カテゴリー: 中国の戦略
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https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63096460X20C20A8AM1000/



『【北京=羽田野主、ワシントン=鳳山太成】南シナ海を巡り、米中の応酬が激しくなっている。中国の人民解放軍は26日、中国本土から南シナ海に向けて中距離弾道ミサイルを発射した。一方、トランプ米政権は南シナ海で軍事拠点の建設に関わった中国の企業と個人に制裁を科すと発表した。対立が先鋭化している。
ロイター通信によると、米軍高官は弾道ミサイルが南シナ海の西沙(英語名パラセル)諸島と海南島に挟まれた航行禁止海域に4発着弾したと指摘した。
これに先立ち、香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(電子版)は、中国軍が26日午前、弾道ミサイル2発を発射したと報じた。内陸部の青海省から最大射程5000キロメートルの「DF26」と、沿岸部の浙江省から最大射程2150キロメートルの「DF21D」を1発ずつ発射したという。
DF26は米軍基地のあるグアムを射程に収めることから「グアムキラー」、DF21Dは海上の米空母を攻撃できるとされることから「空母キラー」と呼ばれる。
25日には中国の「北部戦区」が実弾演習のため飛行禁止に指定した区域に米軍のU2偵察機が進入した。中国国防省の報道官は談話を発表し「中国側の正常な演習活動を妨害した」と非難した。「あからさまな挑発行動だ」として米国側に抗議した。弾道ミサイルの発射は米軍の行動に警告するねらいがありそうだ。
中国は南シナ海など近海に米軍艦艇を寄せ付けないようにするため、対艦弾道ミサイルを開発してきた。2019年夏に初めて南シナ海で6発を発射したことが米軍に確認されている。
トランプ米政権は26日、南シナ海で軍事拠点の建設に関わったとして中国の企業と個人に制裁を科すと発表した。24社に事実上の禁輸措置を発動するほか、関与した個人のビザ(査証)を制限する。南シナ海問題で圧力を強める。
画像の拡大
米商務省は、中国国有の中国交通建設の傘下企業など24社を安全保障上の問題がある企業を並べた「エンティティー・リスト」に27日付で追加すると発表した。対象企業に米国製品を輸出する場合は同省の許可が必要となり、申請は原則却下する。
国務省は、関連する中国人と家族に入国拒否などのビザ制限を課す。国務省高官は26日の電話会見で数十人が対象になるとの見方を示した。南シナ海での埋め立てや軍事化を指示した企業幹部らを指定するという。
ポンペオ国務長官は声明で「中国が南シナ海で威圧的な振る舞いをやめるまで行動を取る」とけん制した。ロス商務長官は制裁対象となった24社について「責任を負わなければいけない」と強調した。
ポンペオ氏は7月中旬、中国の南シナ海における海洋権益の主張を「違法」と公式に否定する声明を発表した。これを受け、禁輸措置という実力行使に踏み切った。
制裁対象の中国交通建設は中国の広域経済圏構想「一帯一路」でインフラ開発を担う世界大手の建設会社だ。米政府は融資など契約条件が不透明だとしてアジアやアフリカで影響力を強める同構想を批判している。』
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https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63008470V20C20A8EAF000/

『インドの関係省庁は同国の通信会社に対し、華為技術(ファーウェイ)をはじめとする中国企業の通信機器を採用しないよう指示した。25日の英フィナンシャル・タイムズ(FT、電子版)がインドの当局者、企業幹部の話として報じた。インド政府は書面ではこうした決定を示していない。
FTによると、インドの通信会社の幹部は匿名で「インド政府は中国の通信機器の採用を認めないだろう」と指摘。この幹部は次世代の高速通信規格「5G」の試験でファーウェイや中興通訊(ZTE)などを使うことを、インド規制当局が禁じたと明らかにした。
インド電気通信規制庁によると、同国の携帯電話の利用者(アクティブユーザー)は10億人に迫り、中国に次ぐ世界2位の規模だ。契約者数で同国2位と3位の英系ボーダフォン・アイデアと印バルティ・エアテルはファーウェイと大口の取引がある。インドから排除されればファーウェイなどへの打撃は大きい。
インドが中国の通信機器メーカーを実質的に排除する背景には、両国の間の係争地を巡る対立がある。6月中旬には両国軍が衝突し、インド側に20人の死者が出た。
