北朝鮮、弾道ミサイル発射の可能性 防衛省発表
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA054C00V01C24A1000000/
『2025年1月6日 12:12
防衛省は6日午後12時5分ごろ、北朝鮮が弾道ミサイルの可能性があるものを発射したと発表した。』





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北朝鮮、弾道ミサイル発射の可能性 防衛省発表
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA054C00V01C24A1000000/
『2025年1月6日 12:12
防衛省は6日午後12時5分ごろ、北朝鮮が弾道ミサイルの可能性があるものを発射したと発表した。』
人口パワーが変える勢力図 縮む日本、地域をどう維持
ニッポン2025
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB285NR0Y4A121C2000000/
『2025年1月6日 5:00 [会員限定記事]
人口の増減は世界各国の勢力図を塗り替える。国連によると、世界の人口は2025年に2000年比3割多い約82億人に達する。50年には25年比2割弱多い約96億人となり100億人に迫る。国別では中国を抜いて世界一になったインドが国際社会で影響力を強めている。日本は国力維持のために人口減への対応が急務だ。
国連の24年版「世界人口推計」によると、インドの人口は23年に中国を抜いて世界で最多となった。6…
この記事は会員限定です。登録すると続きをお読みいただけます。』
「例外的に強い米経済が全てを左右」 エラリアン氏
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR27CBR0X21C24A2000000/
『2025年1月6日 4:00 [会員限定記事]
2025年の金融市場が幕を開けた。24年に続いて米国1強の状況が続くのか。ケンブリッジ大学クイーンズカレッジの学長で、独保険大手アリアンツの首席経済アドバイザーも務める著名エコノミストのモハメド・エラリアン氏に展望を聞いた。
――24年の市場から学んだ教訓は。
「かつては実現しないと思われていたような地政学的・政治的出来事が現実となった。中東地域での悲惨な紛争が激化し、多くの罪のない人々が命を落…
この記事は会員限定です。登録すると続きをお読みいただけます。』
『――24年の市場から学んだ教訓は。
「かつては実現しないと思われていたような地政学的・政治的出来事が現実となった。中東地域での悲惨な紛争が激化し、多くの罪のない人々が命を落とした。フランスとドイツの政権の体制が崩れたり、韓国で戒厳令が出されたりするなど多くの出来事があった」
「経済面ではドイツとフランスが政治的リーダーシップを喪失し、欧州の経済停滞が深刻化していった。一方、中国は大規模な景気刺激策を取るか、成長と発展のエンジンを再活性化するために必要な構造改革を進めるかで迷い、政策的に混迷を続けている」
「こうした状況にも関わらず世界の多くの市場は堅調なリターンを記録した。『アメリカ経済の例外性(Exceptionalism)』と呼ばれる現象が、不安定な地政学、グローバルなマクロ経済の不安に対する効果的な盾として機能し続けたからだ」』
ひげ剃りの習慣はいつから? 知られざる盛衰の歴史
ナショナル ジオグラフィック
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC11ADQ0R10C24A1000000/
※ 「ひげ剃り」の習慣が、アレクサンダー大王にまで遡るものだとは、知らんかったよ…。
『2024年1月22日 5:00
アレクサンドロス大王の戦場での意外な決断が、その後数百年にわたり、男性のひげに影響を及ぼした。(PHOTOGRAPH BY BRIDGEMAN IMAGES)
2000年以上前、アジアでの戦いを目前にしたマケドニア王アレクサンドロス3世(アレクサンドロス大王)は、自分の軍隊の規模が敵の5分の1以下であることに気づいた。そこで王は、兵士の不安を和らげるため、ひげを剃るよう命令を出した。長いひげは、戦いの際に敵につかまれやすいからというのが、その理由だった。
結局、アレクサンドロス大王の軍はこの戦いで予想外の勝利を収めた。これをきっかけとして、古代ギリシャとローマの男性の間でひげ剃りが流行し、その傾向は400年も続いたと、米オハイオ州にあるライト州立大学の名誉講師で『ヒゲの文化史:男性性/男らしさのシンボルはいかにして生まれたか』(ミネルヴァ書房)の著者である歴史家のクリストファー・オールドストーン・ムーア氏は言う。
3000年以上前に、青銅または銅合金で作られたひげ剃りの道具。紀元前1500年頃のエジプトの書記官ネフェルカウェトの墓から見つかった。(PHOTOGRAPH BY THE METROPOLITAN MUSEUM OF ART, ROGERS FUND, 1935)
1930年代半ばに、同じ墓から見つかったカミソリ。ネフェルカウェトの父アメンエムハトのもので、同様の素材で作られている。(PHOTOGRAPH BY THE METROPOLITAN MUSEUM OF ART, ROGERS FUND, 1935)
ひげの流行は、古来より盛衰を繰り返してきた。それとともに、ひげを剃った顔や、きれいに整えられた口ひげなど特定のひげのスタイルが持つ社会的意義も変化してきた。
歴史書や学術論文によれば、男性のひげは芸術から政治まで幅広い分野で存在感を発揮し、果ては裁判沙汰にまで発展したこともあったという。そうした文献のほとんどは欧米社会に焦点を当てたものだが、世界中の社会や宗教において、ひげは重要な意味を持ってきた。例えば、イスラム教やユダヤ教では、ひげを生やすことは敬虔(けいけん)さの象徴とされている。
ひげを剃る行為は、古くはシュメール文明や古代エジプト文明にまでさかのぼることができる。当時の人々は、銅や青銅で作ったカミソリを使っていた。しかし一般的には、ほとんどの男性がひげを生やしていたうえ、ひげ剃りは大変な作業で、時には危険なことと考えられていた。
とはいえ、今も昔も「面倒だからひげを剃らない」わけではなく、「ファッションに敏感な男性は、わざわざ床屋でひげを整えてもらったり、オイルやコーム(くし)などの道具をそろえたりしていました」とオールドストーン・ムーア氏は言う。
ひげの威厳
ひげは、男らしさや家父長的な権力と結びつけられることが多いが、その権力は必ずしも男性によって独占されていたわけではない。女性ファラオとしてエジプトを20年以上統治したハトシェプスト(紀元前1508〜1458年頃)は、付けひげをつけていた。それ以前のエジプトのファラオたちが、かつらや王冠、付けひげなどで飾り立てていたため、ハトシェプストは単にその習慣に倣っただけだろうとオールドストーン・ムーア氏は考えている。
後の時代になると、ひげの重要性はさらに増す。歴史家のウィル・フィッシャー氏は、2001年に学術誌「Renaissance Quarterly」に論文を発表し、シェイクスピアが4本の戯曲を除くすべての作品でひげに言及していたと指摘した。また、1500年代から1600年代に描かれた300点のヨーロッパ男性の肖像画を分析したところ、ひげのない肖像画1点に対してひげのある肖像画が10点という割合だったという。
ひげは不衛生か?
