることの概要を提供する。
最後に、本稿は、争われた兵站の課題とそれを克服するために何が必要かを理解することに関心のある人々に入門書を提供するための一般的な質問で締めくくる。
米陸軍未来司令部司令官ジェームズ・E・レイニー(James E. Rainey)大将は、2023年3月28日にアラバマ州ハンツビルで開催される米陸軍協会グローバル・フォース・シンポジウムの基調講演で、争われた兵站の機能横断チームの立ち上げを発表した。
「レイニー(Rainey)は、「このチームは、争われた兵站に関係するすべての物事の部門以下の側面に焦点を当てるだろう。「私たちはこの問題にもっとうまく対処しなければならないと思っている」(写真:米陸軍パトリック・ハンター(Patrick Hunter)撮影)。
問題: 脅威、環境、自分自身:PROBLEMS: THREAT, ENVIRONMENT AND SELF
争われた兵站のコンセプトは、脅威、環境、自分自身の課題に分類される一握りの課題を解決しようとするものである。
脅威の観点からは、争われた兵站は敵戦闘員の攻勢能力と未知の意図に対処しようとするものである。
その結果、争われた兵站は、本国製造の安全な管理から前方への配送、未来の戦場の最前線にいる人間と機械が統合(一体化)された戦車や歩兵のチームにまで及ぶ[4]。
さらに、争われた兵站は、豊富なセンサーアレイ、長距離射撃、精密打撃、あらゆる種類と目的を持つドローンが戦場を支配すると従来の常識が示唆する、戦いの将来(future of warfare)を説明しなければならない。あるいは、流行の陸軍専門用語を用いてこの考えを枠付けすれば、争われた兵站は透明な戦場の特徴と課題を説明しなければならない。
環境的な観点(environmental standpoint)から、争われた兵站は距離とそれに伴うコストの圧制を克服しようとしている[5]。
第1騎兵師団や第1機甲師団のような機甲師団を世界中に輸送することは、資源と時間を消費し、時間がかかる。
さらに、このような移動は、注意深い敵の戦闘員に将来の軍事活動の前兆を与え、米軍が武力紛争のために動員、離脱、乗船するスキーマを提供する。
要するに、敵はこのプロセスのどの時点でも、ターゲッティング目的のために利用できるインテリジェンスを受け取るのである。
環境は、自分自身(oneself)に関わる課題を反映する。
脅威が長距離射撃、瞬時の監視、そして出動から出撃までのどの時点でも陸軍部隊を正確に打撃する能力を有する透明な戦場の下に展開する部隊は、多くの自分自身完結型能力を必要とする。
まず手始めに、この部隊は、砦から戦域出撃までの危険な経路を防護し、覆い隠し、その動きをカバーするために、さまざまなサイバー・システム、防空能力、欺瞞ツールを含む、戦術的編成(tactical formations)内では通常見られない防護能力を必要とする。
思考演習:第1騎兵師団がウクライナに展開:THOUGHT EXERCISE: THE 1ST CAVALRY DIVISION DEPLOYS TO UKRAINE
現実世界のシナリオではどうなるだろうか?
2022年2月に始まった戦争でウクライナに壊滅的な打撃を受けたロシアが、20年後の2044年に軍備を再建したとしよう。しかし、ウクライナを非国有化したいという願望が消えることはなく、ウラジーミル・プーチンの後継者は、再びキーウを目指す時が来たと考える。
その間に、米国とウクライナは安全保障を強化し、その過程で米国は、将来ロシアと衝突した場合にウクライナを支援する戦闘部隊を提供することを約束した。
モスクワはこの合意を熟知しており、最新のセンサー、グローバル・センサー・ネットワーク、長距離射撃、精密打撃、中高度長耐久(MALE)ドローンで武装し、米軍の配備を混乱させること、そして可能であれば、約束された部隊が到着できないほど配備プロセスを混乱させることに躍起になっている。
別の言い方をすれば、ロシアの到達目標は、武力行使ではなく、紛争を国内防衛の1つに変えることだろう。将来の技術と過度に積極的なロシアの潜在的な影響を考えると、これは次のようなプロセスで展開される可能性がある。
▪ ステップ1:フォート・カバゾスの動員人員と軍備を攻撃し、配備プロセスを混乱させ、一般的に軍と民間人の心に恐怖を与える。
▪ ステップ2:フォート・カバゾスとボーモント港を結ぶ鉄道路線を長距離精密打撃と中高度長耐久(MALE)ドローンでトレース爆撃し、第1騎兵師団の重装備が港にタイムリーに到着するのを阻止する。
▪ ステップ3:カヴァゾス砦とボーモント港を結ぶ道路網を精密打撃可能な中高度長耐久(MALE)ドローンで狩り、第1騎兵師団のライン運搬機材が港に到着するのを阻止する。
▪ ステップ4:ボーモントの船団を攻撃し、ヨーロッパ向けと表示された船舶の積み込みと配備を阻止する。
▪ ステップ5:ボーモント港のインフラを破壊し、残存する航行可能な船舶への機器の積み込みを阻止する。
▪ ステップ6:宇宙、サイバー、空中、水中のセンサーを組み合わせて、港から脱出可能な船舶の進行方向を特定する。ドローンのスウォーム(空中および海上)を使ってこれらの船舶をターゲットにし、ヨーロッパに向かう米国の船舶を撃沈する。
▪ ステップ7:現実の港と潜在的な港を特定し、長距離射撃、精密打撃、ドローンのスウォームを割り当てて、米艦船がそれらの場所に上陸するのを阻止する。
このシナリオは、航空機や空港に若干の修正を加えれば、人員や装備の空中展開にも容易に適用できる。
その結果、敵対者が米国本土の中心部に侵入し、米国の人員、装備品、兵站の配備を萎縮させる可能性は、政策立案者、軍事専門家、防衛産業、国内の商業パートナー、ひいては一般米国民にとって正当な懸念事項である。
争われた兵站への課題を振り返り、私たちはこう問うかもしれない。米軍とパートナー国の軍隊は、ターゲットをグローバルに特定でき、防護された領土や敵対者の主権領土からほぼリアルタイムでそれらのターゲットを攻撃する遍在する能力が支配する敵対的な環境で、どのように兵站を確保するのか、反撃を戦略的な問題にしているのだろうか?
