カテゴリー: 日本の安全保障
-
-
ロシアから見返り警戒 軍事協力強化の北朝鮮へ―米副長官
https://www.jiji.com/jc/article?k=2024061300314&g=int『2024年06月13日09時05分配信
【ワシントン時事】キャンベル米国務副長官は12日、ワシントン市内でシンクタンクの会合に出席し、ウクライナ侵攻を続けるロシアに北朝鮮が弾道ミサイルなどを供与したことを巡り、ロシアが北朝鮮に与える見返りへの警戒感を示した。
プーチン氏「数日内に訪朝」 韓国政府高官が見解
ロシアのプーチン大統領が近く北朝鮮を訪問すると伝えられており、ロ朝の軍事協力が進む可能性がある。
キャンベル氏は「現金かエネルギーか、核・ミサイルの性能を高める能力か。把握はしていないが懸念し、注意深く監視している」と語った。
また、ロシアと中国が「北朝鮮の後ろ盾で最も強力な支援者だ」と強調。
ただ、理由には触れなかったものの、ロ朝の関係強化が「北京(中国政府)に不安を与えていると思う」と述べた。 』
-
日本に期待すること:ヘーグベリ駐日スウェーデン大使に聞く
https://www.nippon.com/ja/people/e00216/『2024.06.13
今年4月、北大西洋条約機構(NATO)が設立75周年を迎えた。ウクライナ侵攻を続けるロシアへの対応など、加盟国の結束がこれまで以上に必要とされる。こうしたなか、3月に32カ国目の加盟国となったスウェーデンのペールエリック・ヘーグベリ駐日大使に、加盟に至る背景や安全保障のほか、同国の少子化対策、日本の若者への期待などについて語ってもらった。(聞き手はニッポンドットコム理事長の赤阪清隆)
ペールエリック・ヘーグベリ Pereric HÖGBERG
駐日スウェーデン大使。ウプサラ大学で政治学を専攻した後、スウェーデン国際開発協力庁、スウェーデン外務省に勤務。ナミビア、南アフリカで外交官として勤務しアフリカ局長、駐ベトナム大使を歴任。2019年から現職。
他の言語で読むEnglish 日本語 简体字 繁體字 Français Español العربية Русский
スウェーデンがNATOに加盟
赤阪清隆 まずロシアについて伺いたい。スウェーデン国民はロシアからの軍事脅威を強く感じているのか?
ペールエリック・ヘーグベリ われわれは、とてもリアルに感じている。
スウェーデンとロシアの関係は、日本と近隣大国との関係に少し似ている。スウェーデンとロシアは地理的に非常に近いが、欧州で2年にもわたって続く戦争が起きるとは予期していなかった。ソ連崩壊以降、欧州に限らず世界の平和的発展を望んできた。
平和的発展は、単純なことではない。過去をさかのぼると、ロシアは2008年にジョージア侵攻、2014年にはクリミア併合など、プーチン政権に強い兆候があったことが分かる。われわれとしてもロシアの動向が気になっていたが、常に対話を通して平和的に物事を進めていけると思っていた。
しかし、2021年末のウクライナ侵攻の数カ月前、ロシアは安全保障のバランスが崩れることを理由に、われわれのNATO加盟に反対を表明した。大国による小国への挑発的な行為であり、実際、侵略を起こし、超えてはならない一線を超えてしまった。スウェーデンとフィンランドにとって、あらゆることが変わった。
NATO本部(ベルギー・ブリュッセル)ビルにスウェーデン国旗が掲揚されたとき、スウェーデンのクリステション首相や軍の最高司令官、閣僚だけでなく、ビクトリア皇太子も参加していた。これはスウェーデン国民、同盟国、そしてロシアや世界各国に対して、加盟が単なる政治的な出来事ではないことを示した。スウェーデンがNATOに加盟した理由は2つある。1つは自国を守るため。もう1つは欧州の安定強化のために、防衛や安全保障に貢献するためだ。
安全保障に対する国民意識の変化
赤阪 スウェーデンの防衛費は、NATOが求める国内総生産(GDP)比で2%以上とする目標をすでに超えているのか?
ヘーグベリ それを目指しており、今年もしくは来年には達成できるだろう。ソ連崩壊やベルリンの壁が崩壊した後、必要がないだろうと、軍隊の規模を縮小したが、現在、防衛費を急いで増額している。
そして、NATOに加盟する全32カ国がウクライナ支援の透明性を高め、長く確実に支援していくことを明確にしたい。ロシアが他の欧州の国々に対して勝てないことを知らしめる方法を見つけなければならない。
赤阪 スウェーデンでは数年前に徴兵制を復活させたが、若者は受け入れているか?
