イラン「イスラエルが国際法違反」 報復示唆、緊迫増す
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR01DE40R00C24A4000000/
『2024年4月2日 5:18 (2024年4月2日 22:51更新)
【ロンドン=岐部秀光、ドバイ=福冨隼太郎】イランメディアは1日、イスラエルがシリアの首都ダマスカスにあるイラン大使館周辺を空爆したと報じた。イランは外交施設への攻撃は国際法違反として報復を示唆した。本音では直接の衝突を避けたい意向とみられるが、中東で緊迫度が増す恐れがある。
イランの最高指導者ハメネイ師は2日の声明でイスラエルに対して「邪悪な政権は罰せられるだろう。罪を犯したことを後悔させる」と…
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『イランの最高指導者ハメネイ師は2日の声明でイスラエルに対して「邪悪な政権は罰せられるだろう。罪を犯したことを後悔させる」と警告した。ライシ大統領も同日「このひきょうな犯罪が放置されることはない」とする声明を出した。
イラン革命防衛隊は1日の声明で、攻撃により同隊幹部2人を含む7人が死亡したと明らかにした。
イランメディアによると死者には精鋭部隊「コッズ部隊」の司令官が含まれる。イランはシリアのアサド政権を支援しており、革命防衛隊の幹部らを顧問などとして同国に派遣している。
イラン革命防衛隊は1日の声明で、攻撃により同隊幹部2人を含む7人が死亡したと明らかにした。イランメディアによると死者には精鋭部隊「コッズ部隊」の司令官が含まれる。イランはシリアのアサド政権を支援しており、革命防衛隊の幹部らを顧問などとして同国に派遣している。
イランメディアはシリア人の市民6人が死亡したとも伝えた。死者は革命防衛隊と合わせて計13人となった。
イランの駐シリア大使は、イスラエルの戦闘機がミサイル6発を使って大使館に隣接する領事関係部門の建物を攻撃したと説明した。
イスラエルは公式にはコメントを拒否しているが、米紙ニューヨーク・タイムズは4人のイスラエル当局者が匿名で自国の攻撃だと認めたと報じた。
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イスラエルとイランの軍事的な挑発行動は、2023年10月のパレスチナ自治区ガザのイスラム組織ハマスとイスラエルの衝突発生の前からあった。
衝突後もイスラエル北部のレバノン国境地帯ではイランを後ろ盾とするイスラム教シーア派勢力ヒズボラの攻撃にイスラエルも応戦してきた。
ただし、大使館を標的にした直接攻撃は異例で、これまでの挑発や限定的な交戦とはレベルが異なる。外交・領事関係に関するウィーン条約は大使館や総領事館など「公館は不可侵」と定める。
イランの国営メディアなどによると同国の国連代表部は、攻撃が「国連憲章と国際法への明確な違反だ」として国連安全保障理事会に緊急会合の開催を求めた。安保理は2日午後(日本時間3日未明)に緊急会合を開く。
中東諸国は一斉に批判した。サウジアラビア外務省は声明で「いかなる理由があっても、外交施設を標的とすることは国際法違反だ」と指摘した。カタールやアラブ首長国連邦(UAE)の外務省も非難声明を出した。
ハマスとの戦いで手いっぱいのはずのイスラエルが、紛争の緊迫度を増す「エスカレーション戦略」に打って出たのだとしたら、その背景には内外からの圧力で孤立するネタニヤフ政権のあせりがある。
ハマスに連れ去られた人質の奪還交渉は進まず、ガザの一般市民の犠牲拡大でネタニヤフ氏に対する批判と退陣圧力が強まっていた。
強硬路線によって国内の結束を強めるとともに、軍事的な抑止力を回復させたい意図がにじむ。イスラエルにはヒズボラやイエメンのフーシなど代理勢力の反応を瀬踏みするねらいもあった可能性がある。
イランは強力な報復をちらつかせる。「抵抗の枢軸」と呼ぶ武装勢力のネットワークをもつイランの作戦がどこでどのようなかたちで始まるか予測は困難だ。
イスラエルの生存権を守ることが外交の重大な柱である米国も、望まないかたちで中東の問題にさらに引き戻されていく可能性がある。米ホワイトハウスのジャンピエール大統領報道官は1日の記者会見で「報道は把握している。それ以上踏み込むつもりはない」と述べるにとどめた。
イランのアブドラヒアン外相は2日、米国に攻撃の責任があると米側に伝えたと明らかにした。米ニュースサイトのアクシオスは1日、米当局者がシリアのイラン大使館への攻撃への関与を否定したと報じた。イラン側に伝えたという。
イスラエル、イランの双方はなお直接の衝突を望んでいないとみられる。だがガザ衝突が長期化するなか、双方にとっての「レッドライン(越えてはならない一線)」は戦前に比べて大きく移動している可能性がある。偶発的な衝突の危険は高まっている。