米国の軍事作戦の要素:ELEMENTS OF U.S. MILITARY OPERATIONS
この問いを考えるとき、米国の軍事作戦がどのように実施されているか(すなわち、国家がどのように武力紛争に関与しているか)を振り返ることが重要である。
そうすることで、争われた兵站のコンセプトと米軍の作戦との関連性を明らかにすることができる。
第一に、米軍は遠征型の軍隊であり、一般的には米国の主権領土ではなく、他国の領土で武力紛争を行うことを意味する。
この迅速な性格の結果、米軍は(a)米国内で戦闘力を生み出し、(b)米国本土から前方の拠点に戦闘力を展開し、(c)兵站を含む戦闘力の地域間移動を実施し、(d)米国以外の紛争地域で足場を確立し、(e)自らを支援するために地域間兵站を実施する能力を持たなければならない。
第二に、一旦戦域に入れば、この迅速な性格は、米国からどのような紛争戦域に入るにせよ、兵站のパイプラインを維持しなければならないことを意味する。
米軍の作戦と争われた兵站について考える際には、3つの要素を考慮しなければならない。
第一に、兵站のパイプラインを維持することは、宿営地が激しく争われている地域では明らかに困難である。第二に、移動距離が長い場合にも困難が伴う。第三に、敵対者がパイプラインを維持するための作戦を拒否し、混乱させる能力と意図を持っている場合は、より困難である。
従って、米軍にとっては、兵站パイプライン・プロセスを混乱させる敵対的な行動を回避する方法と手段の両方を見つけることが賢明である。
兵站の尻尾を切ることは、おそらくこの課題に対処するための最も論理的な道である。食料、水、燃料、弾薬、医薬品、修理部品など、基本的な物資を自分自身生成する方法を開発することが、このプロセスの第一歩である。
さらに、非化石燃料を軍用装備の動力源として開発することも、合理的な一歩である。
代替燃料源に加え、再生可能で充電可能な燃料源を開発することも、化石燃料指向の課題を回避する方法のひとつである。
これらの考え(ideas)の多くがいかに合理的であるかにかかわらず、考え(ideas)を能力、すなわち考え(ideas)を現実にするためのものに変えるという課題は、取るに足らないものではない。
米コロラド州フォート・カーソンで、第4歩兵師団の兵士が欧州派遣から車両を降ろす。
展開中に鉄道などの民間インフラを使用すると、陸軍は鉄道制御センター、線路スイッチ、または機関車そのものに対する敵のサイバー攻撃によって混乱する可能性がある(写真:米陸軍特技兵マーク・ボウマン(Mark Bowman))。
確実な兵站の要素:ELEMENTS OF ASSURED LOGISTICS
要するに、確実な兵站(assured logistics)とは、産業界が需要に遅れを取らないことを前提とするものであり、したがって、本質的な問題は移動の問題である。
従って、米軍は米国本土から空路、陸路、海路の補給線に沿った確実な移動を必要としている。これが戦域間移動である。
紛争地域内では、確実な移動とは作戦上および戦術上の距離を移動する能力であり、これも空路、陸路、海路の補給線に依存する。これが戦域内移動(intra-theater movement)である。
さらに、米軍が迅速主義(expeditious)であることを考慮すると、兵站の連続体の最後尾を、リスクが許す限り前方に近づけることが重要である。兵站パイプラインの緊密な結合、すなわち、最後尾と本体との間の物理的な距離と時間を取り除くことで、より効率的で協調的な軍事力の移動が可能になる。ひいては、兵站パイプラインの緊密な結合により、軍事力は敵対者に対してテンポを維持し、直接的な圧力をかけることができる。
しかし、兵站パイプラインの疎結合(loose coupling)、すなわち、兵站パイプラインの最後尾と本体との間の物理的な空間と時間の距離が大きいと、部隊の動きにスリンキー効果が生じる。
疎結合の兵站パイプラインでは、最後尾は部隊の前進を遅らせるアンカーとなる。米軍のような迅速な軍隊にとって、これは禁物である。
その結果、陸軍部隊は兵站パイプラインにおけるスリンキー効果を減らすよう努力しなければならず、一方、統合部隊は物資の自由な移動を邪魔するアンカーのような効果を減らすことに集中すべきである。争われた環境(contested environment)では、スリンキー効果とアンカー効果は重要な軍事的ターゲットであり、言い換えれば戦略的脆弱性である。
したがって、米軍(陸軍を含む)には、物資の戦略的移動が可能なシステムが必要であり、これには戦車や重砲兵などの重艦隊兵器システムが追加される可能性がある。同時に、陸軍が統合部隊に完全に貢献するためには、陸軍独自の航空機や水上艦艇が必要となる。
これらの追加能力は、陸軍兵站を米空軍と米海軍の輸送艇への依存から解放し、それによって陸軍部隊が作戦上および戦術上の移動を行い、戦域レベルから師団レベルの兵站が兵站を保証するような方法で流れることを確実にすることを可能にする。
