(※ 日本)国債等の保有者別内訳
https://www.mof.go.jp/jgbs/reference/appendix/breakdown.pdf






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ドイツ債、買い手上位5社から初めて国内銀が姿消す-米銀勢が伸長
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-06-25/SFN81HDWLU6800
『2024年6月26日 1:52 JST
上位4社は全て米銀、ドイツ銀とコメルツ銀は大きく順位落とす
野村は15位、みずほ24位-ドイツ国債市場参加企業の購入ランキング
ドイツ国債入札の買い手上位5社から、ドイツの銀行が初めて姿を消した。欧州で最も安全とされるドイツ債の市場を米銀勢が席巻した。
ドイツ国債管理当局が25日発表した今年1-6月のドイツ債購入ランキングによると、ドイツ銀行は前回の2位から8位へ、コメルツ銀は6位から10位へとそれぞれ転落した。ドイツの銀行が買い手上位5社に入らなかったのは、この統計が開始された2001年以降で初めて。
代わって上位4位はシティグループ、モルガン・スタンレー、JPモルガン・チェース、バンク・オブ・アメリカ(BofA)のそれぞれ欧州部門が占め、米銀勢が欧州債券市場に触手を伸ばしていることがうかがわれる。5位は英ナットウエスト・グループ、6位と7位はフランスのクレディ・アグリコル、BNPパリバだった。
データは入札対象国債のデュレーションや金利リスクを加えて調整し、32社からなる国債市場参加企業の購入状況をランク付けしたもの。この参加企業は欧州連合(EU)内に登記されたオフィスを持つ必要があるが、本部は域外にあっても構わない。日系では野村とみずほも加わっており、野村は15位、みずほは24位だった。
原題:German Banks Fall Out of Top Bund Dealer Rankings for First Time(抜粋)』
ドイツ・スイスの債務ブレーキ制度とEFSF拡充に関するドイツ保証引受法改正
デュッセルドルフ事務所、欧州ロシアcis課
https://www.jetro.go.jp/ext_images/jfile/report/07000809/ch_de_saimu.pdf
















2011年12月の欧州理事会(EU首脳会議)では、財政均衡義務の国内法化を各国に義務
付ける財政協定(氏seal pact)の締結で、英国を除き、合意した。2012年1月には、英国、
チェコを除く加盟25カ国が財政協定に合意。3月の首脳会議で署名することを予定してい
る。財政均衝義務については、既にドイツが債務ブレーキ(Schuldenbremse)制度と呼ば
れる制度を導入しており、財政協定に基づく国内制度の構築も、ドイツの制度が参考にさ
れるものとみられる。また、スイスでは2003年から債務ブレーキ制度を導入しており、一
定の財政改善に寄与していると評価されている。そこで、本稿ではドイツ・スイスの債務
ブレーキ制度を中心に紹介する。
本レポートは、同制度の概要などについて、中村法務翻訳経済調査事務所代表中村匡志
氏に委託し取りまとめたものである(2012年1月19日時点の情報)。
目次
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i•本稿の対象と背景
2010年前半のギリシャ債務危機に端を発する欧州債務危機は、約2年を経た2012年初
頭に至っても、いまだに収束する様子を見せていない。このように危機が長期化する中、
EUが打ち出す危機対策にも次第に変質が見られるようになってきている。この変質をスロ
ーガン的にまとめれば、①「支援から構造改革へ」、②「一時的措置から恒久的措置へ」の
2点となろう。そして、この2点は互いに関連している。
もともと欧州経済通貨同盟(EMU)の制度の基本的前提としているのは「国家債務に対
するEU加盟国単独責任の原則」(いわゆる「救済なし」(nobail-out)の原則。EU運営条
約125条)であるためI当初、緊急的な市場沈静策としての危機国への財政支援措置は、
あくまでも例外的な一時的措置であるという建前の下に講じられた。
すなわち、欧州金融
安定化メカニズム(EFSM)を創設するEU規則407/20101 2 * 4はEU運営条約122条の非常事
態条項を根拠としていたし、欧州金融安定化ファシリティ(EFSF)も2013年半ばまでの
時限的措置とされていた。
ところが、2011年3月の欧州理事会において、恒久的措置とし
ての「欧州安定メカニズム」(ESM。EFSMとEFSFを継承する支援機構)の創設を認め
る条約改正3が行われて以降は、EUの講ずる措置は恒久的な性格のものが主流を占めるよ
うになり、内容的にも構造改革を志向するものが増えてきている(2011年11月に制定され
たいわゆる「6点セット」(Sixpack)”等)。
したがって、本稿が対象とする「債務ブレーキ」(Schuldenbremse)制度とEFSFの拡
充という2つの措置も、上記の流れの中に位置づけて理解する必要がある。
すなわち、2011
年12月8 • 9日の欧州理事会において合意された「財政協定」の締結(英国を除く EU26
カ国が締約国となる予定)により各国国内法での制定が義務づけられる「債務ブレーキ」
制度は、そもそも破綻危機国の財政危機の原因となった国家債務の累積を未然に防止する制度であり、恒久的な構造改革の“一丁目一番地”ということができる。
これに対して、
EFSFについては、前述の通りもともと一時的な支援措置として構想されたが、危機の長期化により、今後、恒久的な支援制度であるESMへの発展的解消が予定されている。
したが
って、2011年に行われたEFSFの拡充は、一時的措置から恒久的措置への移行的性格を有
する措置と見ることができる。
1Herdegen, Europarecht,13. Aufl. 2011,§ 23,1 (ヘルデーゲン『EU法』(中村匡志訳、2012年出版予
霖)第20章第1節)。
-EU官報2010年L118号1頁以下。
§ttD://euEex.eur〇Da.eu/LexUriServ/LexUriServ.do?uTi=OJ:L:2010:118:0001:0004:EN:PDF
:略式条約改正手続によるEU運営条約136条3″項の新設。EUCO 10/1/11 REV1,Anlage II。
4 EU官報2011年L306号1頁以下、8頁以下、12頁以下、25頁以下、33頁以下、41頁以下。
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本稿は、これらの制度の国内法における展開について紹介と検討を行うものである。
その際、債務ブレーキについてはドイツとスイス、EFSF拡充についてはドイツを対象とする。
2.ドイツの債務ブレーキ制度
2011年12月9日の欧州理事会において採択された「ユー口通貨圏の国家•政府首班の
宣言」5以項)によれば、財政協定により導入される財政規定は、次の通り。
1.国家財政は均衡または黒字でなければならない(構造的赤字がGDPの0.5%以下)。
2.1のルールは、憲法(またはこれに相当するレベルの国内法)に規定しなければならず、
違反の場合に発動される自動是正メカニズムも盛り込まねばならない。このルールは
欧州委員会の提案する原則にのっとって定めるものとし、このルールの国内法転換
(Umsetzung)については欧州司法裁判所の監督に服する。
上記の2の憲法規定が、一般に「債務ブレーキ」と呼ばれているものである。
今回の財
政協定の内容は、2011年11月24日の独仏伊首脳会談における独仏合意を具体化するかた
ちで同12月7日に独メルケル首相と仏サルコジ大統領が欧州理事会のファンロンパイ常任
議長宛に送った書簡6を基盤としており、債務ブレーキ制度の導入についても、独仏の構想
にかかるものということができる。
そして、その際にモデルとされたのが、2009年にドイ
ツが導入した債務ブレーキ制度である。
したがって、今後のEU各国における財政規律の強化の見通しをつけるためには、その
淵源であるドイツの債務ブレーキ制度を検討することが有益である。
本節においては、こ
5 http-//www.consilium.europa.eu/uedocs/cms data/docs/pressdata/de/ec/126678.pdf
httD://www.bundesre8ierun8.de/Conteiit/DE/PTessemitteilun8en/BPA/2011/12/2011-12ー〇7-brief-romDu
v.html
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のような関心から、ドイツの債務ブレーキ制度について紹介を行う。
(1)「債務ブレーキ」とは何か
「債務ブレーキ」という表現は、日本語において広く知れ渡っている表現とはいいがた
い。したがって、まずこの概念について簡単に説明を加えることが便宜であろう。
そのた
めには、やや迂遠なようだがこの制度の歴史的な位置づけを理解するのが早道である。
ドイツの憲法である基本法(GG)は、制定当時、借入による資金調達(典型的には、赤
字国債の発行)を「非常の必要」がある場合に限っており、通常の場合には借入による資
金調達を想定していなかった(基本法旧々115条)。
これは、ナチス以前のヴァイマル共和
国憲法の規定を基本的に引き継いだものであり、ケインズ以前の経済思想を反映したものである7。
しかし、1960年代半ばにはドイツでもケインズ経済政策の必要性が認識され、不
景気には赤字国債を発行して公共投資を行うべきであると考えられた8。
このため、1969年
の旧々115条の改正により「借入による収入」を認めた(旧115条1項)。
しかし、下図か
ら明らかなように、赤字国債を発行すると国家の債務残高が増加する。そして、国家債務の累積は、債務超過をもたらし、国家財政の破綻のリスクを高める。
支出
①歳出(支出)に対し
て歳入(収入)が不足
する。不足分を補うた
めに赤字国債を発行。
資産 負債
②赤字国債発行によ
り債務残高(負債)が
増加。
資産
負債
③債務残高(負債)が資
産を追い越し、債務超過
に陥る。
(注)②〜⑤の図は、貸借対照表上の資産と負債の関係の観点から国家財政を捉えたイメ
ージ図。(厳密な財務上の意味での「資産」「負債」ではない。)
したがって、赤字国債の発行には何らかの歯止めが必要であると考えられ、公共投資支出
額が「借入による収入」の上限と定められた(旧115条1項2文)、これにより、債務の
7 Hofling/Rixen, Art. 115, in: Bonner Kommentar, 106. Lfg.(2003), Rn. 6 f. u. 25.
8 Hofling/Rixen, a.a.O., Rn. 25-27. 1966 年の「トレーガー鑑定」(Troeger-Gutachten)が重要な役割を
果たした
9上限として公共投資支出額が選ばれたのは、赤字国債の発行により生ずる(とされた)世代間不公平を
均す効果があると考えられたからである(Heun, Art. 115, in: Dreier (Hrsg.), GG-Kommentar, Bd. 3, 2.