男性のひげ問題は、医学書でも取り上げられた。ルネサンス期の医師は、ひげが生えることは精液の生産に関係していると書いている。古代ギリシャの科学者たちも、男性が女性よりも体が大きく、力があり、毛深いのは「内在熱(生得熱)」なるもののせいだという誤った説を信じていた。それによると、男性も女性もこの内在熱を発して精液を作り出しているが、女性の体は大量の精液を扱えないのだという。
この考え方に従えば、男性の体だけがひげを生やしても生き残ることができるとオールドストーン・ムーア氏は言う。古代ギリシャ人は、閉経後の女性がひげを生やし、病気になり、やがて死亡した場合、それは体内に精液が異常に蓄積した結果であり、ひげが生えてくるのは、その症状の表れだと考えていた。
加えて、ドイツの女子修道院長だったヒルデガルト・フォン・ビンゲンは、1160年頃、ひげが口の周りだけに生えて、額などには生えないのは、男性の吐く息が温かいためだという説を唱えた。そして、女性の息が男性ほど高温ではない原因を、旧約聖書の天地創造と結びつけて、男性が「土」から創られ、女性は男性のあばら骨から創られたためだと説明した。
1700年代になると、ひげ剃りは身だしなみの一つとされ、きれいに剃られた顔は立派で紳士的だと考えられるようになった。
19世紀には、細菌学におけるルイ・パスツールの功績によって、ひげを剃ることに医学的根拠が加わり、ひげの中は微生物の温床だと医師たちが警告するようになった。
実際、あるフランスの科学者は1907年に、ひげの男性とキスをした女性の唇から結核菌やジフテリア菌のほか、食べ物のカス、そしてクモの足の毛までもが発見されたという実験結果を発表した。同時期に医学誌「Lancet」に掲載された論文は、ひげのない男性の方がひげのある男性よりも風邪をひきにくいと結論づけ、ひげがない方がせっけんの効果が高いのだろうと主張した(実際には、よく手入れされたひげはそれほど汚くはない)。
職場におけるひげ問題
1900年代初期になると、職場でもひげを規制する動きが広がり、プロフェッショナリズムと清潔さを示すために男性はひげを剃ることが義務づけられた。そんななか、1904年にキング・C・ジレットが米国で安全カミソリの特許を取得し、1937年にはシェービングクリームやひげ剃り道具の売り上げが米国だけで推定8000万ドルになったという。
その米国では、ひげ論争が裁判にまで発展したことがある。警官の顎(あご)ひげの長さは襟(えり)よりも上までとし、口ひげは唇を覆わないように整えなければならないというニューヨーク州サフォーク郡の規則に反対し、警察官らが郡を相手に裁判を起こしたのだ。
しかし、1976年に連邦最高裁判所は訴えを退け、労働者のひげの規則は雇用主が決められるという判決を出した。規則を定めることで一般市民が警官を見分けやすくなり、警官の結束も高まるという郡の主張が認められた形となった。その後、この前例は全米に広がり、学校職員やそのほかの職場でも取り入れられるようになった。
それから十数年たった1992年にも、マサチューセッツ州の警官が、ひげを禁じた州の規則に反対して裁判を起こしたものの、やはり敗訴した。
しかしここ最近は、欧米でひげに対する見方が変化し、少なくとも非公式には、厳しい規則を課す雇用主は減ってきている。
「ジェンダーや男性らしさといったことが議論されるようになると、ひげなどが流行する傾向にあります」と、英エクセター大学の歴史学者であるエイラン・ウィジー氏は言う。「今は、ジェンダーや体の概念を取り巻く様々な議論や課題があるので、最近のひげのトレンドはそれを反映している部分もあるのでしょう」
文=DINA FINE MARON/訳=荒井ハンナ(ナショナル ジオグラフィック日本版サイトで2024年1月3日公開)』
女性は汚いものに嫌悪感を抱きやすい 進化的な利点とは
ナショナル ジオグラフィック
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOSG276K50X21C24A2000000/
『2025年1月6日 5:00
ある種のものや状況に対して嫌悪感を抱くことは、病原体にさらされにくくする可能性がある。(Photograph KrakenImages/Shutterstock)
子どもがノミだらけの子イヌを拾ってきたり泥だらけの靴で家の中に入ってきたりしたとき、父親は特にとがめないが、母親は慌てて徹底的な除染作業を始める。ホームコメディーの定番パターンだ。この現象には、単なるステレオタイプではない科学的な根拠がある。ヒトを含むいくつかの霊長類において、女性や成体のメスは男性や成体のオスよりも不潔さに敏感であることが、研究によって示されているのだ。
例えば、ハイイロネズミキツネザルやニホンザルのメスは、オスに比べて汚染された食べ物を避ける傾向が強く、ニシローランドゴリラやアヌビスヒヒのメスは皮膚感染症にかかった仲間を避ける傾向がある。
彼女たちはなぜこんなに潔癖なのだろう? 科学者たちは、女性やメスが不潔さに敏感になることで、寄生虫感染症から性感染症まで、さまざまな病気にかかりにくくなるからではないかと言う。
フランス、トゥールーズ先端研究センターの認知生態学者であるセシル・サラビアン氏はさらに一歩踏み込んで、霊長類のメスが不潔なものに嫌悪感を抱き、食べ物を慎重に選び、病気に感染する機会を減らしていることが、オスよりも長生きする理由の1つになっているのではないかと考えている。
サラビアン氏は、「汚い!」という感情には身を守る力があると言う。
潔癖なメスは病気にかかりにくい
2010年代に京都大学の大学院生だったサラビアン氏は、宮崎県の幸島(こうじま)でニホンザルが餌を探す様子を観察した。
氏はすぐに、オスとメスでは、ものを食べる前の動作が大きく異なることに気づいた。メスのサルの多くは、落ち葉の中からドングリを拾ったときに、汚れを拭きとってから口に入れていた。
一方オスは「用心深さに欠け」ていて、食べ物を拾ったら、ほとんど見ずにすぐに口に入れる傾向があったという。
サラビアン氏は後に、幸島のメスのサルたちはオスに比べて食べ物にうるさいだけでなく、糞便を介してうつる腸内寄生虫への感染が少ないことを発見した。
こうした一般的な感染症がニホンザルの健康に及ぼす影響についてはまだよく解明されていないものの、寄生虫感染症の治療を受けたメスザルは体重が増え、繁殖の成功率も高いという証拠があるとサラビアン氏は言う。
嫌悪感と食欲、どっちが勝る?
嫌悪感が霊長類の衛生状態を保つのに役立っているという考え方は、当時は衝撃的だった。
けれどもその後、多くの例が報告されるようになった。タンザニアのメスのアヌビスヒヒは、トレポネーマという細菌に感染したオスとの交尾を拒否する。トレポネーマは、ヒトの梅毒の原因となる感染性細菌で、ヒヒがトレポネーマに感染すると、尻に「ぞっとするような病変」ができる。
コンゴ共和国に生息するニシローランドゴリラのメスは、さらに徹底した衛生対策をとっている。オスの顔にトレポネーマ感染の兆候の1つである斑点が現れてくると、一部のメスたちは健康な仲間を求めて群れを離れてゆくのだ。
研究者たちは、野生での行動を観察するだけでなく、「普遍的に嫌悪を誘発する物質」である糞便を使って、嫌悪感の限界を観察する実験も行っている。食べ物の汚染を警戒しすぎると、何も食べられなくなるおそれがある。感染リスクを避ける行動には代償が伴うため、常に嫌悪感に従うわけにはいかないのだ。
サラビアン氏は幸島で、大量の糞の上にさまざまな食べ物を置いてニホンザルに出してみた。糞にまみれた小麦の粒に食欲をそそられたサルは3匹に1匹ほどしかいなかったが、半分に割ったピーナツはメスも含めて100%のサルが食べた。
ピーナツには小麦の16倍のカロリーがあるため、糞の上に置かれていても「無視するわけにはいかないのです。嫌悪感を上回る価値があります」とサラビアン氏は言う。
現代生活は嫌悪感を助長する
人間における嫌悪感を研究するには、もう少し繊細なアプローチが必要だ。実験であっても、便の上に食べ物を置いて人々に出すわけにはいかない。
そこで米コロラド大学コロラドスプリングス校の生物人類学者であるタラ・シーポン・ロビンズ氏らは、ボランティアが不快に感じるような写真を見せたり、「素足で糞便を踏んでしまった、食べ物の中にミミズが入っていた、生の鶏肉を食べた、自宅の台所にネズミがいた」などの状況を想像させて、その嫌悪感を数値で評価してもらった。
少なくとも西洋社会では、女性はこれらの状況に対して男性よりも強い嫌悪感を示す。では、ヒトが抱く嫌悪感も健康を守る役割を果たしているのだろうか?
