月: 2024年2月
-
-
ゼレンスキー大統領、軍や米英の圧力を受けてザルジニー解任を覆した
https://grandfleet.info/war-situation-in-ukraine/president-zelenskiy-reverses-zarzhnys-dismissal-after-pressure-from-military-us-uk/『BBCは「ザルジニー解任は時間の問題で両者の相違は限界に達している」と報じたが、The Times紙は31日「ゼレンスキー大統領はザルジニー解任を告げたが、上級指揮官や海外のパートナーからの圧力を受けて決定を覆さざるを得なかった」と報じている。
参考:Zelensky U-turns after telling Ukraine’s top general he would be sacked
参考:Zelensky to oust Ukraine’s top general amid tension over new mobilization
両者の関係が改善しないままなら「政治指導部」と「軍指導部」の緊張状態が続くだけThe Times紙は31日「ゼレンスキー大統領はザルジニー総司令官の解任を告げたが、上級指揮官や海外のパートナーからの圧力を受けて決定を覆さざるを得なかった」「今後もザルジニー氏を総司令官のポストに据え置く」と報じており、この記事の内容を要約すると以下のようになる。
出典:左 PRESIDENT OF UKRAINE/右 Головнокомандувач ЗСУ
“ウクライナの政治指導部と軍指導部の緊張は数ヶ月前から高まっていた。ザルジニーへの国民の支持はゼレンスキーよりも高く「彼が政界に進出するのではないか」と憶測を呼んでいるが、こうした噂をザルジニーは強く否定して「戦争に集中している」と主張しているものの、Economistに寄稿した記事の中で「戦争は膠着状態に陥った」と認めてゼレンスキーの楽観的な見方を否定、さらに軍事委員会の採用担当官を大統領府が解任した件についても「補充兵の供給を難しくさせた」と批判している”
“29日に呼び出されたザルジニー総司令官はゼレンスキー大統領が要求した辞任を拒否、そのためゼレンスキーは「解任に関する法令に署名する」と告げ、オフィスに戻ったザルジニーは副官に「自身がクビになった」と伝えた。
この事を知った元大臣と元議員らは「彼は荷物をまとめていることだ」とザルジニー解任をリーク、現地の情報筋はThe Times紙に「彼は提示された国家安全保障会議書記のポストも断った」とも述べている”
出典:СВІТ НАВИВОРІТ ブダノフ情報総局長
“The Times紙の取材に応じた情報筋は「ザルジニーが自身のクビを副官に告げた後、軍の上級指揮官、米国や英国を含む海外のパートナーが懸念を表明した」と明かし、後任候補に浮上していた国防省情報総局のブダノフ中将や陸軍のシルスキー大将は総司令官のポストを拒否したという。
そのためゼレンスキー大統領は総司令官を交代させることを断念せざる得ず、現地メディアが報じた「ザルジニー解任」を否定することになった”
“ウクライナ軍の指揮官達は「ゼレンスキーが再びザルジニーの交代を狙ってくるのではないか」と恐れており、ある指揮官は「ゼレンスキーの後押しがなければザルジニーは自信をもって指揮することは出来ないだろう」と述べている。
さらに後任候補に挙がったブダノフ中将について「彼は小規模の特殊作戦が得意で大部隊を指揮した経験は皆無だ」と、シルスキー大将についても「現場経験だけは豊富だが指揮官からの評判は良くない。軍の立場を守ったり現実の状況に基づいて行動するだけの自立性がなく政治指導部の代弁者と思われている」と指摘した”
出典:СИРСЬКИЙ
“ザルジニーの側近は「軍が彼を信頼していることをゼレンスキーは理解する必要がある。大統領が軍からの信頼を勝ち取りたいなら、まずはザルジニーを信頼することを学ぶ必要がある」と述べ、ある当局者は「ゼレンスキーの顧問なしで両者が会談したのは1年半ぶりだ」と証言している”
The Times紙の記事内容が事実なら「ザルジニー総司令官の解任」は軍や米英の反対に遭って頓挫し「今後もザルジニー氏を総司令官のポストに据え置く」という意味だが、両者の関係が改善しないままなら「政治指導部」と「軍指導部」の緊張状態が続くだけなので抜本的な何かが必要だ。
出典:Zelenskiy Official
それが「ザルジニーに対する信頼」なのか「総司令官の交代」なのかは不明だが、このまま内輪もめを続けてもロシアに利するばかりで何も良いことがない。
因みにワシントン・ポスト紙は「2024年に動員するべき数字や立場を巡ってゼレンスキーとザルジニーの相違が激化した」「いま暫くザルジニーは総司令官の地位に留まるものの正式な大統領令によって解任される」「彼の側近もポストから解任されることが予想されている」と報じている。
