生き残るために、騙すために:陸上戦におけるデコイ (warontherocks.com)

生き残るために、騙すために:陸上戦におけるデコイ (warontherocks.com)
https://milterm.com/archives/3252

『陸上戦におけるデコイに関する記事を紹介する。科学・技術の進展によってデコイにも変化が必要になっている状況が興味深い。(軍治)

生き残るために、騙すために:陸上戦におけるデコイ

TO SURVIVE, DECEIVE: DECOYS IN LAND WARFARE

RÉMY HÉMEZ

APRIL 22, 2021

編集部注:この記事は、Défense & Sécurité Internationale(DSI)に掲載されたフランス語の論文から抜粋したものである。

多くの本や新聞で見られるモノクロ写真は、ノルマンディ上陸(D-Day)侵攻に不可欠な欺瞞(deception)を説明するために、4人の男性がバラックと思われる場所の近くで30トンのシャーマン戦車を運んでいる様子である。この有名な画像は奇妙である。もちろん、この写真に写っているのは膨張式の戦車(inflatable tank)で、1944年のノルマンディー上陸作戦にまつわる膨大かつ複雑な欺瞞作戦(deception operation)に使われたデコイである。

シャーマンM4戦車を模した膨張式の戦車(inflatable tank)で、フォーティテュード作戦の一環としてドイツ軍の航空偵察任務を欺くために作られたもの。写真:IWM

陸上戦術的デコイ(Land tactical decoys)とは、敵の観測者を欺くことを意図した装甲車、架橋能力、砲弾、レーダーなどの替え玉装備(dummy equipment)や施設(建物、橋、滑走路)である。古来より戦い(warfare)において標準的に使用されてきた。

数え切れないほどの例の中で、比較的現代的なデコイとしては、アメリカ南北戦争のクエーカー砲(大砲を模した丸太)、1918年9月のメギドの戦い(Battle of Megiddo)でイギリスが使用した木と毛布でできた「馬(horses)」、1942年のバートラム作戦(Operation Bertram)のために女王陛下の土木工兵が作った8,400台の替え玉車両(dummy vehicles)や各種装置などである。最近では、1990年と1991年のイラク、1999年のコソボのセルビア人、シリアとイラクの自称イスラム国、イエメンのフーシ派、2020年のナゴルノ・カラバフのアルメニア人とアゼルバイジャン人が使用した敵機を欺くさまざまなデコイがある。

木と毛布でできた「馬(horses)」

当然のことながら、欧米諸国の主要な潜在的敵対者(adversaries)は、自国の軍隊にデコイの居場所を確保している: 例えば、中国は装備も充実しており、作戦行動においてデコイを重要な位置づけに置いているように見える。また、北朝鮮は自国の装備を保護するためにデコイを集中的に使用し、戦い(warfare)で広範に使用する計画であると伝えられている。

ロシアは、長年の軍事ドクトリンである「マスチロフカ(maskirovka)(欺瞞(deception))」に忠実であり、モスクワ地方のナカビノ付近に専門の部隊(独立迷彩第45連隊)を置くほど、デコイに気を配っている。

しかし、西側諸国の軍隊は、デコイ作戦を取りやめたように見える。その主な理由は、あまりにも長い間、「作戦上の快適さ(operational comfort)」、特に海外介入時の明白な航空優位の恩恵を受けてきたからである。

2014年と2015年のクリミアとドンバスでの紛争が示したように、西側の軍隊が、欺瞞(deception)とデコイを常用するだけでなく、より重要なことに、敵を観察し検出する手段も持っている、洗練された同等またはほぼ同等の敵対者(peer or near-peer adversaries)との衝突に備えることを真剣に考えるなら、それは変えなければならない。

対等な脅威に対抗するフランス軍の能力回復に尽力するフランス陸軍参謀長ティエリー・ブルカール元帥の言葉を借りれば、「あまりにも長い間、我々は策略の利用を軽視してきた。それは、敵を欺くことを組織的に試みなければならない中隊の戦術的機動に始まり、部隊にデコイ手段を装備させることに続く」。と述べている。とはいえ、欺瞞の価値(value of deception)が広く認められている一方で、それを地上で運用することは困難であることが判明している。

課題は、「致命的な可視化(fatal visibility)」の時代に突入したことである。検出手段はますます強力になっている。例えば、ハイパースペクトル・レーダー(hyperspectral radars)は、地表に見えるものだけでなく、土壌やガス、スペクトル異常などの物質の性質や分類を検出することができるようになった。レーダー画像のドメインでは、干渉計(interferometry)を使用することで、車両の通過などの活動を検出することができる。

さらに、センサーには人工知能(AI)を搭載することができる。実際、より多くのセンサー搭載機器が大量のデータを生成するようになると、人工知能(AI)はこれらの情報を体系的にラベル付けし、処理し、分析するための効率的なツールとなり得る。

信号システム、レーダー、測位手段、アクティブプロテクションシステムなどの使用により、軍事部隊の電磁的占有面積がますます大きくなり、遠隔攻撃手段(浮遊弾を含む)が民主化されていることも相まって、デコイの使用はより複雑かつ不可欠になっている。装備品の隠蔽や偽装が難しくなった今、デコイの重要性はさらに増している。

指揮官は、さまざまな目的を追求しながら、敵の注意を引くために作戦の中でデコイを使用する。まず、陸軍は、主に航空脅威(ドローン、飛行機、ヘリコプター)や間接砲火に直面して、施設、部隊、または設備の生存率を高めるためにデコイを使用できる。

これは、デコイが代替のターゲット(alternative targets)を提供することで、敵対者(adversary)が実際のターゲット(real targets)を攻撃する機会を減少させることができるためである。また、弾薬は高価であり、貯蔵量も少ないことから、相手に弾薬を消費させるという大きな効果がある。

第二に、デコイは、兵器、部隊、装備の数や位置について、敵対者(adversary)、特に航空偵察の目を欺くために使用することができる。

例えば、あるセクターで威嚇したり行動を起こさせないようにする、実際より多く見えるようにする、接触線(contact line)上の装備や軍人を入れ替え、実際には再配置しているにもかかわらず実際の部隊がまだそこにいるように見せる。偽の部隊を作って一方向に脅威を与え、主たる行動(main action)から敵の注意をそらす。敵の火力を引き付けて敵対者(adversaries)に自分の位置を明らかにさせ、火力にさらさせる。敵の進行を遅らせたり、敵を特定の方向に誘導したりするために、人工の障害物を設置する(デコイの即席爆発装置、地雷など)といった効果が考えられる。

デコイは、欺瞞作戦(deception operations)において最も有効な手段の一つである。1980年代末に行われた米陸軍の研究では、1970年代末に開発された旅団レベルまでの諸兵科連合戦(combined warfare)シミュレーションが可能なプログラム「Janus」を用いて、2個装甲中隊(計28両)のソ連戦車連隊に対する戦闘をシミュレートしている。

その結果、デコイを装備した部隊は効率が良く、デコイに対する敵の反応により、相手を発見する能力が28パーセント向上したことが分かった。友軍の戦車損失は18.3パーセント少なく、敵戦車の撃破数は4.5パーセント多かった。

これは、戦車の前にデコイを配置した場合に特に顕著で、戦車の後方や戦車の間にデコイを配置した場合はそれほどでもなかった。また、この研究では、実戦車1台につき1個以上のデコイを配置しても良い結果は得られず、戦車1台に4個のデコイを配置すると、欺瞞(deception)の試みが敵により明らかになるため、逆効果になる可能性があると結論付けている。

デコイを効果的に使うには、いくつかの基本的なルールに従わなければならない。まず、この方程式に忠実であるべきである。デコイは、それがシミュレートする機器よりも安価で、敵対者(adversary)がそれを検知または破壊するために要する時間と労力よりも少ない材料と設置に要する時間と労力でなければならない。したがって、デコイは何よりも価値の高い、しばしば移動性の低いターゲット(司令部、地対空砲台、架橋装置など)をシミュレートしなければならない。

第二に、敵に本物だと思わせるためには、デコイは明らかに実際的でなければならない。デコイは模擬対象物のように見えるだけでは十分ではない。レーダーや他のセンサーから見て、模擬装備と同じようなマルチスペクトラム・シグネチャを持つ、その物体のように「見える(look)」必要がある。また、精度を高めるために、デコイが実機と同じように爆発したり燃えたりすることが望まれる。そのため、射撃や爆発のシミュレーターを追加することが有効である。

最後に、デコイは忠実に再現されたものだけでは不十分である。欺瞞(deception)は「大規模な映画作品(a large-scale movie production)」であるため、その環境も実際的でなければならない。手がかりがデコイの存在を裏切らないようにするためには、考慮すべき要因(factors)がたくさんある。例えば、デコイの偽装は、効果がありすぎず、存在しないわけでもないという意味で、もっともらしいものでなければならない。

デコイを配置する場所は現実的でなければならず、特にドクトリンに適合していることが重要である。また、最低限の人間の存在を確保することも重要である(電池交換など、デコイのメンテナンスにも有効である)。照明や発煙、あるいはエンジン音などを流す音響装置など、さまざまな工夫をすることで、シミュレーションの信憑性をさらに高めることができる。

デコイの信頼性の問題だけでなく、凡庸なデコイを配備したり、「場面」を設定しなかったりすることが、さらなるリスクを生むという事実を見失ってはいけない。欺瞞(deception)を察知した敵対者(adversary)は、実際のターゲット(real target)を見つけるために、より大きな取組みをする傾向がある。

しかし、このリスクを超えて、デコイの使用は通常、作戦の成功に寄与する: 敵がデコイの存在を疑わなければ、欺くことができる。敵対者(adversary)が敵が誘き寄せる(decoying)の能力を知っていれば、牽制のために時間を浪費することになる。

デコイは、例えば、視覚のみの装置や部隊によるDIYのような基本的なものから、精巧なものまである。その設計の戦術的妥当性は、特に部隊が利用できる時間と装備、そして何よりも敵が利用できるセンサーに依存する。

実際、探知手段の進化を考えると、より多くのマルチスペクトルデコイ、例えば戦闘車両の替え玉(dummies)で、実際の車両の外観だけでなく、熱、レーダー、電磁波、音響シグネチャもシミュレートする必要が明らかに高まっている。

