茂木氏のキューバ訪問中止 現地の感染状況を考慮
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA172EM0X10C21A7000000/
『外務省は17日、18~19日に予定していた茂木敏充外相のキューバ訪問を取りやめると発表した。「同国で新型コロナウイルスの感染が拡大する事情に鑑みる」と説明した。現地では大規模な反政府デモが起きている。
茂木氏は中米のパナマとカリブ海のジャマイカを予定通り訪れ、21日に帰国する。』
茂木氏のキューバ訪問中止 現地の感染状況を考慮
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA172EM0X10C21A7000000/
『外務省は17日、18~19日に予定していた茂木敏充外相のキューバ訪問を取りやめると発表した。「同国で新型コロナウイルスの感染が拡大する事情に鑑みる」と説明した。現地では大規模な反政府デモが起きている。
茂木氏は中米のパナマとカリブ海のジャマイカを予定通り訪れ、21日に帰国する。』


『世界最大のエネルギー生産国になった米国
[ロンドン発]米国のドナルド・トランプ大統領は24日、イランへの追加制裁を科す大統領令に署名し、イラン最高指導者アリ・ハメネイ師らを制裁対象に加えました。それに先立って、こうツイートしました。
「中国は原油の91%を(ホルムズ)海峡から輸入している。日本は62%だ。他の多くの国も似たような状況だ。どうして我が国が他の国々のために何年も何の見返りもなしにシーレーンを守らなければならないのか」
「(ホルムズ海峡を通って運ばれてくる原油に依存する)こうしたすべての国はいつも危険な旅を強いられている自国の船舶を自分たちで守るべきだ」
「米軍が中東に展開している必要はない。米国は(断トツで)世界最大のエネルギー生産国になった。米国のイランへの要求は非常にシンプルだ。核兵器は持たない、テロにこれ以上、資金援助しないことだ」
米国が世界最大のエネルギー生産国になったというのはトランプ大統領の言う通りです。米エネルギー情報局(eia)によると、米国の石油生産量は昨年1096万バレル/日量と2位サウジアラビアの1042万バレル/日量を上回っています。
また、米中央情報局(CIA)のワールド・ファクトブックによると、シェールガス革命によって米国の天然ガス生産量は2015年推計で7662億立法メートルと2位ロシアの5980億立法メートルを大きく引き離しています。
米エネルギー情報局(eia)のHPより抜粋
しかしペルシャ湾からの年間原油輸入量は2012年の7億8308万バレルから15年には5億4286万バレルに減少。17年には6億2593万バレルまで戻しています。eiaの予測では2020年には原油、天然ガスなどエネルギーの輸出が輸入を1953年以来初めて上回るそうです。
中東の原油は米国にとって重要ではなくなった
中東の原油は米国にとってかつてほど重要ではなくなりました。トランプ大統領になって土壇場で米ドローン撃墜に対するイランへの報復攻撃を撤回したのも、中東の泥沼に引きずり込まれるのを恐れたからでしょう。
米国がイランを警戒するのはトランプ大統領の言う通り「核兵器開発」と「テロへの資金援助」であるのは間違いありません。
国際エネルギー機関(IEA)の「世界エネルギー展望2017年版」によると、世界のエネルギー需要は2040年までに30%増えます。一方、米国は3000万toe(石油換算トン)の減、欧州は2億toeの減、日本は5000万toeの減少と予測されています。
国際エネルギー機関(IEA)の「世界エネルギー展望2017年版」より抜粋
これに対してインドのエネルギー需要は10億500万toe、中国は7億9000万toe、東南アジアは4億2000万toeも増加する見通しです。原油輸入に占めるアジアの割合は現在の50%から3分の2以上になるそうです。これは中東の原油輸出量をはるかに上回っています。
経済産業省の資源・エネルギー統計年報によると、18年、日本の中東からの原油輸入は全体の88%を占めています。
地球温暖化対策でエネルギー需要が減るとは言え、中東と日本を結ぶペルシャ湾からホルムズ海峡、インド洋、マラッカ海峡(ロンボク海峡)、南シナ海のシーレーンは日本の生命線であることに変わりはありません。
中東のシーレーン防衛から米国が撤退すると、南シナ海に人工島を造成して要塞化している中国の影響力はますます強くなってしまいます。
米国は中国に対抗するために日本やインド、東南アジア諸国と協力してシーレーン防衛を強化すべきであって、トランプ大統領お得意の「離脱レトリック」は極めて近視眼的です。
しかし安倍晋三首相がトランプ大統領の要請を受け、現職首相として41年ぶりにイランを訪問したことからも分かるように同盟国に求められる役割は大きくなってきます。
日本のシーレーン防衛
船の所有者はノルウェー人、船籍国はリベリア、管理者はキプロス人、保険会社は英国法人であり、さらに米国の保険会社に再保険が掛けられ、乗組員は船長がポーランド人で船員はバングラディシュ人とフィリピン人、用船契約はアラブ首長国連邦(UAE)で、積み荷はイタリア、フランスそしてドイツに向け――。
