Quad、強まる結束の意義 対ロシアでインドどう動く

Quad、強まる結束の意義 対ロシアでインドどう動く
政界Zoom
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA080OY0Y2A500C2000000/

『日本、米国、オーストラリア、インドの各首脳は24日に東京で「Quad(クアッド)」の会議を開く。クアッドは安全保障や世界経済について意見交換する4カ国の枠組みで、対面での首脳会議は2回目となる。ロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに結束の意義が強まる。

クアッドは英語で「4つの」を意味する。4カ国はインド洋と太平洋を囲むように位置する。米国のバイデン大統領の来日に合わせた日本での開催となる。

自由や民主主義、法の支配といった共通の価値観を共有する。インド太平洋地域の安定を目指し、新型コロナウイルスや気候変動など幅広い課題を取り上げてきた。

クアッドの構想は安倍晋三元首相が第1次政権時の2006年に掲げた。4カ国で対話の枠組みを提唱し外交当局による事務レベルの会合にこぎ着けた。中国への距離感で一致点を見いだせず安倍政権も退陣したことから立ち消えになった。

12年に第2次安倍政権が発足し再び結束の機運が高まった。念頭にあるのは覇権主義的な行動を繰り返す中国の存在だった。

日本は中国海警局の船が頻繁に沖縄県の尖閣諸島周辺の領海に侵入することなどを警戒する。インドも国境地域で係争を抱える。

米国はバイデン大統領の就任以降、専制主義の国として中国を批判する。オーストラリアも新型コロナの発生源を解明するための国際調査を中国に求めたことなどをきっかけに関係が悪化した。中国は豪州からのワインや大麦に関税を上乗せした。

クアッドは17年11月にフィリピンで局長級会合を開いた。19年9月には初の外相会合を米ニューヨークで開催した。

新型コロナ禍の21年3月にオンラインで首脳会議を開いた。9月に米ワシントンで各首脳が対面で集まった。日本から菅義偉首相(当時)が参加した。

世界銀行によると、20年のクアッド4カ国合計の名目国内総生産(GDP)は30兆ドルほどで、中国の2倍くらいになる。ストックホルム国際平和研究所のデータで国防費の合計額を比較すると3倍超にのぼる。

インド太平洋地域を巡る多国間の枠組みには米国と英国、オーストラリアの3カ国が21年9月に立ち上げた「AUKUS(オーカス)」がある。安全保障での連携に軸足を置き、人工知能(AI)やサイバーセキュリティーなどの軍事技術で協力する。

クアッドの4カ国も合同の軍事演習を定期的に実施するなど安全保障面でも力を合わせる。ただ北大西洋条約機構(NATO)のような軍事同盟ではなく足元では経済分野での関係を重視する。

21年9月の首脳会議で宇宙分野での技術開発、水素エネルギーの活用、半導体のサプライチェーン(供給網)構築なども共同文書に盛り込んだ。22年4月には初めて4カ国共同で新型コロナのワクチンを供給した。カンボジアに32万5千回分を供与した。

林芳正外相は4月28日の記者会見で「日米豪印の取り組みは自由で開かれたインド太平洋の推進に中心的な役割を果たしている」と述べた。

5月24日に開く会議については「自由で開かれたインド太平洋の実現に向け力強いコミットメントを日本から世界に示す機会としたい」と強調した。

クアッドはロシアによるウクライナ侵攻を経て重要度が高まる。侵攻が始まった1週間後に4カ国でテレビ会議形式の会合を設け、1時間ほどロシアへの対応を議論した。

岸田文雄首相は5日、大型連休を使った東南アジアと欧州への外遊を締めくくる内外記者会見で「ウクライナは明日の東アジアかもしれない」と危機感を示した。

「ロシアの暴挙には高い代償が伴うことを示し、国際社会に間違ったメッセージを発することにならないようにする」と語り、同盟国・友好国同士で歩調を合わせることの重要性を訴えた。

ウクライナ危機を巡るインドの立場はロシアへの批判を強める日米豪と異なる。国連総会が3月2日に開いた緊急会合でもロシアを非難する決議を棄権した。

背景にはロシアとの軍事上の結びつきがある。旧ソ連時代から協力関係にあり、武器の調達先として最大の国でもある。

ジャイシャンカル外相は3月25日、電撃的にインドのニューデリーを訪れた中国の王毅(ワン・イー)国務委員兼外相と会談した。

会談後に記者会見したジャイシャンカル氏によると、両外相はロシアによるウクライナ侵攻を巡り、即時停戦と対話の継続を促す方針で一致したという。

岸田首相も王氏に先立ってインドを訪れモディ首相と会談した。力による一方的な現状変更を許さないことを確認したものの、共同記者会見でウクライナ情勢への直接的な言及はなかった。

今回のクアッド首脳会議でもウクライナ情勢は主要議題になりそうだ。インドが日米豪にならってロシアを非難する可能性は低いとみられる。

東京外国語大の篠田英朗教授(国際政治)は「インドに民主主義陣営に少しでも近づいてもらうためにクアッドというつながりは非常に重要になる。長期の目線で会合を重ね一体感を醸成すべきだ」と指摘する。

記者の目 つなぎとめが日本の役割

岸田文雄首相は大型連休にベトナムなど東南アジア各国の首脳と会談した。ロシアを巡る各国の態度はインドと似る。ロシアと結びつきの強いベトナムはロシアを非難する国連決議を棄権した。植民地政策に翻弄された歴史を持ち主要7カ国(G7)に肩入れするように映る行動には慎重だ。

ベトナムがウクライナへの人道支援で50万ドルの供与を表明するなど首相は会談で一定の成果を得た。首相周辺は「ウクライナ危機以降、米欧の日本を見る目がはっきりと変わってきた」と指摘する。アジア各国をつなぎとめる期待を強く感じるという。

首相は理想と現実のバランスを重視する「新時代リアリズム外交」を掲げる。アジア唯一のG7としてインドの理解を得る意味でも、クアッドで日本の役割の重みは増す。(上田志晃)』

ウクライナ最新戦況マップ5.19 ロシア、東部へ再配置

ウクライナ最新戦況マップ5.19 ロシア、東部へ再配置
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCA201BK0Q2A520C2000000/

『ロシア軍は19日、ウクライナ側の反撃で北東部ハリコフから撤退した部隊の一部を東部ドネツク州に再配置したとみられる。ロシア軍はセベロドネツクやドネツク周辺のドンバス地方での戦闘に力を入れている。米シンクタンクの戦争研究所は「セベロドネツクへの攻撃の準備として、(同市の南方に位置する)ポパスナの北と西への侵攻作戦を強化している」と分析する。

ハリコフ周辺では北に追いやられたロシア軍がウクライナ軍の反撃を阻止することに注力している。南部ではヘルソン州などの前線に沿って砲撃した。』

ロシア、独自ブランド生産相次ぐ 撤退外資の穴埋め探る

ロシア、独自ブランド生産相次ぐ 撤退外資の穴埋め探る
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB187OO0Y2A510C2000000/

 ※ もはや、「知財」もへったくれも、無くなった…、ようだな…。

 ※ 「戦時経済」なのだから、そういうものなのか…。

 ※ むしろ、「敵勢力の利益には、配慮する必要は無い。」ということか…。

『ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアで同国事業を停止した外国ブランドに代わり国産の代替品を生産する企業が相次いでいる。ロシア事業を見直す企業が増える中、代替需要の受け皿となる思惑だ。撤退した企業のブランド力を勝手に利用しようとする動きもみられる。

ロシアの有名飲料メーカー、オチャコボは、ロシアでの事業を停止した米飲料大手コカ・コーラの製品によく似た炭酸飲料の新製品を発表した。発表したのはコカ・コーラを模した「クールコーラ」、オレンジ風味でファンタによく似た「ファンシー」、スプライトの配色を模した「ストリート」の3製品。コカ・コーラは3月にロシアでの事業を停止し、同社の商品は店頭からほとんど姿を消していた。

コカ・コーラ撤退に乗じようとする企業はほかにもある。ロシア極東に拠点を置く天然水などの飲料メーカーは4月に「グリンク・コーラ」を発売。5月にはロシア北部のコミ共和国で、ビールメーカーが自社ブランドのソーダ「コミ・コーラ」を発売した。

自動車業界でも同様の動きがある。モスクワのソビャーニン市長は市内にある仏ルノーの工場が国有化され、ソ連時代の大衆車「モスクヴィッチ」生産に再利用されると述べた。「まずは従来型の車を生産するが、将来は電気自動車(EV)を生産する可能性がある」という。ルノーは16日、自動車大手アフトワズの保有株をロシア政府系機関に売却すると発表。ロシア事業を再開する選択肢は残すが、当面はほぼ完全に撤退すると決めていた。

