「貿易分野は全体で妥結に至らず」と経産相
https://nordot.app/1096914737429233876?c=302675738515047521
『【サンフランシスコ共同】訪米中の西村康稔経済産業相は13日、新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」の初日の閣僚会合後、「貿易分野全体として実質妥結に至らなかった。(部分的な)進展はあった」と明らかにした。
c 一般社団法人共同通信社 』





日本の防衛費は、主要国と比べてどのくらい?https://www.mod.go.jp/j/press/book…
このような「覇権国の覇権内容の変質の過渡期」に当たって、日本のような「中堅国」の国家戦略としては、どのような戦…
「米国がコストを払ってイランの軍事能力を削いだおかげで、今の交渉の席がある」という強気の主張は、まさに「覇権国…
「米国がリスクを取って道を切り拓いたのだから、その恩恵を受ける同盟国が対価(軍事費や経済協力)を払うのは当然だ…
そういう米国の「決定は米国が独自に行い、その結果生じるコストやリスクの管理は同盟国に分担させる」というパターン…
米国は、過去の事例でも「アメリカ・ファースト(米国第一主義)」に基づき、米国の安全保障上の利益を最優先に行動し…
「貿易分野は全体で妥結に至らず」と経産相
https://nordot.app/1096914737429233876?c=302675738515047521
『【サンフランシスコ共同】訪米中の西村康稔経済産業相は13日、新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」の初日の閣僚会合後、「貿易分野全体として実質妥結に至らなかった。(部分的な)進展はあった」と明らかにした。
c 一般社団法人共同通信社 』
Economist紙、反攻作戦の失敗を認めないと同じ結果を繰り返すだけ
https://grandfleet.info/war-situation-in-ukraine/economist-newspaper-if-we-dont-admit-the-failure-of-the-counterattack-we-will-just-repeat-the-same-result/
『ザルジニー総司令官の記事を掲載したThe Economist紙はウクライナ・プラウダ紙の取材に応じ、反攻作戦が失敗したと認めなければ「同じ結果」を繰り返すだけで、次回の反攻作戦で「異なる可能性」を期待できないと指摘した。
参考:Военный обозреватель “The Economist” Шашанк Джоши: Бахмутская кампания стоила Украине больше, чем она получила
どうすれば現状を打開できるかを理解するには現状を認めることが最も重要だ
ウクライナ・プラウダ紙は「ザルジニー総司令官のインタビュー記事」を掲載したThe Economist紙に取材を行い、同紙の軍事コラムニストを務めるシャシャンク・ジョシ氏は興味深い視点を幾つも提供しており、2万文字を越える記事の主要ポイントを要約すると以下にようになる。
出典:ArmyInform/CC BY 4.0
これまで議論されてきた話題にザルジニー総司令官は一定の見解を示したが、社会にとっては冷や水を浴びせられた格好だ。貴方にとって「ウクライナ軍の問題を公の場で議論する」という司令官の決断はどの程度時勢を捉えたものだったのか?
“反攻作戦の問題点を公にするのは非常に難しい選択だったと思う。なぜなら本件は非常にデリケートなテーマなので彼が大統領から批判を浴びているのを目撃した。彼が指摘した内容の殆どは人々の期待を裏切る内容だったが、人々は反攻作戦が直面した困難さ、特に南部戦線での困難な状況を理解していない。恐らく『ロシア軍は予備戦力、弾薬、ミサイルが不足して多くの困難を抱えている』と考えていたため『何かセンセーショナルな突破口が目前に迫っている』と錯覚していたのだろう”
“最も重要な点は今後も消耗戦が長期に渡って継続し、この問題が短期的に解決される可能性がないと指摘している点だ”
出典:Photo by John Hamilton
昨年、ザルジニー総司令官は2023年の見通しをウクライナメディアを通じて発表したが、今年は西側メディアを通じて発表した。これは彼の主な関心がウクライナの支援国に向いている証拠ではないか?
“彼が重視している対象は複数存在し、その中に英国、米国、欧州諸国が含まれているのは間違いない。ザルジニー総司令官はウクライナが何を必要としているかを理解してもらいたいのだ。彼は我々のインタビューに答え、我々の記事とは別に4000文字に及ぶ寄稿文も書いてくれた。この中でウクライナが必要としている装備の種類について技術的な観点から詳細に言及した”
“彼は砲弾や防弾ベストなど基本的な装備が必要不可欠であると述べたが、電子戦、FPVドローン、地雷除去装置、対砲兵レーダー、敵の砲兵装備を探知する技術にも言及し、これらの装備はATACMS、F-16、レオパルトほど世間に注目をされない分野で、ザルジニー総司令官は『ウクライナが本当に必要としている支援は何なのか』について我々の認識を変えたかったのだろう。何故なら貴方やウクライナの指導者たちも私達と同じように新聞や雑誌に目を通しているからだ”
“ザルジニー総司令官は第1次大戦の将軍が直面した問題、つまり塹壕戦から機動戦に移行するための方法を提示したかったのだ。我々は彼の分析や結論について完全に同意しておらず、特に第1次大戦に関する描写については全く同意できないが、彼の深い知識と歴史を理解する能力については高く評価している”
出典:Сухопутні війська ЗС України
ザルジニー総司令官の言葉は西側諸国にどのような影響を与えたのか?
“現状について正直に話すことが重要だ。欧米の政治家達は「膠着状態」というワードの使用を避けていた。何故なら膠着状態と認めると「ウクライナの状況が絶望的」で「この消耗戦においてロシアが有利だ」という印象を世論に植え付けるリスクがあるからだ。戦争の膠着状態は「反攻作戦の失敗」を意味し、西側諸国はウクライナへの支援を撤回せざるを得なくなるかもしれない”
“サリバン補佐官は8月「この戦争は膠着状態ではない」と述べたものの9月や10月にはより悲観的な見方を示し、我々だけでなくウクライナ人アナリストも同様の見方をしていた。しかし「ウクライナ政府や軍が発表する見通しを支持する人々」から大いに批判され、彼らは我々のこと宿命論者、敗北主義、悲観主義と呼んでいたが間違っていたと思う”
出典:Office of Speaker Mike Johnson Public Domain
“どうすれば現状を打開できるかを理解するには現状を認めることが最も重要だ。私はウクライナに対して宿命論者であったことはなく、長い戦いの中で困難に直面しても最終的には勝利すると信じているし、国力の大きなロシアの長期戦に必ず勝利する保証もない”
“しかしウクライナを見捨てようとする政治家、特に米国の共和党は自分達の主張を押し広げるためザルジニー総司令官の発言を利用するリスクがある”
“楽観的な見方としては今回の評価に耳を傾けて何が間違っていたのかを反省するかもしれない。その場合は「反攻作戦が失敗した」と認めることから始めなければならず、2024年や2025年に想定される反攻作戦をどう戦うのか、これを欧米諸国はどう支援するのかをよく考えなければならない。そうでなければ今回の反攻作戦と同じ結果を繰り返すだけで「異なる可能性」は期待できないだろう”
出典:PHOTO BY Senior Airman Duncan Bevan
ザルジニー総司令官はロシアが損失を被ったにも関わらず制空権を維持していると言及した。仮に数個中隊分のF-16を受け取っても決定的な変化はないと述べたが、そのような敵とどう戦えばいいのか?
“ザルジニー総司令官は4000文字に及ぶ寄稿文中で制空権の重要性を説いたがF-16については一切触れなかった。このことはF-16の役割が非常に限定的になるだろうという見方を反映していると思う。多くの人々はF-16が戦況に大きな変化をもたらすと重視しすぎているのだ。勿論、AIM-120を搭載するF-16がロシア軍機を前線から遠ざけ「空からの脅威」を減らすことが出来るかもしれない。さらに他の任務でも役にたつかもしれないが制空権を確保することはないだろう。何故ならロシア軍の防空システムに直面するという事実に変わりがないからだ”
“ウクライナはF-16をフル活用するのに必要なAWACS、航空司令部、電子戦機、西側諸国並の支援能力がないため、F-16への期待値は引き下げるべきだろう。さらにザルジニー総司令官は今後の戦いについて「UAVのスウォーム能力」に焦点を当てている。ウクライナが砲弾の量と質で不利な立場にあるのなら他の技術的手段でカバーしなければならない。例えば安価な自爆型ドローンを大量生産すれば大砲の代わりにならなくても、ある程度の火力を再現できるようになるかもしれない”
出典:Генеральний штаб ЗСУ
“欧米諸国は砲弾の増産に取り組んでいるものの依然としてウクライナのニーズを満たせていない。ロシアの砲弾供給に追いつくのは早くても2025年頃なので来年は非常に厳しい年になるだろう。人々は「2025年には状況が改善する可能性がある」と理解する必要があり、そうでなければ来年の夏頃に「ウクライナが負ける」という見出しが紙面を飾ることになる”
“ウクライナの主な課題は「如何に効率よく戦って火力と質量を生み出すか」で第一に電子戦、第二に対砲兵レーダー、つまりロシア軍の砲兵の位置を特定して攻撃する能力が最も重要で、その次が地雷除去装置だが、ここで重要になるのが兵士の質だ。ウクライナには前線から兵士を引き抜いて必要な訓練を施すことが困難で、十分な数と能力を備えた予備戦力を用意することが難しい。ザルジニー総司令官も近代的な動員システムと訓練システムの必要性を訴えている”
“欧米諸国はウクライナ軍の訓練規模を拡大させなければならず、兵士の質は今年の反攻作戦でも見受けられた課題の1つだ。来年、ウクライナ軍がロシア軍に対抗できるようになるためには同分野に注目すべきだと考えている”
出典:Генеральний штаб ЗСУ
西側諸国でウクライナ軍の訓練を拡大させる機会はあるのか?