ロビンズ氏のチームは、エクアドルの先住民族であるシュアール族に対してこの実験を行い、研究者が描写した状況にあまり嫌悪感を抱かない人ほど細菌やウイルスに感染している場合が多いことを、2021年に学術誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」で発表した。
75人を対象としたこの研究では性別による違いは見られなかったが、ロビンズ氏は、参加者の年齢層が幅広いことが原因ではないかと推測している。同じシュアール族であっても、若い世代ほど、土間をコンクリートに替えたり、衛生に配慮して調理したり、きれいな水を使ったりと、「現代的」なライフスタイルを取り入れるようになっていて、病原体に対する意識が高まっているからだ。
ロビンズ氏は、「基本的に、環境をコントロールできるようになるほど、不衛生なものに対する嫌悪感は強くなります」と説明する。
全体的に見て、嫌悪反応は霊長類の免疫系の第一線で機能しているようだ。「これが嫌悪感の本質です。私たちは、祖先を傷つけたものに対して嫌悪感を抱くようにできているのです」とロビンズ氏は言う。
子どもを守る
感染源となり得るものに対して女性が用心深くなることは、「進化論的な観点から見て理にかなっています」とサラビアン氏は言う。「なぜなら、子どもを産んで育てるのは私たち女性だからです」
出産時や育児中の母親は感染症にかかりやすいだけでなく、母親が子どもに病気をうつすおそれもあるため、リスクはさらに高くなる。
一部の研究者は、感染に対して最も弱い時期(例えば、母体が胎児を異物とみなして攻撃しないように免疫系が抑制されている妊娠初期)には、嫌悪感がさらに強くなるという理論を唱えている。
妊娠初期の女性を対象に、嫌悪の感じやすさを調査した研究では、賞味期限切れの牛乳やゴキブリなどに強い嫌悪感を抱く妊婦ほど、血液中に免疫反応の痕跡が少ないことが明らかになっている。この研究は2022年に学術誌「Evolution and Human Behavior」に発表された。
嫌悪を感じる現象を頭で理解しようとしても、嫌悪感から逃れることはできない。実際、糞便や体液などの不快な刺激に10年以上さらされてきたサラビアン氏は、以前にも増してこれらに嫌悪を感じているという。
「自分の身の回りに潜む危険について、以前よりはるかに敏感になりました」と氏は言う。「嫌悪感を消し去るのは簡単ではありません」
文=Elizabeth Anne Brown/訳=三枝小夜子(ナショナル ジオグラフィック日本版サイトで2024年12月3日公開)
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・ひげ剃りの習慣はいつから? 知られざる盛衰の歴史
・風呂嫌いの夫(大石静さん回答)』
中国 日本のEEZ内にブイ設置 日本側求める即時撤去に応じず
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241228/k10014681601000.html
『2024年12月28日 5時37分
沖縄県与那国島の南方の日本のEEZ=排他的経済水域内に、中国が新たに設置したブイが見つかったことについて、中国外務省は気象観測が目的で合法だと主張し、日本側が求める即時撤去には応じない姿勢を示しました。
25日、中国・北京を訪れた岩屋外務大臣は王毅外相との会談後の会見で、与那国島の南方の日本のEEZ=排他的経済水域内に、中国が設置したとみられる新たなブイが見つかったとして即時撤去を求めたことを明らかにしました。
このブイについて中国外務省の毛寧報道官は27日の記者会見で、「中国が管轄する海域に設置したブイは気象観測が目的で合理的で合法だ」と主張し、即時撤去の要求には応じない姿勢を示しました。
去年7月にも、沖縄県の尖閣諸島周辺の日本のEEZ内に中国のブイが確認されるなど、両国間でたびたび摩擦が生じています。
日中両政府が関係の改善に向けて模索を続ける中で、意見の隔たりがある分野では譲歩しない中国の姿勢が改めてあらわになった形です。』
なぜ「ロケット軍」に集中しているのか? 中国軍高官腐敗
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/04908bab12e1229f490038f1a1d3da68fecf5b83






『遠藤誉 中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
12/28(土) 13:01
中国人民解放軍高官の腐敗摘発が止まらない。しかもなぜか「ロケット軍」に集中している。注目すべきは習近平の側近も摘発されていることだ。これは日本が大合唱をしてきた「習近平は政敵を倒すために反腐敗運動をしている」という主張が、いかに間違っていたかを証拠づけるものとして注意を喚起したい。
本稿では、なぜ腐敗が「ロケット軍」に集中しているのかを考察する。
◆腐敗摘発された中国人民解放軍高官のカテゴリー
まずは、2023年から立て続けに断行されている中国人民解放軍高官たちの腐敗による摘発に関して、「腐敗分布図」を図表1に描いてみた。あまり馴染みのない人名に関して文章で説明するよりも、いかなる軍種、いかなる部局から腐敗が湧き出ているかを視覚的に見やすいようにした方が頭に入りやすいと思ったからだ。
図表1:中国軍高官の腐敗分布図
筆者作成
図表1をご覧になると一目瞭然、圧倒的に「ロケット軍」と「装備発展部」が多い。
「装備発展部」というのは、胡錦涛時代の「総装備部」で、「総後勤(後方勤務)部」ともとに「腐敗の巣窟」だったところだ。銀行に預けると発覚するので家一軒の中に札束を詰め込むという札束御殿があったりして、あまりに何年にもわたって大量に詰め込みすぎたために、習近平政権の反腐敗運動で摘発された時には札束がかびていたという有名な話がある。もちろん腐敗分子はアメリカなどの銀行を大いに活用したものだ。江沢民時代に全盛を極めた「底なしの腐敗」は、実際上は江沢民が仕切っていた胡錦涛政権時代も続き、国家予算の半分近くが個人のポケットか「外流」したというデータもある。その詳細は拙著『中国人が選んだワースト中国人番付 ― やはり紅い中国は腐敗で滅ぶ』(2014年)で書いた。2014年1月1日には中国のネットに「中国人渣排行(中国人くずランキング)」という言葉が現れるという言論の自由があったが、それくらい腐敗が、我慢のならない程度まで蔓延していたという証拠でもある。
胡錦涛時代までの「総装備部」を「装備発展部」という名称に変えたところで、「腐敗の巣窟」という、中国何千年の歴史が培ってきた「腐敗文化」が消えるわけではない。
一方、「ロケット軍」は習近平時代に入って「軍民融合」を始めたときと同時期に創設されたものである。この事実を認識できるか否かで、現在の中国人民解放軍高官たちの腐敗問題の原因を分析できるか否かが決まってくる。
◆習近平による軍事大改革と「軍民融合」
2016年1月2日のコラム<中国、軍の大規模改革――即戦力向上と効率化>に書いたように、習近平は2015年12月31日に建国後初めての軍事大改革を行った。
何が初めてかというと、それまで「総参謀部」の指揮下にあった軍を中央軍事員会の直轄下に置いたという点が大きな変化だ。加えて、当該コラムに書いたように、海軍と空軍は陸軍に貼り付けたような形だったのを独立させたということ、また第二砲隊として、これも陸軍の付録でしかなかったものを独立させて「ロケット軍」にしたということが大きい。
改革前の胡錦涛政権時代の軍組織を図表2に示したので、ご覧いただきたい。
図表2:胡錦涛政権時代までの軍事体制図
筆者作成
まるで「軍とは腐敗を主たる業務とする」と言っても過言ではないほど、軍は「腐敗の巣窟」となっていた。戦争は起きないのに、戦闘の準備ばかりしているから、莫大な国家予算が軍事費に充てられる。汚職をしようと思えば何でもできる状況だった。江沢民は北京に人脈のネットワークを持っていなかったので、「銭(ぜに)」によってネットワークを形成し、誰もが「江沢民閥」に列(つら)なるために汚職や賄賂に励んだ。そうしないと隊列から外されるからだ。
「総参謀部」は絶対的な権力を持っているので「権力の乱用」と「汚職蔓延」で目も当てられず、「総政治部」も党の権限だけを持っているような組織で、汚職は「総参謀部」に倣(なら)った。
「総後勤部」と「総装備部」は「物資」を扱うので、底知れぬ「腐敗の巣窟」になり果てていった。
このままでは、もし仮に台湾をめぐり戦争があったときには中国は絶対に勝てない。
そこで習近平はこの「腐敗の巣窟」にメスを入れるべく2013年から反腐敗運動を断行し始めたのだ。と同時に、2015年3月12日に「軍民融合」体制に入ることを宣言。同年12月31日に「ロケット軍」を創設するなどの軍事大改革を行ったのである。
改革後の軍事体制を図表3に示す。