Aufl. 2008, Rn.19) 〇
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累積について一種の「速度制限」が課せられることになったわけである1°。
資産 負債
1}幅を制限:
iい幅を制限i
④債務制限:累積債務の年間増加幅の
制限にはなるが、債務が累積していく
ことには変わりがないから、依然とし
て債務超過の可能性は消えない。
資産 負債
斗増加せず
⑤債務ブレーキ:累積債務は増加しな
くなるので、債務超過の可能性は理論
上消滅。
しかし、図④から明らかなように、国家債務累積の「速度制限」を行うだけでは、依然
として債務超過に陥る可能性が残る。これに対して、図⑤のように国家債務累積の「ブレ
ーキ」をかければ、債務超過の可能性は理論上消滅し(但し、現実の制度においては実際
上の考慮によりこの可能性が必ずしも消滅しないことは後述の通り)、国家破綻のリスクも
低くなる。これが「債務ブレーキ」である。
っまり、「債務ブレーキ」とは、赤字国債等の借入による収入を基本的にゼ口にする制度
である。
これは、図①でいえば赤色の領域をゼ口にすることであるから、歳入(国の収入)
と歳出(国の支出)を均衡させなければならない。
要するに、「債務ブレーキ」とは、「歳
入=歳出」となる均衡財政(プライマリー・バランス)を義務づけることにほかならない。
なお、2000年代後半には、統一通貨ユー ロの安定(安定成長協定)と競争力強化(リスボ
ン戦略)の観点から、ドイツではあらためて財政再建が政策課題となり、2008年の金融危
機の勃発に至るまで連邦政府は新規起債ゼロ化(プライマリー・バランスの実現)を目標
とする政策を実行し、ほぼそれを達成していた。
(2)ドイツ債務ブレーキ制度の概要と法源
以上の背景のもと、ドイツの立法府は、2009年の憲法改正(「第2次連邦制改革」)によ
り憲法上の債務ブレーキ制度を実現した。これが、基本法の新109条3項と新115条2項
である。この両規定の内容をまとめると、以下のようになる。
10 VgL Hofling/Rixen, a.a.O., Rn. 58.
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« 均衡財政の義務づけ(109条3項1文、115条2項1文)
« 均衡財政の判定方法(109条3項4 – 5文、115条2項2文)
« 均衡財政の例外その①(109条3項2 – 3文、115条2項2文ないし5文)
« 均衡財政の例外その②(109条3項2 – 3文、115条2項6文ないし8文)
同一内容が2つの条文に跨って重複しているのは、ドイツが連邦制を採用することに起
因する。すなわち、109条は連邦と州に共通する原則を定める規定であり、115条は109
条の規定を連邦についてさらに具体化するものである。州については、各州が州憲法によ
り基本法109条の規定を具体化するものとされている(109条3項5文)。
また、連邦につ
いても、115条の細目については連邦法律で規定するものとされており(115条2項5文)、
「基本法第115条を施行する法律」I】が制定されている(以下、「施行法」と呼ぶ)。
以下では、上記の概要に沿って債務ブレーキ制度の内容を見ていくが、その際、検討対
象とするのは原則として連邦の制度のみとし、州の制度については、必要な限度において
言及するにとどめる。
(3)均衡財政の義務づけ
「連邦および州の財政は、原則として、借入による収入なしに、これを均衡させなけれ
ばならない」(109条3項1文)。
すなわち、連邦の「歳入と歳出は、原則として、借入に
よる収入なしに、これを均衡させなければならない」(115条2項1文)。
これらの条文は、
国家に対して均衡財政を憲法上義務づけるものである。すなわち、旧115条は赤字国債の
発行を禁止せずこれを許容していたのに対し、現115条は赤字国債の発行を法的に禁止し
た口。したがって、今後は、本条に適合しない赤字国債の発行は違憲となり13、原則として
連邦憲法裁判所により無効とされるものと考えられるり
さらに、本条違反の赤字国債の発
行を前提とした予算は、均衡予算ではないので予算自体が違憲無効になるし。
注意しなければならないのは、上記の条文によって国家は累積債務を増加させない義務
を負うが、累積債務を削減させる義務までは負わないという点である。
但し、債務残高が
EU運営条約の参照値(GDPの60パーセント)を超えている場合には、その遵守を義務づ
11 BGB1.1, S. 2702, 2704.
12 Kube, Art. 115, in- Maunz/Diirig, Grundgesetz, Lfg. 56(2009), Rn. 55 u.118 f; Siekmann, Art. 115,
in: Sachs (Hrsg.), GG, 6. AufL 2011, Rn. 31.
13 Kube, a.a.O., Rn. 120.
14 Vgl. Kube, a.a.O., Rn. 229 u. 233.
15 Kube, a.a.O., Rn. 229.
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けている109条2項により累積債務の削減義務が生ずる%
何が「借入による収入」に該るかの解釈にあたっては、「累積債務の増加の防止」という
債務ブレーキの目的から考える必要がある。
すなわち、「借入による収入」には、純新規債
務負担(Nettoneuverschuldung)、つまり、累積債務の増分のみが含まれる。累積債務を
増加させるものであればよいから、融資等による借入でもよいが、典型的には赤字国債の
発行である。既に発行した国債の元本・利息の返済(償還)のために行う国債(借換債)
発行は、累積債務を増加させるものではなく、「借入による収入」には含まれない”°
また、
会計年度(ドイツでは暦年)内に返済される短期借入金についても、累積債務を増やすも
のではないから、本条の「借入による収入」には含まれないものと解される哉。
政府保証については、115条1項の文言との比較から、「借入による収入」には含まれな
いものと解されているが、累積債務を増加させる可能性を孕んでおり、学説上異論がある16 17 18 19〇
いずれにせよ、政府保証も借入も連邦法律による授権が必要である(115条1項)。
以上をまとめると、通常の場合の予算は、以下の図のようにならなければならない。
歳入(借入以外) 借入(国債発行等)
歳出(元利払い以外) 既存の債務の元利払い
既存の債務の元利払いのためには借入を行うことが認められるから、「借入額冬既存の債
務の元利払い」とならなければならない。「借入額く既存の債務の元利払い」となれば累積
債務は削減されることになるし(その後利息により増加することは別論)、「借入額=既存
の債務の元利払い」となれば累積債務は現状維持となる。いずれにせよ累積債務は増加しない。
(4)均衡財政の判定方法——「構造的」赤宇幅と金融取引の控除
以上説明した限りにおいては、債務ブレーキ制度は、実際に累積債務の増加を防止でき
る実効性を有するように見える。ところが、財政均衡の成否の判定にあたってはいくつか
の抜け道が認められており、この点を割り引いた評価を行う必要がある。
第一に、判定にあたって、「借入による収入」(=赤字国債)が名目GDPの0.35%以内で
あれば、「均衡財政」とみなされる(109条3項4文、115条2項2文、施行法2条1項2
16 Kube, a.a.O., Rn.123.
17 Kube, a.a.O., Rn. 125; Siekmann, a.a.O., Rn. 34.
18 Reimer, Art. 115, in- Epping/Hillgruber (Hrsg.), Beck’scher Online-Kommentar GG, Rn.17a u. 28.
19 Kube, a.a.O., Rn. 124.
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文)。
要するに、1年あたりGDPの0.35% (現在約84億ユー口に相当)の累積債務の増加
を認めるということであり、これは、今回の憲法改正で廃止したはずの「債務速度制限」
制度を裏口から忍び込ませるものにほかならない2°。
経済的には公共投資の必要性や資本市
場にとっての国債の必要性が存在理由として挙げられるが21、このような甘い判定方法は、
債務ブレーキ制度そのものの趣旨に’悸るものであり、同様な判定方法が州には認められて
いないこと(109条3項5文)に鑑みても、合理的な理由があるとは思われない。
しかし、
前述の通り、EUの財政協定も同じく GDPの0.35%の「構造的」赤字幅を認める予定であ
る。
第二に、判定にあたっては、歳入・歳出から金融取引が控除される(115条2項5文、施
行法2条1項1文)。
すなわち、歳入には「資本参加の譲渡、公共分野からの借入および貸
付の返済からの」収入が含まれず、歳出には「資本参加の取得、公共分野への弁済および
貸付からの」支出が含まれない(施行法3条)。
このうち、とりわけ問題なのが「公共分野
からの借入」である。公共分野からの借入とは、他の地方公共団体(州・市町村)やこれ
に類似する結合体、特別財産(我が国の特別会計に類似)からの借入をいう22。つまり、こ
れらの借入は均衡財政の判定基盤から除外される。
確かにこの場合国家全体としての公共
財政の収支は合うが、累積債務の負担が増える以上合理性はないものとして批判される23。
以上の判定方法により相当程度の運用の幅が生まれるため、制度の実効性は運用に左右
される部分が大きい。
仮に最悪の予算を想定すれば、以下の通り。
公共借入 歳入(借入以外) Q 借入(国債発行等) 赤字国債(GDP の0.35%まで)
ー歳出増 歳出(元利払い以外) 既存の債務の元利払い 歳出増一
赤色+紫色の領域が借入である。歳出増のため、元利払い支出分の満額まで借り入れても
まだ足らず(紫色)、「構造的」赤字幅としてGDPの0.35%まで認められる赤字国債を満額
発行(右側赤色)。それでも足りないので、歳入に含まれないため無制限に可能とされる「公
共分野からの借入」を活用(左側赤色)。このため、平常時であるにもかかわらず、赤色領
域の分、累積債務は増加する。
20 VgL Kube, a.a.O., Rn.137.
21 Kube, a.a.O., Rn. 139.
22 Kube, a.a.O., Rn.130 u.135.
23 Kube, a.a.O., Rn. 130.
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(5)均衡財政の例外その一景気調整
以上が平常時に関するルールであるが、「さらに、平常の状態を逸脱する景気動向がある
場合には、好況および不況における財政への影響を対称的に(symmetrisch)顧慮しなけれ
ばならない」(115条2項3文)という例外がある。
好況の時には緊縮財政により経済の過
熱を防ぎ、不況の時には公共投資を拡大して経済の萎縮を緩和する、という反循環的な
(antizyklisch)経済政策を講ずべきであるというケインズ的経済思想を背景とする規定で
ある。
「顧慮」の方法について、115条2項5文は、「構造的」赤字幅の上限を調整する方式
(景気調整)によるべきものと指示しており、施行法もこの方式を採用している(施行法2
条2項)。
「平常の状態を逸脱する景気動向」があることが、景気調整発動の要件である。
施行法
によれば、「経済全体の生産能力の活用過少または活用過多」(GDPギャップ)が予期され
る場合に、このような逸脱が存在するものとされる(施行法5条2項1文)。
そして、この
ようなGDPギャップが存在するのは、「景気循環の影響を除去する方法
(Konjunkturbereinigungsverfahren)を基に見積もられる潜在GDPが、作成する予算の
会計年度について予期されるGDPとは異なるものである場合」である(施行法5条2項2
文)。
この定義からすると、GDPギャップが存在しないほうが稀であり、したがって、「平
常の状態を逸脱する景気動向」という要件は、施行法により実質的に有名無実化されてい
る。
つまり、憲法上の原則・例外は事実上入れ替わり、実際には毎年景気調整を行うこと
となる。
景気調整は、以下の式により求める(施行令2条)。
景気調整=GDPギャップX財政被影響性=(GDP 一潜在GDP) X財政被影響性
財政被影響性とは、「欧州安定成長協定の財政監督手続においても用いられる国家全体の
財政被影響性の部分的弾力性を、景気に依存する国家全体の歳入および歳出において連邦
が占める割合により加重した値」とされるが(施行令2条3項2文)、連邦財務省は基本的
に0.16として計算している。
連邦財務省による景気調整の推計は以下の通り。
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(注)左軸はGDPと潜在GDPを、右軸はGDPギャップと景気調整を示す。
(出所)
httD://www.bundesfinaiizministei*ium.de/nii145616/DE/BMF StaTtseite/Publikationen/Monatsberic
ht des BMF/201 l/12/statistikeirund-dokumentationen/03-«esamtwirtschaftliche-entwicklun8/tabel
len/Tabelle S32.htmlから筆者作成
※左軸はGDPと潜在GDPを、右軸はGDPギャップと景気調整を示す。
例えば2012年について見ると2ゝ 潜在GDPが2兆6,672億ユーロ(近似値、以下同じ)
であるのに対しGDPは2兆6,340億ユーロであるから、GDPは潜在GDPを下回っている。
したがって、GDPギャップはマイナス333億ユーロである(不況ギャップ)。これに財政
被影響性0.16を掛けることにより、景気調整のマイナス53億ユーロを求める。同年の「構
造的」赤字幅は、2兆6,340億X〇,〇〇35 = 92億ユーロであるから、2012年には、92億ユー
ロ +53億ユーロ =145億ユーロまでの累積債務増加が認められる。
以上は、GDPが潜在GDPを下回る場合であるが、GDPが潜在GDPを上回る場合には
GDPギャップは正となり(インフレギャップ)、逆に「構造的」赤字幅を削減しなければな
らない。
なお、連邦財務省推計によれば、2016年にはGDPギャップがゼロになる。しかし、こ
のようなことが起こるのは事実上むしろ例外である。
景気調整をふまえた上限値からの逸脱については、チェック勘定(相殺勘定)の項目に
24なお、債務ブレーキ制度は2011年から適用されているが(143d条1項2文)ヽ115条2項2文の適用
については2015年まで逸脱が認められているので(143d条1項5文)、ドイツの債務ブレーキ制度は2016
年から完全実施されるということになる。
したがって、実際には、2012年については「構造的」赤字幅は
0.35%を超えてもよい。
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仕訳しなければならない(115条2項4文前段、施行法7条1項1• 2文)。
このチェック
勘定が、財政協定において各国に導入が義務づけられている「違反の場合に発動される自動是正メカニズム」であると考えられる。
このチェック勘定にはいくつかの機能がある。
第一は、事後的なチェック機能である。財政執行の実務においては、作成・承認された
予算が、実際にこれを執行した結果と異なることは避けられないまた、各種基準値の算
定基準となるGDPについても、推計値と実際値が異なることはむしろ必然である。それゆ
え、いくら予算が模範的に組まれていても、これを実際に事後的にチェックする仕組みがなければ意味がない。この仕組みを提供するのが、チェック勘定である。
第二は、異なる会計年度間の通算機能である。上述の上限制度は単年度の会計に関する
ものであるが、累積債務の問題は、むしろ単年度の赤字が何年にも亘って積み重なることによって生ずるものである。チェック勘定の導入により、債務ブレーキの導入以来どれくらい累積債務が増減したかを通算することができる。