“欧米が取り組むなら訓練を拡大できない理由がない。もっと多くのウクライナ人を海外に連れ出し、もっと長期に渡って質の高い訓練を受けさせない理由がない。5週間程度の諸兵科連合訓練では信じられないほど複雑で密集した地雷原を突破するに十分ではないと証明されている。今必要なのは小銃を撃てる人間ではなく「より複雑な任務」を遂行できる人間で、旅団レベルの作戦を指揮して部隊を動かせる人間だ”
“現在のウクライナ軍で攻撃任務を遂行できる旅団はほんの一握りだ。殆どのウクライナ人兵士は攻撃任務に対応できていない。この問題は「大量のドローンと砲撃に晒された環境下で航空支援なしに十分保護された陣地を襲撃する」という能力が求められているためで、過去70年間、このような能力を西側諸国の兵士ですら要求されたことがない”
出典:Генеральний штаб ЗСУ
“第2の課題は部隊を前線から引き抜いて訓練に必要な時間を与えることだ。ドネツク方面で大規模なロシア軍の攻撃が続いていることからも分かるように、これは大きな挑戦になるだろう。ロシア軍の攻撃は失敗することもあれば効果がないこともある。莫大な損失を被って極めて自滅的なものになることさえあるが、それでもロシア軍は余裕を与えないようウクライナ軍部隊を前線に釘付けにすることできる”
“だからこそ我々は前線部隊に訓練を行う時間と空間を与える方法を見つけなければならない”
“来年のウクライナ軍は基本的に現在の領土を守るだけになると思う。ウクライナ軍の快進撃や活躍を見たい欧米人にとっては魅力的ではないかもしれないが、来年は直面する課題を解決方法を学び、次の攻勢を準備するため防御に集中する必要がある”
出典:Генеральний штаб ЗСУ
貴方は70年間誰もやったことがない仰ったが、反攻作戦が始まる前から西側のアナリストの中には「これほどの攻撃を航空支援なしで行うNATO加盟国はない」と指摘する者もいた。ウクライナの反攻作戦がどのような結果をもたらす分かっていたはずなのに、なぜパートナー達はこれほど批判的なのか?
“ウクライナを批判する理由のひとつは両者の間で責任のなすり合いが見られるからだと思う。しかし反攻作戦の失敗は双方に責任がある。ウクライナの戦術に対する批判の一部は正当なものだ。私が尊敬する専門家の発表した報告書、論文、記事を読めばウクライナ軍にもミスを含む過ちがあったことが分かるだろう。私は全ての証拠を持っておらず、現在進行系の戦争なので歴史家のようにじっくり推測するのも難しいが、私がアナリストから繰り返し聞いた不満の1つは「バフムートでの防戦が反攻作戦に大きな影響を及ぼした」というものだった”
“この問題に詳しいコンラッド・ムジカ氏は「バフムートの戦いでウクライナ軍は砲弾の備蓄を使い果たしたのに対し、ロシアはスロヴィキン・ラインを強化する時間を得ることができた」と指摘、さらにウクライナ軍は経験豊富な旅団を東部戦線に残し、経験の浅い旅団に最新装備を与えて南部戦線に移動させた。この選択が異なっていれば南部での反攻作戦はもう少し違った様相になっていたかもしれないが突破が約束されていたとは断言できない。成功を保証するとも言っていない。この結果は誰にも予想できない。しかしこのような過ちに対する非難は当然だろう”
出典:Telegram経由
“その後、ウクライナ軍や政府高官達は幾つかの問題について西側諸国を非難し始めたが、この中にはウクライナ側の過ちを隠す目的の不当な非難が含まれている。しかし中には非常に合理的で公平な非難も含まれている”
“例えば、今回の攻撃計画は時代遅れの仮定や数値に基づいていたと言っても過言ではない。パートナーがウクライナ軍に教え込もうとした戦術データの多くは20世紀の作戦分析に基づいており、ウクライナで行使されている現代技術を反映していない。この事についてはザルジニー総司令官も言及していると思う。彼はこれについて技術の問題だと表現し、我々の教本、シミュレーション、ウォーゲームではカバーされていない問題だ”
出典:53 окрема механізована бригада імені князя Володимира Мономаха
反攻作戦は防衛ラインを突破するはずだった機械化部隊の戦術が機能しないことを示している。多くの地域で小規模部隊による突撃戦術に切り替わりつつあるが、この急速な突破をもたらしていない。ドローンによる認識力の拡張が戦場を丸裸にしてしまった。この戦争で戦車の役割は失われてしまったのだろうか?
“この戦争において装甲車輌を集中運用する部隊の役割は限定されているし、私もそれを否定するつもりはない。但し戦車が時代遅れの兵器に成り下がったとは考えていない。戦車の有効性はドローンの目を如何に誤魔化すか、砲兵部隊の攻撃を如何に避けるかに掛かっており、これは敵センサーの妨害能力、ドローンを制圧する電子戦能力、敵砲兵の事前制圧などで対処でき、この種の問題は1916年に欧州が直面した課題、1973年にイスラエル軍が直面した課題と同じで、新しい技術によって生じるお馴染みの問題なのだ”
“もし上記の問題内、幾つかだけでも解決できれば戦場で戦車が活躍するためのスペースが確保できるだろう。戦争において永続的なものは何もない。技術は戦場を形作るかもしれないが戦場を定義するものではない。この点において第1次大戦が技術のせいで行き詰まったと考えるザルジニー総司令官と私の意見は合わない。1916年から1917年にかけて戦車が登場したが戦場を突破することは出来なかった。これは戦車が間違った手段だったのではなく、適切な戦術と諸兵科連合軍が存在していなかったからだ”
“1940年にフランスでドイツ軍が電撃作戦を成功させたのは航空機、装甲車輌、無線通信など、様々な技術が適切な戦術に統合されたからで、技術の進歩だけで戦車の活躍が成立したのではない。信じられないほどリスクが高い開けた地域で戦車が機動できるスペースを作り出すためには長い時間が必要になるかもしれない”
出典:Telegram経由
ウクライナ南部で見られる地雷原は攻撃側にとって大きな脅威だ。ウクライナもパートナーも地雷除去装置が不足していることが判明した。これほど大規模な地雷原を想定していなかったのか?
“とても良い質問だ。ロシア軍のドクトリンは塹壕を掘って地雷を敷設することなので6月時点で非常に密集した大規模な地雷原があると分かっていた。地雷の目的は単に敵車輌を破壊するのではなく、敵軍の進軍スピードを鈍らせて他の攻撃手段の標的にすることだ。西側諸国は地雷処理について多くの経験を有していたものの「敵の砲弾が降り注ぐ中」で地雷処理を行った経験がなく、これが決定的な問題になった”
“この問題は地雷処理装備を増やしただけで解決しない。この問題でもザルジニー総司令官の指摘は非常に合理的で正しい。我々は新しい地雷処理技術、特に「敵の砲弾が降り注ぐ中」で役立つ遠隔操作が可能なロボット技術に焦点を当てるべきだが、仮に100台のロボットを地雷処理に向かわせてもロシア軍に破壊されるだけだろう”
“つまり地雷を処理をするにはロシア軍のドローンや大砲を制圧する能力と組み合わさなければ意味がなく、前線で機械化部隊を運用するための技術的課題を解決しない限り、地雷の問題も解決できないことになる”
以上がシャシャンク・ジョシ氏が披露した主張の主要ポイントで、ATACMS、F-16、レオパルトが膠着した戦場状況を打開するのではなく、敵の認識力拡張を阻害して「戦場で装甲車輌が機動できるスペースを作り出す技術」が戦争の行方を左右するのかもしれない。
関連記事:ザルジニー総司令官が反攻作戦の評価に言及、私が間違っていた
関連記事:ザルジニーとは対称的なゼレンスキー、来年に向けた具体的な計画があると主張
関連記事:米メディア、ゼレンスキー大統領とザルジニー総司令官の発言は対称的だ
関連記事:ゼレンスキー大統領と軍の不協和音、ザルジニー総司令官に知らせず司令官交代
※アイキャッチ画像の出典:Ministry of Defence of Ukraine
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投稿者: 航空万能論GF管理人 ウクライナ戦況 コメント: 41 』
イスラエル・キプロス・エジプトを中心とする東地中海の天然ガス事情 ―Leviathanガス田生産開始―
2020/04/20 川田 眞子
https://oilgas-info.jogmec.go.jp/info_reports/1008604/1008736.html


















『2020/04/20
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※Copyright (C) Japan Organization for Metals and Energy Security All Rights Reserved.