図表3:2015年末に行われた軍事大改革後の軍事体制図
筆者作成
図表3をご覧になると、「総参謀部」が消えて「総装備部」が「装備発展部」に名称変更し格下げされていることがわかる。
そして「ロケット軍」が創設されたが、宇宙開発とともにミサイルなどのロケット開発はハイテク化が不可欠なので、大学や研究所などとタイアップし、民間企業とも連携する「軍民融合」の中で発展していった。そこにはふんだんな予算も割り当てられる。
となると、当然のように芽生えてくるのは、やはり「腐敗」だ。
たとえば、図表1にあるロケット軍元司令員の魏鳳和は中央軍事委員会委員で国防部長にまで昇進していたが、胡錦涛時代には図表2にある「総参謀部」の副参謀長をしていた。「腐敗の芽」はそこで十分に醸成されており、それがロケット軍で蠢(うごめ)いていたのである。
これらを一人一人説明すると一冊の本を書くしかなくなるので省略するしかないが、国防部長から落馬した李尚福は装備発展部の「腐敗の巣窟」にはまったものと考えられる。
苗華などの場合は悲惨だ。彼は習近平が書記を務めていた福建省の部隊で政治部門トップを務め、習近平の側近中の側近として位置づけられていた。その苗華をも摘発せざるを得ないところまで追い込まれたのだから、習近平が軍事大改革に託した「強軍の夢」は遠ざかっていったと言っても過言ではないだろう。
政敵を倒すために習近平が反腐敗運動を始めたと毎日のように喧伝しまくった日本のメディアや、いわゆる中国問題専門家たちには釈明が付かない現実がここにはある。
2024年4月19日に、図表3で何やら曖昧模糊としていた「戦略支援部隊」がようやく図表4にある「直属兵種」に分割され、その任務が明確化されたものの、もはや図表1にあるような「腐敗摘発」の激的流れを止めることはできなかったのである。
図表4:2024年4月以降の中国の軍事体制図
筆者作成
◆腐敗で摘発された軍民融合関連の軍事企業と大学名
2024年1月10日のコラム<習近平に手痛い軍幹部大規模腐敗と中国全土の腐敗の実態>の図表1に描いたような軍民融合の全体像があり、そのコラムでは李尚福に焦点を当てて彼が関わってきた全ての機関を赤で囲んだ。
今回は本コラムの図表1で示した高官たちが摘発されているので、範囲が広範になるため、軍民融合の中のロケット軍や装備発展部と深く関係している部局に焦点を当てて腐敗と関係する軍民融合相関図を作成してみた。それが図表5である。
青色の点線で囲んだ部分が「軍民融合」系列の組織だ。
末端には数多くの軍事関連民間企業と大学や研究所などがあり、中央組織からの連携指導を受ける。
図表5:今般の腐敗に焦点を当てた軍民融合相関図
筆者作成
今般の腐敗は、この「連携指導」した「民間企業や大学・研究機関」などとの間に起きている。胡錦涛時代に中央と地方役人や業者との間で起きた腐敗と類似の構図だ。あれだけ摘発され投獄され、無期懲役や死刑判決まで受けているのに、それでも腐敗はやまない。救いようのない、地の底まで染み込んでいる「中国腐敗の文化」だ。
腐敗で摘発された軍事企業と大学名を図表6に示す。
図表6:「軍民融合」により腐敗で摘発された軍事企業と軍事工業関係大学
筆者作成
図表6に示したのは氷山の一角にすぎず、図表1とともに、今後も続々と姿を現してくる可能性がある。これで腐敗が止まったなどということは中国にはない。
習近平が自らの運命と国運をかけて挑んだ軍事大改革と軍民融合だったが、中国の底知れぬ腐敗文化の土壌に関する認識が、まだ甘かったのではないだろうか。
2015年に同時に進行したハイテク国家戦略「中国製造2025」に関しては、軍のような腐敗は蔓延(はびこ)っていない。その理由は、そこには国際社会と密接に関連した市場競争があり、現在進行形の「市場活動」があるからだ。
「軍」は、中国はいま戦争を起こしてないので、予算ばかりが大量に注がれて「実際の活動」がないからだと解釈される。その意味からも12月24日のコラム<米『中国軍事力報告書』の「汚職摘発で中国軍事力向上」指摘は国防費獲得のため>で指摘した米・国防総省の報告書の内容は正しくなく、あくまでも米議会で予算を獲得するための適当な「盛り」を入れた報告書であったことが、さらに明確になったと言えるだろう。
最後にもう一度、図表5の「中央軍事委員会」の欄をご覧いただきたい。
中国人民解放軍の最高峰である「中央軍事委員会」の委員に腐敗高官を任命してしまった習近平の無念さは、いかばかりかと、哀れをさえ誘う。ここを赤色の線で囲むときに、筆者は一瞬の逡巡さえ覚えた。しかし止むを得まい。これが現実なのだから。
中国の「終わりなき腐敗」に関しては今後も考察を継続していきたい。
遠藤誉
中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。日本文藝家協会会員。著書に『中国「反日の闇」 浮かび上がる日本の闇』、『嗤(わら)う習近平の白い牙』、『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』、『習近平三期目の狙いと新チャイナ・セブン』、『もうひとつのジェノサイド 長春の惨劇「チャーズ」』、『 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。』
「戦争の時代」となってしまった「2024年」を「地政学」の観点から振り返る
https://gendai.media/articles/-/143860?imp=0

『篠田 英朗東京外国語大学教授 国際関係論、平和構築 プロフィール
2024.12.26
2024年も数多くの戦争が世界中で続いた。過去数年の間に、世界の戦争の数は、急激に増えた。それを受けて、2024年にも、多くの戦争が続いた。
ヨーロッパにおけるロシア・ウクライナ戦争、中東におけるガザ危機やその他の複合的に重なり合う戦争、アフリカにおける東から西に貫くアフリカの角からサヘルにかけての一帯で多発している数々の戦争、などが甚大な被害を出している。もちろん、アジアではミャンマーの状況が深刻だ。凶悪犯罪の犠牲者数を考えると、ラテンアメリカ諸国の状況も深刻である。
10年ほど前までは、まだ国際的な平和活動も活発だった。戦争の数もなんとか抑え込まれていた。だが2010年代以降、戦争の数は増加し続け、国際的な平和活動の数のほうは減少し続けている。厳しい状況に、対応が追い付いていないだけでなく、追いつこうとする政策的意欲も萎えてしまっているような事態だ。
この現代の戦争の時代を、どう見ればいいだろうか。本稿では地政学の理論の観点を用いて、大局的な視点から、整理を試みてみたい。
英米系地政学理論に依拠した「海洋国家」連合と「リベラル国際秩序」
35年ほど前、冷戦が終わった時、「自由民主主義の勝利」を前提にした「新しい国際秩序」なるものが語られた。あれはいったい何だったのか。
冷戦終焉は、東欧の共産主義政権の崩壊と、ソ連の崩壊によって、引き起こされた。
自由主義陣営と共産主義陣営の対立が、冷戦だったとすると、一方の陣営の崩壊によって、それは終わった。そこで、国際社会が標榜する価値観は、自由民主主義の価値観に収斂していき、それによって各国の政治体制も、国際的な経済体制も、より普遍主義的で一元的なものに刷新されていく、と感じられるようになった。
もちろん、共産主義陣営が崩壊したからと言って、自由主義陣営が普遍的に万全で問題がないことが保証されたわけではない。だが当時は、「自由民主主義の勝利」の物語にそって、「新しい国際秩序」=「リベラル国際秩序」が、イデオロギー対立のない冷戦終焉後の世界にも広がっていく可能性が高い、と広範に信じられた。
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確かに、旧ワルシャワ条約機構の東欧諸国は、その後、NATO(北大西洋条約機構)の同盟網に加わり、自由主義陣営は、拡大した。だが、だからといって、世界全体が自由主義を標榜するようになったわけではなかった。まして全ての諸国が欧米諸国の同盟国になったわけでもなかった。
「リベラル国際秩序」とは、自由民主主義が普遍化した国際秩序というよりは、自由主義陣営諸国の影響力が高まった国際社会の秩序のことであった。それは、欧米諸国の介入主義的行動を強く要請して、成り立つものであった。
アメリカを中心とする自由主義陣営の諸国の結びつきは、地政学理論にそって言えば、「海洋国家」が結びついたネットワークのことだ。ハルフォード・マッキンダーに代表される「英米系地政学理論」の伝統にそって言えば、冷戦構造とは、ユーラシア大陸中央部の「ハートランド」に位置しつつ、海に向かって膨張政策をとってくる「陸上国家」を、「海洋国家」連合が封じ込めていく構造のことであった。冷戦終焉後の「リベラル国際秩序」とは、「陸上国家」の膨張が止まった後、「海洋国家」諸国がより自由にグローバルに影響力を行使するようになった時代の秩序のことであった。』
