新設原発、中国・ロシア製が7割 技術輸出で外交手段に
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC2643R0W3A120C2000000/
『原子力発電所でロシアと中国が存在感を高めている。世界で建設・計画中の原発のうち約7割が中ロ製だ。技術輸出を外交に活用し、発言力を強めている。日米欧では東京電力ホールディングスの福島第1原発の事故を契機に新設計画が見直され、関連産業は停滞する。エネルギー安全保障の重要性が増すなか、巻き返し策が求められる。
世界のエネルギー政策を研究する海外電力調査会によると、チェルノブイリ原発事故を受けて安全対策…
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『世界のエネルギー政策を研究する海外電力調査会によると、チェルノブイリ原発事故を受けて安全対策が強化された「第3世代」の原発で、建設・計画中のものは1月時点で110基ある。中国製が46基と最も多く、ロシア製が30基で続く。全体の69%を中ロが占め、存在感が際立つ。
目立つのは自国外で建設する「原発輸出」だ。建設・計画中の110基のうち、自国以外で手掛ける案件は33基ある。最も多いのがロシアによる19基で、ウクライナ侵攻で欧米の反発が強まる中でも、原発では世界に強い影響力を保っている。
原発でロシアとトルコが接近
4月、トルコで建設中のアックユ原発で開かれた燃料搬入の式典に、ロシアのプーチン大統領もオンラインで参加した。ロシア国営原子力企業のロスアトムが手掛けるトルコ初の原発で23年中の稼働を予定する。西側諸国が懸念する両国の結びつきの深さを象徴する。
ロスアトムは5月にはエジプトで、同国初の原発としてエルダバ発電所3号機を本格着工した。ロシアは原発外交で自陣営に取り込む狙いがある。中央アジアや東欧などでも原発輸出で影響力を行使しようとしている。
ハンガリーのオルバン首相は今月、ロスアトム幹部と会談し、同社が南部で計画する原発の新設について議論した。
同国政府は欧州連合(EU)が、ロスアトムに制裁を科すことに反対している。原発などの関係の深さが、外交にも表れている。
ノルウェー国際問題研究所のカペル・スレッキ教授は英科学誌ネイチャー・エネルギー(電子版)で、「多くの新興国はロシアを肯定的に捉えている」と指摘した。ロシアが使用済み核燃料の受け入れを認めている点も新興国に魅力的に映る。
中国はパキスタンに資金援助
中国はパキスタンへの関与を深めている。パキスタン原子力規制庁は5月、カラチ原子力発電所の3号機の運転許可を出した。中国国有の原発大手、中国核工業集団などが設計した「華竜1号」で商業運転に移行する。
華竜1号は出力100万キロワット級で、米仏の加圧水型軽水炉(PWR)をベースに開発した。中国はパキスタンに資金援助し、カラチ2号機も建設するなど深く関わる。
アルゼンチンに建設する計画もある。米国がアルゼンチンに計画中止を求めたが、同国のフェルナンデス大統領は押し切り建設を決定。中国メディアの取材に「米国は中国脅威論をあおるが、そのような考えにくみしたことはない」と述べた。
海外電力調査会の黒田雄二上席研究員は「中国は華竜1号を新興国に売り込んでおり、輸出が増えるのは確実だ」と分析する。エネルギー安全保障のカギを握る原発で中ロの優位性が高まれば、国際政治の場での発言力もさらに強くなる。
日米欧は次世代原発で巻き返し
中ロに対し日米欧が巻き返し策として期待を寄せるのが、「第4世代」の原発とされる小型モジュール炉(SMR)だ。
SMRは出力が30万キロワット以下と小さい。事故の際、燃料を冷やしやすく安全性が高いとされる。米ゼネラル・エレクトリック(GE)と日立製作所の合弁会社の米GE日立ニュークリア・エナジーや、米ニュースケール・パワーが20年代後半の稼働を目指している。
ニュースケール・パワーのSMR(写真はイメージ)
ニュースケール・パワーはルーマニアにSMRの設置計画があり、バイデン米大統領も「画期的な米国の技術の開発促進を支援する」と後押しする。米政府はタイやフィリピンなどにも売り込み、原発で中ロの膨張に歯止めをかけようと動く。
日本はJパワーの大間原発(青森県)など8基の新設計画がある。福島第1原発事故で安全性の基準が強化されたことを受けて審査が停滞してきたが、電力の逼迫を受けて政策を転換。岸田文雄首相は安全性を高めた「次世代革新炉」による建て替えなども指示した。
日本の原発の競争力は落ちている。資源エネルギー庁によると、10年には1314億円だった原発関連の輸出総額は20年に214億円まで激減した。原発新設に慎重だった米欧の多くも同じような状況に陥っている。
資源エネ庁の担当者は「技術者の退職などで日米欧のサプライチェーンは劣化し、技術面でも中ロに負ける場面が増えている」と指摘する。
濃縮ウランが急所に
原発の燃料も課題だ。天然ウランを処理する際の「濃縮」の工程が急所となっている。濃縮できる工場は限られ、濃縮ウランではロシアは世界でシェア首位を持つ。
4月、米国と英国、フランス、カナダ、日本は「核燃料同盟」を結成した。西側諸国の原発からロシア製の燃料を締め出すのが狙いだが、実現するのは容易ではない。
(GXエディター 外山尚之)』







