中印、ウクライナ侵攻に距離 ロシアは孤立回避に腐心
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN243X60U2A920C2000000/
『【ニューヨーク=白岩ひおな】各国の首脳級演説が続く国連総会で24日、中国やインドの外相が演説し、ウクライナ侵攻を続けるロシアに一定の距離を置く姿勢を示した。一方、ロシアのラブロフ外相は中国が重視する台湾問題をめぐり米国を非難したほか、中印やアフリカ、中南米諸国と会談を重ねるなど世界での孤立回避に腐心している。
「ウクライナ紛争の激化が続くなか、われわれは誰の側に立つのかと頻繁に聞かれる。インドは平和の側にあり、国連憲章とその創設の原則を尊重する側に立つ」。インドのジャイシャンカル外相は24日の演説でこう明言し、早期解決を求めた。
インドのジャイシャンカル外相㊨は24日の演説でロシアへの懸念をにじませた(ニューヨークの国連本部)=AP
米欧はロシアによる侵攻や、23日に始まったウクライナの親ロシア派支配地域でのロシア編入を問う住民投票について、国連憲章違反として非難している。16日にはインドのモディ首相も、ロシアのプーチン大統領との会談で「いまは戦争の時ではない」と懸念を伝えた。
中国の王毅(ワン・イー)国務委員兼外相は24日の演説で「ウクライナ危機の平和的解決に資するすべての努力を支持する」と述べ、対話による解決を優先するよう改めて求めた。プーチン大統領は15日の中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席との会談で「ウクライナ危機に関する中国の懸念を理解している」と自ら言及している。
24日の演説で、中国の王毅(ワン・イー)外相はウクライナ侵攻をめぐり、当事者の対話による平和的解決を求めた=AP
中印両国は侵攻以来、ロシアとの伝統的な外交関係から表立った対ロ批判は控えてきた。ただ、プーチン大統領が21日の国民向け演説で核兵器使用を辞さない考えを再び示し、ロシアの言動への懸念が一段と強まる中、中印はロシアと距離を置く姿勢に傾いている。
欧州連合(EU)のボレル外交安全保障上級代表は23日、ロシアの核の脅しに対し中国とインドが拒否反応を示していると語った。ボレル氏は中国外相との個別会談で核の使用や威嚇に反対する発言があったと明らかにした上で「ロシアは(プーチン氏の)演説の前よりもずっと孤立している」と指摘した。
孤立感を深めるロシアは、各国への働きかけを強める。ラブロフ氏はニューヨーク滞在中、中印のほか、南アフリカなどアフリカ諸国、ブラジルやベネズエラなど中南米を中心に30カ国以上と個別に会談した。
24日に演説したラブロフ氏は「米国は台湾で火遊びし、台湾への軍事支援を約束した」と批判。中国が重視する台湾問題への配慮を強調し、中国の歓心を買おうと努めた。
ラブロフ氏は同日の会見で、ロシアに編入される地域を防衛するために核兵器を使用する可能性を示唆した。「(将来的に)ロシアの憲法にさらに明記される領土を含むロシアの領土は国家の完全な保護下にあり、すべての法律やドクトリンが適用される」と表明した。同国の軍事ドクトリンは核兵器の使用要件を「国家の存在が脅威にさらされた時」と明記し、大統領が決定すると定めている。
22日に開いた安全保障理事会では、核の脅しを強めるロシアへの非難が集中した。ブリンケン米国務長官は「プーチン氏は自らおこした火に油を注ぐために国連憲章、国連総会と安保理を徹底的にないがしろにすることを選択した」と発言した。一方、ラブロフ氏はウクライナへの軍事支援で「西側諸国が紛争を故意にあおっている」などと反論。演説後には退席した。
ウクライナのゼレンスキー大統領は21日の国連総会でのオンライン演説で、ロシアの拒否権を剥奪すべきだと訴えた。ウクライナ侵攻以降、安保理はロシアの拒否権に阻まれ、法的拘束力のある決議を出せていない。8月の安保理での演説では国連総会にロシアの責任を追及する決議案を提出する方針も示していた。ウクライナの一部地域のロシアへの編入が決まれば、各国の応酬がさらに激しさを増しそうだ。』