これを機にインドは経済面で中国への制裁措置を強化。6月末に動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」など中国系の59のアプリの使用を禁止した。インドメディアによると、中国企業によるインドへの投資案件の認可が留保されるケースもある。』
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https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63021720V20C20A8FF1000/

『【北京=羽田野主】中国の人民解放軍が南シナ海や台湾に近い沖合などの4カ所で再び軍事演習を始めた。これまでとは違い、陸空軍は参加せず、海軍主体の演習にした。国内向けにアピールしつつ米国との緊張が高まらないように配慮している様子がうかがえる。
中国全人代の会期中、人民解放軍代表団の会合に臨む習近平国家主席=20年5月、北京(新華社=共同)
画像の拡大解放軍は7~8月にも南シナ海や台湾周辺で演習をした。陸海空軍がそろって参加する統合型の訓練だった。今回は海軍だけの演習に絞った点が大きく違う。
北京の軍事関係筋は「民間船舶の立ち入り禁止区域からみて、海軍の艦艇による射撃訓練が中心になる」と指摘する。海軍が毎年各地でやっている射撃訓練をつなぎ合わせて大規模にみせかけているとの分析だ。
中国海事局は南シナ海や台湾に近い広東省の沖合などで24~29日の日程で軍事演習をすると発表している。
中国メディアは米海軍主催で17~31日に実施中の多国間海上演習「環太平洋合同演習(リムパック)」に対抗するねらいがあると強調した。
解放軍関係者は「米艦艇がリムパックに参加するためハワイに向かっているいまが演習の良い機会だ」と話す。米軍が「不在」のいまなら偶発的な衝突や緊張が高まるリスクは小さい。国内向けには強い習近平(シー・ジンピン)指導部をアピールすることもできる。
25日には米中の経済閣僚が貿易を巡り協議した。米中貿易協議の「第1段階合意」を引き続き着実に実施しそのための条件を整えることで一致した。今回の軍事演習はこうした外交日程に水を差さないように配慮した可能性もある。』
迫りつつある中国による南シナ海「防空識別圏」設定(6月4日(木)8時0分 JBpress)
https://news.biglobe.ne.jp/economy/0604/jbp_200604_2245973674.html



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https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63015680V20C20A8I00000/







『【深圳=比奈田悠佑】中国南部の広東省深圳市が経済特区に指定されて26日で40年たった。市場化改革の実験場として中国経済をけん引し、経済規模は1万倍になった。通信機器の華為技術(ファーウェイ)など有力な民間企業を多く生んだが、米中対立や香港問題でかつてない逆風が吹く。
さびしい漁村だった深圳市は1980年、中国初の経済特区に指定されると急速に発展した。2019年の域内総生産は2兆7千億元(約40兆円)と上海、北京に次ぐ中国第3位の都市だ。1980年比の経済規模でみた深圳の1万倍は、中国全体(216倍)はおろか、同じ時期に特区になった広東省珠海市(1600倍)や福建省アモイ市(900倍)も大きく上回る。
テレビの品質をチェックする工員(1982年、深圳市)=新華社・AP
画像の拡大成長の起爆剤が緩い規制だ。輸入関税や法人税を減免し、外資をはじめ多くの製造業が深圳市に工場を建設した。競売による国有地使用権の民間払い下げや企業破産は深圳で全国に先駆けて実施された。かつての計画経済から市場経済への改革開放のモデル都市になった。
中国国務院(政府)の研究者は「政府が民間経済に介入しなかったことが深圳の成長の秘訣」とみる。北京と深圳の双方で勤務経験のある銀行員は「北京の監督当局は『とにかく法律や規制を守れ』の一点張り。深圳の役人はまず『何か困っていることはないか』と聞いてきた」と話す。
深圳が香港と隣接していることも成長に有利に働いた。安価な労働力を求める外資系電機メーカーなどが香港経由で深圳市に進出し、加工貿易の産業集積地となった。電子部品の製造、流通はいまも盛んで国内外のメーカーを引きつける。
ライトアップされた中国・深圳のビル群(2019年)
40年しか歴史がなく、国内各地から人材が集まる「移民都市」として街が形成されたことも魅力だ。工場での仕事を求めて地方から流入した労働者や子世代はその後、通信やネット企業の発展を支えた。大都市となったいまでも戸籍の取得条件は北京や上海より緩く、中国全土の若者が集まる。平均年齢は32歳と中国全土(38歳、中央値)より若い。
