「中国共産党員」200万人名簿、国際議連が各国と共有
上海の日系企業、5000人の社員記載
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODE233QV0T21C20A2000000
『中国共産党員の名簿とされる200万人弱のデータを日本、米国、英国、オーストラリアなどの議員らで構成する「対中政策に関する列国議会連盟(IPAC)」が入手し、各国と共有していることがわかった。中国の優秀な人材は共産党員である例が多い。雇用企業に利点がある一方、米中対立などを背景に経済安全保障上のリスクを指摘する声もある。
IPACによると名簿は2016年のもので中国から持ち出された。上海を中心にした…
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・IPACによると名簿は2016年のもので中国から持ち出された。上海を中心にした約8万の組織や党員の名前を記載する。
・上海の日系企業の関連組織も300近くあり、約5000人の社員が記載されている。人数比でみると8割超を製造業が占めた。グループで900人規模の企業もあった。米欧のグローバル企業の名前もみつかった。
・IPACのプルフォード事務局長は「中国専門家は中国にある各国の政府組織や企業に中国共産党員が多くいることを知っていたが、この名簿は初めてそれを証明した」と語る。
・同時に「中国共産党は20世紀には見られなかった規模で人権侵害をしている。その党員を雇用しながら『ESG(環境・社会・企業統治)』を訴えるのは偽善的だ。政府や企業は選択を迫られている」と述べる。
・名簿は豪州に拠点を置くサイバーセキュリティー会社「インターネット2.0」も入手し「信ぴょう性が高い」と判断した。同社のポッター最高経営責任者(CEO)は「データが加工されていないと確かめた。名簿にある複数人の身元も調査し、実在を確認した」と説明する。
・日本経済新聞は両者からデータの提供を受けた。名簿が実物かは確証を得ていない。日本政府も関心を示しており、経済安保政策の担当者は「本物かどうかは政府として判断できないが、情報としての価値は高い」と話す。
・中国共産党の党員は19年末に9200万人と人口の1割弱。優秀な人材を現地で確保しようとすれば一定数含まれる。
・松田康博東大教授は「父親や祖父も党の有力者である中国人は政界の中枢と密接な関係を築く契機となる」と指摘。「党員には勤勉なエリートも多く、本来なら貴重な人材になりうる」と強調する。
・一方で「党員は中国の一党独裁に服従する存在でもある」とリスクにも言及する。「仮に党から情報をとってくるように命じられたら従わざるを得ない」と警告する。
・中国では国家の情報収集に関する法整備も進む。17年施行の国家情報法は民間企業に情報収集に協力するよう定める。同年施行のインターネット安全法は、ネット業者に捜査協力を義務付けた。
・米欧各国は中国共産党の企業への影響力や情報収集活動を警戒する。米国は中国共産党員への査証(ビザ)を制限した。
・井形彬多摩大大学院客員教授は「党の意向が反映されやすい企業とされれば、将来的に米欧と取引しにくくなることも考え得る」と警鐘を鳴らす。米中対立が招く事態を想定し、情報管理の徹底などの対策の必要性を提起する。
・中国では外国の政府機関などを除き、外資系企業の多くは自由に現地社員を採用できる。履歴書は一般に所属政党を書く項目があり、企業は党員かを知ることができる。
・英豪の一部メディアは名簿の存在を報じた。豪紙「オーストラリアン」は上海にある米国や英国、豪州の領事館に中国共産党員が勤務していたと提起した。英デーリー・メールはロールス・ロイス、HSBCなど英国のグローバル企業で働いていると明らかにした。
・在日中国大使館「共産党員 各分野で模範的な役割果たす」
在日中国大使館は日本経済新聞の取材に書面で回答した。
・「一部の西側メディアの中国共産党員とされる名簿に関する報道に留意をしている。一連の報道は中国に対する言われなき誹謗(ひぼう)中傷とぬれ衣であり、辻つまが合わないうえ、根拠を欠いている。その本質は中国への敵対感情をあおり立て、イデオロギーの対立を作り出すことにある。
・中国共産党は人民の幸福を実現し、世界平和を守り、人類の進歩を追い求める政党だ。9200万人もの中国共産党員が各分野において模範的な役割を果たしている。中国が成し遂げてきた業績は中国共産党の正しいリーダーシップと党員を含む人民の奮闘によって実現できた。
・国と国とは国際関係の基本原則に基づき互いの制度と国情を尊重したうえで付き合うべきものだ。日本の各界が事実をはっきりと見極め、下心のある人にミスリードされないよう希望している。理性、良心と正義感がある人々は自分なりの客観的な判断をすることができると信じている」
IPACとは
・中国による香港への統制強化などを背景に今年6月に発足した。18カ国と欧州連合(EU)の議員らで構成する。民主主義国が連携し、中国の人権問題に厳しい姿勢で臨むべきだと主張する。 英国のダンカンスミス保守党元党首や、米国の対中強硬派である共和党のマルコ・ルビオ上院議員らが参加している。