第三は、財政規律のインセンティブ付与機能である。単年度会計において累積債務を削
減すると、その分チェック勘定に余裕が出るので、将来の支出にも備えやすくなる。逆に、
単年度会計において累積債務を増加させると、チェック勘定の余裕がなくなり、憲法上・
法律上の義務によりその後の会計年度の予算が大きく制約を受けることになる。このよう
な状況においては、予算制定主体に財政規律のインセンティブが与えられる。
チェック勘定に仕訳されるのは上限値からの「逸脱」であるが、この「逸脱」には、上
限値を上回る場合のみならず、これを下回る場合も含まれる。チェック勘定に仕訳すべき
額は、会計年度の翌年3月1日付でとりあえず確定し、その後更新を重ね、最終的に会計
年度の翌々年の9月1日付で確定する(施行法7条1項3文)。チェック勘定の残高が赤字
となった場合には、この赤字を削減する努力義務が課される(施行法7条2項1文)(下記
図の①)。そして、チェック勘定残高の赤字は、名目GDPの1.5%を超えてはならない(施
行法7条2項2文)。これは法律上の禁止であるが、厳格な拘束力はないと解されている26。
チェック勘定残高の赤字が名目GDPの1%を超えた場合には、この超過分だけその翌年
の新規債務負担を引き下げなければならない(施行法7条3項。法律上の削減義務)(下記
図の②)。但し、この引下げ額は0.3%以下とし、また、GDPギャップがマイナスとなる年
(つまり不景気の場合)については引下げを行わない(施行法7条3項)。また、チェック
勘定残高の赤字が名目GDPの1.5%を上回った場合には、憲法上の削減義務が生じ、景気
に即した削減義務が課される(115条2項4文後段)(下記図の③)。つまり、その後の予算
25 VgL Kube, a.a.O., Rn.168.
26 Kube, a.a.O., Rn. 182.
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はチェック勘定の赤字を削減するかたちで組むことが憲法上義務づけられる。
積年の努力によりチェック勘定残高をGDPの1%の黒字にすることができれば、いざと
いうときに上限値をGDPの2 %分超える赤字を出しても削減義務は課されない(下記図の
④)。これに対して、積年の放漫によりチェック勘定残高がGDPの1%の赤字となってい
る場合には、いざというときに上限値を超える赤字を出せない(下記図の⑤)。
(単位:対名目GDPのチェック勘定残高赤字率)
—I——–1——–1——-1——-1—
3.スイスの債務ブレーキ制度
前節においては、ドイツの債務ブレーキ制度の仕組みについて概観した。
全体として見
ると、チェック勘定という通算の仕組みによりGDPの1.5%という憲法上の大枠が嵌めら
れることで、「累積債務の増加防止」という所期の目的を基本的には達成することが可能な
仕組みと評価できる。
もっとも、前節において述べた通り、達成判断の方法や例外規定に
よる運用の幅はきわめて大きく、この制度により所期の目的が達成できるかどうかは、結
局のところ制度の運用にかかる部分が大きい。
この点、2016年に完全実施されるドイツ(上記注24参照)と異なり、すでに2003年に
債務ブレーキ制度を導入しているスイスにおいては、ある程度の運用の蓄積がある。
それ
ゆえ、スイスの制度についても検討しておくことは、この制度の実効性を見極める上で有
益である。もっとも、スイスの制度にはドイツの制度と異なる部分も多く、スイスの運用
を見るにあたっては、これらの制度的差異についてあらかじめ知っておくことが必要である。
そこで、本節においては、主にドイツとの相違点に着目してスイスの制度の概要を見た上で、その運用について検討する。その後、ドイツとスイスの共通点として、財政協定においても重要な役割を果たす「債務ブレーキの憲法化」についてその意義を検討する。
(1)スイスの債務ブレーキ制度の概要——憲法規定
スイス憲法において債務ブレーキ制度について規定しているのは、スイス憲法126条で
ある。この規定はドイツ憲法の規定よりもかなり簡素なものとなっている。
第126条財政運営
① 連邦は、継続的に歳出と歳入を均衡に保つものとする。
② 予算として承認すべき総歳出の上限額は、経済状況を考慮しつつ歳入推計に基づくも
のとする。
③ 非常の支払の必要がある場合には、前項に基づく上限額を適当に引上げることができ
る。弓|上げについては、連邦会議が第159条第3項第c号に基づき議決する。
④ 決算により確定された総歳出が第2項または前項の上限額を上回った場合には、その
後の年〔複数形〕において超過分歳出を補塡しなければならない。
⑤ 詳細は、法律によりこれを定める。
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本条の規定を見る限り、原則として財政均衡を義務づけつつも(1項)、景気への配慮(2
項)と非常時の例外(3項)を認め、債務ブレーキ導入後の累積債務の増分についてはこれ
を解消していかなければならない(4項)という基本構造は、ドイツの債務ブレーキ制度と
同じである。5項にいう詳細については、2005年10月7日の財政法(Finanzhaushaltsgesetz
(FHG) = Bundesgesetz iiber den eidgenossischen Finanzhaushalt) ‘°第 3 章が規定してい
る。そこで、以下においては、主にドイツの制度との相違点に着目しつつ、スイスの制度を見ていくことにする。
(2)上限額算出方法の違い
財政法13条によれば、「予算において承認すべき総歳出の上限額」とは「推計される歳
入と景気係数の積」であり(1項)、「推計される歳入」の算出にあたっては「通常外の歳入」
を考慮してはならない(2項1文)。「通常外の歳入」とは、投資による収入、特許・許可に
よる通常外の収入等をいう(2項2文)。また、景気係数とは、「長期で均したトレンドに基
づいて推計される実質GDPと予算年度における実質GDP予測の商」である(3項)。
トレンド実質GDP推計
歳出上限額=—————-X歳入推計値(通常外収入除く)
当年実質GDP推計
景気係数(=トレンド実質GDP推計/当年実質GDP推計)は、好況の場合には「当年
トレンド」となるので1を割り込み、不況の場合には「当年 くトレンド」となるので1
を上回る。
なお、式の右辺の意味は、トレンド実質GDPが実現したものと仮定した場合における歳
入ということである。
ドイツの制度と比較すると、以下の3点で異なる。
第一に、ドイツの上限値は純新規債務負担の上限値であるのに対し、スイスの上限値は
歳出の上限値である。つまり、ドイツの制度は累積債務の増加そのものに対して直接的に
上限を設定するのに対し、スイスの制度は歳出に上限を設定することで均衡財政を達成し、
30 htt,t>://www.admin.ch/ch/d/sr/6]] 0/index.html
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それにより累積債務の増加を抑えようとしている。
第二に、ドイツの上限値においては「構造的」赤字幅が措定されていたのに対し、スイ
スの上限値においてはこのような要素は考慮されない。この点からすれば、ドイツの制度
が「構造的」赤字幅を設けていることの合理性はますます疑問とならざるをえないが、EU
の財政協定構想もドイツの制度と同様に「構造的」赤字幅(GDPの0.5%)を認めている。
第三に、上記2点と関連するが、ドイツにおいては景気変動による調整が「構造的」赤字
幅の変動として表現されたのに対し、スイスにおいては景気変動による調整が歳出上限の
変動として表現されている。
また、ドイツにおいては潜在GDPと実際のGDPの差分を基
に変動幅を決めていたのに対し、スイスにおいてはトレンド実質GDPと実質GDPの比を
基に変動幅を決めている(なお、ドイツの上限値においては名目GDPが算定基準となって
いたが、スイスの上限値においては実質GDPが算定基準である)。
要するに、スイスの制度は、好況のときも不況のときもトレンド実質GDP通りの歳入が
あったものと仮定し、その仮定的歳入を上限として歳出を行おうという制度である(「通常
外歳入」を除外する趣旨もこの点にある)。この意味で、スイスの制度は非常に素直で分か
りやすく合理的といえる。これに対して、ドイツの制度においては、「構造的」赤字幅とい
う要素が混入し、しかもそれが景気調整の対象となる点で、やや合理性を欠いており、結
果として難解で複雑な制度となっている。
また、ドイツの制度では景気調整の憲法上の要件として「平常の状況を逸脱する景気動
向」という要件を課しつつも、下位法令によりこの要件を事実上有名無実化して原則と例
外を入れ替えるという込み入った処理をしていたが、スイスの制度は、基本的に常に景気
動向を加味するとしている点でも、合理的で分かりやすいものとなっている。
(3)上限額の例外的引上げ
財政法15条によれば、①連邦による統制のきかない非常の動向、②会計モデルへの適合
化、③記帳上生じた支払のピーク(verbuchungsbedingte Zahlungsspitze)の場合に、連
邦会議は、予算または補正予算において総歳出上限額を引き上げることができる(1項)。
但し、引上げが可能なのは、追加的な支払の必要が総歳出上限額の0.5%以上である場合に
限られる(2項)。
ドイツとの相違について述べると、第一に、ドイツの制度においては①のみが認められ
ていたが(ドイツにおいて独立の要件とされていた「自然災害」も①に含まれると解され
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る)、スイスでは②③も例外的事由として認められる。この点ではスイスのほうが緩い。
第二に、ドイツでは「国の財政状況を著しく害する」ことという不確定概念が要件とさ
れていたのに対して、スイスにおいては「追加的な支払の必要が総歳出上限額の0.5%以上」
という客観的数値が要件とされている。このため、スイスにおいてはこの点について裁量
的判断が認められていない。
(4)解消勘定・通常外解消勘定
ドイツの制度においてはチェック勘定(Kontrollkonto)が用いられたが、スイスの制度
においては解消勘定(Ausgleichskonto)が用いられる。基本的な機能は同じである。
すなわち、財政法によれば、決算が承認された後には(通常外を含まない)推計の歳入
を実際の値により補正し(16条1項)、この値よりも歳出が多かったり少なかったりする場
合には、決算とは別の解消勘定の項目にこれを仕訳する(16条2項)。解消勘定の残高が赤
字となる場合には、その後複数年間に亘り経費節減措置(18条)により上限額(15条にょ
り例外的に引き上げる場合も含む)を減らすことによって、これを解消していく (17条1
項)。解消勘定の残高の赤字が6%を上回った場合には、その後3会計年度以内にこれを解
消してしまわなければならない(17条2項)。
さらに、スイスにおいては、2009年の改正により通常外解消勘定(Amortisationskonto)
が新たに設けられ、通常外の歳入と歳出にもチェックが及ぶことになった。
すなわち、財政法によれば、決算により確定した通常外の歳入と歳出は、決算とは別の
通常外解消勘定に仕訳しなければならない(17a条1項)。但し、法律により目的による縛
りのかかった通常外の歳入・歳出については、この仕訳を行わない(17a条2項)。そして、
通常外解消勘定の残高が赤字となった場合には、その後6会計年度以内にこれを解消しな
ければならないが、この場合にも、経費節減措置(18条)により上限額(つまり通常外歳
入を含まない上限額)を減らすことによる(17b条1項)。このとき、通常外解消勘定の赤
字の増分が上限値の0.5%以上となった場合には、この年から数えて6会計年度以内と変更
される(17b条2項)。また、「特別の場合」には、連邦議会がこの期間を延長することがで
きる(17b条3項)。
通常外解消勘定と解消勘定では、解消勘定のほうが優先される関係にある。すなわち、通
常外解消勘定の残高が赤字となっている場合であっても、解消勘定の残高が赤字となって
いる場合には、こちらを解消するほうが優先され、解消勘定の残高の赤字が解消するまで
通常外解消勘定の残高の赤字解消義務は停止する(17b条4項)。また、通常外解消勘定の
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赤字を減らすために歳出上限額を減らした場合であっても、同年において解消勘定にマイ
ナスの仕訳を行わなければならなくなった場合には、通常外解消勘定に行えるはずのプラ
スの仕訳を解消勘定に回さなければならない(17d条)。
(5)経費節減規定
経費節減規定を備えていることは、スイス財政法における債務ブレーキ制度の大きな特
色である。すなわち、前述の通り、解消勘定についても、通常外解消勘定についても、残
高に赤字が生じた場合には財政法18条の経費節減措置の方法により総歳出を減らさなけれ
ばならない。つまり、増税の方法により歳入を増やすのではない。この点、新規債務負担