出典:Генеральний штаб ЗСУ
追記:ゼレンスキーは参謀本部が提案した45万人~50万人という数字について「(装備品の確保、訓練施設の不足、動員者に支払う資金不足、動員に関する潜在的な問題などを考慮して)現実的ではない」と考えているが、ザルジニーは「死傷者の増加によってウクライナ軍は既に兵力が不足している」「(追加動員は)ロシアが動員している40万人に匹敵する必要がある」と反論して対立しているらしい。
関連記事:BBC、ザルジニー解任は時間の問題で両者の相違は限界に達している
関連記事:ウクライナメディアがザルジニー解任を報道、大統領府や参謀本部は否定
関連記事:ゼレンスキー大統領と軍の不協和音、ザルジニー総司令官に知らせず司令官交代
関連記事:噂されていた3将軍の解任、ゼレンスキー大統領が医療軍司令官の解任を発表
関連記事:ゼレンスキー政権、反攻作戦を指揮したタルナフスキー准将などを解任か
関連記事:ウクライナ側が否定するTIME誌の記事、記者は現大統領顧問が情報源と示唆
関連記事:米タイム誌、大統領の頑固さがウクライナの柔軟性や選択肢を狭めている
関連記事:ウクライナ政府高官、TIME誌の記事内容を否定し情報提供者の排除を示唆
関連記事:大統領と軍部との対立、ゼレンスキーが軍事作戦や指揮に介入したのが原因
関連記事:ウクライナメディア、ゼレンスキーとザルジニーの関係は冷え込んでいる
関連記事:ウクライナ人ジャーナリスト、大統領は軍に失敗の責任を押し付けているだけ
関連記事:ウクライナの政治的分裂は反攻失敗が原因、ロシアに付け込まれる可能性
関連記事:権力闘争の真っ最中? ゼレンスキー大統領が軍上層部に政治に干渉するなと警告
関連記事:政権批判を再開したキーウ市長、現在のウクライナは権威主義に向かっている※アイキャッチ画像の出典:PRESIDENT OF UKRAINE
シェアする
ツイートする
Twitter で Follow grandfleet_infoTweet Share +1 Hatena Pocket RSS feedly Pin it 投稿者: 航空万能論GF管理人 ウクライナ戦況 コメント: 21 』
『 愛国戦線
2024年 2月 01日返信 引用
今何が起こっているのか、本当のところは知る由もない。
ただ、こうした首脳クラス間での不和が顕在化している状況そのものがウクライナにとっては大きな痛手といえ、ロシアを大きく利するだろう。
私個人としてはザルジニー司令官は有為な人材と思うが解任するならするで潔くやったほうが良いのではないか(円滑な引き継ぎ等は大前提として)。煮えきらない関係が長引くのが一番良くない。
23ぱんぱーす 2024年 2月 01日 返信 引用
なんとか留任となったようですが、一度でも解任を口にしてしまったら両者の不和は決定的なものになったと見ていいでしょうね。
ゼレンスキー大統領がここへ来て思い切った理由は何なんでしょう?
ハーシュが書いていたようにザルジニー総司令は水面下で停戦交渉を進めていたんでしょうか。個人的には対話すら拒否して抗戦を続けるゼレンスキー大統領よりも、エコノミスト誌への寄稿で語っていたように現状の不利を客観的に把握出来るザルジニー総司令の方が現実的な判断を出来る人物ではないかと思います。
30 』『
愛国無罪
2024年 2月 01日返信 引用
今回のザルジニー解任記事が相次いで西側メディアにリークされたところを見ると、ザルジニーのバックは戦争継続を願う英米か。
ゼレンスキーは直ちにザルジニーを解任しないと主権は後退し、国土は荒廃し、停戦は困難になり、回復不能な打撃を受けるぞ。
5歴史と貧困 2024年 2月 01日 返信 引用 >ザルジニーのバックは戦争継続を願う英米か。 前提として、2024年は選挙の年であるため「英米」という括りが困難な時期かと。仮に選挙で スナクと保守党 ⇒ スターマーの労働党へ政権交代 バイデンと民主党 ⇒ トランプの共和党へ政権交代 となれば、「戦争継続を願う英米」という条件が崩壊する可能性が高いです。特にトランプは。 西側メディアも、“選挙でどちらがどのように勝つか”に熱中している最中ですから、現政権に対して批判的なのか、支持的なのかも曖昧になりやすい時期で、“分かりやすい構図”にはなり難い。 >ゼレンスキーは直ちにザルジニーを解任しないと主権は後退し、国土は荒廃し、停戦は困難になり、回復不能な打撃を受けるぞ。 そもそも、ゼレンスキーが停戦を徹底的に拒否する抗戦派であり、ザルジニー総司令官が戦争継続に対して現実派(敵との妥協を含むため穏健派と見られやすくなる)でしたので、認識が逆転しているかと。 国土の荒廃と主権の後退は既に発生しており、仮にザルジニー総司令官を解任してもゼレンスキーが大統領である限り停戦は困難なままです。ただ、「どちらかを排除してでも国論を統一したほうが結果的に停戦が近づく」という意図でしたら、一理あると思われます。 8 名無し 2024年 2月 01日 返信 引用 むしろ、三枚舌外交のイギリスあたりが如何にも好きそうな陰謀として、「ゼレンスキーのクビを差し出せば有利に終戦できる」という条件のときに、円滑に差し出せるように、国内指導者の後釜をキープしてるんじゃくぁwせdrftgyふじこlp 』『 2024年 2月 01日