高井晋氏、秋元一峰氏著『海上防衛力の意義と新たな役割 オーシャンピース・キーピングとの関連で』によると、これが海の世界では当たり前だそうです。だからこそ国際的な枠組みによるシーレーン防衛が必要になってきます。そのリーダー役は米国をおいてほかにありません。
日本が本格的にシーレーン防衛に取り組みだしたのは、1981年の「シーレーン1000カイリ防衛構想」からです。領海の12カイリを超えて、フィリピンと台湾間のバシー海峡までを日本が防衛するというものでした。
90年の湾岸戦争では戦争終了後、日本は海上自衛隊の掃海部隊を派遣し、機雷掃海を行っています。2001年の米中枢同時テロではテロ特別措置法を制定してインド洋に補給艦と護衛艦2隻を派遣、米国など数カ国の艦船に給油活動を行いました。
09年にはソマリア沖海賊対策のために自衛隊の護衛艦2隻をソマリアに派遣しています。15年に制定された安全保障関連法で集団的自衛権の行使が限定的に容認された際、ホルムズ海峡が封鎖されれば、海上自衛隊を機雷掃海のため派遣できるとの政府見解を示しています。
今月13日、ホルムズ海峡近くで東京の海運会社「国華産業」が運航するタンカーが攻撃された事件では、岩屋毅防衛相は「この事案で部隊を派遣する考えはない」と述べました。
イランはまだ、ホルムズ海峡での攻撃を本格化させたわけではありません。しかし世界最大のエネルギー生産国になった米国が中東への関与を弱めていくのは想定内のシナリオです。
日本は食料の多くを海外からの輸入に頼っています。中東に原油の9割近くを依存する日本が他国と協力してシーレーン防衛を強化するためには憲法9条の改正は避けては通れません。
それともトランプ大統領は、憲法改正を目指す安倍首相と気脈を通じているのでしょうか。
(おわり)
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木村正人
在英国際ジャーナリスト
在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com
masakimu41
kimura.masato.927
関連リンク(外部サイト)
公式サイト 』
【コラム】日本の台湾海峡恐怖症
https://ameblo.jp/edamamemame/entry-12687090979.html


『麻生太郎副総理が、台湾防衛に言及しました。
【風を読む】麻生氏のまっとうな「台湾発言」 論説副委員長・榊原智
麻生太郎副総理兼財務相が5日の講演で、中国が台湾に武力侵攻するケースを念頭に「間違いなく(安全保障関連法上の)存立危機事態に関係してくると言っても全くおかしく…
リンク
http://www.sankei.com
麻生太郎副総理兼財務相が5日の講演で、中国が台湾に武力侵攻するケースを念頭に「間違いなく(安全保障関連法上の)存立危機事態に関係してくると言っても全くおかしくない。日米で台湾を防衛しなければならない」と語った。集団的自衛権の行使で台湾を防衛するとのメッセージを内外に発信したことになる。
ところで、
韓国は半島ですけれども、
実質的には島国です。
陸の孤島です。
でも韓国がシーレーンについては心配するのを見たことがほぼありません。
韓国人は韓国が実質島国である認識がありません。
韓国は島国だよ。
だって陸路がないじゃない?
国外旅行のことを”海外旅行”って言うじゃない?
と指摘すると、非常に驚きます。自分達が陸の孤島である認識がない。
まあ常に「陸続きのお隣さん」を意識しているからでしょうけど。
それと、朝鮮戦争時の日本を、「重要な補給基地」ではなくて、「人んちの戦争で金儲けして経済復興した憎き国」とのみ解釈するからでしょうけど。
韓国は日本の半島再侵略に備えてミサイルの射程距離延長や海軍増強や日本との戦力比較を怠りませんけれども、
シーレーンについては心配するのをほぼ?全く?見たことがありません。
中国が南沙諸島に軍事基地を建設した時も、南シナ海ほぼ全域に中国の領海を主張した時も、航行の自由作戦にも、台湾有事を心配した際にも、
中国によって海運が封鎖されることを恐れたことが、たぶんありません。
シーレーンはアメリカに丸投げであるから。
あるいは、中国と仲良くしさえすれば済む話しなのに、何を恐れて毛を逆立てるのかという立場か、
どちらか、もしくは両方なのだと思います。
日本は侵略国扱いですが、朝鮮戦争で北朝鮮軍と共に韓国を襲った中国の義勇軍は、あれは建前重視で国としては敵国認定されていないんでしょうかね。
そう言えば、対中国でなく対日本であっても
いつも仮想敵国日本との戦いをシミュレーションする韓国人さんたちにも、対日本戦での補給を心配するのを見たことがありません。(1回くらいあったかも)
日本を敵とすれば韓国へのシーレーンは全て断たれますが、
まあその場合は、正義の連合国、中国かアメリカが日本のシーレーンを全て断ってくれるでしょう。(韓国的には)
北朝鮮を通じて中国ロシアが陸路で十分に補給してくれる見通しを持っているのかもしれません。
実際、韓国人さんたちは、トランプー安倍以前までは、米韓同盟は韓国を日本の侵略から守ってくれる同盟だと思っていました。もちろん北朝鮮からも守りますが。
だからトランプ-安倍ラインによる日米安保の関係は、韓国にとっては国防と外交への衝撃、転換点でした。
アメリカが日本に肩入れする。ならば誰が日本の侵略から韓国を守ってくれるのか?