多くの外資企業が撤退や営業停止を決めたことで、ロシア企業はビジネスチャンスを見いだしているようだ。フェイスブックやインスタグラムなどSNS(交流サイト)へのアクセスがロシア当局から禁止されたことを受け、代替のSNSサービスの開発を模索する動きも盛んだ。

こうした代替の動きは日本企業にも及ぶ。トリドールホールディングス(HD)がロシアで展開する「丸亀製麺」の一部店舗は3月末までの営業停止で合意していたが、4月に屋号を変えて営業を続けていることが確認された。同社は「名前やサービスが類似しており、合意内容と齟齬(そご)があるため状況の是正を交渉している」と説明している。

ロシアから撤退したブランドの商標登録の申請も相次ぐ。3月中旬以降、ロシアの企業や個人による、撤退した有名外資の商標登録申請が数十件発見されている。申請されたのは米マスターカードや資生堂、独BMWなど。撤退したオリジナルの企業に代わり、そのブランドを使った自社での展開や商品の生産を計画しているとみられる。(佐堀万梨映)』

ロシア経済「モノ不足」深刻 新車5割高、販売8割減

ロシア経済「モノ不足」深刻 新車5割高、販売8割減
1~3月GDPは3.5%増に減速
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR18E960Y2A510C2000000/

『ウクライナ侵攻を続けるロシアで、米欧の経済制裁による「モノ不足」が深刻になっている。自動車や部品の輸入が止まったことで、4月の新車販売は前年同月から8割減少した。半導体や化学品の禁輸措置は兵器からオフィス用品まで生産現場を直撃している。

ロシア連邦統計局が18日発表した1~3月期の国内総生産(GDP)は前年同期比3.5%増(速報値)と2021年10~12月期の5%増からブレーキがかかった。侵攻が始まったのは22年2月24日で、金融制裁や貿易制限、外資撤退の影響が全面的に出るのは4~6月期が本番だ。

21年、ロシアの自動車生産は156万台、新車販売は166万台あったが、制裁の影響や人道的配慮でロシア・アフトワズ、独メルセデス・ベンツグループ、トヨタ自動車など工場を置く自動車メーカーは生産停止に追い込まれた。

欧州ビジネス協議会(AEB)によると、4月のロシアの新車販売は前年同月に比べ79%減の3万2706台と大きく落ち込んだ。生産停止やインフレの影響で、経済調査会社CEICによると、4月の新車の平均価格は約100万ルーブル(約200万円)弱と1年前から5割値上がりした。

兵器やIT(情報技術)機器に使う半導体の輸出についても米欧や日本は停止した。精密誘導兵器の補給が困難との分析もある。製紙会社が製造工程で使用する化学品の調達も困難となり、コピー用紙なども不足する。

米エール大の調査では侵攻を機にロシア事業を見直した企業は1000社を超えた。ロシアの発電量(7日移動平均、前年同期比)の伸びは22年4月に3.1%(21年は6.0%)、5月は17日までで2.2%(同10.0%)と減速した。

生産・営業活動や市民生活への影響は今後さらに拡大する可能性がある。世界銀行は22年のロシアGDPが前年比で11.2%縮小すると予測する。

(ウィーン=細川倫太郎、真鍋和也)

【関連記事】
・ロシア、独自ブランド生産相次ぐ 撤退外資の穴埋め探る
・戦況長期化、ロシアの国民生活にも負担 万引きも増加

多様な観点からニュースを考える

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

諸富徹のアバター
諸富徹
京都大学大学院経済学研究科 教授
コメントメニュー

分析・考察

これも、戦争の一形態だ。

ロシアから撤退した企業は「参戦」しているのだ。

その売上を放棄するのは高い代償だが、暴力によるウクライナ支配を許せば、その後、どんな世界が現出するのか。企業は活動の自由を失い、資源供給で意のままに操られる。

ロシアの意図を挫くことは、自らの活動の自由を獲得することに直結する。各国の市民も返り血(インフレ)を浴びながら、この闘いを支持するだろう。

ロシアにどう対峙するかで、ドイツの最大州で与党の社民党が大敗し、同じ与党の緑の党が劇的に票を伸ばしたのは、大いなる教訓だ。

かつてNATO脱退を叫んだ緑の党はいまや、自由と民主主義を守るために、ロシアにもっとも強硬な政党に変貌したのだ。

2022年5月19日 20:29 』

ドイツ、ウクライナに10億ユーロ支援へ

ドイツ、ウクライナに10億ユーロ支援へ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR19DSK0Z10C22A5000000/

『【ボン=南毅郎】ドイツ政府はロシアの侵攻が続くウクライナに10億ユーロ(約1340億円)規模の資金を支援する。主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議が開かれている独西部ボン近郊で19日、リントナー独財務相が記者団に明らかにした。ウクライナで財政悪化への懸念が強まるなか、当面の資金繰りを支える。

ウクライナのゼレンスキー大統領は財政赤字を補塡するため、G7などに500億ドル(約6兆4000億円)規模の支援を要請していた。独DPA通信によると、米国は75億ドルを支援する意向という。岸田文雄首相も19日、新たに3億ドルの資金協力を実施すると表明した。』

「鏡を見てみよ」 北欧のNATO加盟機運、侵攻で高まる

「鏡を見てみよ」 北欧のNATO加盟機運、侵攻で高まる
有事の欧州政治(3)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR130280T10C22A5000000/

『「戦争が欧州に戻ってきた」。5月初旬、デンマーク首相のメッテ・フレデリクセンはコペンハーゲン郊外で壇上から聴衆に語りかけた。そしてこう続けた。「デンマークは単独で防衛力を確保するには小さすぎる」

欧州連合(EU)と北大西洋条約機構(NATO)に加盟するデンマーク。だが実はEUの安全保障・防衛政策に加わらなくてよい適用除外権をもつ。

デンマークでは、EU創設を定めたマーストリヒト条約の批准に向けた手続きが、1992年の国民投票でいったん否決された。安保・防衛政策や単一通貨ユーロへの参加免除の例外規定を設けて再び国民投票を実施し、93年に批准にこぎ着けた。

ロシアによるウクライナ侵攻を受け、フレデリクセンは半身のEU加盟を前進させるべきだと判断。EUの安保政策への参加に道を開く国民投票を6月1日に実施すると表明した。「イエスと投票してほしい」。フレデリクセンは呼びかける。

北欧で安全保障政策を見直す大きなうねりが生まれつつある。バルト海という要衝を取り囲むように位置する北欧はロシアの脅威をじかに受ける。

「この事態を引き起こしたのはあなただ。鏡を見てみるがよい」。NATOへの加盟方針を表明する前日の11日、フィンランド大統領のサウリ・ニーニストは吹っ切れたようだった。
ロシアがウクライナに侵攻しなければ、NATO加盟は考えられなかった。そんな意味を込めたロシア大統領ウラジーミル・プーチンへのメッセージだ。

ロシアと1300キロメートルの国境を接するフィンランド。1939年から44年までの間、2回にわたって当時のソ連と戦った。領土の一部を喪失したものの独立は守り、その後は軍事的な中立をうたった。ロシアに配慮しつつ、議会民主制と自由主義経済を維持する知恵だった。

ナポレオン戦争以来約200年、不戦を貫いてきたスウェーデンも動く。与党の社会民主労働党はNATO非加盟が党是だったが、党首で首相でもあるマグダレナ・アンデションは15日、NATOへの加盟を支持してこう語った。

「バルト海地域でスウェーデンだけが非加盟では、我が国だけが脆弱になってしまう」

フィンランド首相のサンナ・マリンは言う。ロシアが侵攻した2月24日以降「すべてが変わったのだ」。(敬称略)

【ルポ迫真「有事の欧州政治」記事一覧】

・「不安と分断の時代」 欧州世論揺らすウクライナ危機
・「本社工場が止まる」 ガス禁輸に独政権のジレンマ 』

[FT]「ゼロコロナ」で冷える中国消費 不動産市場を直撃

[FT]「ゼロコロナ」で冷える中国消費 不動産市場を直撃
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB191CR0Z10C22A5000000/

『中国の上海市に住むオフィスワーカーのウーさん(28)は、普段なら1カ月当たり約1万2000元(約23万円)を日々の生活で使う。買い物をためらうことはほとんどないと彼女は話す。だが上海市でロックダウン(都市封鎖)が実施された4月には、普段の3分の1程度しかお金を使えなかったという。

