






















https://www.nikkei.com/article/DGXLRSP601030_R01C20A2000000/
『発表日:2020年12月01日
WSTS 2020年秋季半導体市場予測の結果
○世界の半導体市場動向
2019年の世界半導体市場は前年比-12.0%であった。米中貿易摩擦などの地政学的リスクが世界経済成長の失速を招き、半導体市場も大きな影響を受けた。
2020年は前年比+5.1%と予測した。新型コロナウィルス(COVID-19)のパンデミックによるマイナス要因がある反面、5Gスマートフォンの増加やライフスタイルの変化が半導体需要を押し上げている側面もあり、プラス成長を予測した。
2021年は前年比+8.4%と成長が加速するものと予測した。
なお、US$1に対する円の為替レートは、2019年:108.9円、2020年:107.2円、2021年:106.2円を前提としている。
今回も春季予測と同様、COVID-19のパンデミックにより予測会議が開催されず予測値に関する討議が不可能であったため、以下に予測結果から読み取れる背景を記す。
2020年の半導体市場は、年初は2019年の低迷から回復基調にあったものの、COVID-19のパンデミックに伴い自動車業界を始め世界経済悪化の影響を受けている。但し5Gスマートフォン需要が増加していることに加え、感染対策としての在宅勤務やオンライン授業などの拡がりでパソコンやデータセンタ関連機器の需要も増加した。また、こうしたライフスタイルの変化に伴う”巣籠り需要”により、一部の民生機器市場も恩恵を受けている。このため、世界経済に比べて半導体市場は堅調に推移していると考えられる。
2021年は、COVID-19を巡る状況の改善を前提に世界経済も回復すると期待し、半導体市場も成長が加速する予測となったと考えられる。特に2020年に打撃を受けた自動車業界の急回復を想定したと見られ、関連市場は高成長が予測された。また5G化の更なる進展が幅広い製品の需要拡大に貢献すると考えられる。
○製品別市場動向(世界市場)
2020年における製品別のドルベースでの市場は、ディスクリートは前年比-1.2%、市場規模236億ドル、オプトは同-2.6%、市場規模405億ドル、センサーは同+7.4%、市場規模145億ドル、IC全体は同+6.4%、市場規模3,546億ドルと予測した。ICの製品別では、メモリは前年比+12.2%、ロジックは同+6.5%、マイクロは同+2.0%、アナログは同+0.0%と予測した。
2021年には、ディスクリートは前年比+7.2%、市場規模253億ドル、オプトは同+10.2%、市場規模446億ドル、センサーは同+7.8%、市場規模156億ドル、IC全体は同+8.3%、市場規模3,838億ドルと予測した。ICの製品別予測では、メモリは前年比+13.3%、ロジックは同+7.1%、マイクロは同+1.0%、アナログは同+8.6%と予測した。
○日本の半導体市場動向
2019年の円ベースでの日本の半導体市場は、前年比-11.2%、金額では約3兆9,187億円であった。
2020年は円ベースで同-2.1%と2年連続のマイナス成長で市場規模約3兆8,345億円となるものとみた。
その後、円ベースで2021年は同+4.8%、市場規模約4兆0,174億円になるものと予測した。
以上
※添付資料1~3は添付の関連資料を参照
リリース本文中の「関連資料」は、こちらのURLからご覧ください。
添付資料1~3
https://release.nikkei.co.jp/attach/601030/01_202012011658.pdf 』



コロナ下、半導体奪い合い 液晶パネルは品薄で急騰
トヨタは代替調達検討 ゲーム機生産に懸念も
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODZ24B3K0U0A221C2000000
『自動車の電動化や在宅勤務の広がりなどを受け、基幹部品である半導体や液晶パネルに品薄感が出ている。トヨタ自動車は半導体の代替調達の検討に入ったほか、一部のゲーム機は生産調整を迫られる可能性がある。半導体や液晶パネルメーカーは増産を急ぐが、不足感が解消するには時間がかかりそうだ。