引き続きアメリカが日本をコントロール下に置く前提ではあっても、
新たな同盟を探す、でなければ自分達の戦力を増強させることが必要です。
韓国は今年のミサイル協定でアメリカから中距離弾道ミサイルの射程距離延長の許可を得ました。今後は日本全土を射程に入れることができます。
アメリカが最初は北朝鮮以遠の射程距離を禁じていたのが、韓国南端からでも北朝鮮を射程に入れたいという韓国の要求に応じて東京までには至らない射程距離を許し、ついに日本全域までを決定的に許すのはどういう算段なのかなと素人なりに考えて見ました。
これにより韓国軍の日本への軍事的優位性が保証され、したがって韓国も安心してアメリカの同盟国のままでいることができます。
また、これは可能性としてはどうかなとも思うのですが、
一人で世界の警察だったアメリカが、同盟国らにそれぞれの自衛および地域連携を課すことにより、
もしや朝鮮半島有事の際に、韓国がアメリカに頼らずとも独自に北京までを射程に入れる能力を持つ必要性があるのかなとか。(作戦統帥権移譲の懸案もありますし)
日本全域にミサイルを落とす気満々、逆に中国とやり合う気持ちは韓国にはサラサラないとしてでも、アメリカの期待値として、能力的には可能という状態にはなります。
以下、尖閣諸島とシーレーン防衛に敏感な日本を不思議に思う韓国の記事です。
【コラム】日本の台湾海峡恐怖症
2021/07/18 07:56
Chosun Online | 朝鮮日報 』
オードリー・タン氏の訪日中止 IOCから通知で断念―台湾
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021071800218&g=int
『【台北時事】台湾行政院(内閣)は18日、東京五輪の開会式出席を目的に19日から訪日を予定していた唐鳳(オードリー・タン)政務委員(閣僚)について、派遣を取りやめると発表した。
IOCバッハ氏「コロナ持ち込まない」 五輪開幕控え菅首相と会談
行政院によると、国際オリンピック委員会(IOC)が新型コロナウイルス対策のため、開会式に出席できるのは選手以外に、国家元首や政府のトップなどに限ると各国に通知。行政院は唐氏とも協議の上、派遣を断念することにした。』
対中国、米の「裏庭」支援 茂木外相が中米・カリブ歴訪
日本、ワクチン協力拡充
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA112VP0R10C21A7000000/

『茂木敏充外相は15日、中米・カリブ海の4カ国訪問に出発した。21日までの日程で現地で20カ国ほどの外相と協議する。米国の「裏庭」と呼ばれる中米・カリブ海でも中国が影響力を拡大してきた。日本は新型コロナウイルスワクチンやインフラ支援で米国と協調して引き戻しに動く。
茂木氏はグアテマラ、パナマ、キューバ、ジャマイカの順で訪問する。16日(日本時間17日)にはグアテマラで、同国が議長を務める中米統合機構(SICA)の加盟国とオンライン形式を交えて外相会合を開く。
20日(同21日)にはジャマイカでカリブ共同体(カリコム)とも外相会合に参加する。SICAはパナマなど8カ国でつくる。カリコムはかつての英国領を中心とした14カ国で構成している。
日本は地理的に関係の薄かった中米・カリブ海との関係拡大に取り組む。安倍晋三前首相は2014年に日本の首相として初めてトリニダード・トバゴを訪れ、カリコムと初の首脳会合を開いた。15年にも同様にジャマイカを訪問した。
茂木氏は訪問中に日本が提唱する「自由で開かれたインド太平洋」を説明し、法の支配に基づく国際秩序を維持するための協調を求める。日本の質の高いインフラ支援や人材育成の協力を申し出る。
中米・カリブ海はハリケーンや火山による災害が多い。日本の防災のノウハウを共有する。新型コロナワクチン供給の輸送網構築に向けた支援拡充も表明する。
米国にとって「裏庭」といわれる安全保障上の急所だ。他国の覇権を許さない地域として、戦後、反米政権ができないよう様々な手段を取ってきた。
キューバでは1959年に革命が成功した後、旧ソ連との関係を深めるキューバを警戒し、米国が経済制裁を始めた。61年には米中央情報局(CIA)の支援を受けたとされる反革命軍がキューバを侵攻した。
62年にソ連によるキューバへのミサイル配備が発覚すると、米国は核搬入阻止のためキューバの海上封鎖を発表。核戦争寸前の事態に発展した。
キューバと関係の深い南米北部のベネズエラにも神経をとがらせてきた。反米のチャベス、マドゥロ両政権が続く。
トランプ前政権は不法移民の問題を抱えていたこともあり友好関係を築きにくかった。中国は隙をつくようにインフラ投資を増やし、米国の地理的な優位性を崩そうとしている。
中米・カリブ地域には近年、中国がインフラ建設などの巨額の資金支援を背景に力を入れる。パナマは17年、エルサルバドルとドミニカ共和国が18年にそれぞれ台湾と断交し中国と国交を結んだ。
外務省によると世界の台湾承認国の15カ国のうち6割にあたる9カ国が中南米・カリブ地域に集中する。中国は台湾承認国への影響力拡大をもくろむ。
バイデン政権は中国傾斜を懸念する。ハリス副大統領は初訪問の場所をグアテマラなど中米を選んだ。日本は米国を側面支援して信頼関係を深化させる。
日本は安全保障を米国の軍事力に頼る。台湾や沖縄県・尖閣諸島の有事には米軍抜きには対応不可能だ。米国の安全保障にとって肝となる中米・カリブ海への経済支援は米国への貸し借りの一環ともいえる。