現在、Fibrotex社(イスラエル)、Rusbal社(ロシア)、Saab社(スウェーデン)、Tempestini社(イタリア)、Lubawa社(ポーランド)、Inflatech社(チェコ・ロシア)など、複数の企業がこの種の製品を提供している。これらのデコイは、視覚的な外観(最も効果的なものは100メートル先までリアルに見える)と、熱信号(抵抗器や導電性布を組み込むなど)、赤外線信号、あるいはレーダー信号を組み合わせている。

2Dや3D、インフレータブル、木製や金属製のパネルなど、さまざまな種類がある。デコイは頻繁に分解できる。重量や大きさも様々である。例えば、インフラテックのインフレータブルSA-17は58キロ(128ポンド)、T-80は37キロ(81.6ポンド)である。

デコイは、通常、輸送にはトラックが必要であるが、オーストラリアのGaardTech社が製造した金属製戦車10両は、分解して海上コンテナに収めることができる。また、ベラルーシのMinotor-Service社のT-72のように、トレーラーをベースにしたモデルもあり、重量3.5トン、20分で展開することができる。マルチスペクトラムのデコイの価格は大きく異なるが、手頃な価格である。

主戦闘戦車(main battle tank)のシミュレーションには、30,000ユーロから150,000ユーロ(36,000ドルから180,000ドル)の費用がかかる。結局、これは現代の戦車の値段に比べれば控えめなものだ。2001年、Cours des Comptesは、フランスのルクレール戦車の総単価を1590万ユーロ(1910万ドル)と推定している。

将来のデコイに関連する技術動向は、大きく4つに分けることができる。第一に、電子戦(electronic warfare)能力の発達と普及に伴い、デコイの電磁シグネチャが不可欠となる。弾薬発射型の電子戦システム(Munition-launched electronic warfare systems)も選択肢の一つで、例えば、サイレント・インパクト(Silent Impact)は、155ミリ砲弾を飛行中の「サイバー電磁攻撃(cyber-electromagnetic attack)」ペイロードの運搬機構として使用し、パラシュートで長時間上空にとどまり、着陸後は地上にとどまることができる。

このペイロードは、レーダーや兵器システム、通信を模倣したデコイとしても使用できる。現在のところ、最も効果的な欺瞞的行動方針(deceptive courses of action)の1つは、敵が本物の司令部を特定しターゲットにする能力を制限するために、司令部の指揮ネットワークを再現することだろう。2030年か2040年までには、司令部や車両の電磁シグネチャを再現できる、空中投下可能なデコイが一般的になるかもしれない。

また、陸上デコイ(land decoys)は、従来は固定式でしたが、移動式にして遠隔操作できるようにすることもできる。メリットはたくさんある。ロボットのデコイは、作戦における実機と同じ速度で移動させることが容易であるため、攻撃的な行動方針(courses of action)でより容易に使用できる(デコイの使用を作戦の速度に合わせることは、これまでの課題であった)。

また、その運動性によって、より現実性が強化される。特定のシグネチャを再現し、タブレットを使って最大20km離れた場所から遠隔操作するターゲットは、GaardTech社製などすでに存在している。少し手を加えれば、相手を欺くために戦闘に利用することも可能である。

3つ目の構造化技術トレンドは、長期的には、人工知能(AI)の貢献により、ロボットによるデコイ編成(robotic decoy formations)が特定の部隊の動きを再現することができるようになることである。すでにGaardTechのタブレットでは、訓練で複数のターゲットをまとめて動かすことが可能になっている。

将来的には、機甲部隊にロボットを搭載し、移動の途中でロボットを別のルートにセットして、攻撃先を誤魔化すことも可能である。一般論として、デコイと戦闘ロボットの境界はますます曖昧になると思われる。なぜなら、ロボットのデコイ(robotic decoys)は、敵対者(adversary)を混乱させ、攻撃するためのものだからである。

第4の技術トレンドは、部隊を模倣するにしても、相手のセンサーや攻撃手段(地上・航空システム、監視ネットワーク、迎撃担当オペレーターなど)を飽和させるにしても、戦術的デコイ(tactical decoy)として空中ドローンが果たすべき役割(特に群れでの使用)がますます重要になるということである。

例えば、1機以上のドローンが輸送ヘリコプターや攻撃ヘリコプターの電磁波やレーダーのシグネチャを再現し、偵察やヘリボーン作戦(heliborne operation)のような偽りの姿(false appearance)を作り上げることができる。レーダー反射板を搭載したドローンが戦場や後方を巡回することで、複数の誤警報を発生させ、特に敵対者(adversary)の共通作戦運用図(common operational picture)を混乱させることができる。

さらに、デコイの技術として有望だが成熟していないものとして、ホログラフィー(holography)を挙げることができる。ボリューム感のある3Dホログラムや、音を出して「触れる(touched)」ことができるタイプの科学研究が大きく進んでいる。長期的には、ホログラフィー(holography)を使えば、説得力のある視覚的なデコイ(visual decoys)を作ることができる。しかし、そのためにはまず持ち運びができるようになり、十分な大きさのディスプレイと適切な解像度を持つ必要がある。

最後に、欺くための代替・補完オプションとして、車両や施設の視覚、熱、レーダー、電磁波シグネチャを変更し、敵対者(adversaries)が他のものと混同するようにすることも可能である。これは、バートラム作戦(Operation Bertram)で採用された722台の「サンシールド(sunshields)」のモデルである。木製のフレームとキャンバスでできた天蓋で、戦車(クルセイダー(Crusader)、バレンタイン(Valentine)、グラント(Grant)、スチュアート(Stuart)、シャーマン戦車(Sherman tanks))を、より脅威的でない3トン・トラックへと視覚的に変えることができる。

台湾軍が歩兵戦闘車をクレーンに改造して都市環境に溶け込ませる実験をしたのもこの方法である(ただし、軍用車を民間車に偽装するのは背信行為(perfidy)と言える)。このように、ある種の車両に改造キットを装着し、デコイに変身させることも考えられる。

探知・防御システムの発達により、デコイの利用が見直されている。実際、近年では生存率を高めるために、潜在的な侵略の影響を遠くから無力化または偏向させることによって回避する能動的な保護システムに注目が集まっている。この種の装備は、レーダー、敵レーダーのパッシブ・リスニング、レーザーとミサイル発射という3つの主要なタイプの検出器を使用する。

これらのシステムは、本当に短時間で脅威を検出し、分類し、場合によっては傍受ポイントを計算し(「ハードキル」システムの場合)、対抗策を講じる必要があるため、これらのアクティブ防護システム(active protection systems)には大規模な自動化が求められる。このような検知と保護の自動化は、新たな可能性をもたらす。

視覚的なデコイ(visual decoys)と発射シミュレーター(レンジ・ファインダー、レーザー照射器、あるいはスモーキー・ミサイル(smokey missile))を組み合わせることで、アクティブ防護システム(active protection system)を自動または半自動で反応させることができる。実際に車両に射撃しなくても、このデコイの型式(type of decoy)によって混乱が生じ、自己防衛システムに対する信頼が失われることになる。

ほとんどの先進的な軍隊で計画されている協働戦闘(collaborative combat)の登場により、その影響はさらに大きくなる可能性がある。フランス陸軍の場合、スコーピオン・プログラム(Scorpion program)の第2段階が完了すると、協調戦闘のコンセプトは、新しい情報システムが装甲戦闘車両(ジャガー(Jaguar)、サーバル(Serval)、グリフォン(Griffon)、ルクレール戦車の近代化版(modernized version of the Leclerc tank))、航空支援部隊、砲兵中隊(artillery batteries)を一つの集中情報共有ネットワークで結び、車両、ロボット、ドローン間で警報、ターゲッティング情報(targeting information)、その他のデータを自動的に配信するようになることを意味している。

到達目標は、相互支援機能の最適化である。このコンセプトの一部は、自動検知(automatic detection)と自動反応(automatic reactions)に基づいている: 侵略(aggression)を検知した車両は、その情報を自動的にその地域に存在する他の車両に送信する必要がある。その結果、他の車両は自動的にターゲットに探知と射撃システムを向けることができる。

到達目標は、「反射時間(reflex time)」で集団的な反応を得ることである。もし、デコイによって部隊全体の反応が半自動化されてしまうと、部隊は身動きがとれなくなり、混乱する可能性があり、間接火力に翻弄されることになりかねない。

一般に、自動処理(例えば、探知、あるいは自動識別、センサーの融合など)の導入により、現実的な多重帯域のデコイ(multi-band decoys)がさらに有用になる。これらのデコイは、アルゴリズムが期待するすべての信号を提供し、人間のオペレーターが持つかもしれない疑念の余地はないだろう。

ロボットによるマルチスペクトルデコイ編成(multispectral decoy formations)のトレンドは、明日の戦い(warfare)におけるデコイの関連性(decoys’ relevance)をさらに強化し、新たな戦術的展望を提供する。

したがって、デコイの調達とこの分野のイノベーション(innovation)の監視は優先されるべきものである。そのため、兵器開発プログラムごとに、兵器開発にかかる総コストの最大1%を、対応するデコイの作成と取得に投資することを約束するのがよいかもしれない。

そして、陸軍はこれらのデコイの使用を推進し、欺瞞(deception)を説明し、デコイの使用を奨励するドクトリンを作成し、演習時にデコイを配備することが必要である。最後に、特に、あまり一般的でないデコイ(橋、地対空装置など)を集め、その中心的役割を果たす専門部隊を創設するのがよいだろう。

このステップを踏むことで、欧米の軍隊は、奇襲をかけ、欺き、生き残るための技法の数々に、不可欠なツールを追加することができる。

Rémy Hémezはフランス陸軍の将校で、元フランス国際関係研究所(IFRI)研究員(2015年から2017年)である。表明された見解は彼自身のものである。

カテゴリー
EMS(電子戦)、人工知能[AI](Autonomy)、技術動向、米陸軍動向 』

「2つのインド」と日本 グローバルサウス両雄の打算

「2つのインド」と日本 グローバルサウス両雄の打算
風見鶏
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM024RT0S3A600C2000000/

『先の主要7カ国首脳会議(G7広島サミット)はアジアの新興・途上国で「両雄」と目されるインドとインドネシアの首脳も参加した。中国という共通の脅威をにらんで協調する両国は同じ地域大国として緊張もはらむ。そこには日本の役割を見いだす余地がある。

5月下旬、インドがパキスタンと領有権を争うカシミール地方で開いた20カ国・地域(G20)観光作業部会は象徴的な会議だった。

G20メンバーでありながらサウジア…

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『G20メンバーでありながらサウジアラビアやトルコは政府代表を派遣しなかった。理由は「同じイスラム教国のパキスタンに配慮したから」だとされる。

