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盧泰愚
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9B%A7%E6%B3%B0%E6%84%9A『出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
盧泰愚
노태우
Roh Tae-woo – cropped, 1989-Mar-13.jpg
1988年
大韓民国の旗 大韓民国
Seal of the President of the Republic of Korea.svg 第13代 大統領
任期 1988年2月25日 – 1993年2月24日
首相 李賢宰(朝鮮語版)(1988年)
姜英勲(1988年 – 1990年)
盧在鳳(1991年)
鄭元植(朝鮮語版)(1991年 – 1992年)
玄勝鍾(朝鮮語版)(1992年 – 1993年)
出生 1932年12月4日
大日本帝国の旗 日本統治下朝鮮 慶尚北道達城郡公山面新龍洞
(当時)東区新龍洞
死去 2021年10月26日(88歳没)
大韓民国の旗 韓国 ソウル特別市
政党 民主正義党→民主自由党
出身校 陸軍士官学校
配偶者 金玉淑
署名 Roh Tae-Woo signature.svg
盧泰愚
各種表記
ハングル: 노태우(南)
로태우(北)
漢字: 盧泰愚
発音: ノ・テウ(南)
ロ・テウ(北)
日本語読み: ろ たいぐ
ローマ字: No Tae-u(南、2000年式)
No T’aeu(南、MR式)
Ro Tae-u(北、2000年式)
Ro T’aeu(北、MR式)
英語表記: No Tae-woo(南)Roh Tae-woo(北)
テンプレートを表示盧 泰愚(ノ・テウ、ハングル: 노태우、1932年12月4日 – 2021年10月26日[1])は、大韓民国の軍人、政治家。第13代大統領(在任: 1988年 – 1993年)、同国最後の軍人出身の大統領。第12代国会議員[2]。ハナフェ[3]の一員。本貫は交河盧氏(祖籍は山東省[4])。号は「庸堂」(ヨンダン、용당)。仏教徒[2]。
プロフィール
1932年12月4日、日本統治時代の大邱で生まれた。朝鮮戦争勃発に伴い入隊し、陸軍士官学校で全斗煥(のちに大統領)と同期(11期)[5]。空輸特戦旅団長・第9師団長などを歴任する。この間、全斗煥らとハナフェ(ハナ会・一心会)を結成した。
第9師団長在任中(階級は陸軍少将)の1979年12月12日に、ハナフェのメンバーとともに粛軍クーデターを起こす。
1981年に文民になるため退役。政務第二長官を経て体育相・組織委員長としてソウルオリンピックの実務全般を取り仕切った。
1982年に当時の警察トップである内務部長官に就任した。これは同年発生した禹範坤による大量殺人事件の発生直後に当時の徐廷和内務部長官が辞職した(実際は初動対応の遅さが原因で被害を拡大させたことに絡めて就任間もない劉彰順内閣や全斗煥大統領の政権運営批判に及ぶことを恐れたことによる事実上の解任)ことに伴って急遽就任したものだった。
この人事によって盧は政界への足がかりを掴むことに成功した。1987年、高まりつつある民主化要求に対し、次期大統領候補として「オリンピック終了後、然るべき手段で信を問う用意がある」と声明(6・29民主化宣言)を発表。その直後、1971年大韓民国大統領選挙以来16年ぶりに行われた民主的選挙で民主正義党から立候補し、文民出身候補が金泳三・金大中の2人に別れたため韓国大統領に当選した。選挙のときは親しみやすさと自身の耳の大きさ(韓国では話を聞く人は耳が大きいとされる)を前面に押し出し、朴正煕政権から続いていた軍人出身大統領と異なる印象を国民に持たせることに成功した。翌1988年2月25日に第13代大韓民国大統領に就任した[6][7]。
大統領就任後、前大統領であった全斗煥政権時代の不正容疑を徹底追及する一方で、激しく対立していた金泳三・金鍾泌を与党に取り込むなど国政の安定を図った。
外交面ではマルタ会談での冷戦終結を受けて、「北方外交」を提唱して共産圏との関係改善に乗り出し、1990年にソビエト連邦、1992年には中華人民共和国(中韓国交正常化)と国交を樹立した。なお、中国との国交樹立により韓国は中華民国(台湾)とアジアで最後に断交した国となった。
対日関係では1990年に民主化後の大統領として初めて来日し、当時の皇太子明仁親王や海部俊樹首相と会談した。但しこの際の共同声明の内容に対し、自民党内から批判の声が上がった(詳細は小沢一郎を参照)。また従軍慰安婦問題を対日遡上に乗せた初の大統領である。翌年海部が訪韓し盧泰愚と会談。その席で、懸案であった在日韓国人の指紋押捺廃止を要求し、後に実施された。
朝鮮統一問題では、1991年9月17日には朝鮮民主主義人民共和国との国際連合南北同時加盟を実現し、同1991年12月13日に南北基本合意書を締結している。
1993年2月24日の大統領退任後、1995年に政治資金隠匿が発覚し拘束された。一審で無期懲役の判決を受け1995年11月16日にソウル拘置所に収監された[8][9]。控訴審では懲役15年、2628億ウォンの追徴金を言い渡された。その後粛軍クーデター・光州事件でも再捜査を求める世論が起こり、金泳三大統領は後粛軍クーデターと光州事件の再捜査を指示した。1996年から捜査が行われ、1997年4月17日にそれらを含めた公判で最高裁判所は懲役17年、追徴金2688億ウォンを宣告した[10][11]。1997年12月22日に特赦された[12][13]。
2012年6月、大統領在任中に作った秘密政治資金の一部を、長男の妻の父親に預けたとして、検察に捜査を依頼した[14]。
2012年12月12日、不正蓄財や追徴金未納などに不満を抱いた男(2007年三田渡碑に落書きをした男と同一人物)によって大邱市内の生家が放火された。シンナー2リットルを撒いてライターで火を付けられたが、床やテレビ、ドアの一部を焼いただけで直ぐに鎮火した。後に逮捕された男には懲役1年6ヶ月、執行猶予3年の判決が言い渡された。
2013年9月、未納となっていた追徴金230億ウォンについて、親族が代納すると発表した。この後、同じく追徴金の未納があった全斗煥元大統領側も、完済を発表した。
2021年10月26日、入院先のソウル特別市内の病院にて88歳で死去[15][16][17][18][19]。10月27日、韓国政府は葬儀を国葬として営むと決めた[20]。韓国で国葬に処されるのは史上4人目である。一方で、光州事件への関与を巡って世論の評価は分かれており、光州広域市など一部自治体は、弔旗掲揚を拒否した。
2021年10月30日、国葬に当たる国家葬がソウル市・松坡区のオリンピック公園の平和の広場で行われた[21]。告別式終了後にソウル追悼公園で火葬され、臨時安置された後に京畿道坡州にある統一東山に埋葬が予定されている[22]。
経歴
内閣総理大臣宮澤喜一と会談(1992年1月)