の削減方法について限定のない(つまり、増税によってもよい)ドイツの制度とは異なる。
財政法18条によれば、総歳出の削減を行う場合には、連邦内閣は、その管轄の範囲内に
おいて追加的な経費節減を議決し(1項a号)、また、追加的な経費節減に必要な法律改正
案を連邦議会に提出する(1項b号)。さらに、連邦内閣は、予算の提出・執行にあたって、
必要となる経費節減の機会を活用しなければならず(2項1文)、このために、すでに承認
された給付を停止することができる(2項2文)。但し、法律上の請求権や既判力をもって
確定された給付については、この限りではない(2項3文)。
(6)運用実績
スイスの債務ブレーキ制度は2003年から運用されているが、運用実績はきわめて良好で
ある。
棒グラフ:総累積債務(単位:io億スイスフラン)
折れ線グラフ:総累積債務(対GDP比)
ユーロトレンド2012. 3
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(出所)
httD://www.efv.admin.ch/e/downloads/zrundla8enDaDiere berichte/Leporello Schuldenbremse e Int.D
亜より引用
2002年までは増加基調にあった累積債務の対GDP比が、2003年以降は実際に増加が止
まり、2006年からは削減に転じている。この傾向は2009年以降も続いている。
(単位:io億スイスフラン)
2009 年 2010 年 2011年(推計)(前年比)
通常歳入 60,949 62,833 64,540(2.7%)
通常歳出 58,228 59,266 62,006(4.6%)
通常収支 2,721 3,568 2,534
通常外歳入 7,024 – 256
通常外歳出 – 427 1,998
通常外収支 9,745 3,140 792
総累積債務 110,924 110,561 109,500 (-1.0%)
対GDP比(%) 20.7% 20.2% 19.5%
(出典)http://www.efv.admin.ch/d/downloads/oeff finanzen/Taschenstatistik d web.pdf カ、ら作成
このように累積債務の削減に成功しているのは、世界でも異例に属する。とりわけ、世
界金融危機の処理にあたってユーロ圏諸国が軒並み累積債務を大きく増やしたのとは対照
的である。
債務残高(対GDP比) 2005 年 2010 年 05—10年の増減ポイント
アイルランド 28% 76% + 48
英国 42% 78% + 36
フランス 66% 85% + 19
オランダ 52% 67% + 15
ユーロ圏全体 70% 85% + 15
イタリア 106% 119% + 13
ドイツ 68% 78% + 10
オーストリア 64% 70% + 6
スウェーデン 50% 44% ■6
スイス 53% 40% •13
(出所)ht,tD://www.efv.admin.ch/d/downloads/£:rund]aefenDaDiere berichte
/broschueren/Leporello Schuldenbremse d Int.pdf カ、ら作成
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したがって、スイスに関する限り、国際的な比較で見ても、債務ブレーキ制度はきわめて
大きな成功を収めているものと評価することができる。
もっとも、この成功はスイス債務
ブレーキ制度の制度的前提にも支えられており、前述の通り制度的にはドイツよりもスイ
スの債務ブレーキのほうが合理的な点が少なくない以上、制度的前提の異なるドイツ型の
債務ブレーキ制度が必ずしも成功を収めるとは限らない。
もっとも、同一国における時系列の比較で見る限り、スイスにおいて債務ブレーキ制度
の導入前と導入後で明らかに同国の累積債務の状況に改善が見られたことに鑑みれば、基
本的な特徴を同じくするドイツ型の債務ブレーキ制度についても同様の変化を期待するこ
とは必ずしも間違いではない。
また、前述のようにEUの財政協定構想がドイツ型の債務ブレーキ制度を念頭に置いて
いるとはいえ、国内憲法規範への転換が行われる以上、国内改憲機関には転換にあたって
一定の裁量が与えられるはずであり、そうだとすれば各国が憲法規範に制定するものはド
イツの制度とまったく同じものである必要はない。
また、前述の通り、債務ブレーキ制度
は運用によりかなり実績が異なりうる制度と理解する必要がある。
以上をまとめると、財政協定により各国の憲法規範に債務ブレーキ制度が規定されること
により一定の状況改善は期待できるものの、制度設計と実際にあげる成果をあらかじめ予
測することは困難であり、制度設計と運用にかかっている部分が大きいといえる。
⑺債務ブレーキ制度を憲法に規定することの意義
最後に、ドイツとスイスの制度の共通点である「債務ブレーキ制度の憲法化」の意義に
ついて検討する。この「憲法化」は、EUの財政協定においてもその参加国に義務づけられ
る予定であり、財政協定の実効性を左右する重要な要素と考えられる。
上述の通り、ドイツにおいても、スイスにおいても、債務ブレーキ制度の基幹的な部分
は憲法において規範化されていた。そして、債務ブレーキ制度の核心は、均衡財政の義務
(ドイツ基本法109条3項1文•115条2項1文、スイス憲法126条1項)であった。
このことの意味を考える上で、わが国の例は参考となる。
すなわち、わが国の財政法4条1項1文は「国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を
以て、その財源としなければならない」と定めている。
これは、前述4頁図①からも明ら
かなように、純新規債務負担を禁ずることにより均衡財政の原則を定めたものと解される。
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他方、同2文では、「但し、公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会の議決
を経た金額の範囲内で、公債を発行し又は借入金をなすことができる」と定めている。
このいわゆる建設国債の例外は、ドイツ基本法旧115条2文にいう例外と基本的に同じもの
と解される。
したがって、わが国の財政法の制度設計は、債務ブレーキ導入前と導入後の
ドイツの憲法規定の“合いの子”のようなものであると評価できる。
もっとも、債務ブレ
ーキ制度の核心は均衡財政の義務にあること、および、前述のように現行のドイツの規定
も「構造的」赤字幅というかたちで実質的に建設国債の例外を認めていることに鑑みれば、
わが国の財政法の規定は、債務ブレーキの基本的特徴を備えたものということができる。
にもかかわらず、わが国の累積債務の増加にブレーキがかからないのは、1975年以降ほ
ぼ毎年(例外は1991年〜1993年のみ)特例的に赤字国債の発行を認める法律(特例公債
法)が制定され続けているからである。
「特別法は一般法を破る」の原則により31、特例公
債法の規定のほうが財政法の規定に優先することになるから、結果として、わが国の財政
法の定める債務ブレーキ制度は有名無実化されている。
これに対し、ドイツやスイスの債務ブレーキ制度は憲法規範である。この場合、憲法の
認めない例外を規定する法律が制定されても、「上位法は下位法を破る」の原則により、そ
の法律は違憲無効となる。したがって、わが国のように特例法の制定により債務ブレーキ
制度が有名無実化されることはない。
さらに、日本のように債務ブレーキ制度が法律に規定されている場合、議会がこれを改
正する法律を議会が制定すれば、「後法は前法を破る」の原則により債務ブレーキ制度は改
廃されてしまうことになる。
これに対し、債務ブレーキ制度が憲法に規定されている場合
には、これを改廃するには憲法改正によることが必要である。
つまり、法律規範よりも憲
法規範のほうが制度自体の改廃が手続的に難しく、制度の安定性が大きく向上する。
31この場合、特例法が財政法の規定を廃止してしまうわけではなく、特例法が失効すれば財政法の規定は
元通り適用されるので、「後法は前法を破る」の原則ではなく「特別法は一般法を破る」の原則によるも
のと解するほうが妥当である。
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上位
下位
「後法は前法を破る」
時間
また、特にドイツにおいては充実した憲法裁判制度が完備されている点も看過できない。
ドイツ連邦憲法裁判所の管轄は、わが国の最高裁判所のような具体的法令審査32に限定され
ておらず、抽象的法令審査(基本法93条1項2号)や機関争訟(基本法93条1項1号)
といった裁判類型も認められている。このため、予算のような個人の権利義務とは直接的
な関連性を有しにくい連邦法律についても、憲法訴訟となりうる。したがって、ドイツに
おいては、債務ブレーキ制度を憲法化することで、連邦憲法裁判所に債務ブレーキの監督
役としての役割を期待することができるようになる。とりわけ法令審査の場合には、連邦
憲法裁判所の違憲判決に法令を改廃する効果が与えられており(連邦憲法裁判所法31条2
項)、債務ブレーキ制度の監督の実効性はきわめて高いものとなる。
以上を要するに、債務ブレーキ制度の憲法化は、議会制定法律による潜脱•改廃からこ
の制度を守るための必須の工夫ということができる。また、財政協定参加国にはドイツに
類する憲法裁判制度を有する国も多く、司法府の監督による実効性の向上も期待できる。
32具体的な裁判事件に付随して憲法規範を基準に法令の審査を行うことを具体的法令審査という。もっと
も、日本の具体的法令審査は事件の係属する裁判所自身が審査を行うのに対し、ドイツの具体的法令審査
(基本法100条1項)においては、係属裁判所が訴訟手続を中止して連邦憲法裁判所に憲法判断を付託す
るという大きな違いがある。
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(1)改正の背景と手続
前述の通り、欧州金融安定化ファシリティ(EFSF)は、もともと欧州債務危機に関する
一時的・時限的な支援策として設立されたものである。この応急的な性格のために、ユー
口圏諸国は、危機の長期化と流動的な情勢を反映させるかたちでEFSFを拡充する方向で
手直しをする必要に迫られ、2011年3月11日• 7月21日にはこの点に関する合意がなさ
れた33。
2011年3月11日の合意事項 1. EFSFの融資可能額として合意された 4400億ユーロを満額調達するために、 ユーロ圏諸国による保証額を引き上げ る,匕 2. EFSFが、融資のみならず、(市中流通 後でない)1次市場においてユーロ圏諸 国の国債の買付を行えるようにする。 2011年7月21日の合意事項 1. しかるべき条件の下に、ユーロ圏諸国に 予防的な与信枠を与えることができる ようにする。 2. EFSFが、金融機関の再建のためにユー 口圏諸国に貸付を行えるようにする。 3. 非常の場合には、EFSFが、ユー ロ圏諸 国の国債を(市中流通後の)2次市場に おいて買い付けられるようにする。
これらの合意によって、EFSF設立協定が改正された。ユーロ圏全体として保証額が引上
げられたことに伴い、ユーロ圏構成国であるドイツにおいても、2010年5月22日の「欧
州安定化メカニズムにおける保証の引受に関する法律」(以下、「保証引受法」)により授権
された保証額1,230億ユーロを2,110億4,590万ユーロへと引上げる必要が生じた。前述の
通り、ドイツ基本法115条1項によれば、政府保証には連邦法律による授権が必要であり、
保証引受法の改正により上記保証額引上げを行うことが必要となった。
このため、連立与党(CDLPCSU、FDP)は2011年9月5日に保証引受法の改正案・を
33後掲保証引受法改正案1頁。
34 EFSFの発行する債券(EFSF債)の発行にあたっては、トリプルAの格付けを得るために100%を超
える保証を付さねばならなかったため、当初の4400億ユーロの政府保証では不足した。EFSFが実際に
資本市場において4400億ユーロの資金を調達するためには、7800億ユーロ程度の政府保証が必要であり、
ユーロ圏諸国の保証額の拡大が必要となった。
35 httD://diDbt.bundesta«.de/diD21/btd/l7/069/1706916.pdf
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提出した。この法案については、同月19日に連邦議会財政委員会において聴聞会が開催さ
れ、同月29日に連邦議会が可決、同月30日に連邦参議院が可決、10月9日に連邦大統領
が認証して成立した。
(2)改正の内容
改正前の保証引受法36は保証引受の授権に関する第1条と施行に関する第2条の2つの条
文のみから構成される法律であったが、今回の改正により4つの条文が追加され、既存の