世界最大のムスリム人口を誇るインドネシアが代表を派遣したのはなぜか。「インドには恩がある」。インドネシアの外交当局者は理由をこう説明する。

インドネシアが議長を務めた22年のG20サミットはウクライナ侵攻を巡る対立で合意形成が困難を極めた。閣僚級の会議でまとめられなかった共同文書を首脳間で採択できたのはインドの協力のおかげだった。

シンガポールのシンクタンク、ISEASユソフ・イシャク研究所が2月に発表した東南アジア諸国連合(ASEAN)各国への世論調査はインドとインドネシアの接近を裏付けた。

「米中対立下で第三のパートナーに選ぶべき国・地域はどこか」との問いにインドネシアは9.9%がインドと答えた。6つの選択肢のなかで22年の最下位から3位へ順位を上げた。

両国の交流は古い。インドネシアは「インドの島々」を意味する。有史以来、インド由来のヒンズー教の王国が興亡を繰り返した。ともに植民地支配を経て、独立後は米ソ冷戦下で「非同盟運動」を主導した。

21世紀の国際政治にインドとインドネシアが与える影響はより大きい。アジアの民主主義国で人口は1、2位につけ、米金融大手ゴールドマン・サックスは国内総生産(GDP)でも50年に中国、米国に次ぎ3位、4位になると予測する。

両国が近づく背景には中国をにらんだ打算がある。ともに中国が最大の輸入相手国でありながら、国境紛争や海洋資源を巡る対立も抱える。中国との経済関係を考慮すると米国へ傾斜するのは得策ではない。同じような立場からお互いをパートナーとみなす。

この関係は将来も続くのか。アジアの国際政治に詳しい大庭三枝神奈川大教授は「似た志向を持つ地域大国は競合関係を内包している」と指摘する。両国は南半球を中心とする新興・途上国の総称「グローバルサウス」の代表格だ。ともにリーダーを狙えば、両雄並び立たずの状態に陥る。

橋渡し役に浮上するのは日本だ。経済協力開発機構(OECD)によると直近の両国への政府開発援助(ODA)拠出額は2位のドイツを抑えてトップ。外務省の世論調査で両国とも9割以上が「日本は信頼できる」と答えており、米欧より近い関係にある。

日本が中国抑止を念頭に提唱した「自由で開かれたインド太平洋」の概念を両国とも受け入れている。インドとは米国、オーストラリアとともに「クアッド」の枠組みでも協力する。

自衛隊と海上保安庁は東シナ海で衝突を避けながら中国と対峙してきた経験がある。大庭氏は「対中国の海洋安全保障で両国が協力を強めるときに日本が果たせる役割がある」とみる。

「2つのインド」の緊密さは日本が双方と関与を深めるうえでも好機だ。旧宗主国への複雑な感情が交じるアジアは米欧が入り込みにくい。そこで新たな3カ国の枠組みを主導して地域の安定に貢献するのは日本の責務であり、日本にしかできないことでもある。(ジャカルタ=地曳航也)』

株高で含み20兆円、日銀のETF それでも売らないワケ

株高で含み20兆円、日銀のETF それでも売らないワケ
編集委員 清水功哉
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD07AWS0X00C23A6000000/

『日経平均株価がバブル後高値を更新するなど株高が続く中、日銀が持つ上場投資信託(ETF)の含み益も増え、5月末に民間試算でついに20兆円程度に達した。1年前から6兆円以上の増加で月末値としては過去最高だ。この含み益を国民に還元すべきだとする意見もあり、7日の国会でも議論があった。ただ、早期放出は簡単でなさそうだ。

日銀が事実上の「株式」であるETFの買い入れを始めたのは2010年。13年導入の異次…

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『日銀が事実上の「株式」であるETFの買い入れを始めたのは2010年。13年導入の異次元金融緩和のもとで購入額は一気に膨らみ、17〜20年には年4兆〜7兆円程度も買った。 

既に「テーパリング」は開始

主要中央銀行で「株式」を買う金融政策を手掛けているのは日銀だけ。株価形成やガバナンス(企業統治)のゆがみといった副作用は軽視できず、日銀も既に購入額は減らし始めた。いわば「テーパリング」だ。

具体的には、21年春の政策修正で、買うのは大幅な株安局面に限る姿勢に転じた。購入額はかなり減り、23年1〜5月は約1400億円だ。それでも株価が大きく上昇しているのは、株式市場で日銀の存在感が低下したということだろう。望ましい話だ。

こうして購入面の出口政策が進むなら、次の課題として保有面の出口政策、つまり売却が意識されやすくなる。背景には日銀保有のETFにかなりの含み益がある事実もある。

日銀によると23年3月末のETF保有額は簿価約37兆円、時価約53兆円で、含み益は約16兆円だった。ニッセイ基礎研究所の井出真吾氏の試算によると、その後の株高で5月末の含み益は一段と膨らみ19兆9359億円とほぼ20兆円に達したという。6月に入りさらに増えている可能性がある。

早期の放出には慎重

この含み益を国民に還元したらどうかという議論がかねてある。売却制限を付けた上でETFを割引価格で個人投資家に譲渡するなどの案だ。だが、日銀は「処分の具体的な方法に言及するのはまだ早い」(植田和男総裁)とする一方、「処分価格は時価をベースとする」(同)という姿勢だ。つまり早期の放出はなさそうで、仮に将来売るとしても割引価格ではないという方向性だ。

ETFは時価であれ割引価格であれ売却すれば株価へのマイナスの影響が懸念される。だが、日銀が早期放出に慎重になる理由はそれ以外にもあるようだ。異次元緩和のもうひとつの出口政策である短期政策金利の引き上げが関係している。

将来、マイナス金利政策を解除し利上げを進める際に、日銀は金融機関が持つ日銀当座預金の大部分にかかる金利(付利)を上げる手法を当面とると見られている。なぜか。

巨額なマネーが供給されている状況を考慮すれば、日銀がちょっとやそっとの資金吸収をしても短期市場金利を高めに誘導するのは難しい。だからといって、保有する長期国債を思い切って売るようなことをすれば短期金利どころか長期金利までが跳ね上がり、経済が混乱しかねない。そこで大量の国債を持ち続けたまま短期金利を上げるための方策が、付利引き上げなのだろう。

問題は異次元緩和で日銀当座預金が膨張している点だ。

付利対象部分の当座預金は今春時点で500兆円を超えていたもようで、大ざっぱな計算だが0.25%の利上げごとに年間1兆円超の金融機関への追加的支出になる。一方、日銀の当期剰余金(最終利益に相当)は、現行日銀法施行(1998年)以降で「最高益」だった2022年度でも2兆円程度。0.5%の利上げで消える計算だ。金利が上がっていくなら資産側の保有国債の利息収入が増加する点も考慮は必要だが、あくまで新たに買った分から徐々に増えるのが基本だ。

仮にETFを手放し分配金(22年度で1兆1000億円程度)を得られなくなれば、以上のような利上げ時の日銀財務への悪影響が強まりかねない。日銀の「自己資本」は22年度末で12兆円程度だから、利上げが進んでいくなら何年かで債務超過になる恐れすら指摘される。これがETFの売却に慎重な一因ではないか。

もちろん時価での売却ならその時点では利益を手にできる。割引価格で売るよりは財務への打撃が小さい。だから「処分価格は時価がベース」なのだろう。ただし、すべて売ってしまえば利益は得られなくなる。日銀はそれより保有を続けて分配金を継続的に得た方が望ましいと判断しているかもしれない。とすれば時価であっても早期の売却はしない方がいい。そこで「処分の具体的な方法に言及するのはまだ早い」としているように見える。
中銀が短期的に赤字や債務超過に陥っても政策がしっかり運営されていれば問題はないとの議論にはそれなりに説得力があるものの、市場が冷静に受け止めるかはわからない。円売り材料になるリスクもゼロではない。

利上げが視野に入りつつある証拠?

7日の国会で植田総裁も「ETFの配当金が無い場合は、その分、収益は下がるので、全体の姿はやや厳しめになる」と語った。「日銀の財務の悪化が着目されて金融政策の議論をめぐる無用の混乱が生じ、信認の低下につながるリスクを避けるために、財務の健全性にも留意しつつ適切な政策運営に努めたい」とも述べた。9日の国会では、金融政策の出口になったときETFを持ち続けることも「ひとつの選択肢」と答えた。

将来の金利引き上げ局面でETFの分配金が重要性を増すと考えている印象はやはりある。そう判断しているのは、利上げが徐々に視野に入りつつある証拠なのかもしれないのだが。

[日経ヴェリタス2023年6月11日号]

【関連記事】

・植田日銀総裁、ETFの処分議論「まだ早い」
・利上げとETF放出の両立難しく 日銀、緩和出口の難路
・植田日銀、揺れる緩和維持シナリオ 強まる物価高に苦悩 』

ジョンソン元英首相が議員辞職 コロナ下でパーティー

ジョンソン元英首相が議員辞職 コロナ下でパーティー
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR1006X0Q3A610C2000000/

『【ロンドン=江渕智弘】英国のジョンソン元首相は9日、議員を辞職すると明らかにした。英メディアが報じた。新型コロナウイルス対策の行動規制下に首相官邸などでパーティーを開いた問題で議会の調査を受けていた。

2020年以降のロックダウン(都市封鎖)などの厳しい規制下で官邸や政府機関で繰り返しパーティーが開かれた。当時首相で規制順守を呼びかける側のジョンソン氏も一部に参加した。罰金を科されたが、議会答弁…

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『罰金を科されたが、議会答弁では規則違反を一貫して否定していた。

議会の特権委員会はジョンソン氏の答弁が故意に議会を欺いたり侮辱したりするものだったかを調べた。故意に欺いたと判断すれば議員活動の停止を勧告できる。公共放送BBCによると委員会は同氏に対する非難と証拠を詳細に記した報告書をまとめた。

報告書を受け取ったジョンソン氏は9日の辞職声明で「委員会が私を議会から追い出そうと決意していることが明らかになった」と指摘した。そのうえで「報告書は不正確な情報に満ちているが私には異議を唱える正式な能力がない」と説明した。

ジョンソン氏はロンドン市長や外相を歴任し、19年に首相に就任した。英国が20年に欧州連合(EU)から離脱するのを先導した。トランプ前米大統領に似た歯に衣(きぬ)着せぬ物言いや金髪で大柄な体形から「英国のトランプ」と呼ばれた。コロナ下のパーティーをめぐる一連の問題は22年9月の首相辞任の引き金にもなった。