大邱にて出生。 大邱公立工業学校(朝鮮語版)に入学後、4年時に慶北高校に転校[23]。 陸軍士官学校入学(11期) 1956年 - 歩兵小隊長 1960年 - 軍事情報大学 英語翻訳将校 1961年 - 防諜部隊 情報将校 1967年 - 歩兵大隊長、ベトナム戦争へ派遣され武功勲章を受ける 1971年 - 歩兵連隊長 1974年 - 空輸特戦旅団長 1978年 - 大統領警護室 作戦次長補 1979年 - 首都警備司令官 1979年 - 第9師団長 1980年 - 陸軍中将、保安司令官 1981年 - 予備役編入(大将)、政務第2長官 1982年 - 初代体育部 長官、南北韓高位会談 首席代表、内務長官 1983年 - ソウルオリンピック組織委員会 (SLOOC) 委員長、ソウルアジア競技大会組織委員会 (SAGOC) 委員長 1984年 - 大韓体育会長 兼 大韓オリンピック委員会 委員長 1985年 - 第12代 国会議員(全国区、民正党)、民正党 代表委員 1987年 - 民正党 大統領候補、民正党 総裁、1987年大韓民国大統領選挙に勝利 1988年 - 第13代大統領就任 1990年 - 大韓航空機爆破事件実行犯の金賢姫死刑囚に対し、特赦の決定を下す 1993年 - 第13代大統領退任 1995年 - 大統領在任中の不正蓄財とかつての粛軍クーデター・光州事件の追及を受け懲役刑 1997年 - 特赦を受ける 2021年 - 88歳にて死去 』
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大賢は愚なるが如し
https://kotowaza-dictionary.jp/k0447/※ 「大賢は、大愚に似たり。」で、覚えていた…。
※ これと関連して、名づけられていたと思われるのが、韓国の第13代大統領の「盧泰愚」氏だ…。
『読み方
たいけんはぐなるがごとし
大賢は愚なるが如しの意味・解説大賢は愚なるが如しとは、非常に賢い人は、自分の知恵をひけらかすようなことをしないから、一見愚かに見えるということ。
由来などの解説
「大賢」とは、非常に賢い人のこと。
例文
彼はいつもヘラヘラ笑っているからそう見えないが、大賢は愚なるが如しで、実は相当に頭の回転が速く物知りである。
英語のことわざ
Extremes meet.(両極端は一致する)
And he is oft the wisest man who is not wise at all.(愚者はしばしば大賢者のように見える)大賢は愚なるが如しの類語・対義語
類義語
大賢は愚に近し/大智は愚の如し/大智は愚なるが如し/大智は愚に異ならず/大知は知ならず/大才は愚の如し/大巧は拙なるが若し/大巧は巧術なし/能ある鷹は爪を隠す』
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邯鄲の夢
https://kotobank.jp/word/%E9%82%AF%E9%84%B2%E3%81%AE%E5%A4%A2-470760※ こっちの方で、記憶してたな…。
※ しかも、「トウモロコシが、まだ茹であがっていなかった」という話しとして、記憶していた…。
※ 正確には、「コウリャン粥」なのか…。
※ 大体、トウモロコシがアジアに伝わったのは、16世紀のことらしい…。
※ こういう風に、いい加減なものだ…。
※ しかし、映画「マトリックス」は、この話しが元(もと)なんじゃないのか、と思っている…。(ちょっと調べたが、そういう説は無いようだ…。オレが、言ってるだけ…。)
『人の世の栄枯盛衰のはかないことのたとえ。「一炊(いっすい)の夢」「邯鄲夢の枕(まくら)」「盧生(ろせい)の夢」などともいう。
中国唐の開元年間(713~741)、盧生という貧乏な青年が、趙(ちょう)の都邯鄲で道士呂翁(りょおう)と会い、呂翁が懐中していた、栄華が思いのままになるという不思議な枕を借り、うたた寝をする間に、50余年の富貴を極めた一生の夢をみることができたが、夢から覚めてみると、宿の亭主が先ほどから炊いていた黄粱(こうりゃん)(粟(あわ))がまだできあがっていなかった、という李泌(りひつ)作の『枕中記(ちんちゅうき)』の故事による。
[田所義行]』
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邯鄲の枕
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%82%AF%E9%84%B2%E3%81%AE%E6%9E%95『邯鄲の枕(かんたんのまくら)は、唐の沈既済の小説『枕中記』(ちんちゅうき)の故事の一つ。多くの派生語や、文化的影響を生んだ。黄粱の一炊、邯鄲の夢など多数の呼び方がある。
由来と同義語
「盧生」という若者が人生の目標も定まらぬまま故郷を離れ、趙の都の邯鄲に赴く。盧生はそこで呂翁という道士に出会い、延々と僅かな田畑を持つだけの自らの身の不平を語った。するとその道士は夢が叶うという枕を盧生に授ける。そして盧生はその枕を使ってみると、みるみる出世し嫁も貰い、時には冤罪で投獄され、名声を求めたことを後悔して自殺しようとしたり、運よく処罰を免れたり、冤罪が晴らされ信義を取り戻したりしながら栄旺栄華を極め、国王にも就き賢臣の誉れを恣にするに至る。
子や孫にも恵まれ、幸福な生活を送った。しかし年齢には勝てず、多くの人々に惜しまれながら眠るように死んだ。ふと目覚めると、寝る前に火に掛けた粟粥がまだ煮上がってさえいなかった。全ては夢であり束の間の出来事であったのである。盧生は枕元に居た呂翁に「人生の栄枯盛衰全てを見ました。先生は私の欲を払ってくださった」と丁寧に礼を言い、故郷へ帰っていった。
中国においては粟のことを「黄粱」といい、盧生が粟粥を煮ている間の物語であることから『黄粱の一炊』としても知られる。いわゆる、日本の落語や小説・漫画でいうところの夢オチの代表的な古典作品としても知られる。
同義の日本の言葉としては「邯鄲夢の枕」、「邯鄲の夢」、「一炊の夢」、「黄粱の夢」など枚挙に暇がないが、一つの物語から多くの言い回しが派生、発生したことからは、日本の文化や価値観に長い間影響を与えたことが窺い知れる。現在ではほとんどの言葉が使われることがなくなっているが、「邯鄲の夢」は人の栄枯盛衰は所詮夢に過ぎないと、その儚さを表す言葉として知られている。
能『邯鄲』
能『邯鄲』は、『邯鄲の枕』の故事を元に作られた能の演目である。しかし道士・呂翁にあたる役が、宿屋の女主人であり、夢の内容も『枕中記』とは異なり、『太平記』巻25などに見えるような日本に入ってから変化した『邯鄲の枕』の系譜上に位置づけられると言えよう。舞台上に設えられた簡素な「宮」が、最初は宿屋の寝台を表すが、盧生が舞台を一巡すると今度は宮殿の玉座を表したりと、能舞台の特性を上手く利用した佳作である。
なお、盧生の性格や描写から憂いを持つ気品ある男の表情を象った「邯鄲男」と呼ばれる能面が存在し、能『邯鄲』の盧生役のほか、能『高砂』の住吉明神などの若い男神の役でも使用される。芥川龍之介は能『邯鄲』をモチーフにして『黄粱夢』という作品を書いた。また三島由紀夫は『近代能楽集』の中に能『邯鄲』を現代風の戯曲に翻案した作品を書いている。また古井由吉も『邯鄲の夢』をモチーフに『邯鄲の』という作品を書いている。
邯鄲師
邯鄲とは古くは、宿泊して目覚めたら就寝中に盗難の被害にあっていたという状況を指す。また宿泊施設で宿泊客の就寝中に盗みを働く者を邯鄲師(かんたんし)といい泥棒の一種であり、また枕探しとも言う。
古くから日本では宿屋(旅館)の客室に鍵はなく、また相部屋も多かった。そして習慣として枕の下に金品を隠すことが多く、泥棒も安易に盗みを働くことができた。ゆえにそれを専門とする者を「枕探し」といったのであるが、湯につかりご馳走を食べ極楽気分で床(とこ)に就いて目覚めたら不幸のどん底に落とされるという体験と正式な題名である「邯鄲の枕」の枕を掛けて邯鄲にあったといい、それを行う者を邯鄲師といった。
曲芸「邯鄲夢の枕」
邯鄲夢の枕(かんたんゆめのまくら)とは、軽業師や曲芸師の技の一種。演芸場や見世物小屋などで見られた。「邯鄲は夢の手枕」、「邯鄲の夢」や「邯鄲の手枕」などと呼ばれ、ただ単に邯鄲ともいわれた。