問題はイランにもイスラエルにも暴走を食い止めるような制御役が不在なことだ。イランとサウジアラビアの和解を仲介した中国の関心は機会主義的な利益の追求にあり、米国に代わって長期の中東地域の安定や和平を構築するような姿勢はうかがえない。
一方、米国のバイデン政権は、ガザで深刻な人道危機を引き起こしたイスラエルの軍事作戦へのいらだちを強め、同国との溝が広がった。1日にはガザで食料支援をしていた国際非政府組織(NGO)がイスラエル軍に攻撃され、米国籍を含む7人が死亡したことも明らかになった。
ネタニヤフ氏は大規模な退陣要求デモに直面するなど多くの国民の支持も失いつつある。
戦争のさなかにネタニヤフ氏を首相から退かせるのは困難だ。ユダヤ教超正統派や極右勢力などの支持を頼みに、追い込まれたネタニヤフ氏が一段と強硬路線に突き進む恐れもある。
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鈴木一人
東京大学 公共政策大学院 教授
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分析・考察 イラン大使館(領事館部分)を攻撃したのは国際法上、大問題ではあるが、すでに国際司法裁判所のいうことも聞かず、安保理決議も無視するイスラエルにとって、国際法の制約よりも、イランの脅威を排除することのほうが重要なんだろうと思う。
すでにイスラエルは革命防衛隊のハマスとのリエゾンをやっていた高官をベイルートで空爆により殺害しており、今回も同じような感覚で攻撃したのだろう。
前回の空爆でもイランは報復しなかったので、今回もそう対処するのではないかと思われる。
革命防衛隊にとってはハマスよりもシリアやヒズボラの方が重要だが、隊員の弔い合戦をしてイランをイスラエルとの大規模戦争に突入させるようなことはしない。
2024年4月2日 10:16 (2024年4月2日 10:19更新)
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村上芽
日本総合研究所創発戦略センター エクスパート
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分析・考察 イスラエル国内での総選挙を求めるデモには、まだ”民主的”な匂いが残っていいなと思っていたところにこのニュースです。宗教的な背景が中東の話にはつきものですが、神々の争いを代わりにしているつもりだからこんなに暴走できるものなのでしょうか、そうなると、徹底的に世俗の利益を優先できる実務家が必要だと思いますが、それが内部から出てこないことに問題があることになります。行きつく解は多様性の尊重と維持であり、経世済民という意味で経済と言いたいです。
2024年4月2日 8:38いいね
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松尾博文
日本経済新聞社 本社コメンテーター・上級論説委員
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ひとこと解説 外交施設を狙うという一線を越える攻撃がなぜ起きたのか。攻撃がイスラエルによるものだとすれば、その動機を考える必要があります。
ガザの衝突は半年になろうとしていますが、イスラエルが目標とするイスラム組織ハマスの壊滅は遠く、時間がかかればかかるほどネタニヤフ政権の足元は揺らぎます。
こうした中でイランの最高指導者ハメネイ師は過去1週間、ハマスとイスラム聖戦の指導者を相次いでテヘランに招き、後ろ盾との姿を見せつけました。
イスラエルがイランにフラストレーションを抱き、大使館攻撃という強いメッセージを発したとしても、ラマダン(断食月)中の攻撃は衝突を拡大させかねない危険な行動です。
2024年4月2日 9:23 (2024年4月2日 9:32更新)
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植木安弘
上智大学特任教授
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ひとこと解説 大使館は、外交関係に関するウィーン条約で守られている。
従って、大使館への軍事攻撃は、イランの革命防衛隊幹部の殺害という軍事的論理とはいえ、国際法違反となる。
イランも1979年のアメリカ大使館襲撃占拠事件で接受国として国際法を゙遵守しなかった例がある。
アフガニスタンでのイラン外交官殺害事件では、イランがアフガン国境に軍を゙集結させたことがある。
国際法の無視は自国の安全保障にも悪影響をもたらす。
2024年4月2日 9:06 』