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概要
これまで東地中海ではエジプトがガスを生産、輸出もしていたが、2009年以降、イスラエルとキプロスでガス埋蔵量が続々と発見され、新たなガス輸出国として台頭する構えを見せている。2020年1月にはイスラエル・Leviathanガス田から隣国のエジプトとヨルダンへの輸出が始まった。
2009年以降に東地中海で発見されたガス埋蔵量には大規模のものが多い。エジプトのZohrガス田(確認埋蔵量30tcf)、イスラエルのLeviathanガス田(確認埋蔵量22tcf)に代表される。キプロスではEni, Total, ExxonMobileといったメジャー企業が探鉱中。これまでのところ、良好な探鉱結果が得られており、今後も大規模ガス埋蔵量が発見されるポテンシャルを秘めている。
東地中海で探鉱・開発が進む中、ガスの輸出方法の検討も進んでいる。イスラエルのガス田は、既存のパイプラインに繋ぎこみ、そのまま輸出する方法、エジプトのLNG液化基地までパイプラインで運ぶ方法が考えられている。他方、キプロスにはパイプラインやLNG液化基地のようなインフラがないため、これを新しく構築する必要がある。これまでは、欧州政府がキプロスのガスに強い関心を示しており、新たに「東地中海パイプライン」を建設して欧州に輸出する方法が検討されてきた。一方で、世界の石油・ガス市場、欧州のガス市場は過去5年で構造的に大きく変化しており、東地中海パイプラインのニーズは低下している。従って、東地中海の事業者には、激しい競争にさらされている欧州ガス市場にいかに食い込むか、あるいは欧州に依存しない開発プランをいかに描けるかが大きな課題となっている。
そもそも、東地中海地域は、資源ポテンシャルの高さが証明されたものの、歴史的・文化的に複雑な地域であるため、各国間の利害の調整は容易ではなく、開発・生産は一筋縄ではいかないことが予想される。具体的には、Leviathanガス田のガス輸出については、エジプトでのパイプラインの爆破、ヨルダンでの市民・議会の抗議なども生じており行き先が不透明となるリスクを孕んでいる。加えて、EEZ問題、キプロス問題といった長年解決されていない課題の壁が立ちふさがる。歴史的・文化的・政治的な問題は、事業者だけで解決できる問題ではないため、ガスプロジェクトの最大かつ最難関のリスクと言える。
はじめに
東地中海とは、ギリシャ・トルコ・キプロス・イスラエル・エジプト等の国々に囲まれた地域である。この地域では、2009年から大規模なガスの埋蔵量が続々と発見されている。ガス田の位置を確認すると、エジプト・Zohrガス田、イスラエル・Leviathanガス田、キプロス・Aphroditeガス田(開発中)が位置する図1の中心付近に、ディスカバリーが集中している。これらのガス田の北西のトレンド上には、キプロスのディスカバリーであるCalypso構造、Glaucus構造が位置している。
また、東地中海の新規ガス田は、エジプト・Zohrガス田(確認埋蔵量30tcf)、イスラエル・Leviathanガス田(確認埋蔵量22tcf)に代表されるように、規模が大きいことも特徴である。
図1:東地中海地域における主要ガス田と既存パイプライン
図1:東地中海地域における主要ガス田と既存パイプライン(JOGMEC作成)
一方で、この地域には歴史的な対立があり、それを背景として排他的経済水域(EEZ)をめぐる対立が速やかな開発の妨げとなっている(図1参照)。加えて、ガス価格の下落にガス開発事業者は悩まされており、この地域での開発がどの程度進展するのか懐疑的な意見もある。
このレポートでは、東地中海地域の中でも、イスラエル・キプロス・エジプトにおけるガス市場の変遷と昨今の上流開発状況を整理して、今後の東地中海におけるガス田開発の行方を考察してみたい。
1. 東地中海における天然ガス市場・上流ガス開発概要
東地中海地域では、これまでエジプトがガス輸出国としての地を確立してきた。2004年からガスパイプラインでイスラエル・ヨルダン等にガスを輸出し、2005年からはLNGの輸出も行っていた。
はじめに、主要ガスインフラである2つのパイプラインを見ていく(図2参照)。1つ目はアラブガスパイプライン(Arab Gas Pipeline, AGP)、2つ目は東地中海ガスパイプライン(East-Mediterranean Gas Pipeline, EMG Pipeline)[1]である。これらの2つのパイプラインは、エジプトのガスをイスラエル・ヨルダン・レバノン・シリアへと運んでいた。
[1] 「東地中海ガスパイプライン」は、本来はエジプトとイスラエルを結ぶパイプラインの名称であった。東地中海と欧州を結ぶ東地中海パイプラインとの名称の混同を避けるため、エジプトとイスラエルを結ぶパイプラインは「EMGパイプライン」と表記する。
図2:主要ガスプロジェクトと既存インフラ(パイプライン・LNG液化基地)
図2:主要ガスプロジェクトと既存インフラ(パイプライン・LNG液化基地)(JOGMEC作成)
しかし2010年以降、状況は変化する(図3参照)。エジプトでは生産量が減少しはじめ、一方で国内需要が増加し、輸出用のガス不足に陥った。その後、2つのパイプラインによるガス輸出は停止した。
エジプトの生産減退を受けて、ガス輸入国であるヨルダンはアカバ湾に、イスラエルは東地中海イスラエル沖にLNG輸入ターミナルを新たに建設した。これによりヨルダンは、2018年には3.4bcmのLNGを、イスラエルは0.8bcmのLNGを輸入した。イスラエルが輸入した0.8bcmのLNGのうち0.6bcmはエジプトから輸入した。EMGパイプラインではなくLNGによる供給であった理由として、供給ガスの不足に加えて同パイプラインに爆破テロが行われたことも挙げられる。
このように、わずか9年間の間に、ガスの純輸出国であったエジプトは純輸入国に転じた。2015~2018年には年間3~9.5bcmのLNGをスエズ湾で輸入している。なお、2019年はZohrガス田の増産を受けてエジプトはLNGの輸入を停止した。エジプトのガス生産量推移については後述する。
図3:東地中海地域におけるガスの輸出入フロー(2009年~2018年)
図3:東地中海地域におけるガスの輸出入フロー(2009年~2018年)(BP統計、GILGIL等を基にJOGMEC作成)
一方で2009年以降、イスラエルやキプロスの沖でガス埋蔵量の発見が相続き、周辺国にガスを輸出する大きなポテンシャルを有する国として頭角を現した。そして今年に入ってからはイスラエル・Leviathanガス田から隣国エジプト・ヨルダンへの輸出が開始された(図4の2020年参照)。Leviathanガス田からの輸出開始により地域内でのガスの流れが大きく変わるきっかけとなった。加えて、イスラエルでは、すでに2013年から生産を始めているTamarガス田の他に、Taninガス田、Karishガス田も発見されており、今後の開発が期待される。
キプロスには、探鉱・開発中のガス案件が複数控えている。キプロスもガス輸出国の仲間入りを目指し、キプロス沖南方のAphroditeガス田は2025年に生産開始を目指している。各ガス案件の詳細は次章で後述するが、既存ガス田と新しく開発されるガス田はお互い近くに位置している。この地理的条件を生かして、ガス田をまとめて開発・輸出する方法が検討されている(図4の20XX年参照)。将来、エジプト・イスラエル・キプロスの3カ国が大きなガスサプライヤーとなる可能性があり、期待を集めている。
図4:東地中海地域におけるガスの輸出入フロー見通し(2020年~)
図4:東地中海地域におけるガスの輸出入フロー見通し(2020年~)(各種資料を基にJOGMEC作成)
2. 東地中海地域における主要ガスプロジェクト
2.1 エジプト
エジプトは、東地中海地域における産ガス国であるが2010年頃に生産が減退し、危機を迎えた。
図5:エジプトにおける天然ガス生産量・消費量の推移と見通し
図5:エジプトにおける天然ガス生産量・消費量の推移と見通し(各種資料を基にJOGMEC作成)
しかし2012年の入札を経て Eniがエジプト東地中海沖フロンティア地域の探鉱に参入し、そして2015年、Eniが東地中海でZohrガス田を発見した。
図6:Zohrガス田位置
図6:Zohrガス田位置(Eniより引用)
その場所は、エジプトの既存ガス田のある沖合近くのエリアから北に離れており、キプロスとのEEZ境界近く、ポートサイド沖190kmに位置している(図6参照)。オペレーターEniによる開発作業は通常のガス田開発よりも極めて迅速で、2017年12月には早くも生産を開始した。入札からわずか5年後のことである。迅速な開発の背景には、3Dモデル等の最新の技術を駆使し、全体の設計の完成を待たずに出来るところから作業を進める「ファストトラック手法」の導入があった。これによりエジプトのガス生産量はV字回復を遂げる(図5参照)。
他方、エジプト国内のガス消費量は2013年から2015年にかけてアラブの春に起因する経済低迷により一時的に停滞したが、基本的には上昇基調にある。したがって、Zohrガス田の生産量があるとはいえ、消費量が増加すれば、輸出の余力は先細る。現在のエジプトのガス輸出の見通しについて、オックスフォードエネルギー研究所は、これまでに発見された自国のガス田でガスの自給を維持できるのは2023年までと悲観的で、自国のガス田に頼る限り、エジプトには数年分程度の輸出余力しかないと見ている。