『大陸系地政学理論に依拠した「圏域(勢力圏)」思想の巻き返し
21世紀に入ると、介入主義が極まって、アメリカやその同盟諸国が、アフガニスタンやイラクで大々的な軍事介入を行い、結果として国力を疲弊させていくようになった。代わって「陸上国家」の代表であるロシアは、国力を立て直していった。加えて、中国が、超大国として台頭した。さらに、インド、ブラジル、インドネシア、トルコなどが国力を充実させ、それぞれの地域での存在感も高めていった。これらの国々の台頭は、アメリカが中心となった「海洋国家」連合が主導する国際秩序に、変化をもたらすものであった。
地政学理論の観点から、これらの諸国の台頭の意味を考えてみよう。これらの国々は、単純に「陸上国家」として、「海洋国家」連合の覇権に挑戦したわけではなかった。ただ、「陸上国家」と「海洋国家」の二元的対立関係を強調する「英米系地政学理論」の世界観を、相対化した。つまり、二元的なものではない、より「多元的」な世界観を求めた。
たとえば、ロシアで代表的な思想家であるアレクサンドル・ドゥーギンが標榜する「ユーラシア主義」の思想などを見ると、「英米系地政学理論」の特徴である「陸上国家」と「海洋国家」の二元的な対立とは異なる世界観が内包されていることがわかる。より「大陸系地政学理論」に近い「多元主義」を志向する内容だ。
ナチス時代のドイツで活躍した理論家のカール・ハウスホーファーに代表される「大陸系地政学理論」によれば、世界は、いくつかの主要な「圏域」に分かれる。そしてそれぞれの「圏域」に、覇権国というべき存在がある。たとえばユーラシア大陸中央部の「圏域」は、ロシアが君臨する地域だ。ドゥーギンが代表する「ユーラシア主義」の地政学理論は、明らかに「大陸系地政学理論」の系譜に属する。
このように大陸系地政学理論では、「圏域(勢力圏)」の存在が重視される。そして異なる「圏域」の有力国が、「勢力圏」の線引きの調整を通じて、共存を図っていく姿勢が模索される。
この考えの延長線上で、欧州と北米以外のそれぞれの地域から、代表的な有力国を集まってくる仕組みで、G20、そしてBRICSが形成された。特にBRICSは、「海洋国家」連合の構成国を含まないで形成され、「圏域」思想を重視する「大陸系地政学理論」を意識した「多元主義」を標榜する国際フォーラムとして存在感を高めた。
グローバリズムとも特徴づけられる「英米系地政学理論」にのっとった世界観を標榜するのが「海洋国家」連合のネットワークだとすると、非欧米諸国の有力国は、「圏域」思想に依拠した「多元主義」を標榜する。21世紀に入ってからの欧米諸国が形成する「リベラルな国際秩序」の減退は、他の有力国の台頭を通じた「多元主義」の国際秩序の世界観の広がりと、密接不可分な関係にある。』
『ロシア・ウクライナ戦争と二つの異なる地政学理論
現代世界を揺るがせ続けているロシア・ウクライナ戦争では、「英米系地政学理論」の世界観と、「大陸系地政学理論」の世界観が、ぶつかりあっている。「リベラル国際秩序」を推進する「英米系地政学理論」の見方では、ロシアの東欧への拡張政策に対して、封じ込め政策をとる必要性が強調される。これに対して「大陸系地政学理論」の見方では、ウクライナはロシアの「圏域(勢力圏)」であり、他の「圏域(勢力圏)」の浸食は、地域の安定を損なう。
NATO(西大西洋条約機構)の東方拡大が、ロシア・ウクライナ戦争の原因であるか否かについては、論争がある。欧米諸国は、否定しているが、ロシアのプーチン大統領は、NATOのほうが最初に挑発をしてきた、という見解を示している。国際法上は主権国家の独立は尊重されなければならない、という原則は当然である。ただ、それとは別に、脅威の認識は、いわば主観的な問題になる。また安定した安全保障の仕組みの構築も、国際法だけでは達成できない課題だ。
NATOは、劇的で急速な拡大にもかかわらず、これまで旧ソ連地域の国を加盟させたことはない。例外はバルト三国だが、NATO構成諸国は、バルト三国のソ連への併合を無効とみなし、冷戦期を通じても承認していなかった。またバルト三国は、ソ連崩壊前に独立を果たしたという点でも、ウクライナをはじめとする他の旧ソ連地域の諸国とは、位置づけが異なる。
大国間のバランス・オブ・パワー(勢力均衡)が秩序維持の原理であると信じられていた時代のヨーロッパで、大国に浸食されずに独立を維持できた国は、東欧には存在しなかった。第一次世界大戦までの時代の東欧は、ロシア、ドイツ、またはオーストリアによって分割支配されていた。第一次世界大戦後、国際連盟が設立され、集団安全保障の謳い文句で、東欧に数々の独立国が作られた。ウクライナは、その際に独立を宣言したが、すぐにソ連に吸収されてしまった地域である。その後、第二次世界大戦を経て、東欧の政治地図はたびたび変わったが、ソ連が縮小することはなかった。
1991年にソ連が崩壊してウクライナは独立国となったが、親ロシア派と親欧州派との間の政治闘争が繰り返された。2014年以降は、クリミアがロシアによって占領されただけでなく、東部のドネツク州とルハンスク州が、戦争に陥り、キーウの中央政府の実効支配から外れた。
「リベラル国際秩序」を標榜する欧米諸国は、主権国家の領土的統一性の原則を参照する。日本もそうである。だがロシアのプーチン大統領の主観では、欧米諸国の態度は、ロシアの封じ込め政策でしかなかった。NATOの歴史的な「圏域」を度外視した行動こそが、地域の安定を損なうものだ、という主張を、プーチン大統領は繰り返している。
地政学理論の二つの伝統から見れば、ロシアの主張は、「大陸系地政学理論」にそったものである。もちろんそれは現代の国際法の原則を尊重した理論ではない。だが欧米諸国の「二重基準」に不信感を持っているロシアから見れば、欧米諸国の指導者たちは機会主義的に都合よく国際法を解釈しているだけで、実態は、「英米系地政学理論」にもとづいたロシアの封じ込めを継続して行っているにすぎない、ということになる。
ロシア・ウクライナ戦争だけを見れば、国際法の観点から見て、ロシアの主張が弱い。しかし他の地域の事例を参照するならば、欧米諸国は恣意的に国際法を参照する「二重基準」に陥っている、という主張にも、妥当性があるように見えてくる。そのため、ロシアに対する国際的な非難は盛り上がりを欠く結果になっている。対ロシア経済制裁に参加しているのは、アメリカの軍事同盟国のみである。2022年2月の全面侵攻発生直後は、国連総会において141カ国がロシアの侵略を非難する決議に賛成した。
文言調整のうえで、翌年にも一応は同趣旨の決議が141カ国の賛成で採択された。だが、その後は、決議提出がなされなくなった。141カ国の賛同を得ることが不可能になっているからである。2024年6月に開催された「平和サミット」の共同宣言に署名した諸国の数は80カ国ほどにとどまった。サミット後しばらくの間、ウクライナ政府は、「グローバルサウス」諸国の賛同を取り付けて第二回サミットを開催する、と強調していた。だがそのような発言は、最近ではなされなくなっている。』
『中東における勢力圏思想のせめぎあい
2024年を通じて戦火が広がり続けたのが、中東だ。昨年から始まったイスラエルのガザでの軍事作戦は、終わりが見えない。それに加えて、イスラエルは周辺国の勢力との交戦を続け、レバノン、イエメン、シリア、イランで、軍事行動を行ってきている。
この状態を、大局的に、地政学理論の観点から見るならば、イスラエルは、「英米系地政学理論」における「海洋国家」連合の代理勢力として、中東における敵対者の勢力の拡大を防ぐ行動に出ている、と描写することができる。そのため明白な国際法違反行為が繰り返しているにもかかわらず、欧米諸国から、手厚い保護を受けている。
地政学理論の観点から言えば、イスラエルは、米国を中心とする勢力が、中東に打ち込んだくさびである。イスラエルの存在を通じて、アメリカは、敵対的な勢力が中東を支配下に置いてしまうことを防ぐことができる。国内事情に加えて、地政学的な計算の観点からも、アメリカはイスラエルを見放さない。
この事情の余波が新たな展開を見せたのが、2024年末のシリア情勢の急変であった。アサド政権崩壊の流れの中で、側面支援を、シリア駐留のアメリカと、アサド政権軍に空爆を繰り返したイスラエルが、遂行した。アサド政権崩壊後、間髪を入れず、イスラエルはゴラン高原に侵攻して、一帯を占領下に置いた。
そしてシリア南部のドゥルーズ派を懐柔し、アメリカ軍の基地の存在も念頭に置きながら、北部のクルド人勢力と連携することを狙っている。これらの勢力の連携が果たせれば、シリア東部にイランの影響力の浸透を遮断する回廊を形成することができるからだ。
イスラエルにとって最大の脅威はイランであり、あらゆる行動は、イランの脅威の除去に向かって進んでいる。同じ目標を持ってイスラエルを支援しているのは、アメリカやイギリスを中心とする欧米諸国である。それらの諸国は、イランと連携の度合いを深めるロシアも敵国とみなして、中東における影響力の拡大を封じ込めようとしている。イランとロシアが支援していたシリアにおけるアサド政権の崩壊は、そのような政策的態度がもたらした成果の一つだと言えるだろう。