ロボット掃除機の製造ライン(2019年、深圳市)=ロイター
画像の拡大深圳発のグローバル企業は多い。ファーウェイは通信基地局で世界首位の3割超のシェアをにぎり、20年4~6月期にはスマホ出荷でも世界首位に立った。ネットサービスの騰訊控股(テンセント)は「フォートナイト」を開発する米エピックゲームズなど世界のゲーム開発会社やフィンテック企業に積極出資する。ドローンのDJIは米国や日本など先進国で大きな収益を上げる。
グローバル企業が多い分、米中摩擦の打撃も大きい。米政府はファーウェイ製品を使う企業と政府機関の取引を禁じ、同盟国にも排除を呼びかける。米国の技術を用いて製造した半導体やソフトウエアの同社への供給も絞る。米国で1900万人が利用するテンセントの対話アプリ「微信(ウィーチャット)」も米国で禁止される見通しだ。
特区成立30周年の記念式典に出席した胡錦濤・元国家主席(2010年9月、深圳市)=ロイター
画像の拡大香港での国家安全維持法の施行も逆風となる。「一国二制度」の香港は世界から中国への玄関口となり、隣接地の深圳も大きな恩恵があった。国家安全維持法で香港の競争力も陰りそうで、香港経由のカネや人の流入が鈍れば深圳への打撃は小さくなさそうだ。
もともと人件費の高騰や不動産バブルで工場立地拠点としての深圳の魅力は衰えており、市政府の危機感は高まる。
8月中旬には全国で最も早く高速通信規格「5G」の基地局を市内全域に整備した。7月にはIT産業や製造業を活性化するため、高速通信網やデータセンターなどのインフラを整備する計画も打ち出した。25年までに官民で4119億元(約6兆円)を投じる。
深圳市の特区成立を巡っては、秋に国家主席が現地を訪れて祝う慣例がある。20周年に江沢民(ジアン・ズォーミン)氏、30周年には胡錦濤(フー・ジンタオ)氏が記念式典に参加した。今年は隣接する香港の情勢が緊迫するなか、習近平(シー・ジンピン)国家主席の深圳入りがいつ実現するか、どんなメッセージを発するか注目される。
改革開放と経済特区 中国建国の父、毛沢東が発動した文化大革命で荒廃した国内経済を立て直すため、鄧小平氏は1978年に改革開放にかじを切った。計画経済を見直し、ヒトやカネの動きを市場に委ねる試みで、海外企業を誘致するために経済特区が設けられた。80~81年に広東省深圳市、珠海市、汕頭市、福建省アモイ市が経済特区となった。深圳は企業へ積極的に工業用地を貸し出したりして資金を捻出、水道や道路などのインフラを整備して加速度的に発展した。』
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泥まみれ李克強視察と青空の習近平講話が示す苛烈
編集委員 中沢克二
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63015800V20C20A8I10000/





『各地で深刻な洪水被害が伝えられて久しい中国。それでも国家主席の習近平(シー・ジンピン)は一切、被災地に足を踏み入れていなかった。ところが、いわゆる「北戴河会議」が終わるやいなや、突如、水害にあった安徽省に現れたのだ。驚きである。
「(この夏、意見を交わした)長老らから中国政治における治水の特別な意味を諭されたに違いない」「自らというより共産党の内部から圧力を受けての行動だろう」。党内ではこういう受け止め方が多い。
■「戦狼外交」しばし棚上げ
災害対応に当たる軍人らをねぎらう習近平国家主席(奥左から4人目、19日、中国安徽省肥東県)=新華社・共同
画像の拡大確かに元国家主席の江沢民(ジアン・ズォーミン)は、1998年夏から長江流域や東北部で起きた大洪水の救援を指揮するため、予定していた日本公式訪問まで延期。前国家主席の胡錦濤(フー・ジンタオ)も名門、清華大学の水利学部を出た水力発電関係のエンジニア。前首相の温家宝は地質の専門家である。皆、治水には一家言ある。何やらきな臭い。
それだけに最高指導部内で珍しい動きも見られる。習が動いた2日後、競うように首相の李克強(リー・クォーチャン)も1000キロほど離れた別の洪水被災地に姿を見せた。共産党内序列1、2位が時を同じくして被災地視察のため首都、北京を空けるのは極めて異例だ。しかも今は米中衝突さえあり得る非常時なのに、である。
電話協議したライトハイザー米通商代表(左)と中国の劉鶴副首相=共同
画像の拡大とはいえ陰に長老らの圧力もあると考えれば2人の行動はストンと落ちる。危険な対米関係は結局、11月の米大統領選で決着がつくまで打つ手に乏しい。しばらくはコントロールしにくい反米デモにつながるような雰囲気を抑えつつ、最低限、必要な対抗措置をとり、様子を見るしかない。