米国半導体工業会(SIA)によると、10月の世界の半導体売上高は前年同月比6.0%増の390億ドル(約4兆200億円)と、1年11カ月…』
・春ごろは新型コロナの影響で自動車を中心に減産の動きが目立ったが、7月ごろから急回復したのに伴い半導体も回復基調だ。
・在宅勤務の普及によるクラウド拡大も半導体需要を引き上げる。世界半導体市場統計(WSTS)の予測では、2021年の市場規模が前年比8%強増の4694億ドルと、過去最高を更新する見通しだ。
・旺盛な需要を背景に半導体メーカーは設備投資を増やしている。韓国・サムスン電子と台湾積体電路製造(TSMC)、米インテルの大手3社の20年の設備投資の合計額は前年比で13%増え、日本円換算で6兆円に達する見通しだ。TSMCは米アリゾナ州に新工場を建設する計画。サムスンは米テキサス州の半導体工場の敷地を4割程度広げ、最先端ラインを導入する準備を始めた。
・各社は増産姿勢だが、半導体デバイスは通常、材料を投入してから製品ができあがるまでに3カ月以上かかり、機動的に生産量を増やすのが難しい。新型コロナの感染拡大で自動車メーカーなどが発注を絞ったのを受けて今秋から冬ごろの減産計画を立てていた企業も多い中で、需要の急回復は短期的に一部の製品で供給不足といったひずみを生んでいる。
・「スイッチの生産に支障が出る懸念がある」。任天堂幹部は主力ゲーム機「ニンテンドースイッチ」に必要な半導体が今後、調達しにくくなるのではないかと気をもむ。
スイッチはコントローラーを本体から取り外して操作できるが、こうした機能には高い演算性能を持つ高機能半導体が必要だ。「スマートフォンや車に比べ販売数量に季節変動があるゲーム機向けの半導体は後回しにされやすい」(外資系調査会社アナリスト)という。
・「21年4月以降の完成車生産が滞る懸念がある」。11月下旬、トヨタ自動車の幹部は危機感をあらわにした。10月に旭化成の子会社の半導体製造工場(宮崎県延岡市)で起きた火災によって半導体調達が困難になったためだ。特にデンソーが主に生産し、トヨタに供給する衝突の回避や被害軽減する安全システム向けの影響が深刻とされる。
半導体自体の代替調達を進めるほか、部品構成が変わる新仕様のシステムの前倒し搭載も検討する。さらにデンソーのライバルである独コンチネンタルから安全システムを代替調達するなど複数の手段で、完成車生産に影響がでないよう手を打つ考えという。
・東芝の大分県と岩手県の半導体工場には「家電や産業用途など業種を問わず受託生産の要請が来ている」(関係者)という。両工場はフル稼働が続き、受託生産の比率は従来の1割から2割に拡大した。
・巣ごもり消費による需要の高まりの影響は半導体以外にも広がる。液晶パネルの価格は春ごろよりテレビ向けで6割、パソコン向けで2割上がった。液晶パネル需給がひっ迫している背景には、LGディスプレーなどの韓国勢が液晶から有機ELへのシフトを急いでいることがある。
【関連記事】
液晶パネル価格、異例の高騰 巣ごもり需要で品薄に
・さらに、液晶パネルの駆動に欠かせない半導体の一種であるドライバーICが不足していることも、液晶パネルの供給に響いているとの指摘がある。「半導体受託製造会社(ファウンドリー)にとって、利益率の低いドライバーICは生産の優先度が低い」(アナリスト)
・国内のあるパソコンメーカーの調達担当者は「必要数のパネルが手に入らずパソコンの生産が追いつかない」と漏らす。
・ハイテク産業の活況は21年も続くとみる関係者は多いが、米中摩擦の行方がリスク要因となる。英調査会社オムディアの南川明シニアディレクターは「米国の対中国戦略の大きな枠組みは変わらない。米中の競争はまだまだ続く」と指摘する。半導体各社などは生産増強に動くが、政治リスクが常に隣り合わせとなる。
(広井洋一郎、松本桃香、ソウル=細川幸太郎)

※ 半導体製造産業は、好・不況の波が大きい…。巨額の資金を要する「装置産業」なんで、「ハイリスキー」な事業となる…。
※ それで、Intelとか、Armとか、自分で「製造すること」からは手を引いた…。企画・設計部門に特化した…。
※ 日本は、永らく、そこの部門でも、競っていた(その残党を寄せ集めたのが、「ルネサス」)んだが、諦めて、「材料」「生産設備」部門へと、撤退した…。今でも、そこの分野では、競争力を保持している…。




https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM2444V0U0A221C2000000