争われた環境(contested environment)における移動は、単独で行うことはできない。能力(=具体的なもの)という点では、争われた環境(contested environments)での移動には、A地点からB地点への安全な輸送を確保するための防護と冗長性が必要である。理論的には、防護は、戦闘地域内移動と戦闘地域外移動とで変わらないが、実際には異なる。
戦域間の移動のためには、長い補給線と貨物を運ぶ船舶をマルチドメイン攻撃から防護しなければならない。具体的には、これらの補給線は、サイバー攻撃や、広大なマルチモーダル、マルチドメインなセンサー・シューター・ネットワークの累積効果、そして、実際に攻撃を行うプラットフォームに関係なく、陸、海、空からの消耗志向の攻撃(attrition-oriented attacks)から防護されなければならない。
戦域内移動(intra-theater movement)の場合、補給線はまだ長いかもしれないが、原則として、戦域間レベルの補給線よりはかなり短い。さらに、精巧な弾薬は高価で、しばしば供給不足に陥る。そのため、戦術的編成(tactical formations)に配備される可能性は低い。その結果、移動によって確実な兵站(assured logistics)を維持するためには、マルチドメインシステムが必要となるが、それは特に狭い空間での作戦に特化したものである。
例えば、陸軍部隊は、統合作戦地域内や陸上部隊の作戦地域内での兵站の移動を容易にする独自の水上輸送船を必要とする。仮定の例として、ロシアのシナリオにおいて、陸軍がルーマニアのコンスタンツァに大規模な兵站ノード(兵站ノードA)を有していたが、作戦によって兵站ノードAが確実な兵站(assured logistics)を維持する能力を過剰に拡張した場合、兵站ノードAを移転しなければならない。
もしロシア陸軍が「クリミアへの陸橋(Land Bridge to Crimea)」から押し戻され、ドネツク州とルハンスク州をかすかに維持し、陸軍が作戦テンポとロシアの不平衡を維持する必要があるのなら、兵站拠点Aからウクライナのミコライフかスタニスラフ(兵站拠点B)に兵站震源地を進めることは理にかなっている。
陸軍部隊のテンポと、敵対者の膠着状態を利用する能力は、水上バイクや航空機のような移動能力の割り当てを統合軍種パートナーに待つことによって維持されるべきではない。その結果、陸軍部隊は水上バイクや航空機を装備して、自軍の戦域内兵站(intra-theater logistics)を支援すべきであり、これは、時間が極めて重要な場合に、統合部隊から陸軍部隊への重要な能力の流用を減らすことによって、統合部隊の戦闘・勝利能力を高めることになる。
作戦形態という点では、争われた環境(contested environments)での移動には偵察、欺瞞、干渉(interference)が必要である。これらの考え方は新しいものではなく、軍隊が他の軍隊と戦ってきた限り、争われた環境(contested environments)における軍事作戦の基本であった。とはいえ、マルチドメイン作戦が現代の(そして将来の)軍事活動に与える影響に遅れを取らないよう、使用される技術や方法は進化しなければならない。
例えば、偵察と干渉(interference)は、もはや陸上部隊の前方で活動し、安全なルートを特定し、敵対者の編成(formations)を見つけ、敵の計画を干渉するために嫌がらせの射撃や陽動を実施しようとする騎兵隊の編成(formations)ではない。今日、偵察、欺瞞、干渉(interference)は、敵対者の広大なセンサー・ネットワークに入り込み、そのネットワークを通して行わなければならない。
敵のセンサー・ネットワークを経由する経路に沿って結束して機能し、破損した誤った情報を生成して、敵対者にネットワークから受信したデータを疑わせなければならない。ひいては、この疑念が敵対者の意思決定と関連作戦を鈍らせ、それによって兵站の動きを守ることにつながる。
この節の締めくくりとして、次に進む前に「赤旗(red flags)」を検討することが重要である。ここでいう赤旗(red flags)とは、上記で概説した考え(ideas)のうち、実現不可能であったり、受け入れられなかったり、適切でなかったりする可能性のあるものを指す。最大の赤旗(red flags)は、冗長性に伴うコストの高さであろう。したがって、冗長性が解決するために存在するニーズを満たすための技術や他の方法を検討する必要がある。移動についても同様である。
もし移動の要素を方程式から取り除くか減らすことができれば、敵対者の争われた兵站の能力は低下し、一方、陸軍部隊が邪魔されないで作戦する能力は増し、作戦はより効率的になり、兵站を提供する指揮官にとってより価値のあるものになる。ノードからノードへ兵站を移動させる要件を除去または削減することは、現地で、または少なくとも必要な地点の近くで兵站の必要性を生み出す方法を開発することによって克服できる。
従って、それを実現するための研究に焦点を当てるべきである。まったく新しい兵器システム、すなわち戦車やブラッドレー戦闘車などは別として、理論的には多くの種類の物資を紛争の戦術的エッジ(tactical edge)で製造できるようになり、移動の必要性を減らすことができる。