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ザポリージャ州オレホボ周辺の戦い、ロシア国防省は攻撃を撃退したと主張

ザポリージャ州オレホボ周辺の戦い、ロシア国防省は攻撃を撃退したと主張
https://grandfleet.info/war-situation-in-ukraine/battle-around-orekhovo-zaporizhia-oblast-russian-ministry-of-defense-claims-to-repel-attack/

『2023.06.9

ロシア国防省はザポリージャ州オレホボ周辺の戦いについて「攻撃を撃退した」と発表したが、ロシア側情報源は「ロボタイン郊外で激しい戦闘が続いている」と主張しており、初日の作戦で破壊されたレオパルト2の映像も登場した。

参考:Минобороны России
電撃的な前進は不可能なのでウクライナ軍の反撃は腰を据えて見ていく必要がある

ロシア国防省は9日「ノヴォダニリウカやマラ・トクマチカ周辺のウクライナ軍に砲撃や空爆を加えて攻撃を2度撃退した。この地域で敵は兵士680人、戦車35輌、歩兵戦闘車11輌、装甲車輌19輌、HMMWVを含む車輌6輌、仏製自走砲Caesar1輌を1日で失った」と述べており、ロシア側情報源は「敵に奪われたカムヤンスキー近くの入植地(ロブコベ)に大規模な反撃を加え、同地を守っていたウクライナ軍は撤退した」と主張している。

出典:GoogleMap ザポリージャ州オレホボ周辺の戦況/管理人加工(クリックで拡大可能)

ウクライナ側はザポリージャ州オレホボ周辺の反撃について沈黙を守っており、ロシア側の主張も視覚的な裏付けがないので何も判断できないが、ロシア側情報源は「ウクライナ軍とロボタイン郊外で激しい戦闘が続いている」とも主張しており、多くの観測者は「ウクライナ軍がロボタイン郊外に向けて近づいている」と見ている。

因みにウクライナ側からも「ロブコベに入るウクライナ軍兵士」「初日の作戦で破壊されたレオパルト2」「戦闘に参加するレオパルト2A6」「ロシア軍陣地に襲撃する様子」といった映像が登場しており、恐らく1番目の映像はロシア軍の反撃を受ける前のものだろう。

Footage allegedly from Lobkove, Zaporizhzia region. Ukrainian forces entering the small village while artillery goes back and forth. pic.twitter.com/WcNymdrN1s

— NOELREPORTS 🇪🇺 🇺🇦 (@NOELreports) June 9, 2023

⚡️One of the disabled Leopard 2 as a result of the Ukrainian counteroffensive in Zaporizhia pic.twitter.com/EKvZfA7a1f

— War Monitor (@WarMonitors) June 9, 2023

A Ukrainian soldier with a GoPro cam shows us what it is like to be storming a russian trench, location won’t be disclosed. pic.twitter.com/Ck0DVVjpFP

— Mr. Parrot ™ 🇺🇦 (@parrot_soldier) June 9, 2023

⚡️Leo in action, Zaporizhia pic.twitter.com/nu6RpqKciv

— War Monitor (@WarMonitors) June 9, 2023

追記:ウクライナ軍東部司令部は9日「バフムート方面の一部で最大1.2km前進した」と発表したが、何処から何処へ前進したのかは不明だ。

追記:レオパルト2A4/A6×5輌、 T-72M1×1輌、ブラッドレー×6輌、MaxxPro×3輌、YPR-765×1輌、VAB×1輌、地雷除去車輌×1輌が破壊(放棄)されたことを示す写真と映像、オレホボの南でロシア軍のKa-52の攻撃を受けるウクライナ軍部隊(装甲車輌の車列)の映像が登場した。

関連記事:ウクライナ軍がバフムートとザポリージャで反撃、要所のベルヒフカに迫る
関連記事:米メディア、ウクライナがザポリージャ州で待望の反撃を開始した
関連記事:ウクライナ軍が反攻作戦を開始、ザポリージャ州オレホボの南で交戦中
関連記事:オレホボ周辺の戦い、ウクライナ軍がレオパルト2を含む装甲車輌を投入

※アイキャッチ画像の出典:Генеральний штаб ЗСУ
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投稿者: 航空万能論GF管理人 ウクライナ戦況 コメント: 83 』

プーチン大統領、ウクライナの反攻「始まったと言える」

プーチン大統領、ウクライナの反攻「始まったと言える」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR09D6W0Z00C23A6000000/

『ロシアのプーチン大統領は9日、ウクライナの反攻について「始まったと断言できる」と国営テレビで述べた。「ウクライナ軍はどの方面でも目的を達成できなかった」とも述べ、ロシア軍が撃退していると主張した。

南部ソチで語ったとタス通信が伝えた。プーチン氏がウクライナ軍の大規模反攻の開始に言及するのは初めて。プーチン氏は撃退していると主張した一方で「(ウクライナ軍の)戦力は依然として残っている」とも述べ、引き続き反攻への対応を続ける考えを示した。
ロシアではこれまで、ショイグ国防相が6日にロシアメディアに対し、ウクライナの大規模反攻が始まったと発言していた。足元ではウクライナ軍の反攻が各地で続いており、ロシア軍が撃退していると強調していた。

複数の欧米メディアは、ウクライナ軍が8日に複数の前線で反攻を始めたとの見方を伝えた。

【関連記事】
ウクライナ、南部で反転攻勢 独戦車レオパルト2投入』

生来の決意作戦

生来の決意作戦
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%9F%E6%9D%A5%E3%81%AE%E6%B1%BA%E6%84%8F%E4%BD%9C%E6%88%A6

 ※ 今日は、こんな所で…。

『出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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この記事には暴力的または猟奇的な記述・表現が含まれています。免責事項もお読みください。

生来の決意作戦
Hires 141019-N-HD510-062a.jpg
イスラム国爆撃のため空母から発進するアメリカ空軍のF/A-18F戦闘機。
戦争:生来の決意作戦
年月日:2014年8月 ~ 継続中[1]
場所:イラクやシリア等中東諸国[2]。
結果:イスラム国の弱体は進んでいるが、作戦自体は継続中[3]。
交戦勢力
Seal of Combined Joint Task Force – Operation Inherent Resolve.svg有志連合 ISIL(イスラーム国)の旗 イスラム国
指導者・指揮官
アメリカ合衆国の旗 バラク・オバマ
アメリカ合衆国の旗 ドナルド・トランプ
アメリカ合衆国の旗 ジョー・バイデン
ヨルダンの旗 アブドゥッラー2世 ISIL(イスラーム国)の旗 アブー・バクル・アル=バグダーディー †
ISIL(イスラーム国)の旗 アブイブラヒム・ハシミ †
ISIL(イスラーム国)の旗 アブハッサン・ハシミ †
ISIL(イスラーム国)の旗 アブフセイン・フセイニ

戦力

空爆8289回[4] 最盛期3万3000人[5]

損害

米兵8人以上戦死[6]
ヨルダン軍パイロット拘束・虐殺[7] 指導者ら急襲・殺害
組織弱体化[8]

シリア内戦

    ホムス ドゥーマ ロジャヴァ革命 ホウラ虐殺 アレッポ ダマスカスの火山とシリアの地震 グータ ラッカI ラッカII コバニ 生来の決意 パルミラ ラマダン攻撃 イドリブⅠ ロシア軍による空爆 ロシア軍爆撃機撃墜事件 ラタキアⅠ ラタキアⅡ ユーフラテスの盾 ユーフラテスの怒り イドリブⅡ カーン・シェイクン シャイラト オリーブの枝 カイラ・ミューラー 平和の泉 ダルアー

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生来の決意作戦(せいらいのけついさくせん、英語: Operation Inherent Resolve)は、2014年8月に開始されたアメリカ合衆国を中心とする多国籍軍によるイスラム過激派組織・イスラム国に対する軍事作戦。当初はイラクやシリア国内に限定しており、その内容もイラク軍やクルド人部隊の地上勢力支援や救援物資の搬入を目的とした限定的な作戦行動であったが、次第に作戦の範囲が拡大しイスラム国撃滅作戦へと発展。アメリカ軍やイギリス軍などがイスラム国の支配地域で連日空爆を行っており、かつては中東全域を支配線とする勢いであったイスラム国も現在ではかなり弱体化しているとされる。Inherent Resolveは固有の決意、確固たる決意、不動の決意とさまざまに訳されるが、生来の決意が最も一般的である[9]。

経緯

ISILの敵対国家
生来の決意作戦統合任務部隊参加国
その他の対立国
2015年末のISIL最大勢力範囲

フセイン政権崩壊後の2006年頃、イラクの聖戦アル=カーイダ組織を元に誕生したイスラム過激派組織・イスラム国は次第に勢力を広め、2014年に入った頃にはイラクやシリアなど中東諸国の政治的混乱に乗じてこれらの国の大部分を制圧し、支配下に置いた。その上イスラム国は子供に対する人身売買や生き埋め[10]、イラク北部の少数民族であるヤズィーディーの人々に対する虐殺や強姦・売春[11]、9歳以上の女性や少女を拉致して強姦し自殺に追い込む[12]、さらには誘拐した14歳の少女を集団で強姦した上その様子を少女の携帯電話で親に聴かせる[13]、ヨルダン軍のパイロット・ムアズ・カサースベに対しては生きたまま火を放って焼き殺す[14]など、残虐行為を行った。

2014年8月、アメリカ合衆国はイスラム国殲滅作戦の開始を宣言。イスラム国が残虐行為を行ってきた支配地域に空爆を開始した。なお、イスラム国は周辺のイスラム世界の国々やイスラム教徒からも激しく嫌悪されており、もはや彼らはイスラム教徒ですらない単なる残虐な犯罪組織であると認識されていたため多くの国々も軍を派遣してイスラム国を殲滅せんと団結し、連合作戦を着実に遂行した[15]。その結果イスラム国の支配地域はその90%が多国籍軍や地元の義勇軍によって解放され、2017年頃にはその「疑似国家」は事実上崩壊。残虐な人権蹂躙を繰り返してきたイスラム国は、最後には世界中を敵に回して崩壊したのであった[16]。

