

日米も抜けたが「脱石炭」に署名した韓国、海外メディア「驚く」…韓国政府「履行の約束でない」
(2021.11.08 08:07)
https://japanese.joins.com/JArticle/284569?sectcode=210&servcode=200
『英グラスゴーで開催されている国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で韓国政府が4日に「グローバル脱石炭声明」に公式署名した後の説明が論議を呼んでいる。政府が「脱石炭加速化という方向性に同意したのであって、合意事項にすべて従うというわけではない」と説明すると、専門家らは「国際社会に約束しておいて履行できないこともあるというのは理解しがたい」と指摘している。
これに先立ち韓国はCOP26で約40カ国と共に「主要経済国は遅くとも2039年までに石炭火力発電を中断する」という内容の脱石炭声明に参加した。政府代表で文勝ウク(ムン・スンウク)産業部長官が、地域単位では丘満燮(ク・マンソプ)済州道(チェジュド)道知事権限代行がそれぞれ署名した。
しかし中国・インド・オーストラリアなど世界最大の石炭消費国と2035年までに発電部門で脱石炭をするという米国、そして日本は参加しなかった。米経済専門誌フォーブスは韓国の署名について「驚く発表」とし「韓国は2030年代に石炭発電を完全に廃止する」と伝えた。
ソウル大のホン・ジョンホ環境大学院教授は「現在、韓国は新規石炭発電所7基を建設中で、このうち江原道高城(コソン)と忠清南道舒川(ソチョン)の2基は稼働を始めた」とし「新規発電所に関する具体的な代案なしに国際会議で脱石炭時期を大幅に操り上げる宣言に参加したのは一貫性がない」と指摘した。
西江大のイ・ドクファン化学科教授は「『国際声明に参加だけして合意事項は遵守しなくてもよい』という態度は国の格を落とす」とし「脱原発を推進しながら脱石炭時期を操り上げるというのは最初から不可能な約束」と話した。
現在、韓国の石炭発電比率は40.4%(2019年基準)で、米国(24%)・日本(32%)・ドイツ(30%)よりも高い。これを中断するには大規模な代替エネルギー源の確保が必須だ。
産業部の関係者は「声明には『主要経済国は2030年代までに、残りの国は2040年代までに脱石炭をする』となっている」とし「我々はすでに2050年までに石炭火力発電を廃止することにしたので(主要経済国でなく)2040年代に脱石炭をすることにしたその他の国に該当するとみている」と話した。声明で韓国を「2030年代に脱石炭をする国」と明示してはいないという釈明だ。そして「脱石炭の時期を2030年代に繰り上げることも、そのような計画もない」と明らかにした。』
中国製EV、日本の宅配業者にじわり浸透-圧倒的な低価格武器に
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-01-16/R5O8RQT0G1KW01

『コロナ禍での宅配需要の高まりを受け、SGホールディングスが運営する佐川急便など日本の宅配業者が配送用の車両として中国製の電気自動車(EV)を活用するケースが増えている。地域の集配所から届け先までの短距離であれば航続距離も問題になりにくく、コスト削減を重視する業者の選択肢に入るようだ。
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SBSホールディングスが使用を予定している中国製EVトラック
首都圏の「即日配送」を売りに急成長したSBSホールディングスは、東風汽車集団系など中国の自動車メーカーが生産するEVトラックの導入を予定している。同社は今後5年で自社の車両2000台をEVに置き換えるという。佐川急便は広西汽車集団が生産する7200台の低価格EVを活用する。
SBSの鎌田正彦社長は、中国製EVを導入した理由について日本のEVが自社が求めるコスト基準に満たなかったためだとしている。さまざまな国内自動車メーカーと話したものの「価格が下がらない。どうやっても無理だ」と言われたため、安い車を選んだと説明。「高いトラックがあるから運賃を値上げしてくださいとは言えない」と話した。