最後に、偵察、欺瞞、干渉(interference)に関するコメントは非常に「大雑把な筆使い(broad brushstroke)」である。これは意図的なものだ。マルチドメイン・スペクトラムの広さと縦深にわたって、偵察、欺瞞、干渉(interference)を同時に行う方法は、研究の未熟な分野である。とはいえ、政策立案者、軍事専門家、学者が、センサーが豊富で長距離、精密打撃が支配する戦場において、争われた兵站によりよく備えるために注目すべきはこの分野である。
このような考察はさておき、この問題に対処するためのいくつかの提言をする前に、軍幹部の争われた兵站に対する考えを調べることは有益である。
争われた兵站への上級軍事指導者の考え:SENIOR MILITARY LEADER THOUGHTS ON CONTESTED LOGISTICS
多くの陸軍指導者は、争われた兵站を、将来の武力紛争で米陸軍が直面するであろう最大の用兵の課題(warfighting challenges)のひとつに分類している[6]。
争われた兵站に関する対話の多くは中国に焦点が当てられているが、この課題は、(a) 米国内への打撃、(b) 空、海、陸を横断する人員、装備品、その他の兵站の移動の妨害、(c) 米国の港湾や飛行場の運用能力の否定、(d) 米国の統合強行進入能力の否定、(e) 戦地における米国の兵站ノードや通信ラインのターゲッティング、を同時に実行できるあらゆる脅威に当てはまるということである。
このように、争われた兵站は中国だけの問題ではない。それどころか、能力および意図に基づく課題なのである。おそらく、問題の特定という馬よりも技術を優先させたのだろうが、軍の上級指導者たちは、争われた兵站となるような状況において、米陸軍の後方支援の全事業体(sustainment enterprise)は「将来の即応性を提供するために」5つのことをしなければならないと主張している[7]。
第一に、後方支援の全事業体(sustainment enterprise)はデータ分析を活用し、予測兵站システムに投資しなければならない[8]。第二に、後方支援の全事業体(sustainment enterprise)は自律型技術を利用して作戦範囲を拡大し、行動の自由度を確保しなければならない[9]。第三に、後方支援の全事業体(sustainment enterprise)は陸軍の兵站パイプラインを削減しなければならない。第四に、後方支援の全事業体(sustainment enterprise)は化石燃料からの脱却を図り、車両を電動化し、車両に電力を供給するために代替燃料を使用しなければならない[10]。第五に、後方支援の全事業体(sustainment enterprise)は陸軍水上艦艇の不足に対する解決策を見出さなければならない[11]。
結論:CONCLUSION
米軍(陸軍を含む)は遠征型である。そのため、米軍は本質的に長い補給パイプラインを有している。これらのパイプラインは、製造現場から戦闘の最前線にいる戦術部隊に至るまで、争われた環境(contested environment)では重要な脆弱性である。賢い敵対者は、特に将来に向けて、グローバル・センサー・ネットワークを利用して、兵站の製造場所、ノードの出荷位置、それらのノードへのルート、戦域固有の乗船場所を特定するだろう。
さらに、能力と意図を保有する敵対者は、その長い兵站パイプラインのどこを攻撃しても、あるいはどこでも攻撃してもおかしくない。したがって、陸軍部隊は、政策立案者、他の軍事専門家、学者と同様に、兵站パイプライン内に存在する重大な脆弱性を軽減するために、想定戦力や潜在的な資材だけでなく、考え(ideas)についても実験を続けなければならない。
前述したように、陸軍の指導者たちは、争われた兵站の課題のいくつかに対する技術関連の解決策の開発にすでに取り組んでいる。争われた兵站に関する陸軍の進行中の作業に直接関与していない人々にとって、争われた兵站にどのように対処するかを考えることは、「ボトム・アップ」、あるいはおそらくは横並びの支援のための実行可能なメカニズムであり続けている。
この試みには、前述のように次のような質問が役立つ。米軍とパートナー国の軍隊は、ターゲットをグローバルに特定でき、防護された領土や敵対者の主権領土からほぼリアルタイムでそれらのターゲットを攻撃する遍在する能力が支配する敵対的な環境で、どのように兵站を確保するのか、反撃を戦略的な問題にしているのだろうか?
陸軍が技術的な解決策に重点を置く一方で、国防学の他の研究機関は、陸軍部隊の作戦方法を説明する合理的な理論を開発し、争われた兵站の課題に対処するために組織化するために、時間と精神的エネルギーを割くべきである。
ノート
[1] “American Entry into World War I, 1917,” U.S. Department of State, accessed 16 December 2023.