『【ヤンゴン=新田裕一】韓国政府系の韓国土地住宅公社は24日、ミャンマーの最大都市ヤンゴン郊外で新たに開発する工業団地の着工式を開いた。2023年の開業を目指す。ミャンマーでは国際水準のインフラが整った産業用地は日本の官民が支援したティラワ経済特区などに限られる。外資の工業団地開発で投資環境の改善が進む。
着工した「韓国ミャンマー工業コンプレックス」(KMIC)はヤンゴン中心部から北方約40キロメートルに立地。開発面積は225ヘクタール、投資額は1億1000万ドル(約113億円)を見込む。第1期では約半分の127ヘクタールを開発する。
開発・運営会社のKMICデベロップメントには韓国土地住宅公社とミャンマー建設省が各40%、残る20%を韓国の民間企業が出資している。送電線や変電所、周辺道路などのインフラは、韓国の対外経済協力基金の政府開発援助(ODA)で整備する。
韓国土地住宅公社などが開発する「韓国ミャンマー工業コンプレックス」の完成予想図=KMICデベロップメント提供
ヤンゴン近郊では他にも2カ所、外資企業が主導する工業団地の建設が始まる。
タイの工業団地開発・運営最大手アマタ・コーポレーションは27日、ミャンマー建設省と合弁で進める「ヤンゴン・アマタ・スマート・アンド・エコシティー」の着工式を予定している。現地合弁会社の筒井康夫社長によると「顧客側の要望があれば、早ければ21年中にも工場の操業を始められるように準備を進めている」という。
シンガポールの複合企業セムコープ・インダストリーズも、現地大手企業2社との合弁で「ミャンマー・シンガポール工業団地」を建設する計画だ。
一方、日本の官民が合計49%を出資して2015年に開業したティラワ経済特区ではこれまでに計583ヘクタールの供用を開始した。工業団地の開発は継続しており、21年4月には46ヘクタールが加わる。
ティラワ経済特区の場合、50年間の土地リース料は1平方メートルあたり約80ドル。KMICは72ドル前後、アマタは75ドル前後とやや安めの料金水準で提供する。ティラワが港湾に隣接するのに対し、新たに建設される3カ所はヤンゴンから内陸部に向けて北上する高速道路に近いなどの利点がある。』
ミャンマーの工業団地リスト List of Industrial Parks (Myanmar)
https://www.asean.or.jp/ja/invest/country_info/myanmar/industrialestate/
ミャンマーで大規模な地滑り 57人死亡
2019年8月12日(月) 14時00分(タイ時間)
http://www.newsclip.be/article/img/2019/08/12/40471/43362.html














中国、デジタル人民元が阻むアリババ帝国
編集委員 村山宏
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGH201QV0Q0A221C2000000
※ この手の問題(中央銀行が発行するデジタル通貨の問題。 英語表記「Central Bank Digital Currency」の頭文字をとって「CBDC」と呼ばれる。デジタル人民元も、その一つ)を考えるときの、「視点」を提示しておく…。
※ と言っても、「素人」なんで、視点を提示することくらいしか、できん…。
※ まず、大きく分類して、「口座型」と「トークン型」に分かれるようだ…。
※ 「口座型」は、従来からの延長で、銀行なんかに「口座」を開設して、そこを「基点」に、ものごとを処理していくやり方のようだ…。
※ 「トークン型」は、そういう「口座」を前提にせず、現在ある「紙幣」「硬貨」の置き換えとして、デジタル・データをやり取りするというやり方のようだ…。
※ それぞれに長所・短所があるようなんで、それを挙げておく…。
※ 「口座型」:
(長所)
・従来通り、「本人確認」「認証」業務を、銀行(金融機関)さんに「お任せ」できる…。
・従来通り、「監督権限」「監督官庁」も、従来通りの「金融庁」みたいな組織で行うことが可能である…。
(短所)
・上記の「長所」の裏返しだ…。
・「通貨」の流通に関わる「利益」は、銀行(金融機関)に吸い上げられる…。
・相変わらず、「送金」「振り込み」なんかの「手数料」は、高止まりのままだろう…。