条文にも大きく修正が加えられた。改正後の保証引受法37の構成は以下の通り。
第1条保証の授権
第2条 財政および安定の責任
第3条 EFSFにおける決定に関する議会の留保
第4条 ドイツ連邦議会財政委員会の参加
第5条連邦政府による報告
第6条施行
新たに挿入された2条ないし5条は、いずれも議会によるコントロールに関する規定で
あり、もともとの連立与党提出法案にはなかったものである。以下では、①保証の授権に
関する1条と、②議会のコントロールに関する2条ないし5条に分けて紹介する。
(3)授権規定
保証引受法1条によれば、連邦財務省は、ユーロ圏構成国のための「緊急措置」の実施
のためにEFSFが行う資金調達取引のため、最大総額2110億4590万ユー ロの保証を引き
受けることができる(1項1文)。この保証は2013年7月30日までに引受けなければなら
ず(1項3文)、同日までに保証が用いられなかった場合には、その限りで授権が失効する
(1項4文)。最大額の計算にあたっては、ドイツが利用できる保証額についても算入する
が(1項5文)、利息と費用については算入しない(1項6文)。また、最大額については、
連邦議会財政委員会の承認等一定の要件の下に、20%までの引上げを行うことが可能であ
る(5項)。
‘6 htt,u://www.ceD.eu/fileadmin/user upload/Kurzanalvsen/Reform EFSF/StabMechG.udf
37 httu://www.gesetze-inrinternet.de/bundesrecht/stabmechg/gesamt.pdf
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24
JETRO
上述の「緊急措置」とは、(a)該当国への貸付(金融機関再建のためのものを含む)、(b)予
防的措置、(c)1次市場• 2次市場における該当国国債の買付をいう(1項2文)。これらの
緊急措置の要件は、①ユーロ圏構成国の申立てがあること(2項1文)、②ユーロ圏全体の
安定を守るために、当該構成国の支払能力が不可欠であること(2項1文)、③かかる支払
能力の獲得を目的とする措置であること(2項1文)、④緊急措置に先立ち、ユーロ圏諸国
(該当国を除く)が、欧州中央銀行(必要に応じてIMFも)との合意により、ユーロ圏の
金融安定の脅威を認定したこと(2項2文)である。このうち、予防的措置の場合•金融機
関再建のための貸付の場合•2次市場における国債買付の場合には、⑤伝染のおそれ
(Ansteckungsgefahr)を防止することを目的としなければならない(2項3文)。さらに、
2次市場における国債買付の場合には、⑥欧州中央銀行による金融市場における非常事態の
認定がなければならない(2項4文)。
「緊急措置」には厳格な附款が付される。この附款は、原則として、措置に先立って、
当該加盟国が欧州委員会(欧州中央銀行が参与協力)と(必要に応じてIMFとも)合意し、
かつ、ユーロ圏加盟国の全会一致により承認されたものでなければならない(3項1文)。
但し、緊急措置の性質上、措置に先立って必要なすべての附款について合意できない場合
には、事後の合意でもよい(3項2文)。
(4)議会によるコントロール
前項で見た通り、国の保証引受に基づいてEFSFが行う資金調達には、さまざまな要件
が課されている。また、国家財政を圧迫する可能性がある以上、これらの要件を充たして
いる資金調達であればどのようなものでも許されるわけではなく、とりわけEFSFが合理
性の観点から不適当な資金調達を行うことを防止する必要がある。欧州通貨同盟の安定性
の要請にも配慮しつっかかる合法性・適当性のコントロールを行う役割を担うのは、保証
引受法によれば、連邦議会である(2条1項)。
債務危機における対応には迅速性が要求されるから、保証引受法に関する事項について
は、連邦政府により連邦議会に対する包括的な書面報告が、可能な限り早い時点で、かつ
継続的に行われ(5条1項1文)、原則としてすべての関係文書も提供される(5条2項)。
連邦議会の側でも、保証引受法に基づく提出案件については適当な期間内に審議・決議を
行わなければならず(2条2項1文)、その際、ユーロ圏レベルにおける議決の予定を顧慮
しなければならない(2条2項2文)。
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25
JETRO
①「緊急措置」に関する合意、②「緊急措置」に関する合意の本質的な修正や、保証上
限額に影響を与える修正、③EFSF設立条約の改正、④権利義務のEFSFからESMへの継
承等は、「連邦議会が財政政策上の総責任を有する」事項とされ(3条2項)、これらの事項
については連邦議会による議決が行われる。連邦議会が案件に賛成した場合には、連邦政
府の代表者は、ユーロ圏レベルにおいて当該案件につき賛成票を投ずるか棄権するかのい
ずれかしか選択できない(3条1項1文)。逆に、連邦議会が反対した場合には、連邦政府
の代表者は反対しかできない(3条1項2文)。なお、特に急を要する場合や特に秘密にす
る必要がある場合には、連邦議会財政委員会の委員による議決をもって、連邦議会の議決
に代えることができる(3条3項)。
「連邦議会が財政政策上の総責任を有する」事項以外で、連邦議会の財政上の責任に属
する事項については、連邦議会財政委員会がコントロールを行う(4条1項1文)。通常の
場合であれば、連邦議会財政委員会の権限は、意見の採択や合意の準備•執行の監督にと
どまり(4条1項2・3文)、連邦政府も財政委員会の意見を甚斗酌するだけでよい(4条3項
1文)。これに対し、①連邦政府がEFSF役員会(Management Board)のガイドラインを
採択・変更する場合、②「緊急措置」合意に基づいて追加的手段を講じたり、「緊急措置」
の条件を変更したりする場合については、連邦議会財政委員会の事前の同意が必要となる
(4条2項1文)。この場合においては、連邦政府は上述の連邦議会の場合と同様の投票拘
束を受ける(4条2項2・4文)。なお、連邦議会本会議は、いつでも多数決により財政委員
会の権限を取り上げて、自らこれを行使することができる(4条4項)。
以上
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26
ドイツ基本法上の「起債ブレーキ(Schuldenbremse)」成立過程
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『ドイツ基本法上の「起債ブレーキ(Schuldenbremse)」成立過程
一連邦財務省案の提示一
石森久広
はじめに
I•連邦財務省(BMF)内部での検討の始まり
π,連邦財務省(bmf)内部における検討の加速
1.2つのモデル案と評議会鑑定意見
m•連邦財務省(BMF)案
おわりに
はじめに
2009年8月に施行された基本法上の起債制限に関する規定は,GDPのー
定割合を上限とする「起債ブレーキ」と呼ばれるものである。
従来の,投資
を基準とする「ゴールデン・ルール」については,連邦憲法裁判所によって,
繰り返し,改革するよう立法者への警告がなされていた・基本法改正に向
けた議論は,2005年9月にスタートする連邦議会第16立法期(2005年9月
~2009年9月)における連立協定(Koalitionsvertrag)に端を発するがの,それ
1)BVerfG, Urteil vom 18. April 1989, BVerfGE 79, S.31Iff.; BVerfG, Urteil vom 9. Juli 2007,
BVerfGE119, S.96ff.さしあたり,前者については,石森久広「ドイツにおける憲法上
の起債制限規律に基づく司法的コントロールー転換点としての連邦憲法裁判所1989
年判決」西南学院大学法学論集45巻1号(2012年)33頁以下,後者については,
石森久広「ドイツ基本法上の公債制限規定と連邦憲法裁判所2007年判決一議論の整
理と論点の素描」西南学院大学法学論集48巻3-4号(2016年)177頁以下を参照
していただきたい。
(29)
The Seinan Law Review, V〇!.49, No. 4 (2017).
に先立つ第15立法期(2002年9月〜2005年9月)は,どの年も,結果とし
て基本法115条の起債制限は遵守されず,構造的な赤字が増加していったと
いう背景がある吃
改革の議論は,正
式には,連邦議会及
び連邦参議院によっ
て2007年3月に共
同設置される第2次
連邦制度調査会(以
下「調査会」という。)
において進められ
た。この調査会のゴ
ールは,第16立法
期の終わり,すなわ
ち2009年9月であ
<基本法上の「起債ブレーキ」成立過程>
2005 年
9月連邦議会選挙
11月 連立協定(CDU/CSUとSPDの大連立)
2006 年
11月連邦経済技術省一専門家評議会への鑑定意見依頼
12月 第2次連邦制度調査会設置決議
2007 年
3月調査会スタート(8日)
3月 専門家評議会鑑定意見(9日)
6月専門家ヒアリング
7月 連邦憲法裁判所判決(9日)
7月連邦財務省学識顧問一連邦財務大臣への書簡(11日)
2008 年
2月連邦財務省案
9月リーマン•ショック
2009 年
3月 調査ム・提案
6月 基本法改正成立(7月31日公布,8月1日施行)
9月連邦議会選挙
り,時間的制約を課された状況下にあったが,調査会の議論が始まった序盤
は,専門家ヒアリングにもみられたようにや,専門家の間でさえ,見解が広
く分かれ,起債制限のあり方,例外規定の有無,連邦と州の共通の規定が基
本法に作られることになるのか等々,先行きは不透明なままであった’。
調査会の議論にも,次第に閉塞感が漂い始めるが%この局面の打開にー
2) この連立政権も,当初,構造上の赤字を民営化で得た収入によって数字上調整するな
ど,この時期,公債規定への制度的な信頼はすでに失われつつあったという。Elmar
Donnebrink / Martin Erhardt / Florian Hoppner / Margaretha Sudhof,
Entstehungsgeshichte und Entwicklung des BMF-Konzepts in: Christian Kastrop / Gisela
Meister-Scheufelen, Margaretha Sudhof (Hrsg.), Die neuen Schuldenregeln im
Grundgesetz, 2010, S.22ff, S.45 参照。
3) Donnebrink/Erhardt/Hoppner/Sudhof,a.a.0.(Anm.2),S.42 参照。
4) 専門家ヒアリングの概要については,石森久広「ドイツ基本法上の『起債ブレーキ
(Schuldenbremse)J成立過程一第2次連邦制度委員会における専門家ヒアリング」
西南学院大学法学論集49巻2=3号(2017年)を参照していただきたい。
5) MaxiKoemm, Eine Bremsefiir die Staatsverschuldung ?, 2011,S.94 参照。
6) Koemm,a.a.O.(Anm.5),S.94 参照。
(30)
ドイツ基本法上の「起債ブレーキ(Schuldenbremse) J成立過程
役買ったのが,2008年2月に調査会で行われた連邦財務大臣P. Steinbriick
による連邦財務省案(以下「BMF案」という。)の提示であった”>。
この提
示以来,このBMF案は,基本法上の新しい起債制限規定が成立する過程に
おいて,調査会の議論をリードすることになる。
この,「起債ブレーキ」成
立過程を論じる学説の中で,とりわけBMF案を詳しく取り上げるのは,
管見の限りE. Donnebrinkらの論考が代表的でありめ,本稿も,彼らの分析
に沿いながら,BMF案が果たした役割に注目してみたい。
I.連邦財務省(BMF)内部での検討の始まり
1.検討の着手
連邦財務省(以下PBFMJという。)内部では,すでに2005年の夏,つまり,
連邦制度調査会のおよそ2年前にあたる第15立法期の終わりには,新しい公
債規定の議論が始められそれは論争的なものであったようである也
このとき,BMF内部での議論において,特に参考にされたのは,スイスの
規定であった[・スイスの規定は,憲法レベルの規定として,構造的起債を
原則的に制限しており,また,予算への景気の効果をも対称的な方法で考慮し,
さらに管理勘定(Kontrollkonto)によって,生じている債務のSol!と1stの差
7) Peer Steinbriick, Komm-Prot.l1,S.317ff. in: Bundestag / Bundesrat (Hrsg.), Die gemeinsame
Kommission von Bundestag und Bundesrat zur Modernisierung der Bund-Lander-
Finanzbeziehungen – Die Beratungen und ihre Ergebnisse,2010.
