中国、NATOのアジア進出「断固反対」 EU代表部が談話
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM121ZJ0S3A710C2000000/
『【ジャカルタ=田島如生】中国の欧州連合(EU)代表部は11日夜(日本時間12日朝)、報道官談話を発表した。北大西洋条約機構(NATO)が検討する東京連絡事務所の設置に関し「アジア太平洋地域への東進に断固として反対する…
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中国、NATOのアジア進出「断固反対」 EU代表部が談話
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM121ZJ0S3A710C2000000/
『【ジャカルタ=田島如生】中国の欧州連合(EU)代表部は11日夜(日本時間12日朝)、報道官談話を発表した。北大西洋条約機構(NATO)が検討する東京連絡事務所の設置に関し「アジア太平洋地域への東進に断固として反対する…
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「大就職氷河期」の中国で、高学歴の若者が路上で売るもの
https://news.yahoo.co.jp/articles/9a916a3c8bb89d05f1013900a88d3b3c84d30b95
『「ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス卒業。政治学の知識、売ります。得意分野はロシア・ウクライナ問題、近代化論、ポピュリズム、新自由主義のジレンマ」
【動画】哲学を学ぶ博士課程の学生が、1回88元(約1740円)で売るもの
そのポスターは「ザ・ペーパー」などの中国メディアに取り上げられ、注目を集めた。高等教育を受けた中国の若者たちがいま、道に出て「知識の露天商」を始めている。就職市場で苦労するなか、自らの学歴を生かすための策である。米メディア「クオーツ」によると、16歳から25歳の中国人の若者のうち、5人に1人は無職だという。
労働市場に対する彼らの疑問、不満はいまに始まったことではないが、パンデミックによってさらに強まった。2021年には「寝そべり族」が登場。これは、中国共産党が推奨する「生産主義」に対抗した、「怠ける権利」の主張運動である。こうした疑問の表れとして、最近、新たに知識の路上販売が出現したのだ。
クオーツはこう指摘する。「大学を卒業した何百万もの若者が、職業的展望が学歴と見合わないという未来に直面している」
教養ある若者たちのこうした行動は、国内だけでなく海外にも波紋を広げる。カナダに拠点を置く中国語のオンラインテレビ局「Creaders.net」は、「高学歴な若者による露店がインターネット上で話題になっている」と伝えながら、「おもしろい経験とは言えども、学生研究員が生活のためにこうしたことをせざるを得ないのは、落ちぶれたと感じる人もいる」と報じる。「親たちは子供の進学のために大変な努力をしてきたが、子供たちが路上で商売をしているとなると、その努力の意味も疑わしい」という声もある。
物乞い識者がシンボルに
米メディア「セマフォー」は、こうした若者の動揺が、予期せぬブームを生んでいると報じる。中国で最近ミームとして流行している、「孔乙己(コンイーチー)」のことである。その人物がいま、インターネット上で若者たちの象徴になっているというのだ。
孔乙己とは、20世紀初頭に書かれた魯迅の小説に登場する人物だ。小説のなかで孔乙己は、博学にもかかわらず仕事が見つからず、路上で物乞いをすることになる。
しかし、国営メディアは若者たちを安心させようと躍起になっている。国営放送「CCTV」はこう報じたという。「孔乙己の時代はとっくに過ぎ去った」』
涙ぐましい努力もSNS上には失望感が溢れ…中国共産党にとって真の脅威は若者の失業問題
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/07111102/?all=1
『5月の若者失業率は20.8%で過去最高を更新
中国経済の屋台骨を担う不動産業界の不振で国内の需要が低迷し、生産が伸び悩む状況が続いている。中国国家統計局が6月30日に発表した6月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は49.2となり、3カ月連続で好不調の境目である50を下回った。
【写真を見る】CM出演が転機 いま日本でウケている「中国雑技団」
中国では工場の閉鎖や操業停止が相次いでおり、2億人規模の「農民工」(農村部からの出稼ぎ労働者)がリストラの憂き目に遭っている。
中国労働者に関する香港拠点の情報サイト「中国労工通迅」によれば、今年1月から5月までに中国全土で起きたストライキの件数は140件に上り、同時期に313件のストが発生した2016年以来最多を記録した。実際の件数はその10倍以上だと言われている。
農民工の不満の高まりは懸念材料だが、筆者は「中国の将来を担う若者の就業難の方がより大きな問題だ」と考えている。