涅槃仏のように肘を突いて手を頭に添え横臥体勢を取り、この状態のまま空中浮遊をするという技である。今は観ることはできないが夏目漱石の『吾輩は猫である』や上方落語の『軽業』の一節に描かれている。(現在この技を伝承する者がいるのかは定かでない)そして手枕をすることが、この曲芸の種の一部であり、枕と寝る姿勢をとることや軽業師の他の芸と比べると軽業より手品に近いこともこの技の命名に一役かっている。 』
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胡蝶の夢
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%83%A1%E8%9D%B6%E3%81%AE%E5%A4%A2『胡蝶の夢(こちょうのゆめ)は、中国の戦国時代の宋の蒙(現在の河南省商丘市民権県)生まれの思想家の荘子(荘周)による、夢の中の自分が現実か、現実のほうが夢なのかといった説話である。荘子の考えが顕著に表れている説話として、またその代表作として一般的にもよく知られている。
概要
夢の中で胡蝶(蝶のこと)としてひらひらと飛んでいた所、目が覚めたが、はたして自分は蝶になった夢をみていたのか、それとも実は夢でみた蝶こそが本来の自分であって今の自分は蝶が見ている夢なのか、という説話である。この説話は「無為自然」「一切斉同」の荘子の考え方がよく現れているものとして有名である。「無為自然」を荘子の言葉でいえば「逍遥遊」となり、それは目的意識に縛られない自由な境地のことであり、その境地に達すれば自然と融和して自由な生き方ができると荘子は説く。
荘子が他の説話において提出してきた「是と非、生と死、大と小、美と醜、貴と賤」などの現実に相対しているかに見えるものは、人間の「知」が生み出した結果であり、荘子はそれを「ただの見せかけに過ぎない」という。
荘子はそれを次の3つの説話で示した。
朝三暮四 猿回しが『朝は3つで夜は4つだ』と猿に団栗を与えようとしたが、猿はこれに怒った。『では朝は4つで夜は3つだ』というと猿は喜んだ、という説話である。結局は1日7個の団栗を食べているということで、どちらも同じで、相対するものを考える人間も同じようなものだと荘子は説く。 「吾が生や涯てありて、知や涯てなし」 人の一生に限りがあるのに、知にはその限りがない。限りのあるものの中で限りないものを追いかけてもただ疲れるだけだ、ということを説く。 「大知は閑閑たり、小知は間間たり」 立派な知恵は悠々としているが、つまらない知恵に惑わされる人間はせこせこしている、ということである。これら3つが意図する「その程度の小知ならば捨ててしまえ」という思想を端的に表したのが、この「胡蝶の夢」である。ここでは夢と現実との対立が提出されており、どちらが真実の姿か、それは問題ではなく、胡蝶であるときは栩栩然として胡蝶になり、荘周であるときは荘周となっている。そのいずれも真実であり、己であることに変わりはなく、どちらが真の世界であるかを論ずるよりも、いずれをも肯定して受け容れ、それぞれの場で満足して生きればよいのである。「夢が現実か、現実が夢なのか?しかし、そんなことはどちらでもよいことだ」と荘子は言っているのだ。
「知」には何ら確かな判断はないのだから、考えたところで仕方がない。知の判断から離れてみれば、差異や区別を超えた世界が見えてくる。これこそが、荘子の言う「逍遥遊」の世界である。これが万物斉同の世界で遊ぶことであり、荘子が胡蝶の夢を通して訴えていることであると言える。
物の変化とは表面に現れた現象面での変化に過ぎない。胡蝶と荘周が形の上においては大きな違いを持ちながら、共に己であることに変わりはない。万物は絶えざる変化を遂げるが、その実、本質においては何ら変わりのないことを述べているのである。
原文『荘子』斉物論第二
原文
昔者莊周夢爲胡蝶。栩栩然胡蝶也。
自喩適志與。不知周也。俄然覺、則蘧蘧然周也。
不知、周之夢爲胡蝶與、胡蝶之夢爲周與。
周與胡蝶、則必有分矣。此之謂物化。書き下し文
昔者荘周夢に胡蝶と為る。栩々然として胡蝶なり。
自ら喩しみて志に適へるかな。周たるを知らざるなり。 俄然として覚むれば、則ち蘧々然として周なり。
知らず、周の夢に胡蝶と為れるか、胡蝶の夢に周と為れるかを。
周と胡蝶とは、則ち必ず分有らん。此を之れ物化と謂う。訳文
以前のこと、わたし荘周は夢の中で胡蝶となった。喜々として胡蝶になりきっていた。
自分でも楽しくて心ゆくばかりにひらひらと舞っていた。荘周であることは全く念頭になかった。はっと目が覚めると、これはしたり、荘周ではないか。
ところで、荘周である私が夢の中で胡蝶となったのか、自分は実は胡蝶であって、いま夢を見て荘周となっているのか、いずれが本当か私にはわからない。
荘周と胡蝶とには確かに、形の上では区別があるはずだ。しかし主体としての自分には変わりは無く、これが物の変化というものである。』 -
世中(よのなか)よ蝶々(ちょうちょう)とまれかくもあれ ― 宗因
https://www.nippon.com/ja/japan-topics/b09616/
『文化 環境・自然・生物 暮らし 2023.04.16
深沢 眞二 【Profile】
俳句は、複数の作者が集まって作る連歌・俳諧から派生したものだ。参加者へのあいさつの気持ちを込めて、季節の話題を詠み込んだ「発句(ほっく)」が独立して、17文字の定型詩となった。世界一短い詩・俳句の魅力に迫るべく、1年間にわたってそのオリジンである古典俳諧から、日本の季節感、日本人の原風景を読み解いていく。第16回の季題は「蝶々」。世中(よのなか)よ蝶々(ちょうちょう)とまれかくもあれ 宗因 (1676年作)
「とまれかくもあれ」は「ともあれ、かくもあれ」を縮めた表現で、「ともかくとして」といった意味です。「世中よ、とまれかくもあれ」であれば、「世の中はともかくとして」です。その文脈に「蝶々」をほうり込んで、「蝶々止まれ」の言い回しを挟みました。「蝶々止まれ」は現代の童謡でも「ちょうちょうちょうちょう菜の葉にとまれ」と使われていますね。つまり「とまれ」の部分が掛け言葉なのです。この句をダイレクトに訳すと、「世の中のものごとはともかく置いておくとして、蝶々止まれ」となります。
発想の背景には、一般に「胡蝶の夢」と呼ばれる寓話があります。中国古代の思想書『荘子(そうじ)』に語られている話で、著者の荘周(そうしゅう)が夢の中で蝶になり、夢から覚めて人間に戻ったけれど、自分が本当は蝶々なのか人間なのか分からなくなったというものです。宗因は、「世の中のもろもろの問題は深く考えなくったっていいじゃない。蝶々みたいに遊んで暮らそうよ。人間の姿をしているのと蝶々になって飛んでいるのと、どっちが本当でどっちが夢だか分かりゃしないんだから。ほら、蝶々、この指に止まんなよ。おまえは誰の夢の中の蝶々かな」と言っているのでしょう。
宗因は、1605年生まれ1682年没の連歌師・俳諧師です。この句は、俳諧の門人の惟中(いちゅう)に与えた文章「荘子像賛(そうじぞうさん)」の結びの発句でした。
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深沢 眞二FUKASAWA Shinji経歴・執筆一覧を見る
日本古典文学研究者。連歌俳諧や芭蕉を主な研究対象としている。1960年、山梨県甲府市生まれ。京都大学大学院文学部博士課程単位取得退学。博士(文学)。元・和光大学表現学部教授。著書に『風雅と笑い 芭蕉叢考』(清文堂出版、2004年)、『旅する俳諧師 芭蕉叢考 二』(同、2015年)、『連句の教室 ことばを付けて遊ぶ』(平凡社、2013年)、『芭蕉のあそび』(岩波書店、2022年)など。深沢了子氏との共著に『芭蕉・蕪村 春夏秋冬を詠む 春夏編・秋冬編』(三弥井書店、2016年)、『宗因先生こんにちは:夫婦で「宗因千句」注釈(上)』(和泉書院、2019年)など。』