2020年4月、悲観的観測に拍車をかける出来事が起こる。エジプトは唯一稼働中のLNG液化基地であるELNGからの輸出停止を明らかにした。国営石油会社EGPCと国営ガス会社EGASは、国内でのコロナウイルスの感染拡大を理由としているが、ガス価格の低迷による経済性の問題が原因とする見方も出ている。
2.2 イスラエル
イスラエルでは、2009年のTamarガス田の発見を皮切りに、キプロスとのEEZ境界に近いエリアで天然ガスの発見が相次いだ。2013年のTamarガス田、2019年末のLeviathanガス田の生産開始は、イスラエルのガス供給を一気に押し上げた(図7参照)。特に、Leviathanガス田生産開始のインパクトは大きく、生産が順調に進むと5bcm/yほどの輸出余力が生まれる見通しだ。
図7:イスラエルにおける天然ガス生産量・消費量の推移と見通し
図7:イスラエルにおける天然ガス生産量・消費量の推移と見通し(各種資料を基にJOGMEC作成)
具体的なガスプロジェクトを見ていく。2010年に発見されたLeviathanガス田は、22tcfの可採埋蔵量を誇るイスラエル史上最大のディスカバリーとなった。2020年1月には、Leviathanガス田は、イスラエル国内だけでなく、エジプトやヨルダンにもガスの供給を開始した。イスラエルのシュタイニッツエネルギー大臣は、イスラエルとエジプトが1979年に和平協定を結んで以来最大の経済プロジェクトだと述べた。
イスラエルにおける資源開発には、アラブ諸国での探鉱・開発に注力しているメジャー企業は一切参加していない。代わりに、イスラエルの現地企業に加え、米国のNoble Energyや英国のEnergean Oil & Gasといった独立系企業がオペレーターを務めている。
図8:イスラエルの主要天然ガスプロジェクト
図8:イスラエルの主要天然ガスプロジェクト(JOGMEC作成)
輸出について、Tamarガス田とLeviathanガス田は、既存のアラブガスパイプラインやEMGパイプラインに接続され、エジプトとヨルダンへガスを輸出している。今後、これらのガス田に続き、新たなガス田や既存ガス田の周辺開発が立て続けに計画されている。
しかし、イスラエルのガス生産・輸出が順調に進むのか疑問の声もある。まず、Leviathanのガスのエジプトとヨルダンへの輸出の雲行きが怪しくなっている。Leviathanガス田は、ガスの購入契約を結んだエジプトのガス供給会社Dolphinusとヨルダンの国営電力会社NEPCOに向けて、ひとまず2020年1月にガス供給を開始した(図9参照)。
図9:Leviathanガス田からのガス輸出
図9:Leviathanガス田からのガス輸出(JOGMEC作成)
Leviathanのガスがエジプトに到着すると、エジプト・イスラエル両国の政府からは供給開始を歓迎するコメントが相次いだ。しかし、歓迎ムードも束の間、2月、エジプトとイスラエルを結ぶEMGパイプラインが武装勢力によって爆破されたとの報道があった。パイプラインの操業には影響はないとの見方が多いが、アルジャジーラ紙には、この攻撃を「背教国家エジプトとユダヤ人国家イスラエルに対する攻撃」とするイスラム国系武装勢力による犯行声明が掲載された。政府間では協力ができているとはいえ、エジプトとイスラエルの接近を快く思わない集団がいることも改めて明るみになった。
次いでヨルダンでは、イスラエル産ガスの輸入が開始したことを受けて、ヨルダン市民が抗議し、ヨルダン議会がイスラエルからのガス輸入を禁止する法案を承認したと報道があった。NEPCOのLeviathanからのガス供給契約は15年、合計45bcmと言われているが、ヨルダン全体のガス需要は年間約3~4bcmであり、Leviathanのガスがヨルダンの需要の大半をカバーしてしまう計算になる。なお、NEPCOの契約は、2016年に合意されたもので、ヨルダン政府は当時、政治とビジネスは別物であるとして契約を支持する立場を明らかにしていた。今後の動きが注目される。
2.3 キプロス
キプロスでは、現在開発中のプロジェクトはないものの、Eni、Total、ExxonMobilといったメジャー企業も参加して精力的に探鉱を行い、ディスカバリーが続いている。キプロスは人口120万人の島で、国内の需要が少なく、輸出の余力があることが強みであるが、他方、石油・天然ガスの生産に必要なインフラがないことが弱みである。
図10:キプロスの主なプロジェクトの位置と詳細
図10:キプロスの主なプロジェクトの位置と詳細(JOGMEC作成)
はじめに、キプロスのプロジェクトの中で最もステージが進んでいるAphroditeは、現在、生産準備中で2025年の生産開始を目指している。エジプトのELNG(Iduk)液化基地までパイプラインを建設して、LNGを販売する計画である。これは先に述べたエジプトのLNG生産余力既存インフラを使用できるという観点からは非常に有利に思われる。しかしこのプロジェクトにも懸念点がある。地図を見るとわかるように、AphroditeのフィールドはイスラエルとのEEZ境界付近に横たわっており、イスラエルはAphroditeがイスラエル側のEEZ内にも広がっているのではないか、と主張しており、生産・開発にあたってはイスラエル政府への相談なしで進めないように要求している、との報道があった。Aphroditeのオペレーターは、Leviathanでもオペレーターを務めるNoble Energyであるので、通常の国家間の鉱区境界問題よりは解決が比較的容易なように思われるが、引き続き注視したい。
次に、CalypsoとGlaucusの両構造については、それぞれ2020年に追加探鉱キャンペーンが予定されており、エジプトZohrやイスラエルLeviathanに続く大型ディスカバリーとなることを期待されている。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大や油価下落により、ExxonMobilは今年予定されていた掘削を来年に延期することを発表した。他方、近隣で探鉱を行うEniとTotalは今のところ声明を出していない。現在レバノンのTotalの鉱区の掘削船が4月中に作業を終え、その後キプロス沖に移動する計画になっているが、予定通りに行われるか注目される。
図11:キプロス周辺のEEZ問題
図11:キプロス周辺のEEZ問題(JOGMEC作成)
キプロスにおけるガス田開発の最大の課題は歴史的な問題である。ここでキプロスの歴史について簡単に振り返る。1960年に英国からキプロス共和国として独立して以降、南部のギリシャ系住民と北部のトルコ系住民との間で対立が続いており、1974年に南北分裂、1983年に北部が「北キプロス・トルコ共和国」として独立を宣言した。北キプロスはトルコのみが国家承認しており、日本は他国と同様、北キプロスを認めていない。
対立は南北対立に留まらず、キプロス共和国とトルコの対立にも及んでいる。キプロス共和国とトルコ及び北キプロスは、EEZについて主張が対立している。キプロス沖でのガス開発が進む中、これに対抗するように、トルコの国営石油会社TPAOが、キプロス共和国とトルコまたは北キプロスの主張が重複するエリアで探査を行っており、キプロスにおけるガス開発の不透明感を高めている(図11・12参照)。
2020年4月、先述のとおりExxonMobilが今年予定していたキプロス沖の探鉱を延期したが、トルコは今後も探鉱を継続すると発表した。トルコはEEZの主張の対立する鉱区(キプロスの鉱区Block7・Block8)においても探査活動を活発化させており、IOCのキプロス沖の探鉱が低迷する中で、トルコによる探査の行方に注目が集まる。
図12:キプロスと周辺国における重要年表
図12:キプロスと周辺国における重要年表(JOGMEC作成)
現在もキプロスには国連平和維持軍(PKO)がおり、国連の仲介で和平交渉が継続している。2019年、国連事務総長の仲介で対談があった際は、北キプロスはガスの南北共同統治を提案したが、キプロス共和国は和平交渉が先だと提案に応じなかった。
この南北共同統治の提案の背景には、キプロス沖のガスのディスカバリーが南部に集中しており、トルコの主張するEEZ(図11:キプロス島西側のピンク部分)とも、北キプロスが主張するEEZ(図11:キプロス島東側のオレンジ部分)とも、異なるエリアに存在していることが関係しているかもしれない。北キプロスはこれらのガス資源に対して権利を主張できないため、ガスの南北共同統治を提案したものと考えられる。
3. ガス開発構想の概要と課題
東地中海のガスを輸出する方法として、東地中海パイプライン構想とエジプトの既存LNG液化基地を活用した「エネルギーハブ」構想の主に2つの案が検討されている。
(1) 東地中海パイプライン構想
図13は、2017年に欧州委員会が発表したレポートに掲載された地図である。東地中海パイプラインは、LeviathanやAphroditeなどのガス田から、ギリシャ、イタリアまでパイプラインで繋いで、欧州にガスを輸出するためのパイプライン構想である。欧州委員会は、2014年のクリミア危機以降、ロシア産ガスへの依存度低減のため、様々なガスの輸入方法を検討していた。
図13:東地中海パイプラインの地図と概要
図13:東地中海パイプラインの地図と概要(地図:欧州委員会資料に加筆、表:JOGMEC作成)
そして、Leviathanガス田が生産開始を迎えた直後の2020年1月、ギリシャ・キプロス・イスラエルの大統領・首相が会談し、東地中海パイプラインについて2022年までにFID、2025年までに完成することに合意したと報道があった。他にもこの会談の場で、トルコのリビア派兵を非難する声明[2]が発表され、3カ国の団結が示された。