[2] Richard Hammond, “Sinking Feelings: The Cause of Allied Victory in the Mediterranean During the Second World War,” Cambridge University Press, 24 June 2020.
[3] Hammond, “Sinking Feelings.”
[4] Anastasia Obis, “Army Leaders Say Data is Key to Tackling Contested Logistics,” GOVCIO, 2 August 2023.
[5] Beth Reece, “Managing Logistics in Contested Areas is Key to Military Success,” U.S. Department of Defense, 1 September 2023.
[6] Marian Accardi, “Army Futures Command Exploring Contested Logistics,” Redstone Rocket, 16 August 2023.
[7] Megan Gully, “Army Focuses on Contested Logistics – A Threat to Enemy,” Army New Service, 3 April 2023.
[8] Gully, “Army Focuses on Contested Logistics.”
[9] Gully, “Army Focuses on Contested Logistics.”
[10] Gully, “Army Focuses on Contested Logistics.”
[11] Gully, “Army Focuses on Contested Logistics.”
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ロシアの適応の優位性 (Foreign Affairs)
https://milterm.com/archives/3513
『2024年2月8日 / 最終更新日時 : 2024年2月8日 軍治
ロシア・ウクライナ戦争に関してMILTERMでは、この戦争から得られる教訓などの論稿をいくつか紹介してきたところである。そもそも、予測するのが難しい戦争において現実の戦争・戦い・闘いを遂行する中で、単に藻掻き続けるのではなく分析し適応していく力が必要である。この適応力の観点からロシア・ウクライナ戦争について分析したForeign Affairsに掲載の豪陸軍の退役少将の論稿を紹介する。(軍治)』
『ロシアの適応の優位性
戦争初期ロシアはギアを変えるのに苦労したが、今はキーウを凌駕している
Russia’s Adaptation Advantage
Early in the War, Moscow Struggled to Shift Gears—but Now It’s Outlearning Kyiv
By Mick Ryan
February 5, 2024
ミック・ライアン(MICK RYAN)は軍事戦略家、退役オーストラリア陸軍少将、戦略国際問題研究所(CSIS)非常勤研究員。
2024年1月、ロシア、グロズヌイの空港でのロシアの志願兵
ウクライナでの戦争を通じて、キーウとモスクワは適応の会戦(adaptation battle)を繰り広げ、軍事的効果を学び、改善させようとしてきた。
侵攻の初期段階では、ウクライナが優位性(advantage)を保持していた。欧米の兵器が急速に流入し、ロシアの侵略がもたらす存亡の危機に突き動かされ、攻撃への備えも万全だったため、キーウは驚くほど短期間で新しい闘いの方法(ways of fighting)を開発することができた。
これとは対照的に、ロシアは手こずった。大きく、傲慢で、のろまな熊が、迅速な勝利を過信したのだ。ロシアが成功を収められなかったことによる組織的なショックが、逆にロシアの学習能力と適応能力を鈍らせた。
しかし、2年間の戦争を経て、適応の会戦(adaptation battle)は変わった。
ウクライナとロシアの間の質の差は縮まっている。
ウクライナには革新的でボトムアップ型の軍事文化が残っており、新しい戦場技術や戦術を迅速に導入することができる。しかし、その教訓を体系化し、軍全体に浸透させることに苦労することもある。
一方、ロシアは失敗を報告したがらず、より中央集権的な指揮哲学を持つため、ボトムアップで学ぶのが遅い。しかし、ロシアは最終的に何かを学ぶと、それを軍全体や大規模な防衛産業を通じて体系化することができる。
こうした違いは、両国の技術革新の方法にも反映されている。
ウクライナは戦術的適応(tactical adaptation)、つまり戦場での学習と改善に優れている。
ロシアは戦略的適応(strategic adaptation)、つまり国家の資源の使い方など、国家や軍の政策決定に影響を与える学習や適応に優れている。
どちらの適応の形態(forms of adaptation)も重要である。しかし、戦争に勝つために最も重要なのは後者の適応である。
この戦争が長引けば長引くほど、ロシアは学び、適応し、より効果的で現代的な闘う部隊(modern fighting force)を構築することに長けていくだろう。ゆっくりと、しかし確実に、モスクワは戦場から新しい考え(ideas)を吸収し、それに応じて戦術を再編成していくだろう。その戦略的適応(strategic adaptation)はすでにウクライナの反攻をかわし、ここ数カ月はロシア軍がキーウからより多くの領土を奪うのに役立っている。