・銀行(金融機関)に口座開設できない層の「民衆」は、置き去りにされる…。
※ 「トークン型」:
(長所)
・理屈上は、金融機関が強く関与しない形で制度設計が可能なんで、「利益」がみんな金融機関に行く…、ということは無いだろうと、予測される…。
(短所)
・大前提として、「お金」を使うのにも、スマホやPCが必須となる…。特に、発展途上国だと、大問題だな…。
・大規模停電、大規模ネットワーク障害が発生すると、経済活動自体が止まってしまう…。
※ まあ、そういう長短を考えながら、「社会実験」みたいなものも積み重ねて、徐々に決めていくべきものなんだろう…。
※ そしてまた、「ドラスティック」に一気に変えるべきものではなく、少しずつ、様子や経過を観察しながら、徐々に導入をはかっていくべきものなんだろう…。
『中国政府がかつて保護していた巨大IT(情報技術)企業のアリババ集団や騰訊控股(テンセント)の事業拡大の阻止に動き始めた。金融業にも手を伸ばし、既存の金融システムを脅かし出したからだ。とはいえ中国政府は影響力の大きさから全面規制はできない。こうしたなかでデジタル人民元がIT企業から決済事業を奪い、拡大に歯止めをかけるとの見方が浮上する。ITから流通、金融へと「領土」を拡大してきたアリババ帝国にも斜陽…』
・国共産党・政府は18日に閉幕した中央経済工作会議で「独占に強く反対し、無秩序な資本拡張を防ぐ」との方針を決めた。
・これに先立ち、中国の規制当局は14日に独占禁止法違反でアリババとテンセントの子会社に罰金を科したと発表。
・11月には、アリババ傘下のアント・グループの株式上場を延期させた。アントはアリババのキャッシュレス電子決済サービスのアリペイを運営する金融会社。上海と香港に上場し、345億ドル(約3兆6000億円)を調達する計画だった。
・アリババ創業者の馬雲(ジャック・マー)氏は10月24日、上海で開かれた金融会合での演説で、規制強化の動きについて「昨日の手法で未来を管理できない」と反発していた。
・アリババはアリペイを使った消費者ローンに乗り出しており、AI(人工知能)による与信審査も手がける。アント上場で巨額の資金を調達すれば銀行以上の存在になり得る。
・中国政府はアントの上場延期でアリババをけん制し、その間にIT企業の膨張を抑える策を導入する狙いとみられる。実際、12月中旬にはアントなどが手がけるスマートフォンで銀行預金を仲介するサービスを停止させた。中小銀行がIT企業と提携し、高い金利で預金を集めていた。
・当初、中国政府はアリババが始めたキャッシュレス決済を流通や金融を革新するテクノロジーとして保護し、都市部では現金が使われなくなるほどに浸透した。しかし電子決済のシェアはアリババのアリペイが55%、テンセントのウィーチャットペイが39%と2社の寡占状況を生んだ。銀行の発行するデビットカード(銀聯カード)やクレジットカードの利用は大きく増えず、新興企業や消費者も借り入れを銀行ではなく、IT企業の金融事業に頼るようになった。
・なかでも銀行の脅威となったのがアリババの投資ファンドだ。アリペイ型の電子決済では銀行口座などのお金をアリペイに移して使う。アリババは利用者が使い切れなかった資金を銀行に戻さずに、アリペイから投資できる「余額宝」というMMF(マネー・マーケット・ファンド)をつくった。解約はスマホで簡単にでき、戻された資金は再び支払いに使える。銀行預金より高い利回りで提供したため、アリペイの利用者は銀行口座から余額宝に資金を移した。
・18年6月には余額宝系ファンドの資金規模が1兆8602億元(約30兆円)に上り、四大国有銀行の一角である中国銀行の個人の普通預金、1兆7986億元(17年末)を超えた。IT企業が国有銀行など既存の領域を脅かし始めると、中国政府はIT企業の金融事業に対して徐々に規制を強め、急成長していたネットを媒介とする小口融資に網をかけた。さらにアリペイやウィーチャットペイに銀行と同じように準備預金を中国人民銀行(中央銀行)へ積むことを義務付けた。
・それでも余額宝系ファンドの規模は20年6月で約2兆5400億元に膨らんだ。金融当局の力の及ばないところでIT企業の金融事業が拡大すれば金融政策は効力を失い、既存の銀行・証券業も危くなる。
・中国政府内ではIT企業の膨張に対する強硬論も台頭する。中国証券監督管理委員会の姚前・科技監管局長は12月に入り、IT企業に対し「デジタルサービス税を課すべきだ」と発言している。
