米国・インド、装甲車を共同生産へ 係争地で中国抑止
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN09ES20Z01C23A1000000/
『【ニューデリー=中村亮】米国とインド両政府は10日、装甲車を共同生産すると合意した。米印の結束を示し、国境問題でインドと緊張状態にある中国を抑止する。インドは中東で米主導の海洋安全保障の枠組みに関与を強める。
米国とインドは10日、ニューデリーで外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)を開いた。米国からブリンケン国務長官とオースティン国防長官が出席した。両氏はインドのモディ首相を表敬し、米印関係の強化を確認する。
オースティン氏は2プラス2後の記者会見で「世界の安全保障環境がだんだんと深刻になっていることは公然の事実だ」との認識を示した。「それこそがインドとの協力の進展が重要であり、強化に取り組む理由だ」と言及した。
バイデン米政権はロシアによるウクライナ侵攻に加え、イスラエルとイスラム組織ハマスの紛争への対応を迫られる。中国対処を進めるうえで、インドや日本、オーストラリア、韓国、フィリピンなどとの協力の重要性が高まる。
米印は具体策として米国の装甲車ストライカーをインドで生産する考えで一致した。米国防総省高官は記者団に、ストライカーを米国以外で生産するのは初になると説明した。インドは共同生産を求める意見表明書を米国に提出していた。
米軍の装甲車ストライカー=ロイター
装甲車は米ゼネラル・エレクトリック(GE)の戦闘機エンジンの共同生産に続く米印の大型案件になる。米国がインドに高度な防衛技術を共有する見通しで、米印の信頼が高まっていることを印象づける。
国防総省高官は装甲車に関し「(中印の)係争地のような地域や中国の挑戦に対処するうえでインドにとって強力な戦力となる潜在力がある」と語った。
中印国境係争地の北部ラダックでは、2020年にインド軍と中国軍が衝突し20人以上の兵士が死亡した。高官は「中印が撤退に向けた複数の協議をしているが、状況はおおむね変わっていない」と話し、緊張が続いているとの見方を示した。
インドは中東地域を中心に活動する多国間の海洋安全保障の枠組み「連合海上部隊(CMF)」に関し、準会員から正規会員になる方針だ。
CMFは米海軍第5艦隊と同じバーレーンに司令部を置く。麻薬や海賊の取り締まりなどを担い、紅海やオマーン湾など海域を分けて作戦部隊を立ち上げている。インドが正規会員になれば作戦部隊の司令官を担えるようになり、CMFにおける存在感が増す。
インドは世界の安全保障への関与を強める考えだ。グローバルサウスと呼ばれる新興国・途上国の盟主を自任するインドの外交方針とも合致する。
米海軍はインドで補給拠点を増やすため同国と協議を進める。インド太平洋で艦船の給油や修理が完結すれば米本土に戻る必要がなくなり、艦船が海上で活動する時間を増やせる。米印は海上情報収集や海中通信の技術開発へ新興企業の協力も促す。
安保体制で協力を深める一方、米印2プラス2では人権問題を巡り隔たりが残ったとみられる。
カナダ政府はインド生まれでカナダ国籍を持つシーク教指導者が6月に殺害された事件にインド政府が関与したと断定した。インドは関与を否定したが、米国はカナダの捜査に協力するようインドに求めてきた。
インドはウクライナ侵攻を続けるロシアとの関係をおおむね維持している。武器調達をめぐり歴史的に関係が深いロシアへの依存度は下がってきたが、米国はペースを上げていきたい考えだ。』