結局のところ、西側の適切な対応がないままロシアの戦略的適応(strategic adaptation)における優位(edge)が続けば、この戦争で起こりうる最悪の事態は膠着状態ではない。ウクライナの敗北である。
長期戦:THE LONG GAME
ウクライナでの初期の軍事作戦で苦戦した後、ロシアは指揮・統制構造(command-and-control structure)を適応した。
2022年4月、ロシアは全面的な侵略を監督する指揮官を一人に任命し、それまでモスクワが戦争を運営してきた機能不全に陥った分裂体制を破棄した。
その結果、ロシアの侵略は、ウクライナの北部、東部、南部での複数の独立した非協調的な戦役から、より同期したアプローチへと移行し、主な取組みは明らかにウクライナ東部での地上作戦であった。これにより、ロシア軍は2022年半ばに進撃し、セベロドネツクなどの都市を占領した。
ロシアは近接戦闘(close combat)のやり方も変えた。
戦争初期、ロシアは大隊規模の地上部隊である諸兵科連合(combined arms)を採用したが、多くの場合、十分な強さはなく、空と陸の作戦を統合(一体化)し、地上の諸兵科連合作戦(combined-arms operations)を遂行する能力は限られていた。
しかし、この12カ月の間に、ロシア軍はそのような大隊から遠ざかっていった。
彼らは現在、精鋭部隊と従来型の部隊を統合(一体化)し、多くのウクライナが「肉の嵐(meatstorm)」と揶揄するもの、つまり、より有能なロシア軍が到着する前に、ウクライナ兵を圧倒し、疲弊させることができる、訓練不足の使い捨て部隊の波で、その組み合わせを強化している。
この戦術的革新(tactical innovation)の一部は、ロシアが動員された部隊を高いレベルの熟練度まで訓練する時間がないなど、軍事的必要性によってもたらされた。
しかし、その一部は戦略的なトップダウンの指示によってもたらされた。ワグネル準軍事会社の指導者たちは、バフムート奪取作戦に成功した際、民兵に登録した囚人を使い捨ての弾丸受けとして使用することで、「肉弾戦術(meat tactics)」アプローチの普及に貢献した。
ワグネルがこのグロテスクな戦略に成功したのを見て、モスクワの部隊は他の会戦でも同様のアプローチを採用した。
ロシアの歩兵戦術は、統一された大隊群を諸兵科連合(combined arms)の行動単位として展開しようとすることから、攻撃部隊、専門部隊、使い捨ての「肉」部隊に編成して階層化された師団を作ることへと移行した。
ロシア軍は防御面でも適応した。戦争初期には軽く陣地を固めただけで、ウクライナの攻勢にさらされるだけだったモスクワは、2022年後半から2023年前半にかけて南部に縦深のある防御線を築いた。
ロシアがターゲットの発見から戦場での打撃までの時間を短縮する改善とも相まって、ウクライナ側は2023年後半に、2022年に直面した敵とはまったく異なる敵に直面した。
この進化した敵に打ち勝つため、ウクライナは戦術、技術、作戦の適応を余儀なくされ、反攻開始前に一部の部隊をポーランドや他の欧州諸国に派遣して追加的な諸兵科連合(combined arms)訓練を受けた。
しかし、キーウの努力は、南部のさらなる奪還という任務にはまだ不十分だった。
ロシア軍はまた、車両を守ることにも長けている。
戦争初期、ウクライナはドローン(drones)と精密ミサイルを使ってモスクワの戦車やトラックの多くを破壊することに成功し、ロシアは何度も恥ずかしい敗北を喫した。
しかし、これに対してウクライナの軍隊は即席の装甲車を作り始めた。キーウへの進撃中に大量のロシアの兵站車両が攻撃された後、軍隊はこれらのトラックに即席の装甲を追加し始めた。
この間に合わせの装甲は、やがて「コープ・ケージ(cope cages)」と呼ばれるようになったスラット装甲やケージ装甲によって、より洗練されたものとなった。
このような装甲は、第二次世界大戦のドイツ軍戦車に初めて採用された。しかし、2003年のイラク戦争に投入された連合軍や、現在ではロシアの戦車や自走砲など、現代の紛争でも使用されている。
これらのケージは、ウクライナの対戦車兵器が車両の主装甲に当たる前に信管を粉砕したり、対戦車兵器が車両を貫通する前に表示を強制したりするのに役立っている。
このケージは、ロシアの戦車やトラックを物理的に防護する役割を担い、ドローン(drone)や徘徊型弾薬(loitering munition)による攻撃のリスクが高い場所での作戦に、乗組員の自信を与えたようだ。
この防御的なアプローチは、戦術的な革新として始まったのかもしれない。
しかし、やがてケージの採用が体系化された。
ロシア陸軍は、徘徊型弾薬(loitering munitions)、ジャベリンなどのトップアタックミサイル、ドローン(drones)を打ち負かすための体系的なアプローチとして、部隊にケージを大量に使用させた。
2023年、ロシアの司令官は、トラック、砲兵、装甲車へのコープケージの構築と取り付け方法について正式な指示を出した。モスクワは現在、装甲車両の輸出版にそのようなケージを提供している。
一方、モスクワはドローン(drones)の配備自体が大幅に改善され、以前の力学を逆転させた。