遅れていた中国の副首相、劉鶴(リュウ・ハァ)と米通商代表部(USTR)代表のライトハイザーの電話協議が25日(中国時間)にあり、2月に発効した「第1段階合意」の進展を確認したのもこの流れにある。いわゆる派手な「戦狼外交」はしばし棚上げになる。
■晴天の下の習近平氏
20日、中国重慶市郊外の被災地を視察する李克強首相(中央、中国政府の「微博(ウェイボ)」から)=共同
画像の拡大20日、李克強は雨靴を水中に踏み入れて泥まみれになりながら、なお水害の渦中にある重慶市の被災地を視察した。普通なら、民に寄り添う「親民宰相」として全国の庶民らから大称賛されそうなものだが、奇妙なことにそうなっていない。多くの中国国民はこの泥まみれ視察を知らないのだ。
当初、視察を伝えたのは李を頂点とする国務院系列の中国政府網によるインターネット報道だけ。国営通信の新華社、国営中央テレビ、共産党機関紙の人民日報など主要中国メディアが公式報道したのは3、4日も後のことだった。異例の遅れであるうえニュースの扱いもせいぜい4番手と小さい。
これらの報道には李がいつ重慶を訪れたのかという日付さえない。もし明記すれば「なぜこんなに報道が遅れたのか」と疑問を持たれるからだ。地元、重慶のメディアの報道も中央に倣って大幅に遅れた。習近平の側近である陳敏爾が重慶トップとして李克強の視察に同行していたのに、あえて数日間、無視したのだ。
対照的だったのは、別の洪水被災地を視察した習近平を扱ったあふれんばかりの報道である。北戴河明けの18日午後、トップが訪れたのは安徽省。ただし、そこは既に洪水が過ぎ去り、復興段階に入っていた。
習の安徽省視察日程は18~21日。これに対し李の重慶訪問は20日からで、習の後半日程と完全にかぶっていた。別格の指導者である「核心」となった習を目立たせるには、李の報道を曖昧にするしかない。
泥まみれで、水につかった農産物を手に表情も厳しい李。対して青空の下、革靴姿でにこやかに話す習。同じ被災地視察なのに、対照的な2人の扱いには、別の政治的な意味もあった。
大禹(う)治水――。習は安徽省の被災地で、黄河の治水に成功した伝説上の聖王で夏王朝の創始者とされる「禹」にわざわさ触れた。自然災害と戦ってきた数千年の歴史を強調したのである。
■毛沢東に倣う習主席
「北戴河会議」で長く注目されてきた江沢民元国家主席(中)と胡錦濤前国家主席(左)の握手。右後方は朱鎔基元首相(1999年、北京の人民大会堂で)
画像の拡大古代から連綿と引き継いできた中国の伝統では、治水に特別な意味が込められている。水を治める能力があるものこそが王や皇帝にふさわしいのだ。それほど暴れる河川を鎮めるのは難題だった。できなければ農民が苦しみ、死に追いやられる。
習も「核心」である以上、これを意識せざるをえなかった。そもそも今年は農暦で必ず大乱が起きるとされる60年に1度の庚子(こうし)の年。既に新型コロナウイルス感染症のまん延という苦難があったが、災いはそれだけではなかった。洪水、水害でも1998年を超す被害が出つつある。
習の安徽省視察にはもう少し生臭い現代政治上の演出も見えた。新中国の建国から間もない1950年、淮河は大洪水に見舞われた。その後、毛沢東は「淮河の治水工事を必ずやり遂げよ」と強く指示。習が今回、視察した堰(せき)も毛の命令を受けた突貫工事で完成したものだった。
今後の政局を乗り切るためにも、自らを淮河の治水を命じて成功させた建国の父、毛沢東になぞらえたい。それには被災のまっただ中ではなく、復興途上の被災地の青空こそふさわしい。毛の揮毫(きごう)を記した壁の前を笑顔で闊歩(かっぽ)する習の写真を中国メディアが配信した意図もそこにあった。
習が、禹の事績と並べて口にしたのは、古代から伝わる故事「愚公、山を移す」。どんな難事業でも諦めてはならないという戒めもまた毛沢東が好んで使い、ソ連訪問の際、会談したスターリンにまで紹介している。中ソ提携に絡め、スターリンが、ロシアの民話である「大きなカブ」を持ち出して、力を合わせる大切さを説いたのに”対抗”したのだ。
ただ、現代の国際政治で毛沢東は一転、鬼門である。トランプを再び大統領選候補者に正式指名した米共和党は、2016年綱領で毛沢東に先祖返りする習近平政治を批判していた。「中国の現在の指導者は毛沢東路線に回帰している」。この綱領は今回も踏襲された。
■次期5カ年計画でも影薄い李首相
24日、米共和党大会の会場で演説するトランプ大統領(ノースカロライナ州シャーロット)=AP
画像の拡大泥まみれの李克強は、今後の長期経済計画を巡る議論からもやや距離のある場所に置かれている。24日、北京中心部にある要人の執務地、中南海で習近平が主宰する重要会議が開かれた。来年から始まる2021~25年の5カ年計画策定を前にした経済の専門家らからの意見聴取である。