返信 引用
ウクライナ軍の最高指揮官たる大統領の決定に軍が反発して外国の介入でひっくり返されるとかガバガバガバナンスにも程がある
延々と内ゲバするくらいなら早いとこザルジニーを解任したほうがマシ
でも外から見る限りだとブダノフの方がよっぽど信頼できないんだけどね
11歴史と貧困 2024年 2月 01日 返信 引用 >延々と内ゲバするくらいなら早いとこザルジニーを解任したほうがマシ 同意です。欧米の支援の建前として、「ウクライナの主権を守る」、「停戦の判断はウクライナの主権問題でありゼレンスキーの判断次第」でした。 外国の介入で、「ウクライナ軍の最高指揮官たる大統領の決定」が覆されるのであれば、ロシアの介入で「ウクライナの首相の決定を覆す」こともありということになってしまいます。 つまるところ、ワルシャワ条約機構の時代のウクライナとソ連の立場が、北大西洋条約機構のウクライナとアメリカに変わっただけで、【代理戦争を押し付けられる従属国家】という構図が何も変わらないことに。さらに言えば、旧ソ連時代は機構の一部でしたが、今はNATOの一部ですらないので、一番貧乏くじを引きやすい立場です。 6 無能 2024年 2月 01日 返信 引用 ロシアが目指していたゼレンスキーの排除が、曲がりなりにも西側の手によって実現するのは何の皮肉ですかね? 1 』『 Easy
2024年 2月 01日返信 引用
「動員の人数を巡って対立」というのもおかしな話ですね。
補充の兵士が来なければ戦争は継続不能、というのはもはや単なる物理的な事実です。この点において対立が発生するとなると、ゼレンスキー大統領が「俺の人気が下がる50万人動員強化は嫌だが戦争は継続するから、動員無しでロシアに勝て」と軍に要求した、という意味になります。
これに対するザルジニーの対応は「そんなの不可能です、動員をやるか俺をクビにするかどっちかにしてください。少なくとも俺には不可能です」とならざるを得ず。
で、ゼレンスキーが「俺の命令を聞けないならクビだ!」と通告したが。この一連の流れを知ったブダノフとシルスキーが「追加の兵士無しじゃ俺たちだって無理ですよ!」と総司令官就任を拒否した、と。
そんな舞台裏が透けて見えますね。
18 』『 D-day
2024年 2月 01日返信 引用
ゼレンスキーのボチと思われてたシルスキーとブダノフが断ったからでしょう。梅津みたいな、また後始末か、と参謀総長に就くだけの気概はない。それは両者ともにわかる。
しかし、完全にゼレンスキーがソッポ向かれてるように見えるし分裂の兆しがあるように見える一連の流れです。動員進めるにはキエフの割当が増えればクリチコが何かやるかも知れない恐れもあるだろう。
外遊中にクーデターとかの可能性も否定出来ないと思う。
8歴史と貧困 2024年 2月 01日 返信 引用 反転攻勢の前からキエフに政争が戻ってきた、と言われていましたが、内ゲバと分裂が深刻化しているようですね。 組織の意思統一が出来ないのであれば、継戦か停戦かも決まらず、動員に関しても意見がまとめられないまま前線は崩壊せざるを得なくなります。 1 』 -
BBC、ザルジニー解任は時間の問題で両者の相違は限界に達している
https://grandfleet.info/war-situation-in-ukraine/bbc-says-its-only-a-matter-of-time-before-zarzhini-is-sacked-as-differences-between-the-two-sides-have-reached-breaking-point/『Interfax-Ukraine、Kyiv Independent、Ukrainska Pravda、Censor.NETなど複数のウクライナメディアは29日「ザルジニー総司令官が解任された可能性がある」と報じていたが、BBCやEconomistも「ザルジニー解任をゼレンスキーが告げたことを確認した」と報じている。
参考:Недовідставка Залужного. Що ми знаємо, чого не знаємо і що буде далі
参考:The feud between Ukraine’s president and army chief boils over