8) Donnebrink/Erhardt/Hoppner/Sudhof,a.a.O.(Anm.2),S.22ff.
9) Donnebrink/Erhardt/Hoppner/Sudhof,a.a.O.(Anm.2),S.43 参照。
10) Donnebrink/Erhardt/Hoppner/Sudhof,a.a.O.(Anm.2),S.44 参照。
11) Donnebrink/Erhardt/Hoppner/Sudhof,a.a.O.(Anm.2),S.44 参照。
12) スイスの起債ブレーキは,2001年12月2日の国民投票において85%の賛成を得,
スイス憲法第126条「財政運営」において,次のように規定された(2003年から施行)。
①連邦は,歳出と歳入を長期的にわたり均衡させる。②予算において承認されるべ
き総歳出の最高額は,経済状況を考慮し,見積もられた歳入に応じて決定される。
③ 特別な財政需要に際しては,第2項に規定する最高額を適正に増額することがで
きる。連邦議会は,第159条第3項c号の規定に基づき,増額について議決する。
④ 国の決算において示された総歳出額が第2項又は第3項に規定する最高額を超過
した場合には,翌年度以降において超過支出分を補填しなければならない。⑤法律は,
詳細について規律する。訳文は,山岡規雄『各国憲法集(6)スイス憲法』国立国会
図書館調査及び立法考査局(2013年)に拠った。
(31)
The Seinan Law Review, V〇!.49, No. 4 (2017).
額がどのようにして償還されるかについても答えが用意されていた皿。
もつ
とも,このスイスの起債制限規定においても,施行後すぐに停止を余儀なく
されたように皿,改革を必要とする問題が実際に現れていたのであるが,
BMF内部では,この点も含めて議論の対象にされていたゆ。
2.学識者•学識機関からの助言
(1)概要
起債規定に関して,ドイツの立法者がどのような結論に至るか,それは最
終的には政治的に決せられるものであるが,ドイツにおいては,学問上の知
見をそこに折り込むべく,興味深い制度上の工夫がある。
その代表格が専門
家評議会(以下「評議会」という。)均であり,また,各省におかれた学識顧
問団(WssenshaftlicherBeirat)もこれに数えられよう。
この調査会の検討過程にも,まず連邦経済技術省によって,同省の学識顧
問団による学問的な助言が持ち込まれたのを皮切りにめ,2006年11月には,
評議会に対して,学問的に基礎づけられた起債制限のあり方につき見解の提
示が依頼された性 これに応じ,2007年3月に公表された評議会の鑑定意見
(Expertise)皿は,以降の議論の中で,非常に大きな意義をもっことになる。
13) Steinbruck,Komm-Prot.ll,S.320.スイス憲法における起債ブレーキ施行直後には,経
済の悪化から起債上限を大幅に引き上げざるをえず,有効性を疑う見方もあったこ
とにつき,渡辺富久子「ドイツの第二次連邦制改革(連邦と州の関係)(2)—財政赤
字削減のための法整備一」外国の立法246号(2010年)86頁以下,88頁以下参照。
14) Donnebrink/Erhardt/Hoppner/Sudhof,a.a.0.(Anm.2),S.44 参照。
15) 法律 (Gesetz tiber die Bildung eines Sachverstandigenrates zur Begutachtung der
gesamtwirtschaftlichenEntwicklungvom 14.August 1963)に基づき設立され,経済学
のエキスパート5名により構成されている。
16) さまざまなテーマに関し,学問的に基礎づけられた意見や分析を通して政治決定に助
言を与えることを目的に学識者で構成される組織であり,現在,例えば,連邦経済
エネルギー省は37名,連邦財務省は35名の大学教授によって構成されている。
17) Donnebrink/Erhardt/Hoppner/Sudhof,a.a.0.(Anm.2),S.46 参照。
18) Donnebrink/Erhardt/Hoppner/ Sudhof, a.a.0. (Anm.2), S.46 参照。
19) KommDrs.002neu,評議会の鑑定意見は3つのモジュールから構成されており,モジュー
ル1は「ゴールデン・ルール」,モジュール2は「起債の規制(Schuldenschranke)J (従
来の例外規定を修正したうえで,支出ルールと調整勘定から構成される),モジュール
3は「サンクション」である。
(32)
ドイツ基本法上の「起債ブレーキ(Schuldenbremse) J成立過程
他方,BMFにおいても,BMFの学識顧問団は,新しい債務規定の問
題に対する連邦財務大臣への書簡を通じて見解を表明した20 21 22>。
その内容は,
次の通りである。
すなわち,「統制が効かなくなっているドイツの国家債務
は,より厳格な起債制限によって,これをせき止めなければならない。
基
本法115条の投資概念によっては,持続的な財政政策は達成され得ない。
したがって,当顧問団は,連邦に中期的予算均衡を命じる基本法115条の
制定を勧める。
それは,スイスの起債ブレーキを指向すべきである。
州に
おいても起債制限は緊急に必要である。
しかし,州レベルの有効な起債制
限は,いずれにしても第2次連邦制度調査会における財政憲法の再構築を
まず必要とする。」というものである。
このときの顧問団の座長,C. Fuestは,
後に「起債規制はすべての問題を解決するわけではないが,より良い財政
政策に導くものである」と題する論考を著しており地>,BMFがこのとき
受けたサジェスションの延長線上にあるものと目されることから,このC.
Fuestの論考を以下,若干垣間見ることとしたい。
(2) C. Fuest の見解
まず,C. Fuestの基本的スタンスは,起債に安易に依存する従来の財政運
営の仕方を全面的に改めることにある。
すなわち,「政治的問題を,その都
度の職務上の後任者に,より大きな債務の山塊が残して解決するという,何
十年にもわたる実務は,新しいルールのもとでは,もはや,少なくとも従来
の通常の範囲においては維持されえない。」というのである。
C. Fuestは,起債自体の効用については,「正しく投入される国家債務は非
常に役に立つ」としたうえで,「それは,景気の悪い時期には国家の赤字を
20) 財務省ホームページ(http://www.bundesfinanzministerium.de/Content/DE/Standardartikel/
Ministerium/Geschaeftsbereich/Wissenschaftlicher_Beirat/Gutachten_und_
Stellungnahmen/Ausgewaehlte_Texte/historische-entscheidung-schuldenbremse-kommt-
anlagel.html)参照(2017年1月10 日確認)。
21) Clemens Fuest, Schuldenschranke lost nicht alle Probleme, ftihrt aber zu einer besseren
Finanzpolitik, in: Christian Kastrop / Gisela Meister-Scheufelen, Margaretha Sudhof
(Hrsg.), Die neuen Schuldenregelnim Grundgesetz, 2010, S.46ff.
22) Fuest,a.a.O.(Anm.21),S.46f.
(33)
The Seinan Law Review, V〇!.49, No. 4 (2017).
許し,それはその後の景気の良い時期に再び均衡されうるということに意
味がある」
が,しかし,現実には,「まさに過去40年の政治は,景気の悪
い時に赤字を許容し,それを景気の良い時に再び均衡させるということに
は存しなかった」とみる”,。
そして,そのような現実を前にすると,起債
ブレーキの導入は,「まさに,国家債務の増大の制限は従来の財政政策上の
ルールのもとでうまくいかない,ということへの反作用」であるとみてい
る%
また,C. Fuestにおいては,起債規制は,将来世代との関係において考
えられるべきものであり,「将来の世代が過度に負担を負わされることを阻
止するために,現在の世代が公的投資を調達することは合理的」としたう
えで,しかし,これまで「財政政策は特別な重要性を,現在と将来の世代
の間の正当な負担の分配におくべきといったことは語られてこなかった」
とし,
将来世代の利益が軽んじられていた点を問題視する鴻>。
そして,「理
想的な社会では,政治は,これまでに累積した顕在的及び潜在的な国家債
務を,すべての将来の世代のもとで,平等に配分するであろう」といって,
もし,起債規制が放棄されれば,「この理想の状況が生じるということを期
待することは,非現実的であり,おそらく,起債による負担が将来に拡大
するというこれまでの実務が今後も続くであろう」と見立てた加。
ところで,一部に,「債務の額それ自体は,これが国内において支えられ,
さらに金利が現在と同様に低ければ,問題ではない,
なぜなら,国内の公
的債務には,それに相応する国内の財産が対置するから」という意見があ
ることを取り上げ,これに対して「なるほど,これは正しい」と認めつつ,
「しかし,国家債務が,その徴収コストは租税によって賄われるということ
を伴う点については,何ら変わるわけではない」と指摘し,また,「だれも,
いつ金利が上昇するかはわからない」と批判するゆ。
23) Fuest,a.a.O.(Anm.21),S.47.
24) Fuest,a.a.O.(Anm.21),S.47.
25) Fuest,a.a.O.(Anm.21),S.47.
26) Fuest,a.a.O.(Anm.21),S.48.
27) Fuest,a.a.O.(Anm.21),S.48.
(34)
ドイツ基本法上の「起債ブレーキ(Schuldenbremse) J成立過程
最後に,結論として,C. Fuestは,「総じてみると,債務規制は,あらゆ
る財政政策上の問題を解決するわけではない。それにもかかわらず,債務
規制は,多くのメリットももたらす」といい,
とりわけ,債務規制は,「民
主的なプロセスにおけるアクター(政治家や行政だけでなく,政党や政党
を選ぶ人たちも)に,持続的に負担能力のある,そして信頼できる財政政
策の展開の際の重要な支援を与える」点で重要であると強調する”’。
このC. Fuestの論考は,BMF案とも基本的な考え方を同じくしていると
みることができ,当時のBMFの議論におそらく寄与したであろうことは想
像に難くない。
π.連邦財務省(bmf)内部における検討の加速
1.2つのモデル案と評議会鑑定意見
2007年3月の評議会による鑑定意見公表までの時期は,BMF内部では,
拠って立つ論拠を検討し,それを展開させる議論のために使われたという・,。
その際,議論は,2つの競合的なモデルが軸となった。
1つは,EUの安定
成長協定及びスイスの起債ブレーキを基礎においたモデル(モデルA),
も
う1つは,その対極として,基礎を引き続き基本法旧115条においたモデル(モ
デリレB)である初。
モデルAは,モデルBと異なり,基本法旧115条の「ゴールデン・ルール」
の枠組みを放棄するものであり,このモデルによれば,起債の余地は,安
定成長協定に倣って,原則としてなお構造上の理由からのみ自動安定装置
(ビルトイン・スタビライザー)のためにおき,予算構造上のシンメトリー
な「呼吸(Atmen)Jが,景気循環を超えて均衡を調整することになる”>。
これに対して,モデルBは,基本法旧115条の2つの中心的要素にテコ
入れをするものである。それは,第1に,例外規定適用の要求について制
限を設けること,第2は,投資概念の,経済的に合理的な範囲に制限する
28) Fuest,a.a.O.(Anm.21),S.48f.
