イスラエルとハマス衝突で起きたフランス社会の分断
https://news.yahoo.co.jp/articles/66fdb5ad593b8b4cfb9f1bd66938ae94010c37e8?page=1
※ 良記事だ…。
※ フランスのマクロン政権が、どうも「イスラエル寄り」一辺倒では無く、けっこう「パレスチナ寄り」だな…、と思って検索したら、ヒットした…。
※ フランスの立ち位置が、ある程度解説されている…。
『ガザ地区を実効支配するイスラム主義勢力ハマスとイスラエル間の衝突により、パレスチナ情勢が緊迫化する中、フランスのマクロン大統領はハマス掃討に向けた国際的な有志連合の展開を提案した。こうしたフランスのイスラエル寄りの姿勢に対し、中東諸国の一部では在フランス大使館前で抗議デモが発生するなど、フランスに批判の矛先が向けられている。
フランスの中東外交
まず戦後のフランスの中東政策は、第4共和制の歴代政権(1946~58年)が親イスラエル政策を追求し、原子力協力や軍事協力を中心に関係強化を図った。56年のエジプトによるスエズ運河の国有化の際には、イスラエルや英国と共に、エジプトに対する軍事作戦に着手した。
しかし、フランスのエジプト派兵はアラブ諸国で反仏感情の高まりを招いた。こうした状況を打開すべく、ド・ゴール大統領(59~69年)はアラブ諸国との関係改善に乗り出し、67年の第三次中東戦争時、イスラエルに対して武器禁輸措置を講じ、アラブ諸国への支持を表明した時期もあった。
70年代には、フランスは中東産油国からのエネルギー調達のため、アラブ諸国との更なる関係構築を図った。当時、フランスはアルジェリア独立後も同国の石油資源を握っていたが、71年にアルジェリアがフランス系資本を国有化したことで、アルジェリアからの石油調達に支障が生じていた。
80年代に入ると、ミッテラン大統領(81~95年)がパレスチナ問題に積極的に関与し、パレスチナ解放機構(PLO)との関係を深めるとともに、パレスチナ人が国家を持つ権利を主張した。一方、82年に仏大統領として初めてイスラエルを訪問し、イスラエル議会「クネセト」で演説を行った。同大統領は双方との対話チャンネルを維持することで、フランスがパレスチナ和平問題の解決に向けての役割を担おうと試みた。
その後2000年代、ユダヤ人を出自に持つサルコジ大統領(2007~12年)は、就任当初はイスラエル側との関係を重視した。しかし、イスラエルによるパレスチナ人弾圧が激しくなるにつれて、中立的な立場へ徐々に転じた。』
『08年のクネセトでの演説で、エルサレムは2つの国家の首都であるべきだと宣言した。11年には、国連教育科学文化機関(UNESCO)へのパレスチナ加盟に係る投票で、米国やドイツ、カナダが反対票を投じたにもかかわらず、フランスは賛成票を投じ、パレスチナの立場を支持した。
フランスの中東外交の方向性は、イスラエルとの関係やパレスチナ和平問題への関心に応じて、歴代政権で多少変化している。しかし、イスラエルがパレスチナ人への抑圧を強めたとしても、フランスはイスラエルとの関係を断絶することなかった。
ハマスを敵視するマクロン大統領
今般のガザ情勢に際して、マクロン大統領はイスラエルに寄り添う姿勢を見せている。ハマスが10月7日にイスラエルへの大規模作戦を実施したのを受け、マクロン大統領はイスラエルのヘルツォグ大統領やネタニヤフ首相と電話会談し、ハマスの奇襲をテロ攻撃だと非難した他、イスラエルの自衛権を支持した。
24日には、マクロン大統領はイスラエルを訪問し、フランスは「テロとの戦い」でイスラエルに連帯する考えを示した。さらに、イラクとシリアでの対「イスラム国(IS)」有志連合を拡大し、ハマスを攻撃対象に含めることを提案した。対IS有志連合とは、14年に開始された米軍を中心とする多国籍軍の軍事作戦(フランスでの作戦名「シャンマル(CHAMMAL)」)であり、これまで約80カ国が同作戦に参加してきた。
一方、マクロン大統領はパレスチナ側との関係を断ち切った訳ではない。パレスチナ自治政府との関係維持に努め、ガザ地区への医療支援の提供を検討している。またイスラエルの軍事作戦についても、テロとの戦いは一般市民への無差別攻撃を意味するものではないと述べ、イスラエルによる行き過ぎたガザ攻撃を牽制している。
こうした状況下、マクロン大統領が、イスラム諸国内で「対イスラエル抵抗運動」とみられているハマスを敵視する背景は、ハマスによるフランス国民の殺害や、ハマスの更なる軍事行動がレバノン情勢の不安定化につながることへの懸念があると考えられる。