今年5月の若者(16歳から24歳)の失業率は20.8%と過去最高を更新した。今年度の大卒生(1158万人)の4月時点の就職内定率は50%前後にとどまっている(6月26日付JBPRESS)。大卒者は来年以降も増える状況にあり、若者の失業問題が年を追うごとに深刻になる可能性が高い。
若者の失業問題は、中国の国力に悪影響を及ぼすリスクをはらんでいる。
中国の大学生は安全志向を強めており、第1志望に国有企業を挙げた学生の割合は47%に達している。中国政府は企業に対して失業中の若者をインターンとして受け入れることを求めているが、その要請に応じる可能性が最も高いのは国有企業だ。高い教育を受けた若者が、最も生産効率が低いセクター(国有企業)に集中する傾向が強まっているのだが、これは中国経済の成長速度がさらに低下する可能性を意味している(6月6日付日本経済新聞)。
地方政府の雇用創出も限界に達している
一方、中国の労働市場全体は既に人手不足の状態にある。経済の担い手である生産年齢人口(16~59歳)が2012年から減り始めている。
中国政府は外国人を受け入れる方針を打ち出していないが、大都市に比べ労働力を確保しづらい地方では外国人労働者なしでやっていけなくなっている(5月8日付毎日新聞)。
若者でも職業訓練を受け、実用的な技術を身につけていれば、雇用はいくらでもある。にもかかわらず、大卒者が就職難にあえいでいるのは、労働市場に極端なミスマッチが発生しているからだ。
その原因は産業界のニーズを顧みることなく、大学の定員を長年拡大し続けてきたことにあるのだが、構造問題を解決するためには長い時間がかかる。
中国政府は窮余の策として地方政府に対し、予算の許す限り多くの新卒者を採用するよう求めている。地方政府も雇用の創出に努めてきたが、限界に達している。
コロナ対策関連支出が急拡大する一方、不動産市況の悪化で土地使用権の売却収入が激減し、地方政府自体が倒産の危機に直面しているからだ。
地方政府が傘下に置く投資会社「融資平台(LGFV)」は、抱える債務が昨年末時点で59兆元(約1150兆円)に達している(6月15日付日本経済新聞)。
地方政府の財政悪化で「LGFVが発行した債券のデフォルトが相次ぐ」との危機感が高まっており、中国最大級の国有銀行がLGFVに対して超長期(25年)の融資や一時的な利払い緩和策を提供する事態となっている(7月4日付ブルームバーグ)。』
『若者の失業問題は「政治的な問題の引き金になりかねない」
政府をあてに出来なくなった中国の若者は、涙ぐましい努力を行っている。
中国では大学生の就職先として軍隊(人民解放軍)が人気を呼んでいる。北京市ではインターネットで入隊を申し込んだ7000人のうち6000人が大学生だったという。危険が伴うとしてかつては避けられていた軍への入隊だったが、「背に腹は代えられない」というわけだ(6月27日付TBS NEWS DIG Powered by JNN)。
高等教育を受けた若者たちが、街頭で「知識の露天商」となっていることも話題を呼んでいる(6月16日付クーリエ・ジャポン)。これと関係しているのは、中国政府が雇用対策の一環として「露天経済」を後押しする動きだ。
政府の狙いはリベンジ消費(自粛生活の反動として期待される消費)が起きているサービス業での雇用拡大だったが、大卒者も自らの学歴を生かすための“苦肉の策”として露天経済に参入している形だ。
「専業子供」の存在も、社会の注目を集めている。専業子供とは、家事をすることで両親から経済的な支援を受ける30~40歳代の若者のことだ。家事を「職業」にしている点で「すねかじり」とは異なるという(6月25日付CGTN Japanese)。新卒者が専業子供になるのも、時間の問題なのかもしれない。
多大な努力の末に大学を卒業しても、それに見合った職業に就けない現実。SNS上はそれに対する若者の失望感で溢れており、中国政府関係者の間では「(失業問題に)適切に対応しなければ、経済の領域にとどまらず、政治的な問題の引き金になりかねない」と危機感が生まれている(7月3日付ブルームバーグ)。
国家安全保障に固執する習近平国家主席の意向を受けて、中国全国人民代表大会(全人代)は6月28日、対中制裁や「西側の覇権」に反撃する法的根拠を与えるために「対外関係法」を可決した。だが、中国共産党の統治を揺るがす真の脅威は経済問題、特に若者の失業問題ではないだろうか。
藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。
デイリー新潮編集部 』
引退した旧幹部が次々と復帰する李強体制の中国
http://blog.livedoor.jp/goldentail/archives/31941584.html
『現中国の首相である李強氏(紛らわしいので、再度書きますが、李克強氏が前首相で、現首相が李強氏です)の実務処理能力が、かなり低い事が問題になっています。もともと、習近平氏の腰巾着として出世してきたので、今回の首相抜擢も、間の序列を数段すっ飛ばして、上海共産党書記長から、いきなり首相に昇格です。
当然ながら、周りのヤッカミが凄くて、恒例の大名行列のような、首相の地方巡察の際、現地の共産党トップが出迎えにでないという事が、頻繁に起きています。超官僚組織である共産党で、序列を飛ばした出世というのは、いわば禁忌破りとも言えるので、当然ながら周りの目は冷ややかです。中国における首相の役割は、主に経済政策と地方行政の統括を担当します。国の代表が書記長であるなら、実務のトップが首相という事です。