ロシアは「ユーラシア主義」を標榜し、自らの「圏域(勢力圏)」を固めつつ、中東を経由してアフリカにまで影響力を伸ばす政策をとっている。アラビア半島の付け根に位置する地域の交通の要であるシリアを友好国とすることも、ロシアの利益に資する。その観点から、ソ連時代から続くシリアとの友好関係を維持し、アサド政権を支援して、軍事基地をシリア領内に維持していた。
ただし「ユーラシア主義」の地政学理論から見れば、より重要で強い関心の対象となるのは、イランとの歴史的な蜜月関係を維持し、冷戦時代にアフガニスタンに侵攻までしながら、果たせなかったインド洋に通じる「南北輸送回廊」を発展させることだ。また黒海から地中海を経由して伸びるロシアの影響力は、トルコとの関係さえ良好であれば、直接的にアフリカに通じさせることができる。』
『ロシアとトルコの緊張関係
ロシアとトルコは、これまで、三つの地域で、敵対しあう代理勢力を支援する緊張関係に置かれてきた。ナゴルノ・カラバフ紛争をめぐるアルメニアとアゼルバイジャン、シリアにおけるアサド政権と反アサド勢力のジハード主義勢力、そしてリビアにおけるハフタル将軍のLNAとトリポリの暫定政府GNUである。
これら三つの戦争のうち、ナゴルノ・カラバフとシリアの二つの戦争は、トルコが支援する勢力が勝利を収める形で、収斂をしてきた。ロシアは、いずれの場合でも、トルコと「圏域」を調整する動きを続けつつ、最後は自らが支援してきた現地勢力を見放す形で、トルコの勢力圏の拡大を黙認する態度をとった。それはロシアが、トルコの「圏域」に配慮をしてトルコとの関係維持に努めつつ、優先順位の見定めをしているからだろう。オスマン帝国の復活を目指しているとまで言われるエルドアン大統領は、コーカサスから中東にかけて、影響力を広げている。
トルコは、最近のエチオピアとソマリア連邦政府の関係改善合意の調停者となったことで、アフリカの角地域にも大きな関心を持っていることを示した。ロシアは、イランの「圏域」とともに、トルコの「圏域」を認める「大陸系地政学理論」を応用した「多元的」な世界観にもとづく調整を模索するはずである。
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トルコにとって、支援してきたHTS中心の暫定政権ができたことは、大きな成果である。アサド政権が崩壊していく時期にも、ロシアやイランとの調整を欠かさず、成し遂げた。今後も「圏域」の調整を図っていくだろう。
トルコのシリアにおける最大の目標は、クルド勢力の封じ込めである。この目標の達成の障害になるのは、ロシアやイランではなく、アメリカやイスラエルである。アメリカにとってクルド人勢力は中東における有力な代理勢力であり、イスラエルにとっては反イスラエル勢力の影響力の拡大を食い止める障壁である。そこでトルコは、優勢になった立場を活かして、アメリカやイスラエルとの「勢力圏」の調整を図りたいだろう。
「リベラル国際秩序」の普遍主義を掲げていたバイデン政権であれば、調整はより難しかったと思われる。ただしトランプ政権は異なる姿勢をとっていく可能性もある。もっともイスラエルは、妥協的な調整を嫌うだろう。異なる地政学理論がもたらす確執は、シリア情勢の混沌を示唆する。』
『アフリカにおける橋頭堡と砂漠の海の沿岸部
アフリカでは、東部アフリカの角のソマリアから、西アフリカのサヘル地域に至るまでの帯状の地域で、戦争が多発している。アデン湾や紅海をはさんで中東に向き合うソマリアなどのアフリカの角地域は、地政学理論でいう「橋頭堡(bridgehead)」としての性格を持っている。大陸から海洋に突き出した半島部が、港の埠頭のように機能する、というイメージである。アフリカ大陸がインド洋に突き出たアフリカの角の地域は、アフリカ大陸有数の「橋頭堡」である。
こうした地域では、様々な勢力がぶつかり合う。「英米系地政学理論」にそって言えば、「陸上国家」と「海洋国家」の確執が、先鋭化する地域だ。実際に、ソマリアは、冷戦期から今日に至るまで、戦争の連続の歴史をへてきている。その背後には様々な外国勢力の暗躍もある。
砂漠は海のようなものである。そう考えると、サヘルは、沿岸部に似た地理的性格を持っている。サハラ砂漠を、東西に伸びる海と同じだと考えて、地図を見てみよう。そうすると、砂漠の海の南側の「沿岸部」で、戦争が連なり合って発生していることがわかる。砂漠の海の対岸にあう北アフリカ・中東の騒乱の影響を、正面から受け止めなければならないのが、サハラ砂漠の南側に帯状に広がるサヘルだ。サブサハラ・アフリカの「沿岸部」としてのサヘルは、地政学理論から見れば、様々な勢力の浸透が、確執を引き起こしやすい。
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この地理的事情を反映して発生していると言える目に見えた現象の一つが、中東を起源とするテロ組織ネットワークのアフリカへの浸透だ。東のソマリアで長年にわたる戦争を引き起こしているのは、アルカイダ系のアルシャバブである。西のマリで活発な反政府軍事活動を行っているのは、やはりアルカイダ系のJNIMである。もっともナイジェリア北部を中心としたチャド湖周辺地帯で勢力を誇っているのは、イスラム国(IS)系のボコハラムやISWAPである。
アフリカの特徴の一つは、大陸内に覇権的な影響力を持つ土着の有力国が少ないことだ。南部の南アフリカ、西部のナイジェリアが、例外的な存在だろう。しかしサヘルの騒乱のため、西アフリカにおけるナイジェリアの覇権は揺らいでいる。相次いでクーデターが起こったマリ、ブルキナファソ、ニジェールは、フランス軍と米軍及び国連PKOを追い出し、ロシアのワグネルを招き入れて、テロ組織との戦争を遂行している。ナイジェリアを盟主とする準地域機構のECOWAS(西アフリカ諸国経済共同体)からは脱退する。「大陸系地政学理論」と「英米系地政学理論」の世界観の確執は、アフリカ独特の混沌を伴って、大陸内の各準地域で、展開している。』
『トランプ大統領とモンロー・ドクトリン
こうした2024年の現実を見たうえで、2025年の世界情勢を展望すると、アメリカのトランプ政権がどのような政策をとってくるかが、やはり一番の着目点になる。地政学理論の観点からの最大の焦点は、アメリカが「英米系地政学理論」にそった「海洋国家」連合の盟主として、どこまで本当に行動していくか、であろう。
すでにトランプ大統領は、ロシア・ウクライナ戦争の停戦を果たして、ヨーロッパでのロシアの封じ込め政策に終止符を打ちたい姿勢を明確にしている。中東でのイスラエル擁護の立場は強いものであり続けるだろうが、和平を達成したいという意図の発言もしており、他の「圏域」確保を志向する国家群と調整の可能性もあるだろう。
トランプ次期大統領は、中国との超大国間競争関係に注力していく意図を表明している。パナマ運河の運営が中国有利で米国不利になっているという理由で、パナマ政府に運河の返還を求める可能性があるとトランプ氏が示唆したことが、最近でも話題となった。
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特に警戒しているのが、経済的権益にも直結している中国の東アジアの外での影響力の高まりだ。ただしバイデン政権とは異なり、「民主主義vs権威主義」のようなイデオロギー的な装いで政策を説明する姿勢をとっていくことはないだろう。トランプ氏は高関税政策を多用する意図を表明しているが、政治的に中国を敵対視したいわけでもないだろう。
実はアメリカは、第一次世界大戦までの時代は、ヨーロッパ列強との間の「相互錯綜関係回避」の原則を固めていた。いわゆる「モンロー・ドクトリン」の外交政策である。トランプ氏の政策が、単純な19世紀の「モンロー・ドクトリン」への回帰だけに終わることはないだろう。しかし、グローバリズムを標榜する普遍主義的な「英米系地政学理論」の伝統から離れて、「大陸系地政学理論」に近づく「圏域」間の調整を一定程度は認める方向に、アメリカの外交政策を転換させていく可能性はあるかもしれない。もしそのような転換が図られるならば、世界の戦争の状況にも、少なからぬ影響が及んでいくだろう。』
ロシアのウクライナ侵攻直後と変わった点、変わらなかった点
意識高い系の退潮が間違いなく影響する停戦協議の行方
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/85770
『漂い始めた紛争の出口らしき気配
残りわずかの2024年に続き2025年ともなれば、ロシア・ウクライナ紛争の勃発から丸3年に近付く。
そして、この紛争にも出口らしき気配が漂ってきた。