仏外務省は11月4日、ハマスの攻撃で39人のフランス人が死亡し、行方不明9人のうち数人がハマスの人質となっていることを発表した。マクロン大統領は17年の就任以来、フランス国内のテロ対策の延長線として、中東地域への軍事的関与を強めてきている。15年にフランス国内で相次いだテロ攻撃は主に、中東地域で活動する過激派組織の信奉者によるものであったからだ。
フランスはシリアやイラク、リビアでフランス権益を脅かす存在となり得る過激派勢力の駆逐に注力してきた。そして今回の仏人殺害を機に、マクロン大統領はハマスを過激派勢力と同一視するほど、同組織への脅威認識を高めた。この点から、ハマスに対する国際的包囲網の強化を訴えている。
またガザ情勢に連動して、レバノンのヒズボラがイスラエルと軍事衝突するなど、レバノン情勢の先行きも懸念される。マクロン大統領はマロン派キリスト教徒の保護を名目にレバノン情勢の安定化を掲げ、レバノンの各宗派間を仲介することで勢力バランスの維持を目指してきた。このため、レバノン社会で支持基盤を有するヒズボラをテロ組織に指定せず、対話を進め、20年には仏大統領として初めてヒズボラ幹部と会談した。』
『ガザ情勢下でも、マクロン大統領は10月20日に在レバノン仏大使館を通じてヒズボラと連絡を取り、レバノン南部に戦線を拡大させないよう自制を求めた。しかし、ハマスの更なる軍事行動がヒズボラの武装活動を触発する可能性があるため、先んじてハマスの活動を抑止する必要性が出てきた。
ガザ情勢で分断されるフランス社会
ガザ情勢の影響はフランスの国内問題にも波及している。フランスには欧州最大のムスリム社会とユダヤ人社会が存在する。
宗教別の人口調査が実施されていないため正確な数値を示す統計はないが、米国のピュー・リサーチ・センタ―によれば、在仏ムスリム人口は2020年時、約543万人と試算された。一方、フランス・ユダヤ人代表評議会(CRIF)によれば、在仏ユダヤ人の数は約55万人である。
イスラエル・ハマス間の衝突を受け、フランス在住のイスラエル国籍者が予備役の招集に応じ、対ハマス戦線に参加している。彼らの多くがフランスとの二重国籍者だが、フランスとイスラエルは59年に二重国籍者の徴兵を認める協定を締結済みである。
仏日刊紙『リベラシオン』によれば、イスラエル国防軍におけるフランス国籍は米国籍に次いで、2番目に多い外国籍である。同軍に所属するフランス系イスラエル人は全隊員の1.7~3.5%を占める。仏ニュース専門局『BFMTV』がパリの空港でインタビューしたイスラエル国籍者の予備役兵士は、祖国とイスラエル国民を守ると述べ、戦場に向かうことに躊躇していない様子であった。
在仏ユダヤ人がイスラエルとの紐帯を強める一方、フランス各地でイスラエルのガザ攻撃を非難する抗議デモが多発している。ムスリム住民の多くがデモに参加し、パレスチナの旗を手にパレスチナ人との連帯を表明している。このように、ガザ情勢をめぐる宗派間の分断がフランス社会でも顕在化してきた。
さらに、ガザ情勢に反応してフランスの治安状況が悪化傾向にある。10月13日、フランス北部の町アラスにある高校が襲われ、教師1人が刺殺された。逮捕された実行犯はロシア・チェチェン生まれのムハンマド・モグチコフ氏で、彼は過激分子だとして治安当局の監視下に置かれていた。ダルマナン内相は、アラスでの高校襲撃がガザ情勢に関連している可能性を示唆した。
11月4日には、南東部リヨンでユダヤ人女性が男に刺されて負傷する事件が起きた。実行犯は特定されていないものの、女性の自宅のドアには、かぎ十字(ユダヤ人を敵視していたナチスドイツのシンボル)の落書きが見つかったことから、ユダヤ人を意図的に狙った可能性が高いと考えられる。
フランス治安当局はハマスの奇襲以降、フランス全土のユダヤ人学校やシナゴーグ(ユダヤ教の礼拝所)で警備を強化してきたが、この先も反ユダヤ感情に基づく犯罪行為の増加が懸念される。
中東情勢はこれまでもフランス本土でのテロ事件に幾度とつながってきた。こうした事情を踏まえると、マクロン大統領が対ハマス有志連合の形成を主導することは、むしろフランスの安全保障にとって非常に危険な動きである。仮にフランスが直接介入せず、イスラエルに軍事支援を提供するだけでもフランス国内にいる多数のムスリム住民を刺激する恐れがあるだろう。
高橋雅英
最終更新:11/8(水) 6:02 』