2014年

1月26日 - コバニ包囲戦が開戦。
8月7日 - フランスの求めにより国連安保理の緊急会合が非公式で開催。過激派組織ISILによる攻撃で、危機に直面しているイラクを支援する呼び掛けが行われる。同日、アメリカ合衆国のバラク・オバマ大統領がISILに対する限定的な空爆を承認。
8月8日 - アメリカ中央軍がイラク国内のISILの拠点に対して空爆を開始。以後、フランス、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、バーレーンも作戦参加表明。
8月25日 - バラク・オバマ大統領がアメリカ軍によるシリア上空での偵察飛行を承認した[17]。
9月19日 - 国連安保理は、全会一致でISILの壊滅に向けて対策強化を求める議長声明を採択した[18]。また、同日、フランス軍はイラク北東部のISILの補給所に対して、初の空爆を実施した[19]。
9月23日 - 空爆対象区域をISILの活動範囲に合わせてシリアにも拡大[20]。
9月25日 - ベルギーとオランダが作戦参加表明。
9月26日 - 有志国としてイギリス、デンマークが参加表明。ギリシャも参加の意向が伝えられる[21]。
9月27日 - ヨルダンが作戦参加表明。
10月7日 - カナダ国会が作戦参加を決議。
10月9日 - オーストラリアが参加。同国空軍のFA-18が初空爆。
10月12日 - トルコがアメリカと有志連合に対し、インジルリク空軍基地の使用を承認。
10月15日 - 作戦名「生来の決意作戦」を公式発表。作戦内容は軍事のみではなく外交や諜報、経済などの手段も使うことを言及[22]。
10月23日 - シリア国内への空爆1ヶ月間の死者数が、ISIL戦闘員を中心に553人に達する。
11月8日 - イラクのモスル近郊の爆撃により、ISIL指導者アブー・バクル・アル=バグダーディーが死亡または負傷したと報じられたが[23]、ISILは11月13日に音声を公開し死亡報道を打ち消した[24]。
12月24日 - 空爆に参加していたヨルダン軍のF-16が墜落(ISIL側は撃墜を主張)し、パイロット1人がISILに拘束された[25]。パイロット拘束の後から、ヨルダンとアラブ首長国連邦は空爆作戦への参加を停止している[26]。

2015年

ジャスティン・トルドーは2015年カナダ総選挙で勝利した後、電話でバラク・オバマに米国主導の対ISIL空爆からの漸次撤収を伝達。カナダ空軍のジェット戦闘機CF-18 ホーネットを中東から撤収させる意向を示した[27]。具体的撤収時期を設定することは避けた。北イラクにいる約70のカナダ特殊部隊のミッションについては継続させる。トルドーは約3500万人のカナダ人の代表として、我々は戻ってきたのだというメッセージになると述べた[27]。
1月26日 - コバニ包囲戦が終結。
2月3日 - ISILが、拘束していたヨルダン軍パイロットを焼死させる映像を公開。ヨルダン政府では、1月3日に殺害されたことを確認しているという[28]。この映像の公開を受け、ヨルダン軍はISILに対する空爆を再開した[29]。しかし、アラブ首長国連邦は空爆をまだ停止しており、再開の条件として、新型輸送機オスプレイの作戦への投入など、米軍が態勢を強化することを提示している。
4月8日 - カナダ空軍のCF-18AがシリアのISIL拠点を初空爆。
5月16日 - 米軍特殊部隊が同組織で資金源である原油・ガス取引などを指揮していた幹部、アブ・サヤフ (ISIL)(英語版)を殺害したと発表[30]。人質救出作戦以外ではシリアで初の地上作戦となった[30]。
8月21日 - アメリカ軍が空爆で、当時ISナンバー2であったファディル・アフマド・ハヤリ(英語版)幹部(旧イラク軍中佐)を殺害したと発表[31]。
8月24日 - アメリカ軍がISの「首都」ラッカに空爆を行った際、ジュネイド・フセイン(英語版)幹部を殺害したと明らかにした[32]。同幹部は世界各地でテロをおこす「一匹オオカミ」型のテロ要員確保を担っており、米軍や政府の関係者約1300人の個人情報をネット上に公開し、彼らを襲撃するよう呼びかけていた[32]。
8月28日 - トルコ軍がシリアのISIL拠点を初空爆[33]。
9月27日 - フランス大統領府が、フランス軍がシリアのISILの拠点に対して初めて空爆を行ったことを発表した[34]。
9月30日 - ロシア軍がシリア国内のISIL拠点への空爆開始。
10月7日 - ロシア海軍がカスピ海からシリア国内のISIL拠点への巡航ミサイル攻撃を実施。
10月22日 - イラク北部のキルクーク県で米軍特殊部隊がペシュメルガとの共同作戦により、ISIL拠点からのイラク人救出作戦に成功。戦死1名。
11月15日 - フランス軍がシリア国内のISIL拠点への空爆再開。
11月27日 - ドイツが作戦参加表明。
12月2日 - イギリス議会はイラクで実施している空爆をシリアへ拡大するよう求める動議を賛成多数で可決し承認した[35]。翌日に空爆を始めた[35]。
12月3日 - イギリス軍がシリア国内のISIL拠点を初空爆。
12月29日 - イラク政府軍がイラク西部・アンバル州の州都ラマディを奪還。

2016年

偵察任務に就いているドイツ空軍のトーネードがソフトウェア・アップデートを行ったが、これにより操縦室補助照明の照度がパイロットの視力に影響を与えるほど上がり、ドイツ空軍は夜間作戦を中止している[36]。
2月 - 米軍特殊部隊がISIL幹部Sleiman Daoud al-Afari(化学兵器部門)を拘束。 

3月24日 - 米軍特殊部隊が行った急襲作戦で、当時IS組織ナンバー2であったアブドルラフマン・ムスタファ・カドゥリ(英語版)財務大臣が死亡したと発表した[37][38][39][40]。

3月14日、米軍の空爆によりアブオマル・シシャニ(英語版)戦争大臣(元グルジア軍司令官)が死亡したと発表した[41][42][43][44]。
6月27日 - 米軍主導の有志連合から援護を受け、イラク軍が西部の都市ファルージャを奪還。

2017年

1月 - 米軍特殊部隊がISIL幹部アブ・アナス・アル=イラク(財務部門)を殺害。
6月18日 - シリア北部タブカ南郊の上空でアメリカ海軍空母ジョージ・H・W・ブッシュ所属のFA-18がアサド政権軍のSu-22戦闘爆撃機を撃墜した。有志連合が支援する「シリア民主軍」の戦闘員らが展開している地域を政権軍が空爆したため、交戦規定に基づき集団的自衛権を適用した[45]。この月、有志連合はこれ以外にも8日と20日にもアサド政権側の武装無人機を撃墜している[46]。ロシアは19日、有志連合によるシリア軍機撃墜に強く反発し、シリアを飛行する有志連合の軍用機や無人機を「防空システムの標的とし、ロシア軍機を同伴飛行させる」と発表した。オーストラリアはロシアのこの措置を受け、当面の間シリア空爆を見合わせることを発表している[45]。
7月10日 - 米軍主導の有志連合から援護を受け、イラク軍がモスルを奪還。
10月17日 - 米軍主導の有志連合から援護を受け、イラク軍がISILの「首都」ラッカを奪還。

2019年

3月23日 - 「シリア民主軍」がISIL最後の拠点だったシリア東部のバグズ町を完全に制圧したと発表。
5月31日 - 連合軍の攻撃による過失で少なくとも1302人の民間人が死亡したと、認めさらに111人の民間人が犠牲になったとみて、調査を進めている。[47]。
10月17日 - シリアのクルド人民兵組織「シリア民主軍」が対ISIL作戦を停止。
10月26日 - 米陸軍特殊部隊がISILの拠点を襲撃し、最高指導者のアブー・バクル・アル=バグダーディー殺害に成功[48]。
詳細は「カイラ・ミューラー作戦」を参照
10月31日 - バグダーディーの後継者としてアブイブラヒム・ハシミが選出。

2020年

3月17日 – 米政府がISILの新指導者、アミル・モハメド・アブドル・ラーマン・マウリ・サルビ(Amir Mohammed Abdul Rahman al-Mawli al-Salbi)容疑者を国際テロリストに指定。
3月31日 – ドイツ空軍がトーネードECRが同作戦任務を終了したと発表。
5月10日 – フランス空軍ラファールB2機が「シャマール作戦(opération Chammal)」でイラクにあるISIL拠点を空爆。
5月17日 – 米軍とシリア民主軍の共同作戦によりシリア東部のデリゾール県でISIS幹部のアフマド・イサ・イスマイル・アズ・ザヴィとアフマド・アブド・ムハメッド・ハザン・アリ・ジュガイフィを殺害。
6月1日 – イラクのムスタファ・カディミ首相の指示により、キルクーク県南西部で対ISIL『イラクの英雄』作戦が開始された。』

IS解放地復興に800億円 有志国、イラクとシリアで

IS解放地復興に800億円 有志国、イラクとシリアで
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB091L50Z00C23A6000000/

『【リヤド=共同】過激派組織「イスラム国」(IS)掃討を進める有志国連合は8日、サウジアラビアの首都リヤドで閣僚級会合を開き、共同声明を発表した。シリアとイラクでISから解放した地域の復興に向け、約6億ドル(約833億円)の資金を募る目標を表明した。既に計3億ドル以上の拠出が決まったとしている。

ブリンケン米国務長官がサウジのファイサル外相と会合を共催。終了後の共同会見で「現地の人々を絶望させている治安や経済、人道状況の悪化がISに悪用されないようにする」と訴えた。

共同声明は、シリアとイラクが「依然として最優先事項であり続けている」と指摘。米軍主導の掃討作戦によるIS支配からの解放地域では人道支援や治安対策、社会の安定化のための支援に注力する方針を示した。

アフリカやアフガニスタン、中央アジアなどでIS系勢力の活動が続いていると懸念。過激思想のプロパガンダの阻止やテロ資金源の遮断などに取り組むとした。

ブリンケン氏は会合で、西アフリカやアフガンでIS系勢力によるテロが続く現状を憂慮。各地の勢力への活動資金供給を担ってきたIS幹部2人に対し、新たに米独自の制裁を科したと明らかにした。

有志国連合は西アフリカ・トーゴが新たに加わったことで計86カ国・地域となった。』

独ショルツ政権、「暖房法案」で混乱 支持率は最悪水準

独ショルツ政権、「暖房法案」で混乱 支持率は最悪水準
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR30BX20Q3A530C2000000/