29) Dormebrink/Erhardt/Hoppner/Sudhof, a.a.0.(Anm.2), S.49 参照。
30) Dormebrink/Erhardt/Hoppner/Sudhof,a.a.0.(Anm.2),S.49 参照。
31) Dormebrink/Erhardt/Hoppner/Sudhof,a.a.0.(Anm.2),S.49 参照。
(35)
The Seinan Law Review, V〇!.49, No. 4 (2017).
ことによりなされることを基本とする命。
この2つの競合的な,内容の異なる両モデルの議論を通じて,BMFに
おいても,改革の選択肢は広いグラデーションを構成するほどにさまざま
であったようであるが”),ここに公表された評議会の鑑定意見が擦り合わ
せられ,結局,新しい起債規定のあり方に関して,次の4つの論点が浮き
彫りになった如,。
この4つの論点とは,
①(構造的な)起債は何によって制限されるのか,
②景気の悪化の予算への影響はどのように考慮されるか,
③新しい規定は,どの予算局面に妥当するか,
④どのような規定からの例外が生ずるか,である。
BMF案も,基本的にこれらへの解答としてなさ
れているとみうるため,以下,E. Donnebrinkらの整理に基づきながら,節
を改めて詳述する。
(1)構造的起債制限
第1の論点は,「何によって(構造的)起債は制限されるべきか」である。
この解答は,起債にあたり何を考慮して制限の「基準」を設けるかという
点で,2つの考え方に分かれる。
1つは,引き続き「投資」に向けられる
考え方,もう1つは「負担能力」に向けられる考え方である河>。
まず,「投資」の基準は,当該投資が信用引受けを正当化できるかどうか
を測るものとなる。
いわば,経営学的な発想にたち,この起債によって起
債に相応する等価物が作り出される場合に(すなわち「ゴールデン・ルー
ル」),当該額にかかる起債が許されるのである%
これに対して,「負担能力」の基準は,国家が総じてどれだけの債務を負
担することができるかを問題とするものである。
この基準によれば,起債
の許容額は,起債が及ぼす財政全体の中長期的な負担能力への影響を想定
32) Dormebrink/Erhardt/Hoppner/Sudhof, a.a.0.(Anm.2), S.49 参照。
33) D6rmebrirLk/Erhardt/Hoppner/Sudhof,a.a.O.(Anm.2),S.50 参照。
34) Dormebrink/Erhardt/Hoppner/Sudhof,a.a.O.(Anm.2),S.50 参照。
35) Dormebrink/Erhardt/Hoppner/Sudhof,a.a.O.(Anm.2),S.50 参照。
36) Dormebrink/Erhardt/Hoppner/Sudhof,a.a.O.(Anm.2),S.50 参照。
(36)
ドイツ基本法上の「起債ブレーキ(Schuldenbremse) J成立過程
し,これに基づいて確定されることになるが”>,想定が抽象的になること
は否めない37 38 39 40 41 42)。
評議会の鑑定意見は投資基準の立場に立ち,新しい起債制限についても
「ゴールデン・ルール」の案を提示していた。
ただし,基本法115条の旧規
定に対する批判を受け入れ,特に純投資(拡張投資)の考え方を基本に据
えるものであった%
また,この立場に関し,従来の批判との関係で注目
されていたのは,人的資源への投資がどのように考慮されるべきかという
問題であったが,評議会は,国民の教育を国家の財産の増加として評価す
るのかという基本的な問題への解答は避けたうえで,教育領域における信
用調達は物的投資に限定するとしため。
もっとも,この「投資」基準をとれば,EUの起債制限との競合に至り
うる心。
また,「投資」の決定は,現在の政治決定過程において将来のこと
を主張されなければならず,現時点で,公的資金の投資が将来世代のため
に引き合うものであるかどうかは,そもそも判断が非常に難しい事柄であ
る。
しかも,経営的な投資の場合とは異なって,国民の効用はそもそも市
場価格において測られ得ないため,その採算性は,将来とも予算上の数字
には反映されないこともまた,やむを得ないことであった物。
この点,負担能力の基準によれば,将来世代の本質的な負担の解除が,個々
の投資支出の成長効果に関する議論に至る必要なく達成されうるという側
面はあり43 44>,BMFの学識顧問も,負担能力に向けられた基準を支持して
いた”。
(2)景気上の起債制限
37) Dormebrink/Erhardt/Hoppner/Sudhof, a.a.0.(Anm.2), S.50 参照。
38) Dormebrink/Erhardt/Hoppner/Sudhof,a.a.0.(Anm.2),S.50 参照。
39) KommDrs.002neu, S.4f.
40) Donnebrink/Erhardt/Hoppner/Sudhof は「pragmatisch」な選択と評する。
Donnebrink / Erhardt/ Hoppner/ Sudhof, a.a.O. (Anm.2), S. 51参照。
41) Dormebrink/Erhardt/Hoppner/Sudhof,a.a.O.(Anm.2),S.52 参照。
42) Donnebrink/Erhardt/Hoppner/Sudhof,a.a.O.(Anm.2),S.53 参照。
43) Dormebrink/Erhardt/Hoppner/Sudhof, a.a.O.(Anm.2), S.53 参照。
44) Dormebrink/Erhardt/Hoppner/Sudhof,a.a.O.(Anm.2),S.52 参照。
(37)
The Seinan Law Review, V〇!.49, No. 4 (2017).
第2の論点は,「景気の悪化が予算に及ぼす影響はどのように考慮される
べきか」である。
起債にあたっての景気の考慮に関して,基本法旧115条
の主たる問題点が,「対称性」が欠けていることにあったという認識は,広
く 一致して存在した。
従前,景気に由来する超過収入があれば,その都度
支出が増やされ,又は減税されたドイツにおいては,景気の良い時期から
もたらされる超過収入もすぐに使用され,結果,累積債務が増大していっ
たという背景がある如>。
それゆえ,BMFにおいても,新しい起債規定を考えるにつき,景気循
環を通じて起債の余地を対称的になるよう規制する必要があるという考え
方は,強く存在していたようである45 46 47 48 49>。
つまり,景気が良い時期の剰余収
入は,景気の悪い時期における追加的信用調達の余地に役立つよう「稼いで」
おかなければならないのである⑶。
ただし,景気の良し悪しは,基本的に
は事後的に明らかとなることから,現在の状況で,何をどう評価するかの
判断に困難が伴うことは避けられない面もある的。
なお,この議論は,E. Donnebrinkらによれば,いわば新自由主義的対ケ
インズ主義といった理論的な基礎付けにも関わると同時に,結局,積極的
な自動安定化装置の効果を超える裁量的景気政策の手段があらかじめ規定
されるべきかといった,政治経済的ないし法技術的問題でもあったと指摘
されている点も興味深い側。
(3)予算運営における起債制限
第3の論点は,「どの予算局面に新しい規定は妥当すべきか」である。
っ
まり,予算を,作成局面において制限するだけではなく,執行局面も含め
予算運営全体に制限の効果を及ぼすことができるか,という問題であるが,
及ぼすべきという考えは,評議会においてとられただけでなく,BMFに
45) Ddnnebrink/Erhardt/Hoppner/Sudhof, a.a.O. (Anm.2), S.55 参照。
46) Ddnnebrink/Erhardt/Hoppner/Sudhof,a.a.O.(Anm.2),S.54f•参照。
47) Ddnnebrink/Erhardt/Hoppner/Sudhof,a.a.O.(Anm.2),S.55 参照。
48) Ddnnebrink/Erhardt/Hoppner/Sudhof,a.a.O.(Anm.2),S.55 参照。
49) Ddnnebrink/Erhardt/Hoppner/Sudhof,a.a.O.(Anm.2),S.55f.参照。
(38)
ドイツ基本法上¢)「起債ブレーキ(Schuldenbremse) J成立過程
おいても支持者を得ていた60>。
これについて,BMFにおいては,信用引受けのSoi!からの乖離を確定し,
適切なサンクションないしペナルティのシステムを構築させることが検討
されていたようである志。
そのアイデアは,スイスの起債ブレーキにおけ
る管理勘定に端を発している。
そして,起債が議会に設定されたリミット
までのみ可能になるような管理勘定を,ある種の当座勘定信用
(Kontokorrentkredit)のように仕組むことが,1つの可能性として考えら
れていたということである50 51 52>。
さて,景気上の起債におけると同様,成長の如何が事後的に判明するこ
とから,構造的起債と景気上の起債の区分が,あとになって変わることが
ある。
つまり,構造的赤字と理解されたものが,後からの景気上の赤字と
されることがあり得るのであり,また,その逆もあり得る。
しかも,長期
的には,この評価が改めてひっくり返ることもありうる。調整勘定の導入
にあたっては,どうしてもこの点は避けられない53 54‘。
(4)例外規定
最後の論点は,「規定からのどのような例外があるべきか」である。
例え
ば,自然災害や,金融危機•経済危機の際に生じる緊急かつ特別な財政需
要を付加的な信用引受けでカバーすることが必要であるのはおそらく争わ
れないが,そのような極端な事態のために例外規定をおくかどうか,おく
とすればどのようにおくかが問題となる。
その際,留意すべきと考えられ
たのは,一方で,特別な状況における政府の対応が臨機に可能になること,
しかし,同時にまた,例外規定の「濫用的」な利用の危険である’”。
その点で,連邦議会が例外規定の適用に設定される成立要件が問題とな
る。単純な過半数から,2/3 (あるいは4/5)の案まで考えられ,後
50) Dormebrink/Erhardt/Hoppner/Sudhof, a.a.0.(Anm.2), S.57 参照。
51) Dormebrink/Erhardt/Hoppner/Sudhof,a.a.0.(Anm.2),S.57 参照。
52) Dormebrink/Erhardt/Hoppner/Sudhof,a.a.0.(Anm.2),S.57 参照。
53) Dormebrink/Erhardt/Hoppner/Sudhof,a.a.O.(Anm.2),S.58 参照。
54) Dormebrink/Erhardt/Hoppner/Sudhof,a.a.O.(Anm.2),S.59 参照。
(39)
The Seinan Law Review, V〇!.49, No. 4 (2017).
者の場合,通常,例外規定の適用は,野党の同意が伴ってのみ可能となる
であろうから,政府与党の判断だけで行われないことをどう考えるか,あ
るいは反対に,与党野党を挙げて必要と判断するほどの「緊急状況」でな
ければこの例外条項は適用されるべきでないかどうかの問題として設定さ
れる%
π.連邦財務省(BMF)案
1.背景
太宗,以上のような論点への解答が,BMF案として,2008年2月,調
査会の場において連邦財務大臣P Steinbriickの発言によって提示されるこ
とになる。
具体的な提案に先立って,P. Steinbruckは,総論的にBMFがとる基本
的な考え方を説明する。
まず,大前提として,新しい起債制限の導入は不
可避であることについて,「基本法115条の問題点が取り上げられず,また
取り除かれないような連邦制度調査会の結論が,国民の前で長く続くこと
は想像もできない。
私は,現在の規定のもとにとどまり,それゆえ,政治
は現実には従来通りを望むという方向に向かうのではという疑念に余地を
与えるならば,私たちは,国民の評価において成功を収めることができる
とは思わない」と述べ,改革の決意を示す®)。
また,現在の基本法115条における投資概念が問題であることを明確に
認め,技術的には「信用引受けの際に,財産の増加に,譲渡や減耗の形で
の財産の減少が対置されないこと」,つまり「債務の引受けの際,総投資が
引合いに出されるのであって,純投資ではない」点を%また,規定全体
の欠陥として「あなた方は,現在の基本法115条の例外規定が信用引受け
を容易にしていることを知っている。
実際,全経済的均衡のかく乱の除去
を誤ることなく説明し,それに基づき,すでに編成手続において,それぞ
55) Ddnnebrink/Erhardt/Hoppner/Sudhof, a.a.O. (Anm.2), S.59 参照。
56) Steinbruck, Komm-Prot.11,S.318.
57) Steinbruck, Komm-Prot.11,S.318.
