石油も食料も入ってこない…日本の致命傷になり得る「シーレーン封鎖」 安全保障戦略に横串通せ
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/36880

『2025年3月14日
兼原信克(同志社大学特別客員教授)インタビュー
兼原信克( 同志社大学特別客員教授)
鈴木賢太郎( Wedge編集部員)
石油も食料も入ってこない……。シーレーン封鎖はわが国にとって致命傷だ。しかし、日本は〝総合的な〟安全保障が不在だという。どう備えるべきか? 「Wedge」2025年3月号に掲載されている「食料危機の正体 日本の農業はもっと強くできる」記事の内容を一部、限定公開いたします。
「戦争は銃で始まるが、決着をつけるのは常にパンである」
第二次世界大戦中の1943年、米国のフーバー元大統領はこう発言した。安全保障の根幹は、国民の生命と生活を守ることだ。そして、国民の胃袋を満たすことは、万国共通の重要課題である。
しかし、80年前、米国の飢餓作戦に屈した日本は、食料安全保障はおろか、総合的な安全保障戦略を立案しないまま、今日まで至っている。
島国である日本は、国内総生産(GDP)で500兆円規模の経済を回すエネルギーとカロリーベースで62%の食料を輸入しており、そのほぼ全てを海運業界に依存している。そして、エネルギー安全保障と食料安全保障は、結局のところ、海上交通路(シーレーン)の安全問題に帰着する。
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ここ数十年で憂慮すべき事態は、台湾有事の発生懸念である。中国は台湾統一のために、台湾軍の屈伏を図るだろう。
まず想定されるのは、台湾周辺の海底ケーブルを切断し、政権中枢への情報を遮断することだ。その後、発電所やダムといった重要インフラや金融システムにサイバー攻撃を仕掛け、台湾全土を混乱に陥れる。現代版の「大空襲」である。
次の段階で狙われるのがシーレーンだ。台湾は日本と同様、海に囲まれており、エネルギーと食料の自給率が低い。中国は原油備蓄タンク、タンカーへのミサイル・ドローン攻撃や台湾周辺及び西太平洋での潜水艦攻撃、機雷の敷設など、シーレーンの封鎖により台湾の継戦能力を断つことが想定される。』
『シーレーンの封鎖は日本の命運を左右することになる。今も紅海でのフーシ派の攻撃のために、多数の船がスエズ運河を避けて喜望峰を経由している。台湾有事となれば、台湾周辺だけでなく、東シナ海や南シナ海、セレベス海、スールー海が戦闘海域となり、マラッカ海峡・ロンボク海峡も使えなくなる。国民はパニックになり、日本国内は相当に混乱するであろう。
商船が一隻でも撃沈されれば
迂回航路は大回りに
GDP世界第4位の日本経済を支えているのは、わずか4000隻の船舶である。そのうち、約6割にあたる2206隻を日本商船隊が担い、そのうち、日本の法律に則り運航される日本籍船は285隻で、全体の約13%しかない(22年の年央ベース)。そして、残りのおよそ9割が外国籍船で占められている。さらに、日本商船隊の運航のほとんどはフィリピン人船員が担っている。
台湾周辺が戦闘水域に指定され、機雷が敷設されたり、潜水艦が航行したりしている状況では、海上保険会社は船舶保険の付保を拒否し、船主は一斉に船を引き揚げるだろう。政府が保険をカバーするとしても、商船隊は太平洋を大きく東側に回り、いったん十分に北上して中国潜水艦の攻撃をかわす以外に方法はない。仮に1隻でも商船が撃沈されれば、その海域を避けて迂回航路はさらに大回りとなる。最悪の事態は、豪州の南極側を通り、小笠原諸島東部を回る大迂回路となり、数千キロ・メートルの大回りを余儀なくされる。時間もお金もエネルギーも大きく浪費することになる。しかも機雷は戦争が終わるまで撤去できない。また終わってもすぐには撤去できないため、影響は長期間にも及ぶ。
食料に限っていえば、
※こちらの記事の全文は「食料危機の正体 日本の農業はもっと強くできる」で見ることができます。』