上からの引き上げで出世した人間にありがちですが、地位についたが良いけれど、その地位に相応しいアイデアや見識が無いという事があります。李強氏の場合、今までは習近平氏に追随していれば、誰からも文句なく出世できたわけですが、首相ともなると、この難しい局面で、立て直しを具体的にしないといけません。結局、高齢で政界を引退した、旧共産党幹部を呼び戻して、特に外交、経済を担当してもらうという事が起きています。
まずは、完全引退を表明していた劉鶴氏が、呼び戻されました。李克強氏が首相をしていた時に、副首相を務めていた人物です。経済通で知られているブレーン的立ち位置だったのですが、なぜか今でも、幹部の経済会議に呼ばれて、政策に参加しています。この方は、いわゆる後ろ盾になる幹部がおらず、実務能力だけで出世してきたので、長老に参加できる目は無く、ここが最終地点と判断しての引退でした。それが、なぜか今でも頼られています。
外交も金融も、実績が無い人物の為、周りからも軽く見られている事が、態度に出てしまっているので、実際に指示を出しても地方政府が言う事を聴くかどうか怪しいという事もあります。そして、いわゆる江沢民政権下で実務を積んだ金融担当者や経済政策立案者を、「出自」を問題にして政界から追い出してしまった為、楯突く人間がいない代わりに、立案してくれる人間もいなくなりました。
習近平氏は、学歴コンプレックスでもあるのか、海外で金融を学んで学位を持つようなハイスペックな人間が嫌いなんですね。ちなみに、権力を取った後に、精華大学から学位を贈られていますが、習近平氏の正式な学歴は、小卒です。これは、本人の問題ではなく、父親の習仲勲氏が、毛沢東に嫌われて、建国のメンバー幹部だったにも関わらず、地方に左遷させられ、反革命分子として不遇な扱いを受けた事による影響です。勉強どころではなく、息子の習近平氏は、いわゆる紅衛兵の吊し上げにあい、公共の場に引き出されては批判されるという過酷な少年時代を過ごしました。なので、学校に通えなかったのです。
おそらく、その復讐なのでしょうが、現在、故郷にある父親の墓は、毛沢東を祀ったメモリアルより面積が広く、規模も大きいです。しかし、政策は毛沢東に準拠するという何とも、皮肉な事になっています。ちなみに父親が毛沢東に嫌われた理由は、独裁について批判し、合議による政策決定を提唱したからです。毛沢東が失敗した経済を立て直した劉少奇氏について、最後まで裏切らなかった事が逆鱗に触れたと言われています。まぁ、父親から見れば、現在の習近平氏は、不肖の息子という事になります。党の重要ポストを失っても、毛沢東に靡かなかった父親とは、真逆の道ですからねぇ。
実際問題として、江沢民時代に育てた人材抜きで、中国の経済を回すのは無理です。』
中国、くすぶるデフレ懸念 6月消費者物価横ばい
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM101YC0Q3A710C2000000/
『【北京=川手伊織】中国でデフレ懸念がくすぶっている。国家統計局が10日発表した6月の消費者物価指数(CPI)は前年同月から横ばいで、2年4カ月ぶりに上昇が止まった。雇用の改善が緩慢で、消費回復が勢いに欠けるためだ。物価上昇を予想する消費者の割合も過去最低となり、物価の低迷が長期化する恐れもある。
CPIのうち、家計の購買力を映すとされる「食品とエネルギーを除くコア指数」の前年同月比上昇率は0.4…
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『多様な観点からニュースを考える
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。
柯 隆のアバター
柯 隆
東京財団政策研究所 主席研究員
分析・考察
こんなに若者の失業率が上昇しているのを考えれば、物価が上昇しないのは当然である。
問題は消費が伸びないことである。コロナ禍が終わって、V字型回復と期待されていたが、実際はL型成長になっている。いつ回復するか、先行きが見通せない。
肝心な経済政策をみると、アクセルとブレーキを同時に踏んでいるようにみえる。
民営企業が成長しないと、経済が活性化しないことがわかっているのに、アリババに対して巨額の罰金を課している。
外資に投資を期待しているのに、安心してビジネスができる環境が整備されていない。これでは、景気が回復しにくい
2023年7月11日 6:13 (2023年7月11日 9:47更新) 』
習近平氏、ソロモン首相と会談 米国と太平洋で綱引き
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB10ALY0Q3A710C2000000/
『2023年7月10日 20:44
【北京=共同】中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は10日、北京を訪問した南太平洋の島国ソロモン諸島のソガバレ首相と会談した。両首脳は全面的戦略パートナーシップ関係を発展させると表明した。国営中央テレビが伝えた。