新型コロナウイルスの感染拡大により自宅で過ごす時間が増えたことで日本でもインターネットを通じた商取引が急増した。それに加えて日本政府が2050年までに13年比で温室効果ガスの排出量を46%減とする目標を掲げたことで、今後は国内でもEVの普及ペースが速まる可能性がある。
SBSは最終的には約1万台の商用EVバンを保有する計画。こうした小型のトラックは一回の満充電で200キロメートルの走行が可能で、価格は380万円程度という。
SBS即配サポートの総務部次長、宮原朗氏は数年にわたって使用した場合の電池の性能については心配だとした上で、現状では夜間に12時間充電すれば問題はないとの認識を示し、宅配業者が「ラストワンマイル」で使用する分には航続距離は大きな問題にならないと述べた。
中国の自動車メーカーはEV比率が非常に低い日本の市場に可能性を見出している。米著名投資家のウォーレン・バフェット氏が出資するBYDは既に日本のEVバス市場で約7割のシェアを握っており、 30年までに4000台を普及させることを目指している。
EV推進に向けて中国政府が多額の補助金を出していることもあり、EVの平均購入価格は欧米で上昇しているのに対して中国では下落している。自動車市場に関するデータ会社である英ジャト・ダイナミクスは昨年8月のリポートで、中国ではEVの新車が最も安い場合で4200ドル(約50万円)で買えるのに対し、欧州では1万7880ドル、米国で2万8170ドルと大きな開きがあった。
かつて隆盛を誇ったものの中国製の安い製品に駆逐されて没落した日本の家電産業の連想から、国内自動車メーカーの先行きを悲観視する向きもあるが、高い安全性が求められる車では信頼性で不安が残る中国製が市場を席捲することは難しいという声もある。
日本の自動車メーカーには、このまま何もしなければ中国勢にやられてしまうという高い危機感があるとSBSの鎌田氏はみている。一方で自動車調査会社、カノラマの宮尾健アナリストは現時点では中国のEVメーカーに価格面で優位性があるが、「3年後も最先端でいられるかは全くわからない」と述べた。
日本のトラックメーカーも対策を取り始めている。いすゞは22年にEVトラックの量産を始める予定。日野自動車は今年の初夏に「日野デュトロ Z EV」を市場投入する。それに先立ち、国内宅配最大手のヤマトホールディングスと共同で日野製のEVを用いた温室効果ガス削減効果や集配業務の効率性の実証にも取り組む。
SBSの鎌田社長は日本勢のEVトラックの価格はこれまでのディーゼルのトラックに比べて3倍程度になると見込まれるとし、物流企業のコストに見合うのは難しいだろうと述べた。』
ウイグル自治区トップ交代、習近平の狙いは新疆「デジタル経済と太陽光パネル」基地
https://news.yahoo.co.jp/byline/endohomare/20220103-00275457

『昨年12月25日、新疆ウイグル自治区の書記に広東省の馬興瑞省長の就任が決まった。深圳をハイテク都市にした馬興瑞の辣腕を、今度は新疆で発揮させ、アメリカから制裁を受けている分野を逆手に取っていく戦略だ。
◆馬興瑞が新疆ウイグル自治区の新書記に
中国政府の通信社である新華社は12月25日、中共中央が「新疆ウイグル自治区の党委員会のトップに関して職務調整を行った」と発表した。それによれば、これまで新疆ウイグル自治区の書記を務めていた陳全国に代わって、馬興瑞が新しい書記になるとのこと。同日、中共中央組織部副部長が出席する形で新疆ウイグル自治区は幹部会を開催し、陳全国や馬興瑞などがスピーチを行っている。
馬興瑞のスピーチで注目すべきは「私は習近平総書記の熱意を込めた依頼をしっかり心に留め」という言葉と、「苦労して勝ち取った新疆の安定を決して逆転させないことを誓う」および「そのために人民を中心として質の高い経済発展を促進する」という決意だ。
◆馬興瑞が持っている特殊な才能
馬興瑞(62歳)は工学博士で教授、国際宇航(宇宙航行)科学院の院士でもあり、「若き航空元帥」という綽名さえ持っていた。そのため2007年から2013年3月まで中国航天科技集団公司の総経理を務めていただけでなく、中国有人航天工程副総指揮や中国月探査工程副総指揮(2008年11月から2013年3月)をも兼任していた。