『【ベルリン=南毅郎、フランクフルト=林英樹】ドイツで暖房規制案を巡り混乱が広がっている。2024年1月から新設の暖房システムに再生可能エネルギーの利用を義務付け、ガスや灯油など化石燃料の利用を原則禁止する内容だ。国民から設備投資の負担増に反発が強まり、ショルツ政権の支持率は最悪水準に急低下した。

「33年間、灯油の暖房を使ってきたが、来年以降は故障したら修理できなくなるかもしれない」。フランクフ…

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『フランクフルト郊外に住むロバート・シュナイダーさんは不安を募らせる。暖房の切り替えを業者に相談したところ、暖房の方式によっては1万4500〜3万1000ユーロ(約220万〜470万円)と高額な費用になることが分かったためだ。

ドイツで建造物エネルギー法案(通称「暖房法案」)が大きな論争を呼んでいる。24年1月以降に設置する暖房システムは、少なくとも65%の再エネ利用が義務化になる。4月中旬に閣議決定したものの、導入が拙速として議会でも議論が紛糾。環境意識が高いはずのドイツ国民からも批判を浴びる事態になっている。

国民が警戒するのは設備投資の負担増だ。ドイツでは国内4100万世帯のうち、およそ半分はガスによる暖房が占める。次いで灯油が25%だ。ウクライナ危機に伴う急激なインフレが長引くだけに、暖房法案の是非を巡って世論は揺れ動いている。

公共放送ARDがまとめた6月の世論調査では、ショルツ政権への満足度が20%と21年12月の政権発足以降で最悪水準になった。ウクライナ侵攻直後の22年3月には50%を超えていたのが、下落基調は止まらない。

政党別の支持率もじわり変わった。ショルツ首相が率いてきたドイツ社会民主党(SPD)は18%で、連立を組む環境政党の「緑の党」は15%に沈んだ。対照的に、極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」は18%と躍進。SPDに並ぶほどになった。

批判の矛先が向かうのは、暖房法案を主導してきた緑の党出身のハベック経済・気候相だ。ハベック氏は政治家別の支持率で首位争いを演じるほどの人気があったが、縁故採用を巡る疑惑で次官を事実上更迭するなどの不祥事も重なった。

ショルツ政権は同氏が率いるSPDと、緑の党、自由民主党(FDP)の連立政権だ。暖房法案を巡ってはFDPが「国民を不安にさせている」と法案見直しを訴えるようになった。

ショルツ政権が暖房システムに着目するのはドイツ固有の事情も大きい。寒くて長い冬を迎えるドイツでは、効率的な暖房システムの構築が脱炭素社会の実現へカギとなるからだ。

ドイツ政府は温暖化ガスの排出を実質ゼロにするカーボンニュートラルの達成目標を50年から45年に前倒しする方針を決定済みだ。欧州連合(EU)がめざす50年より早く構造転換が必要となる。

ドイツ政府は、電気で大気中や地中の熱を取り込んで圧縮し、つくりだした温水を家中に循環させる「ヒートポンプ」への切り替えを奨励する。ただヒートポンプは高価で、機器の盗難事件も起きるほどだ。

混乱は暖房業界にも及んでいる。ドイツの暖房メーカー、フィースマンは4月下旬、ヒートポンプを含む空調部門を、競合の米社キヤリア・グローバルに売却すると発表した。暖房の切り替え需要に対応しようとしたが、自社の資金力だけでは投資が追いつかないと判断した。

今回の混乱劇では、生活の安定へ現実問題を優先せざるを得ないドイツ国民の姿勢が改めて鮮明になった。「脱原発」が完了した今春には、原子力発電所の運転延長を求める世論が盛り上がった。

政権運営の混乱を前に、ショルツ氏は指導力を発揮できるのか。一部の世論調査では、次の国政選挙を控える25年までに政権が崩壊するとの回答が51%と過半に達した。

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・ドイツ、2四半期連続マイナス成長 1〜3月期GDP0.3%減
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・独首相「必要な限りウクライナ支援」 融和演出に苦心 』

刃物襲撃、幼児ら6人負傷 仏東部、シリア難民男拘束

刃物襲撃、幼児ら6人負傷 仏東部、シリア難民男拘束
https://www.sankei.com/article/20230609-QIUEBICAU5PQFNGDI2RWQXUTBA/

『フランス東部アヌシーの公園などで8日、男が刃物で子どもらを襲い、1~3歳の幼児4人を含む6人が負傷した。うち幼児2人を含む3人が重体。駆けつけた警察官が男を拘束した。ニュース専門テレビBFMなどが伝えた。検察当局者は記者団に「目に見えるテロの動機はない」と述べた。捜査当局は殺人未遂容疑で動機を調べている。 警察によると、容疑者はシリア国籍の31歳。スウェーデンで難民認定を受け、フランスでも難民申請している。キリスト教徒だと自称し、拘束された際、十字架を身に着けていた。犯行時に「イエス・キリストの名の下に」と叫んだという。

現場は観光地として知られるアヌシー湖のほとり。目撃者の話によると、男は多数の子どもがいた遊び場で襲撃して逃走、高齢者をさらに襲った。負傷した幼児にはオランダ人と英国人も含まれる。(共同)』

OECD閣僚理事会、インド太平洋と協力 東南ア加盟視野

OECD閣僚理事会、インド太平洋と協力 東南ア加盟視野
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR07DOU0X00C23A6000000/

『【パリ=北松円香】7日からパリで開かれていた経済協力開発機構(OECD)閣僚理事会は8日、インド太平洋地域との協力強化の新たな枠組みなどを盛り込んだ声明を採択した。特に成長性の高い東南アジア諸国の加盟を視野に入れる。存在感を増すアジアの国々を取り込み、国際的な政策協調やルール形成といったOECDの機能強化を狙う。

声明は今回合意した「インド太平洋戦略枠組み」について東南アジア諸国連合(ASEAN)との協力の上に成り立つとし、同地域が世界の経済成長や供給網、気候変動対策などで重要だと指摘した。「加盟候補となり得る国々を特定していく」との方針を示した。

OECDは歴史的な経緯から米欧など西側諸国のメンバーが多い。現状では加盟38カ国中、アジアからは日本と韓国の2カ国のみだ。

日本は2024年の理事会の議長国に立候補した。8日に山田賢司外務副大臣と中谷真一経済産業副大臣が記者団に対し明らかにした。24年が日本のOECD加盟60周年にあたることから、議長国として理事会における議論の主導を目指す。

議長国は今後加盟国が協議によって確定する。日本が議長国となれば3回目で、前回の14年以来10年ぶり。他に立候補した国はないという。

今回の理事会ではウクライナの欧州連合(EU)とOECD加盟に向けた4年間の支援プログラムでも合意した。ガバナンス向上や腐敗の撲滅、対内投資の促進などに取り組み、同国の復興にもつなげる。

理事会は多国籍企業に責任ある行動を求める「多国籍企業行動指針」の12年ぶりの改定を承認した。気候変動などに関し、企業がよりいっそう責任を果たすよう促す。5月の主要7カ国首脳会議(G7広島サミット)で決まった生成人工知能(AI)などのルール作りの枠組み「広島AIプロセス」にもOECDとして協力する。』

ウクライナのダム決壊、「渡河作戦」困難に 反攻に影響

ウクライナのダム決壊、「渡河作戦」困難に 反攻に影響
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR07E4N0X00C23A6000000/

『【ウィーン=田中孝幸】ウクライナ南部ヘルソン州で6日に起きたダム決壊による洪水で、領土奪回に向けた本格的な反転攻勢を前に南部での戦況に影響が出ている。被災地域への支援の遅れへの懸念も広がる。ゼレンスキー大統領は7日、国際機関の動きの遅さに危機感を表明した。

国営ロシア通信によると被災したロシア支配下の当局者は8日、洪水で5人が溺死したと明らかにした。AFP通信によると、これまでに被災地域の約6千…

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『AFP通信によると、これまでに被災地域の約6千人の住民が避難を余儀なくされた。水没した地域の状況把握はいまだ難しく、実際の被災規模はこれを上回るとの見方が多い。

南部の広大な戦闘地域が被災したことで、すでに戦況への影響が出ている。ヘルソン州でロシア側が任命した当局者はダムの決壊による洪水でウクライナにとってドニエプル川の渡河作戦が困難になったと指摘。「軍事面では戦術的にロシア軍に有利な方向に進んでいる」と語った。

一方、米戦争研究所は7日に発表した戦況分析で、洪水により前線地域の地形が変化し、同川の東岸にあったロシア軍の防御陣地の多くが破壊されたと指摘した。衛星画像を基に、最前線にいた一部のロシア軍部隊は「洪水で撤退を余儀なくされた可能性が高い」との見方を示した。

西側各国からは被災地への支援の表明が相次いでいる。欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長は6日、加盟各国と浄水ステーションやポンプなどの提供に向けた調整をしていると明らかにした。

ドイツ政府は5千台の浄水器と56台の発電機に加え、テントやベッドを供与すると発表した。フランスのマクロン大統領も7日、緊急援助を送ると表明した。

北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は7日、ウクライナのクレバ外相と電話協議した。同氏によると、ストルテンベルグ氏はNATOの枠組みで人道支援を実施する意向を示した。

ただ、これらの支援の大半は復旧作業を後押しするものの、水没した家屋などに取り残された人々の救出には間に合わない可能性がある。水没地域の水位は週内は低下に向かわない見通しで、洪水で汚染物質が広範囲に拡散し、衛生環境も悪化している。

ロシアの支配下にある被災地での窮状はとりわけ深刻になっている。ゼレンスキー氏は7日、ツイッターへの投稿で「状況はまさに壊滅的だ。ロシアの占領者は人々をひどい状況に放置している。占領地域では救助も飲料水も医療活動もなく、どれだけの人々が死ぬかも分からない」と強調した。

赤十字国際委員会など国際機関からの支援が得られていないとも指摘した。「国際機関が直ちに救助活動に参加し、ヘルソン地域の(ロシア)占領地域の人々を助ける必要がある」と訴えた。8日にはヘルソン州の被災地域を訪れ、住民の避難や救助について現地の担当官と協議した。

援助機関の動きの遅さは、ロシアの占領当局との連携が極めて難しいことも背景にある。国際非政府組織(NGO)ワールド・ビジョンでウクライナ危機対応を担うクリス・パルスキー氏は「国際援助団体はロシア支配地へのアクセスを得られていない」と語る。