また、2020年2月には、欧州委員会が発表したPCI(Projects of Common Interest)リスト[3]に東地中海パイプラインの名前があった。引き続き、欧州委員会は東地中海パイプライン構想を支援する構えのようである。
[2] トルコがリビアに派兵する見返りとして、リビアはトルコとの間のEEZ境界を確定して、トルコによる東地中海パイプライン建設の妨害を助けたと見る報道もある。時期については図12参照。
[3] Projects of Common Interestとは、EUにとって重要度の高いエネルギーインフラプロジェクトを指す。PCIリストに掲載されたプロジェクトは、EUの公的資金を受ける資格がある。
(2) エジプトのエネルギーハブ化構想
エジプトのシシ大統領は、Zohrガス田が発見されて間もない頃から、「エネルギーハブ構想」を提言していた。エジプトは、LNG液化基地やパイプライン等のインフラが整っていることと、それらのインフラがイスラエルやキプロス等のガスフィールドからも比較的近いことを活かして、この地域のエネルギーハブとなるという目標を掲げた。
このコンセプトに基づき、2019年1月、東地中海ガスフォーラム(EMGF)が発足した。参加国はエジプト、イスラエル、イタリア、キプロス、ギリシャ、ヨルダン、パレスチナの7か国で、オブザーバーとしてEUと米国が参加している。
エジプトのエネルギーハブ化は、輸出インフラはあるが、輸出用のガスが不足するエジプトと、輸出用のガスはあるが輸出インフラがないイスラエル・キプロスが手を組み、東地中海地域が一丸となってガスを輸出する。この案は現実的な構想だと見られていた。
図14:エネルギーハブ構想を巡るエジプト・イスラエル・キプロスの状況
図14:エネルギーハブ構想を巡るエジプト・イスラエル・キプロスの状況(JOGMEC作成)
しかし、2020年4月、先に述べた通り、ガス価格の低下を受けてエジプトで唯一稼動していたLNG液化基地(ELNG)が停止した。2020年6月には、2012年から稼動停止していたSEGAS LNG液化基地が再開予定であったが延期となった。
LNG液化基地の停止を巡っては、エジプト政府と事業者との間で意見の隔たりが見られる。世界中の産ガス国・事業者がガス価格の低迷に苦しむ中、国内需要・将来の国内需要・輸出のバランスを取りたいエジプト政府と、ガス価低迷の下、有利な条件でLNGの供給契約を締結することが容易ではないガスの売り手企業の間で足並みを揃えるのは難しそうである。
(3) 東地中海ガス開発における2つの課題
東地中海地域は、2009年以降、確認埋蔵量20~30tcfの大ガス田を含むガスディスカバリーが相次ぎ、資源ポテンシャルは高いものの、ガス市場と歴史的・地政学的対立の2つの壁に直面している。
一つ目は、売り手には不利なガス市況である。世界のガス市場は供給過剰気味でガス価格の低迷が続いており、この傾向は継続するという見方も少なくない。欧州という地域に限定すると、ガス市場は需要のだぶつき、ロシアやアゼルバイジャンからの新規パイプラインや米国からのLNG輸入の増加により、更なる新規ガスパイプラインへのニーズは低下していると言えるだろう。また、欧州は世界で最も透明性が高く、競争が可能なガス市場であるため、価格面においても競争が激しい。よって、東地中海のガスを欧州向けに販売するのはハードルが高いように思われる。
二つ目は、ガス開発を一層進めるにあたって阻害要因となっている歴史的・文化的な対立を解決するという課題である。具体的には、Leviathanガス田のガス輸出については、エジプトでのパイプラインの爆破、ヨルダンでの市民・議会の抗議などですでに輸出の先行きに不透明感が漂っている。加えて、EEZ問題、キプロス問題といった長年解決されていない課題が立ちふさがり、キプロス沖の開発や東地中海パイプラインの建設についてトルコとの対立が避けられない。歴史的・地政学的な問題は事業者だけで解決できる問題ではないため、この地域のガスプロジェクトにおける最大かつ最難関のリスクと言えるであろう。
課題も山積してはいるが、ガス資源の埋蔵量は十分な量が存在し、また今後の上積みも期待できるポテンシャルがあると期待される。引き続き動向を注視していきたい。
以上
(この報告は2020年4月20日時点のものです)
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シェブロン、イスラエル沖ガス田の生産再開
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN13CR60T11C23A1000000/
『【ヒューストン=花房良祐】石油メジャーの米シェブロンは13日、イスラエル沖の海底ガス田「タマル」の生産を再開したと公表した。ロイター通信によると、数日以内にフル稼働に達する見通しだ。
シェブロンは9日にイスラエル政府から生産再開の指示を受けたという。タマルは10月上旬、イスラエルとパレスチナ自治区ガザを実効支配する過激派ハマスの戦闘が発生したことで稼働を停止していた。
イスラエルは天然ガスをエジプト・ヨルダンに輸出しているうえ、エジプトはガスを液化天然ガス(LNG)に加工して欧州に出荷しており、タマルの稼働を巡り地域のエネルギー供給に懸念が生じていた。
【関連記事】イスラエルの天然ガス生産停止、エネルギー供給体制に影 』
三菱自動車が正念場…中国撤退、主力市場は守れるか
https://newswitch.jp/p/39011

※ 今日は、こんな所で…。
※ 「世界最大の自動車市場」で、これじゃあな…。
『 2023年10月26日
クルマ・鉄道・航空
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三菱自動車が正念場…中国撤退、主力市場は守れるか
東南アジア中心に拡販するピックアップトラック「トライトン」
三菱自動車は世界最大の自動車市場である中国での車両生産と販売から撤退する。現地で進む電動車シフトや現地メーカーとの競争激化により販売不振が続き、3月から広州汽車集団との合弁会社の工場を停止していた。合弁を解消し、在庫がなくなり次第、販売を終了する。今後は主力の東南アジア諸国連合(ASEAN)市場に注力するが、同市場にも中国メーカーが進出している。三菱自は主力市場を守り抜くための正念場を迎えている。
合弁会社「広汽三菱汽車」の出資比率は広州汽車50%、三菱自30%、三菱商事20%。三菱自と三菱商事が株式持ち分を広州汽車に譲渡する。合弁解消時期は未定。生産機能は広州汽車が電気自動車(EV)「Aion」の生産に充てる。
三菱自は合弁解消により、2024年3月期連結決算に特別損失243億円を計上する。業績予想には織り込み済みのため、変更しない。広汽三菱傘下の販売会社に、三菱自が30%、三菱商事が20%を出資し、販売済みの車のアフターサービスを継続する。三菱自は中国の別の合弁会社でのエンジン生産は継続する。
広汽三菱の工場はガソリン車を中心に生産していた。三菱自は22年11月にスポーツ多目的車(SUV)の新型「アウトランダー」のハイブリッド車(HV)も投入したが、販売は振るわず、撤退に向けて広州汽車と交渉していた。
三菱自は新型1トンピックアップトラック「トライトン」や新型SUV「エクスフォース」を投入するなど、世界販売台数の3割を占める東南アジアに今後一層注力する方針。ただ、タイやインドネシアなどではEV普及策により、中国製EVが販売を増やしている。
三菱自の加藤隆雄社長も7月に「(中国で)余剰になったEVが他国に流れることにどう対応するかなど、状況を見て判断したい」と述べ、東南アジアでも中国車との競争に対応する必要性を示唆していた。主力市場を守るため、どのような戦略を取るのかが焦点となる。
【関連記事】 トヨタの世界戦略を支える強力な「日独連合企業」
日刊工業新聞 2023年10月25日 』
中国で邦人拘束の事案相次ぐ “早期帰国 働きかけ” 官房長官 | NHK
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231113/k10014256321000.html
※ 日中友好もへったくれも無いな…。
※ 三菱自動車も、「撤退」したし…。
※ 「三十六計逃げるに如かず」なんじゃないのか…。
『2023年11月13日 14時03分
中国で日本人が拘束される事案が相次いでいることについて、松野官房長官は中国側に対し、さまざまなレベルで早期帰国の実現や司法プロセスでの透明性の確保を働きかけていく考えを示しました。
中国では反スパイ法が施行された翌年の2015年以降、日本人がスパイ行為に関わったなどとして、少なくとも17人が当局に拘束され、10月には、大手製薬会社の日本人駐在員が詳しい説明もないまま半年以上拘束されたあと、逮捕されています。
こうした状況について、松野官房長官は午前の記者会見で「中国には、さまざまなレベルや機会を通じて早期帰国の実現や、司法プロセスにおける透明性の確保などを働きかけてきている。今後も働きかけを継続していく」と強調しました。
一方、4年前に中国でスパイ行為に関わったとして拘束された50代の日本人男性に懲役12年の実刑判決が確定したことについて「今後も邦人保護の観点からできるかぎりの支援を行っていく」と述べました。』
内向く「地域大国」:経済成長第一のインドネシアの外交戦略
https://www.nippon.com/ja/in-depth/a09402/