ジェトロアジア経済研究所の山岡加奈子主任研究員は「中米カリブ諸国も新型コロナで経済的に打撃を受けている。中米は貧困層が多く中国が支援を申し出れば中国に寄ることもある。今回の訪問でそうした動きに対する効果がある」と話す。
ワクチン支援が中米・カリブ海の急所になっている。
英オックスフォード大の研究者などでつくる「アワー・ワールド・イン・データ」によると、台湾と断交したドミニカ共和国は中国からワクチン支援を受け、1回以上接種を受けた人が人口全体の48.4%に達する。エルサルバドルも同様に31%と高水準だ。
台湾と国交を結ぶグアテマラ(4.8%)は低い水準にとどまる。
この記事の英文をNikkei Asiaで読む 』
防衛白書、台湾有事の尖閣波及を警戒 島しょ防衛強化
「台湾の安定重要」初明記
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA09BCT0Z00C21A7000000/


『防衛省は13日に公表した2021年版の防衛白書で、台湾情勢の安定が日本の安全保障に重要だと初めて明記した。台湾有事になれば170キロしか離れていない沖縄県・尖閣諸島の防衛に波及しかねないと警戒する。従来と比べ、具体的な「日本の守り」への言及に力点を置いたのもそのためだ。
台湾情勢について「わが国としても一層緊張感を持って注視していく必要がある」と指摘した。20年版で中国と台湾の軍事力の動向を「注目していく必要がある」などとしていた表現を強めた。
中台衝突が起きて米軍が参戦すれば日本も影響は避けられない。集団的自衛権を行使し、邦人を救出する米艦を防護したり、米軍基地を狙うミサイルを迎撃したりする必要が生じる。政府・与党内で「台湾有事は日本有事と一体だ」との見方が広がる。
台湾から近い沖縄県・与那国島や尖閣諸島は台湾有事の際に戦域になりかねない。尖閣などが巻き込まれれば武力攻撃事態となり日米で離島防衛にあたることになる。
戦後、日本の防衛は旧ソ連の抑止が主題だった。防衛白書も旧ソ連による着上陸侵攻を見据えた対応に記述を割いた。冷戦後は国連平和維持活動(PKO)など自衛隊の国際協力や災害派遣の紹介に重点を置いた。
10年代は北朝鮮の核ミサイルの脅威に焦点を当ててきたが、潜在的な懸念の対象は中国だった。
これまでも尖閣周辺での活動に懸念を示す表現は毎回盛ってきたが、今回はより具体的な国土防衛への言及を前面に打ち出した点で異なる。
島しょ防衛はその一例だ。中国に近い南西諸島を念頭に、攻めてくる相手の攻撃圏外から発射できる国産の長射程ミサイルを開発する計画を挙げた。陸上自衛隊が運用する「12式地対艦誘導弾」の射程を伸ばす。敵艦を離島に近づきにくくし、相手の攻撃を抑止する。
地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の計画停止と、代替となる艦船導入も記載した。地上配備は北朝鮮からのミサイル対処が目的だったものの、海上で運用すれば南西諸島防衛にも活用できる。
明確な武力攻撃ではないグレーゾーン事態への対処にも紙幅を割いた。相手が武力攻撃にあたらない範囲で現状変更を試みてくる可能性に触れた。中国が海軍ではなく海警局を使って尖閣諸島に上陸してくる事態などを想定しているとみられる。
グレーゾーン事態が長引けば「明確な兆候のないまま、より重大な事態へと急速に発展していくリスクをはらむ」とも訴えた。武装した工作員に対処するため警察との共同訓練の必要性に触れたコラムも載せた。
今回初めて米中関係に関する項目を設けた。米中対立が激しくなれば日本も無関係でいられないとの認識を映す。人工知能(AI)など先端技術を巡る競争も一層激しくなると予測した。
中国は00年以降、急激な軍拡で戦闘機やミサイルを増やす。東アジアに限ると中国の優勢は明らかだ。大量の対艦弾道ミサイルなどを配備し、米軍が中国近海まで近寄れない戦略をとる。
米中対立の文脈で尖閣諸島の問題に言及したのも従来の白書にない特徴といえる。米軍の対日防衛義務が尖閣諸島に及ぶと重ねて表明する米国に、中国が「強く反発している」と触れた。
尖閣問題を初めて単独のコラムとして取り上げた。尖閣周辺で領海侵入を繰り返す中国海警局の船の活動を「そもそも国際法違反」と断じた。過去の白書では国際法上の評価は触れず「全く容認できない」などと記しただけだった。
海警局を準軍事組織と位置づけた2月施行の海警法も「国際法との整合性の観点から問題がある」と明確に指摘した。一連の表現からは尖閣周辺での海警局の船の活動がグレーゾーン事態や有事に発展しかねないとの危機感がにじむ。
防衛計画の大綱や中期防衛力整備計画は18年の策定から2年半たつ。防衛白書が記すように、この間の東アジアの安保環境の変化は激しい。台湾や尖閣有事を抑止するためにも防衛力強化の不断の見直しが不可欠となる。
(安全保障エディター 甲原潤之介)
防衛費、GDP1%枠超も視野 中国への抑止力に
防衛白書は9年連続増となった2021年度の防衛関係費も説明した。22年度も増額傾向は続く見通しで、国内総生産(GDP)比で1%以内としてきた目安を超える可能性がある。岸信夫防衛相は1%にこだわらず予算要求する方針だ。
中国が急ピッチで軍備強化を進め、このままでは東アジアで日米と中国の軍事力の差が一層開きかねない。防衛省は日米が連携して防衛力を高めることが中国への抑止力となり、台湾や沖縄周辺での紛争回避につながるとみる。
白書によると20年度の日本の防衛費はGDP比で0.94%となり19年度の0.90%からわずかに上昇した。3%超の米国とロシア、2%超の韓国、オーストラリア、フランスと比べ差は大きい。白書は主要国と比較し「対GDP比は最も低い」と指摘した。