2013年には目まぐるしい変化があり、3月に突然、中央行政省庁の一つである「工業と信息(情報)化部」の副部長(副大臣)や国家航天局(宇宙局)局長など、行政方面への職位を与えられた。だというのに11月になると習近平は突如、馬興瑞を広東省(中国共産党委員会)副書記に任命したのだ。
異常な人事異動だ。
2015年から2016年までは深圳市の書記なども兼任しながら、2017年には広東省(人民政府)の省長に任命されている。途中はあまりに細かく複雑で兼任が多すぎるので省略する。
広東省にいる間に最も注目しなければならないのは、馬興瑞は広東省の凄まじい経済発展に貢献しただけでなく、中国のシリコンバレーといわれるほどの深圳を、さらにハイテク化に向けて磨きをかけ、アメリカに脅威を与えるレベルにまで成長させたことだ。
広東省が如何にすさまじい発展を遂げたかに関して、おもしろいYouTube「中国各省区市 歴年GDP変化」がある。1978年から2020年までの中国の省や自治区および直轄市などの各行政地区におけるGDPのランキングを追っている。最後は広東省が中国一になっていく様子をご覧いただきたい(出典は「史図書」、個人の動画投稿者が作成)。
◆「中国製造2025」発布時期と一致
一方、2012年11月15日に中共中央総書記に就任した習近平は、翌12月に最初の視察先として深圳を選んだ。そこは父・習仲勲が「経済特区」と命名して開拓した地。鄧小平の陰謀によって16年間に及ぶ監獄・軟禁生活を強いられたあとの習仲勲の仕事への奮闘ぶりはすさまじかった(詳細は拙著『習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』)。
その深圳で誓いを立てたかのように、習近平は北京に戻るとすぐにハイテク国家戦略「中国製造2025」に手を付け始めた(詳細は拙著『「中国製造2025」の衝撃 習近平は何を狙っているのか』)。
思うに、おそらくこの線上で、突如、馬興瑞を広東省に派遣することを習近平は決めたのだろう。だから異動のさせ方が尋常でない。
そしてこのたびの新疆行きで、馬興瑞は「質の高い経済発展を促進する」と言っている。これはいったい何を意味しているのだろうか?
◆新疆デジタル経済の急成長
2021年1月21日、新華網は<新疆デジタル経済は去年の10%増で、新疆GDPの26%を占める>と発表している。そこには以下のようなことが書いてある。
●5GやAIあるいはビッグデータなどの次世代情報技術と実体経済を融合発展させたことが奏功した。
●新疆では昨年(2020年)、長城(科技)集団(中国最大の国有IT企業グループ。深圳)や中科曙光(中国スーパーコンピュータ大手)が投資してウルムチ工場が稼働し、(新疆)ウルムチの情報技術イノベーション産業基地の構築を加速させた。
●(新疆)コルガス市の半導体チップ・パッケージング・テストプロジェクトの大規模生産が実現した。
●新疆ソフトウエア・パーク第1期に230企業がパーク入りした。
●新疆における5G基地局数はこれまでに6272カ所となり、5Gユーザー数は275万世帯に達した。新疆における産業インターネットの活用は新エネルギー、石油・天然ガス採掘、電力、設備製造など20余りの重点産業に広がり、デジタル化設計やスマート製造、ネットワーク連携などの新モデルが急速に普及している。
●デジタル経済大発展を推進することは、新疆の経済社会デジタル化を全面的に転換させる重要な転換点であり、エネルギーと化学、繊維と衣服、機械と設備、採掘産業などの主要産業で両者の深い統合を促進する(概略引用はここまで)。
このように新疆ウイグル自治区は、実はデジタル経済に関して意外なほど力を注ぎ、急成長しているのである。
◆アメリカが制裁対象とした新疆の太陽光パネル企業
それだけではない。
2021年6月24日、アメリカ商務部は太陽光パネルの材料などを生産する新疆ウイグル自治区の企業5社について、「強制労働や監視活動など、人権侵害に関わった疑いがある」という理由で、制裁リストに入れた。これら5社は今後、アメリカ企業との取り引きができなくなる。
中国は太陽光パネルの世界最大の生産地だが、パネルの材料の1つであるポリシ