『2023.11.13
相澤 伸広 【Profile】
東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国の中でも、事実上の盟主と目される大国インドネシア。しかし、2023年の議長国として期待を受けながら、地域が抱える政治的な「難題の解決」に地域大国としてリーダーシップを示す姿勢はみられなかった。
議長国インドネシアへの高い期待
2023年はインドネシアがASEAN(東南アジア諸国連合)議長国としてその存在感を発揮し、国際的にその信用を低下させつつあるASEANへの期待を回復させる絶好の機会であった。前年の22年にインドネシアはG20議長国として、ウクライナ戦争をめぐる意見対立や米中対立などからG20の枠組みが機能不全になることが危惧される中、米中両首脳の出席そして共同声明の発表を実現する外交手腕を発揮した。こうした成果からインドネシアは地域大国として一定の評価を得たことで、ASEANが抱える難題の解決に地域内外からの期待を受けていた。
具体的には、クーデター後のミャンマー問題や、南シナ海における「行動規範(COC)」の締結についてである。こうした加盟国間を分断するような政治課題について、ASEANを分断することなく解決の糸口を見出せるとすれば、過去の歴史に照らしても、それは事実上の盟主たるインドネシアが議長国を務める23年こそが最大のチャンスであった。ところが、ジョコ大統領はこれら地域の政治課題を自らの議長国期に解決すべき課題としてその政治資源を投入することはなかった。
議長国として設定したASEAN首脳会議のテーマは「ASEAN Matters:Epicentrum of Growth(ASEANは重要:成長の中心)」であった。この選択は、22年の外交的成果で得たインドネシアのブランドを維持するためにも、期待値と目標値をコントロールし、最終的な成功を演出するリスクマネージメントの帰結であった。23年のASEANサミットの一連の会議では、首脳会議以上にGala Dinnerの演出が強調されたのもまた、成功演出重視の外交政策ゆえであった。
「リスク回避」に徹したジョコ外交
インドネシア外交に高い期待値を抱いた立場から評価すれば、インドネシアは議長国でありながらASEANが抱える政治的なイシューから「逃げた」と言えよう。10年に一度の機会にもかかわらず、難題解決に向き合うことを避けたことは、インドネシアがいよいよ自他ともに認める地域大国としての国際的地歩を重ねるきっかけとなるはずであったがゆえに、逸失機会の大きさを指摘せざるを得ない。
もっとも、テーマ設定を好意的に解釈すれば、そもそも解決できない政治課題に焦点が当たることで、かえってASEANが持つ国際的信⽤が失墜するリスクを最小化することに努めた極めて懸命な外交的判断ともいえる。「ASEAN Doesnʼt Matter」というレッテルが貼られないよう、そして政治課題が経済成長の枷にならないよう、議長国の面子を保つという目的に照らせば、満点の解であろう。
ただ、米中の対東南アジア政策が、ASEANの中心性を放棄し、二国間、ミニラテラリズム重視にと振れている中で、最終的にASEANという枠組みの合理性を担保できるのはASEAN加盟国しかなく、グローバルガバナンスが機能不全に陥り、地域紛争のエスカレーションを止める手段を失った現下の国際情勢にあって、地域の平和、安定を保つためにASEANという地域枠組みはますますその戦略的な重要性が高まる。
2023年インドネシアに求められたのは、そのための盟主としての、多様な地政学的利益をもつ東南アジア各国のASEANへの政治的な信頼醸成へのコミットメントをけん引することである。それは21年ミャンマーのクーデター後、当時の議長国ブルネイに代わり、ジョコ大統領が地域の盟主として強いイニシアティヴを発揮し、ミン・アウン・フライン国軍司令官をジャカルタに呼び寄せたような姿であった。
ではなぜ、そのような政治的なイニシアティヴをインドネシアはとらなかったのか、その答えを知るためには、われわれが米国や中国の外交政策を分析するのと同様に、多様な国内アクターの利益調整の場となる国内政治の重要性にその原因を求める必要があると考える。
国内経済の損得が最優先
インドネシアのジョコ政権は、その政権の正当性、そしてレガシー作りのために経済成長にとりわけ注力してきた。なかでも、2017年に策定した国家成長戦略であるVisi Indonesia Emas 2045(2045年黄金のインドネシア・ヴィジョン)では、年率5−6%の経済成長を遂げ、45年には、人口3億強、一人当たりGDPが2万9000ドルで世界第4位の経済大国となり、中間層の罠を抜け出し高所得国の仲間入りを果たすという目標を掲げ、政策的な動員を進めてきた。
とりわけインフラの整備と人材育成には政治的資源を集中的に投入し、外交戦略はこの国内長期戦略を実現するために位置付けられてきたといっても過言ではない。具体的にはとりわけインフラ開発、産業高度化、輸出拡大のため、海外直接投資誘致や海外市場でのIPO(株式新規上場)成功に外交戦略の要諦が置かれた。したがって、ジョコ政権の外交戦略上の優先度は、必然的に投資が期待できる相手との関係におかれ、まず米国と中国、次に日本といった経済規模で大きな国との二国間関係となった。サウジアラビア国王がインドネシアを訪問した際に、三顧の礼を尽くして出迎えたものの、投資額が少ないと見るや否や憤りをみせ、またジョコ大統領が大統領就任以来一度も国連総会に出席していないことからも、インドネシアの外交戦略の成否は安全保障や価値の共有以上に、国内経済に対する損得計算によって評価されてきたことは明白といえよう。
コロナ禍で鈍化した経済成長
この傾向は、コロナ禍に端を発した経済成長の鈍化でかえって強化されたといえる。コロナ禍前に設定された上記の 2045ヴィジョン戦略においては、年率5.1%の成長で、2038年に中所得国の罠を抜け出すベースシナリオを基に長期目標が設定された。ただ、コロナ禍に見舞われた20年のマイナス成長を経て、⻑期⽬標達成には年率7%の成長が求められるようになり、その実現性⾒通しは悪化している。
長期の経済成長を支えるためにも、新首都移転で官民双方の投資を喚起し、電気自動車用のバッテリー製造の国際拠点を目指す産業政策を立てて民間投資を呼び掛けている。ただ、その持続性には疑問が付き、現時点ではコロナ禍およびウクライナ戦争後に高騰した石炭などの資源輸出で短期的に外貨を稼いでいる状況である。したがって、2045年までに先進国の仲間入りをするという⽬標達成は現在の年率5%未満の成⻑スピードでは実現困難な⾒通しであり、⼀部のインドネシアのエコノミストは、⽬標となっているIndonesia Emas (⻩⾦のインドネシア)の⼀⽂字もじってIndonesia Cemas(⼼配なインドネシア)になりつつあると懸念する声が広がってきている。
外交も「投資誘致」の場に
こうした懸念が募る中にあって、大統領としては投資誘致最優先の外交戦略の手綱をゆるめるどころか、さらに積極的に投資誘致外交に注力することとなっている。その意向は主要な海外歴訪日程にも如実に表れていた。22年に米国―ASEAN特別サミット出席のため、ジョコ大統領が米ワシントンを訪問した際も、バイデン大統領との首脳会議以上に、スペースX・テスラ社長のイーロン・マスク氏など米財界との会談を主たる成果として大統領府公式ウェブサイトで喧伝した。23年10月に一帯一路サミット出席のため北京を訪問した際も、繰り返し新首都やニッケル産業の下流化への投資を呼び掛けていることをアピールした。
23年9月のASEANサミットの際には、本会議以上にASEAN Indo Pacific Forum(AIPF)の成功に力を尽くし、グリーン・インフラ、持続可能なファイナンス・スキーム、そして、デジタル・トランスフォーメーションへの投資を参加者に呼び掛けた。インドネシアはASEANサミットをいわば投資機会のアリーナへと位置付け、さらには「インド太平洋」という概念を、全世界の政府、企業による「投資機会に開かれた」概念として戦略的に再定義した。これは、日本や米国が意図した「地政学的に開かれた」空間としての位置付けに対するインドネシア流の回答であった。
以上のジョコ政権下の外交に照らしてみれば、日本とASEANがインドネシアの外交戦略の中でもつ位置付けは明らかであろう。インドネシアが高所得国へ向かう「成長戦略」に黄信号が点る中、より加速的な投資、経済協力が急務であり、それも高成長が長期的、持続的な維持できるよう具体的な政策協力を欲している。これらの国家戦略上のリクエストに少しでも応えるプロジェクトや政策が日本やASEANにどれほど存在するかが、インドネシアからみた外交関係上の重要度を規定するということにつながる。
以上の分析は、インドネシアが社会政策や安全保障政策に無関心であるということ主張するものではない。あくまでも相対的にみて、現在のインドネシア外交において優先的に達成すべき目標とは、民主主義や人権といった政治的価値や、地域秩序の安定といった地域全体の利益より、国単位での経済的利得の有無であるという政治的決断が外交を規定していることを主張するものであり、その流れはジョコ政権の間は継続するだろうことが予測できる。
大統領選に注目
もっとも、インドネシアは東南アジアの中でもいわば最も自由で公正な選挙が実施されてきた国であり、24年は10年ぶりの政権交代の時期を迎える。次期大統領によっては、10年前と同様にインドネシアの外交戦略によって達成されるべき国益の定義は継続されるか、もしくは大幅に変化する可能性も秘めている。