そこにはイデオロギー・宣伝を担当する党内序列5位の最高指導部メンバー、王滬寧(ワン・フーニン)や、経済担当の最高指導部メンバーで副首相の韓正、習に近い政治局委員の劉鶴、同じく習側近の共産党宣伝部長の黄坤明らも控えていた。
本来、経済運営が主たる業務である李克強の姿はない。次回共産党大会での最高指導部人事は22年秋以降で、首相の地位は少なくとも23年春まで保たれる。それなら来年からの5カ年計画の議論を仕切るのは李でよいはずだが、どうも影が薄い。
洪水視察を巡る李の報道の扱いが極端に不平等なのも同じ理由だ。習サイドが宣伝部門を牛耳り、政治日程組み立ての主導権を握っているからである。習時代の中国政治は常に苛烈である。
10月に予定する党中央委員会第5回全体会議(5中全会)では次の5カ年計画のほか、2035年までの超長期の経済展望も議論する。習はそれも意識して「眼はじっくり先を見据え、大勢を把握しなければならない」と長期的な視点を訴えた。
厳しい対米関係や国内経済を踏まえた戦略を語ったようで、その実、まだまだ長く君臨するであろう自分に付き従うべきだと暗に勧めているようにもみえる。(敬称略)
中沢克二(なかざわ・かつじ)
1987年日本経済新聞社入社。98年から3年間、北京駐在。首相官邸キャップ、政治部次長、東日本大震災特別取材班総括デスクなど歴任。2012年から中国総局長として北京へ。現在、編集委員兼論説委員。14年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。
クリックすると習近平指導部データへ習近平帝国の暗号 2035
著者 : 中澤 克二
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 1,980円 (税込み)台湾海峡挟み対峙した習近平氏と李登輝氏の因縁
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戦時のステルス北戴河会議、習近平氏が演出する緊張
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中沢克二(なかざわ・かつじ) 1987年日本経済新聞社入社。98年から3年間、北京駐在。首相官邸キャップ、政治部次長、東日本大震災特別取材班総括デスクなど歴任。2012年から中国総局長として北京へ。現在、編集委員兼論説委員。14年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞
SARS知る王岐山隊長がいさめた習近平主席の勇み足
2020/2/12 0:00』 -
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/20580

『米台国交樹立は決して幻ではない(参照:『米台国交樹立も視野に、トランプ対中闘争の5つのシナリオ』)。ただ理屈では分かるのだが、最大の障害はなんといっても、中国。実際にいざ米国がその一歩を踏み出した途端に、台湾海峡戦争を惹起するのではないかという懸念がある。つまり、中国が台湾を侵攻することだ。では、米台国交樹立の3つのシナリオを描いてみよう。
(Yurchello108/gettyimages)
台湾侵攻、中国が戦争をするシナリオ
戦争シナリオ。「台湾は中国の不可分の一部」というのが中国共産党政権の譲れない一線である。この文脈からは戦争が不可避という結論が導き出される。ただ実際に中国は戦争に踏み切れるかというと、必ずしも肯定的とは限らない。「戦争をしない」に9つの理由があって、「戦争をする」には5つの理由がある。紙幅の都合上詳細説明を割愛して列挙する。まず、戦争をしない9つの理由をみてみよう。
1.中国軍は実戦経験が少なく、戦勝経験もほとんどない。
2.海戦(台湾海峡・南シナ海)の難題や高原地帯(インドの場合)の難題(補給・兵站)。
3.一人っ子世代による軍人の構成、戦意の欠落。
4.軍もビジネスの世界にどっぷり浸かっているため、経済的利益の喪失を恐れている(例:米国による個人制裁のリスク)。
5.習近平が軍権を独り占めしているため、前線・現場の即時決断ができず、戦争に必要なスピード感を出せない。
6.海外の反中反共ムードの醸成。
7.軍事(技術)力の実態に疑わしきものが多く、米国との対戦に勝ち目が薄い。
8.経済低迷、米中貿易戦争によるダメージが大きく、中国は財政難に直面しており、戦争に必要な財力が欠落している。
9.戦争に負けた場合、習近平は失脚、政治的生命を断たれる危機に直面する。次に、戦争をする5つの理由を列挙する。