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ためになる3Dグラフィックスの歴史(6)。AI技術の進化にGPGPUがもてはやされる背景
https://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/zenji/1493893.html※ 「なぜ、AIの実装に、GPUが用いられるようになったのか」の背景の一端が語られている…。
※ 長年の疑問が、ある程度解消した…。
※ 『マシンラーニング型AIの形成過程(≒学習過程)、そしてそのAIを活用過程(≒推論過程)において、この畳み込み演算を、大量に行なうことになる。
畳み込み演算は、実務的には「行列同士の掛け算」なので、この計算はGPUが内包する膨大な「プログラマブルシェーダ実行ユニット」(つまりはシェーダプログラム実行ユニット)でそのまま演算可能なのだ。
すなわち、GPUをGPGPU的に活用すれば、膨大なデータ量の畳み込み演算が高速に行なえるわけで、だからこそ、AI技術開発にGPUが引っ張りだことなったわけである。』…、という部分がキモか…。
※ 『ただ、GPUは、もともと3Dグラフィックスを描画するためのプロセッサだ。畳み込み演算専用機として利用するには、シェーダプログラム実行ユニットには、テクスチャユニットを始めとしたグラフィックス描画支援機能がたくさん接続されている。
NVIDIAは、「GPGPU業界の方々がそこまで熱望するならば」……ということで、シェーダプログラム実行ユニットから余計な機能をバッサリとカットした畳み込み演算実行専用ユニットを、2017年発表のVolta世代のGPU「GV100」から搭載した。
Quadro GV100
そう、それが言わずと知れた「Tensorコア」である。実は「推論アクセラレータ」の異名を持つTensorコアだが、実際に行なえるのは畳み込み演算(行列の乗算)だけ。
Tensorコアは、実はシンプルに畳み込み演算器に相当する』…。※ 内部回路的には、ここがキモか…。かつ、NVIDIA一強となったキモでも、あるのか…。
































『 トライゼット西川 善司 2023年4月17日 06:05
2022年3月、NVIDIAはその当時で世界最高性能のGPU「GH100」を発表。GPGPU専用として提供された。3Dグラフィックスを処理できないわけではないが、基本的にはGPGPUでの利用が想定されたプロセッサである。GPGPUセンセーションは、現在進行形で産業を席巻しつつある
前回は、熟成を極めたDirectX 11と、「別バージョンのDirectX 11」として誕生したDirectX 12を紹介した。そしてこのDirectX 12がDirectX 11と併存することになった経緯、DirectX 12が誕生した時勢などについても解説しつつ、最後は近代GPUの基本技術基盤である「プログラマブルシェーダ」技術が進化していった結果、新概念「GPGPU」技術が誕生したことにも触れた。
今回は、現在このGPGPU技術が、GPUにとって「3Dグラフィックス描画」に優るとも劣らぬほどに「重要なGPUの活用先」となってきている状況について深掘りしていきたい。
実は、昨今の「人工知能ブーム」や「自動運転技術の発展」は、このGPGPUという概念が誕生しなければ、ここまで急速に進歩しなかったかもしれないと言われている。
「ゲームの映像を描画すること」が主な仕事だったGPUが、どのようにして人工知能や自動運転といった技術開発に関係していったのか、その流れを振り返っていくことにしよう。
今回は、かなり話が方々へと脱線していくが、このシリーズのまとめということで、あらかじめご了承いただきたい(笑)。
GPGPUが巻き起こしたマシンラーニング型AIのビックバン現象
その筋の研究者達が、GPGPU技術をマシンラーニング(機械学習)型AIの実現に応用し始めたのは、2010年前後くらいからだとされる。
そして、昨今のAIブームの直接のきっかけは、2012年に起きた「ある象徴的な事件」ではないか、とも言われている。
スタンフォード大学が2010年より立ち上げた大規模な画像データベースに「ImageNet」というものがあり、当時約1,400万枚におよぶ膨大な画像データベースから課題として抽出された約50万枚の画像を学習し、その学習を完了したAIに対して約2万枚の試験画像を見せ、「これがなんであるか」を推論させる画像認識AIの競技「ImageNet Large Scale Visual Recognition Challenge」(ILSVRC)が毎年行なわれていた。
ちなみに、この競技自体は2017年が最後の開催となっている。
この「AIの画像認識力の優劣を競う競技」の2012年大会において、トロント大学のAlex Krizhevsky氏らが、GeForce GTX 580×2基構成のGPGPUマシン(要は2GPU構成のPC)で、平均的な人間の正解率を超える結果をはじき出して優勝した。
なお、優勝したマシンラーニング型AIの実装手法についてまとめた論文は「ImageNet Classification with Deep Convolutional Neural Networks」としてまとめられている。
NVIDIAのCEO、ジェンスン・フアン氏も、後年この2012年の出来事を「マシンラーニング型AIの世界にビッグバンが起きた」と語っている。
この事件以降、マシンラーニング型AIはKrizhevsky氏が行なった実装手法に倣うようになり、進化と発展が一気に加速する。
NVIDIAが毎年開催しているGPU技術を主題にしたカンファレンス「GTC 2015」にて、ジェンスン・フアン氏(Co-Founder and CEO, NVIDIA)は、マシンラーニングの一形態である「ディープラーニング」(深層学習)が急成長していることをアピールした
CNN(Convolutional Neural Network : 畳み込みニューラルネットワーク)の論文が発表されたのは1998年だが、2012年のAlex Krizhevsky氏らの論文以降で劇的に研究開発が活発化したことに言及し、ジェンスン・フアン氏は、Krizhevsky氏らの論文が「マシンラーニング界にビッグバンをもたらした」と表現した
また、2014年にはスタンフォード大学のAndrej Karpathy氏らが、画像を見せると流暢な英語でその画像の内容を解説する作文生成タイプのマシンラーニング型AIを発表した。これはまさに、昨今大ブームになっている対話型AIの源流に相当する研究だと言える。
AIに鳥が写っている画像を入力すると、単に主題としての「鳥」だけを認識するのではなく、その画像中に描かれているすべてのオブジェクトを認識して、各オブジェクトの関係性を解釈して「鳥が木の枝に止まっています」と作文にまとめることができるAIが発表されたのだ。この論文は以下の動画で紹介されている。
スタンフォード大学のAndrej Karpathy氏らの論文「Automated Image Captioning with ConvNets and Recurrent Nets」からの抜粋。写真を見せられた学習型AIがかなり的確な英作文を披露する事例。学習した知識にないものが示されると間違えることもある。「赤ちゃんの例」はそのささやかな誤り例。
人間に拮抗する人工知性がビジネスになる予感は10年前から?
