岸田文雄首相の国賓訪米、何を期待? 日米有識者に聞く
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA058BA0V00C24A4000000/
『岸田文雄首相は国賓待遇で米国を訪れ、バイデン米大統領と10日に会談する。今回の訪問は経済と安全保障の両面で日米が足並みをそろえることがテーマになる。首相の訪米に何を期待するか。日米双方の有識者に聞いた。
「首相は大統領選に翻弄されない決断を」 同志社大の三牧聖子准教授
米国政治外交、国際関係論が専門。東京大教養学部卒、同大博士(学術)。関西外国語大助教、高崎経済大経済学部准教授などを経て2022年より現職。
トランプ前大統領と争う11月の米大統領選を控え、優勢とはいえないバイデン大統領にとって国民からの支持獲得が最重要課題となる。特に中間層にとって目に見える成果を求めて日米首脳会談に臨むだろう。
ロシアのウクライナ侵攻やガザ情勢への対応に追われている米国は、手が回らない対中国で日本の貢献を求めてくる。対中戦略における日本の負担増は米国内向けのメッセージになる。防衛力強化は主体的な決断であるべきで日本としての優先順位をつけつつ、大統領選に翻弄されない決断をする必要がある。
米国民は内向きになっており、大統領候補にも日米の連携強化など外交や安全保障より移民対策など国内問題への対応を求めている。
苦戦を強いられているバイデン氏が世論に配慮した「米国第一」の傾向を強め、「トランプ化」しつつあることには注意が必要だ。
バイデン氏が日米同盟や国際秩序を重視する姿勢を崩さない一方で、前大統領には不透明さが残る。
「もしトラ(もしトランプ前大統領が米大統領選で勝ったら)」に備え、米英豪の安保協力の枠組み「AUKUS(オーカス)」との協力などの連続性を担保することも欠かせない。
(聞き手は馬場加奈)
「同盟の価値、有権者に誇示」 米ハドソン研究所のパトリック・クローニン氏
日中などアジア太平洋の外交・安全保障が専門。米戦略国際問題研究所(CSIS)上級副所長など歴任。現在は米ハドソン研究所のアジア太平洋安全保障部長
安全保障から技術に至るまで日本は米国とともに国際ルールに基づく秩序を守る最前線にいる。
バイデン米大統領がホワイトハウスで岸田文雄首相を国賓待遇で迎えることは日米が戦略的に協力し、強力で前向きな議題に取り組んでいると世界に示す機会になる。
バイデン氏は米国民の利益と価値観に沿った世界を構築するため、主要な同盟国との深い結びつきに成功していると国内の有権者に誇示できる。
日本やオーストラリアのような信頼できる同盟国と競争力を維持し、安全な供給網を支えるための重要な一幕になる。
首脳会談を踏まえ、まず日本は演習から戦闘機・艦船の補修など米軍の部隊との連携を拡大し続けるべきだ。
次にフィリピン、豪州、韓国、インドなど有益な安保協力を築く同盟・有志国と網の目のような2国間・多国間の関係構築に力を入れてほしい。
3つ目が防衛技術の進化だ。将来の安全保障環境のために日本の果たすべき役割になる。長距離攻撃ミサイルや極超音速兵器、(潜水艦による)海中戦なども含む。
(聞き手は坂口幸裕)』