ヘーグベリ そのようだ。実際、軍隊への入隊を希望する若者の数は増えている。志願兵の登録者数も劇的に増えており、中には女性もいる。
赤阪 それは驚きだ。昨年、日本人の若者を対象にした日本財団の調査によると、日本と外国の間で戦争・武力衝突などが生じて、自分の身近な人に危害が及ぶ可能性がある場合、戦闘員として志願すると答えた割合は13%だった。
ヘーグベリ 日本人には、侵略されるという概念が薄いのかもしれない。スウェーデンから飛行機で1時間の距離にあるウクライナに対してロシアが全面侵攻したことは、われわれを震撼させた。ロシアの行動はもはや理論的ではなく、これに対してわれわれは、きちんと計画を立てなければならない時に来ている。では、フィンランドやスウェーデンがロシアによる侵略を恐れているかといえば、短期的には恐れていない。しかし、もしもロシアによるウクライナの一部、または全面支配を世界が事実上認めるようなことになれば、その後に何が起きるのかが心配だ。
紛争回避へ「対話」が重要赤阪 ここ数年、特にシリアや中東からの難民を多く受け入れているが、ガザでの戦闘の行方についてスウェーデン国民はどの程度関心があるのか?
ヘーグベリ 当然、大きな関心を持っている。中東にルーツをもつスウェーデン人が多いだけでなく、この問題は世界秩序のかぎを握るからだ。今はウクライナに世界の注目が集まっているが、多国間の観点から見ると他のどの紛争も重要だ。紛争、不公平、民主主義や人権が尊重されない事案に対して、スウェーデンは常に関わってきた。それはわれわれが長い間、幸運にも平和を享受していたからかもしれない。しかし今は状況が異なる。
2023年10月に起きたイスラム組織ハマスによる恐ろしい犯罪行為を忘れてはいけない。イスラエルには当然、自国防衛する権利がある。しかし応戦は戦争ルールの枠組みの中で行われるべきだ。紛争の拡大は最悪の事態であり、絶対に避けなければいけない。そのためにも対話は極めて重要だ。
紛争がいつ終結するのか分からない。外交官の立場を離れて話をすると、政治学専攻の私はこのような問題に対して常に、自分なりに考えることにしている。歴史から学び、未来を予想するのは、少なくとも将来起こるかもしれぬ大惨事を回避するためだ。しかし、残念ながら、人は常に未来を予測したり、歴史から学んだりすることが下手だというのが私の持論。たとえ、聞きたくないようなつらい現実に対しても誠実に向き合うべきだ。
この流れで日本を見ると、ロシアと正式な平和条約は未だ締結されていない。朝鮮戦争は休戦状態が長く続いている。国際社会はこのような膠着(こうちゃく)状態を避け、次の世代に問題を先送りにしないよう注意すべきだ。
高い出生率を維持する3つの政策赤阪 人口問題について伺いたい。日本が直面する問題の1つが少子化だ。スウェーデンは高い出生率を維持しているようだが。
ヘーグベリ 一番の問題は新生児が減少していることだ。欧州も出生率がかなり低い。しかし、これは自然な経済発展だったのかもしれない。かつては家族があまりに多かったが、経済が発展するにつれ家族の規模も小さくなった。日本も対応に乗り出しているようだが、新生児の減少が社会に脅威を及ぼした時、何をすべきかが問題になる。
スウェーデンでは3つのことを実行してきた。1つ目は、女性の育児と仕事の両立を可能にしたこと。これはかなり前から始めた取り組みだ。リーダーたちがジェンダー平等について考え始めたとき、人権問題の側面だけで考えなかった。より多くの働き手を必要としているスウェーデンでは、この施策により、女性が働きやすくなった。今ではスウェーデン人女性の大半が働いている。地方自治体の条例では、希望する家庭に対して子育て支援をしなければならないと定めている。
2つ目は、家庭を対象にする税を廃止した。スウェーデンで、所得がある人は、家庭ではなく、個人に対して課税される。3つ目は、子どもがいる親への手厚い子育て支援策だ。子ども一人一人に給付金が支払われる。
これらはすべて1970年代に始まり、仕事と子育てが両立できる盤石なシステムを作り上げた。しかし、一方で、スウェーデンは多くの労働力を輸入した。この点は日本とは異なる。現在、スウェーデンの人口は約1000万人で、このうち25%が外国で生まれたか、もしくは両親が外国生まれだ。彼らはスウェーデン市民権を持ち、選挙権もある。当初はフィンランド、トルコ、チリからの移民が多かった。しかし、技術力の高い労働者の獲得から人道主義的な受け入れへと徐々に移行することにより、「アフリカの角」と呼ばれる大陸東部の地域や、イラク、シリア、アフガニスタンからの避難民の受け入れにつながった。
これにより、社会的な統合問題が生まれ、政治的な議論の中心になっている。亡命者の人数は過去に比べると減っているが、一度、スウェーデンに亡命した人々を放り出すわけにはいかない。これがわれわれの人口減少問題を解決する方法だった。
結婚にとらわれない家族の形
赤阪 少子化対策に成功した国といえばフランスもそうだ。スウェーデンも同様だろうが、近年の変化として婚外子や一人親の家庭で生まれる子どもが多い。一方、日本での婚外子はわずか2~3%だ。
ヘーグベリ これは個人の権利を第一に尊重するリベラル主義の考えに基づくと思う。女性の就業をサポートし、女性が自由にやりたいことを実現することとも関係している。