防衛省は予算を増やして離島防衛能力の向上を狙う。島で敵の上陸を阻止する「水陸機動団」の拡充や、装備品や弾薬、食料を運ぶ海上輸送部隊の新設を計画。護衛艦などの新造にも充てる。
東アジアでの中国の軍事的優位が強まるほど、中国と対峙する東シナ海での防衛力強化が重要になる。静音性の高い潜水艦といった日本が優位性を持つ技術への投資も不可欠だ。
現在より探知能力に優れた潜水艦用ソナー開発や、日本周辺の浅い海域を航行する潜水艦の動きを捕捉するためのレーダー、上空から監視する哨戒機やヘリコプターなどの性能向上にも取り組む。
対空戦闘力では最新鋭ステルス戦闘機「F35A」や艦艇からの飛行が可能な「F35B」の購入を進める。現在の主力戦闘機「F15」も電子戦に対応するよう改修する。
【関連記事】[社説]防衛白書の危機意識を丁寧に説明せよ
多様な観点からニュースを考える
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。
渡部恒雄のアバター
渡部恒雄
笹川平和財団 上席研究員
コメントメニュー
分析・考察 防衛白書で指摘する一連の中国の拡張姿勢が、直接に日本の生存への脅威となっている状況が明確になり、その意識を米国だけでなく欧州諸国など広く国際社会が共有するようになっているにも関わらず、日本の防衛関係費がGDP比で1%レベルと群を抜いて低いことは、同盟国の米国だけでなく、国際社会からも疑問視されるようになっています。日本自身の防衛努力が地域と世界の安定に貢献し、逆にそれを怠ることは責任を果たさない態度と認識されるという現実を、今回の防衛白書は指摘しているのだと思います。
2021年7月14日 7:40いいね
19
岩間陽子のアバター
岩間陽子
政策研究大学院大学 政策研究科 教授
コメントメニュー
分析・考察 「日米が連携して防衛力を高めることが中国への抑止力となり、台湾や沖縄周辺での紛争回避につながる」ここが大事だと思います。抑止とは、戦争が起こる前にそれを防ぐことです。日本が防衛努力をすることは、戦争の可能性を高めるのではなく、低めるのだということを、国民にしっかり理解してもらう必要があります。日本周辺での武力紛争の可能性が高まっているからこそ、抑止を考える必要がある。そのために効果的な防衛費の使い方とはどのようなことなのか、を議論する必要があります。
2021年7月14日 12:34いいね
3 』
防衛白書、台湾有事の尖閣波及を警戒 島しょ防衛強化
「台湾の安定重要」初明記
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA09BCT0Z00C21A7000000/


『防衛省は13日に公表した2021年版の防衛白書で、台湾情勢の安定が日本の安全保障に重要だと初めて明記した。台湾有事になれば170キロしか離れていない沖縄県・尖閣諸島の防衛に波及しかねないと警戒する。従来と比べ、具体的な「日本の守り」への言及に力点を置いたのもそのためだ。
台湾情勢について「わが国としても一層緊張感を持って注視していく必要がある」と指摘した。20年版で中国と台湾の軍事力の動向を「注目していく必要がある」などとしていた表現を強めた。
中台衝突が起きて米軍が参戦すれば日本も影響は避けられない。集団的自衛権を行使し、邦人を救出する米艦を防護したり、米軍基地を狙うミサイルを迎撃したりする必要が生じる。政府・与党内で「台湾有事は日本有事と一体だ」との見方が広がる。
台湾から近い沖縄県・与那国島や尖閣諸島は台湾有事の際に戦域になりかねない。尖閣などが巻き込まれれば武力攻撃事態となり日米で離島防衛にあたることになる。
戦後、日本の防衛は旧ソ連の抑止が主題だった。防衛白書も旧ソ連による着上陸侵攻を見据えた対応に記述を割いた。冷戦後は国連平和維持活動(PKO)など自衛隊の国際協力や災害派遣の紹介に重点を置いた。
10年代は北朝鮮の核ミサイルの脅威に焦点を当ててきたが、潜在的な懸念の対象は中国だった。
これまでも尖閣周辺での活動に懸念を示す表現は毎回盛ってきたが、今回はより具体的な国土防衛への言及を前面に打ち出した点で異なる。
島しょ防衛はその一例だ。中国に近い南西諸島を念頭に、攻めてくる相手の攻撃圏外から発射できる国産の長射程ミサイルを開発する計画を挙げた。陸上自衛隊が運用する「12式地対艦誘導弾」の射程を伸ばす。敵艦を離島に近づきにくくし、相手の攻撃を抑止する。
地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の計画停止と、代替となる艦船導入も記載した。地上配備は北朝鮮からのミサイル対処が目的だったものの、海上で運用すれば南西諸島防衛にも活用できる。
明確な武力攻撃ではないグレーゾーン事態への対処にも紙幅を割いた。相手が武力攻撃にあたらない範囲で現状変更を試みてくる可能性に触れた。中国が海軍ではなく海警局を使って尖閣諸島に上陸してくる事態などを想定しているとみられる。
グレーゾーン事態が長引けば「明確な兆候のないまま、より重大な事態へと急速に発展していくリスクをはらむ」とも訴えた。武装した工作員に対処するため警察との共同訓練の必要性に触れたコラムも載せた。
今回初めて米中関係に関する項目を設けた。米中対立が激しくなれば日本も無関係でいられないとの認識を映す。人工知能(AI)など先端技術を巡る競争も一層激しくなると予測した。
中国は00年以降、急激な軍拡で戦闘機やミサイルを増やす。東アジアに限ると中国の優勢は明らかだ。大量の対艦弾道ミサイルなどを配備し、米軍が中国近海まで近寄れない戦略をとる。