インドネシア政府は現状、自国の大国化を目指す意思や、その関心を表立って強調していない。米国や中国をはじめ世界の大国が自国経済を第一とする政策をとる現実において、そのことは不思議なことではない。ただ、ポイントは他の大国と同様にその意思の有無に関わらず、人口、経済規模においてはこの地域で圧倒的な大きさを誇るがゆえに、その国内政治の動向は、いわば地域秩序を左右する基礎条件を形成することにある。したがって、インドネシアを地域大国として認める日本、ASEANにとっては、インドネシアの大国化への意思の有無に関わらず、まずはインドネシアの国内政治の動向を刮目することが重要となる。
バナー写真:ASEAN首脳会議のガラディナーで岸田文雄首相夫妻を迎えるインドネシアのジョコ・ウィドド大統領とイリアナ大統領夫人=2023年9月6日ジャカルタ(ロイター=共同)
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相澤 伸広AIZAWA Nobuhiro経歴・執筆一覧を見る
九州⼤学⽐較社会⽂化研究院准教授。専⾨はインドネシア政治、タイ政治、東アジア国際関係。東京⼤学卒業。京都⼤学アジアアフリカ地域研究研究科修了、博⼠号を取得。政策研究⼤学院⼤学研究助⼿、アジア経済研究所研究員、⽶コーネル⼤学客員研究員、タイ・チュラロンコン⼤学客員研究員などを経て2014年より現職。著書に『華⼈と国家̶インドネシアのチナ問題』(書籍⼯房早⼭、2010年)』
23年度上期の経常黒字、過去最大=12.7兆円、貿易赤字が大幅縮小―財務省
https://biz-journal.jp/2023/11/post_363223.html

『2023.11.09 17:18
財務省が9日発表した2023年度上半期(4~9月)の国際収支速報によると、海外とのモノやサービスの取引、投資収益の状況を示す経常収支は12兆7064億円の黒字だった。貿易赤字の大幅な縮小に加え、投資収益の拡大が全体を押し上げた。黒字幅は前年同期比約3倍で、比較可能な1985年度以降で過去最大となった。
貿易収支は1兆4052億円の赤字で、前年同期の9兆1814億円の赤字から赤字幅が縮小した。原油など資源の価格高騰が一服し、輸入額が減少したことが主因だ。
企業が海外から受け取る配当金や利子の収支を示す第1次所得収支は18兆3768億円の黒字と過去最大だった。海外の金利上昇で債券利子などの証券投資収益が増加した。
輸送や旅行などの取引の収支を示すサービス収支は2兆3347億円の赤字。赤字幅は9537億円縮小した。旅行収支の黒字急拡大が要因で、黒字額は約15倍の1兆6497億円に膨らんだ。新型コロナウイルスの水際対策緩和によりインバウンド(訪日客)が回復した。
同時に発表した9月の経常収支は2兆7236億円の黒字で、黒字幅は9月として過去2番目の大きさだった。半導体不足の緩和に伴い自動車輸出が好調だったことなどから、貿易収支は3412億円の黒字と2カ月ぶりに赤字から転換した。
◇23年度上半期の国際収支
23年度上半期 前年同期比%
経常収支 127,064 約3倍
貿易・サービス収支 ▲37,400 ―
貿易収支 ▲14,052 ―
輸 出 496,214 0.05
輸 入 510,266 ▲13.2
サービス収支 ▲23,347 ―
第1次所得収支 183,768 3.9
第2次所得収支 ▲19,304 ―
(注)単位億円。▲は赤字または減少。―は比較できず(了)
(記事提供元=時事通信社)
(2023/11/09-11:48)
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デフレ完全脱却、13兆1992億円=物価高に対応、賃上げ加速―政府、補正予算案閣議決定
https://biz-journal.jp/2023/11/post_363482.html

『2023.11.11 17:49
経済 デフレ
記事提供元=時事通信社
政府は10日午後、「デフレ完全脱却のための総合経済対策」の裏付けとなる2023年度補正予算案を持ち回り閣議で決定した。一般会計総額は13兆1992億円。国民生活を圧迫する物価高への対応とともに企業の賃上げや国内投資の促進へ、補助金給付や基金上積みなど政策を総動員。コロナ禍から回復途上にある経済を下支えする。
積極的な支出で支持率低迷が続く政権の浮揚につなげる思惑も透けるが、借金頼みの財政は厳しさを増す。政府は20日に補正予算案を臨時国会に提出し、月内の成立を目指す。
歳出のうち経済対策費は13兆1272億円。分野別には(1)物価高への対応(2兆7363億円)(2)持続的賃上げや地方の成長(1兆3303億円)(3)半導体や宇宙開発など成長力強化・国内投資促進(3兆4375億円)(4)人口減少対策と社会変革推進(1兆3403億円)(5)国民の安全・安心確保(4兆2827億円)―を投じる。
歳入(財源)は予算額の7割近い8兆8750億円を新規国債(借金)発行で賄う。23年度の税収の上振れ分はわずか1710億円。同年度当初予算に新型コロナ対策やウクライナ情勢対応などで計上した計5兆円の予備費も2.5兆円を減額し財源の一部に充てる。
物価高対策では、低所得の住民税非課税世帯に7万円を給付するため1兆592億円を計上。24年4月末まで期限延長を決めた電気やガス、ガソリン代の負担軽減策にも7948億円を充てる。中堅・中小企業の賃上げ環境整備などが5991億円。経済安全保障上、重要な半導体関連支援策は特別会計や基金活用を含め2兆円規模となる。
補正予算と当初予算を合わせた23年度の歳出総額は歴代4位の127兆5804億円まで膨張。24年度当初予算には、物価高対策の目玉として所得税・住民税を1人当たり計4万円減税する総額3兆円台半ばの定額減税も加わる。鈴木俊一財務相は閣議決定後、記者会見で「減税をすればその分、国債の発行が必要になる」と語り、厳しい財政運営が続くとの見通しを示した。
◇2023年度補正予算案の概要
▽一般会計総額 13兆1992億円
【歳入】
税収 1710億円
新規国債 8兆8750億円
建設国債 2兆5100億円
赤字国債 6兆3650億円
税外収入 7621億円
昨年度剰余金 3兆3911億円
【歳出】
経済対策関係 13兆1272億円
防衛力強化資金への繰り入れなど 1兆4851億円
国債整理基金特別会計へ繰り入れ 1兆3147億円
地方交付税交付金 7820億円
新型コロナウイルス感染症および原油価格・物価高騰対策予備費 ▲2兆円
ウクライナ情勢経済緊急対応予備費 ▲5000億円
その他既定経費の減額 ▲1兆0098億円
▽補正後の一般会計総額 127兆5804億円
【歳入】
税収 69兆6110億円
新規国債 44兆4980億円
建設国債 9兆0680億円
赤字国債 35兆4300億円
税外収入など 13兆4714億円
【歳出】
一般歳出 84兆7245億円
地方交付税交付金等 17兆1812億円
国債費 25兆6748億円
(注)▲は減額
◇23年度補正予算案のポイント
一、一般会計の歳出総額は13兆1992億円
一、経済対策関係経費は13兆1272億円
一、税収は1710億円上振れ
一、国債追加発行は8兆8750億円
一、補正後の歳出総額は127兆5804億円
一、補正後の税収見込みは69兆6110億円
一、補正後の新規国債発行は44兆4980億円
(了)
(記事提供元=時事通信社)
(2023/11/10-19:37)
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露ウ停戦交渉は習近平の「和平案」を採用することになるのか?
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/6330056c25605a3fa146a3c03045cae51c5b5f60
※ 『いまロシアの軍事力とウクライナの軍事力を、武器や兵士数などで比較したら、それは比較の対象にならないほど圧倒的にロシアが強い。欧米の支援なしには、ウクライナは戦うことができないのだ。
となると、ウクライナは欧米が完全に支援をやめる前に和平協定を結ばなければならないということになる。
しかしゼレンスキーがこだわる「領土の完全返還」は実現しない可能性が高いので、どのような停戦ラインを引こうとも、ウクライナの敗北に終わるのだ。つまり、全領土の内のどれが欠けても「敗戦」になってしまう。
その点、中国の「和平案」には停戦ラインがないので、どこで停戦ラインを引こうと、中国の案が勝つことになる。』…。
※ 中国の和平案とは、「問題先送り」「領土の線引きの合意」は先送りして、ともかくも、「一時休戦する」というような案でも、あるものか…。
『11/11(土) 19:43
11月に入ると、NBCを始め多くのメディアが10月におけるウクライナ関係の会議において欧米がウクライナに「停戦を考えるように」と密かに勧告したという情報が溢れた。ガザ紛争が起きたためにウクライナにかまっていられなくなったのと、ゼレンスキー大統領の姿勢に疑問を抱く者が出てきたからのようだ。同時に、ウクライナ軍の総司令官が英誌「エコノミスト」にゼレンスキーと軍との間の亀裂を明かし、中国メディアはこれらの話題に沸いた。
もし和平交渉となった時には、欧米がゼレンスキーを説得したとしても、プーチン大統領も納得しなければ停戦には入れない。そのプーチンは習近平国家主席の「和平案」を支持していると、プーチン自身が中国メディアの取材に回答している。
ということは習近平の「和平案」が採用されることになるのだろうか?