上海での新型コロナウイルス検査では大勢の住民が長蛇の列を作った=ロイター

「買ったものといえば肉、卵、牛乳、野菜など欠かせない食材が大半だ」。1回の買い物で卵を90個購入したこともあったという。「すでに冷蔵庫は満杯だが、まだ不安だ」

中国では新型コロナウイルスのオミクロン型による感染拡大を抑え込むため、数十の都市でロックダウンが実施され、何億人もの身動きが取れなくなった。その中国が全国的に深刻な景気後退に直面している。ウーさんのような消費者がお金を使えないことが原因の1つだ。

中国国家統計局が16日に公表した4月の経済統計では、厳格なロックダウンによる打撃の深刻さが初めてとらえられた。最も明白なのは、消費への影響だ。消費活動の指標となる小売売上高は前年同月比で11%減少し、2020年初頭以来の落ち込み幅となった。一方、工業生産は3%減少した。

長年、中国の平均的な消費者の購買力が上昇することによって、輸出と建設を中心とした経済成長モデルから脱却できると期待されていた。だが、今秋の共産党大会で異例となる3期目の党トップ就任を狙う習近平(シー・ジンピン)国家主席は、ウイルスの感染封じ込めを狙う「ゼロコロナ」政策を推進しており、そうした経済の長期目標とは相いれない。
「貸出残高の伸びは低調」

すでに中国は不動産部門の危機に対応するため金融緩和に乗り出しており、多くの経済専門家は今年中に追加の景気刺激策が実施されると予測している。政策当局者にとって悩ましい問題は、このような厳しい行動制限のなかで従来の金融緩和や財政出動が期待されるほどの効果を上げられるのかどうかだ。とりわけ、今回あるいは今後の新たな感染拡大に伴う制限がいつまで続くのか先が見えない状況では疑問が残る。

英調査会社オックスフォード・エコノミクスのリードエコノミスト、トミー・ウー氏は「4月までの金融統計を見てみると、すでに様々な刺激策が実施されているにもかかわらず、需要低迷の影響で貸出残高の伸び率はまだ比較的低調だ」と指摘する。「企業は明らかに借り入れを増やしたがっていない」

不動産市場に関する統計には、経済活動をてこ入れすることの困難さが表れている。中国政府は15日、1軒目の購入者を対象に住宅ローン金利の下限を4.6%から4.4%に引き下げた。だが、4月の住宅販売は床面積ベースで前年同月に比べて42%落ち込んだ。2年前にコロナ禍が始まって以来、最大の減少幅だ。

住宅ローン金利の引き下げに加え、中国人民銀行(中央銀行)は4月25日、預金準備率を0.25~0.5ポイント下げた。だが人民銀の動きは一貫して慎重だった。

スイスのプライベートバンク大手ユニオン・バンケール・プリベ(UBP)のアジアエコノミスト、カルロス・カサノバ氏は「実体経済に効果をもたらし、金利引き下げが景気に反映されると確信できない限り、人民銀はより強力な支援策を実施しないとみられる」と解説する。

飲食料品や医薬品など販売増はわずか

4月の小売売上高では、商品購入全般が10%減少したのに対し、飲食業では23%と落ち込みが激しかった。消費項目別で前年同月と比べて増加したのは食料、飲料、石油、医薬品のみだった。一方、自動車は31.6%と最も大きく減少した。

上海市自動車販売業協会によれば、4月は上海市内の新車販売台数がゼロだった。上海市内全域のロックダウンは約7週間続いている。

一方、4月には失業率が20年の初頭以降で初めて6%を超え、消費意欲をさらに冷え込ませている。オランダ金融大手INGの中華圏担当チーフエコノミスト、アイリス・パン氏は、国有企業が雇用を増やす可能性を指摘する。「複数回のロックダウンを乗り越えた民間企業には、そのような余裕はもうない」

中国政府は3月、1.5兆元の増値税(付加価値税)を年内に還付すると表明した。9割は零細企業に還付される見込み。一部地域では消費クーポン券の配布などの財政措置も取られる。だがオックスフォード・エコノミクスのウー氏は、先に人々が消費する必要があるため、政府が取りうる手段は限られると指摘する。

「このような状況では、人々はそもそも消費したがらない」とウー氏は説明する。「新型コロナに対する警戒で心理が冷え込み、労働市場は低調で、収入の見通しが好ましくない状況では、何をしようと景気回復は非常に難しい」

封鎖緩和でも根強い消費者の不安

その代わりに、大規模な感染防止策を取る中国政府にとっては、コロナ対策をどうするかが最大の政治的手段になっている。とはいえ、ワクチン未接種の高齢者が多いなかで、あくまで感染拡大を収束させる方針を押し通してきた政府としては、コロナ対策の緩和は政治的な賭けになる。

「もし上海市でロックダウンが緩和されれば、必ず6月には繰り延べ需要の影響だけで消費の回復がみられるだろう」とカサノバ氏は予測する。ただし、緩和されたとしても「消費ブーム」になるとは考えられないという。

今もロックダウンで閉じ込められている冒頭のウーさんは、制限が解除されたときのために買いたい物をリストに書き出した。しかし、あまりに不安感が強く、どんな消費衝動も2、3日しか続かないという。

「ロックダウン中に給与が3分の1もカットされた」とウーさんは打ち明ける。「この経済的な不安は簡単には消えないだろう」

By Thomas Hale and Andy Lin

(2022年5月18日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

(c) The Financial Times Limited 2022. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation. 』

対中輸出数量2割減、7年ぶり下落率 上海封鎖で経済収縮

対中輸出数量2割減、7年ぶり下落率 上海封鎖で経済収縮
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA194820Z10C22A5000000/

『中国経済の減速が日本の貿易に波及してきた。財務省が19日発表した4月の貿易統計速報によると、日本から中国へのモノの荷動きを示す輸出数量指数(2015年=100)は110.9と前年同月比22.6%下がった。下落率は2015年2月以来の大きさとなった。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う上海などの都市封鎖(ロックダウン)による経済活動の収縮を映す。

商品別の輸出量をみると自動車は1万9743台と30.2%減った。鉄鋼は30.3%減の32万8000トン、原動機は39.9%減の1万2591トン、集積回路は28.5%減の17億1600万個だった。主要な輸出品目が軒並み急減した。

上海の都市封鎖をはじめとする厳格なゼロコロナ政策をとる中国は物流の混乱や工場の稼働停止などで経済が収縮している。輸出数量指数の低下は2カ月連続で、3月の13.0%より下落幅が大きくなった。

中国からの輸入数量指数も20.4%の急落で92.0となった。コロナの感染が広がった当初の20年2月以来の下落幅となった。

対中貿易の停滞が足を引っ張るかたちで世界全体に対する輸出数量指数は4.4%、輸入数量指数は9.0%下がった。いずれもコロナ禍で低迷した20年夏~秋以来の落ち込み幅だった。
金額でみた世界全体との貿易収支は8391億円の赤字だった。赤字は9カ月連続。原油などエネルギー価格の高騰で輸入額は28.2%増の8兆9154億円に膨らみ、単月として過去最大だった。輸出額は12.5%増の8兆762億円で3月に次ぐ過去2番目の水準だった。

輸出入とも数量が減ったにもかかわらず金額が増えたのは製品価格が上がったためだ。財務省の担当者は「世界的な賃金や物流面などのコストアップが影響している」と説明した。為替の円安・ドル高の進行も輸入物価の上昇に拍車をかけた。

対中貿易は金額にして輸出が5.9%減の1兆4890億円、輸入が5.5%減の1兆6573億円だった。貿易量の減少が大きいため、金額ベースでも前年水準を下回った。

対ロシアは1633億円の貿易赤字で、赤字幅は前月より2割増えた。輸出は237億円と自動車や一般機械を中心に69.3%減った。ウクライナ侵攻を踏まえた政府の輸出禁止措置や企業の自主的な事業の停止が響いた。輸入は67.3%増の1870億円だった。原油は43.2%増、石炭は2.7倍になった。それぞれ価格の高騰が大きく、数量は減っている。

この記事の英文をNikkei Asiaで読む
Nikkei Asia https://asia.nikkei.com/Economy/As-Chinese-economy-slows-Japanese-exports-take-a-hit?n_cid=DSBNNAR 』

中国、日米韓の連携を警戒 外交担当トップが警告

中国、日米韓の連携を警戒 外交担当トップが警告
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM192O00Z10C22A5000000/