ChatGPTに代表される、言語処理系AIの「凄み」は、実は今から10年以上前からその片鱗が現れていた。
2011年、アメリカのTVクイズ番組「Jeopardy!」の全米チャンピオン大会に、IBMの研究グループが開発したマシンラーニング型AI「Watson」を出場させたところ、人間の挑戦者達を抑えて優勝したことがある。
アメリカのTVクイズ番組「Jeopardy!」の全米チャンピオン大会にIBM製のAI「Watson」が挑戦した
とは言っても、当時出題された問題のAIへの入力は、音声認識経由ではなく、人間の手入力によるものだった。そのため、対等な対決ではなかったようだが、「AIが人間にクイズで勝つ」という事象は大きな驚きとして受け止められた。
この「Watson」を開発したIBMの研究グループのリーダーRob High氏(IBM Fellow,VP,CTO)によれば、2010年代の人間は1日あたり2.5エクサバイト(2,500,000テラバイト)のデータをネットワーク上のストレージ上に出力しており、これが2020年代には1日あたり44ゼタバイト(44,000,000,000テラバイト)に突入すると予測している。
また、High氏は、そうなったときに膨大なデータから人間の興味のある事柄を抽出したり、そこから分析を進めたり、あるいはそれらを組み合わせて新たなるコンテンツを創出したりするための手助けをしてくれる存在として、マシンラーニング型AIエージェントはいずれ不可欠な存在となるだろうと述べていた。
2020年代の今は、まさにそんな状況になりつつある。
IBMのAI「Watson」研究開発グループのリーダーRob High氏(IBM Fellow,VP,CTO)は「今(発言時は2016年)から10年以内に、ネットワーク上を往来するデータのすべてをAIが認知を取得して学習するサーバーシステムが運用される時代が来るはずだ」と予見した
こうした「AIに支援を受けるコンピューティングパラダイム」をIBMでは「COGNITIVE COMPUTING」と命名し、2013年に新しいジャンルのクラウドサービスとして事業化している(日本でのサービス開始は2016年から)。
現在直近のWatsonの応用事例は、IBMのWatson活用事例のページにまとめられている。
IBM自身も斬新な料理レシピを生成する「シェフ・ワトソン」などを稼動させ、話題を呼んだ。また、Watsonを幼児向けの知育玩具に応用した「CogniToys」などもリリースされた。
幼児の「なんで?」に応対できる能力を持つ知育玩具「CogniToys」シリーズ。登場時は話題にはなったが、シリーズが継続するほどの人気商品とならなかったようだ(笑)ゲーム画面を見てプレイするゲームAIの誕生
2015年にはGoogle系の英国ベンチャーのDeepMind社が開発したAIに、クラシックなゲーム機「Atari 2600」のブロック崩し、インベーダーなど、全49種のゲームをルールを教えずにプレイさせ、以前のプレイよりもスコアが高かったら「そのプレイは良いプレイだった」という評価を与え、反復的にプレイさせて学習させたところ(いわゆる強化学習モデル)、半数以上のゲームにおいて人間のトッププレイヤーの腕前を上回った成果を報告した。
DeepMind社が開発した「ゲーム画面を見てプレイするAI」の成長過程をまとめた動画。「どうすれば得点が稼げるか」を何百回という試行の繰り返しの過程で学習していく様が見て取れる
同じAIを「スペースインベーダー」で訓練させた事例。学習を終えたAIは、敵の弾を巧みに避け、飛来する高得点のUFOも確実に迎撃する2016年には、このDeepMindの開発したAI「AlphaGo」が、人類最強の囲碁プレイヤーとも言われる韓国人のイ・セドル九段を4勝1敗の戦績で打ち破ったニュースが世界を駆け巡った。
ちなみに、このAlphaGoは、前出のAtari 2600をプレイしたAIと仕組み的には同じで、AlphaGoは基本的には囲碁のルールを知らないという事実も、業界に大きな衝撃を与えた。
実は、AlphaGoは過去の膨大な上級者同士の対戦の棋譜の流れを「白石を白ピクセル」「黒石を黒ピクセル」とした「白黒画像の遷移データ」として学習し、最終局面において「これが勝ち」「これが負け」という「流れの筋」を学習して構築されたAIだった。なので、囲碁というゲームのルールそのものを深く理解はしていない。セドル九段が唯一勝利を収めた第4局は、中盤でAlphaGoが学習した膨大な過去の棋譜にないと推測される“奇手”を打ったことが勝因につながったと分析されている。
囲碁の基本ルールすら知らなかったAlphaGoの弱点を突いてセドル九段は勝利したというわけである。SF漫画みたいな話でちょっとカッコイイ逸話である。
日本におけるマシンラーニング型AIのゲームへの導入事例
日本においても、コンピュータゲームに対するAIの導入の研究は盛んだ。
2019年に開催されたCEATEC 2019において、バンダイナムコは縦スクロールシューティングゲームの名作「ゼビウス」をプレイするAIロボを発表した。
このAIは、前出のDeepMindが開発したゲームプレイAIとほぼ同方針の「教師なしAI」×「強化学習型AI」として開発されたものになる。
つまり、AIはゲームのルールを一切教えられていない赤子状態でゼビウスをプレイさせられ「良い行動」をしたら「えらいぞ」と褒美を与えて訓練を繰り返し、開発されたものになる。
学習にあたっては「実際のゲーム画面の15fps単位の画像」(一部処理しやすいように画像を低解像度化+鮮鋭化)を入力情報とし、「ゲーム画面に反応したレバー/ボタン操作」を出力情報としていた。
「Q56」(きゅうごろう)と名付けられたゼビウスAIプレイヤーロボ。実際の頭脳はこの白い展示台の下に隠されたデスクトップPC。Q56がアケコンを操作しているように見えるが、実はアケコン側の方が動いていて、Q56の腕の方が動かされている仕組み。ただ、展示中のゲーム画面が推論エンジンに入力され、リアルタイムにレバー/ボタン操作を出力しているので、AIデモとしてインチキはない
開発最初期の報酬授与条件は「高得点」だったが結果が振るわず。しかし開発後期「生存時間」に改めたところ、プレイが急激に洗練されたとのこと。ただ、あまりにも上手すぎても展示としておもしろみがないため、ブースではときどき失敗する学習レベルの低いAIをあえてお披露目したとしている。ちなみに、自機が死ぬとこちらに顔を向けて困った顔をする我々がPCやゲーム機で普段プレイしているようなコンピュータゲームに対しても、マシンラーニング型AIの導入の研究は行なわれている。
特に興味深いのは、対人戦を想定したバトルAIの研究で、それらのAIは我々人間が実際に対人戦をプレイするように「その時点での戦局(ゲーム状況)」を理解した上で、AIが的確に方向レバー入力とボタン操作を行なわせて戦うものである。
まず、先陣を切って商品化にまで漕ぎ着けたのがSNKだ。同社が2019年に発売した「サムライスピリッツ」(以下、サムスピ)で、そのAIプレイヤーが実装されている。
SNKの公式サイトに掲載されているサムスピのゴーストモードの紹介サムスピでは、プレイヤーという存在をシンプルな入出力演算器として考えているのが興味深い。
具体的には、プレイヤーについて「1フレーム単位のゲーム状況」を入力情報として与えてやると、「レバー操作とボタン押し」を出力する演算器と見なすのである。
なお、AIが出力する「レバー操作とボタン押し」は、あくまで「そういう操作をした」と見なされるゲーム操作データになる。物理的に実在するコントローラのレバーやボタンをロボットハンドが操作するわけではない。
ここで言う「ゲーム状況」とは具体的には、闘い合う2体の両キャラ位置とモーション状態、両者のゲージ状態、残り時間、現ラウンド数(ラウンド取得状況)などを指す。
サムスピでは、人間がサムスピを遊んだ際の「1フレーム単位のゲーム状況」とそのプレイヤーの「レバー操作とボタン押し」をマシンラーニングさせることで、そのプレイヤーのプレイスタイルを模倣するAI(ゲーム内ではゴーストと呼称)を構築する機能を搭載したのだ。
サムスピのゴーストモードの仕組み。プレイヤーのプレイスタイルの学習はゲーム機側の実機でリアルタイムに行なう実装となった。この画像はGame Creators Conference ’19のSNKゲーム事業本部R&D、泊 久信氏の「ニューラルネットワークを用いたAIの格闘ゲームへの組み込み」の発表資料より(以下同)
ゴーストモードと対戦した際、その推論エンジンは1フレーム毎にゲームコントローのレバー操作、ボタン操作を出力する仕様となっている同年、2019年に開催されたCEDEC 2019では、スクウェア・エニックス傘下の株式会社Luminous Productionsに所属する上段達弘氏が、3DバトルゲームのプレイヤーAIを、サムスピのゴーストAIに近いアプローチで制作した事例を発表している。