太平洋地域で中国が影響力を拡大する中、バイデン米政権はソロモンに大使館を開設するなど関与を深め、米中は激しい綱引きを展開。習指導部はソガバレ氏を厚遇し、インフラ整備など経済支援を強化する方針だ。
中国は2019年、台湾と断交したソロモンと国交を樹立。昨年4月には安全保障協定を締結した。香港メディアによると、習氏に先立ち李強(リー・チャン)首相も10日、ソガバレ氏と会談し「わずか4年で関係を急速に発展させた。国交樹立は正しい選択だった」と強調。「対話と交流を拡大し、相互利益のため協力を強化したい」と述べた。
9〜15日の日程で中国を公式訪問したソガバレ氏は中国の手厚いもてなしに謝意を示し、中国との関係強化に意欲を表明。江蘇省や広東省も訪問する予定で「中国の急成長から多くの経験を得たい」と語った。
米国は中国がソロモンを海洋進出拠点に利用することを警戒し、今年1月にソロモンに約30年ぶりに大使館を開設して関係を強化。3月にホワイトハウス高官が同国を訪れて戦略対話を開いた。』
中国・深圳市、「若い移民の街」曲がり角 人口減に直面
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM297IY0Z20C23A6000000/
『中国南部、広東省の深圳市が成長の曲がり角を迎えている。新型コロナウイルス禍や政策変更の影響を受け、2022年の人口は市の設立以来で初めて減少に転じた。交通渋滞や家賃高騰といった都市問題の緩和につながる可能性もあるが、外地から多くの若者を呼び込んで発展してきた成功モデルが崩れる恐れがある。
深圳市は1979年に設立され、中国初の経済特区として政府や共産党の肝煎りで成長を続けてきた。若者や企業を呼び…
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バブル崩壊後の日本に似てきた中国(苦瓜達郎)
〈プロの羅針盤〉三井住友DSアセットマネジメント チーフファンドマネージャー
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB29BJB0Z20C23A6000000/
『最近、企業などへの取材でほぼ例外なく聞くのが、中国の景気回復の弱さです。
中国では人民の不満を背景に、それまで実施されていた厳格な新型コロナウイルス対策が、昨年12月に突如として変更されました。さまざまな規制が緩和された結果、短期的には世界でも類を見ないほどの感染爆発が生じましたが、高齢者以外の死亡は案外少なかった模様です。社会的免疫の獲得に成功したため、経済再開に伴って景気が回復すると、数カ月…
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南太平洋を手に入れたい習近平が日本軍から学んだもの “教本”は旧陸海軍の戦史?
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/07100556/?all=1





『旧日本軍をほうふつとさせる海洋進出を続ける中国。その姿は、かつてわが国が資源を求めて繰り広げた「南方作戦」をなぞるかのようである。南太平洋から「海のシルクロード」まで勢力を広げる彼の国に、私たちはいかに対峙するべきか。早瀬利之氏がレポートする。
【写真を見る】沖縄、台湾、東南アジアも中国領… 「中華国恥図」に描かれた「かつての国境」
1980年ごろの話になるが、東京・神田の古本屋街から『戦史叢書』が次々と消える珍現象が起きていたことをご存じだろうか。
戦史叢書は全102巻、防衛庁防衛研修所戦史室が編纂し、1960年代から80年代にかけて朝雲新聞社から発行された戦記書物だ。内容は戦中の資料を踏まえ、旧陸海軍の元将校たちが、作戦参謀や前線の指揮官、および兵士たちに聴き取りし、詳細に書き残した太平洋戦争の戦史録である。
筆者も40年ほど前、陸軍中将にして軍事思想家であった石原莞爾の研究に取り組んだ際、神田の古本屋で買い求めたことがある。だが、当時全巻67万円。やむなく関東軍編の2巻のみを部分買いしたものだ。同世代の評論家・故立花隆さんは「オレ、全巻持ってる」と自慢していたが、状態のよいものだと今では全巻で200万円以上はするだろう。
『戦史叢書』
全102巻に記された戦史(他の写真を見る)
中国大使館関係者らが買い占め
歴史研究家で5年前までオーストラリア、南洋諸島を視察していた田中宏巳防衛大学校名誉教授が、珍現象のタネ明かしをしてくれた。
「戦史叢書は、かなり前から中国大使館関係者や、中国からの留学生と思われる人たちがごっそりと買い占めていたことが知られています。これは旧日本軍が南方に進出する際に調査した、鉱石、原油などの地下資源を記した場所をさぐっていると見られていました」
田中氏は著書『真相 中国の南洋進出と太平洋戦争』(龍溪書舎)の中でもこう書いている。
〈人口の重心が内陸部から沿岸部へと移り、海の近くに世界経済と直結する産業社会が形成され、海洋国家としての姿を見せ始めたことである。古代から続いてきた内陸アジアに目を向けた大陸国家ではなく、世界と海洋で交流する海洋国家に変貌を遂げてきたことである。(中略)内陸アジアには豊かな未来がなく、海洋に向かって発展することが国家の繁栄を実現し、生き残る道であると確信しているかのようだ〉』
『なぜ買い占め?