リコンの多くが新疆ウイグル自治区で生産されていることがアメリカ議会で問題視された。つまり「新疆の太陽光パネルが廉価なのは、強制労働をさせているからだ」ということが問題になったのだ。
世界のシリコン生産量は中国が最大で、世界の67.9%を生産している。
工業用シリコンは、中国の中でも水資源などが豊富で水力発電が進んでいる四川省や雲南省が半分ほどを占め、20%を新疆ウイグル自治区が占めている。
なぜなら工業用シリコンは莫大な電気量を消耗するので、埋蔵量以外に、電力供給が豊潤な地域でないとコストが高すぎて採算が合わない(雲南:数百本の川がある。四川省:長江など水資源が豊富。新疆:もともと石炭埋蔵量が多く、イリ川などを利用。加えて中国最大の石油・天然ガス中継点)。
工業用シリコン生産過程の総コストの30~40%は電力である。
新疆産の太陽光パネルが安価なのは電力が安価だからだ。
新疆・四川・雲南の電気代は1kWh当たり(日本円に換算すると)「5.44円」であるのに対し広東省は「10.8円」、上海は「17.58円」だ。中国国内でも差がある。それが太陽光パネルの価格に反映している。ちなみに東京電力の業務用電力は1kWh当たり「 17円前後」だ。上海と変わらない。
新疆では特にポリシリコン製造に特化し、太陽光パネルを大量に生産している。
となると、その太陽光パネルによる電力をポリシリコン製造に使えるので、まるで自己増殖的な生産サイクルが出来上がり、安価な太陽光パネルを生産できるのである。
アメリカのウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は「アメリカで販売されている太陽光パネルの約85%は輸入品で、その多くは中国企業が製造している」とした上で、「2035年までに電力網をカーボンフリーにしたいと考えているバイデン政権にとって、中国の太陽光パネル産業を制裁ターゲットにするのは難しいのではないか」と報道している。
さらに業界団体や関係者は「世界で販売されている太陽光パネルの大半は、中国の技術に依存している。中国はサプライチェーンのすべての部分、特に太陽光パネルの原料となるシリコンウエハーの生産において、リーダー的存在だ」と言っていると、WSJは懸念を伝えている。つまり、中国の太陽光パネル関連企業を制裁リストに入れることによって最も困るのはアメリカではないかという疑念を呈しているのだ。
◆習近平は馬興瑞に「新疆デジタル経済と太陽光パネル基地」建設を期待
アメリカからの制裁を受ける中、習近平は新疆ウイグル自治区を経済発展させることによってアメリカの対中非難に勝とうとしていると推測される。
それもハイテク国家戦略「中国製造2025」に沿ったもので、深圳が「中国のシリコンバレー」と呼ばれるまでに成長したのと同じように、馬興瑞の実力を頼りに、新疆ウイグル自治区を「デジタル経済」と「太陽光パネル生産」の基地として発展させようと狙っていると思われるのである。
そうでなくとも中国は国土面積が広く、1990年代から遠隔教育を推進させていた。雲南省にいても新疆ウイグル自治区にいても、北京や上海の大学で行っている講義をリモートで聞くことが出来るシステムを、世界銀行などの支援を得て構築していたし、時にはスタンフォード大学の講義を中国で聞くこともできるシステムさえ進めていた。
ネット通信が発達し、特にコロナによりリモート勤務が世界的に進んだ今、中国におけるデジタル経済のニーズは増している。
デジタル社会を可能ならしめるには、大量の電力が必要になる。
その電力もクリーンエネルギーが奨励される中で、太陽光パネルは願ってもない手段だ。
中国には「西気東輸」とか「西電東送」といった言葉があるが、これは西部大開発において1990年代から唱えられ、2000年前後に始まった、「西部にある石油や天然ガスなどのエネルギー源や電力を、経済発展著しい東沿海部の都市に運ぶ」という中国全土を覆ったネットワークである。これによって電力不足を補い、停電などによって生産ラインが止まるのを防いでいた。特に「西気東輸」の起点は新疆ウイグル自治区にあるタリム盆地だ。
クリーンエネルギーが叫ばれる今、新疆ではレアアースが埋蔵しているだけでなく、太陽光パネルが生み出す、有り余る電力を、「西気東輸」や「西電東送」の考え方と同じように中国全土の電力補給に使っていこうという戦略が、このたびの新疆ウイグル自治区トップ交代の意味である。