黒服キャラが敵AI、白服キャラがプレイヤーAI。ともにゲームコントローラを操作してキャラクタを動かしているというのがとても興味深いAI技術の開発になぜGPGPUが有効なのか
前出のAlphaGoでは、公開されている過去の膨大な数の世界トッププレイヤー同士の対戦棋譜を「畳み込みニューラルネットワーク」(CNN)に入力してマシンラーニングさせ、これを言わば「基礎知識」として持ち、この同じ基礎知識を持ったAI同士で対戦させて、勝敗が付いたら勝った方のゲームの進め方を「良棋譜」として学習結果に加えることで「腕前の強化」が行なわれていった。
CNNは画像認識AIによく使われるニューラルネットワークで、入力した画像の特徴を抽出することに向いている。
たとえば、膨大な「猫」の画像をCNN入力して、その学習結果として猫の特徴を取得すれば、撮りたてほやほやの新たな「猫」写真についても、このCNNはこれを猫として判断できるようになる(実際には入力画像が猫である確率を算出する)。
CNNの模式図例。512×512ピクセルの入力画像を256×256ブロックで畳み込み演算を行ない、その結果をさらに128×128ブロックで畳み込み演算を行なう。これを繰り返していくことで、入力画像ジャンルごとの特徴データが得られる。この特徴データの分類集積が実質的な学習ということになる。CNN基礎理論の発案は1970年代に行なわれていたが、演算量が膨大であったことから近年になってやっと実用レベルの技術に進化した
CNN以外のニューラルネットワークには、たとえば回帰性ニューラルネットワーク(RNN : Recurrent Neural Network)と呼ばれるものもある。このRNNは、当初、音声や文章のような1次元データを取り扱うのに有効だとされていた。
たとえば英語で「I」(私)のあとに続く単語として「am」や「was」が来る確率が高いことが見込まれるが、もし「I」の前に「When」があったとすると「When I」となるので「am」ではなく「was」へ続く可能性がグッと高まる。
このように、データ同士の相関性を学習して動作するAIがRNN型AIである。言語の解読や翻訳、作文といった用途には、RNNが適しているとされる(現在はほかの手法が活用される傾向にあり)。
さて、そもそもこのニューラルネットワークとは何なのか。
和訳すれば「神経回路網」となるが、機能だけに着目して簡潔に説明すれば「複数要素からなるデータを入力してやると何らかの結果を返す関数」のようなものだ。
これまでにさまざまな形態のニューラルネットワークが考案されているが、その多くの根幹演算には畳み込み演算(Convolution)が用いられる。
畳み込み演算とは、与えられた2つの数列(データ)の要素同士を全組み合わせで乗算して加算し合わせる演算のことだ。
ギターなどの楽器音に残響を与えるエフェクター装置などは、この畳み込み演算をもっともシンプルに活用した音響機器である。
数列X「3,5,-7」と数列H「12,-4」に対する畳み込み演算。数列Yに結果が収められるまでの演算過程マシンラーニング型AIの形成過程(≒学習過程)、そしてそのAIを活用過程(≒推論過程)において、この畳み込み演算を、大量に行なうことになる。
畳み込み演算は、実務的には「行列同士の掛け算」なので、この計算はGPUが内包する膨大な「プログラマブルシェーダ実行ユニット」(つまりはシェーダプログラム実行ユニット)でそのまま演算可能なのだ。
すなわち、GPUをGPGPU的に活用すれば、膨大なデータ量の畳み込み演算が高速に行なえるわけで、だからこそ、AI技術開発にGPUが引っ張りだことなったわけである。
ただ、GPUは、もともと3Dグラフィックスを描画するためのプロセッサだ。畳み込み演算専用機として利用するには、シェーダプログラム実行ユニットには、テクスチャユニットを始めとしたグラフィックス描画支援機能がたくさん接続されている。
NVIDIAは、「GPGPU業界の方々がそこまで熱望するならば」……ということで、シェーダプログラム実行ユニットから余計な機能をバッサリとカットした畳み込み演算実行専用ユニットを、2017年発表のVolta世代のGPU「GV100」から搭載した。
Quadro GV100
そう、それが言わずと知れた「Tensorコア」である。実は「推論アクセラレータ」の異名を持つTensorコアだが、実際に行なえるのは畳み込み演算(行列の乗算)だけ。
Tensorコアは、実はシンプルに畳み込み演算器に相当するTensorコアは、1基あたり、最大4×4要素の行列同士の乗算が1クロックで行なえる。具体的には、下図のような64回の乗算と48回の和算を1クロックで行なうことができる。
Tensorコアの1クロックあたりの演算実務を展開するこんな感じ。人間が筆算するには拷問レベルで面倒臭い普通のシェーダプログラム実行ユニットでは、1要素(1データ)が最大32bit浮動小数点(FP32)演算に対応しているが、Tensorコアはここは割り切っており、最大16bit浮動小数点(FP16)までと制限している。
AI技術開発用途では、精度的にはFP16で必要十分過ぎるくらいであり、AIが取り扱う学習テーマによっては8bit以下でも十分とされることも多い。よって、最近のNVIDIA GPUのTensorコアでは8bit整数(Int8)、4bit整数(Int4)、1bit(バイナリ)にまで対応する。
そうそう、最近のスマートフォン製品においては「AIチップ搭載!」というような触れ込みが目立つようになってきている。
AIチップ搭載という魅惑のキーワードに痺れて、つい「オレのスマホちゃんは人工知能搭載だぜ、すげえぜ」と自慢したくなることがあるが、実はそのAIチップとは、ここまでで解説してきた「シンプルな行列演算器の塊」にしか過ぎない。
いずれにせよ、高尚なAIも最小演算単位が畳み込み演算(行列の乗算)から成り立ってるということを考えると、我々の知性も根源自体はシンプルな演算の賜なのかもしれない……と思わされてなんとも感慨深い。
広がりを見せるマシンラーニング型AIの応用先さて、2012年以降、センセーショナルな発展を見せたマシンラーニング型AIのすべてにおいて、NVIDIAのGPUがGPGPU的に利用されていた。
この事実は、前回紹介した「2010年の世界最速スパコンTOP10のうちの3台がNVIDIAのGPUベースだった」という事象に並ぶほど、NVIDIAにとって「GPGPUに対する強風の追い風」となったことは言うまでもない。
マシンラーニング型AIは、ごくごく簡単にたとえれば「膨大なデータ同士の相関性を計算し、これを学習データにする」「AI利用時には、入力データとその学習データの相関を求めて、その度合いに応じた推論を導く」……というような処理系となっている。
この仕組みは、画像の認識、インベーダーゲームをプレイするAI、囲碁をプレイするAIなどなど、あらゆる分野への応用が利く。
そう、2012年以降、GPGPUベースとなったマシンラーニング型AIは「どんな分野で有効か」の探索フェーズに入り、まさに各産業分野において高効率かつ高精度なAI開発が急ピッチで進められている状況となっていった。
たとえば音声データを取り扱った音声認識や、膨大な言語の文書データを取り扱った翻訳への応用はすでに実用レベルに達している。
意外なところではディズニーやピクサーなどのCGアニメーション映画制作会社が、キャラクターに魅力的な動きを付けるのに、モーションキャプチャではなく、マシンラーニング型AIを応用する研究を始めている。
日本では、塩野義製薬が新薬試薬の臨床試験解析にマシンラーニング型AIの導入を開始したことを発表しているし、レントゲン写真やMRI像から疾患の有無を判断するエキスパートシステムに、マシンラーニング型AIを導入しようとする研究も進められている。
そして、リアルタイムに周囲の情景(映像)を認識して最良の行動を判断するだけでなく、過去の学習データから、今の情景から未来に起こりうる危険なことを確率的に予測できるマシンラーニング型AIもありふれた存在となりつつある。そう、自動車の自動運転向けAIなどはその最たる事例だと言えよう。
2017年5月にNVIDIAが開催したGTC 2017の基調講演にて、トヨタ自動車は自社の自動運転技術開発に、NVIDIAのGPUを搭載したSoCを採用することを発表した
マシンラーニング型AIは、学習データ次第で今見えている状況から、この先で起こりうる未来が確率論的に予測できるところが、従来のセンサーからのリアルタイム情報に基づいてアルゴリズムでリアクション的に意志決定するAIとの大きな違い。ドアが閉まっている車があったとき、過去に「突然ドアが開いて、そのドアに衝突したことがある。これは良くないこと」という学習があれば、同じ状況時に警戒ができる。リアルタイムにリアクションするだけでなく、起こりうることを予測して警戒できるAIは、自動運転技術の意志決定には非常に都合が良い