結婚に対する考え方は、大きく変化した。私の祖父母の世代は、結婚は必要な制度だったが、現在のスウェーデンが子どもや失業者のために提供するサポートシステムやその他の社会的支援策は結婚にとらわれないものだ。多くのスウェーデン人は結婚しないけれども一緒に暮らしており、この状況が社会的に認知されるのも比較的早かった。結婚した人の恐らく半分は離婚しているので、結婚制度は劇的に変化している。
外交官の立場で批判はしないが、共同親権について日本で議論されていることは喜ばしい。もし両親が離婚を選択した場合、それは彼らの問題だ。しかし、子どもの親権を父と母のどちらか一方が持つことはすべきではない。スウェーデンでは子どもが父と母の両方に会える権利をしっかり保障している(現在は母と母、父と父の場合もある)。
考えて行動することを恐れずに赤阪 日本での5年の任期を経て、間もなくスウェーデンに戻られるが、日本の若者に向けてメッセージをお願いしたい。
ヘーグベリ 私の仕事は日本社会に強い影響を与えるものではなく、両国に強固な関係性を築くことだ。最初に伝えたいのは、日本とスウェーデン、日本と北欧諸国との間には、相互関係が存在していることだ。すでに固い絆で結ばれているので、ニュースになることは決してない。貿易・経済連携面では相互利益の関係性が構築されている。
2つ目は、自ら考えることをお勧めしたい。先生の話をうのみにするのではなく、自分で考え、調べ、事実確認をすることが重要だ。幸せのために、勇気をもって挑戦してほしい。人の意見を聞いたり、自分の考えを述べたりすることを恐れないでほしい。
最後に、スウェーデンや欧州の若者にも伝えたいが、日本が何を成し遂げてきたかに注目してほしい。なぜなら、賞賛に値することがたくさんあるからだ。コロナ後にスウェーデン人が行きたい国の1位が日本だ。安全、礼儀正しさ、敬意を持って接することなど、世界の多くが失ってしまったことを日本の大事な要素として残してほしい。
赤阪 多様性がキーワードになっている現在、人と違うことの魅力を理解し、異なる人種や考え方を尊重することなど、日本人は北欧諸国から学ぶことが大いにある。
ヘーグベリ これこそが民主主義そのものだ。日本におけるスウェーデンのイメージは、ばら色過ぎることがよくあるが、私がスウェーデンを高く評価しているのは、タブーがないこと。目の前に置かれた議題について、長期的な進歩と成功を目指して、新たな発想で問題解決する。これが前へ進む道なのだ。
(原文英語。インタビューは2024年4月4日、東京・虎ノ門で行った。写真撮影:ニッポンドットコム)』
-
台湾危機に備えて、今すぐ日本が採るべき「四つの方策」とは――国際政治学者が考えた「納得の提言」
https://www.dailyshincho.jp/article/2024/06070611/?all=1『台湾の新しい総統に民進党の頼清徳氏が就任した。就任演説では、台湾と中国は互いに隷属しないと述べ、「台湾は中国の一部だ」とする中国の主張を否定した。
中国は当然のように反発している。習近平国家主席が、武力による統一も放棄しないという強硬な姿勢をよりエスカレートさせる懸念も出そうだが、果たして「台湾有事」は起こるのか。
JICA(国際協力機構)特別顧問で、国連での外交実務経験もある国際政治学者の北岡伸一氏は、数度にわたり台湾を訪問し、李登輝元総統(在任1988~2000年)とも親しく語り合った。氏は新著『覇権なき時代の世界地図』(新潮選書)の中で、台湾問題への対処について述べている。(以下、同書をもとに再構成)
***
米中の拮抗、G7主導体制の後退、権威主義や独裁国家の台頭、ウクライナやパレスチナの戦争、影響力を増すグローバルサウス――「自由・民主主義・法の支配」が脅かされる危機の時代に、日本が採るべき道と果たすべき役割は何か? 国連・JICAでの経験を通じて世界の現実を見た国際政治学者が提唱する地政学的思考!
ネット書店で購入する
最近、日本が台湾問題に巻き込まれることに対する危惧が高まっている。中国はがんらい軍事的には慎重な国である。簡単に勝てることが確実でない限り、ことを起こさないだろう。その意味で、台湾に対する武力行使は極めて難しいと思わせることが安全への道である。
1.反撃力を含めた防衛力の整備
まず必要なのは、日本が反撃力を含めた防衛力を整備することである。従来、日本の防衛はミサイル防衛を中心とすることが多かった。私はこれには懐疑的である。精度が疑問でありコストが高すぎるからである。
また、私は敵基地攻撃能力という言葉にも反対である。現在の技術力では、攻撃される前に敵基地を叩くことは不可能である。また、もし攻撃された場合には、反撃の標的は敵基地に限る必要はないから、先制攻撃は一切しないということを宣言した上で、反撃力を整備すべきだと考える。
反撃力というと、これは先制攻撃にも使われうるという批判をする人があるが、日本の方から核大国の中国(あるいは核保有国の北朝鮮)に戦争を仕掛けることなどあり得ない。日本の防衛力は、あくまで抑止力としての意味しか持たないのである。