年明けの1月に米国ではD.トランプ政権が発足する。
現政権のJ.バイデン大統領がウクライナに肩入れしてきたこの紛争が、新政権によってようやく終止符を打たれるという予想が広まり、ロシア、ウクライナ、その他の関係諸国は皆その対応に動き始めている。
停戦が予想されるのは、このトランプ新政権の登場だけが理由ではない。ウクライナの継戦能力に限りなく赤に近い黄信号が灯り、青色にはもう戻れないのでは、と多くに思われつつある。
2023年の反転攻勢の失敗以来、ウクライナ軍が東部や南部でロシア軍を押し戻せない戦況が続いている。
北部で2024年8月に敢行したロシア領クルスク州への侵攻も、精鋭部隊を投入したと喧伝されたにしては短期間でその前進が止められてしまい、今ではロシア軍の逆攻勢に晒されている。
国力で勝るロシアを相手に、武器と兵員の不足が顕著になったことが、戦局利あらずの直接の原因のようだ。
欧米のウクライナへの武器援助は必ずしも計画通りには運ばず、同国内での新規徴兵もうまくは行っていない。
戦局好転の見通しが立たず将来の絵姿が描けなくなれば、当然ウクライナ国民の士気も落ちてくる。
徴兵忌避や戦線での逃亡兵増加はもはや隠しようがなくなり、報道によれば対露和平交渉に進むべきと考える国民の割合も5割を超えた。
この状況を見れば、これまでウクライナを兵器や資金で支えてきた欧州諸国も、対露戦勝利はもはや夢物語で、代わりに現実的な停戦とその後の安保体制構築に向けて動くしかないと考えて当然なのだろう。
その中でウクライナ勝利への悲観論を決定付けたのは、上述のウクライナ軍によるロシア領クルスク州への侵攻作戦だったように思われる。
この作戦については当初から、何の意味があるのかと問う指摘が西側諸国からも多々出ていた。
それに対して、ロシアに東部戦線の兵力分散・転戦を余儀なくさせてその攻勢を弱める、あるいは停戦を見込んで奪われた東部・南部の領土との引き換え交渉に持ち込む材料つくり、といった解説がウクライナや西側の論者から出された。
しかし、いずれの理由付けも、どこかすんなり納得できないものが残る。』
『支持率急低下がゼレンスキーの手足縛る
そしてその意図がどうあれ、ロシアはウクライナの見込み通りには動かず、逆にウクライナ軍は東部戦線での増強を怠ったことで、ロシア軍の快進撃を招いてしまった。
この作戦の立案者が誰で、ウクライナのV.ゼレンスキー大統領や米国がどこまで深く関わったのかは不明だ。
しかし、結果を見たことで、ウクライナが物量面での劣勢のみならず、戦術・戦略の立案・実施の面でもまともに戦えていない、という評価を西側内部に生んでしまったのではないか。
そうなると、ゼレンスキー大統領以下が米欧に対してどれだけ「勝利計画」(ウクライナのNATO加盟や対ロシア攻撃および抑止力構築などが主眼)を口説いて回っても、不発に終わるしかない。
この計画を引っ提げて、グローバル・サウス諸国他160か国のウクライナ応援団結成を目論んだものの、その舞台となるはずの「平和会議」は開催されることがなく、事実上その案が潰れた状態のようだ。
国内での支持率が大きく下がってきたゼレンスキー大統領は追い詰められる。
最近ではメディアに対して、NATO(北大西洋条約機構)加盟が即叶うならロシアの占領地域の奪還は武力によってではなく外交で、と表明せざるを得なくなっていた。
領土奪還への戦闘継続の旗を、取りあえず、であろうと降ろさざるを得なくなったのだ。
では、停戦に向けてこれからどのような動きになるのか。
トランプ次期大統領はロシアのV.プーチン大統領との会談を行う意向を示し、プーチン氏も「望むところだ」というサインを送っている。
両者が会うとなれば、ウクライナにとって有利な条件で話が運ぶとは予想されていないから、危機感を持ったウクライナや1月20日までは政権の座にあるバイデン大統領が、残されたわずかの日々で何かを新たに仕掛ける可能性はまだ残っている。
だが、長距離ミサイルをロシア領内部へ撃ち込んでも、ドローンでの攻撃を多発させても、あるいはロシア要人へのテロ行為を繰り返しても、トランプの大統領就任までに戦局を一変させることはまず見込めないだろう。
一部の米誌やそれを受けた日本のメディアは、ウクライナ軍のミサイルやドローンによる攻撃での成果を、映像を交えて頻繁に伝えている。
ロシア敗北の可能性がまだ残ると言わんばかりだ。
しかし、全戦線でウクライナ軍が押されている中では、負けが込んできても自国軍が果敢に戦う姿を伝えていた1944年のドイツや日本の週間ニュース映画を改めて見せられているかのように思えてしまう。
とは言え、敗色濃厚のウクライナが脇に置かれた格好で米露首脳会談が開かれたとしても、簡単に停戦というわけにはいくまい。』
『トランプ新政権にできること
トランプ氏との会談を望むプーチン氏も、ロシアの要求やその趣旨をトランプ氏がすぐに認めると予想するほどナイーブでもなく、トランプ氏や米国を信用するから会談するということでもない。
口で何を言おうと、トランプ第1期政権時代の対ロシア外交での実績(対露経済制裁他)を思い返せば、彼の判断だけで米国の政治を切り盛りできるものではないことがはっきりしている。
そして、トランプ大統領の要求は戦いを止めろということであって、決してロシアの対ウクライナ侵攻を肯定するものでもない。
さらに、トランプであろうとなかろうと誰がトップに立っても、今の米国はその国内政治の仕組みそのものが過度に不安定なものとなっており、その治癒にはかなりの時間が必要だ、とプーチン大統領は見ている。
仮にトランプ氏と意気投合できたとしても、4年後以降にまた民主党政権に代わり、緊迫した両国関係へ逆戻りとなるかもしれない。
しかしそれでも、全く話し合う余地が見えない現バイデン政権の原理主義的な立場に比べれば、トランプ氏の方がまだマシということなのだ。
彼を相手に、物事を少しずつでも解決に向かわせる協議や妥協の積み重ねは可能なのではないかと踏んでいるのだろう。
そのプーチン側から出されるであろう要求には、既占領地域(クリミアと東部・南部の4州)のロシアへの併合承認と、ウクライナのNATO非加盟および軍備の制限を伴う中立化や、ウクライナ領内の非武装地帯の設定がまず挙げられる。
その上で、欧州を巻き込んだより広範囲の新たな安保体制構築とそれへの米国の関わり方についてプーチン大統領は論じ合うことを考えているはずである。
一方、返り咲きのトランプ新大統領が、停戦に向けて実際にどのような方針を選択するのかはいまだはっきりしない。
これまでに彼や副大統領となるJ.ヴァンス他の顧問たちが断片的に述べてきたことから推測すれば、まずは停戦を求め、ロシア軍が支配するウクライナ領を当面ロシアの占領下に置くことを認め、ウクライナのNATO加盟をすぐには認めない、という線が濃厚のようにも見える。
これらはいずれもロシア側の主張を受け入れたかのように聞こえる。しかし、議論が具体的な取り進め方に入ればそうとも言えなくなる。
ロシア軍の占領地域へのロシア支配を当面認めるとは、それがロシア領となったことを正式に認めるものではあり得ない。
ロシア軍を占領地域から追い出せないという事実を追認するだけであり、本来のウクライナ領であることを否定するものではない。
ではどうするのかだが、過去の世界の領土問題解決例を見れば、5年なり10年なりの期間を置いて、住民投票で当該地域の帰属を決める形に持って行くしかないのだろう。
その間は、ロシアの占領は国際法に反するがやむを得ない、という扱いになる。』
『欧州やウクライナから手を引けない米国
停戦の時点までにウクライナ東部・南部の4州の行政区域すべてをロシアが制圧していなかったなら、実際の戦線でロシアの事実上の支配領域を決めることになる。
トランプ大統領も、区切りが良いからとてこれらの地域の未制圧部分までロシアに渡すほど人は良くあるまい。
その未制圧部分からウクライナ軍を撤退させるか否かは、交渉で何らかの妥協点を探っていくしかない。
次に、ウクライナのNATO加盟を延期するとして、どれだけ延期するのか、その間のウクライナの安全保障を誰がどのような形で行うか、である。
そのためには、今後の中長期にわたる欧州・ウクライナとロシアとの間の安全保障の枠組みを停戦と同時に構築し始めねばならない。
停戦が単なる弥縫策で終わるならその意味はない、とプーチンも述べてきている。
だが、その通りだからこそ、これがロシアと米国・欧州との交渉で最大の難関となる。
その交渉には米露のみならず、ウクライナや関係する欧州諸国は当然として、場合によっては国連や第三国の参画も必要となるかもしれない。
集団討議ともなれば船頭の数は増え、二国間での協議に比べて話をまとめるにははるかに多大な時間が必要となる。
そして議論の行方は、トランプ政権の今後の対欧州(NATO)・対露外交方針の基幹部分にも関わってくる。
ロシアはウクライナのNATO非加盟のみならず、その非武装中立に近い形を要求している。ウクライナを丸裸にせよ、である。