(40)
ドイツ基本法上の「起債ブレーキ(Schuldenbremse) J成立過程
れの州憲法又は基本法の条件に相応しない信用引受けの手はずを整えるこ
とは,さして難しいことではない」という点を指摘する密。
もっとも,基本法旧115条が機能しなくなった背景に,時代の変遷もあ
ることに言及し,新しい規定はこの時代に適合するものでなければならな
いことを加える。
すなわち,「関連する憲法改正が行われた,つまり,60
年代の終わり,70年代の初めの時期に対して,基本的に変更した一連の経
済的及び制度的な大枠の条件とかかわっているグローバリゼーション
(Globalisienmg)は,グローバルな制御を制約する。
35年前あるいは38年
前には,誰もこのことを知らなかった」。
また,「EUのレベルの,非常に
広範に及ぶいくつかの制度改正」のほか,「人口統計学上の変遷」にも関わ
る問題なのである®。
2.提案
(1) 総説
以上を前置きとして,P. Steinbriickは,BMF案を「本質的には,4つ
の点が重要になる。
第1に,構造的起債の要素である。第2に,景気上の
起債要素であり,これは,私の提案では,幾人かの人から明白に,これまで,
承諾しない意見が知らされている。第3は,調整勘定であり,第4は,例
えば特定の緊急状況を除去しうるような(いずれにしても非常に厳格な)
例外規定である」と切り出す豊
(2) 具体的内容一「4つの要素」
ア・構造的起債制限 構造的起債要素は,EUの安定成長協定と一致
しうる方法が選ばれている。
すなわち,「構造的な予算均衡は,EU安定成
長協定の,いわゆる均衡条項(close-to-balance-Ansatz)の枠の中での目標
設定である。これは,GDP0.5%まで債務の引受けを許されることを意味す
58) Steinbriick, Komm-Prot.11,S.318.
59) Steinbriick, Komm-Prot.11,S.318.
60) Steinbriick, Komm-Prot.11,S.318.
(41)
The Seinan Law Review, V〇!.49, No. 4 (2017).
る。引き受けても良いのであり,引き受ける必要はない。
今日の国民総生
産の水準で測れば,国全体で120億ユーロになるであろう。12億ユーロは,
過去2年の成長にかんがみれば,それほど非現実的ではない」とする幻。
そして「長期的に,この方法で,債務割合は,システム的に減少するで
あろう。債務割合が,3 %から3.5%の名目的な(実質ではなく名目的な)
成長のもとで,すでに中期的に明らかに60%を割り,おそらく 50%以下に
なるであろう」と具体的なシミュレーション結果を示す岡。
イ・景気上の起債制限
2番目は,景気上の起債要素である。P.
Steinbriickは,「私たちは,特定の景気上の状況に,予算過程において景気の
対称的な(これは,いずれにしても重要な)考慮を通して安定させるよう作
用する可能性が作り出されることによって備えなければならない。」と提案
する。
その際,「対称的に,というのは,景気の良い時期に信用の余地が狭
められ,ないし予算の余剰が目指されなければならない,ということを意味
する」と確認し,「経済理論的にいえば,私たちは近年の流れにおいてしば
しばケインズを批判してきたが,その批判は必ずしも適切とはいえない。
と
いうのも,私たちは,彼を,完全には理解せず,いつも超過支出(Deficit
Spending)についてだけ聴いてきた。
しかし,この概念には,景気の良い時
期には相応の余剰を対置させるという彼のメッセージの別な部分が含まれて
いる」と補足するのである61 62 63 64>。
ウ.調整勘定
第3の調整勘定については,「以下のようにして,調整
勘定を通してコントロールしたい。
すなわち,その都度の負債増額や負債
減額が記録され,そこに次のような内容のルール,すなわち,この勘定の
額が特定の指標(例えばGDPの2%)を超えたら,憲法上予め規定され
た削減義務が生じる,といったルールを組み入れることによってである」
とし,
「これによって,これまでと同じ誤りには陥らない」という的。
ェ・例外規定 最後の例外規定について,P. Steinbruckは,起債制限
61) Steinbriick, Komm-Prot.11,S. 319.
62) Steinbriick, Komm-Prot.11,S.319.
63) Steinbriick, Komm-Prot.11,S.319.
64) Steinbriick, Komm-Prot.11,8.319.
(42)
ドイツ基本法上の「起債ブレーキ(Schuldenbremse) J成立過程
のありようにも関わる事項でもあり,また州との関係から,「予算政策上の
緊急事態の除去は,本質的には,私たちが起債規定のもとでどのような結
果に至るのかにかかっている。この起債規定がよりクリアであればあるほ
ど,ひとつの「国」だけ予算政策上の緊急状況に陥るということは,あり
そうにない。検討をお願いしたいのは,例えば,その場合に,16州及び連
邦それぞれの予算状況,そして,起こりうる予算緊急事態のおそれ判断に
従事する新しい財政安定化委員会(Stabilitatsrat)あるいは類似の機関をつ
くるかどうかである。」とするに留めている”>。
おわりに
以上,連邦財務大臣Steinbriickによって2008年2月に連邦制度調査会
に伝えられた提案によって,BMFは,1つのモデルを提案した。
具体的
には,均衡予算の原則から始まり,新しい規定のための4つの要素を含ん
でいた。
すなわち,①GDPの0.5%までの「構造的な」新規起債(連邦は
0.35%,州は0.15%)は許される。
②「景気上の要素」は「対称的に」景
気の悪い時期においては起債が許され,反対に景気の良い時期においては
返済が義務付けられる。その際,EU法上の計算と関係づけられる。
③第3の要素として,調整勘定が設けられる。額が特定の指標に到達すれば,
憲法上削減の義務が作動する。
④第4の要素は,リジッドな例外規定であり,
それは,連邦議会の特定多数決(qualifizierte Mehrheit)により決する。
以上の提案は,基本的には,BMF内部で検討されていたモデルAに沿
ったものといえる。
このBMF案に注目したE. Donnebrinkらは,このモ
デルの特徴を,次のように評する。
すなわち,多くのところで,さまざま
なアクターを取り入れ,最後,非常に異なるレディ・ポジションの間を橋
渡しするために,政治過程において利用されうる「調節ネジ
(Stellschrauben)」があり,これが強みといえる,ということであるを。
4年間(実質的には調査会設立から2年6か月)という限られた時間の
65) Steinbriick, Komm-Prot.11,S. 319.
66) D6rmebrirLk/Erhardt/Hoppner/Sudhof,a.a.O.(Anm.2),S.60 参照。
(43)
The Seinan Law Review, V〇!.49, No. 4 (2017).
なかで議論を尽くし,1つの成案に仕立てるのは相当に困難の伴う作業で
あり,おそらく BMF案の提示なくしては最終的な政治決断も難しかった
のではないか。
起債ブレーキ導入に果たしたBMF案の政治過程における
意義は非常に大きいと思われる。
しかし,それと並んで,BMF案自体,
学問的立場からの助言や意見を受けながら,理論面においても一応の検討
が尽くされている。
それゆえ,BMF案の内容そのものも,その背景と併せ,
わが国の財政規律のあり方に関する議論において大いに参考になるであろ
う。
〔追記〕
本稿は,科学研究費補助金【基盤研究(B)!課題番号16H03544「個別行政法の視座か
ら構想した行政争訟制度改革」(期間平成28年度〜平成31年度,研究代表者:村上裕章
九州大学教授)による研究成果の一部である。
(44)』
ドイツ下院、債務抑制転換へ改憲可決 欧州再軍備で急変
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR17C060X10C25A3000000/
『2025年3月19日 0:19 [会員限定記事]
【ベルリン=南毅郎】ドイツ連邦議会(下院)は18日、巨額の財政出動に必要な基本法(憲法)の改正案を採決し、賛成多数で可決した。厳格な債務抑制から方針転換し、長期の国防費増強に道を開く。財政規律を重視してきたドイツの政治決断としては異例の速さだ。欧州の安全保障強化へ国政の大転換を急ぐ。
ドイツでは2月下旬に総選挙を終え、次期連立政権の発足に向けて協議が進んでいる。第1党になった最大野党で保守陣営の…
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ウクライナ停戦協議、ロシア優位鮮明 全面合意は見送り
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【ウィーン=田中孝幸、ワシントン=坂口幸裕】ウクライナでの早期停戦を求めるトランプ米大統領に対し、ロシアのプーチン大統領が新たなカードを切った。18日の首脳協議でウクライナのインフラ施設への攻撃停止を指示したと明かし、米側への歩み寄りを演出した。
【関連記事】米ロ首脳、全面停戦合意できず エネ施設攻撃のみ停止
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相互のインフラへの攻撃停止は、ロシア側にもメリットは大きい。自らに痛くないカードで支配地拡大の時間を稼ぎつつ
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小泉悠
東京大学先端科学技術研究センター 准教授
分析・考察 「ロシア優位」というよりも、露宇ともに自国に優位な停戦を強要できるだけの軍事的能力がない、という感じがします。しかも双方の継戦能力は簡単に尽きない。
実際、トランプ政権はまずウクライナに圧力をかけてロシア優位の停戦を飲ませようとし、それがうまくいかないと見るや今度はややウクライナ側に立ってロシアとの停戦を仲介しようとしました。が、これもはっきりした成果につながらなかったというのが今回の結果でしょう。
とすると最初で述べた軍事的現実の方がまた顔を出してきて、戦争はそんなに簡単に終わらないのではないかという悲観論をどうしても抱いてしまいます。
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習氏「不毛な消耗戦やめよ」 国内での過当競争、整理指示
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『2025年3月18日 2:00 [会員限定記事]
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柯 隆
5階建てのオフィス棟や工場は完成間近に見えたが、敷地内の人影は数えるほどだった。太陽光パネルの世界2位、隆基緑能科技(ロンジソーラー)が安徽省蕪湖市に計画した生産拠点は2024年秋に工事が止まった。「パネル業界は不況に陥り、仕事がなく暇すぎて家で寝てばかりだった」。同社工場の男性従業員は嘆いた。
不況はメーカー各社が競い合って生産能力を増強してきた結果だ。米ゴールドマン・サックスによると、中国の…
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柯 隆
東京財団政策研究所 主席研究員
ひとこと解説 不当競争をやめよと呼び掛ける問題意識は正しいが、不当競争の温床は政府部門によるビジネス(市場)への干渉である。政府部分は干渉をやめないかぎり、不当競争も続くだろう。以前は太陽光パネル産業が不当競争によって共倒れになった。半導体産業も資質のない企業が大量に参入して業界は大混乱している。電気自動車は最盛期400社あまり参入していたが、今は40社になっている。それでも多すぎる。これらの事例の背景に政府補助金目当ての参入がある
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ひとこと解説 EV普及の最大のネックが「充電時間の長さ」である。日中忙しい時に20~30分も充電に時間をかけられない。そのためスマホのように夜間に充電して、日中は充電しないで使うのが普通である。
高圧で充電時間を短くすれば、日中充電が可能になるが、そのためのコストが高過ぎるため、本格普及は見通せない。高圧の充電ステーション整備に、かなりのコストと時間がかかる。また、EVモーターや空調機器の高圧対応にもコストがかかる。
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中国軍、台湾周辺で予告なし演習 頼政権威圧へ常態化か
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM182P60Y5A310C2000000/
『2025年3月18日 16:19 [会員限定記事]
【北京=田島如生、台北=羽田野主】中国人民解放軍が予告や内容の説明なしに台湾周辺で演習を繰り返している。台湾側に準備時間を与えず、対立する頼清徳(ライ・チンドォー)政権を威圧するためだ。演習の事実を曖昧にする動きが常態化しつつあるとの見方もある。
台湾の国防部(国防省)は17〜18日、中国の軍用機が台湾周辺で活動し、軍艦と合同で「戦備警戒パトロール」を実施したと発表した。軍用機の多くが台湾海峡の…
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中国、数百の米食肉施設の輸出登録失効 対抗措置か
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM1850R0Y5A310C2000000/
『2025年3月18日 17:57 [会員限定記事]
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