中国の巨大な軍事力に対しては、たとえば空母に対して空母を建設したりするのではなく、潜水艦で対抗すべきだ。また、アメリカの高価な武器を言い値で買うようなことは避けるべきだ。その他、コストとベネフィットを計算して、現実的で持続可能な反撃力を整備してほしいと思う。
2.日米同盟の強化
第二に必要なのは、日米同盟の強化である。2015年の平和安全法制で、集団的自衛権の行使が一部可能となった。以後、日米の情報の共有などは一段と進んだ。その頃、世論の反対は厳しかったし、今でも共産党はもちろん、立憲民主党などもこれを憲法違反だと言っている。しかし、平和安全法制なしに、アメリカと緊密な協力関係を進めることは、不可能である。そして、世論も平和安全法制支持者の方が増えている。
それでも、まだまだ日米連携は不十分である。さらにアメリカとの具体的な協議を深化させなければならない。緊密な日米協議は日本がリードするくらいの気持ちでやったほうがよい。
私は東大で教えていたとき、試験が近づくと、時々、「君たち、試験で良い成績を取る方法を教えよう」と言っていたことがある。私の講義はみな静かに聞いているのだが、この瞬間は針が落ちてもわかるほど、静かになる。そこで、「ヤマをかけなさい」と言う。学生はけげんな顔をする。
そこで、「それも1つや2つではいけない、10か15くらいかけなさい」と言う。みんな、「なーんだ」という顔をするが、私は続けて、「教師が強い関心を持っているテーマは、10か15くらいだから、それくらい考えればたいてい当たる。漫然と復習をするのではなく、そのように前向きに準備をしておくことが大切だ」と言った。
中国と台湾の危機は、直接侵攻、離島侵攻、太平島侵攻、経済封鎖など、いろいろありうる。それぞれにシナリオを考えて準備するのである。
3.東南アジアなど近隣諸国との連帯強化
地図:台湾と東アジア
台湾と東アジア。地図は『覇権なき時代の世界地図』(新潮選書)より(他の写真を見る)
第三に、注意したいのは、日本とアメリカの利害はほぼ一致しているとしても、完全に一致しているわけではないということだ。万一、米中衝突が起こっても、アメリカは遠く離れた軍事超大国なので、やっていける。しかし、日本はそうではない。そこで同様の立場を取る国々、たとえば東南アジアの国々との連帯を深めることだ。アメリカも中国との関係を断絶するというわけではない。最近では、米中貿易はむしろ増えている。
4.無用な挑発を避ける第四に、中国を挑発することは避けるべきだ。高坂正堯先生も言われたとおり、中国との衝突の回避は極めて重要である。ウイグルなどへの中国の人権弾圧には抗議して対処を求め、尖閣諸島でも南シナ海でも日本の主張について譲歩はしないが、無用の挑発はなるべく避けるべきだ。
※本記事は、北岡伸一『覇権なき時代の世界地図』(新潮選書)に基づいて作成したものです。
米中の拮抗、G7主導体制の後退、権威主義や独裁国家の台頭、ウクライナやパレスチナの戦争、影響力を増すグローバルサウス――「自由・民主主義・法の支配」が脅かされる危機の時代に、日本が採るべき道と果たすべき役割は何か? 国連・JICAでの経験を通じて世界の現実を見た国際政治学者が提唱する地政学的思考!
ネット書店で購入する
北岡伸一(きたおか・しんいち)
1948年、奈良県生まれ。東京大学名誉教授。国際協力機構(JICA)特別顧問。東京大学法学部卒業、同大学院法学政治学研究科博士課程修了(法学博士)。立教大学教授、東京大学教授、国連大使(国連代表部次席代表)、国際大学学長、JICA理事長等を歴任。2011年、紫綬褒章受章。著書に『清沢洌 日米関係への洞察』(サントリー学芸賞受賞)、『日米関係のリアリズム』(読売論壇賞受賞)、『自民党 政権党の38年』(吉野作造賞受賞)、『国連の政治力学 日本はどこにいるのか』『外交的思考』『世界地図を読み直す 協力と均衡の地政学』『明治維新の意味』など。デイリー新潮編集部 』
-
岸田首相、G7で中国巡る懸念提起へ インド太平洋議題に
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA083M90Y4A600C2000000/『2024年6月12日 5:00
岸田文雄首相はイタリアでの主要7カ国首脳会議(G7サミット)で中国をめぐる懸念を提起する。日本が議題として取り上げるように働きかけた「インド太平洋」の討議で、欧州各国でも課題となっている経済安全保障の問題に絡め、アジア情勢への関心を引き寄せる。
岸田首相は12日、政府専用機で羽田空港を出発する。13?15日にイタリア南部プーリア州で開くG7サミットに出席し、15日にはスイスでウクライナ和平案を議…
この記事は会員限定です。登録すると続きをお読みいただけます。』
-
豪州の汎用フリゲート調達、ドイツ、スペイン、日本、韓国に情報提供を要請
https://grandfleet.info/indo-pacific-related/australia-requests-information-from-germany-spain-japan-and-south-korea-on-multipurpose-frigate-procurement/※ 「円安」続いているから、「国際競争力」はあるものなのか…。
『2024.06.8