◆中国メディアに溢れる情報
もう、どれからご紹介すればいいか分からないほど、中国のネット空間には関連情報が溢れている。
まず、中国共産党管轄下の中央テレビ局CCTV文字版は11月4日、<関係者が「欧米当局はウクライナと、いかにしてロシアとの和平交渉を進めるかを討議している」と語る>という見出しで、以下のようなことを書いている。
――現地時間11月3日、アメリカの国営放送NBCは、米政府高官の話として、「欧米当局者は、露ウ紛争終結に向けたロシアとの和平交渉をどのように行うかについて、すでにウクライナ政府と討議を開始した」と言っていると報じた。会談の内容には、「ロシアとの合意に達するために、ウクライナが放棄しなければならない条件」などが含まれているという。
NBC報道によれば、欧米当局者らは、「露ウ紛争が膠着(こうちゃく)状態に陥っていること」や「ウクライナへの支援を継続できるか否か」について懸念を表明している。
2人の関係者によると、「バイデン大統領はウクライナの軍事力の低下が続いていることを非常に懸念している」とのこと。イスラエルと、パレスチナのイスラム抵抗運動(ハマス)との紛争が勃発する前、ホワイトハウス当局者らは米議会が年末までにウクライナへの追加資金支援に関する決定を下すと信じると公式表明していたが、しかし非公式には「それは難しいかもしれない」と認めていた。
(CCTV記事引用、ここまで。)
一方、中国共産党機関紙「人民日報」の姉妹版「環球時報」は、「環球情報放送」というウェブサイトで11月6日、中央テレビ局CCTVの情報に基づいて<露ウ紛争:誰(どちら側)の「膠着状態」なのか?>という見出しで、冒頭に書いた数多くのウクライナ状況に関して報道している。信憑性を証明するためか、そこには数多くの欧米オリジナル情報のキャプチャーが貼り付けてあるので、ご確認いただきたい。
この情報を国際オンラインなどが転載したりするなど、中国のネットは大賑わいだ。それら数多くの報道の中からいくつかをピックアップしてみる。
●パレスチナ・イスラエル紛争の新たな局面が世界の注目を浴びている中、ウクライナ軍のザルジニー総司令官は、イギリスの「エコノミスト」に投稿し、「ロシアとの戦争が膠着状態に達している」と認めた。ザルジニー氏はまた、ウクライナ軍の反撃を指導するために使用された「NATO方式」は間違っていたことが証明されたと書いている。ウクライナとその西側支持者は常に反撃への希望を抱いてきたが、現実的にはウクライナ軍はそのように「美しい突破」はできないだろうとも嘆いている。
●ゼレンスキーは「膠着説」を否定したが(そのために軍との間に亀裂が生じているが)、フランスメディアは、ザルジニーの発言が今夏の注目を集めたウクライナの反撃に「冷や水を浴びせた」と指摘した。さらに、ウクライナ大統領府の顧問ポドリャク氏も、この時期の戦闘は「困難」に直面したと認めた。
●ニューヨーク・タイムズは、「欧米側がこれまで提供した兵器では、ウクライナ軍が突破口を開くのに十分ではなく、ウクライナ情勢を逆転させるのに役立つ兵器はほとんど残っていない」、「西側同盟国、特にアメリカのウクライナ支援を継続する意欲は弱まっている」と報道している。
●AP通信は「アメリカ議会には厳しい亀裂が走っている」と述べている。ウクライナとイスラエルを同時に支援すべきだという派閥と、ウクライナへの支援とイスラエルへの支援は別々に行うべきだという派閥と、ウクライナへの支援は減らすか完全にやめてイスラエルだけを支援すべきだという派閥など、大統領選に向けて、どれだけ票を取れるか、ユダヤ資金をどれだけ集められるかなど、ごった返すほどに乱れている。
●米メディア「ポリティコ」は、露ウ戦争は膠着状態に達しているとのザルジニーの声明に対し、ロシアのペスコフ大統領報道官は、「ロシアは膠着状態には達しておらず、今後も特殊軍事作戦を推進していくつもりであり、定められた目標はすべて達成されなければならない」と反論したと報じている。ウクライナの悲観的な現状を見て、ウクライナとロシアの和平交渉をこれまで阻止してきたアメリカの考えが変わったのは注目に値すると報道している。
◆「露ウ平和交渉を妨害したのはアメリカ」と米知識人や独政界が証言
「環球時情報放送」は以下のように続ける。
皮肉なことに、ウクライナ危機が全面的に拡大した後、ロシアとウクライナは複数回の交渉を実施し、一時的には前向きな進展を見せた。しかし、まさにアメリカとNATOの妨害により、和平交渉は最終的に行き詰まった。
アメリカの歴史・外交政策のコラムニストであるテッド・シュナイダー氏は、以前、アメリカ政府が政治的利己心から露ウ和平交渉に少なくとも3回干渉してきたとする記事を発表した。
今年6月、プーチンは、モスクワに集まったアフリカの指導者らに、昨年トルコのイスタンブールで開催された第3回和平交渉でロシアとウクライナが合意した「合意文書」を示した。ウクライナの交渉担当者は合意文書に署名したが、その後はそれについて何も語らくなったという。プーチンの見解では、ウクライナの利益がアメリカの利益と「一致していない」場合、物事がどのような方向に進むかは「最終的にはアメリカの利益に依存する」とし、「これがアメリカ人にとって問題を解決する鍵である」と述べた。
プーチンの言葉を裏付けるかのように、ドイツのシュレーダー元首相も数日前、ベルリン日報のインタビューで、「イスタンブール和平交渉中、アメリカが許可しなかったためウクライナが和平を受け入れなかった。そうでなければ露ウ紛争は2022年内に終わっていただろう」と認めた。
ウクライナ側は昨年、シュレーダーに、「露ウの間の仲介をして、ロシアのプーチン大統領にメッセージを伝えてほしい」と依頼しており、「当時ウクライナはNATO加盟を断念する用意があったが、結局何も起こらなかった」という。「すべてはワシントンで決まるので、何も起こらないというのが私の印象だ」とシュレーダーは述べたとのこと。
◆プーチンは習近平が提案した「和平案」なら飲む
10月16日、プーチンは「一帯一路」フォーラムに参加するために北京を訪問する前に、中国メディア・グループの取材を受けた。インタビューは非常に長いのだが、終わりの方でプーチンは習近平が提案したウクライナ紛争に関する「和平案」に関して「私たちは中国の友人たちの提案を知っており、その提案を高く評価する。中国の提案は極めて現実的であり、和平協定の基礎を築くことができると思う」と答えている。
中国の「和平案」の詳細は拙著『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』に書いているが、この流れの中で重要なのは「停戦ラインを明示していない」ということである。
一方、ゼレンスキーもかつてウクライナ方式の「和平案」を出しているが、それは「クリミア半島をはじめドンバス地域など、2014年前までの全ての領土をウクライナに返還し、ロシア兵が完全に2014年前のウクライナ領土から撤退すること」という完璧な条件が付いている。
ウクライナは欧米、特にアメリカの軍事をはじめとした全ての支援の下で、ようやく戦争が成立しているのであって、もし欧米がウクライナ支援を控えるようになったとしたら、その瞬間に「敗戦」してしまう。
いまロシアの軍事力とウクライナの軍事力を、武器や兵士数などで比較したら、それは比較の対象にならないほど圧倒的にロシアが強い。欧米の支援なしには、ウクライナは戦うことができないのだ。
となると、ウクライナは欧米が完全に支援をやめる前に和平協定を結ばなければならないということになる。
しかしゼレンスキーがこだわる「領土の完全返還」は実現しない可能性が高いので、どのような停戦ラインを引こうとも、ウクライナの敗北に終わるのだ。つまり、全領土の内のどれが欠けても「敗戦」になってしまう。
その点、中国の「和平案」には停戦ラインがないので、どこで停戦ラインを引こうと、中国の案が勝つことになる。
拙著『習近平が狙う「米一極から多極化」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』で詳述したように、習近平の外交戦略の哲理は「兵不血刃(ひょうふけつじん)」(刃に血塗らずして勝つ)だ。習近平は軍隊を一歩も動かしていないのに、ウクライナ戦争においては習近平の「和平案」が採択されることになる可能性が高い。
何と言ってもプーチンが納得しないことには協議は成り立たないので、その意味からもプーチンが礼賛している習近平の「和平案」に基づくしかないのだ。
ガザ紛争においても大規模中東戦争へと拡大しないためにはイランを抑止できるか否かにかかっている。11月3日のコラム<ガザ危機「習近平仲介論」がアメリカで浮上>が現実性を帯びるか否かはさて置いたとしても、少なくともウクライナ戦争では習近平案で停戦協議が進められるのかもしれない。
「停戦ラインもないのに」と嘲笑っていた人たちは、「兵不血刃」戦略を侮らない方がいいだろう。
記事に関する報告
遠藤誉
中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。日本文藝家協会会員。著書に『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』、『習近平三期目の狙いと新チャイナ・セブン』、『もうひとつのジェノサイド 長春の惨劇「チャーズ」』、『ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略』、『 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。 』