『【北京=羽田野主、ワシントン=坂口幸裕】バイデン米大統領の日韓訪問を前に、中国が日米韓の連携に警戒を強めている。とくに日米首脳が台湾問題で関与を強める事態を懸念し、警告を発している。

「米側が台湾カードを行使するならば、必ず情勢を危険な境地に導く。中国は自身の主権と安全利益を守るために断固とした行動を取るだろう」。中国外交担当トップの楊潔篪(ヤン・ジエチー)共産党政治局員は18日、米ホワイトハウスのサリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)との電話協議に応じ、こう伝えた。

中国の王毅(ワン・イー)国務委員兼外相も18日に林芳正外相とテレビ会議方式で協議し「日本側は最近、台湾など中国の核心的利益と重大な関心事に関わる問題で消極的な動きが目立つ」と批判した。

王氏は16日にも韓国の朴振(パク・ジン)外相とのオンライン協議で「新冷戦の危険を防ぐことが中韓両国の根本的利益に関わる」と語り、米中間で中立的な立場を維持するように促した。

中国側が意識するのは、5月20~24日に予定されるバイデン大統領の韓国と日本への訪問にほかならない。バイデン氏はインド太平洋地域で影響力を強める中国に対抗するため、米国が安全保障と経済の両面で地域に関与する姿勢を明確にする。

中国共産党系メディアの環球時報は19日付社説で「一つの大国(米国)がもう一つの大国(中国)の周辺国をけしかけ、陣営に組み入れるメカニズムを設計しようとしている」と警戒心をあらわにした。

もっとも日米韓の当局への電話攻勢だけでは手詰まり感は否めない。中国が影響力を強めてきた東南アジア諸国連合(ASEAN)の首脳らが5月にそろって訪米し、バイデン氏と対面で首脳会合を開いたのは中国にとって衝撃だった。

ロシア軍のウクライナ侵攻が泥沼化したことで、共産党内では習近平(シー・ジンピン)指導部の最大の目標である台湾統一の難しさも改めて認識されるようになった。

とはいえ、秋の党大会で異例の3期目を目指す習氏にとって、台湾統一が「後退」したと受け止められるのは避けたい。それだけに日米の台湾問題への関与には強く反発せざるをえない状況だ。』

中国、東ティモールに浸透 西太平洋に勢力拡大めざす

中国、東ティモールに浸透 西太平洋に勢力拡大めざす
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM1664D0W2A510C2000000/

『東南アジアの小国、東ティモールは20日、隣国インドネシアから独立して20年を迎える。国内では独立前に混乱を極めた治安状況は回復し、民主主義も定着した。現地を歩くと、中国がインフラ支援をテコに影響力を強めていることが一目瞭然で、安全保障上の懸念も生じている。

首都ディリ中心部にある市内最大のショッピングモールでは、中国のスマートフォン大手「OPPO(オッポ)」の広告が目立っていた。店員によると、オッポがスマホの1番人気という。華人系のスーパーも入居し、中国の輸入食材を豊富にそろえる。

官庁街では漢字が書かれた看板を掲げる工事現場を見かけた。中国企業が地方裁判所の建設を手がけていた。これまでに大統領府や外務省、国防省などの主要官庁の建設も中国が支援した。

両国の関係は深い。冷戦構造下で西側諸国が1976年のインドネシアによる東ティモールの武力併合を事実上容認するなか、中国は独立を支持し、2002年の独立後は多くの国に先駆けて外交関係を結んだ。10年代に入ると、中国が広域経済圏構想「一帯一路」を打ち出し、協力を加速した。

「東ティモールは一帯一路の重要なパートナーだ」。中国の肖建国駐東ティモール大使は3月末、地元紙に寄稿した。発電所や道路、港湾など基幹インフラの建設を中国企業が支援していると訴えた。
中国企業が担う地方裁判所の建設はコロナ禍のためか完成予定日を過ぎていた(13日、ディリ)

肖氏によると、21年末までに約20の中国企業が東ティモールでの建設工事の契約を交わした。東ティモールは金融、通信、司法などビジネスの基盤が脆弱で、一般の民間企業にとって進出リスクが高い。中国共産党の1党支配体制のもと、官民一体の政治・経済体制をしく中国が間隙をつく。

日本が約53億円の円借款を供与したディリと第2都市バウカウを結ぶ国道1号線の整備工事が典型だ。日本企業が入札に加わらず、中国企業が受注した。道路脇の工事の概要を示す看板には、日本の国際協力機構(JICA)とともに中国国有企業の中国水利水電建設が名を刻む。

首都を抱え人口が集中する北部に比べ発展が遅れる南部に目を向けると、中国の戦略的な狙いが見えてくる。

東ティモール初の高速道路として南岸の町、スアイとベアスを結ぶ事業。中国企業が建設を担い、18年に第1期工事が完了した。東ティモール政府は隣国のオーストラリアと共同開発する近海の油田から自国南岸にパイプラインを引くことを念頭に、南部の開発に力を入れる。

「高速道路は確たる利用が見込めず、日本企業の参加はあり得ない」。現地の日系駐在員は指摘する。パイプラインをどちらの国に引くか、東ティモールと豪州で合意できていないためだ。既成事実化をもくろむ東ティモールを中国が後押しする構図で、ベアスの港湾化計画も持ち上がる。

中国の東ティモールへの浸透は習近平(シー・ジンピン)国家主席がめざす西太平洋への影響力の拡大策の一環でもある。東ティモール南岸と豪州のダーウィンの間の距離は600キロメートル強にすぎない。ダーウィンには豪軍の基地があり、米海兵隊も巡回駐留し、中国ににらみをきかせる。「東ティモール南岸に中国がかかわる港ができれば安全保障上の懸念は大きい」(日本政府関係者)

米豪軍の行動を監視するもう一つの拠点がソロモン諸島だ。豪州の北東部で東ティモールと豪州北部を挟み込むような位置にあり、ここを影響下に置けば西太平洋に抜ける米豪軍の監視が容易になる。中国は4月、ソロモンと安全保障協定を締結した。事前に流出した草案には中国軍派遣や中国艦船の寄港を認める内容が盛り込まれていた。

「地球は中米それぞれと共同の発展を受け入れるだけの十分な広さがある」。習氏は21年11月、バイデン米大統領とのテレビ電話協議で西太平洋での影響力拡大への意欲を隠さなかった。台湾有事をにらむ米豪や日本にとり東ティモールへの関与強化は喫緊の課題になる。(ディリ=地曳航也、北京=羽田野主)

この記事の英文をNikkei Asiaで読む
Nikkei Asia https://asia.nikkei.com/Politics/International-relations/China-looms-large-in-East-Timor-20-years-after-independence?n_cid=DSBNNAR 』

中国・習氏「安保協力強化を」BRICS外相協議に

中国・習氏「安保協力強化を」BRICS外相協議に
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM19CSO0Z10C22A5000000/

※ ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ…、の外相がオンラインで協議するって、この情勢で何を協議するんだろう…。

『【北京=羽田野主】中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は19日、中国、ロシア、インド、ブラジル、南アフリカの新興5カ国(BRICS)外相によるオンライン協議にビデオメッセージを寄せた。「BRICS各国は政治的信頼と安全保障協力を強化しなければならない」と強調。ウクライナ侵攻で国際的な非難を浴びるロシアとも協力関係を堅持する考えを示した。

バイデン米大統領の日韓訪問前にロシアなどと足並みをそろえ、対抗する姿勢を示す狙いがありそうだ。習氏はBRICS各国について「互いの核心的利益と重大な関心事に配慮すべきだ」と指摘した。中国にとって最大の核心的利益といわれる台湾問題への理解を改めて促した。

「覇権主義や強権政治に反対し、冷戦的思考と集団的対抗に立ち向かわねばならない」と話し、結束を求めた。今月24日には東京都内で日米豪印4カ国による「クアッド」首脳会合も開かれる。BRICS加盟国のインドも含まれており、習氏の発言にはインドに米中間で中立的な立場を維持するように求める思惑も透ける。』

【随時更新】ロシア ウクライナに軍事侵攻(20日の動き)

【随時更新】ロシア ウクライナに軍事侵攻(20日の動き)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220520/k10013617071000.html

『ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交などウクライナ情勢をめぐる20日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

ゼレンスキー大統領 “東部セベロドネツクで12人死亡”

ウクライナのゼレンスキー大統領は、19日、動画を公開し、東部ルハンシク州のセベロドネツクで、ロシア側の攻撃により12人が死亡し、数十人がけがをしたと明らかにしました。