参考:Volodymyr Zelenskyy prepares to replace Ukraine’s top general本当にザルジニーが解任されると「これまでの報道内容が事実だった」となる
Interfax-Ukraineは「ゼレンスキー大統領はザルジニー総司令官との会談で解任について合意に達した」と、Kyiv Independentは「ザルジニー総司令官が解任された可能性がある」「参謀本部筋もザルジニー総司令官が解任されたことを確認した」と、Ukrainska Pravdaは「ザルジニー総司令官は呼び出されて別のポジションを提案された」「何処かの大使職を提案されたが彼は拒否した」と、独立系のCensor.NETも「ゼレンスキー大統領はザルジニー解任に関する法令に署名した」「この法令は発表されておらず海外パートナーとの調整が進んでいる」と報じた。
出典:Головнокомандувач ЗС України
この報道について参謀本部は「ザルジニー解任は事実ではない」と、大統領報道官も「大統領がザルジニーを解任したというのは事実ではない」と反論したが、BBCやEconomistは「ゼレンスキー大統領がザルジニー総司令官に解任を伝えたことを確認した」と報じており、BBCの報じた内容を要約すると以下のようになる。
“ゼレンスキー大統領は29日午後にザルジニー総司令官を呼び出した。ゼレンスキー、ウメロフ、ザルジニーのみで行われた会談の中で『総司令官からの解任を決定した』と告げ、近いうちに解任に関する法令に署名すると付け加えた。この会談内容は夕方6時頃に大統領府の関係者とパイプのTelegramに漏れ始め、7時頃には現地の有力メディアもザルジニー解任を報じ始めた”
“BBCの取材に応じた政府高官は『大統領府と軍部の対立はロシア軍がキーウ周辺から撤退した直後に始まった』と、別の人物も『ゼレンスキー大統領は安全保障分野の体制を刷新したい述べてザルジニー解任の必要性を正当化した』と、空軍関係者も『もはやザルジニー解任は時間の問題だ』『両者の相違は限界に達している』『この相違は軍事作戦や戦争の見通しだけに留まらない』『正直に言えば異なる考えをもつ人間同士の相違、戦争に負けないために不可欠な信頼関係の欠如だ』と述べた”
“それでもゼレンスキーとザルジニーの関係が急速に悪化した原因ははっきりしない。一部の人々は『ザルジニーに対する国民の支持が信じられないほど高いことに大統領府が嫉妬した』『もし大統領選挙が行われればザルジニーはゼレンスキーと競合できる唯一のライバルになる』と考えている。政府高官は直ぐに法令に署名できなかった原因について『西側のパートナーがザルジニー解任を支持せず事態に介入した可能性』と『後任を誰にするのか決まっていない可能性』の2つが考えられると述べた”
出典:左 PRESIDENT OF UKRAINE/右 Головнокомандувач ЗСУ
さらにEconomistも「劇的な1日は議員による安全保障委員会に送付された文書内容のリークで始まり、参謀本部やザルジニーに近い情報筋が『解任手続き進められている』と確認し、Economistが確認したところ29日午後の会議でゼレンスキーはザルジニーを伝えた。
ゼレンスキーは『国家安全保障会議書記』というポストを提示したがザルジニーは断った」と報じ、BBCもEconomistも独自の情報源から「ゼレンスキーがザルジニーに解任を告げた」と報じ、Financial Timesも「ゼレンスキーが総司令官の後任を準備中」と報じている。
因みにUkrainska Pravdaは昨年12月「ゼレンスキーとザルジニーが衝突することになった発端」について以下のように書いていた。
出典:ArmyInform/CC BY 4.0
“この衝突の発端は2022年3月に実施された社会調査(本格的な戦争がウクライナ人の政府に対する信頼にどのような影響を及ぼすかというテーマ)にあり、当時のゼレンスキー大統領への信頼度は93%で、最も困難な時期に大多数の市民が軍の最高司令官(ゼレンスキー)を信頼しているのだから素晴らしい結果のように思えるものの、同じように大多数の市民はウクライナ軍も信頼(98%)していた”
“大統領の側近は98%の信頼が最高司令官のゼレンスキーに向けられたものなのかどうかを心配していたが、軍への信頼はゼレンスキーではなくザルジニーに向けられたもので、この時期にザルジニーが個人的な慈善基金を設立したため、この基金がやがて政党に発展するのではないかと大統領府は疑い始めた。参謀本部の関係者も本紙に「当時のザルジニーはゼレンスキーや大統領府と正常な関係を保っていたが、4月22日を境に何かがおかしくなった。ザルジニーは基金のことで混乱して直ぐに諦めた」と証言”
出典:PRESIDENT OF UKRAINE
