イエス・キリストは実在したのか? 単行本 – 2014/7/10https://www.amazon.co.jp/%E3%82%A4%E3%82%A8%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%AD%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88%E3%81%AF%E5%AE%9F%E5%9C%A8%E3%81%97%E3%81%9F%E3%81%AE%E3%81%8B-%E3%83%AC%E3%82%B6%E3%83%BC-%E3%82%A2%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%83%B3/dp/4163900934?encoding=UTF8&qid=1702371803&sr=8-1&linkCode=sl1&tag=aic-22&linkId=df8d44bffc79f6bd912239b5cf11d4f2&language=ja_JP&ref =as_li_ss_tl
『全米騒然の大ベストセラー
救世主(キリスト)としてのイエスは実在しなかった。いたのは、暴力で秩序転覆を図った革命家(ゼロット)としてのイエスだった。』
『内容(「BOOK」データベースより)
「聖書」はもともと、イエスの死後布教に携わったイエスの使徒たちの手紙や文書を、ひとつに編んだもの。
著者は、それぞれの弟子たちの文献、聖書以外の歴史的な史料を比較調査することにより、聖書で、何が捏造され、何が史実から落とされていったかを明らかにしていく。
イエスとは実際にはどのような人物だったのか?そしてイエスは何を実際に説いていたのか?そしてそれがどのように変質して、世界宗教へと飛躍していったのか?「聖書」の物語と、実際の史実の差から見えてきたものとは?イスラム教徒による実証研究。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
アスラン,レザー 作家・宗教学者。1972年テヘラン生まれ。1979年イラン革命時に家族とともに米国に亡命。サンタ・クララ大学で宗教学を学んだあと、ハーヴァード大学神学大学院およびアイオワ大学創作学科小説部門で修士号取得。同大学でトルーマン・カポーティ基金小説部門の特別研究員およびイスラーム入門講座の講師を務めたあと、カリフォルニア大学サンタ・バーバラ校で宗教史の博士号を取得。現在、同大学リバーサイド校創作学科准教授
白須/英子 翻訳家。日本女子大学英文学科卒業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) 』
『popon.No6
5つ星のうち5.0 イエスを人物として歴史的に見ると…… 2014年8月2日に日本でレビュー済み Amazonで購入
この本の日本語のタイトルには、ちょっと違和感を覚えます。
原題は、『ZEALOT — The Life and Times of Jesus of Nazareth』です。
著者は、ナザレのイエス(著者によれば、イエスと言う名はとても平凡な名前なので多くの「イエスさん」がいた。当時、名字と言うものがなかったので地名を付けて呼び、その人を特定した、と言う事のようです。)が実在の人物であるとし、それならば、どのようにしてイエスが、世界的に受け入れられようになるキリスト教の源になったのかということを「歴史的に」考察しようと試みました。イエスの生きた時代の考証、そしてその死後どのようにキリスト教が出来上がっていったかと言うことです。
興味深いことに、著者であるレザー・アスランがムスリムです。この本文の前の「本書の執筆にあたって」で、彼は次のように書いています。彼は、イランで生まれ「自分はペルシャ人だからムスリムなのだ」という思いしかなく、宗教的伝統のある社会に生まれた人にとって、宗教は肌の色と同じくらい生来のもので特に感慨はないと書いています。考えてみれば、我々は仏教徒ということになっていますが(あるいは神道か)、自分自身で決めたことではありませんね。
彼は、学者として宗教学の研究を進め、イエスを歴史上の人物として再考し、実際にどのように生きた人であるのかに焦点を当ててこの本を書き上げました。ですから、福音書やその他の資料を精査し、どの部分に歴史的意味が含まれているかを判断して、いわば「歴史書としてのキリスト教について」が書かれていると言えます。この本の本文は277ページありますが、原注として70ページほど割いています。自分の偏見が入らないように、忠実に資料を研究したという意思が窺えると思います。