さらに、北部チェルニヒウ州の町ではがれきの撤去中に攻撃を受け多くの死者が出たほか、南部オデーサ州でも攻撃が続いているとしています。

ゼレンスキー大統領は「こうした攻撃は多くのウクライナ人を殺害し、多くの家や施設を破壊しようとする犯罪的な試みだ。虐殺と見なされるべきで占領者は必ずや裁きを受けるだろう」と非難しました。

米議会上院 ウクライナ支援で5兆円余の追加予算案可決

アメリカ議会上院は19日、長期化が懸念されるロシアの軍事侵攻をめぐってウクライナへの支援を強化するため、およそ400億ドル、日本円にして5兆円余りの追加の予算案を、賛成86、反対11の賛成多数で可決しました。

予算案には▽ウクライナへの兵器の供与や▽ウクライナ政府への経済支援、それに▽人道支援などが含まれていて、近くバイデン大統領の署名を経て成立する見通しです。

アメリカ議会は、ことし3月にもウクライナ支援のため136億ドルの予算案を可決していて、アメリカの有力紙ニューヨーク・タイムズは議会が承認した外国政府への支援としては少なくとも過去20年間で最大規模だと伝えています。

バイデン大統領は声明を発表し「われわれは引き続きウクライナや周辺地域などに軍事や経済、人道面などでの支援を届け、戦闘や交渉の場でウクライナの立場をより強くしていく」としています。

さらに、バイデン政権は19日、ウクライナに対して最大で1億ドル、日本円にして120億円余りの追加の軍事支援を行うと発表しました。

国防総省によりますと▽りゅう弾砲や▽移動式レーダーシステムなどを供与するということです。

首都キーウ近郊のイルピンでインフラ再建進む

ロシアによる軍事侵攻で激しい戦闘が行われたウクライナの首都キーウ近郊のイルピンではインフラの再建が急ピッチで進められています。

イルピンでは、ロシア軍の撤退から1か月半ほどがたち、砲撃などにより壊れたり焼け焦げたりした建物が各地で見られるなど激しい戦闘の爪痕が今も生々しく残っています。

こうした中、がれきや割れたガラスなどの撤去作業や電気の復旧に向けた変電施設の工事などインフラの再建が急ピッチで行われています。

近くに住む住民は「以前はここにすべてがあったが廃虚になってしまった。人々が戻るためにあらゆる手段が講じられている」と話していました。

また、ロシアによるキーウへの進軍を阻むため中央部が破壊されて渡れなくなった橋は、当時、多くの人が川に架けた木の板を歩いて避難するなど、戦闘の象徴的な場所にもなったことから、そのまま遺構として残されることになり、その隣に新しい橋を架けるための工事が始まりました。

工事の担当者は「一刻も早く復旧させたい。二度とこのようなことが起こらないよう願っている」と話していました。

一方、キーウには、避難していた多くの市民が戻り始めていて、これまで閑散としていた中心部の公園では遊具で遊ぶ子どもたちなど多くの人の姿が見られます。

3日前に、6歳の息子とともに避難先のウクライナ西部から戻ってきたという30歳の母親は「以前の生活に戻り、仕事にも復帰したい。たくさんの人たちと再会できてうれしい」と話していました。

また、別の母親は「このまま安全でいてほしい。ミサイルが頭上を飛ばないように、そして子どもたちが怖がらずに遊びに出られるように願っています」と話していました。
アゾフスターリ製鉄所の兵士妻「夫が今どこにいるかわからない」
ロシアによるウクライナ侵攻で激しい攻防が続いてきた、東部の要衝マリウポリのアゾフスターリ製鉄所で抵抗を続けていた兵士の妻が19日、NHKのインタビューに応じ、「夫が今どこにいるかわからないが、無事に帰ってくることを願っている」と涙ながらに訴えました。

マリウポリで暮らしていたエカテリーナさんの夫は2016年からアゾフ大隊に入隊し、ことし2月、ロシア軍による侵攻が始まった直後から激しい攻防が続いていたマリウポリ市内で抗戦してきました。

その後、ウクライナ側が拠点としていたアゾフスターリ製鉄所に移りましたが、合間を縫って電話などで連絡を取り合っていたということです。

しかし、徐々に通信状況が悪くなり、3月5日を最後に連絡が取れなくなっているということです。

エカテリーナさんは「私たちはそれぞれの夫の所在を知ろうと内部にいた人や妻どうしで連絡を取り合っている。しかし、夫が外に出たという情報がある一方で詳しい所在がわからない人も多い」と話しています。

エカテリーナさんは、ことし1月にマリウポリの産院で双子を出産したあと子どもが低出生体重児だったため入院を続けていましたが、ことし3月に産院がロシア軍の攻撃を受けたため、現在は国内の避難先で幼い子ども3人を育てているということです。

エカテリーナさんは「夫は製鉄所にとどまっている時も、私たちを心配し『もうすぐ戦争も終わるよ』と励ましてくれた。今はただ夫が無事に帰ってくることを願っている」と涙ながらに訴えていました。

ベラルーシ ロシアから短距離弾道ミサイルなど購入

ベラルーシの国営通信によりますと、ルカシェンコ大統領は19日、ロシアの州知事と行った会談の中で、核兵器を搭載できる短距離弾道ミサイル「イスカンデル」と、最新鋭の地対空ミサイルシステム「S400」をロシアから購入したことを明らかにしました。

ルカシェンコ大統領は「プーチン大統領と合意して必要な数の『イスカンデル』と『S400』を購入し、われわれの軍に配備された。われわれはもはやこうした兵器を持つ全く別の軍隊になっていて、甚大な打撃を与えることができる」と述べたということです。

またルカシェンコ大統領は、ことし中に「イスカンデル」をベラルーシ国内でも製造したい考えを示し、近くプーチン大統領と首脳会談を行うとしています。

一方、ロシアとしては、ウクライナ情勢をめぐりNATO=北大西洋条約機構との対立が一層深まる中で、同盟関係にあるベラルーシに核兵器も搭載できる短距離弾道ミサイルなどの配備を進めることで、欧米側を強くけん制するねらいもあるとみられます。

BRICS外相会合開催 中国 欧米諸国をけん制

中国やロシアなど新興5か国でつくるBRICSの外相会合が19日、オンライン形式で開かれました。

中国外務省によりますと、会合で王毅外相はウクライナ情勢をめぐって「武器の供与によってウクライナに平和をもたらすことはできず、制裁と圧力によってヨーロッパの安全保障のジレンマを解決することはできない」と述べ、欧米諸国をけん制しました。

そのうえで、中国はロシアとウクライナによる停戦に向けた交渉の継続を支持するとともに、NATO=北大西洋条約機構やEU=ヨーロッパ連合がロシアと全面的な対話を行うよう求める考えを示しました。

さらに、王外相は「ウクライナ情勢において、BRICS諸国は引き続き独立・自主を堅持し、平和のために声をあげ力を尽くさなければならない」と強調しました。

BRICSのうち、中国やインドはこれまでロシアによるウクライナへの軍事侵攻を直接非難することを避けています。

一方、ロシア外務省は声明を発表し、ラブロフ外相が会合の中でウクライナでの軍事作戦の進捗(しんちょく)状況などを詳細に説明したとしています。

米国防総省高官「かつてのようなロシア軍の攻撃見られない」

アメリカ国防総省の高官は19日、ウクライナ東部の要衝マリウポリについて「かつてのようなロシア軍の攻撃は見られない。ロシア軍はウクライナ軍による抵抗が終わったと見ているのだろう」と述べました。

ただ、第2の都市ハルキウ周辺ではロシア軍による空爆が続いているとしています。

一方で、そのハルキウ周辺ではウクライナ軍の部隊が引き続きロシア軍の部隊を押し返していると分析しています。

このほか、南部のヘルソンとミコライウの間にいるロシア軍の部隊から、ミコライウ方面に激しい砲撃が行われているということです。

米ロ軍トップが電話会談 軍事侵攻開始以降初

ロシア国防省は19日、ロシア軍のゲラシモフ参謀総長がアメリカ軍のミリー統合参謀本部議長と電話で会談したと発表しました。

両国の軍の制服組トップによる電話会談は、軍事侵攻が始まって以降初めてとみられ、ロシア国防省によりますと、会談はアメリカ側の提案で行われウクライナ情勢を含む双方の関心事について協議したとしています。