米中対立の文脈で尖閣諸島の問題に言及したのも従来の白書にない特徴といえる。米軍の対日防衛義務が尖閣諸島に及ぶと重ねて表明する米国に、中国が「強く反発している」と触れた。
尖閣問題を初めて単独のコラムとして取り上げた。尖閣周辺で領海侵入を繰り返す中国海警局の船の活動を「そもそも国際法違反」と断じた。過去の白書では国際法上の評価は触れず「全く容認できない」などと記しただけだった。
海警局を準軍事組織と位置づけた2月施行の海警法も「国際法との整合性の観点から問題がある」と明確に指摘した。一連の表現からは尖閣周辺での海警局の船の活動がグレーゾーン事態や有事に発展しかねないとの危機感がにじむ。
防衛計画の大綱や中期防衛力整備計画は18年の策定から2年半たつ。防衛白書が記すように、この間の東アジアの安保環境の変化は激しい。台湾や尖閣有事を抑止するためにも防衛力強化の不断の見直しが不可欠となる。
(安全保障エディター 甲原潤之介)
防衛費、GDP1%枠超も視野 中国への抑止力に
防衛白書は9年連続増となった2021年度の防衛関係費も説明した。22年度も増額傾向は続く見通しで、国内総生産(GDP)比で1%以内としてきた目安を超える可能性がある。岸信夫防衛相は1%にこだわらず予算要求する方針だ。
中国が急ピッチで軍備強化を進め、このままでは東アジアで日米と中国の軍事力の差が一層開きかねない。防衛省は日米が連携して防衛力を高めることが中国への抑止力となり、台湾や沖縄周辺での紛争回避につながるとみる。
白書によると20年度の日本の防衛費はGDP比で0.94%となり19年度の0.90%からわずかに上昇した。3%超の米国とロシア、2%超の韓国、オーストラリア、フランスと比べ差は大きい。白書は主要国と比較し「対GDP比は最も低い」と指摘した。
防衛省は予算を増やして離島防衛能力の向上を狙う。島で敵の上陸を阻止する「水陸機動団」の拡充や、装備品や弾薬、食料を運ぶ海上輸送部隊の新設を計画。護衛艦などの新造にも充てる。
東アジアでの中国の軍事的優位が強まるほど、中国と対峙する東シナ海での防衛力強化が重要になる。静音性の高い潜水艦といった日本が優位性を持つ技術への投資も不可欠だ。
現在より探知能力に優れた潜水艦用ソナー開発や、日本周辺の浅い海域を航行する潜水艦の動きを捕捉するためのレーダー、上空から監視する哨戒機やヘリコプターなどの性能向上にも取り組む。
対空戦闘力では最新鋭ステルス戦闘機「F35A」や艦艇からの飛行が可能な「F35B」の購入を進める。現在の主力戦闘機「F15」も電子戦に対応するよう改修する。
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多様な観点からニュースを考える
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渡部恒雄
笹川平和財団 上席研究員
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分析・考察 防衛白書で指摘する一連の中国の拡張姿勢が、直接に日本の生存への脅威となっている状況が明確になり、その意識を米国だけでなく欧州諸国など広く国際社会が共有するようになっているにも関わらず、日本の防衛関係費がGDP比で1%レベルと群を抜いて低いことは、同盟国の米国だけでなく、国際社会からも疑問視されるようになっています。日本自身の防衛努力が地域と世界の安定に貢献し、逆にそれを怠ることは責任を果たさない態度と認識されるという現実を、今回の防衛白書は指摘しているのだと思います。
2021年7月14日 7:40いいね
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岩間陽子
政策研究大学院大学 政策研究科 教授
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分析・考察 「日米が連携して防衛力を高めることが中国への抑止力となり、台湾や沖縄周辺での紛争回避につながる」ここが大事だと思います。抑止とは、戦争が起こる前にそれを防ぐことです。日本が防衛努力をすることは、戦争の可能性を高めるのではなく、低めるのだということを、国民にしっかり理解してもらう必要があります。日本周辺での武力紛争の可能性が高まっているからこそ、抑止を考える必要がある。そのために効果的な防衛費の使い方とはどのようなことなのか、を議論する必要があります。
2021年7月14日 12:34いいね
3 』
英空母と海自護衛艦が訓練 アフリカ沖、海賊対処想定
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODE13BSJ0T10C21A7000000/

『岸信夫防衛相は13日の記者会見で、海上自衛隊の護衛艦せとぎりとP3C哨戒機がアフリカ東部ソマリア沖アデン湾で11、12日に英海軍の最新鋭空母クイーン・エリザベスと共同訓練を実施したと発表した。エリザベスを中核とする空母打撃群は、インド太平洋に向けて長期航海中で、自衛隊との訓練は初めて。
空母に同行している米、オランダ両国の艦艇も加わった。
岸氏は「英、米、オランダと共に、世界の繁栄の礎である海上交通の安全を確保していく意思と能力を示した。今後も、打撃群との共同訓練を戦略的に実施していく」と述べた。
防衛省によると、訓練は海賊対処を想定し、洋上補給や艦艇の写真撮影をした。せとぎりとP3Cは、アデン湾の海賊対処行動に派遣されている。〔共同〕』