ここ数十年の中国の海洋進出はすさまじい。その道しるべとして、彼らは戦史叢書を買いあさっていたのだろうか。実際に中国は、かつて日本海軍が進駐したラバウル、ニューギニアだけでなく、最近ではソロモン諸島の首都、ガダルカナル島のホニアラにも進出し、現地に浸透している。
「アメリカ合衆国は、南太平洋諸島の島々の安全保障を主にオーストラリアに任せていました。しかし、いつの間にか中国人ビジネスマンが食い込み、油断しているうちに農地や港湾の利権を拡張していったのです。中国の経済力が弱かった頃は、誰も危機感がなかったのです」(田中氏)
現在、戦史叢書の内容を把握することは難しくない。国会図書館をはじめとして、全国の主要な図書館に収蔵されているし、防衛研究所によってデジタルアーカイブ化されてもいるので大枚をはたいて買い求める必要はない。
だが、中国の貪欲な海洋進出を目の当たりにしたとき、同書は、彼の国が太平洋に何を求めているか改めて教えてくれる。今なお中国が覇権獲得を、加速させているかのように見えてならないのだ。
「MO作戦」「FS作戦」
ラバウルの戦
日本軍を攻撃するアメリカ軍 ラバウルの戦(他の写真を見る)
戦史叢書において「南洋」に関する記録は20巻近くに及ぶ。そこに書かれた日本軍のどんな行動に中国は関心を持っていたのか。私が注目しているのは「MO作戦」と「FS作戦」とだ。
パプアニューギニアの首都ポートモレスビーは、ラバウル航空隊を苦しめた連合国軍の航空基地があったところだ。当時の最高司令官はマッカーサーである。連合国軍航空基地は4本の滑走路を持ち、米軍のB-17爆撃機でラエやラバウルの基地を夜間爆撃した。対する日本軍は戦線の拡張と米豪連携遮断の両面作戦を立てる。それは、オーストラリアの前線基地だったポートモレスビーを占領し、そこからオーストラリアへ侵攻するというものだ。これが「MO作戦」と呼ばれた。
昭和16年、南太平洋を戦域とする日本海軍は米軍のオーストラリア進出を阻止するため、ニューブリテン島の東端・ラバウルに集結。西側はポートモレスビー、それに続くニューギニア、東側はソロモン諸島からガダルカナルへの進出が計画された。
これと並行するように、当時の海軍軍令部作戦部第1課長の富岡定俊大佐は「FS作戦」を構想する。サモア、フィジー、ニューカレドニアを結んだ線上に基地をつくり、米艦隊のオーストラリアへの進出を遮断するものだ。』
『気になる動き
実際、南海支隊はニューギニア島の険しいスタンレー山脈を越えて豪州軍最大の根拠地ポートモレスビーを攻めるが苦戦している。もし、MO作戦が成功していたら、マッカーサー司令官はシドニー近くまで後退を強いられていただろう。FS作戦も山本五十六連合艦隊司令長官の強引なミッドウェー海戦が優先され作戦は頓挫した。それから80年余り、中国が見せている動きは、まるでMO作戦、FS作戦をなぞっているかのようだ。
神田から戦史叢書が消えて間もなく、中国はサモアを皮切りにフィジー、そしてニューカレドニアと資金力にものをいわせた経済援助を始める。港湾の整備を持ち掛け、表向きは商業埠頭を造るという名目で“赤いビジネスマン”を送り込んだ。現在、オーストラリアのダーウィンには中国企業が工事を請け負った長い埠頭が完成している。いつでも軍用に使える施設で、さらには内陸部にまで入り込み土地を買いあさっている。銅や錫の鉱山を探しているとされる。
気になるのはニューカレドニアをめぐる動きだ。同島はフランスの海外領土で、数千名の軍隊が駐屯しているといわれる。本来であれば中国を警戒するべきだが、中・仏の関係は急接近。今年4月には、突如としてマクロン大統領が大勢の実業家を引き連れて訪中したのはご存じの通りだ。しかも、マクロン大統領は台湾問題について「欧州は米国と中国のいずれにも追従すべきではない」と発言する始末だ。
各国で港の拡張を強化
南太平洋諸国に対する中国の戦略について、防衛研究所中国研究室の飯田将史室長が解説する。
「フィジーとパプアニューギニア周辺は金、銀、ボーキサイト鉱石のほか天然ガスも出ていて、この一帯は地下資源が欲しい中国にとって極めて重要です。しかし、アメリカとオーストラリアがより懸念しているのは、昨年、中国がソロモン諸島との間で安全保障協定を結んだこと。その中に軍事条項も入っているとみられているのです」
南洋の島々に経済的メリットと安全保障を提供することで、アメリカやオーストラリアとの関係にくさびを打つというわけだ。
「中国は南太平洋だけでなく、カンボジア、スリランカ、パキスタンでも港の拡張を強化しており、軍艦を寄港させるのではないかと懸念されています。米豪の軍事力を遮断する中国の試みは十数年前から行われており、そのやり方は“A2/AD(接近させない。領域に入るのを拒否する)”を目的としている。これは、アメリカ軍が太平洋からオーストラリアにまで展開するのを阻止しようとした日本軍のFS作戦に似ている。実際、旧日本軍もアメリカがオーストラリアに近づくのを妨害しようとしました。現在、中国は攻撃型原潜を多数保有しており、空母が南太平洋に出る時にはこれらも周辺に展開するのではないかとみられている。そうなるとアメリカ軍は、危険を冒さないと近づけなくなります」(同)』