1世紀当時のパレスチナで数多いた「メシアと名乗る人」の一人であったイエスが、どのように神格化されて世界中に信仰者を得るまでになったのかというお話は、日本での「アマテラス」が天皇家にとってどのように重要な物になったのかという本、『アマテラスの誕生』と『伊勢神宮の謎を解く』を読んだ時と同様のワクワク感を得られました。
ナザレのイエスはユダヤ人であり、ユダヤ教の信奉者です。彼は、人類の平和などを考えていたわけでなく、ユダヤの尊厳を考えていたひとりの革命家です。つまり、ローマ帝国からすると、ローマにはむかうテロリストのひとりと言うことですネ。とても興味深いです。イエスはイエスで、自分がテロリストとして捕まって死刑にならないようにいろいろな手管を使っています。例えば、イエスは自らのことを「メシア」とは言っていません。 しかし、ついにイエスは自分の正体を明らかにするときが来ます。本書によるとこう書かれています。
「異教徒支配からのイスラエルの解放を記念する過越祭が近づくと、イエスはようやくこのメッセージをエルサレムに持ってゆく決意をした。熱情という武器で武装した彼にとって、今こそ、神殿の権威者と、事実上この聖地を支配しているローマ人監督官らに真っ向から挑戦する潮時だった。」
そして、「お前は、メシアか。」、「お前は、ユダヤの王か。」と問われ、「そうである。」と答えて、磔となるのです。クライマックスですねえ。
ローマでは、国事犯処罰の一形態として十字架刑が慣例となっていました。犯罪者を公共の場にさらすことにより、国家に反逆を企てる人々に対する見せしめにしたのです。イエスは、その頃数多いた「メシアと名乗る人々」の単なる一人として処刑されました。それが、なぜ、後のキリスト教の基になったのか。それは、「復活」です。イエスが復活を果たしたことが、その他のメシアとの唯一の違いでした。そして、この本の「第3部・キリスト教の誕生」―――後の人々がどのようにイエス像とキリスト教を作り上げて行ったのかというお話になります。
先ず、キリスト教をローマ帝国に受け入れさせること。これが、キリスト教が世界に広まっていく第一歩でした。
そのために、彼らがしたことは、イエスの教えから「ユダヤ教」の教えを巧妙に取り除くこと。イエスは、ユダヤのナショナリストではなく、全世界の平和を願う救世主でなければならなかったのです。
また、イエスを処刑したローマ帝国を正当化すること。つまり、イエスを処刑したのはローマ帝国ではなかった、ユダヤの人民であったと言うように。
どのようにそれがなされていったのか興味のある方は、是非本書を読んで下さい。ここでは書き切れませんから。
もっと少なく読む 93人のお客様がこれが役に立ったと考えています 役に立った レポート
MRNA 5つ星のうち3.0 日本語タイトルが誤解を招く 2018年8月19日に日本でレビュー済み
内容はとても読みやすい。イエスが活動していた時代とその前後の時代のことが良く分かる。また、イエス信奉者たちの争いも、面白い。 大きなマイナスポイントは、この邦訳版の題名である。あたかも本書がイエスという人の存在自体について議論した本であるかのような題名となっている。明らかにそのようにミスリードすることを意図してつけられた題名であり、原著の品格を貶めている。(この邦訳版題名については、若松氏による巻末の解説でも「説明が必要かもしれない」と書かれている。) 23人のお客様がこれが役に立ったと考えています 役に立った レポート
Amazon カスタマー 5つ星のうち4.0 歴史上のイエスに興味のある人へ 2018年6月27日に日本でレビュー済み Amazonで購入
著者は亡命イラン人で青春の若き日にキリスト教に入信し、再びイスラム教に帰教した人です。イエスについて歴史的事実に基づいて考えようとしているので著者の宗教や生い立ちは関係なさそうに見えますが、もともと資料が少ない古代のことなのでどうしても想像や推測で話を進めざるを得なくなります。そこが歴史家の人格が反映するところでもあります。キリストが復活したというのは「ありえない」という常識にたった上で丁寧に話をしています。また、聖パウロと他の使徒たちの反目についても書いています。ただ、使徒たちの教えと違う教えを述べたことでパウロが孤立していたが、エルサレム崩壊で使徒直系の集団が散り散りになり、パウロが大きな力を持ったというのはちょっとあり得ないかなと思いました。