一方、アメリカ国防総省によりますと、双方は安全保障に関する懸案事項について意見を交わし、引き続き連絡手段を維持することで一致したということです。

両国の間では今月13日に軍事侵攻後初めて、オースティン国防長官とショイグ国防相が電話で会談し、アメリカ側の発表によりますと、オースティン長官はショイグ国防相に対し、ウクライナでの即時停戦やアメリカとロシアとの間での対話の維持などを求めていました。

ゲラシモフ参謀総長をめぐっては先月極秘にウクライナ東部を訪れたのを確認したと、アメリカ国防総省が明らかにしています。

ロシア軍の苦戦が伝えられるウクライナ東部の戦況を挽回するために訪問したとも報じられ、ゲラシモフ氏の動向も注目されていました。

ウクライナ外相“ロシアに勝利と見なすにはクリミア解放も必要”

ウクライナのクレバ外相は、オランダのメディアが17日に公開したインタビューの中で、今後、ロシアに勝利したと見なすためには東部のドンバス地域などに加え、2014年にロシアが一方的に併合したクリミアも解放される必要があるという認識を示しました。

さらに「ロシアによる賠償や、戦争犯罪や人道に対する罪を犯した者の断罪、ヨーロッパ統合におけるウクライナの在り方をはっきりさせることも、私にとって勝利の要素に含まれる」と述べました。

そのうえで「戦争を終わらせ占領された土地が解放されるチャンスがあるのなら、私たちはロシアと協議する用意がある」と述べました。

トルコ エルドアン大統領“北欧2国のNATO加盟はノー”

トルコ大統領府は、エルドアン大統領が首都アンカラで行われた若者との集会で発言した内容を19日、動画で公開しました。

このなかで、フィンランドとスウェーデンのNATO=北大西洋条約機構への加盟の動きに否定的な立場を示しているエルドアン大統領は、参加者からの質問に答える形で「この両国のNATO加盟はノーということだ」と述べ、反対する意向を明確にしました。

そのうえで、エルドアン大統領は、ウクライナ情勢について「トルコはバランス外交を続けている。プーチン大統領だろうとゼレンスキー大統領だろうと関わり続けていく。地域の安定のために協力していく」と述べました。

フィンランドとスウェーデンのNATO加盟に反対する意向を示したのは、停戦交渉の仲介役を務める立場からもロシアを刺激するのは得策ではないという思惑もあるとみられます。
ウクライナ市民 少なくとも3811人死亡 うち255人は子ども 国連

国連人権高等弁務官事務所は、ロシアによる軍事侵攻が始まったことし2月24日から今月18日までに、ウクライナで少なくとも3811人の市民が死亡したと発表しました。

このうち255人は子どもだとしています。

地域別では
▽東部のドネツク州とルハンシク州で2099人、
▽キーウ州や東部のハルキウ州などそのほかの地域で1712人の死亡がそれぞれ確認されているということです。

またけがをした市民は4278人に上るとしています。

ただ国連人権高等弁務官事務所は、東部のマリウポリなどでの死傷者についてはまだ確認が取れていないなどとして、実際の死傷者の数はこれを大きく上回るという見方を示しています。

ゼレンスキー大統領 民族衣装で結束呼びかけ

ウクライナのゼレンスキー大統領は19日、新たな動画を公開しました。

ウクライナの伝統的な刺しゅうがあしらわれた現地の民族衣装の日に合わせて、自身も民族衣装を身にまとい「皆さんの健康を祈っています。強く、壊れず、勇敢で自由でありますように。ウクライナよ、おめでとう」とロシアによる軍事侵攻が続く中で、国民に結束を呼びかけました。

ウクライナ検察当局 子どもの死亡 少なくとも231人(19日時点)

ロシアの軍事侵攻で死傷した子どもの数について、ウクライナの検察当局は、19日の時点で少なくとも231人が死亡し、427人がけがをしたと発表しました。

死亡、
またはけがをした子どもが最も多いのは
▽東部ドネツク州で144人、次いで
▽首都があるキーウ州で116人
▽東部ハルキウ州で100人
▽北部チェルニヒウ州で68人などとなっています。

また、爆撃や砲撃による被害を受けた学校などの教育施設は1828か所にのぼり、このうち171か所は完全に破壊されたということです。

ロシア西部クルスク州知事 “ウクライナ軍から砲撃 1人死亡”

ウクライナ北東部と国境を接するロシア西部クルスク州の知事は19日、ウクライナ軍から砲撃を受け、州内で1人が死亡、複数の人がけがをしたとSNSで発表しました。

砲撃を受けた場所はウクライナとの国境から2キロほど離れたところにある工場やその周辺で18日から砲撃は複数回あったとしています。

これについてウクライナ側からの反応は今のところありません。

ウクライナと国境を接するロシア側の州では今月11日、西部ベルゴロド州の国境からおよそ10キロの地点にある村でウクライナ側からの砲撃で住民1人が死亡したと地元の州知事が発表しています。

ロシア側の国境の州がウクライナ東部のハルキウ州など東部への攻撃に向けた拠点になっているとみられ、欧米のメディアはウクライナ軍がロシアからの侵攻を阻止するためロシア側への攻撃を行っている可能性があると伝えています。

ロシアの一部メディアはウクライナ側からの攻撃でロシアの市民が死亡するのは2人目だと伝えています。 』

台湾有事、日本は安保法に基づき対応

台湾有事、日本は安保法に基づき対応
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA198TY0Z10C22A5000000/

『中国が日本の航空自衛隊の早期警戒管制機(AWACS)「E767」を模した構造物を設けたのは、台湾有事の際に日米両国が一体で対処する事態を懸念しているためだ。日本は2015年に成立した安全保障関連法に基づき対応する。

自衛隊の行動は政府がどう事態を認定するかによって決まる。台湾だけでなく日本の領土の沖縄県・尖閣諸島などが攻撃を受ければ「武力攻撃事態」となり、相手の攻撃に反撃する。

それ以外のケースは明確な基準がなく、判断が難しい。

放置すれば日本への武力攻撃に至る恐れがある「重要影響事態」なら米軍への補給などの後方支援ができる。

密接な関係にある国への武力攻撃が発生して日本の存立が脅かされる明白な危険がある「存立危機事態」なら、集団的自衛権の限定的な行使を認める。

AWACSは空中からレーダーで日本周辺の状況を監視して情報を集め、自衛隊の戦闘機に指示を出す役割も持つ。政府が事態を認定しなければ平時の活動しかできない。

大中国の時代

中国を巡る世界情勢が新たな段階に入りました。変化の渦の中心にいるのが、異例の3期目をめざす習近平(シー・ジンピン)国家主席です。膨張を続ける「大中国」と、それに向き合う世界の動きを追います。

台湾有事、日本は安保法に基づき対応(5:00)
早期警戒管制機(AWACS)とは レーダーで全方位監視(5:00) 』

[FT]米国、最速スパコン開発で中国追い上げ

[FT]米国、最速スパコン開発で中国追い上げ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB195DX0Z10C22A5000000/

『米国がスーパーコンピューターの新時代に突入しようとしている。処理能力が10年に1度の飛躍を遂げ、気候変動の研究から核兵器の実験まで様々な分野に大きな影響を及ぼすとみられている。

スーパーコンピューターの機器が並ぶオークリッジ国立研究所=C.B. Schmelter/Chattanooga Times Free Press via AP

通常ならこうしたブレークスルーによって国家の威信は高まるが、今回に関してはその可能性は低そうだ。中国が最初に突破口を開き、他国ではまだ使われていない次世代の高度なスパコンの構築に向けてすでに順調に進んでいる。

この分野の米専門家によると、中国の進歩を一段と際立たせているのは、国内の技術でそれが成し遂げられたことだという。開発に不可欠と考えられていた米国製ハードウエアへのアクセスを米政府が禁じたことが背景にある。

米国のスパコン専門家であるジャック・ドンガラ氏は、中国が20年以上前からスパコンの研究開発を積み重ねてきた結果、同国が世界をリードするという「驚くべき状況」になっていると指摘する。

最先端のスパコンは、気候変動や核爆発の影響を予測するモデルなど非常に複雑なシステムのシミュレーションを改善するために利用されている。英マンチェスター大学のニコラス・ハイアム教授(数学)によると、暗号の解読など機密分野でもひそかに利用されており、国家安全保障上の重要なツールになる可能性が高いという。

トップ500は中国が最多

スパコンの性能を競う世界ランキング「トップ500」に入っている台数は、米国の123台に対して中国は186台とすでに世界最多になっている。中国は今後、この分野で米国に先駆けて次の大きなブレークスルーを達成し、そうしたマシンを次々に開発して、何年にもわたって優位な立場を確保できるポジションにいる。