アリババ集団の創業者のジャック・マー氏はIT企業の金融事業に自信を見せていた(2018年6月、香港)=ロイター
・だがIT企業の力を一気にそぐことはリスクが大きい。スマホ決済は庶民の生活インフラになっており、過度に規制すれば小売業やネット通販など実体経済が落ち込む。
・中国政府がこの状況を変えるゲームチェンジャーとして期待するのがデジタル人民元だ。
・姚前氏は中国人民銀行デジタル通貨研究所長の時代に「デジタル通貨の決済では仲介機能に依存しなくとも済む」と主張していた。
・現段階の構想では、デジタル人民元の利用者は預金口座を持つ銀行のデジタル人民元口座(デジタルウォレット)を設定し、必要な額を換えて使う。スマホに入れた銀行のアプリからデジタル人民元を相手側に直接支払うことができる。ネットを使わずにスマホを相手のスマホに近づける方法でも支払いが可能だ。アリペイのような仲介役の第三者の決済機関にお金を移す必要はない。これなら預金は銀行にとどまる。
・デジタル通貨とは異なるが、インドは第三者の決済機関を用いないスマホ決済で中国に先行した。16年に導入したUPI(統合決済インターフェース)という仕組みで銀行口座とスマホ決済を結びつけた。利用者がスマホでお店のQRコードを読み取り、支払いの操作をすると利用者の銀行口座から支払先の口座に資金が移動し、買い手と売り手の双方のアプリで結果を確認できる。スマホによるデビットカードといっても良い。
・インドでも当初は「Paytm」(ペイティーエム)というアリペイのようにあらかじめ資金を移しておくアプリがシェアを伸ばした。アントやソフトバンクが出資したインドのIT企業だ。
・ところがUPIの利用が広がるとPaytmは勢いを失った。インドではUPIを使って銀行からの資金移動を指示する、米ウォルマート傘下の「PhonePe」(フォンペ)、米グーグルの「Google Pay」(グーグルペイ)などの決済アプリが主流となった。
・中国がデジタル人民元を導入すれば決済を補助する新たなアプリも登場するだろう。直ちにアリペイとウィーチャットペイの牙城を崩すには至らないにしても、2社の寡占状況は崩れるかもしれない。
・もっともインドではPaytmの独占を阻止したものの、今度はUPIをサポートするグーグルなど米2社のアプリが寡占傾向を強めている。インド政府は単一アプリの取引を総取引件数の3割に制限する方針だ。
・通貨を巡る政府と企業の攻防は世界各地で激しさを増している。アリババ帝国にも逆風が吹き始めている。
30歳未満17%が仕事失う 報われぬ世代、渇望を力に
パクスなき世界 大断層(3)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO67448710Y0A211C2SHA000




『あなたは、自分の親よりも豊かになれる自信がありますか――。
「高齢者のような貯蓄など私たちにはない」。英国のイングランド北西部に住むジュリア・フリーマン(29)さんはくじけそうだ。大卒でも定職はなく、幼い2人の子を抱える。新型コロナウイルスの流行に伴うロックダウン(都市封鎖)の影響で、夏に法律事務所を解雇された。やっと得た販売員の仕事も11月の初出勤の日に再び都市封鎖が決まり、失った。
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「富める者」襲う恐怖 「バイデノミクス」土俵際の出発
「巨大ITが秩序」現実に デジタル化、国家置き去り
先進国・高齢世代… コロナが突きつけた課題 サコ氏
そこから約7千キロ離れたケニアのナイロビでもチャールズ・ソンコ(30)さんが「人生が振り出しに戻った」と嘆いている。ガイドとして月200ドル(約2万円)以上を稼いでいたが、3月に旅行会社を解雇された。結婚の予定も延期した。
国際通貨基金(IMF)の報告書によると、世界で働く18~29歳の17.4%がコロナ禍で失業・休業し、42%の収入が減った。30~34歳も失業・休業は10%を超えた。米国で親と同居する若者は5割超と1930年代の大恐慌以来の高水準だ。
コロナ禍は世界共通の時代体験として「コロナ世代」を生む断層を刻んだ。「#ブーマー・リムーバー」。高齢者ほど重症化や致死のリスクが高いコロナについて「戦後生まれのベビーブーマー世代を取り除くウイルス」と評する心ない造語がネット上で流行した。