豪国防省は汎用フリゲートの調達について「ドイツ、スペイン、日本、韓国に情報提供の要望書を5月24日に送った」と明かし、Defense Newsは「各国の造船所はフリゲート艦を現地建造する方法について説明するよう求められている」と報じた。
参考:Australia fast-tracks its hunt for replacement frigates
少なくとも秋までには各造船所からの提案が出揃うはずだアルバニージー政権は海軍再編に関する分析結果を今年2月に発表、この報告書は政府に「水上艦戦力を2倍に増やせ」と求めており、具体的にはハンター級フリゲートの取得数を9隻→6隻、アラフラ級哨戒艦の取得数を12隻から6隻に削減し、有人運用も可能な大型無人艦(6隻)と汎用フリゲート(11隻)を取得するよう勧告。
出典:U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 2nd Class Holly L. Herline
汎用フリゲートの取得はアンザック級フリゲートの後継艦を想定しており、報告書は検討候補にドイツのMEKO A-200、スペインのAlfa3000、日本のもがみ型、韓国の大邱級BatchIIもしくはBatchIIIを挙げていたが、アルバニージー政権が勧告に従うかどうか、仮に従った場合でも汎用フリゲートに対する要求要件や調達スケジュールなどは一切不明で、この報告書も汎用フリゲートの調達について「海外で3隻、西オーストラリアで8隻建造すべきだ」としか勧告していない。
この件について豪国防省はDefense Newsの取材に「政府はProject Sea 3000(汎用フリゲート調達のためのプロジェクト)のため、ドイツ、スペイン、日本、韓国の造船企業に情報提供の要望書を5月24日に送った」「公正な調達手続きに基づく評価が進められているため、これ以上の詳細は明かすことができない」と述べた。
出典:Navantia Alfa3000
Defense Newsは「要望書に対する回答期限として各造船所は4週間の猶予が与えられた」「オーストラリアでフリゲートを建造する方法を説明するのに3週間の追加猶予も与えられた」「Project Sea 3000の選定は2025年中に行われ、海外で建造される1番艦の就役は2030年を予定している」「オーストラリアで建造される4番艦から6番艦までは同一仕様になるが、7番艦以降の仕様をどうするかは決まって無い」と報じており、少なくとも秋までには各造船所からの提案が出揃うのだろう。
因みに読売新聞は先月7日「オーストラリアの汎用フリゲート導入には日本、スペイン、韓国、ドイツの艦艇が導入候補に列挙された。年内にも具体的な要求性能などを明らかにし、各国に共同開発を提案すると見られる。既に防衛省は三菱重工業などと非公式の協議を始めており、豪政府の対応を踏まえて検討作業を本格化させる方針だ」
「防衛省は豪政府が求めてくる装備や機能を追加したもがみ型ベースの艦艇開発を検討している」
「日豪で艦艇を共通化すれば相互運用性と抑止力の向上が図れる他、国内の防衛産業への経済的効果も期待できる」と報じた。
出典:海上自衛隊
さらに「日本はオーストラリアの次期潜水艦受注を逃した経験があり、汎用フリゲートの導入候補に列挙されたスペインと韓国には豪軍装備品の開発に関わった実績がある。受注競争は激しくなると見られ、日本政府はライバルとなる3ヶ国の動向や提案内容も注視する構えだ」とも指摘している。
ライバルとなる韓国のHanwhaは「米造船業界への投資」を兼ねてAustal買収に動いており、Austal側も「豪海軍や米海軍の元請け企業としての立場、防衛契約に関する所有権事項を考慮するとHanwhaの買収案は豪米当局から承認される可能性が低い」「Hanwhaが豪米当局の承認について追加の確実性を提示できれば当社はさらなる関与に前向きだ」と含みを持たせているため、もし買収が成立するとHanwhaは汎用フリゲートの受注戦で著しく有利になるだろう。
出典:HD Hyundai Heavy Industries FFX-III
現代重工業もGE Aerospaceと「輸出向け艦艇に最適化された推進システムの共同開発」で合意、現代重工業はグローバル市場向けの艦艇設計・建造を、GE Aerospaceは同艦艇向けのガスタービン供給を担当し、輸出向け艦艇のMRO事業やオーストラリアが調達を検討している汎用フリゲートなどでも協力する構えだ。
ドイツとスペインの動きは観測されていないものの、この手の入札で勝利を勝ち取るのは「突き抜けた艦艇の性能」ではなく「どの提案がオーストラリアのニーズを満たしているか」で、オーストラリアのニーズとは海軍の要求要件と産業界の雇用を意味し、提案内容の評価で差が出やすいのは現地建造を通じた豪産業界との協力やサプライチェーンの現地化など「海外建造に関するマネージメント能力」だろう。
関連記事:日本も豪海軍のフリゲート調達に参戦、もがみ型ベースの艦艇開発を検討
関連記事:豪シンクタンク、もがみ型の取得で海軍再編が上手くいくかもしれない
関連記事:オーストラリア海軍の再編計画、汎用フリゲートの検討候補にもがみ型が浮上
関連記事:豪州が海軍の戦力構造を小型艦中心に変更か、ハンター級が削減の対象に