“ザルジニーの野望を最も警戒しているのは大統領府長官のイェルマクで、ある政府関係者は「侵攻初期に大統領とも滞在していたシェルター内でイェルマクは再三、ザルジニーには基金があるのか、メディア戦に精通しているのか、彼には熱心な支持者達がいるのかなどを気にしていて奇妙だと感じていたが、当時はそれほど重要なことだとは思わなかった」と述べている”
“政治的な対立に巻き込まれることを警戒したザルジニーは意図的にメディアへの露出(Telegramへの投稿とメディアに対する数回の取材に応じただけ)を控えたものの、公の場に姿を見せなくなって露出が減ったザルジニーの行動や発言は逆に大きな関心を呼び起こし、彼のことを神と同一するものまで現れ始めた。しかし当時はハルキウやヘルソンでの歴史的な勝利、反攻作戦の準備が進められていたため摩擦は危機的なものではなく、戦争の立役者だった2人の関係に視線が集まり始めたのは反攻作戦が行き詰まりを見せてからだ”
出典:PRESIDENT OF UKRAINE
本ブログはウクライナメディアや海外メディアが報じる「ゼレンスキー大統領やザルジニー総司令官の確執」について何度も取り上げてきたため、BBC、Economist、Financial Timesが言及した確執の原因は見慣れたもので驚きはなかったものの、本当にザルジニーが解任されると「これまでの報道内容が事実だった(もしくは事実に近かった)」となり、どちらにしても管理人は複雑な気分になるだろう。
関連記事:ウクライナメディアがザルジニー解任を報道、大統領府や参謀本部は否定
関連記事:ゼレンスキー大統領と軍の不協和音、ザルジニー総司令官に知らせず司令官交代
関連記事:噂されていた3将軍の解任、ゼレンスキー大統領が医療軍司令官の解任を発表
関連記事:ゼレンスキー政権、反攻作戦を指揮したタルナフスキー准将などを解任か
関連記事:ウクライナ側が否定するTIME誌の記事、記者は現大統領顧問が情報源と示唆
関連記事:米タイム誌、大統領の頑固さがウクライナの柔軟性や選択肢を狭めている
関連記事:ウクライナ政府高官、TIME誌の記事内容を否定し情報提供者の排除を示唆
関連記事:大統領と軍部との対立、ゼレンスキーが軍事作戦や指揮に介入したのが原因
関連記事:ウクライナメディア、ゼレンスキーとザルジニーの関係は冷え込んでいる
関連記事:ウクライナ人ジャーナリスト、大統領は軍に失敗の責任を押し付けているだけ
関連記事:ウクライナの政治的分裂は反攻失敗が原因、ロシアに付け込まれる可能性
関連記事:権力闘争の真っ最中? ゼレンスキー大統領が軍上層部に政治に干渉するなと警告
関連記事:政権批判を再開したキーウ市長、現在のウクライナは権威主義に向かっている
※アイキャッチ画像の出典:Zelenskiy Official
シェアする
ツイートする
Twitter で Follow grandfleet_infoTweet Share +1 Hatena Pocket RSS feedly Pin it 投稿者: 航空万能論GF管理人 ウクライナ戦況 コメント: 19 』
『 Easy
2024年 1月 31日返信 引用
むしろ面白いのは「ザルジニー本人に解任を告げたのにそれを発表出来ない」というドタバタの方ですね。
どうやらブダノフ氏に大統領府では内定していたのが、土壇場になってブダノフ本人から断られた、とのことで。
誰も負け戦の責任者になりたくないので逃げまくる、という光景は1944年の日本軍の人事を彷彿とさせますね。
24 』『 ak
2024年 1月 31日返信 引用
ウクライナメディアだけではなくBBCがこのような報道をした。
というのは穿った見方をすれば、ウクライナの不協和音を報道するよりもザルジニー解任の方が「イギリスにとっては良い事だから」と考える事も出来る訳で。ウクライナ国内だけではなく海外でもそう報じられた事で「決定事項」になし崩しにしてしまう為に、外堀埋めだしてるんじゃないかと想像してしまいます。
現場を知っていて「このままではジリ貧で敗北必至」なのを理解している為に講和路線に傾きかけてる軍部に対して、「絶対に戦争を止める事が出来ない」ゼレンスキーと米英が、講和要素を排除して戦争継続する為の策、なんじゃないかと考えるのは邪推ですかね?
15 』『 general
2024年 1月 31日返信 引用
主戦派:ゼレンスキー政権、米英
講和派:軍部、仏独今後はこの2派閥で駆け引きが始まる感じですかね
6 』『 たむごん
2024年 1月 31日返信 引用
暖かくて安全な後方で、何をやってるんでしょうかね。
前線の兵士は、砲爆撃で大量の血を流して(20000対2000が日本でも報道されています)、ネズミに襲われながら塹壕にいて病気になっているというのに…
戦後の責任追及を恐れているのでしょうか?