閉塞感をより深めているのは、20世紀後半の高度成長時代が遠ざかり、若者の憤りが時間とともに薄れると期待しにくくなっていることだ。すでに手にした富は高齢世代に偏る。米国で46~64年生まれの保有資産は約60兆ドル。65~80年生まれの2倍、81~96年生まれの10倍に上る。
さらに、子が親より豊かになる階段も壊れた。経済協力開発機構(OECD)によると、米欧14カ国の43~64年生まれは20代で7割が中間層に属した。80年代から2000年代初めに生まれた世代だと6割に細る。ドイツ銀行のジム・リード氏は「若者が怒りの矛先を誤って資本主義に向け、経済をさらに傷つけかねない」と警戒する。
米政治専門紙ヒルの8月の調査では社会主義に「親しみがある」と答えた米国民は50歳以上で3割前後。これに対し18~34歳は52%、35~49歳は59%に上る。この20年、世界金融危機やコロナ禍など相次ぐ激動にさらされ、このままでは報われないとの怒りを引きずる世代が拡張した。
次期米大統領に就くジョー・バイデン氏の得票をみても、18~49歳の支持が現職のトランプ大統領を上回った。「現状変革を望む世代」の広がりが新たなリーダーを選んだ。だが成長というパイの拡大がないまま再配分だけ求めても、経済社会が停滞した旧ソ連のような「社会主義の失敗」を繰り返しかねない。
米哲学者エリック・ホッファーは成長を続ける創造的な人間を「永遠の青年」と呼んだ。旧弊を壊し、理想をめざすためには、新たな創造につながる教育という土台が要る。知識や技術、そして考える力。教育という社会全体の将来を支える投資を厚くしてこそ、「失われた世代」の連鎖を食い止める道を描ける。
閉塞への憤りをただ抑えれば社会不安を招く。1人ではできない変革への推進力へとどう変えていくか。危機は次の飛躍への起点にもなる。』



https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN1901S0Z11C20A2000000


『【ニューヨーク=後藤達也】18日の米株式市場でテスラ株の売買代金が過去最多の約1400億ドル(約14兆5000億円)強に急増した。21日に主要株価指数に組み入れられるため、投資家の買い注文が増えて利益確定売りと交錯。終値は前日比6%高の695ドルと過去最高値を更新した。株価が高騰する中、需給はいびつで週明けに株価が乱高下する可能性もある。
金融情報会社リフィニティブによると時間外を含めた売買代金は米東部時間午後5時時点で、前日の4倍近くに増えた。東京証券取引所全体の1日分の取引をはるかにしのぐ規模だ。特に取引終了間際だけで500億ドル近くの売買があった。テスラ株は2020年を通して物色が集中しており、株価は昨年末比で約8倍に高騰。時価総額は約6600億ドル(約68兆円)と米企業で6位に躍り出た。
テスラ株は週明けの21日にS&P500種株価指数に組み入れられる。同社は株式時価総額や売買代金では米国株で屈指の規模だが、収益などの基準が未達だったため同指数への算入が遅れていた。投資信託や年金基金などS&P500に連動して運用する投資家は多く、指数に組み入れられれば企業の実力とは別に資金が入りやすくなる。
米調査会社リッパーの調べでは、S&P500に連動するファンドの総資産は2兆ドルを超える。ファンド以外でも同指数への連動を狙う投資家は多い。テスラの時価総額はS&P全体の1%強のため、単純計算で数百億ドル規模の需要が発生する。指数の銘柄入れ替えに伴う売買代金は全体で数千億ドル規模になるとの試算もある。
上場投資信託(ETF)など指数に連動するタイプの運用はコストやリスクの低さから人気を集め、過去数年で拡大した。テスラが主要株で異例の高騰をみせた影響もあるが、銘柄組み入れの調整だけでこれほど巨額のマネーが移動した例はない。
市場関係者によると「S&P500に連動するファンドでも18日にすべて組み入れるわけではない」という。組み入れ期待で最近の株高が急だったため、21日以降は反動で下落するリスクも意識されている。テスラは個人投資家の短期取引も多く、同社株の値動きが投資家心理に影響を与える可能性もある。』
原油襲った2つのショック