1.中国共産党内の権力闘争や情報伝達の寸断、情報操作がトップの意思決定に悪影響を与え、決断ミスをもたらす。
2.トップの狂気、賭けに出る。
3.偶発的事故による軍事衝突の発生、局所的戦闘の拡大。
4.米国による台湾の国家承認、米台国交樹立。
5.複合的状況の形成(中共中央対外連絡部前副大臣で中国人民大学重陽金融研究所の主任研究員周力氏論文『外部環境の悪化に向けて6つの準備に取り組め』より抜粋引用)①米中関係の悪化と闘争の全面的なエスカレート、②輸出の縮小、産業チェーン・サプライチェーンの寸断、③コロナの再拡大・常態化、④米ドルからの切り離し、人民元とドルの段階的デカップリング、⑤食糧危機の発生 など。戦争をする5つの理由を否定するわけではないが、上記天秤にかけて総合的に判断すれば、戦争は決して理性的な選択でないことが自明の理である。さらに中台双方の軍上層部からそれぞれ「不打第一槍(一発目を撃たない)」の命令が出されているという報道もある(8月19日付、sohu.com海峡導報社)。これは特段の前提が設けられていなければ、基本的に戦争放棄の決断とみるべきだろう。
中国が米国と断交するシナリオ
ただ、戦争こそしないものの、米国が台湾国家承認をした以上、「1つの中国原則」が否定されることになる。これはもはや最後の一線を越えたもので、中国は黙っていられない。考えられるのは米中国交断絶にほかならない。そこで、言い出しっぺはどっち側かだ。米国はしたたかで台湾と国交樹立しながらも、中国との断交を言い出さない場合、中国はどう対処するかが難題中の難題になる。米国が台湾の国家承認すれば、諸国が追随して中国と断交しないまま台湾と国交樹立するだろう。世界各国にとってみれば、むしろ「2つの中国」のほうが都合が良いからだ。問題は中国がこれを受け入れられるかだ。原則論からいけば、中国は米国をはじめ台湾承認した諸国に断交を告げなければならない。
ただ断交は諸刃の剣。ここまでくれば、国連やWHOなどの国際機関はいやでも、正統性を手に入れた中華民国台湾の加盟を認めざるを得なくなる。するとこれらの国際機関においても中国はまたもや「2つの中国」の難局に直面する。つまり、国連は1971年のような代表権承認で中華人民共和国の中国代表権を認め、中華民国政府を追放する決議の採択を行わないまま、諸国同様の姿勢で「2つの中国」を容認することだ。もちろん中国は毅然とした態度で自ら国連から脱退するのも理論上取り得る選択肢ではあるが、なかなか現実的にできるものではない。
米国の対中強硬姿勢は何もトランプ共和党だけではない。民主党は8月20日の全国党大会で採択された党綱領から「1つの中国政策」を削除した(8月21日付ドイチェ・ヴェレ)。11月の大統領選でトランプ共和党と戦うには、対中姿勢の強硬度が主な指標となった以上、民主党も反中に躍起した。故に、たとえバイデンが勝ったとしても、方向性を抜本的に変えることはもはやできない。
中国が米台国交樹立を黙認するシナリオ
中国に残される最後の選択肢は、米台国交樹立を黙認することだ。中国は「台湾独立」に反対している。米国が声をかけて台湾と国交樹立した場合、台湾は何も独立宣言をするわけではない。到底「台湾独立」といえない。単に「中華人民共和国」と「中華民国」の2つの「政府」が実体として存在している事実を認めたに過ぎない。言い換えれば、「1つの中国、2つの政府」、つまり「一国二政府」ということだ。陳水扁が2000年台湾総統に当選した際、当時の連戦中国国民党主席は「一国二政府」に基づく連邦国家構築の構想を打ち出したことがある。これに対して中国側は肯定も否定もせずノーメントの姿勢で、香港式の「一国二制度」がより理想的な案として提示した。
これをみる限り、「一国二政府」と「一国二制度」の類似性が浮上する。政府がなければ、制度も存在し得ないわけだから、当たり前といえば当たり前だ。問題は「政府」の中身だ。それが「中央政府」と「地方政府」の関係であれば、自己矮小化につながるため台湾は受け入れないだろう。逆に対等関係にある2つの「中央政府」と位置づければ、これは恐らく中台双方が受け入れられる最大公約数的な落とし所ではないだろうか。
中国と香港の関係も「一国二政府」の関係であり、ただその前提に「一国二制度」があって「中央政府」と「地方政府」の関係も明確であるから中国は問題としていない。では、台湾の場合はどうであろうか。
まず台湾政府の存在は争われない事実である。次に、中国は台湾政府の違法性を主張できない。違法性があるなら、通常の外交活動を行うことができないからだ。最後に台湾を地方政府と位置づけることができるかというと、これも無理。今までの経緯をみても明らかであるように、台湾は歴然とした中央政府として中国と対話してきたのである。