『中華国恥図とは
戦史叢書には、南太平洋だけでなく数冊にわたってマレー半島以西における旧日本軍の行動も記されている。そして中国もまた勢力範囲を「一帯一路」政策によって、“海のシルクロード”とよばれるマレー半島の西側にまで広げている。大英帝国の東洋艦隊の基地だったスリランカに巨額の経済援助を行い、2017年、99年間という長さでハンバントタ港の租借権を得た。
元海上自衛隊海将補で、笹川平和財団海洋政策研究所の秋元一峰特別研究員が語る。
「中国がスリランカに拠点を得たのは、インド洋からアフリカ・地中海へ至るための中継地が欲しかったからでしょう。軍事面からはインドがスマトラ島の北西にあるアンダマン・ニコバル諸島に海軍基地を持っている。だから、軍港として利用する思惑もあるでしょう」
それにしても、南洋に飽き足らず、さらなる勢力拡大を図り海洋進出を続ける中国の貪欲さは、どこからくるのであろうか。それを示す一枚の地図がある。前出の田中氏が見つけた「中華国恥図」だ。
1936年、蒋介石が地理学者の白眉初に描かせた「海疆南展後之中国全図」によると、中国の東側の国境・領海は、朝鮮と満州の境から始まり、鴨緑江周辺から東シナ海に下るとある。国境はそこから台湾の西側を通り、南シナ海をぐるりと一周している。また、それ以前の「中華建設新地図」(白眉初の作成)では台湾の西を南下し海南島と西沙諸島までが境界だった。
事実とは異なる地図だが…
図
中華国恥図に描かれた中国の「かつての国境」(他の写真を見る)
ところが、太平洋戦争直前の1939年に改訂された地図になると版図はとたんに拡大する。これが「中華国恥図」だ。
そこでは、北側はバイカル湖、東は樺太から北海道の宗谷沖を下り、日本海の中央を通って、対馬、五島列島の手前までが領海だ。さらにトカラ列島、沖縄全島はもちろん領土、そして台湾はもちろん、フィリピンのセレベス海を抜け、旧ボルネオ島の西側半分も、領土だとしているのだ。
田中氏によると、
「これは、清朝以前の冊封国をも国土と見なしているもので、事実とは全く異なる。国威発揚を狙って作成されたものなのでしょう」
問題なのは、中国の若者たちが、今も昔も、これが本来の中国領土だと信じ込まされて育ってきたことだ。この「中華国恥図」の冒頭文には、ユーラシア大陸もわが領土だとばかりに次のように書いている。
〈わが国は清代全盛期、威信は四隣にとどろき、諸国は版図に入るか入貢して藩と称した。わが国の権力の及ぶところはオホーツク海、日本海、太平洋、アラル海、アフガニスタン、バイカル湖、外興安嶺、マラッカ海峡、スールー海に至る世界の大国であった。しかしわが国は辺境と属国を管理することを知らず、ヨーロッパ諸国が次第に蚕食した。アヘン戦争、清仏戦争、日清戦争、義和団事変の後、藩邦を割譲され尽くした〉
中華国恥図とは、かつての中国領土は今よりずっと大きく、現状に甘んじているのは“国の恥”という意味だ。現在の中国共産党指導者は中華国恥図を教えられた世代だ。』
『中国国民を海洋進出に駆り立てる“興奮剤”
12年前、前出の秋元氏は厦門を旅した際、小学校の教室に掛けられている中華国恥図を見て驚いたという。
「それは小学校用として作られたもので、外枠の実線の内側全てを取り戻さねばならないという教えの意味があるのでしょう。もっとも中華国恥図は2017年に3万点を破棄処分したはずです。しかし、20年に香港国家安全維持法を施行後、香港で復刻版が登場している。北京政府の指示か、あるいは誰かの忖度かもしれません」
中華国恥図を、単なる学校の教材と片付けてはいけない。中国国民を海洋進出に駆り立てる“興奮剤”の役割を担っているからだ。そのことは、地図の実線の上で実際に起きている。
中国がすでに多くの原潜を保有していることは先にも述べた。これに加えて、目下3隻目の8万トン級空母を建造中だ。南シナ海、南太平洋に配置することは十分に考えられる。心配なのは原油・天然ガスが運ばれるシーレーンの保全である。
秋元氏によると、
「インド洋を回るバルク船、タンカー、コンテナ船などの商船は、マラッカ海峡から南シナ海を経て日本へやってきます。南太平洋が中国に支配されると、この海峡からの航行がむずかしくなる。するとオーストラリア沖を迂回(うかい)し、西太平洋を北上するルートを取らざるを得ない。中近東から原油・天然ガスを運ぶことは大変なコストと時間がかかります」
日本人はどう備えるべきか
実際、日本近海では不穏な動きが続けざまに起きている。3月下旬、中国の情報収集艦が津軽海峡から太平洋に出て堂々と南下し、九州の大隅半島沖に接近して東シナ海に出たことが明らかになる。もとより、機関砲を搭載した中国公船が尖閣諸島周辺の領海に侵入して、日本漁船を追いかけまわすのは常態化しており、台湾領の馬祖島と台湾本土を結ぶ海底ケーブルが中国船に切られる事件も起きている。前出の田中氏は、