20年回顧 揺れた市況① 4月に前代未聞の「マイナス37ドル」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODJ167HO0W0A211C2000000


『新型コロナウイルス下の2020年、商品市況は国内外で大きく揺れた。未曽有の需要減に見舞われたエネルギーや素材価格が下落した一方、あふれたマネーは貴金属などの相場を上向かせた。各市場の1年を振り返り、21年を展望する。
低迷が続いたニューヨーク原油先物価格は足元で1バレル48ドル前後まで上昇、3月上旬以来の高値を付けた。新型コロナのワクチンが欧米で実用段階に入り、来年以降の経済正常化を先取りした。金融市場のリスク選好姿勢が鮮明になり、原油相場も11月から上昇基調を強めた。
日本エネルギー経済研究所の小山堅専務理事は3月初旬を「原油価格暴落の始まり」と振り返る。コロナ禍でエネルギー需要が蒸発、石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国の連合体「OPECプラス」が3月6日に開いた会合は4月以降の減産方針が焦点だった。だがサウジアラビアの減産強化案をロシアが拒否。協議は決裂した。
サウジは一転して大幅増産を宣言し、ロシアに「価格戦争」を仕掛けた。このショックで、3月6日時点で46ドルを上回っていた原油価格は9日に30ドル前後まで急落。米国のシェール企業が発行する低格付け債などの信用リスクも浮上し、世界の金融市場を揺さぶった。
4月にはコロナの本格的な流行が始まった欧米で都市封鎖(ロックダウン)が拡大。航空機燃料やガソリンの需要が急減した。産油国の一斉増産も重なり、世界で原油在庫が積み上がった。米国では原油先物の受け渡し拠点であるオクラホマ州クッシングで貯蔵能力の限界説が伝わり、現物を引き取るリスクに市場参加者が震え上がった。
ニューヨーク市場で期近物の売買最終日が迫った20日、取引を手じまう売り注文が殺到しても買い手が現れない。みるみる急落した価格は史上初めてゼロを下回り、終値がマイナス37ドル台を付ける前代未聞のショックに見舞われた。1年を通した価格の振れ幅は100ドルを上回った。
トランプ米大統領の介入もあり、OPECプラスは5月から世界需要の1割に当たる日量970万バレルの大幅減産に取り組んだ。中国などの経済回復で需給バランスは徐々に改善、価格も上向いた。各国の強力な金融緩和で投資マネーが商品市場にも流入し、相場を押し上げる環境は今も続く。
ワクチンが相場の潮目を変え、足元は3月ショックの直前の水準に戻った。だが新型コロナ感染再拡大が続く欧米では経済活動が再び制限され、短期的な需要環境はむしろ悪化している。日本総合研究所の松田健太郎研究員は「世界の在庫水準は依然高く、今の相場上昇は早すぎる」とみる。
12月のOPECプラスで21年1月から減産目標の小幅圧縮が決まった。2月以降の減産幅は毎月話し合う。その度に協議が難航すれば市場心理が悪化する可能性もある。「一本調子の値上がりは想定しづらい」(兼松の能崎光史エネルギー部長)との見方が多い。(小野嘉伸)』
「巨大ITが秩序」現実に デジタル化、国家置き去り
パクスなき世界 大断層(2)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO67491180Y0A211C2SHA000




『あなたの身の回りの規制は現実に則していますか――。
11月12日、インターネット通販「楽天市場」で、商品の一つである大型テレビの価格が目まぐるしく動いた。
午前9時すぎ、一部の出品者が20万円前後だった価格を3万~4万円引き上げると、1時間以内に全出品の41%が追随した。3日後、今度は約2万円値下げしたところ、同じく41%の商品の価格が引き下がった。
ECサイトを調査するバリュース(東京・渋谷)の高木正良氏は「相手の値動きに合わせて自動で価格を変えるソフトウエアの存在が背後にある」と語る。ソフトによる自動値付けは米アマゾンでは出品者の3割超が採用しているとされる。すでに身近な存在だ。
伊ボローニャ大のエミリオ・カルバノ准教授らの実験では、複数の人工知能(AI)に商品の値付けをさせると、バラバラだった価格が最終的に均一の価格となった。AIが他者の動きをにらんで利益を最大化した結果で、消費者には不利益となる価格水準に収まるケースもある。