中国、防衛白書に反発 「台湾問題に手を出すな」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM1397M0T10C21A7000000/
『【北京=羽田野主】中国外務省の趙立堅副報道局長は13日の記者会見で、2021年版の防衛白書に反発した。「いかなる国が台湾問題に手を出すのも絶対に許さない」と強調した。「強烈な不満を示し、断固として反対する」と話した。
中国海警局の公船が沖縄県・尖閣諸島周辺で領海侵入をくり返している実態について「尖閣諸島とその付属する島しょは中国の不可分の領土だ」と従来の見解をくり返した。今年制定した海警法に関しては「国際法に完全に適合している」と述べた。
日本政府が掲げる「自由で開かれたインド太平洋」の戦略にも触れ「冷戦思考で歴史の後退だ。ゴミの山に捨てられるべきだ」と主張した。
【関連記事】
・防衛白書、台湾有事の日本波及を警戒 島しょ防衛強化
・「台湾情勢の安定重要」 防衛白書に初明記
・中国・習氏「台湾統一は歴史的任務」 党創立100年式典
・中国・習氏「外部の圧迫許さぬ」 強権堅持、人民軍増強 』
日米首脳共同声明の“台湾問題言及”に込められた真の意味
https://www.nippon.com/ja/in-depth/d00728/
※ これは、一読しといた方がいい…。
※ 「台湾問題」と「台湾海峡問題」…。
※ 似ているが、外交用語としては、「明確に、意味が異なる」らしい…。
※ こういう風に、「用語一つとっても」、相手に伝わる「含意」が異なり、お互い「神経すり減らしながら」、こっちの「考えていること」を、時には「明確に」時には「わざと曖昧に」伝え、相手側からも、同様に、考えていることを「受け取ったり」するわけだ…。
※ そういう「やり取り」を重ねながら、お互い「腹(ハラ)の内」を探り合って、「レッドライン」を読み合ったりして行くわけだ…。
※ 北朝鮮のミサイル問題が、盛んだった頃の話しだ…。
※ オレの身内(その時、もう90近い年の婆さんだった)が、テレビのワイドショーを視て、「ストレス」に耐え兼ねたんだろう…。
※ 「さっさと、やってしまえばいいのに…。」と言ったのを聞いて、驚愕した記憶がある…。
※ 90近い婆さんが言う分には、笑って聞き流せば足りる…。
※ しかし、国の舵取りを担っている人々は、そうはいかんだろう…。
※ 国民一人一人の「幸福」「安心安全」を考えて、「辛抱強く」「粘り強く」いかんとな…。


『2021年4月16日の日米首脳共同声明で、日米両国は「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに両岸問題の平和的解決を促す」と台湾問題に言及した。
その背景にはバイデン政権のしたたかな対中戦略が透けてみえる。
この問題は二つの視点から考えることができる。第一は、1969年11月の佐藤・ニクソンの日米首脳共同宣言と2021年の菅・バイデンの日米首脳共同宣言の台湾問題の違いである。前者では、「台湾地域における平和と安全の維持」とし、後者では、「台湾海峡の平和と安定の重要性」としている。ここでの相違は、前者が「台湾地域」としているのに対し、後者では「台湾海峡」としている点にある。
外務省の見解では、「中華民国の支配下にある地域」は「台湾地域」と読み替えている。すなわち、日中国交正常化の時に条件として示された復交三原則のちの「一国一制度」を尊重し、台湾(中華民国)は中国(中華人民共和国)の一部であるとし中国を刺激しない表現をとったのであろう。
一方、「台湾海峡」という海洋上の固有名詞で「台湾地域」という地域名では呼ばなかった。「台湾海峡」はそのもっとも狭い部分で幅130キロあり、海洋法でいう領海は沿岸から22.2キロであるので、台湾海峡のほとんどはどの国の船も航行が自由な国際海峡となり、航行の自由がある。台湾海峡の「安定と重要性」を指摘することで、今後は必要とあれば米国および同盟国は台湾海峡における「自由の航行作戦」などの作戦を展開しうるということを宣言している。
また、21年の日米首脳共同宣言では「両岸問題の平和的解決を促す」という言葉を付け加えている。この表現は05年5月13日の胡錦涛総書記と連戦主席会談に関するコミュニケでも「両岸の平和と両岸関係の安定した発展を促す」という表現を使うなど、この表現は一見、中国を刺激しない柔軟な表現にもとれる。
こういった、いわゆる「台湾条項」をめぐる戦後の日本の対応は、一見矛盾するような日米同盟と日中提携を両立させてきた歴史でもある。日本は1969年11月の日米共同宣言後も中台問題の「平和的解決」という言葉を使ってきた。96年の日米安全保障共同宣言では、日米安保条約の適用範囲を極東からアジア太平洋地域に拡大した。さらに、それに続く日米防衛協力の指針(ガイドライン)の見直し、その後の日米同盟の再定義過程で台湾有事はHidden Agenda(懸案事項)であり続けたが、日米首脳間の公式文書で「台湾」に言及しなかった。
台湾問題言及に込められた意味
しかし、今回は首脳共同宣言で台湾問題を言及した。しかも「(台湾の)安全の維持」より一歩踏み込んだ「(台湾の)安全の重要性」と一歩踏み込んだ言葉を使用している。これは、「両岸問題の平和的解決を促す」という付け加えられた言葉を併せて考えると、平和的な解決であれば認められるが、武力統一は認めないという強い宣言とも受け取れる。
そのために、バイデン大統領は6月9日から8日間の欧州歴訪を行った。民主主義同盟を再活性化することで、対中封じ込めを行うことに狙いがあった。まず英コーンウォールでのG7サミット(先進国首脳会議)に先だち、「特別な関係」である英国のボリス・ジョンソン首相と「新太平洋宣言」を出した。「大西洋憲章」は第二次大戦中、当時のチャーチル英首相とルーズベルト米大統領による戦後処理に関する宣言であり、民主主義体制の基礎となった。