「鹿児島の領海ギリギリを中国艦船が通過するのは海底ケーブルを探査しており、いざとなれば沖縄とを結ぶ海底ケーブルの切断も視野に入れているはずです」
日本は日米同盟による軍事力で、かろうじて中国を押さえ込んでいるかに見えるが、実態は脆弱だ。専守防衛が国策である日本が敵国に奇襲攻撃された場合、同盟国のアメリカ軍が日本より先に反撃に出ることはない。必ずしも抑止力にはならないのだ。ならば日本人はどう備えなければならないか。
「ウクライナ戦争を目の当たりにして日本人は現実を直視するようになりました。その点で言えば昨年暮れに決定された安保三文書は大転換です。世論調査を見ても過半数の日本人が反撃能力を支持している。ある日、隣国が突然侵略してくる可能性を多くの日本人が肌で感じたはず。自衛隊も反撃の能力を保有し、必要な時は使う。国民はそれを支持していると内外に示すことが大切なのです」(飯田氏)
石原莞爾
石原莞爾が生きていたら(他の写真を見る)
石原莞爾が残した言葉
かつて日本は「北守南進」を国策とし、無謀な太平洋戦争へ突き進んだ。それをなぞるかのような中国の動きを目のあたりにして、私は石原莞爾を思い出さざるを得ない。南進政策を巡って東條英機陸相と対立し、1941年3月末、日米開戦を前に第16師団長を解任された石原は〈現役を去るに臨んで〉との小論を書き残している。そこでは4項目にわたって軍のなすべきことを示しているが、見逃せない一文がある。
〈兵器の製作は国家の全工業力の統合的運用にまつべく、一日も速やかに天才的人格を戴く軍需工業省の創設を熱望いたします〉(雑誌「共通の広場」石原莞爾特集号より)
だが、東條内閣はガダルカナル撤退9カ月後になって軍需省を作り、鍋釜などを徴発した。戦う前に、敵の攻撃の意思をくじくことを最良の戦法とした石原。いま生きていたらどんな言葉を国民に発していただろうか。
早瀬利之(はやせとしゆき)
作家。昭和15年、長崎県生まれ。昭和38年、鹿児島大卒。著書に『タイガー・モリと呼ばれた男』『石原莞爾 満州ふたたび』『敗戦、されど生きよ』などがある。石原莞爾平和思想研究会副会長。
週刊新潮 2023年7月6日号掲載
特集「中国の“教本”は旧陸海軍『戦史叢書』!? ラバウル、ニューギニア、ガダルカナルにも進出 南太平洋を手に入れたい『習近平』が『日本軍』に学んだもの」より 』
加速する習近平の「米一極から多極化へ」戦略 イランが上海協力機構に正式加盟、インドにはプレッシャーか
https://news.yahoo.co.jp/byline/endohomare/20230708-00357090


『7月4日、上海協力機構のオンライン首脳会議があり、イランが正式加盟国になった。同機構はもともと反米・反NATO傾向にあるが、アメリカが敵視する中露と並んでイランが入るとその傾向が強まる。正式加盟国であるインドは微妙だ。
◆イランが上海協力機構に正式加盟国に
7月4日、上海協力機構はインドを議長国としてオンライン形式で首脳会談を開催し、イランの正式加盟が決議された。中国では、まるで勝利宣言のように多くのメディアが報道し、4日午後、北京ではイランの国旗掲揚式典が催されたほどだ。
2001年に、「中国、ロシア、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタン」の6ヵ国により設立された上海協力機構は、2017年にインドとパキスタンが正式に加盟し、今般のイラン正式加盟により、正式加盟国は9ヵ国になった。ベラルーシが正式加盟手続き中で、そのほか多くのオブザーバー国や対話パートナー国あるいは客員参加国・組織などが控えており、世界の全人口の約半分を占めるに至っている。
中国外交部のウェブサイトには習近平国家主席のスピーチの要約と動画が載っている。動画はリンク先の一番下にあるので、中国語ではあるが、興味のある方はクリックしてみていただきたい。習近平のスピーチの全文は、同じ外交部の別のページに載っている。
習近平はイランの正式加盟を祝賀するとともに、「大家族としての団結」を強調した。プーチン大統領も同様に「団結」を強調したのは、インドを意識してのことではないかと、中国のネットでは数多くの見解が発信されている。
たとえば、<拡大には成功したが上海協力機構の内部には微妙な変化 イラン加盟によりインドが最も大きなプレッシャーを受けている>などがある。
◆上海協力機構はもともと反米・反NATOの傾向が強い
上海協力機構は、もともと中国とロシアが中心になって提唱した組織なので、「親米」であるはずもないが、実は2005年にアメリカが加盟したいと言ってきたときには、中露ともに即断で「拒絶」している(詳細は『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』のp.82)。2018年の上海協力機構・青島サミットでは「G7の対抗軸」としてアピールしたこともある。
そのような機構にインドが入っているのは、非常に興味深いことだ。