関連記事:韓国のHanwha、米軍プログラムの元請け参加が可能なAustal買収に動く
関連記事:現代重工業がGE AerospaceやL3Harrisと提携、豪海軍や加海軍の受注戦で協力
※アイキャッチ画像の出典:海上自衛隊
シェアする
ツイートする
Twitter で Follow grandfleet_infoTweet Share +1 Hatena Pocket RSS feedly Pin it 投稿者: 航空万能論GF管理人 インド太平洋関連 コメント: 50 』
-
準同盟化?深まる日本とフィリピンの安全保障関係
https://kaiyoukokubou.jp/2024/06/10/japan-philippines/『2024.06.10
contents
安全保障面で急接近 両国にとってはWin-Win 中国の戦略的ミス
安全保障面で急接近
日本の周辺国のうち、フィリピンは中国や韓国と比べてあまり話題になりませんが、近年は安全保障面での関係を強めている重要国です。
過去を乗り越えて友好関係を築いてきたなか、対中国で似た苦悩を抱える日比両国の距離は急速に縮まっています。
今までは経済面での結びつきが強く、軍事協力は主に人道支援などに限られていましたが、最近は装備品供与や共同訓練などのレベルまで格上げされました。
日本産巡視船を視察した岸田首相(出典:首相官邸)
しかも、フィリピン側には日比の安全保障関係をさらに強化して、自衛隊の一時展開さえも考えている感があります。
すでに海上自衛隊のP-3C哨戒機や航空自衛隊のF-15J戦闘機が訓練目的で一時派遣されており、共同訓練時の手続きなどを簡略化する円滑化協定も協議中です。
この円滑化協定はオーストラリアとイギリスに続くもので、フィリピンとの「準同盟化」を意味します。
フィリピンにおける対日感情は、旧日本軍の戦争犯罪のせいで戦後しばらくはよくなかったものの、経済・文化交流を通じた努力と対中国警戒の高まりによって、いまや準同盟国になれるまで改善されました。
すなわち、両国は過去を乗り越えたのみならず、現在進行形の脅威を見据えて次のステップをふみ出した形です。
両国にとってはWin-Win
では、日比両国の準同盟化は何を意味するのか?
まず、軍事力で劣るフィリピンにとっては装備の近代化、自国軍の能力向上を期待できます。
これは日本による巡視船の供与や日本産レーダーの輸入にも表れていて、ここに自衛隊の一時展開が加われば、南シナ海で動きを強める中国に対するけん制になります。
また、フィリピンの同盟国であるアメリカは、かつて撤退した米軍を再び展開させている最中なので、日本の軍事的関与はこれを補完するものです。
ジプチのように自衛隊が事実上駐留する可能性は低いものの、訓練名目での定期派遣は常態化すると思われます。
海自とフィリピン海軍の共同訓練(出典:海上自衛隊)
一方、日本側としてはシーレーン保護と台湾有事を考えたとき、南シナ海に面して台湾のすぐ南にいるフィリピンは戦略的に極めて重要です。
現在、日米両国は西太平洋での対中国防衛を進めていますが、沖縄〜台湾〜フィリピンのラインはまさにその最前線になります。
この防衛ラインを巡る攻防が行われるわけですが、これは皮肉にも太平洋戦争で日本がアメリカに対して試みたものを今度は中国側に逆用したものです。
いずれにせよ、日比両国の動きは対中国では「Win-Win」といえるもので、共通の同盟国・アメリカも巻き込んだ外交・安全保障戦略の一環です。
中国の戦略的ミス
こうした日比両国の急接近は、当然ながら中国にいら立ちを覚えさせるものです。
しかし、これは南シナ海への進出を強引に進めたり、フィリピン側に圧力をかけてきた中国側のオウンゴールの結果にほかなりません。
おそらく中国側はフィリピンの抗戦意志とともに、同国の対日感情を見誤っていたのではないでしょうか。過去を巡る問題があっても、普通は目前にせまる脅威への対処を優先します。
これは北朝鮮を前にして関係改善を進める日韓両国の例を見ても明らかですが、中国は「歴史カード」が持つ効果を過信していたとしか思えません。
その結果、過去の日本よりも現在の中国を警戒する国々との間に認識のズレが生じて、むしろ中国側に不利な状況を作り出しました。
「昨日の友は今日の敵」という言葉があるように、国際関係においては「昨日の敵は今日の友」というのも事実なのです。
単純明快な理論ですが、以前から歴史カードに頼ってきた中国は、その効果が年々薄れているにもかかわらず、未だにそれにとらわれています。
こうした中国側の期待や認識はあまりに都合がよく、それをしり目に日比両国は今後も準同盟関係を強化していくでしょう。
日本の巡視船をフィリピンに供与する意義について
沿岸警備能力の底上げ 南シナ海で中国の軍事的圧力を受けるフィリピンは、矢面に立つべき海軍が旧式艦艇ばかりで構成されているうえ、平時における沿岸警備能力…
kaiyoukokubou.jp
2024.02.07 』 -
ロシアの苦境
https://blog.goo.ne.jp/mitakawind/e/f53819b5c9f489d59c466882d0184a23※ 『極東の島国に生きる幸せ』…。
※ そういう「幸せ」など、もう「存在しない」状況になっていると思うぞ…。