人の心というのはそんなに簡単なものでもないかと思います。見向きもされない人は、注目されている人が去ろうとも、やはり集団の中心にはなれません。してみるとパウロは最初から大きな力を持っていたと考えるべきでしょう。また、「イエスを信じれば救われる」というパウロの教えと「主よ、主よ、と呼ぶものが必ずしも皆天国に行くわけではない」という使徒直系の教えは別に対立はしません。このことは後の時代にカトリック教会とルター派の協約の中で確認もされています。 それでも、この種の「歴史上のイエス」に関する本はあまり多くはありませんが、良心的に文献に基づいた丁寧な筆致に、読んだ後もっと他の本を読みたくなる本でした。 24人のお客様がこれが役に立ったと考えています 役に立った レポート
牛頭大王 5つ星のうち5.0 いろいろな疑問が払拭 2014年10月6日に日本でレビュー済み Amazonで購入
キリスト教がなぜこれほど普及し、人類の歴史に影響を与え続けているのかという素朴な疑問について、すこし明らかになったような気がします。(まだまだ疑問は多いですが・・・) 紀元前後当時のユダヤには、救世主を名乗る国家破壊活動者が大勢いたとのこと。キリストと同時に磔の刑を受けた人物が2名もいたし、ゴルゴダの丘とは「骸骨の丘」の意味だったそうですから。
そんな中、ナザレのイエスのみが、後に救世主として崇められ、キリスト教として普及しました。というのも、キリストの復活を目撃した大勢の人の中に、パウロという司祭階級のインテリがおり、自ら教義を編み出して、熱心に布教したからです。イエス・キリスト自身の考えとも微妙に異なっていたとされるパウロのキリスト教が、ローマ人に信仰されるようになって、世界的な普及につながったとされます。
ナザレのイエスはユダヤ12支族による王国の再建を夢見ており、いわばユダヤ人世界に生きてきた人です。キリスト教のその後の有り様は、イエスの目にはどう映ったのでしょうか。 14人のお客様がこれが役に立ったと考えています 役に立った レポート
一木忠治 5つ星のうち4.0 イエスキリストは実在したのか? 2014年9月19日に日本でレビュー済み Amazonで購入
アメリカ人でイスラム教徒が書いたものだか、極めて第三者的な研究成果。私個人はキリスト信者ですが、日頃から、この本の主題と同じ疑問を持っていたので興味深く読みました。イエスキリストは実在していたが、決して「神の子」ではなく、洗礼者ヨハネに感化された「ユダヤ独立運動主義の若者(メシア疑似派)」だったようです。しかし、読み書きも出来ない田舎者。この本の推定は、同じく「使徒言行録」をベースとして書かれた藤沢(遠藤)周作の「キリストの誕生」と言う本と通底するところが多い。その他、最初に書かれた「マルコの福音書」が、最もキリストの実態が書かれていると指摘していることも通説と一致している。 では、キリスト教とは何か。いわゆる「奇跡」と呼ばれるキリストの「神業」が大事なのではなく、キリストの弟子達が布教の中で苦しんで、それを聖書に書き残した、数々の教訓にこそ、「キリスト教の価値」があるように思います。これは、「仏教」と同じ部分が多い。このことは、仏教は紀元前500年に生まれたそうですから、キリスト教の誕生に、仏教との接触(ギリシャ文化を通じて)はあった可能性も否定できない。 32人のお客様がこれが役に立ったと考えています 役に立った レポート
Amazonのお客様 5つ星のうち5.0 世界宗教への変貌がなぜ起きたか 2021年8月17日に日本でレビュー済み
人間としての「ナザレのイエス」が磔刑で死んだ後、(イエスの実弟とされる)ヤコブ、ペテロらヘブライ人グループと、ヘレニストとしてのパウロらの対立関係が起きる。その後、パウロらが確立した異邦人伝道の成果が結果的にローマ帝国での「国教化」に繋がるという粗筋である。イエスとヤコブが徹底した貧者救済の立場から既存権力であるエルサレム神殿と、これを(間接統治に)利用するローマ帝国と決定的な矛盾を起こしたとの解説は非常に納得がいく。著者も言うように、これはあくまで「信仰」とは関わりのない話だが、世俗権力となったその後のキリスト教会の歴史的暴行の数々を思えば、「ナザレのイエス」の純粋性は尚更印象的だ。良書である。 3人のお客様がこれが役に立ったと考えています
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