本土決戦中に、醜悪な権力闘争ですね。
8gepard 2024年 2月 01日 返信 引用 リンカーンが言ったとされる言葉に『人を本当に試したければ、権力を与えてみよ』と言う言葉があるそうです。 しかし自分がもしも権力者になったときに”こう”成らないと言える人は果たしていかほどでしょうか? 権力の本質は甘い毒だと思っています。誰もが毒だと知っていても、辞められない。 そこに民主主義も権威主義も関係ないのでしょう。 6 』 -
米国政府の命令でパキスタンの裁判所がカーン元首相の政治的抹殺を試みている | 《櫻井ジャーナル》 – 楽天ブログ
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202402010000/『パキスタンでは2月8日に総選挙が予定されているが、本来なら勝利する可能性が高いPTI(正義のためのパキスタン運動)は裁判所の決定により、同党の候補者は「無所属」として立候補することを強いられている。
党首のイムラン・カーン元首相は汚職容疑で懲役3年の判決が言い渡され、2023年8月から収監されている。しかも1月30日に情報漏洩で懲役10年、31日には汚職で懲役14年が言い渡された。
裁判ではメディアや一般の傍聴が一切認められず、検察側の証人や専門家に対する弁護士の反対尋問も拒否されている。この裁判は茶番にすぎず、カーンを2月8日の選挙に出馬させないだけでなく、政治的な暗殺を目論んだと言える。
カーンはアメリカに服従することを拒否、2月24日にロシア軍がウクライナに対する攻撃を始めた際には中立の立場を表明していた。この戦闘の発端は2013年11月から14年2月にかけてアメリカのバラク・オバマ政権がネオ・ナチを使って仕掛けたクーデターであり、元アメリカ政府高官の中にもロシアの動きは遅すぎたと批判する人がいた。
この件については本ブログでも取り上げたことがある:
インターネット・メディアのインターセプトがパキスタン政府の機密文書を公開した。
その文書にはアメリカの国務次官補だったドナルド・ルーやレ・ヴィグリーを含む国務省高官が当時の駐米パキスタン大使のアサド・マジード・カーンと2022年3月7日に行った会談の記録が含まれている。
その直前、2月24日にロシア軍はミサイルでウクライナに対する攻撃を始めたが、首相だったイムラン・カーンは中立の立場を表明した。パキスタンは欧米の奴隷ではないと集会で演説、非同盟の立場を明確にしている。
会談はその翌日に行われた。今回、公表された文書によると、その会談でアメリカ政府はパキスタン政府に対し、カーンを排除するように促している。
ルー国務次官補は不信任決議を提案、その決議が採択されば首相のロシア訪問は首相の個人的な決断だとアメリカ政府はみなして全てを許すが、失敗すれば厳しい対応をすると語ったという。そして不信任決議の準備が会議の翌日から始まる。
2022年4月に内閣不信任決議案を提出されるが、下院議長は却下。解散総選挙に打って出るとカーンは表明し、4月3日に議会は解散されたものの、4月7日に最高裁が議会解散を違憲と判断、4月10日に内閣不信任決議案の採決が行われて可決されて軍を後ろ盾にするシャバズ・シャリフ政権が誕生した。
議会や裁判所はアメリカ政府の意向通りに動いたわけだが、国民は強く反発し、大規模な抗議行動や暴動という形で表面化した。そこで軍は市民の自由を大幅に削減し、軍への批判を犯罪化、国内経済における軍の役割を拡大して国内は麻痺した。言論統制のひとつの結果として、アメリカ政府に従属する軍に批判的なジャーナリストが殺害されたり行方不明になったりしている。軍は独裁体制へ向かっている。
昨年11月にカーンは政治集会で銃撃されて足を負傷した。その際、支持者のひとりが殺されている。勿論、カーンを負傷させるために銃撃したわけではなく、暗殺未遂だ。これを認めようとしない人はパキスタンのエリートと同様、アメリカの支配層に従属しているのだろう。
パキスタンはアメリカにとって軍事的に重要な役割を演じてきた。例えば:
ズビグネフ・ブレジンスキーの戦略に基づいてCIAは1979年4月にアフガニスタンで秘密工作を始めた。ソ連軍が侵攻する半年以上前のことだ。その工作についてCIAのイスタンブール支局長はパキスタンの情報機関ISIの協力を得ている。
しかし、パキスタンのベナジル・ブット首相の特別補佐官を務めていたナシルラー・ババールが1989年に語ったところによると、アメリカは1973年からアフガニスタンの反体制派へ資金援助し始めていた。その反体制派とはクルブディン・ヘクマチアルだが、その選定をしたのはISIだ。(Robert Dreyfuss, “Devil’s Game”, Henry Holt, 2005)
この工作を進めるためにCIAはパキスタン政府の協力が必要だったのだが、ベナジル・ブットの父親、ズルフィカル・アリ・ブットの政権はアメリカ政府にとって好ましくなかった。自立した政策を進めていたからだ。ブット政権は1977年の軍事クーデターで排除され、ブット自身は79年に処刑されている。
クーデターを主導したムハンマド・ジア・ウル・ハク陸軍参謀長はノースカロライナ州のフォート・ブラグで訓練を受けた軍人で、ムスリム同胞団系の団体に所属していた。(Thierry Meyssan, “Before Our Very Eyes,” Pregressivepress, 2019)』
-
岸田首相「尹大統領と信頼関係…北朝鮮の核・ミサイルは断じて容認できない」
https://japanese.joins.com/JArticle/314457『 ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2024.01.31 08:16