同州の州都ヘルソンの住民で、被災地域の支援に当たってきたワレリー・コマゴロフさん(32)は「現場で最も不足しているのは救助ボートだ」と語る。ヘルソン郊外の住宅地では8割が水没していると指摘。民間のボランティアが救出努力を続けていると述べたうえで「支援は早さが大事だ。この数日で物資が届かなければ多くの人命が失われる恐れがある」と訴える。

ダムの決壊は6日未明に発生。ウクライナとロシアの双方が相手側の攻撃の結果だとして非難している。トルコのエルドアン大統領は7日、ゼレンスキー氏、ロシアのプーチン大統領とそれぞれ電話で協議し、ロシアとウクライナ、トルコと国連などの専門家による国際調査委員会の設置を提案した。

【関連記事】

・ウクライナのダム決壊、トルコ大統領が国際調査委を提案
・NATO、ダム決壊で緊急会合 ウクライナへ人道支援
・ウクライナ、ダム決壊で農業に打撃 穀物価格が上昇 』

NATO、加盟国に災害支援要請 ウクライナのダム決壊

NATO、加盟国に災害支援要請 ウクライナのダム決壊
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR08DO20Y3A600C2000000/

『【ブリュッセル=辻隆史】北大西洋条約機構(NATO)は8日、ウクライナ南部ヘルソン州の巨大ダム決壊を受けて緊急会合を開いた。ストルテンベルグ事務総長は加盟国に対し、迅速な災害支援を求めた。NATOの災害対応組織がウクライナと調整し、必要な物資の手配を助ける。

ブリュッセルでの緊急会合はストルテンベルグ氏が呼びかけ、加盟国の大使級が参加した。同氏は「何千人もの人々や環境に対する影響は極めて大きい」…

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『同氏は「何千人もの人々や環境に対する影響は極めて大きい」と述べ、早期の支援を要請した。ウクライナのクレバ外相もオンラインで加わり、被害状況を説明した。

ダム決壊を受け、NATOの「欧州大西洋災害対処調整センター」の支援枠組みを活用する。加盟国やパートナー国による支援の提供を調整する組織で、2月のトルコでの大地震の際にも大きな役割を果たした。NATOには長年の災害支援の実績がある。

戦場でもあるため、NATOの部隊が直接被害現場に赴くことはしない方針だ。欧州各国は排水ポンプや発電機、浄水器、避難所設備などの援助に乗り出している。調整センターがウクライナのニーズを踏まえた物資のリストを加盟国などと共有し、必要なものを素早く届けられるようにする。

ストルテンベルグ氏は会合で、ウクライナへの中長期の支援策が重要になると強調。6月の国防相会合や7月の首脳会議で議論すると表明した。

6日にカホフカ水力発電所のダムが決壊し、洪水が発生した。周辺地域に甚大な被害が出ている。同発電所はロシアの占領下にあり、ロシアとウクライナはそれぞれ相手方の破壊行為だと主張している。』

ロシア、ダム決壊のウクライナ南部を攻撃 住民避難中に

ロシア、ダム決壊のウクライナ南部を攻撃 住民避難中に
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR08DD50Y3A600C2000000/

『【ドバイ=福冨隼太郎】ウクライナ検察当局は8日、巨大ダムの決壊による洪水に見舞われた南部ヘルソン州を同国に侵攻するロシア軍が砲撃したと明らかにした。住民が洪水からの避難中に砲撃を受け、負傷者が出ているとしている。

検察当局によると、ヘルソン市で洪水からの避難活動中にロシア軍が攻撃を実施した。少なくとも9人がけがをしたという。ウクライナ内務省は8日、通信アプリで「ロシアは最も貴重な人命をウクライナ…

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『ウクライナ内務省は8日、通信アプリで「ロシアは最も貴重な人命をウクライナが救うことを妨げている」と批判した。

ウクライナ軍参謀本部は同日、ヘルソン州のロシア軍占領地域では浸水した集落から逃げてきた市民を同軍が部隊の拠点に収容していると主張。「民間人を隠れみのにしている」と指摘した。

一方でロシアのタス通信も8日、浸水したヘルソン州の町からの避難場所をウクライナ軍が砲撃し、2人が死亡したと伝えた。

ヘルソン州では6日、ロシアが占領するカホフカ水力発電所のダムが爆発で決壊した。同州のプロクジン知事は8日、浸水した地域の68%がロシア軍が占領しているドニエプル川の南岸だと指摘した。

AFP通信によると、被災地ではこれまでに約6千人の住民が避難を余儀なくされている。ウクライナとロシアは「相手側の攻撃によるものだ」と互いを非難している。

【関連記事】

・NATO、加盟国に災害支援要請 ウクライナのダム決壊
・ウクライナのダム決壊、「渡河作戦」困難に 反攻に影響 』

中国、パキスタン・イランと対テロで協力 初の安保協議

中国、パキスタン・イランと対テロで協力 初の安保協議
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM089H80Y3A600C2000000/

『【北京=田島如生】中国、パキスタン、イランの3カ国政府は7日、北京でテロ対策に関する局長級の安全保障会議を初めて開いた。中国の新疆ウイグル自治区や南西アジア、中東地域のテロ情勢を話し合い、協力を確…

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『中国の新疆ウイグル自治区や南西アジア、中東地域のテロ情勢を話し合い、協力を確認した。

中国外務省が発表した。汪文斌副報道局長は8日の記者会見で「3カ国の利益と地域の安全を危険にさらすテロ勢力と断固として戦う」と強調した。3カ国は対テロ安保協議を定例化すると申し合わせた。』

中国、米標的のスパイ拠点でキューバと密約か 米報道

中国、米標的のスパイ拠点でキューバと密約か 米報道
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN08CRZ0Y3A600C2000000/

『【メキシコシティ=清水孝輔、ワシントン=中村亮】米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は8日、中国が米国を標的としたスパイ拠点の設置について、カリブ海の社会主義国キューバと密約を結んだと報じた。中国は財政難のキューバに対して数十億ドルを支払うという。

WSJが事情に詳しい米当局者の話として報じた。キューバは米国の軍事基地がある米南東部と距離が近い。中国はキューバに設置するスパイ拠点を通じて米南東部の通信機器のやり取りを盗聴するほか、船舶の動きを監視するという。

米国防総省のライダー報道官は8日の記者会見で報道に関し「我々が持つ情報に基づくと正確ではない。中国とキューバがスパイ拠点を整備していると認識していない」と説明した。「2カ国関係を引き続き監視している」とも述べた。

米国は2015年に当時のオバマ元大統領がキューバと国交を正常化した。その後に就任したトランプ前大統領は対キューバ外交を転換し、同国への経済制裁を強化した。バイデン米大統領もキューバに対する多くの制裁を続けており、両国の関係は冷え込んでいる。

キューバは米制裁で経済が低迷するなか、中国やロシアに支援を求めてきた。キューバのディアスカネル大統領は22年に両国を歴訪し、中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席やロシアのプーチン大統領と会談した。両国はエネルギー分野での協力や債務の見直しでキューバと合意を結んだ。

キューバは新型コロナウイルスの感染拡大で外国からの訪問者数が急減し、主な外貨獲得の手段である観光業が落ち込んだ。20年の実質経済成長率は前年比で10.9%のマイナスだった。21年の成長率は1.3%のプラスにとどまり、その後も回復が遅れている。

日本を含むパリクラブ(主要債権国会議)は15年、キューバに対する総額110億ドル(約1兆5000億円)の債権のうち8割近くを免除すると合意した。キューバは残りを18年間で返済する必要があるが、外貨不足で繰り返し返済猶予を求めてきた。

キューバは1959年の革命でカストロ兄弟らが親米政権を打倒し、共産党の支配が続いてきた。冷戦時代の1962年には米国と旧ソ連の間で起きたキューバ危機で核戦争のリスクが高まった。中国やロシアが米国の近隣国であるキューバとの関係をさらに深めれば、米国にとっては地政学リスクが高まる。

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・キューバ、カリスマ後の求心力低下 米制裁で経済低迷
・キューバ観光相、観光低迷でバイデン政権に不満
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柯 隆
東京財団政策研究所 主席研究員
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ひとこと解説

これは事実ならたいへんなことになる。アメリカは他国を偵察するが、自分が偵察されるのを認めないこと。ましてや世界二番目の中国に偵察されるのは絶対に許せない。しかし、中国ははるばるアメリカ南東部の通信をなぜ傍受するのか。長い間、中国の姿勢は基本的に守ることで、攻めることをやらないと思われていた。仮にこれは事実であれば、中国も守るだけでなく、攻めの姿勢に転換したのかもしれない
2023年6月9日 6:15』

中国、5月物価0.2%上昇 住宅不振響き停滞長期化も

中国、5月物価0.2%上昇 住宅不振響き停滞長期化も
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM0924L0Z00C23A6000000/

『【北京=川手伊織】中国で消費者物価指数(CPI)の停滞が長期化する懸念が出てきた。5月は前年同月比0.2%上昇にとどまった。住宅販売の不振が響き、家電や家賃といった関連のモノやサービスが値下がりした。雇用や所得の改善が緩慢で、物価が上がりにくい「ディスインフレ」の状況が続いている。

国家統計局が9日発表した。全体の上昇率は4月(0.1%)からわずかに拡大した。ただ1月の「ゼロコロナ」政策終了で始…

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『ただ1月の「ゼロコロナ」政策終了で始まった景気の持ち直しに息切れ感が出て、物価も伸び悩んでいる。

主要国の中央銀行が物価の趨勢を判断する際に重視する食品とエネルギーを除く「コア指数」の伸びは0.6%と、4月から0.1ポイント縮まった。同指数が映すとされる家計の購買力が盛り上がりに欠けるためだ。

中国で経済への波及効果が大きい不動産市場は今春以降、再び低迷している。不動産シンクタンクの易居不動産研究院によると、主要50都市の新築取引面積は4月に前月比25%減り、5月も1割超落ち込んだもようだ。

住宅が売れないと、付随するモノやサービスの消費もさえない。家電は前年同月比1.8%下落し、4月から落ち込み幅が拡大した。家賃は0.3%下がり、過去最長となる13カ月連続のマイナスを記録した。

自動車やバイク、スマートフォンなど通信機器もそれぞれ4.2%、2.1%、前年同月を下回った。耐久財の値下がりも物価上昇を阻む。このほかガソリンなど交通燃料も11.1%下回った。国際価格が昨年高騰した反動で、下落率は4月の10.4%から拡大した。