戦争が始まったとき、ウクライナは、偵察から爆弾の投下まで、遠隔操作、半自律、自律型ドローン(drones)を使用する新しい方法の開拓を支援した。政府、産業界、市民のクラウドファンディングが協力して実施した同国の自称ドローン軍団は、キーウに初期のドローンの優位性(advantage)を特に際立たせた。
しかし、ロシアはさまざまな目的でドローンを採用するのは遅かったが、今やドローンや徘徊型弾薬(loitering munitions)の数量とその使用能力でウクライナを追い抜いた。
モスクワは、西側の制裁にもかかわらず、自国の防衛産業を動員し、海外から重要な技術を調達することでこれを実現した。現在、ドローンや徘徊型弾薬(loitering munitions)に関してはウクライナを凌駕している。この差はおそらく今後も拡大し続けるだろう。
現代の戦争は、敵のドローンに積極的に対抗しながら、多数の無人航空機を配備しなければほとんど不可能である。
ロシアが防御線、大量の砲兵、攻撃ヘリコプター、徘徊型弾薬(loitering munitions)、より即応性の高い偵察・監視システムと連携してUAVを使用したことが、ウクライナの2023年の反攻が失敗した主な理由である。
そして、ロシアがより多くのことを学び、ドローンの生産を増やし続けるにつれて、ロシアはより多くの優位性(advantage)を得るだろう。
改革:REVVING UP
ロシアが台本をひっくり返した兵器はドローンだけではない。
ウクライナは精密兵器、つまりGPSなどの誘導システムを使って旧式のシステムよりも正確にターゲットを打撃する兵器を早くから採用していた。開戦当初の砲兵や弾薬の格差を考えれば、ウクライナはロケット弾や砲弾を無駄にするわけにはいかなかったのだ。
しかし、モスクワはそれ以来、精密兵器の効果を減らすことを学び、適応してきた。
それは、戦闘部隊、砲兵、兵站をうまく分散させることで実現した。
また、暗号化されたネットワークや旧式の有線戦術通信システムなど、より安全な電子通信手段を使うことで、ウクライナのターゲッティングを複雑にしてきた。
伝統的にロシアが得意としてきた電子戦は、侵攻初期には小さな役割を果たしていたように見えた。
しかし、電子戦は復活した。ロシア軍は戦略防衛産業と協力し、車両や人員ベースのさまざまな新型・進化型の電子戦システムを開発・配備した。これらはウクライナの通信を妨害し、部隊の結束を崩し、攻撃を仕掛ける能力を鈍らせる。
電子戦はまた、ドローンとその操作員の間のリンクを切断し、ロシアがドローンの運用基地を見つけるのを助け、ウクライナがロシアの司令部の位置を特定するのを困難にし、そして重要なことは、ウクライナの精密兵器(高機動砲兵ロケットシステム、またはHIMARSを含む)の効果を妨害または低下させることである。
ウクライナとそのパートナーは遅れを取らないよう懸命に働いてきたが、それでもロシアの電子戦能力に遅れを取っていることは、2023年後半にウクライナのヴァレリー・ザルジニ司令官が指摘したとおりである。
ロシアが適応し、戦略的優位性(strategic advantage)を生み出した最も重要な分野は、防衛産業複合体であろう。
2022年9月の部分動員やその他の政府の取組みによって、ロシアの軍事生産は劇的に増加した。
モスクワは北朝鮮の貢献によってさらなる兵器を獲得し、中国との貿易を拡大することで洗練された兵器製造を強化した。その結果、ロシアは現在、ウクライナよりもはるかに多くの兵器と弾薬を保有している。
確かに、ロシアはすべてのドメインで適応能力が優れているわけではない。長距離打撃を行う新しい方法に関しては、モスクワよりもキーウの方が改善している。例えば、ウクライナはこの1年で、ロシアの飛行場、防衛工場、エネルギー・インフラに対する長距離打撃の能力をさらに向上させた。
2022年の冬に行われたロシアによるウクライナの民間インフラに対する打撃にはほとんど無力だったが、現在は(ロシア国内を攻撃するために西側諸国の兵器を使用することについては米国が制限を課しているとはいえ)それ相応の高度な対応能力を有している。
キーウは、特にクリスマスから新年にかけてのモスクワによるウクライナへの大規模な攻撃をきっかけに、ロシアを攻撃することでこの能力を巧みに利用してきた。
ウクライナはまた、軍と民間のセンサー、長距離ミサイル、歴代の無人海上ドローンを使って、効果的な海上打撃能力を開発した。これらの海上ドローンは、ターゲットに突っ込んで弾頭を爆発させるだけでなく、ミサイルを発射することもできるようになった。その結果、ウクライナは複数のロシア軍艦を破壊し、黒海西部に新たな海上輸出回廊を作り上げた。
しかし、これらの優位性(advantages)は長続きしないかもしれない。他のドメインと同様に、ロシアはこうしたウクライナ動向に適応する可能性が高い。
例えば、ロシアは、ウクライナの防空システムの弱点を特定するために、複雑で大規模なドローンやミサイル攻撃の構成とタイミングを変更している。
また、Kh-101などの巡航ミサイルの一部を、ウクライナの打撃に対する防御メカニズムとしてフレアを発射するように改造している。
創造的破壊:CREATIVE DESTRUCTION
ロシアの軍事複合体は、戦場での教訓をロシアの産業と戦略に結びつける、強化され、継続的に改善される適応サイクル(adaptation cycle)を開発した。
このことは、今後1年間、ロシアに軍事的に大きな優位性をもたらすかもしれない。