アメリカが新疆にある太陽光パネル企業に下した制裁は、「アメリカへの輸出を禁じる」という内容だ。習近平としては、アメリカに輸出できないというのは大きな痛手ではなく、むしろ中国国内における電力不足からくる社会不安を緩和する方向に電力を振り向けていこうというのが、馬興瑞を新疆に送った事実から見えてくる国家戦略なのである。
国内で使うのに、「それは強制労働による電力だろう」という批難をアメリカから受ける可能性はゼロで、むしろウイグル族の人々がクリーンエネルギー生産に従事してデジタル経済を推進していくことになれば、世界からの批難が少なくなるだけでなく、新疆に経済的繁栄をもたらすので、テロなどイスラム教徒が起こす傾向にある反乱を和らげる働きをするだろうと、同時に計算している側面がある。
◆「新疆‐アフガン列車」でイスラム圏アフガンの統治能力を世界に示す
というのも、2021年9月8日に王毅外相がアフガニスタンの外相と話し合い、「新疆―アフガニスタン専用貨物列車」の復活を提唱したのだが、11月20日には、実際に開通したと、中国共産党の機関紙「人民日報が報道した。アメリカはイスラム教圏であるアフガニスタンの統治に失敗したが、中国は同じくイスラム教を信じるウイグル族とアフガニスタンの経済を成長させることによって、中国の方がアメリカの統治能力を凌駕するというメッセージを発信したいものと位置付けることが出来る。
習近平は米中覇権競争を、経済で絡め取って、中国の勝利に持って行こうとしているのだ。
ただ、本来ならば2022年秋に開催される第20回党大会あたりで発表するはずの人事異動を前倒ししたのは、停電や不動産開発産業が招く社会不安を回避するだけでなく、西安政府の管理能力の欠如によるコロナ再感染を防ぐための不手際に対する中国政府への不信感を払拭する狙いもあるのではないか。
2022年に開ける新たな幕のゆくえを見逃さないようにしたい。
本稿は
中国問題グローバル研究所のウェブサイトからの転載である。』
原子力・天然ガスは「持続可能」 欧州委が方針
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR0204G0S2A100C2000000/

『【ブリュッセル=竹内康雄】欧州連合(EU)の欧州委員会は1日、原子力と天然ガスを脱炭素に貢献するエネルギーと位置づける方針を発表した。一定の条件下なら両エネルギーを「持続可能」と分類し、マネーを呼び込みやすくする。世界の原子力政策にも影響を与える可能性がある。
「EUタクソノミー」は、どんな事業が持続可能(サステナブル)かを分類する制度だ。EUが掲げる「2050年までに域内の温暖化ガスの排出を実質ゼロにする」ことを柱とする環境関連の目標に、貢献する経済活動かどうかを示す基準と言える。
この基準に沿った事業には投資家は安心して投資できる一方、EUには民間マネーを呼び込み、排出削減目標の達成を後押しする狙いがある。欧州委は排出削減目標の達成には30年までの毎年、官民合わせて少なくとも3500億ユーロ(約46兆円)の追加投資が必要とはじく。
持続可能と分類されない事業が禁止されるわけではないが、資金集めなどで不利になる可能性が高い。EUは企業や金融機関にタクソノミーの基準を満たす事業や商品の売上高に占める割合などの情報開示を求める構えで、同制度を前提としたルール作りがすでに始まっている。環境配慮をうたっているにもかかわらず、実態は伴っていない「グリーンウオッシュ」を排除する狙いもある。
自動車の二酸化炭素(CO2)排出など気候変動関連の基準は公表済みで、一部は適用が始まった。だが原子力と天然ガスは関係者の対立から合意に至っていなかった。原子力発電は稼働中にCO2を排出しないが、有害な放射性廃棄物が出る。天然ガスは石炭に比べればクリーンだが、CO2を出すのには変わりない。
欧州委は1日の発表文で未来へのエネルギー移行を促進する手段として「天然ガスと原子力の役割がある」として、両エネルギーを持続可能と位置づける考えをにじませた。
