首相「米投資1兆ドル」 トランプ氏「ガス事業で合弁」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA07EG70X00C25A2000000/
『2025年2月8日 4:47 (2025年2月8日 9:15更新)
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神保謙前嶋和弘渡部恒雄
首脳会談後の共同記者会見に臨む石破首相㊧とトランプ大統領(7日、ホワイトハウス)=AP
【ワシントン=黒沼晋】石破茂首相とトランプ米大統領は7日(日本時間8日午前)、ワシントンのホワイトハウスで首脳会談し、共同記者会見に臨んだ。首相は日本の対米投資を1兆ドル(約150兆円)まで引き上げると表明した。
首脳会談はおよそ30分間、その後の昼食会はおよそ1時間20分だった。首脳会談には岩屋毅外相やバンス副大統領らも同席した。
日本の対米直接投資残高は2023年時点で8000億ドル(120兆円)ほどある。19年以降、5年連続で世界トップを維持している。首相は米国産の液化天然ガス(LNG)を購入すると発表した。
トランプ氏は「米国の抑止力・能力を使い同盟国を100%守る」と強調した。「日米で強さを通じた平和をインド太平洋全域にもたらす」と語った。
日本が防衛費を27年度までに国内総生産(GDP)比で2%にする方針を評価した上で「今日の協議によって、さらにかなり増える」と発言した。日本に「対外有償軍事援助(FMS)」として10億ドル(1500億円)分の防衛装備品の売却を新たに承認したと明らかにした。
トランプ氏は日本製鉄による米鉄鋼大手USスチールの買収計画にも触れた。「(日本側と)買収ではなく、多額の投資をすることで合意した」と強調した。買収に対しては「心象的に良くない」とも発言した。
首相は「買収ではない投資だ。日本の技術を加えてよい製品をつくり、日本、米国、世界に貢献できるUSスチールの製品が生み出されていくことに日本も投資する」と主張した。
「どちらかが利益を得る一方的な関係にならないと強く認識を共有した」とも訴えた。
トランプ氏は「日本が近く(米国から)記録的な量の天然ガス輸入を始める」と強調した。「アラスカ州の石油・天然ガス事業に関する日米合弁事業について話し合っている」と明言した。
貿易相手国に同様の関税を課す相互関税について「唯一の公平な方法だ」と述べた。10日もしくは11日に関係会合を開催し、記者会見する見通しを示した。
首相は首脳会談で台湾海峡の平和と安定の重要性で一致したと説明した。「北朝鮮の完全な非核化に向け、日米が連携して取り組むと確認した」と言明した。日本人拉致問題の早期解決に向けてトランプ氏から支持を得たと話した。
両首脳は「日米の新たな黄金時代」を築くため経済と安全保障分野で協力を深めると確認した。日米同盟を強化し、自由で開かれたインド太平洋を堅持すると一致した。
共同声明(和訳版)はA4の紙で3枚にまとめた。首相からの近い時期の公式の来日招待をトランプ氏が受け入れたと明記した。
米国の核兵器を含む戦力で日本を守る「拡大抑止」をさらに強化する方針を明示した。
日本が27年度までに防衛費を国内総生産(GDP)比で2%に高めていく目標を米国が歓迎すると記した。「27年度より後も抜本的に防衛力を強化する日本のコミットメント(関与)を歓迎した」と表記した。
トランプ氏は大統領1期目に日本に防衛費の増額や米軍駐留経費の負担増を求めた経緯がある。
台湾海峡に関し「力または威圧によるあらゆる一方的な現状変更の試みに反対した」と盛り込んだ。日米首脳が出した共同声明でこの表記をしたのは初めて。
米国による対日防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条を沖縄県・尖閣諸島に適用すると明記した。日米安保条約と日米防衛協力の指針に沿い「平時から緊急事態への切れ目ない対応をする日本の役割を再確認する」と書いた。
中国については「東シナ海での力や威圧によるあらゆる現状変更の試みへの強い反対の意を表明した」と強調した。
首相とトランプ氏が会うのは初めて。少人数会談はホワイトハウスの大統領執務室で30分程度開いた。トランプ氏は冒頭に「石破首相は尊敬される方で日本の方から愛されている。執務室に迎えられて大変名誉だ」とたたえた。
首相は「日米の緊密な関係はトランプ氏と今は亡き安倍晋三元首相によって礎が築かれた。大統領と私、米国と日本が力を合わせてさらに世界が平和になり、人々が夢と希望を持って生きていくことができるよう努めたい」と語った。
24年7月、トランプ氏が大統領選中に襲撃された際に撮られた写真に言及した。「歴史に残る1枚だ。必ず大統領に当選し、再び米国を偉大な国、世界を平和にすると確信されたに違いない」と言明した。
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神保謙
慶應義塾大学総合政策学部 教授
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分析・考察 共同記者会見を聞く限り、日米首脳会談は想像以上の成功だったと評価できる。とりわけトランプ大統領から「米国は日本の安全保障にコミットし…アメリカの抑止力の100%を発揮することを約束する」「インド太平洋全域で『力による平和』の原則を推進する」という言質が取れたことは朗報だ。また石破首相を評して「(以前は彼は弱いと思っていたが)彼の偉大さの素質を感じている」という言葉も日本側には心強かっただろう。具体的な日米間の合意事項は共同声明に記されるが、首脳間で有意義な会話ができ、互いをリスペクトする関係が作れたことをまず評価すべきだろう。
2025年2月8日 5:29
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前嶋和弘
上智大学総合グローバル学部 教授
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ひとこと解説 安全保障ではインド太平洋の話は当然ながら中心。岸田ーバイデン時代の大きなテーマだったウクライナの話はなし。「ガザ統治」発言の後なので中東の話題もさすがに避けています。
LNG購入とパイプライン共同開発、ソフトバンクやいすゞの投資などが、関税をどれ』