それは3年近くもロシアと干戈(けんか)を交えてきたウクライナにしてみれば、もちろん受けられる話ではない。
ロシアが停戦合意を破っていつまた攻め込んでくるか分からないという疑念や恐怖は、その妥当性の有無にかかわらず、簡単に拭えるものではない。
欧州諸国の為政者の中にも、ロシアがウクライナだけでは満足せず、さらに西に向かって侵攻を仕掛けてくると固く信じる向きもいる。
ウクライナと同様に、ロシアに対して掻き消すことができない恐怖と憎悪の結果から生まれた立場である。
トランプ大統領も、こうした今や欧州全体に広がった極度の対ロシア警戒感を無視することはできまい。
だが、そうであれば米国が欧州の騒動から手を引くということは不可能になるだろう。ロシア抑止の最後の拠り所が結局は米露の核均衡に行き着いてしまうからだ。』
『欧州とロシアの国内事情が及ぼす影響
NATOへの加盟に代わり、欧州の有力国が個別にウクライナと安全保障条約を締結し、それらの国からウクライナへ駐留軍を派遣すると言うなら、ロシアは百歩譲ってそれを認める見返りにウクライナの軍備制限、特に長距離兵器を保有させない形を最後まで要求するだろう。
それでは欧州・ウクライナにとっての軍事バランスが保てない、となれば、米国がウクライナと安全保障条約を結ぶしか対抗策がなくなり、トランプ大統領がそれをどう判断するかである。
この問題の決着に時間がかかると読めば、ウクライナは停戦前に欧州各国からの駐留軍派遣を画策するだろう。
それを止めるべく、ロシアは欧州への威嚇戦術の程度をさらに引き上げるかもしれない。その新たな緊張関係の緩和にも、結局は米国が引っ張り出される羽目になる。
欧州からウクライナへの駐留軍派遣は、停戦後の協定順守を監視するための平和維持軍の配置とも議論が重なってくる。
欧州勢のみからなる平和維持軍は恐らくロシアの認めるところではない。米国がそれに加わっていないとしても、である。
ロシアもウクライナが停戦協定を破って領土奪回戦に再度乗り出して来ることを警戒しているからだ。
平和維持軍が西側だけで構成されるなら、ウクライナが不穏な動きに出ても見て見ぬ振りをしかねない。
そうなると、国連の指揮の下で平和維持軍を送るか。
だが、国連安保理が真面に機能していない状況の下でその派遣に現実味が有るのか、それが無理なら非欧州国からも派遣するのか、ならばその費用は誰が負担するのか、等々の話にまで発展して行きかねない。
あれやこれやで議論の種は尽きない。
欧州とロシアとの間の妥協は、欧州各国の経済や内政での問題がより深刻化し、ロシアも戦時経済を継続することへの不具合が顕在化する、といった双方の国内事情が、交渉のマラソンレースに終止符を打つ時まで待つしかないのかもしれない。
最後に、ロシアが要求する西側の経済制裁解除は、西側も簡単にはそれに応じられないし、応じてはならない。
原理原則の問題が絡むからである。
どのような経緯・背景があるにせよ、先に正規軍を相手国に侵攻させたのは間違いなくロシアであり、武力による国境侵犯を行ったことへの罰は下されねばならない。
結果として、それが露中関係のさらなる緊密化を招いたとしても、これは曲げてはならない鉄則なのだ。』
『「おまいう」の風潮と停戦への道のり
西側が返り血を浴びる類の制裁はその解除に向かうかもしれないが、少なくともロシアが占領しているウクライナ領の帰属が最終的に決まるまでは、ロシアの軍事力に貢献しかねない技術や製品の取引は、その再開を欧州のみならず米国も拒むだろう。
ソ連時代のCOCOM(対共産圏輸出統制委員会)規制の再来である。
また、疲弊し破壊されたウクライナ国土の再建に当たっては、必要とされる資金として、ロシアがどう反対しようと西側で凍結されているロシアの資金は当面返還されることなく、様々な形を通じて援助の名目でウクライナに流し込まれることになるだろう。
以上が現時点で考えられる予測である。
予測はしょせん予測でしかないが、それが、この紛争が始まった3年近く前にこのコラムで書いた内容(「“米国の罠に嵌った”ロシアが今後背負う十字架 『窮鼠猫を嚙む』最悪の事態に発展の可能性も」)とさほど変わらないことにいささか呆れている。
これから先、その幾分かでも現実化するなら、多くの人命が犠牲となった過去3年近くという時間は一体何だったのかを思わざるを得ない。
開戦から長らく、停戦への主張はこのコラムも含めて全くの少数派だった。
多くは、国際法蹂躙の咎は絶対に許容できず、ロシア討つべし、であり、それがメディアでも論評でも「常識」となり、その上で状況・戦況分析が進められてきた。
そうした言わば「正義論」の前提には、ロシアを敗北させ得る、という見通しが明示・暗黙を問わずに置かれていたようだ。
2022年にロシア軍が攻め込んだキーウ近郊やハリキウ州から撤退したことが、多くの論者に「弱いロシア軍」という思いを植え付けてしまったことも影響していよう。
今問われるのは、そのような、断固戦え、という見方が客観的な事実や分析に支えられたものだったのかである。
それは、さよう論じた面々がどこまでロシアとウクライナの意図なり国力なりを見ていたのか、の知見に関わってくる問題でもある。
ウクライナの抗戦の大義名分が国際正義や、世界の自由と民主主義を守るため、とされたことに、なぜ途中から世界の支持が萎えて行ったのか。
それを考えると、11月の米大統領選で民主党とK.ハリスが大敗を喫したことや、予想外の結果となった兵庫県知事再選挙での「オールド・メディア」に似通うものを感じる。
ポリティカル・コレクトネスを振り回し、それに賛同しない向きを侮蔑する権力エリートたちとそれに協賛する主流メディア、寄って集って1人の容疑者を私刑の餌食に祭り上げんばかりのメディア。
SNSに集まる人々はそこに胡散臭さ、いや悪臭すらを感じ取ったのではないか。
ロシアも、中国も、力を増している欧州の右派も、そしてグローバル・サウス諸国も、理想論での自由や民主主義そのものを否定はしていない。
それでも彼らが欧米やウクライナへの同調意欲を失ったのは、いわゆる「おまいう」からなのだろう。
正義論はごもっとも、だがそれを振り回す連中に対して、「お前にそんなこと言う資格があるのか」を突き付けたということなのだ。』
『W.C.のプロフィール
大手商社でロシアを長年担当する。 』
アゼルバイジャン航空の旅客機墜落、ロシアの責任追及する声高まる…旧ソ連圏での求心力低下か
https://www.yomiuri.co.jp/world/20241228-OYT1T50007/

『2024/12/28 07:00
ウクライナ情勢
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カザフスタンで墜落したアゼルバイジャン航空の旅客機はロシア軍の防空ミサイルに被弾した可能性が濃厚となり、ロシアの責任を追及する声が高まっている。誤射と確定した場合、旧ソ連構成国に対するロシアの求心力が低下しそうだ。
26日、カザフスタン西部に墜落した旅客機の残骸を調べる専門家=カザフスタン非常事態省提供、ロイター
アゼルバイジャンの通信社トゥランによると、旅客機が露軍の防空ミサイル攻撃を受けたとする当局の予備調査の結果を受け、同国のラシム・ムサベコフ議員は「ロシアは謝罪すべきだ」と強調した。防空システムが稼働していたのであれば、民間機の立ち入り制限措置が必要だったと指摘し、「刑事責任を問わねばならない」と述べた。
露メディアによると、旅客機が墜落した25日朝、グローズヌイ付近などにウクライナ軍の無人機が飛来していた。露軍の防空システムが旅客機と無人機を誤認した可能性がある。
墜落で死亡した38人にはロシアのほか、アゼルバイジャンやカザフスタンの国民が含まれていた。いずれも旧ソ連構成国だ。露メディアは乗客の証言として、旅客機はグローズヌイで2回着陸を試みたが失敗し、3回目に後方で爆発音と振動があったと伝えた。
両政府は現時点でロシアの責任を追及していない。英BBCアゼルバイジャン語版は「両国は恐らく証拠を確保しているが、ロシアが責任を認めるのを待っている」とロシアの顔を立てているとの見方を示した。ロシアが対応を取らなければ、プーチン露政権と一定の距離を保つアゼルバイジャンでは非難が高まることも想定される。
ロシアは現時点で露軍の関与を認めていない。露航空当局は事故原因について、機体に鳥が衝突する「バードストライク」が発生したと発表した。プーチン露大統領は25日、旧ソ連構成国でつくる独立国家共同体(CIS)の非公式首脳会議で「死傷者とその家族に哀悼の意を表する」と述べたが、その後は発言が報じられていない。
露軍の攻撃を裏付ける決定的な証拠が出ない限り、ロシアは旧ソ連構成国を刺激しないように事態の沈静化を待つとみられる。
イスラエル紙エルサレム・ポストによると、旅客機墜落を受け、エルアル・イスラエル航空は26日、来週まで同国中部テルアビブ―モスクワ間の運航を休止すると発表した。』