その後、バイデン大統領は台湾に関する「台湾海峡の平和と安定」という同じ表現を日米首脳会談、米韓首脳会談、G7サミットでも使い、中国に警告を発した。そして最後に、バイデン大統領は欧州歴訪の「総仕上げ」としてロシアのプーチン大統領と6月16日に会談した。中国包囲網に集中するため、ロシアとの関係安定化がどうしても必要であった。そして、バイデン大統領は10月に予定されている習近平国家主席との会談に臨む。
民主主義同盟の復活がなるかどうかは、そのシステムへの参加国(G7、NATO、それにインド、韓国等)がどれだけ本気で参加するかどうかにある。特に、イタリア、ドイツ、韓国などの国は中国とかなり深い関係にあり、どう民主主義同盟に貢献させるかが鍵となる。
経済安全保障と軍事的抑止
台頭する中国に対して民主主義同盟ネットワークを再構築して「封じ込め」を狙うのがバイデン政権の「大戦略」だとするならば、それを実行するための「戦略」は第一に外交・安全保障政策目標を経済手段で達成する経済安全保障、第二に軍事的抑止にある。そして、その両者のクラッシュポイントが台湾となる。
バイデン大統領は大統領就任早々の2月24日に「サプライチェーンを見直す大統領令」を出し、半導体などを重要部材とした。具体的には中国のチョークポイントである半導体のサプライチェーンを同盟国とともに構成して、中国をデカップリングすることが目的にある。
半導体はスマートフォン、自動車、近代兵器製品などに用いられ、産業競争力や安全保障に大きく影響する。そして半導体の工場立地別の2020年の生産能力シェアは台湾がトップであり、韓国、日本、中国、米国と続いている。
もし台湾を中国に完全に牛耳られれば、米国にとっては致命傷となる。逆に、米国が台湾を押さえれば、中国を半導体で制することができる。つまり、台湾は米中衝突の舞台となっているわけである。
また、日米首脳共同宣言でバイデン政権から課せられた課題は、日本が経済安全保障を率先して行うことである。この点、中国を米国の定める「ルール化」に従わせる一助を担うことになろう。
しかし、アメリカの「ルール化」が日本の国益にマッチしない場合もでてこよう。それをどうするかがポイントとなる。日本企業の中国への依存度は高く、日本独自の国益に基づく経済安全保障上の「ルール化」が必要となるはずである。そのためには、日米間のルール化交渉がまず必要となり、そのうえで日本独自の経済安全保障政策が展開されるべきであろう。
日本はどこまで関与するのか
バイデンの第二の戦略は中国に対する軍事的封じ込めにあり、具体的には第一列島線(沖縄からフィリピンを結ぶ)の内側に中国を封じ込めることである。その中でも台湾は米軍にとり第一列島線上にある戦略上の要石である。米インド太平洋軍デビッドソン司令官が、米上院軍事委員会で「今後6年以内に中国が台湾を侵攻する可能性がある」という衝撃的な発言を3月9日にしたのは周知の事実である。
台湾を中国に制覇されれば中国海軍は第一列島線を突破し、太平洋に自由に航行ができるようになる。そうなれば、横須賀基地を母港とする空母ロナルド・レーガンにとっては、その目の前に中国漁船や中国海警局巡視船、さらに潜水艦が現れ非常な脅威にさらされる。また、佐世保を母港とする海兵隊の強襲揚陸艦「アメリカ」にとってもしかりであり、在日米軍の再編が考えられるかもしれない。
しかし、台湾有事の場合、米国は台湾を死守するであろうか。この点、昨年に国防総省とランド研究所の台湾をめぐる中米戦争のシミュレーションで、「米国の負ける可能性が高い」というショッキングな報告が出ている。中国の軍備強化に対し、米国だけでの抑止は困難となっており、バイデン政権はクワッド(米日豪印)に加えて英国、フランス、ドイツといったNATO諸国にも応援を依頼する戦略をとる。
また、中国は地上発射式中距離弾道ミサイルを日本に向けて1250基以上保有しているが、米国はゼロである。このため、米国は中距離核戦力(INF)全廃条約を2019年9月に破棄し、対中ミサイル防衛網をつくることを目論んでいる。
デビッドソン司令官はPDI(太平洋防衛イニシャティブ)に基づき、南シナ海や台湾海峡で軍事的圧力を増す中国への抑止力強化を狙い、「第一列島線」に地上配備型ミサイル網を構築すべき」と強調した。その一環として日本列島にミサイル網が張り巡らされれば、台湾への抑止効果が格段上がることとなる。しかしながら、地元がその展開を認めるかどうか大きな課題となろう。
元来、台湾をめぐる日本の対応は、1969年の日米首脳共同宣言以降は変化していなかった。すなわち、台湾有事の際には「事前協議」が日米間で必要とされるが、「もし台湾有事のときに在日アメリカ軍の出撃を拒否するように中国側が申し入れてきてもこれに応じることはない」という取り決めとなっている。このため、台湾有事は日本有事となるわけであり、時間的ロスはないというのがこれまでの解釈である。
ところが、今回の日米共同宣言で日本は台湾防衛へさらなるコミットメントしたことになるが、どこまで貢献できるのであろうか。台湾有事の際には存立危機が認められるのか、集団的自衛権が行使されるのかも問われよう。
バナー写真:海上自衛隊のイージス艦「こんごう」(手前)と米海軍第7艦隊の指揮艦「ブルーリッジ」(奥)の共同訓練=2021年3月29日、東シナ海[米第7艦隊提供](時事)
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