岸田文雄首相
岸田文雄首相が30日の国会演説で、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領との信頼を礎に韓国と協力を拡大していくと明らかにした。
岸田首相はこの日の施政方針演説で、「国際的課題への対応などで協力していくべき重要な隣国である韓国とは、尹大統領との信頼関係を礎に、幅広い連携をさらに拡大・進化させる」と述べた。また「日米韓3カ国での戦略的連携や、日中韓の枠組みも前進させる」と説明した。
日本首相の国会演説は通常国会で新年の国政課題を明らかにする施政方針演説と、臨時国会や特別国会で国政運営方向を説明する所信表明演説がある。
岸田首相は昨年10月の演説で「韓国との間では、尹大統領との個人的信頼関係を梃子に、幅広い連携を深めている」とし「キャンプデービッドでパートナーシップの新時代を拓いていくという決意を示した日米韓3カ国が経済安全保障を含めて戦略的連携を進め、日中韓の枠組みについても前進させる」と述べた。
岸田首相は就任直後の2021年10月の演説で「健全な(日韓)関係に戻すために韓国側に適切な対応を強く求めていく」と述べたが、尹大統領が執権してからは関係改善の意志と協力を深める方針に言及した。
岸田首相は4月に予定された米国国賓訪問を機に「日米関係を深め、日米同盟を強化する」とし、サプライチェーンの強化と半導体協力も模索すると述べた。
中国については「主張すべきは主張し、共通の諸課題については協力する、『建設的かつ安定的な関係』を日中双方の努力で構築していく」と述べた。福島第1原発汚染水の海洋放出に対応して中国など一部の国が日本産水産物の輸入を禁止したことに関しては「即時撤廃を求めると同時に、新たな輸出先開拓などを進めて水産事業者を守る」と述べた。
今月1日の能登半島地震発生後に北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が異例にも岸田首相に見舞いの電報を送り関心が高まった日朝関係については「拉致問題が政権の最重要課題」とし「北朝鮮の核・ミサイル開発は断じて容認できない」と強調した。
また北朝鮮による日本人拉致問題に言及し、「すべての拉致被害者の一日も早い帰国を実現し、日朝関係を新たなステージに引き上げる」とし「金正恩委員長との首脳会談を実現すべく、私直轄のハイレベルでの協議を進めていく」と繰り返し明らかにした。
一方、岸田首相は内閣支持率が「退陣危機」レベルの20%台に落ちて反騰しない要因の一つと評価される自民党の「裏金スキャンダル」について「自民党総裁として極めて遺憾であり、心からおわび申し上げる」と改めて頭を下げた。
憲法改正については「9月までの自民党総裁任期中にに実現させる考えに変わりはない」とし「条文案の具体化を進め党派を超えた議論を加速していく」と述べた。』
-
台湾は米国の「捨て駒」にも、再びトランプ政権なら-中国政府
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-01-31/S841H2T0AFB400『Bloomberg News
2024年1月31日 16:08 JST 更新日時 2024年1月31日 16:40 JST国務院台湾事務弁公室の陳報道官が定例記者会見で発言 「台湾はいつでもチェスの駒から捨て駒に変わり得る」
中国政府は31日、今年の米大統領選でドナルド・トランプ氏が勝利すれば、米国が台湾を見捨てることもあり得るとの認識を示した。
国務院台湾事務弁公室の陳斌華報道官は北京での定例記者会見で、「米国は常に米国第一を追求しており、台湾はいつでもチェスの駒から捨て駒に変わり得る」と述べた。
トランプ氏は昨年7月、FOXニュースとのインタビューで、中国が攻撃してきた場合、米国の大統領として台湾を守るかどうかという質問に直接答えることを避け、「その問いに答えたら、交渉上で非常に不利な立場に追い込まれる」と述べた。その上で「とはいえ、台湾はわれわれの半導体事業の全てを奪った」と語っていた。
陳報道官はトランプ氏のこのインタビュー発言について尋ねられ、台湾についてコメントした。
大統領選の共和党予備選で圧倒的な強さを示しているトランプ陣営のスポークスマンは、陳報道官のコメントについて質問され、中国が安全保障上の脅威であることを認めた大統領時代のトランプ氏の発言に言及。
同スポークスマンはまた、トランプ氏が2016年の大統領選で勝利した翌月行った台湾の蔡英文総統との前例のない電話会談にも触れた。
台湾海峡中国は30日、台湾との協議なしに民間航空機の飛行ルートを一方的に変更すると発表。2月1日から台湾海峡の「中間線」により近い空域を中国民間機に飛行させるとしている。
台湾は中国に対し「強い抗議」を行った。中間線は1950年代以来、事実上の中台境界線として機能してきたが、台湾は今回の動きを中間線の重要性を低下させようとする中国の取り組みの一環だとみている。
原題:China Says Trump Could Abandon Taiwan If He Wins US Election (1)、China Shifts Key Airline Route East in Fresh Challenge to Taiwan (抜粋)
(中国の飛行ルート変更について追加して更新します) 』 -
中国は24年米大統領選に介入しない、習氏がバイデン氏に約束 CNN EXCLUSIVE