『2024-06-11 00:10:55
プーチンの苦境なんて、本人以外には分かりようがなく、神のみぞ知る世界なのだが、ウクライナ情勢に変化の兆しが見られるように思う。
補給がままならないウクライナ軍を、装備が消耗し兵力が不足するロシア軍は思っていたほど押し切れなかったと言われる。
ここにきて西側の支援が再開する見通しがたったとは言え、戦局を覆すほどの影響はなさそうなのだが、効果が疑問視されてきた経済制裁では、もう一段の強化が効き始めているようなのだ。
プーチンは、五期目をスタートして早々に中国を訪問し、蜜月を見せつけた。
中国から、西側の制裁で不足する電子部品等を横流ししてもらい、イランからはドローンを、北朝鮮からは弾薬等を(手元で暴発するなど、品質はかなり落ちるとの噂が漏れ伝わるが)輸入するなど、これら悪の枢軸への依存を深めたことに加え、西側の制裁に同調しないインドやトルコが抜け穴になって、制裁の効果が上がらないと揶揄されてきた。
そこで、ロシアへの輸出規制では埒があかないことに苛立つアメリカが、とうとう昨年暮れに、ロシアを支援する企業や金融機関を二次制裁の対象とする規制強化を発表すると、さすがに米銀との取引が出来なくなる(それは世界との取引が出来なくなることを意味する)リスクをとってまでロシアと付き合うほど殊勝な中国人はいないようで、中国系の企業や銀行の中にはロシア離れを引き起こしつつあるとの報道が見られるようになったのだ。
それだけ基軸通貨としての米ドルは今なお強いということでもある。
プーチンは五期目の就任演説の際、浮かない顔をしていたようで、それはショイグ国防相を更迭し、後任に軍事の素人を(しかし経済通を)置かざるを得なくなったからだと解説されたが、経済制裁も効き始めているのではないだろうか。
ロシアで戦時経済が構造化すれば、なかなか泥沼から抜け出せそうになく、ロシアの将来の発展は益々遠のく。
そもそも「制裁」は外交や対外政策のツールであって、武力によらずに(軍事と並ぶハードパワーである)経済の力を使って、相手の行動変容を促すものだ。
もともと中国の得意技で、今なお福島原発処理水を巡って日本の水産物を禁輸しているし、コロナ禍での原因調査を巡ってオーストラリアを苛めたし、台湾に対しては日常的に経済的に威圧している。
中国の武器は14億ものマーケットの魅力であり、アメリカの武器は技術力や基軸通貨ドルというわけだ。
ウクライナ戦争に当て嵌めれば、一般に戦争は「意思」と「能力」の掛け算と言われるが、プーチンの戦争への「意思」を変えられない以上は、継戦「能力」を削ぐために物資の輸出を制限し、プーチンの行動変容を促すものだ。
金融制裁強化は、これと絡めて、抜け駆けして輸出する中国等の企業を、金融面から追い込んで行動変容を促すものだ。良し悪しは別にして、これが政治の現実である。
もとよりアクションがあればリアクションがあり、人の世はリニアには進まないものだ。おまけに、戦争には「霧」が多く、一寸先は闇だ。
日本人にとって、そもそも地理的に遠いヨーロッパの出来事である上に、戦争から距離をとりたがる国民性であり、平和憲法の日本に出来ることは限られるという諦めもある。
地理的に遠い日本では、ヨーロッパとは違うサプライチェーンの構造がまがりなりにも機能しており、日本人の関心は薄くなりがちだ。国会で、野党は世界平和やら政治理念よりもちまちました政治闘争に明け暮れ、与党はその防戦に明け暮れる。
皮肉を込めて、極東の島国に生きる幸せを噛み締めつつ、ロシアとウクライナの情勢を見守りたい。明日は我が身と身構えながら。 』
-
北の国から猫と二人で想う事 livedoor版:日本提供の自衛隊車両がウクライナに到着
https://nappi11.livedoor.blog/archives/5530322.html
『2024年06月10日
日本政府がウクライナに提供することを発表していた3種の輸送車両がウクライナ側に引き渡された。2024年6月6日、在ウクライナ日本大使館がソーシャルメディア「X」アカウントで報告した。
630_360_1684673218-125
これに先立ち、2023年5月21日、広島を訪問していたゼレンシキー宇大統領は、岸田首相との会談時に、自衛隊病院でのウクライナ負傷兵の治療受け入れの決定と、ウクライナ軍のための100台のトラック供与の追加支援につき謝意を伝えていた。
大使館は、「ウクライナ政府の要請を受けて、日本防衛省と日本自衛隊は、2023年5月の決定に従い、ウクライナに複数の輸送車両を提供した。101台の車両が6月5日にポーランドに到着し、その後ウクライナに引き渡された」と書かれている。また大使館は、日本は今後もウクライナを支えていくと明言している。
なお、提供されたのは、陸上自衛隊の汎用小型車両、高機動車(人員輸送車両)、資材運搬車の3種。
参照記事 参考:鈴木宗男議員、「ゼレンスキー大統領がロシアを挑発しなければ、ウクライナ戦争は起きなかった」:鈴木宗男氏:ウクライナはロシアに勝てないと主張、平和を求める:過去ブログ:2023年10月鈴木宗男参院議員 日本維新の会が「除名処分」決定>離党:、、、また鈴木宗男氏が不可解な妄言を吐いている。