雇用の増加ペースが鈍く、消費や物価に影を落としている。中国人力資源・社会保障省によると、1〜4月の都市部新規雇用は424万人だった。昨春は上海がロックダウン(都市封鎖)に踏み切った。その反動で前年同期を4%上回ったが、新型コロナウイルス禍前の17〜19年平均と比べると9%少ない。

景気回復力に陰りが見え、金融市場では中国人民銀行(中央銀行)による追加利下げ観測が浮上している。国有大手銀行は8日、一斉に預金金利を引き下げた。預金コストを軽減させ、収益力を高めるとともに、住宅ローン金利や企業への貸出金利を引き下げる余力をつくったとの受け止めが広がった。』

「トランプ政治」継続か決別か 共和有力候補出そろう

「トランプ政治」継続か決別か 共和有力候補出そろう
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN07DNP0X00C23A6000000/

『【デモイン(米中西部アイオワ州)=坂口幸裕】マイク・ペンス前米副大統領が7日に2024年11月の米大統領選への出馬を表明し、野党・共和党の有力候補が出そろった。「トランプ政治」の継続か決別か――。乱戦の様相をみせる共和の候補者指名争いの論戦が本格化する。

「憲法より自らを優先させるよう求める人は再び米国の大統領になるべきではない」。ペンス氏は7日、中西部アイオワ州デモイン郊外のイベント会場で20…

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『ペンス氏は7日、中西部アイオワ州デモイン郊外のイベント会場で200人ほどの支持者を前に演説し、「元上司」との対決を宣言した。

演説でトランプ政権時代の功績を評価しつつ、21年1月の議会占拠事件を巡る前大統領の対応に話題を移すと厳しい非難に転じた。20年大統領選で敗れた前大統領が当時副大統領で上院議長を兼務したペンス氏に選挙結果を覆すよう要求し、同氏は拒んだ。

「トランプ政治」との決別か継続かが争点の一つとなる=AP

支持を期待するキリスト教右派が重んじる人工妊娠中絶への反対を明確にし、前大統領は考えを後退させていると決めつけた。前大統領は中絶の権利を制限する連邦法の支持を明言せず、各州に委ねるべきだとの立場をとる。

ペンス氏が抑えてきた前大統領に対する批判のトーンを強めた背景には、保守層の間で前大統領への不満が膨らんでいるとの読みがある。これまでは攻撃対象を議会占拠事件への対応に絞り、熱狂的な支持層を持つ前大統領への配慮をにじませていた。

フロリダ州のデサンティス知事=AP

南部フロリダ州のロン・デサンティス知事も5月24日の出馬表明後にアイオワを訪れ、中絶問題などを念頭に「彼はいくつかの問題で左派に寄った」と断言した。

アイオワは1972年から最初の党候補者指名争いとなる党員集会を開いてきた場所で、24年も各州の先陣を切って1月にも実施予定だ。選挙戦に弾みをつける初戦の勝利を各候補とも重視しており、前大統領やニッキー・ヘイリー元国連大使も現地に入った。

2月に予備選を開く予定の南部サウスカロライナ州はヘイリー氏が知事を務めたお膝元で、出馬表明の地に選んだ。前大統領とデサンティス氏もサウスカロライナと、同じく序盤戦の東部ニューハンプシャー州に足を運んだ。

前大統領とデサンティス氏の地元で大票田でもあるフロリダは16年と同じ日程なら3月中旬になる。3月上旬を見込む各州の予備選が集中する「スーパーチューズデー」までの戦いで水をあけられれば指名獲得は遠のく。

共和候補の政治コンサルティング会社「ファイアハウス・ストラテジーズ」のマット・テリル氏は「アイオワ州で勝てば勢いがついて知名度が上がり、党指名候補になる可能性はかなり高まる」と分析する。

前大統領と各候補の距離も展開を左右する。現時点で前大統領の優位は動かない。米リアル・クリア・ポリティクスによると前大統領の平均支持率は53%で、デサンティス氏が22%で続く。3位のヘイリー氏は4.4%、4位のペンス氏は3.8%にとどまる。

外交面では中国への強硬姿勢で各候補とも大きな差はない。違いが明確になっているのがウクライナ支援だ。前大統領は巨額支援の継続について言及を避ける。「欧州は努力せず、米国に頼っている。不公平だ」と提起し、欧州に負担増を迫る。

デサンティス氏は3月、一段のウクライナ紛争への関与は「(米国の)重要な国益」にならないとの認識を示した。ウクライナ支援の縮小を唱える共和支持層をおもんぱかったが、党内から批判も出た。

ペンス氏は支援の継続を訴える。「ロシアを撃退するまで必要な支援を続けるのは欧州での勝利と同時に、武力で国境線を引き直すのは許さないという中国へのメッセージになる」と明言。中国を「最大の経済的、戦略的な脅威」と位置づける。

ヘイリー氏も「ウクライナの勝利が米国の安全にとって最善の道だ」と話す。ロシアによるウクライナ侵攻を「領土争い」だと言及したデサンティス氏を「間違いだ」と断じた。
ニッキ-・ヘイリー氏は世代交代を訴える(米南部サウスカロライナ州)

共和の候補者は乱立する。ティム・スコット上院議員、東部ニュージャージー州のクリス・クリスティー前知事、南部アーカンソー州のエイサ・ハチンソン元知事も名乗りを上げた。候補者が増えれば反トランプ票が分散し、熱狂的な支持者を持つ前大統領に有利になるとの見方が広がる。

【関連記事】

・共和・ペンス氏が立候補届け出 乱戦でトランプ氏に利か
・デサンティス氏始動、まず保守票で足場 トランプ氏攻撃
・米国務長官、数週間以内に訪中 習氏と会談検討と米報道

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前嶋和弘
上智大学総合グローバル学部 教授
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ひとこと解説 「アイオワ州デモイン郊外での出馬イベント」がポイント。宗教保守の多い「アイオワ州で善戦し、一気に」という狙い。同州の共和党予備選投票者とみられる7,8割は宗教保守。一方でその中には強いトランプ支持も少なくないため、どうなるか。
2023年6月8日 8:02いいね
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上野泰也
みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト
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ひとこと解説ペンス前副大統領のトランプ批判は切れ味が鈍いものにとどまらざるを得ない。筆者がそう考える理由は2つ。まず、トランプ政権を副大統領として自らが支えたこと。立場上、この政権の実績を否定するわけにはいかない。今回の出馬表明では、トランプ氏が大統領として実現した成果に「感謝している」とも述べた。もう1つは、共和党支持者のうちかなり多くがトランプ支持だという事実。この人々から決定的に嫌われてしまうと、仮に何らかの理由でトランプ氏が指名争いから脱落する場合でも、ペンス氏が勝ち抜く可能性はほとんどなくなる。トランプ批判で舌鋒が最も鋭いのは「カミカゼ・クリスティー」ことクリスティー前ニュージャージー州知事か。
2023年6月8日 7:53 』

サウジ、米国の原子力協力狙う 中国接近で揺さぶり

サウジ、米国の原子力協力狙う 中国接近で揺さぶり
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR07BFH0X00C23A6000000/

『【ドバイ=福冨隼太郎、ワシントン=坂口幸裕】サウジアラビアが同国との関係立て直しを探る米国に揺さぶりをかけている。ブリンケン米国務長官はサウジアラビアで実力者ムハンマド皇太子らと会談した。サウジはイランとの和解を仲介した中国に接近すると同時に、米中対立をテコに米国からも原子力協力などの実利を狙う。

ブリンケン氏は6日午後に西部ジッダに到着。その後、1時間40分にわたって皇太子と会談した。米国務省…

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『米国務省によると両者は中東の安全保障やエネルギー分野での協力拡大について話し合った。

ブリンケン氏は7日にはサウジの首都リヤドでペルシャ湾岸6カ国でつくる湾岸協力会議(GCC)の閣僚級会合にも参加し「米国はこの地域に残り、GCC各国との連携に大きな投資をし続ける」と強調した。

サウジが米国に期待するのは原子力発電での協力だ。原子力分野では中国やロシアとの協力も視野にあるとされる。米国が最大の競争相手と位置づける中国に近づく姿勢を誇示し、米国を再び引きつけて具体的な協力を得る思惑だ。一方、核開発につながりかねない技術の提供に米国は二の足を踏む。

ブリンケン氏の訪問は、人権問題をめぐって隙間風が吹く両国の関係を修復する動きの一環だ。2018年にイスタンブールのサウジ総領事館で発生した米在住のサウジ人記者殺害事件をめぐり、バイデン政権はムハンマド皇太子が承認したと結論づけ両国の関係は冷え込んだ。

22年7月にはバイデン氏がサウジを訪問し、サルマン国王や皇太子に価格が高止まりしていた原油の増産を求めた。増産投資で収入源の原油価格水準を高めにとどめたいサウジとの議論はかみ合わず、むしろサウジは減産を続ける。

米国の影響力が低下したのと対照的に、中東で存在感を高めつつあるのが中国だ。16年に断交したイランとサウジは3月、中国の仲介で外交正常化で合意した。両国の外交正常化をきっかけに、中東ではシリアとサウジ、イランとアラブ首長国連邦(UAE)やエジプトとの間などで、長年の対立関係を解消する動きが急速に広がる。

中国が仲介した中東での「雪解け」は、イランやアサド政権と対立する米国の外交方針とは必ずしも一致しない。

米国はもともとサウジとイスラエルの和解を進めてイランを孤立させる戦略を描いていたが、イランとサウジの接近で目算は狂った。米CNNによると、ブリンケン氏はムハンマド皇太子との6日の会談でサウジとイスラエルの関係正常化にも触れ、協議の継続で合意した。

人権を重視するバイデン政権にとって、サウジの人権問題を無視して両国関係を一気に修復するのは難しい。ブリンケン氏は6日のムハンマド皇太子との会談でも「我々の2国間関係は人権の進展によって強化される」とクギを刺すのを忘れなかった。

人権問題を棚に上げてサウジとの関係を優先すれば、与野党や世論の反発は避けられない。2024年11月の大統領選での再選をめざすバイデン氏が重視してきた人権問題で妥協はできないゆえんだ。

米ジョージ・メイソン大の上級客員研究員のウムド・ショクリ博士は「ブリンケン氏のサウジ訪問は、両国が意思疎通を図ろうとしていることを意味している」と指摘。同時に「今回の訪問が両国関係を大きく改善するとは考えにくい」とも強調した。

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・米国務長官、サウジ皇太子と会談 人権状況改善促す
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