一方、中国も台湾が「中央政府」であることを黙認してきた。ただ、「中華民国政府」という表現を使っていない。それだけの話だ。中台両政府間の交渉は、海峡両岸関係協会(中国側)と海峡交流基金会(台湾側)という2つの政府間交渉窓口機関を通して行われてきた。両機関の間に合意・調印された数多くの協定は政府間協定以外の何ものでもない。
米国が台湾承認して米台国交樹立したら、これはすなわち「1つの中国」の崩壊、結果として中国は台湾侵攻を発動し、平和が崩壊する。というのが世間の一般的な認識だが、必ずしも当てはまらない。ゼロサムを回避するうえで、落とし所を見つけるのが政治の役目である。今は、政治家の英知が求められている。』
『米台国交樹立の時期
最後に、米台国交樹立の時期について触れておこう。これも3つのシナリオが描ける。まず、トランプが大統領選を控え敗色濃厚になった場合、10月までに電撃国交樹立もあり得るだろう。民主党はすでに党綱領から「1つの中国政策」を削除したため、バイデンが当選しても、米台断交の可能性はほぼなくなっている。トランプがたとえ再選に失敗しても、レガシーができているので、歴史に名が残る。
2つ目のシナリオ。トランプの実質的支持率(必ずしも民意調査の数字とは限らない)がバイデンを上回り、続投に勝算がある場合、米台国交の大事業を次の任期に回し、周到な準備に取り組むだろう。
最後に3つ目のシナリオ。中国をはじめ外部環境に何らか大きな本質的変化が見られ、米台国交樹立の切迫性が薄れた場合、先送りする可能性もあるだろう。』
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中国人とロシア人の「本音」がよく分かる、「逆さ地図」ってナニ?(2013年05月07日 11時11分 公開)
https://www.itmedia.co.jp/makoto/articles/1305/07/news022.html


『先週、安倍晋三首相がロシアを訪問し、プーチン大統領と北方領土交渉を加速化させるということで合意した。
日本の新聞や報道番組は、プーチンの口から「面積等分」の話題が出たとかで“前のめり”で報じているが、個人的には、交渉をダラダラ続ける間に、カネだけ引っ張られるのではないかと心配している。
プーチン、いやロシアが経済連携ぐらいで北方領土を返すわけがない。それは「地図」を見ても明らかだ。
といっても、それはみなさんが日頃よく見ている地図ではない。日本海を中心に南北を逆さにした通称「逆さ地図」(参照リンク)である。
この地図では中国大陸やロシアが下となり日本列島は上。つまり、中国やロシアの“真上”に日本があるのだ。こういう位置関係でロシア人の心に思いをはせると、彼らが「北方四島」をどんな目で見ているかよく分かる。
日本人みたいに毎日、太平洋を眺めて暮らしている民族からするとなかなか想像できないが、ロシア人にとって太平洋という大海原に出るというのはかなり骨が折れる。
特に太平洋艦隊の本拠地であるウラジオストクから、船を出そうとすると目の前にはまるで嫌がらせのように長い島が立ち塞がる。
いわずもがな、日本列島だ。
多くの日本人が見慣れている地図(出典:総務省)
普通の世界地図だと、日本のナナメ上にロシアがでーんと広がっているので、自分たちが邪魔をしているなんて意識はないが、「逆さ地図」で見ると、かなりイラっとする場所に日本があるのがよく分かる。はっきり言うと、邪魔なのだ。
そんな邪魔くさい島のなかで唯一ストレスなく通れるのがサハリンと北海道の間。つまり、宗谷海峡だ。
ここを抜けて、択捉島の脇にある択捉水道を通って太平洋に出るという選択肢しかウラジオストクにはない。こういう唯一の海上交通路(シーレーン)を自分たちだけでガッチリ握っておきたい、という強い気持ちが国家にはある。
「どこでもドア」が発明されない限り、石油やらの資源の運搬は海路に頼るしかない。シーレーンを握られたらかつての日本みたいな兵糧攻めに合って、どんな国でもたちどころに滅ぶ。
ソ連人はそれをよく分かっていた。だから、日本が敗戦したのを見計らって、宣戦布告して火事場泥棒のように樺太を奪い、北方四島もぶんどった。彼らはそこで略奪や虐殺をしたが、それは結果であって、目的はあくまでシーレーンの確保だ。
さらに本音を言えば、東北まで攻め上がるつもりだった。北海道と東北を握れば、津軽海峡というもうひとつのシーレーンも頂戴できる。きたるべき米国の戦いを考えると、これは欲しい。だから、日ソ中立条約なんて丸めてポイとなるわけだ。
四島だろうが、二島だろうが、千島列島を日本にポーンと返しますよ、ということは国際ルールを踏みにじってまで確保したシーレーンを危険に晒(さら)すということだ。いくら冷戦が終わったとはいえ、ロシア人はそんなにお人好しなはずがない。