中国がブレークスルーを達成したのは、1秒間に100京(10の18乗)回の計算ができる「エクサ級」スパコンの開発競争だ。この計算速度は、10年以上前に登場したペタフロップス級の初代の1000倍にのぼる。

米エネルギー省のオークリッジ国立研究所(テネシー州)ではここ数カ月、国内で計画されている3台のエクサ級スパコンのうち、1台目の組み立てと試験が進められている。年2回発表されるトップ500の作成に携わるドンガラ氏によると、避けられない「バグ」が解消されれば、米国製エクサ級スパコンは5月末にもリスト入りするという。

一方、アジア技術情報プログラム(ATIP)でディレクターを務めるデービッド・カハナー氏によると、中国初のエクサ級スパコンは1年以上稼働しており、その後2台目が加わっている。ATIPの研究は最も権威あるものとして広く引用されている。

中国はエクサ級スパコンが2台あることを公式には発表していない。だが、その存在は2021年末に確認された。このマシンを使った科学的研究がスパコン分野のノーベル賞ともいわれるゴードン・ベル賞に応募され、ある論文がこの国際コンテストで最優秀賞を受賞したからだ。

米エネルギー省のローレンス・バークレー国立研究所で最近まで副所長を務めていたホルスト・サイモン氏は、最先端のスパコンを所有する中国は国防上、敵対国に対して明らかな優位性があると指摘する。

中国はスパコン開発のブレークスルーを公式に認めていない。この分野では何十年も前から、科学者が包み隠さず成果を語り、各国が最先端のマシンをいち早く自慢するのが常だったため、中国の判断はそうした歴史との決別と言える。この秘密主義には、米国からのさらなる報復を回避する狙いがあるかもしれないと専門家はみている。

米政府は19年、スパコン開発に関わる中国の5団体に制裁を科し、1年前にさらに7団体を対象に加えた。制裁の追加が行われたのは、中国初のエクサ級スパコンが起動した翌月のことだった。

中国がかつてエクサ級の壁の突破を目指していた時は、米半導体大手アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)の技術に依存していたため、米国による貿易の制限で影響を受けやすい状態だった。これに対し、現行の2台は国内の半導体設計に基づいている。この2台に使われている半導体の国内メーカー、天津飛騰信息技術と上海高性能集成電路設計中心はいずれも21年の米国の制裁対象リストに含まれていた。

ドンガラ氏は「極めて短い期間に独自の技術でシステムを構築できたことには非常に感銘を受ける」と語った。ただ、半導体の生産が、世界最先端のメーカーと肩を並べるにはまだ何年も遅れている中国本土と台湾のどちらで行われているかは不明だという。

ソフトは米国に強み

中国は何年もの間、スパコンを中心に国内産業を築いてきた。2000年には当時世界最速のマシンを発表し、主なライバルである米国と日本に衝撃を与えた。エクサ級スパコン時代の幕開けは、もっと明確なリードを取るチャンスかもしれない。

米国は3台のエクサ級スパコンを開発中だが、中国の目標は25年までに10台を保有することだとATIPのカハナー氏は指摘した。同氏の調査によると、中国企業は今や海外のライバルが何をしているかよりも、国内での競争に重点を置いているという。米中間の格差が拡大すれば、米国は「(中国の)システムを深く探れるよう」期待して、江蘇省無錫市にある国立スーパーコンピューティングセンターに対する制裁の緩和を検討するとカハナー氏はみている。

中国はハードウエアでリードしているが、特にソフトウエアに関しては、米国の能力の幅広さが強みになるとカハナー氏らは分析する。米エネルギー省の3台のエクサ級スパコンでは、32億ドル(約4100億円)に上る費用の半分がこの新しいコンピューティングアーキテクチャー上で動作するプログラムの10年に及ぶ開発に投じられた。一方、ハイアム氏はスパコン関連の分野で中国の高等数学研究を目にすることはほとんどないと指摘する。

米中間の協力強化を求めるカハナー氏はこう語る。「新しいシステムにアクセスすることで実験が可能になり、すべての当事者に利益がもたらされる。安全保障や公正かつバランスの取れた競争に矛盾しない範囲で、アクセスは可能な限り多い方がよい」

ただ、中国はまだ新しいスパコンの性能を公には認めておらず、米国は中国が技術大国として台頭しないよう制裁の手を緩めていないため、それは非現実的な願いであり続けるかもしれない。

By Richard Waters

(2022年5月18日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

(c) The Financial Times Limited 2022. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation. 』

トルコ、北欧2国のNATO加盟巡り米欧と駆け引き

トルコ、北欧2国のNATO加盟巡り米欧と駆け引き
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR1973I0Z10C22A5000000/

『【イスタンブール=木寺もも子】トルコがスウェーデン、フィンランドの北大西洋条約機構(NATO)加盟を巡って駆け引きを繰り広げている。トルコを含む全加盟国の賛成がなければ新規加盟はできない。トルコが敵視するクルド系武装組織との関係や対トルコ制裁を巡って、2カ国の加盟を後押しする米欧からも見返りを引き出そうとしている。

「米国をはじめ同盟国もテロ組織を支援している」。18日、ニューヨークでブリンケン米国務長官と会談したトルコのチャブシオール外相は終了後、記者団に語った。ブリンケン氏にも直接、問題を提起したとみられる。米国は、トルコが非合法武装組織、クルド労働者党(PKK)と同一視するクルド系勢力とシリアでの過激派掃討作戦で協力している。

チャブシオール氏は「同盟国はほかの同盟国に制裁すべきでない」とも語った。スウェーデン、フィンランドだけでなく、米国や欧州連合(EU)もトルコに制裁を科している。中でも米国は、トルコがロシア製地対空ミサイル「S400」を導入した問題で、最新鋭戦闘機F35の売却を凍結した。外相会談ではトルコが代替として求めるF16戦闘機の売却についても協議したという。

トルコが実際に2カ国のNATO加盟への拒否を続けるとの見方は少ない。エルドアン大統領の狙いは一定の成果を得て「強いトルコ」を国民に見せることで、下降する自身の支持率を上昇させることにある。バイデン米大統領は18日、記者団に対し「トルコに行くつもりはないが、(加盟は)大丈夫だと思う」と述べた。

一方、エルドアン氏は18日の演説で、スウェーデンに対し「テロリスト」約30人の引き渡しを求めたところ、スウェーデンが拒否したと明らかにした。人権重視を掲げるスウェーデンやフィンランドが引き渡しに応じるのは難しいとみられ、交渉には時間がかかる恐れがある。

トルコメディアによると、エルドアン氏の外交ブレーンであるイブラヒム・カルン大統領府報道官は18日、スウェーデン、フィンランドのほか英国、ドイツの高官と電話協議し、トルコへの輸出制限などをやめるよう求めた。』

欧州・アジア勢 米国産LNG争奪戦

欧州・アジア勢 米国産LNG争奪戦
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN130LY0T10C22A5000000/

『【ヒューストン=花房良祐】米国産の液化天然ガス(LNG)を巡り、欧州とアジアの争奪戦が始まった。2022年に入り欧州やアジアなどの企業が合意した米国産LNGの15年間以上の長期契約の購入量はすでに21年通年の約2倍に相当する年2000万トン規模に達した。日本の商社や電力・ガス会社は出資先の米国のプロジェクトの増産で商機につなげる。

米センプラ・エナジーは16日、三井物産や三菱商事と開発する「キャメロン」の増産計画について、ポーランドの国営ガス会社PGNiGが年200万トンを20年間調達することで基本合意したと発表した。PGNiGは、センプラが計画する別のプラントからも年100万トン購入する方向だ。

欧州はロシア産ガスからの脱却を目指し、アジアは新型コロナウイルス禍からの景気回復と脱炭素を見据え、計画時点からLNGの「青田買い」に動く。米国政府は3月、30年までに年500億立方メートル(約3700万トン)のLNGを欧州に追加輸出する方針を表明した。

米国では22年1月以降、年2000万トン規模の長期購入の合意が交わされた。いずれも20年代の生産開始を計画するプラント。世界2位のLNG消費国である日本の輸入量の4分の1に匹敵する量だ。需要が増加した結果、米国の新規LNG契約の液化加工費の相場はあがっているようだ。

LNGプラントは数兆円単位の開発資金が必要で、新規に稼働させる場合は15~20年の販売契約を結ぶ。予定する生産能力の7~8割分の販売先を長期契約で固めると銀行が融資し、投資決定と工事が進む。