GPGPUの世界でも激化が進むGPUメーカー同士の戦い近年では「NVIDIAは妙にGPGPUに注力している」などと言われることがあるが、むしろ「GPGPUを積極活用している業界の方が金に糸目を付けない勢いで高性能GPUを欲している」状況になっており、今やグラフィックス業界に優るとも劣らぬほどのGPU市場の上客になりつつある。
そんなわけで、企業体であるNVIDIAの行動方針に「GPGPUユーザー重視」の傾向が見られるようになったとしても不思議なことではない。
冒頭で紹介したGH100のような「GPGPU専用のGPU製品をグラフィックス描画向けよりも先行してリリースする」という状況は、こうした背景があるからなのだ。
さて、なぜここまでGPGPUの世界がNVIDIA一強になってしまったのだろうか。これにはいくつかの理由が考えられる。
Radeonブランドを有し、プログラマブルシェーダ技術の進化に大きく貢献したはずのATIは、大手CPUメーカーのAMDに2006年に買収されている。
AMDはCPUメーカーでもあるため、HPC(High Performance Computing : 学術界や産業界が欲する科学技術計算用の超高性能な計算処理系。端的に言えばスパコン)業界にCPUを訴求したいという思惑を捨てきれず、GPGPUの方向へ大きく傾倒した戦略をとることができなかった……と筆者は考えている。
さらに、AMDは「そうしたHPC分野には、CPUとGPUを統合させた新構造のプロセッサが適しているはず」という姿を見出していた。
この着想を元にした新プロセッサは当初「Fusion」というプロジェクトネームで発表されたのち、実際の製品としてはAPU(Accelerated Processing Units)シリーズで展開された。
またAMDは、次世代APUシリーズに向けて、CPU管理下のメモリ空間とGPU管理下のメモリ空間を論理的に共有一体化させたGPGPUプラットフォームとして、HSA(Heterogeneous System Architecture)を提唱。
NVIDIAがGPGPUに舵を切った2010年前後、AMDはGPGPUよりもヘテロジニアス(異種混合)コンピューティングの実現に未来を感じ、「Fusion」プロジェクトを推進したこの流れは非常に有効そうに見えたのだが、初期のAPUはどちらかと言えばエントリークラスからミドルクラスの性能を持った、一般ユーザー向けの普及価格帯PC向けソリューションとして訴求されていため、HPC業界に振り向いてもらえなかった。。
歯に衣着せずに言うと、最初期のAPUはCPU性能もGPU性能もHPCが求めるパフォーマンスに達していなかった……ということである。
このタイミングで、若干時代の流れを読み間違えたAMD(ATI)は、GPGPU向け戦略(≒近代HPC戦略)においては相応の遅れをとってしまった感がある。
ATI買収をきっかけにしてAPU開発に傾倒し、GPGPU環境整備に遅れをとったAMDだったが、このAPUプロジェクトそのものは一定の成功を収めているということだけは付け加えておこう。
そう、PS4、PS5、Xbox One、Xbox Series Xなどの近年の家庭用ゲーム機のメインプロセッサは、すべてAMDのAPUであり、言わばFusionプロジェクトの間接的な産物なのであった。
近年の家庭用ゲーム機の多くは、AMDのAPUを使用しているさて、AMDは、この「遅れ」を取り戻すべく、2015年前後あたりからGPGPU環境整備ヘの取り組みを積極的に行なうようになり、2016年にAMD独自のプラットフォーム「ROCm」(Radeon Open Compute Platform)の推進を開始した。
NVIDIAのCUDA戦略に対抗すべく、GPGPU(≒GPU COMPUTING)環境整備に力を入れ始めたAMDは、ROCmを推進中以降、堅実的な開発と環境整備を続けたことで(まだまだNVIDIAのCUDAプラットフォームほどではないが)、徐々にHPCの世界で存在感を強めつつはある。
近年では、AMDのRyzen CPUと、同社のGPGPU専用GPU製品であるRadeon Instinctの組み合わせで構成されたスパコンが、米国のオークリッジ国立研究所(ORNL)と米国エネルギー省(DoE)に採用されたことが大きく報じられた。
米エネルギー省、世界最速の新スパコンにAMD製CPU/GPUを採用GPUの覇権争いは、今後GPGPUの世界でも続くと見て間違いない。
「ためになる3Dグラフィックスの歴史」シリーズのまとめもともとこのシリーズは、編集部から「なぜNVIDIAとAMD、Intelといった異なる半導体メーカーが作るGPUで、同じようなゲームグラフィックスが出せるのでしょうか?」というお題が起点となっていた。
全6回の間、だいぶ脱線することも多かったが、GPUというプロセッサの活用のされ方がここ20年くらいで、まるっきり変貌してしまったので、それも致し方がないといったところ。
今回のシリーズは、本稿でひとまずの終わりとなる。最後に、全6回のまとめを年表的な箇条書きで示し、元々のお題に対する回答のようなものを示そうかと思う。
【1】1990年代初期。もっとも身近なリアルタイム3Dグラフィックスはゲームセンターのゲーム機に存在した。
1993年に登場した「バーチャファイター」【2】1990年代中期。PCでリアルタイム3Dグラフィックスを実現する気運が高まるが、それを担当する3Dグラフィックスハードウェアとその制御APIが乱立した。DirectX(Direct3D、以下同)は登場当時は求心力が低かった。
初代Voodooを搭載した3Dグラフィックスハードウェア。当時はDirectXの影は薄く、これを動かすには3dfx社独自のAPI「Glide」を用いる必要があった【3】1990年代後期。DirectX7登場とともに、それまでCPUが担当していたジオメトリ演算系までをも、3Dグラフィックスハードウェアが担当可能になる。「GPU」というキーワードの誕生を機に、いくつかあった3DグラフィックスAPIにおいても淘汰が開始され、DirectXの立場が向上する。
1997年に登場した「バーチャロン」。IntelのSIMD拡張命令であるMMX技術が使われた【4】2000年代初期。GPUの機能拡張(≒3Dグラフィックスにおける新表現の実装)をソフトウェアの形で行なっていく枠組み「プログラマブルシェーダ技術」が誕生する。これにいち早く対応したDirectX 8がこの技術の進化を牽引していく流れに。
DirectX 8世代のGPUから採用された「プログラマブルシェーダアーキテクチャ」。写真はその対応GPU「GeForce3」【5】2000年代中期。プログラマブルシェーダ技術の発展とともにGPUの進化が加速。一方で、たくさん存在した3Dグラフィックスハードウェアメーカーの淘汰が進む。
Permedia2を搭載した「Fire GL 1000 Pro」。3Dlabs社は2002年にシンガポールのCreative Technology社に買収され、2006年にはGPU事業から撤退【6】2000年代後期。NVIDIA GeForce対ATI(AMD) Radeonの闘いが激化。この闘いが追い風となってGPUはより高性能化。プログラマブルシェーダ技術のプログラマビリティが一層強化。DirectXもDirectX 11まで進化する。
「GeForce FX 5900 Ultra」と「RADEON X1800 XT」【7】2010年代初期。高まったGPUのプログラマビリティがGPGPU技術を育み、実用化へと進む。任天堂、ソニー、Microsoftの三大家庭用ゲーム機はすべてプログラマブルシェーダ技術ベースへ。対応最後発は2012年発売の任天堂のWii U。ちなみに、もっとも早く対応したのは2001年発売の初代Xbox。2番手は2006年発売のPS3。
2001年に発売された初代「Xbox」は、世界初のプログラマブルシェーダ技術採用の家庭用ゲーム機【8】2010年代中期。GPGPUがマシンラーニング型AIの開発に大きく貢献。GPU制御APIの抽象レイヤーを薄型化する流れが発祥した結果、DirectX 12とVulkanが台頭する。ただし、旧来APIのDirectX 11とOpenGLも併存することに。
Vulkanの前身となった「Mantle」。AMDが2013年に発表【9】2010年代後期。GPGPU技術の加速度的な進化で、自動車の自動運転技術開発を始め、GPGPUとAIが切っても切れない関係性へ。GPGPU市場が大規模化する。また、このタイミングでGPUにリアルタイムレイトレーシング機能が搭載される(本シリーズでは未フォロー)。
世界初のGPGPU対応GPU「GeForce 8800 GTX」。発表は2006年こんな感じになるだろうか。
「なぜ、NVIDIAとAMD、Intelといった異なる半導体メーカーが作るGPUで、同じようなゲームグラフィックスが出せるのでしょうか?」という問いに対しては、