このまま放置すれば、戦争に勝つための優位性(advantage)になりかねない。ロシアは空から打撃する能力を改善させ、十分な迎撃ミサイルを拒否されているウクライナの防空システムを圧倒し、ロシアが前進してウクライナ市民を恐怖に陥れることを容易にするかもしれない。
それに関連して、モスクワが東部、特に南部でより多くの領土を獲得することで、ロシアがさらに利益を得る可能性もある。
キーウを占領することは短期的にはありえない。しかし、最終的には、モスクワはキーウを物理的に奪取するというよりも、キーウの政治的な状況をロシアに有利なものに変えようとしている。
このような運命を避けるためには、ウクライナは学習と適応に対する独自の戦略的アプローチを構築しなければならない。
ウクライナの部隊は、成功した適応策を他のウクライナの部隊と共有することから始めればよい。ウクライナの部隊はしばしば教訓を旅団に送り、旅団はそれを上級司令部に送るが、軍は横の共有も重視しなければならない。
部隊間で教訓を交換することは、部隊の学習に必要な時間を短縮するだけでなく、戦術の標準化にも役立つ。
それでも、より良い横の学習システムを構築する(そして戦術を標準化する)ためには、指揮官トップが関与しなければならない。ウクライナ軍の最高レベルは、部隊にもっと情報を交換するよう命じる必要があるだろう。
ウクライナが戦略的適応(strategic adaptation)を高めるためには、戦術的学習とドクトリンの革新・訓練の間に立ちはだかる制度的・時期的な障害も取り除かなければならない。
例えば、2023年のウクライナの反攻から得た重要な教訓は、NATOがウクライナ軍に教えた諸兵科連合のドクトリン(combined-arms doctrine)が時代遅れだったということである。
この失敗の結果、ウクライナの個人と部隊は、近代的な状況下で攻撃作戦を実施するために必要な知的武装(intellectual armor)を欠いていた。
NATOとウクライナは、戦闘教訓の共有を加速させ、それをドクトリンや訓練機関につなげ、同盟とキーウがより良いドクトリンやより良い訓練形態を迅速に考え出せるようにすることが不可欠である。
特にNATOは、その膨大な分析能力を駆使して、何が有効かをウクライナ側が迅速に把握できるよう支援すべきである。戦術的な教訓を戦略的な変化にうまく結びつけることで、西側諸国はこの戦争の闘い方を、ウクライナが全体的な戦争戦略を適応させやすいように作り変えることができるだろう。
もちろん、西側諸国もウクライナへの先端兵器供与を継続しなければならない。
しかし、西側の供与を全体的に増やすことも重要だが、キーウに戦略的優位性(strategic advantage)をもたらす可能性が最も高い兵器の生産と送付に西側が集中することが極めて重要である。そのため、ウクライナの戦術的学習と工業生産の間に、より強い結びつきを持たせる必要がある。
戦闘の教訓は戦場から製造業者へと迅速に伝わり、兵士が装備品や軍需品の生産に影響を与えやすくならなければならない。(ウクライナとその同盟国は同時に、モスクワのサプライ・チェーンに干渉するなどして、ロシアが戦術的教訓を国防生産の改善に役立てるのを妨害しようとすべきだ)
最後に、ウクライナは一般的に、新たな適応策を展開するスピードを上げなければならない。ロシア軍の残された重要な弱点のひとつは、最近の英国王立サービス研究所(RUSI)の報告書にあるように、「すぐに直面する問題を管理するのは時間の経過とともにうまくなるが、新たな脅威を予測するのに苦労する構造」であることだ。
これはロシアの戦略的装甲の重大な弱点だ。
つまり、ロシアの課題への対応能力は改善したものの、依然として劣勢に立たされる可能性があるということである。
この不利な点(disadvantage)を生かすには、ウクライナは新たな適応策を迅速に導入し、体系化し、ロシアが対応方法を学ぶ前にできるだけ多くの損害を与えることができるようにしなければならない。
これらの改善は容易ではない。すべての制度は、短期間で変化を吸収する能力(政治学者のマイケル・ホロウィッツが「採用能力容量(adoption capacity)」と呼ぶもの)しか持っておらず、ウクライナはこの戦争ですでに非常に多様な適応に着手している。真に機能するためには、適応が多面的かつ包括的である必要があることは役に立たない。
「新興技術は、それぞれの能力にとって不可欠である」と、軍事史家でアナリストのT・X・ハメス(T. X. Hammes)は4月の報告書に書いている。
「しかし、電撃戦や空母航空の開発のように、これらの変革能力は、いくつかの技術を効果的に組み合わせ、首尾一貫した、よく訓練された作戦コンセプトに実装することによってのみ実現できる」そのためには、優れたリーダーシップ、迅速な実験、そして失敗から学ぶ謙虚さが必要である。
ウクライナはこれらの対策を実施するために時間を浪費している暇はない。
ロシアはウクライナで学習・適応能力を大幅に改善させた。
ウクライナでの戦争が長引けば長引くほど、モスクワの戦略的適応(strategic adaptation)は改善するだろう。
ウクライナの戦略的適応(strategic adaptation)を向上させ、ロシアの戦略的適応(strategic adaptation)を妨げる最も説得力のある正当な理由は、ウクライナが戦争に負けないようにすることである。ロシアは現在、戦略的イニシアチブを握っているため、残念ながら敗戦はまだあり得る。
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