21年後半から長期契約を相次いで締結している米ベンチャーグローバルLNGのマイク・セイブル最高経営責任者(CEO)は日本経済新聞の取材に、ルイジアナ州で計画中の新プラント「プラクミンズ」について「近く投資決定をする。24年に生産を開始できる」と話した。計画する生産量の年2000万トンのうち8割の販売先を固めた。

同社は22年3月に同州の別のプラント「カルカシューパス」から出荷を始めたばかり。投資を決めてからわずか2年5カ月で生産にこぎ着けた「世界最速記録」(セイブル氏)を打ち立てた。通常の半分程度の期間だ。

4月下旬に「カルカシューパス」を訪れるとPGNiGに販売するLNGを運搬船に積み込んでいた。短期間で稼働した秘訣は米石油サービス会社ベーカー・ヒューズが開発したモジュール型の液化設備。プラントの年産能力は約1000万トンだが、液化設備は1系列あたり年産63万トンだけで、これを18個並べた。

従来の大型設備は年産500万トン級を2、3系列建造するが、同社はイタリアの工場で長さがわずか数十メートルの小型モジュールを建造。ルイジアナ州で据え付け、異例の早さで生産を開始した。

欧州はウクライナに侵攻したロシアのガスの購入を減らしていく方針で、LNG調達は待ったなしだ。ドイツの官民はLNGをすぐに導入するために浮体式の受け入れ基地(FSRU)を4隻導入するほか、カタールと調達交渉も開始した。

中国企業と米国企業による長期契約の合意も21年半ばから相次いでいる。中国はロシアと関係が深いが、国内のガス需要が急拡大しており21年は日本を抜いて世界最大のLNG輸入国となった。一方、米国は22年に世界最大のLNG輸出国となる見通しだ。

日本はLNG需要が頭打ちだが、日本の電力・ガス会社は欧州や中国に「買い負け」しないようにLNGを転売して取扱量を増やし、存在感を示したい構えだ。

三井物産と三菱商事などが手掛ける「キャメロン」だけでなく、JERAと大阪ガスなどが手掛けるテキサス州のLNGプラント「フリーポート」でも増産計画がある。関係者によると、計画する生産量の何倍もの購入希望があるという。

もっとも、欧州は再生可能エネルギーの導入や省エネで長期的にはガス需要を大幅に減らす方針で、LNG事業の先行きに不透明感もある。調査会社ライスタッド・エナジーによると、欧州のガス需要は40年に4割近く減少する。数十年にわたり販売を続けて投資を回収するLNG開発の難しさはむしろ増している。

この記事の英文をNikkei Asiaで読む
Nikkei Asia https://asia.nikkei.com/Business/Energy/Ukraine-war-fuels-European-and-Asian-scramble-for-U.S.-LNG?n_cid=DSBNNAR 』

「食糧を武器に利用」 米国務長官、安保理で対ロ非難

「食糧を武器に利用」 米国務長官、安保理で対ロ非難
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN19E4F0Z10C22A5000000/

『【ニューヨーク=白岩ひおな】国連安全保障理事会は19日、紛争と食糧安全保障をめぐる公開会合を開いた。演説したブリンケン米国務長官はウクライナ侵攻で同国からの穀物輸出が滞っていることに触れ「ロシアは食糧を武器として利用することで、ウクライナ人の鋭気をくじけると考えているようだ」と非難した。

ウクライナの穀物輸出再開に向け、港湾の解放と安全な運搬ルートの確保を求めた。ロシア軍が「数百万人のウクライナ人と、ウクライナの輸出に依存する世界の何百万人もの人々への食糧供給を人質に取っている」と指摘した。ロシアとウクライナは世界の小麦供給の3分の1近くを占め、侵攻に伴い穀物や肥料の価格が高騰している。

グテレス国連事務総長は「ウクライナが黒海を通じて食糧を輸出し、ロシアの食糧と肥料を制限なく市場に供給するための包括交渉を探っている」と述べた。「ウクライナとロシアの食糧や肥料を世界の食糧安全保障に再統合する必要がある」と訴えた。

一方、ロシアのネベンジャ国連大使は世界的な食糧危機の原因がロシアにあるとの指摘について「全くの誤りだ」と反論した。ロシア軍は船舶のための安全な航路を開こうとしたと主張した上で「西側の制裁がロシアの食糧と肥料輸出を冷え込ませている」とも述べた。

小麦生産で世界2位のインドは国内価格の上昇で輸出の一時停止を決めた。同国のムラリーダラン外務担当閣外相は会合で「食糧価格が不当に上昇している。買い占めや投機は明らかで、放置するわけにはいかない」と述べ、輸出停止の判断を擁護した。「世界市場の突然の変化に脆弱な発展途上国には、十分な緩和策を保証する」とも述べた。

一方、パキスタンのブット外相は19日に国連本部で開いた記者会見で「こうした(食糧輸出の)制限措置は、多国間枠組みを通じて思いとどまらせていくことができる」との考えを示した。』

米高官とダライ・ラマ面会 バイデン政権で初

米高官とダライ・ラマ面会 バイデン政権で初
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB19B030Z10C22A5000000/

『【ニューデリー=共同】インド訪問中のウズラ・ゼヤ米国務次官は19日、チベット亡命政府があるインド北部ダラムサラでチベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世と面会した。亡命政府が発表した。バイデン米政権発足後、米高官とダライ・ラマの面会は初めて。
中国外務省の趙立堅副報道局長は19日、ゼヤ氏が面会するとの報道に「内政干渉で、断固として反対する」と反発した。

亡命政府によると、面会は約1時間。中国で制限されているチベットの文化や言語の保護に関する米国の支援方針などを確認した。ゼヤ氏は米国でチベット問題特別調整官を兼務し、中国政府とダライ・ラマ側の対話を促進する役割を担っている。』

カナダ、5G通信網からファーウェイとZTE排除

カナダ、5G通信網からファーウェイとZTE排除
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN200030Q2A520C2000000/

『【ニューヨーク=大島有美子】カナダ政府は19日、次世代通信規格「5G」から中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)と中興通訊(ZTE)を排除すると発表した。米国や欧州各国と足並みをそろえる。ファーウェイの孟晩舟副会長兼最高財務責任者(CFO)のカナダでの逮捕や、カナダ人の中国での拘束を経て、両国の関係は冷え込んだ。中国の反発は必至だ。

カナダ政府は5Gに関して通信会社に対して2社の製品の新規利用を禁じ、既に利用中の機器は2024年6月までに撤去または利用を停止することとした。「深刻な安全保障上の懸念がある」ことを理由に挙げた。4Gの通信網に関しても、2社の製品は27年までに利用停止とする。

カナダ政府の決定は、米国や英国、日本など主要国に追随するものだ。カナダ通信大手のテラス・コーポレーションとベル・カナダの2社は、欧州企業と組んで5Gを構築しており、ファーウェイの利用を自主的に避けた。

米国はファーウェイの包囲網を形成するため同盟国に協調を呼びかけていた。オーストラリアやニュージーランドが同調したほか、英国は20年7月に5Gからのファーウェイ製品排除を決めた。スウェーデンも同年10月にファーウェイとZTE製品の使用を禁止。日本政府も政府調達から事実上、米国が取引を禁じている中国企業の製品を排除している。

トルドー政権は、インド太平洋に関する新戦略を策定しているが公表時期は未定だ。カナダの外務省関係者は5月上旬、日本経済新聞に対し「公表は数カ月先になるだろう」と答えた。ビジネスで蜜月関係にあった中国に関して、安全保障面でどう記述するかが注目を集めている。

カナダと中国の関係はファーウェイの孟氏の拘束を巡って悪化した。18年12月にファーウェイの孟氏がカナダ当局に拘束され、その後カナダ人2人が中国当局に拘束された。米国は19年1月にイランとの取引を巡る詐欺などの罪で孟氏を起訴し、孟氏の身柄引き渡しを求めた。

20年1月から始まったカナダでの裁判では孟氏が無罪を主張。21年8月に最終結審した。各国の政治的な駆け引きが続いたが、同年9月に米司法省が孟氏の中国への帰国を承認。孟氏は釈放され、拘束されていたカナダ人2人も拘束を解かれた。

関係悪化を受け、中国は19年3月、カナダ企業2社からキャノーラ油に使われる菜種の輸入を禁止していた。18日には、中国による禁止措置が解除され、カナダからの輸出が再開されるとカナダ政府が発表するなど、関係改善の兆しを見せていた。』