「プログラマブルシェーダ技術」の規格化によって、3Dグラフィックス表現がソフトウェアの形で行なえるようになり、広範囲な互換性が担保されるようになったから
……ということになろうか。
プログラミング言語的な方言、APIのパラメータの与え方の違い、座標系の違い……といった細かな差異はあれど、同じプログラミングモデルで制作されているため、ほとんどの近代3Dゲームグラフィックスは異機種間に対する相互移植が可能となっている。
また、昨今の発展著しい先進のゲームエンジン技術の台頭により、そうした相互移植性まで面倒を見てくれるようにもなってきている。
ただ、今でもGPUごとに、プログラマブルシェーダ技術の実行時の結果に、微細な結果が出ることはある。
なぜそうしたことが起こりうるのかについては、本シリーズの2回目や3回目で紹介した「緑のたぬきと赤いきつね」の闘いのあたりで触れたエピソードのようなことが、未だに細かい部分で残っているからである。
なお、今回のシリーズでは、レイトレーシング技術に付いては一切触れなかったが、これはまだ進化の途中であり、この後の進化の方向性が定まっていないためだ。また時間が経ったときに、このあたりの話題はお届けすることにしたい。
それではまた。 』
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英トラス前首相の悔恨 「知らなかった」財政のリスク
加藤晶也
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA110NV0R10C23A4000000/※ 財政出動は困難…、となれば、残りは「金融政策」のみとなる…。
※ それで、「非伝統的緩和政策(異次元緩和、とも言う)」を採れば、日銀の国債保有の増大化、日銀のETF保有の増大化となる…。
※ 前者は、「実質上の、日銀の国債引き受けだ!」と言われ、後者は、「実質上の、日銀による日本株の買い入れだ!」と言われることになる…。
※ 事程左様に、世の中、「こちら立てれば、あちらが立たず。」だ…。
※ さらに残るは、「構造改革」だ…。
※ これとて、「デジタル革命!」「DXの推進だ!」と囃し立てたが、進捗はどんなものだったか…。
※ 「コロナ直撃!」にもかかわらず、せいぜいが「ハンコの廃止」くらいのものじゃないのか…。
※ それでも、「マイナカード」の取得割合は、80%くらいにはなってるようだが…。
『少し、話しにくそうだった。2月に来日した英国のトラス前首相にインタビューした時のことだ。最初は「自由な世界は中国からの深刻な挑戦に直面している」と対中政策を立て板に水のごとく話していた。
首相在任時の経済・財政運営から日本や世界が学ぶべき教訓は何か。話題を変えると天井をいったん見上げて言葉を選びながら答えた。「英国固有の状況に直面した。必ずしも他の国に当てはまるものではない」
トラス氏は今から半…
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『トラス氏は今から半年前、英国史上最短で首相の座から退いた。わずか49日、経済・財政運営を巡る混乱が原因だった。
保守党の党首選で経済成長を最優先に取り組む姿勢を繰り返してきた。就任後、大規模減税や規制緩和を組み合わせた経済政策を公表すると、英国債利回りが急上昇(債券価格は下落)した。財政赤字拡大への懸念から国債が売られたためだ。
英政府は所得税の最高税率引き下げの撤回を表明するなど事態の収拾に動いたが時すでに遅し。保守党内からも辞任論が噴出し退陣に追い込まれた。
トラス氏が言う「英国固有」の状況とは何か。
年金基金が国債などを担保にレバレッジ(てこ)をかける「ライアビリティー・ドリブン・インベストメント(LDI=債務主導投資)」という運用戦略をとっていたことだ。
金利が上昇し大きな損失を出し、取引相手方の金融機関からマージンコール(追加担保の差し入れ要求)を突きつけられた。支払いの現金を捻出するために国債などを売却せざるを得なくなり、売りの連鎖が発生した。
本当に英国だけの事情なのか。混乱のきっかけが財政規律の緩みを見透かされたことという点では日本も対岸の火事とはいえない。日本の国内総生産(GDP)と比べた債務残高の比率は英国よりはるかに大きい。
市場関係者は警鐘を鳴らす。「必ずしも日本ですぐ起きることではないが、市場が群集心理で反応することは常にありうる。財政規律のタガが外れている現状を修正し、財政赤字を減らす努力をしなければいけない」(りそなアセットマネジメントの黒瀬浩一氏)
驚いたのはトラス氏がこの年金基金の運用手法による市場の脆弱さを「知らなかった」と答えたことだ。財務省やイングランド銀行(中央銀行)との間で「明らかなコミュニケーションの問題があった」とも話した。
トラス氏は就任した直後に財務次官を解任したり、イングランド銀行の「役割を見直す」などと言及したりした。互いに不信感が広がっていた。
国のトップと中央銀行、財政当局との信頼関係なくして安定した経済運営は成り立たない。英国から学ぶ点はここにもある。
日本では植田和男氏が9日に新たな日銀総裁に就任し、翌日の10日にはさっそく岸田文雄首相の元を訪れた。鈴木俊一財務相も立ち会い協調を確認した。
インタビューの終盤、トラス氏が発した言葉が耳に残る。
「もし、もう一度時間があったら違った行動を取っていたかもしれない」
財政支出を拡大しつづけても日本では金利は急騰しないか。財政規律の緩みを放置すれば英国のような事態が起きうるのか。財政を巡る議論は国内でも百家争鳴だ。
ただ一つだけ言えることがある。経済・財政運営のやり直しはできない。英国から学ぶ最大の教訓だ。
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深川由起子
早稲田大学政治経済学術院 教授
コメントメニュー分析・考察 (まだ)国際金融市場を擁する国の首相が年金運用の脆弱性を「知らなかった」と言えることを民主主義国家の強みとみるのか、脆弱さとみるのか、と言われれば今は後者が大でしょう。日本でも前政権下で財務省と官邸の関係に問題があったことは首相の回顧録が示すとおり。市場の群衆行動は不安になるとポジよりネガに激しく反応し、潜在的地政学リスクの相手から揺さぶりが来ることも考えられると思います。ばらまき懸念は常に存在するので、リスク情報の共有はしっかりやってもらわないと。
2023年4月17日 8:16いいね
37中空麻奈のアバター
中空麻奈
BNPパリバ証券 グローバルマーケット統括本部 副会長
コメントメニューひとこと解説 人の噂も75日とはよく言ったもので、トラス政権の失敗を他山の石にしようとする意識が薄れ、日本の財政は防衛、子ども、グリーンに向かい拡大が目される。財政規律を取り戻した上での支出ならまだしも、心配は尽きない。また、トラス政権での失敗の一つに、政府と中央銀行との間のコミュニケーションが指摘されると、日本の政府と日銀間のアコードの存在に意義が見出せるということなのかもしれない。金利が低い間に慣れてしまった財政の弛緩は大問題だと認識を改めたい。6月に向けてアメリカの債務上限問題の浮上を含め、過剰債務問題が中心のリスクになりえることに再度注意である。
2023年4月17日 10:10いいね
25白井さゆりのアバター
白井さゆり
慶應義塾大学総合政策学部 教授
コメントメニューひとこと解説 昨年9月末から10月初めにおきた英国の国債市場の不安定化は、年金基金の投資戦略にあった。問題は年金基金だけでなくファンドを含むノンバンクの存在が大きくなっておりかならずしも十分規制が適用されていないのに、投資実態が十分わかっていないことだ。銀行はリーマンショック以降金融規制が強化されているが、ノンバンクとの連関も高まっており危機が発生するとどのように銀行に波及するかも十分わかっていない。このような認識があるにもかかわらず、世界の金融当局はまだ十分対応しきれていない。英国ではイングランド銀行の介入で混乱が収まった。3月の米国の地域銀行の破綻も原因は異なるが、金利上昇に関連するものだった。
2023年4月17日 8:15いいね
18永浜利広のアバター
永浜利広
第一生命経済研究所 首席エコノミスト
コメントメニューひとこと解説 当時の英国では、インフレ率が既に+10%台に到達しており、需給ひっ迫によりインフレ率が目標の+2%を大きく超えてしまっていました。
実際、IMFのGDPギャップで比較すると、英国では2022年時点で需要超過になっており、需要超過によりインフレ率が加速していました。
さらに、各国国債の信認を左右するとされる4指標についてG7で比較しても、英国は政府純債務/GDPと政府債務対外債務比率はG7中3番目に低かったものの、基軸通貨国米国に次ぐ経常赤字/GDPが大きい国である上、米国とフランスに次ぐ対外純債務/GDPが高いことからすれば、財政出動は限界だったと言えるでしょう。
2023年4月17日 8:13 』
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