これまでの概念では「談合」に当てはまる事例といえそうだが、カルバノ氏は「人の意思や交渉によらない『AI談合』を、現行の競争法で規制することはできない」と指摘する。OECD(経済協力開発機構)もこれまでの報告書で同様の懸念を示している。
デジタル化はこれまでのルールを置き去りにして急速に進んでいる。既存秩序の根拠となっていた法典や規制と、目の前で進む現実との間には埋めがたいほどの距離が開き始めている。
米グーグルの新たな決済アプリ。2021年からシティバンクなどの口座がひも付くが、銀行側には口座維持手数料や最低残高の決定権が制限されているという。グーグルなど「GAFA」合計の時価総額はシティなどグローバルに展開する30金融機関の2倍。強者のルールに弱者が従う構図は金融も例外ではない。
トマス・ホッブズが17世紀に「リバイアサン」で提唱して以来、万能な国家が市民の上に立つのが近代の統治モデルの前提だった。21世紀のいま、膨大な個人データとデジタル技術を持つ巨大IT企業は国家をしのぐ影響力を持ち始めている。
米国では当局がグーグルとフェイスブックを反トラスト法(独占禁止法)で提訴している。圧倒的な市場支配力で公正な競争を阻害していると判断し、M&A(合併・買収)で事業領域を拡大したフェイスブックに対しては、事業分割も求めている。
欧州連合(EU)はGAFAなどのプラットフォーマーに対する包括的な規制案作りに着手している。規模が小さいIT企業との公平な競争環境を構築することが目的の一つだという。
ハーバード大の故エマニュエル・ファーリ教授らは、低成長の一因として寡占化の進行を挙げた。ひと握りの企業が「肥大化」すれば富の偏在を助長するだけでなく、イノベーションを阻害し、経済成長を妨げる存在になりかねない。各国政府の危機感は強い。
富やデジタル化の恩恵を人々に平等に分配する仕組みやルールを誰が、どう作るのか。各国の政府や司法機関は前例のない問いに対する答えを探し始めている。』


https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN201BE0Q0A221C2000000

『【ワシントン=河浪武史】米議会の与野党指導部は19日、9000億ドル(約93兆円)規模の追加の新型コロナウイルス対策を発動することで大筋合意した。20日にも最終法案を策定し、上下両院で採決する。中小企業の雇用対策や失業保険の特例加算などを盛り込み、景気回復の減速懸念を払拭する。
米東部時間19日深夜(日本時間20日昼)、民主党のシューマー上院院内総務は記者団に「今後なんらかの問題が起きなければ、あす採決できるだろう」などと述べた。米与野党は11月の大統領選・連邦議会選後、追加のコロナ対策を発動する方向で協議してきたが、最終決定が大幅に遅れている。共和党が同日昼に民主党側に法案の文言案を提示し、民主党が同日夜に受け入れた。
20日にも採決する9000億㌦の追加コロナ対策は、失業保険の特例措置や中小企業の雇用維持策を延長するのが柱だ。いずれも3月に発動したコロナ対策の中核施策だったが、12月末に制度が失効し、低所得層や中小企業の資金繰りが大きく悪化する懸念があった。大人1人当たり600㌦を支給する現金給付も盛り込み、低所得層を中心に家賃の支払いや食費の確保を支援する。
トランプ大統領が署名し、追加のコロナ対策が成立すれば、3月以降の臨時の財政出動は合計で4兆ドル規模になる。米国内総生産(GDP)の2割に達し、通常の年間歳出(4.4兆㌦)に迫る大きさだ。公的支援が切れる「財政の崖」を回避して、早期の景気回復につなげる狙いがある。
米経済成長率は4~6月にマイナス31%(年率換算前期比)という大幅な落ち込みを記録した後、7~9月期はプラス33%増と持ち直しに向かった。10~12月期もプラス成長が見込まれるが、新型コロナの新規感染者数が1日20万人を超えて過去最悪の状態が続く。12月の失業率は再び悪化に転じる可能性もあり、ワクチンの普及を前に景気回復に減速感がにじんでいた。
米議会は当初、19日から休会を予定していた。政府機関の運営資金を確保するつなぎ予算も18日が期限で、同日までに2021会計年度(20年10月~21年9月)本予算を成立させる必要もあった。上下両院は20日までの2日間の極めて短期のつなぎ予算を可決して、週末返上でコロナ対策を協議している。20日には21会計年度予算も採決する方針で、バイデン次期政権の発足を前に目先の懸案は解消される。』