このようなロシア人の心理は、日本を「目の上のタンコブ」のように思っているもうひとつの国を見ても容易に想像できる。
中国だ。
世界地図を逆さにしたものです(出典:総務省)
「逆さ地図」を見ると、中国もロシアと同じく、太平洋に出るには日本の南西諸島という「壁」が立ち塞がる。台湾の脇を抜けるか、南シナ海方面からぐるっとまわるしかない。これはかなりイラっとする。
ピンときたかもしれないが、この2つの「シーレーン」があるところは、中国が主権を主張しているところだ。南シナ海では先日、ベトナムの漁船が中国軍に炎上させられたし、尖閣諸島はご承知のとおりだ(関連記事)。
要するに彼らのいう「主権」というのは、「シーレーンをよこせ」ということだ。
尖閣諸島沖にあるという天然資源や、豊富な漁場というのももちろんある。だが、中国政府広報が言った「尖閣は核心的利益」とはシーレーン以外の何者でもない。事実、中国は対米防衛ラインとして九州・沖縄から台湾、フィリピンまでのびる「第一列島線」というものまで勝手に想定している。
そんな中国の舵(かじ)をとるのが習近平だが、実は彼も安倍首相がロシアに行く1カ月ほど前、ロシアに行っている。そこで講演した際、尖閣諸島問題で一切譲歩しないという方針を明らかにし、こんなことを言ったという。
「(中ロ両国は)第2次世界大戦の勝利で得た成果と戦後の秩序を守らなければならない」
要するに、「おまえらだって昔は日本からシーレーンをぶんどったんだから、こっちのやることにいちいち文句を言うなよ」と牽制したわけだ。
こういう泥棒みたいな人たちがイラっとしながら日本を見ている。「逆さ地図」はそんな現実を我々に教えてくれる。』
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https://jp.reuters.com/article/usa-china-decoupling-idJPKBN25J0WK

※ ロイターのUSA版の方にも当たったが、該当する記事は探せなかった…。日本語版だけのようだな…。
こういう辺り、要注意だ…。というのは、トランプ発言はこういうことを言っている(そして、日本語版でだけ情報を流している…)が、ムニューシンと劉鶴で、米中合意の第一段階の検証を始めていたりするからだ…。
トランプ発言は「煙幕」で、実態や実際のところは、全然違っていて、「米中ツーカー」ということは、あり得るし、これまでも散々あった話しだからな…。そういう辺り、余程注意深く観察していかないと…。
いつもいつも、情勢判断を誤る…、という話しになる…。
『[ワシントン 22日 ロイター] – トランプ米大統領は、FOXニュースのインタビューで、米中経済のデカップリング(分断)の可能性に言及した。
23日に放送されるインタビューの抜粋によると、トランプ氏は、中国とのビジネスは「しなくてもいい」と述べ、その後、デカップリングに言及。「彼らがわれわれに適切に対応しなければ、私は確実にそれをするだろう」と語った。
米中は約1年半にわたって貿易戦争を繰り広げた後、今年1月に第1段階の通商合意に達したが、トランプ氏は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)を巡り中国の対応を批判。第2段階の合意に向けた交渉の扉を閉ざしている。
ムニューシン米財務長官は6月、米企業が中国で公平に競争できない場合、米経済と中国経済のデカップリングが発生する恐れがあると述べている。』
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中国、ワクチン緊急接種開始 医療従事者らに、実用化急ぐ―新型コロナ
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020082300195&g=int『【北京時事】中国政府は7月22日から医療従事者らを対象に新型コロナウイルスワクチンの緊急使用を正式に開始した。国家衛生健康委員会科技発展センターの鄭忠偉主任が8月22日放送の中国国営中央テレビの番組で明らかにした。臨床試験段階にあるワクチンの有効性や安全性を感染リスクの高い現場でも確認し、実用化を急ぐ狙いもあるとみられる。
緊急使用は「ワクチン管理法」の規定に基づき同委が申請し、薬品監督当局が専門家の検証を経て認可。目的は「医療従事者や出入国検査員らにまず免疫を持たせ、都市運営の安定を確保するため」と説明している。
中国では、国有製薬大手の中国医薬集団(シノファーム)の子会社がアラブ首長国連邦で最終段階の第3相試験を実施するなど、複数の会社が欧米に先駆けた実用化を競っている。国内では臨床試験の一環で、人民解放軍の兵士や国有企業の従業員らにワクチンを接種している。 』