日本経済新聞が入手した原案によると、原子力は生物多様性や水資源など環境に重大な害を及ぼさないのを条件に、2045年までに建設許可が出された発電所を持続可能と分類する方針を示した。
天然ガスは①発電1キロワット時あたりのCO2排出量が270グラム未満②CO2排出の多い石炭の代替とする③30年までに発電所の建設許可を得る――などを条件に持続可能と認める。
原子力依存度の高いフランスやフィンランドに加え、石炭への依存度が高い東欧諸国が原子力やガスをタクソノミーに含めるよう訴えていた。ポーランドは電源構成に占める石炭の割合が約7割を占め、排出減には原子力とガスが欠かせないと主張していた。
欧州委は昨年12月31日から加盟国や専門家との協議を始め、1月中にも欧州委案を公表する考えだ。その後、加盟各国との議論や欧州議会での審議を経て成立する流れだが、曲折がありそうだ。
例えば脱原発を決めたドイツやオーストリアなどが原子力を持続可能と分類することに反対しているほか、欧州議会でも緑の党を中心に根強い反発がある。欧州では環境系の非政府組織(NGO)の発言力も大きい。
EUタクソノミーは域内で事業をする企業などが対象になる。だが影響は日本を含む世界に及ぶ可能性がある。EUの基準を満たさない事業や商品はEUでは価値が下がるのは確実で、EUに売り込みにくくなるばかりか、EUの投資家からの資金を集めにくくなる。
【関連記事】
・EUタクソノミーとは 環境配慮の経済活動を認定
・欧州に原発回帰の動き 脱炭素・エネ安保で、日本は停滞 』
再生エネ普及へ送電網、2兆円超の投資想定 首相が指示
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA231B10T21C21A2000000/


『政府は再生可能エネルギーの普及のために次世代送電網を整備すると打ち出す。都市部の大消費地に再生エネを送る大容量の送電網をつくる。岸田文雄首相は2022年6月に初めて策定する「クリーンエネルギー戦略」で示すよう指示した。総額2兆円超の投資計画を想定する。政権をあげて取り組むと明示して民間の参入を促す。
【関連記事】北海道―本州に海底送電網構想 「洋上風力銀座」現実味
日本は大手電力会社が各地域で独占的に事業を手掛けてきた。送配電網も地域単位で地域間の電力を融通する「連系線」と呼ぶ送電網が弱い。
再生エネの主力となる洋上風力は拠点が地方に多く、発電量の変動も大きい。発電能力を増強するだけでなく消費地に大容量で送るインフラが必要だ。国境を越えた送電網を整備した欧州と比べて日本が出遅れる一因との指摘がある。
①北海道と東北・東京を結ぶ送電網の新設②九州と中国の増強③北陸と関西・中部の増強――を優先して整備する。①は30年度を目標に北海道と本州を数百キロメートルの海底送電線でつなぐ。
平日昼間に北海道から東北に送れる電力量はいま最大90万キロワット。新たに北海道から東京まで同400万キロワットの線を設ける。合わせて30年時点の北海道の洋上風力発電の目標(124万~205万キロワット)の3~4倍になる。
九州から中国は倍増の同560万キロワットにする。10~15年で整備する。
送電網を火力発電が優先的に使う規制を見直し、再生エネへの割り当てを増やす。送電方式では欧州が採用する「直流」を検討する。現行の「交流」より遠くまで無駄なく送電できる。
新規の技術や設備が必要になり、巨大市場が生まれる可能性がある。一方で国が本気で推進するか不透明なら企業は参入に二の足を踏む。
菅義偉前首相は温暖化ガス排出量の実質ゼロ目標などを表明し、再生エネをけん引した。岸田氏も夏の参院選前に「自身が指示した看板政策」として発表し、政権の公約にする。国の後押しを約束すれば企業も投資を決断しやすい。
電気事業者の関連機関の試算では投資は総額2兆円超になる。主に送配電網の利用業者が負担する。必要額は維持・運用の費用に利益分を加えて算定する。欧州と同様、コスト削減分を利益にできる制度も導入して経営努力を求めながら送電網を整える。
英独やスペインは再生エネの割合が日本の倍の4割前後に上る。欧州連合(EU)は復興基金を使って送電網に投資し、米国は電力に650億ドル(7.4兆円)を投じる。
【関連記事】
・エネ転換で製造業後押し 経産省、6月に工程表
・再生エネ活用へ火力発電抑制 経産省、供給超過時に 』