その主たる理由は、パキスタンが入りたいと言ったからで、パキスタンと激しく対立しているインドは、自国も入りたいとして習近平やプーチンの協力を得て2017年にパキスタンと同時に上海協力機構に加盟した。
それでもアメリカがモディ首相にモーションをかけ、インドを西側に惹きつけようとするまでは、インドの立場は比較的安泰だった。
インドは旧ソ連時代から武器をソ連から購入しており、ロシアになってからもひたすらロシアから購入していたので、プーチンとモディは非常に仲が良かった。
ところが、トランプ政権時代のボルトン大統領補佐官が、「パキスタンとの間で紛争があった時には、国連安保理でインドに有利なように拒否権を使ってあげるから、アメリカから武器を買ってくれないか?」と持ちかけ、アメリカから一部購入するようになった。ウクライナ戦争でロシアの武器の在庫が不十分であることに目を付け、バイデン大統領がさらなる誘いをかけてきているので、モディとしては東西両陣営の間で、中立を今まで以上に保っていたいだろう。したがってアメリカから強烈に敵視され激しい制裁を受け続けているイランが正式加盟したとなると、上海協力機構の色彩が今まで以上に反米・反NATOに傾いていくので、インドは立場上、やりにくくなる側面が出て来るのは否めないにちがいない。
◆習近平にとっては「米一極から多極化への地殻変動」に追い風
しかし、習近平にとっては、インドの「米露」の狭間における葛藤は、そう大きな影響をもたらさない。それどころか、イランという中東の一国が上海協力機構に入ってくれたのは、何よりも心強いことだ。
というのも、今年3月10日に、中国の仲介によりイランとサウジアラビア(以下サウジ)を和解させたことにより、中東諸国が一気に和解外交のドミノ現象を起こしているからだ。
なによりサウジやアラブ首長国連邦などが上海協力機構の「対話パートナー」となってくれたのは、ありがたい限りだ。なぜなら石油生産国から成る組織OPECプラスが中国側に付いてくれることを意味するからだ。
以下に示すのは、OPECプラスと上海協力機構およびBRICSの相関図である。
拙著『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』のp.80~p.81に掲載した図表だが、執筆時の「5月17日時点」のものなので、イランは「メンバー加盟手続き中」になっている。
図表:OPECプラス、上海協力機構およびBRICSの相関図(5月17日時点)
出典:『習近平が狙う「米一極から多極化へ」』p.80-81
これまで米ドルが強かったのは、1974年にアメリカがサウジの安全保障と引き換えに石油を米ドルで購入させるという「ペテロダラー」体制を創ったからだ。しかしサウジは今「自国の利益を犠牲にしてアメリカに奉仕する気は皆無だ!」として、人民元で取引をしようとしている。ほかにも非米陣営では自国通貨同士での取引や、BRICS通貨やアジア通貨基金などの提案もある。
したがってOPECプラスを味方に付けたというのは、脱「米一極支配」だけでなく「脱米ドル」へと向かわせる勢いを加速させるのである。
4月14日に習近平と北京で会談したブラジルのルーラ大統領は15日に会談後の記者会見で、「アメリカは、ウクライナ戦争を助長すべきではない」と呼びかけた。
中国は最近では南米における経済交易を大幅に拡大し、アメリカを抜いて南米大陸最大の貿易相手国となっている。
これは中国がBRICSメンバー国の主要な一員であることと深く関係している。
アフリカと中国との友好関係の歴史は毛沢東時代までさかのぼるほど堅固だ。
ウクライナ戦争による対露制裁に加わっていない国は全人類の85%にのぼる。それに相当する国が、ウクライナ戦争に対する「和平案」を提唱している中国側に付こうとしているので、実効性のないように見える「和平案」が、実はとんでもない力を発揮していることになる。
その背後にあるのは、習近平の行動哲理【兵不血刃(ひょうふけつじん)】(刃に血塗らずして勝つ)にある。これに関しては追ってまた解説したい。
なお、言論弾圧をする中国が「米一極から多極化への地殻変動」を成し遂げ、新たな世界新秩序を構築するようになると、私たちはその新秩序の中で生きていかなければならなくなる。それだけは避けたいと思うなら、この真相を見極める努力をする以外にないと思うのである。
記事に関する報告
遠藤誉
中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。日本文藝家協会会員。著書に『習近平三期目の狙いと新チャイナ・セブン』、『もうひとつのジェノサイド 長春の惨劇「チャーズ」』、『ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略』、『 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。7月初旬『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』を出版予定。』