例え「ウクライナはロシアに勝てない」のであっても、国連、欧米、自由諸国圏の趨勢(すうせい)は「ウクライナを勝たせよう」の方向へ向かっている。日本もだ、、。 』
-
気をもむ「Kishida」の行方 米国によぎるジンクス
ワシントン支局 坂口幸裕
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN04DOA0U4A600C2000000/『2024年6月10日 0:00
「キシダ(Kishida)さんは9月の総裁選で勝てるのか」「ポストキシダの有力候補は誰か」――。最近、日本の国会議員や政府関係者が訪米した際、支持率が低迷する岸田文雄首相の先行きを危ぶむ質問を受けるのが定番になりつつある。
気をもむのはバイデン米大統領も同じかもしれない。国際会議の場で「この男がウクライナのために立ち上がると思った人は欧米にほとんどいなかった」と持ち上げたのはリップサービスだけで…
この記事は会員限定です。登録すると続きをお読みいただけます。』
『国際会議の場で「この男がウクライナのために立ち上がると思った人は欧米にほとんどいなかった」と持ち上げたのはリップサービスだけでもない。
背景には相対的に米国の軍事・経済力が低下する国際社会で同盟国・日本が担う役割への期待がある。米国はいまも世界の警察官なのか――。ブリンケン米国務長官は仏メディアに問われると「米国だけで全ての問題を管理する能力はない」と認めた。
一方「米国の関与がなければ(世界で)物事を管理するのはより難しくなる。不可欠なのは(同盟・有志国と)より良い協力関係を築くことだ」と明言した。
米国にとって、最大の競争相手と位置づける中国の抑止へ軍事・経済など幅広い面で協力する日本の戦略的価値は高まる。
バイデン氏㊨は2023年7月のNATO首脳会合で岸田氏(㊨から2番目)を持ち上げた(リトアニア・ビリニュス)=ロイター
岸田氏が2021年10月に首相に就いた当初、ホワイトハウスはその手腕を見極めようと身構えた。間髪入れず訪米実現を探る日本側の要望を受け入れなかったのは、苦い記憶があったからだ。
前任の菅義偉氏が21年4月に訪米した時、長期政権となった安倍晋三元首相の後継者としてホワイトハウスに招く最初の外国首脳として厚遇したにもかかわらず、半年も経ずに退陣した。
21年1月に大統領に就いたバイデン氏の1期目4年間では、日本の首相は大半が岸田氏になる。対ロシア制裁に参加し、防衛費の倍増を決めたのを機に岸田氏への信頼は高まった。日本の安全保障の転換を決断した評価と4月の国賓待遇での訪米招待は無関係ではない。
連邦議会にも日本への期待が表れる。トランプ前大統領に近い野党・共和党のジョンソン下院議長は上下両院合同会議で岸田氏が演説する舞台を整えた。
4月11日、首都ワシントンの連邦議会議事堂。「日本はすでに米国と肩を組んでともに立ち上がっている。米国は独りではない」
岸田氏が演壇から呼びかけると、ウクライナ支援継続を促す場面などで座ったままだった共和のマージョリー・テーラー・グリーン下院議員ら保守強硬派も起立して拍手した。
元米政府高官は「岸田氏の発言を聞いて台湾有事があれば日本の自衛隊が米軍と一緒に行動するという宣言だと受け止めた」と話す。安全保障面での役割拡大を約束したとの共通認識が広がる。
民主党のアミ・ベラ下院議員は岸田氏が訪米した後に議会で「我々はアジアでの戦争を防ごうとしており、同盟国も立ち上がろうとしている」と指摘。「自らの政治リスクを冒して(防衛費を)国内総生産(GDP)比2%に引き上げる岸田氏を称賛する」と訴えた。
足元で岸田氏は政権運営で窮地に立つ。米民主党政権で日米関係にかかわった関係者の間ではかつてのジンクスが脳裏をよぎる。
短命に終わった日本の首相の在任期間が民主党政権だった時期と重なるケースがあるためだ。1993年1月から2期8年務めたクリントン氏は7人、オバマ氏は2009年1月から8年間に5人の首相と向き合った。
一方、通算在任期間が1806日の中曽根康弘氏と「ロン・ヤス」関係を築いたレーガン氏、同1980日の小泉純一郎氏と蜜月だったブッシュ氏(第43代)、3188日で過去最長の安倍氏と「シンゾー・ドナルド」と呼び合ったトランプ氏はいずれも共和党政権だった。長期政権は日米安定の土台になった。
岸田氏は10月まで首相の座にいれば就任3年になる。戦後の歴代首相の在任期間は平均2年余りで日本の首相として短命とは言えないものの、岸田氏が退き「日米同盟に不確実性の要因が加わるのは排除したい」(元米高官)のが本音だ。
翻って米国。11月の大統領選で再選を狙うバイデン氏自身も過去の岸田氏との会談で「国内がなかなかうまくいかないんだ」と漏らしたことがある。支持率は低迷し、「米国第一」を掲げるトランプ氏が勝敗を分ける激戦州で先行する。
米ジョージ・ワシントン大のロバート・サッター教授は「日米関係にとって最も大きな変化はトランプ氏の返り咲きだ。自民党内で起こるどんな事態よりもはるかに影響が甚大だろう」とみる。
3カ月後に迫る自民党総裁選と5カ月後の米大統領選。日米の指導者選びは今後の国際秩序にとっても無視できない変数になる。
【関連記事】
・衆議院解散、秋以降の公算 首相の総裁再選へ狭まる道
・シリコンバレーでトランプ支持じわり 民主IT規制に反発 』