『 多様な観点からニュースを考える
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。
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高村ゆかり
東京大学未来ビジョン研究センター 教授
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別の視点
2020年8月から、電力広域的運営推進機関(OCCTO)で、送配電網=系統をより長期的な視野をもって効率的に「プッシュ型」の系統整備を行うためのマスタープランが検討されている。
2021年5月の中間整理 https://www.occto.or.jp/iinkai/masutapuran/2021/files/masuta_chukan.pdf にもあるように、複数のシナリオ、想定を置いて検討を行い、これらの増強候補案は複数のシナリオで費用対効果が大きいとされた。
広域融通の促進は、再エネ導入拡大、CO2削減効果だけでなく、上記の費用便益分析には含まれていないが、需給逼迫時、災害時などのレジリエンスも高めることが期待できる。事業コストの精査は不可欠だが、事業と投資の経済効果を含め、長期でマクロな観点から国は明確な方針を早く示してほしい
2022年1月3日 14:45
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竹内純子
国際環境経済研究所 理事・主席研究員
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ひとこと解説
日本は小さな系統の集合体なので送電線のボトルネック解消は重要ですし、再エネを活用する良いことのようにみえるのですが、無駄な設備投資をしそうな匂いがかなり強い。
電力広域的運用推進機関でマスタープラン検討することになっているので、その場を利用してオールジャパンで、様々なシナリオに対するシミュレーションや費用便益評価をやり、それを踏まえた投資計画であるべき。
本来、再エネは「地産地消」をうたい文句にしていたのであり、そうした動きも徐々に生まれつつある。そうした動きにこそ新しい産業の芽がある。安定供給とコスト低減を両立するかに知恵を絞ることが大切で、まずは費用便益評価に基づいた議論をすべき。
2022年1月3日 11:49 』
テスラ、米で47万台超リコール 20年世界販売に匹敵
トランク開閉に不具合
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN3049T0Q1A231C2000000/

『【シリコンバレー=白石武志】米運輸省高速道路交通安全局(NHTSA)は30日、電気自動車(EV)大手の米テスラが小型車「モデル3」と高級セダン「モデルS」のトランク開閉に関連する不具合に対処するため計47万台超をリコール(回収・無償修理)すると発表した。同社が一度に実施するリコールとしては過去最大で、2020年の年間世界販売台数に匹敵する規模となる。
【関連記事】
・テスラ、画面不具合で13.5万台リコール
・米当局、テスラの運転支援システムを正式調査
理由は車種によって異なる。モデル3については後方トランクの開閉によってケーブルが損傷し、運転席のディスプレーに後方カメラの画像が表示されない可能性がある。モデルSでは前方トランクの掛けがねに不具合があり、走行中にフードが警告なしに開いて運転手の視界を妨げ、衝突の危険性を高めるおそれがある。
リコール対象台数の内訳は17~20年式のモデル3が35万6309台、14~21年式のモデルSが11万9009台。NHTSAは不具合に関連する衝突や負傷、死亡事故をテスラは認識していないと説明している。
テスラはリコール実施について日本経済新聞のコメント要請に応じておらず、回収・無償修理にかかる費用などは明らかになっていない。30日の米国市場でテスラ株は取引開始直後に前日終値に比べ一時3%安をつけた。
テスラは運転席のディスプレーの不具合についてもNHTSAの指摘を受け、21年2月に約13万5000台のリコールに合意している。同社の運転支援システム「オートパイロット」についても衝突事故が相次いだことを受けて、米当局は8月に安全性を正式に調査すると表明している。
』
EU、貿易×環境で途上国に圧力 4.5億人市場が武器
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR06CRV0W1A201C2000000/

『欧州連合(EU)が貿易と環境を組み合わせて途上国に圧力をかけ始めた。約4億5千万人の巨大市場へアクセスする条件として十分な気候変動対策をとるよう迫る。世界の地球温暖化対策を推し進めるとともに、EUの国際社会での存在感を高める狙いがある。
11月半ば、EUの欧州委員会は森林破壊に関与する形で生産された大豆や木材、パーム油、コーヒーなどの輸入を停止できる規制案を公表した。
企業に製品がどこで生産されたか申告を義務付け、加盟各国が衛星写真や書類で森林破壊・劣化が起きた地域で生産されていないかを確認する。確認できなければEU側の輸入を認めないとの提案だった。
大気中の二酸化炭素を吸収する森林の減少に歯止めをかけるためで、各国に森林保護策を促す。ブラジルや東南アジアの一部が念頭にある。
ブラジルは「消費者のためにならない」と批判するが、EUではボルソナロ政権が違法伐採などに十分な対策を講じていないとの不信感がある。2021年7月までの年間森林(熱帯雨林)減少率は前年同期比22%と過去15年で最大だった。
19年6月に政治合意したEUと、ブラジルなど南米南部共同市場(メルコスル)との自由貿易協定(FTA)は、ブラジルの森林保護への対応が不十分として批准手続きは止まっている。
9月には欧州委は途上国に付与する特恵関税の改革案を公表した。より幅広い製品で関税ゼロが適用される恩恵を受けるには、途上国は従来の人権や労働に関する条約に加え、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」を批准しなければならない。条約違反の場合は関税ゼロの適用を停止する手続きも新たに設ける。
EUが立て続けに厳しい対応を打ち出した理由を探ると、通常の国家ではないEUが国際社会でどう存在感を高めるか工夫をこらした跡が透ける。それをひもとくのは2月に公表された政策文書にある。
「EUの利益を最大にする具体策をとる」。欧州委のドムブロフスキス上級副委員長(通商政策担当)は力説した。EUの貿易政策を説明する際に「開かれた」「持続可能な」という従来の修飾語に「主張する(assertive)」を加えたのだ。加盟国から移譲され、EUの裁量が大きい通商分野での権限をフル活用する戦略だ。
極め付きは7月に制度案が公表された「国境炭素税」と呼ばれる国境炭素調整措置だ。環境対策が不十分な国からの輸入品に事実上の関税をかける構想で、EU並みの環境対策を求める。
軍事力に乏しいEUにとって、他国と対峙する際の最も有効な手段は高所得の約4億5千万人の市場を抱える経済力にほかならない。基準に沿わない製品の輸入を認めなければ、域外企業は製品を輸出できなくなり、従わざるを得ない。
ましてやその名目は環境対策だ。「保護主義的」「一方的」との批判は出るものの、「地球環境を守るため」と言えば反論しにくい。だが狙いは他国に気候変動対策を促すことだけではない。
一つは域内外の競争環境を公平にすることだ。EUは高い目標を達成するために厳しい環境規制を敷いており、企業の負担が大きい。緩い規制のもとではコストは小さくなり、同じ製品をつくるのでも企業の価格競争力に差が出てしまう。
もう一つは米中に並ぶグローバルなプレーヤーに躍り出ることだ。EUは世界に先駆けて先進的な規制を導入し、世界標準にするルール形成で存在感を発揮してきた。今回はその半歩先に踏み出す。EU高官は「我々の武器は貿易だ」と明かす。
さらにEU内にはこの考え方を環境だけでなく、他分野にも広げる計画がある。例えば、EUに敵対的な行動をとれば、貿易や投資、知的財産権などを制限して事実上の制裁を加える案だ。
EUの外交政策は全会一致が原則だが、通商政策は欧州委が主導できる。加盟国からの反発も予想され、実現は容易ではない。それでも確固たる指導力を示そうと、着々と歩を進めている。
(ブリュッセル=竹内康雄)』