https://news.yahoo.co.jp/articles/5be0c2da58ceb174a3f64236cdcf429c82a33ab4『(CNN) 中国の習近平(シーチンピン)国家主席が米国のバイデン大統領に対し、2024年米大統領選に中国は介入しないと告げていたことが31日までに分かった。昨年11月、両首脳が会談した際に伝えたという。先週には中国外相も、バイデン政権の国家安全保障担当顧問に同じ内容を確約したとされる。当該のやり取りに詳しい情報筋2人がCNNに明らかにした。
これまで報じられなかった習氏とバイデン氏とのやり取りは、数時間にわたる米カリフォルニア州での会談で交わされた。会談の狙いは、歴史的水準に高まった米中の軍事的、経済的緊張を緩和することだった。
情報筋の1人によれば選挙介入の件を取り上げたのはバイデン氏で、やり取り自体は短いものだったという。
先週末にはタイ・バンコクで、中国の王毅(ワンイー)外相とサリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)が再びこの問題を話し合った。王氏はサリバン氏に対し、習氏がバイデン氏に確約したのと同じ内容を告げたとされる。具体的には中国政府として、今秋の米大統領選に介入することはないと約束したという。情報筋が明らかにした。
情報筋によれば、中国が米国の選挙に介入するもしくは影響を及ぼす可能性は、両国の高官レベルの会談でこの数カ月間再三話題に上ってきた。
中国は大統領選への介入を控えるとしているものの、同国のハッカーらは依然として潜在的な影響力を持つ存在だ。彼らは米国の主要なインフラに足場を築いている。
過去数カ月間、米国の国家安全保障担当当局者は、中国のサイバー要員が海事や輸送部門のコンピューターネットワークに潜入していると公に警告している。中国政府はこれらのシステムにアクセスすることで、自国が台湾に侵攻した場合に米国が行うあらゆる軍事的対応を妨害する可能性がある。
米国家安全保障会議(NSC)は、バイデン氏と習氏、サリバン氏と王氏による上記二つの会談で選挙介入が議題に上ったのかどうかコメントを控えた。CNNは中国外務省にコメントを求めている。』
-
インターネットの脳への影響と「適切なつきあい方」
https://www.nhk.or.jp/kenko/atc_1411.html※ 『「前頭前野は生涯に2回急成長のチャンスがあります。0歳から5歳の間、そして思春期です。前頭前野の体積が増えなかったということは、脳のつながりが弱いまま3年間が過ぎてしまったということです。インターネット利用が頻繁になり、思春期に爆発的に発達するはずの前頭前野の発達が止まってしまうということは非常に深刻だと思います」(川島さん)』…。
※ 『「私たちの脳というのはどうも実際の場面でリアルに行動しないと働かないようです。特に前頭前野はそういう性質を持っているんだという風に考えています」(川島さん)』…。
※ そういう話しもある、ということは、知っておいた方がいい…。



『 更新日2022年7月15日
依存症
今や私たちの暮らしに欠かせないインターネット。しかし過剰な利用をコントロールできない「依存」に苦しむ人も現れています。また最新の脳科学の研究からインターネットの利用時間が増えることで子どもの脳の発達に抑制がかかるという深刻な結果も明らかになってきました。一方、適切な距離を保ちながらインターネットを利用するための研究も始まっています。
Eテレ「サイエンスZERO」の内容を記事で詳しくお伝えします。
記事の中にインターネット依存度のチェックリストへのリンクも掲載しています。若年層に広がる「ネット依存」
長年ネット依存の診療にあたる久里浜医療センター名誉院長・樋口進さんらのグループが行った調査によると、中高生でネット依存が疑われる人の割合は2012年では7.9%であったのに対し2017年は14%にまで増加し、その数は全国で93万人と推定されています。
久里浜医療センターの樋口進 名誉院長
インターネットコンテンツの中でも依存性が高いとされているのが、若者が多く利用するソーシャルメディア、いわゆるSNSです。
アメリカの調査では、18歳から22歳の45%が「自分はSNS依存かもしれない」と回答するなど、使いすぎを自覚する人は少なくありません。
かつて依存に陥っていたという大学1年のエマ・レンキさん(ワシントン大学セントルイス校)に話を聞くことができました。レンキさんは小学校5年生でスマホを手に入れ、中学3年までSNSに没頭していました。当時は1日5~6時間をSNSに費やしていたといいます。不安や憂うつな状態が増え、通知音に条件反射してスマホに手を伸ばすといった重い依存症に苦しみました。
エマ・レンキさん(ワシントン大学セントルイス校)
レンキさんがSNSを頻繁にチェックする習慣をやめられなかった大きな理由は、周りから取り残されることに恐怖を感じていたためでした。しかし一方でSNSを見るたびに、強烈な劣等感を覚えていたといいます。
「見逃すことが怖いんです。友達がどこへ行ったのか、彼らに何が起きているのか。SNSなしにどうやって知るのでしょう。でもSNSはハイライトを集めたもので、誰かのすごい体験をみんなが見る。特別な瞬間などない自分を常に意識させられるんです」(レンキさん)
レンキさんのように“置いていかれる恐怖”がSNSから離れられない理由になっている人も多いと樋口さんはいいます。
「仲間といろいろやり取りをしていて、自分だけ置いてきぼりになるというのを皆とても怖がるんです。患者さんたちには、見るのはいいけれども書き込むのはしばらくやめようよと言っています。書き込むと必ず反応を見たくなりますので」(樋口さん)
ネット依存が疑われるときは久里浜医療センターではネット依存の度合いをチェックするために20項目からなるスクリーニングテスト「インターネット依存度テスト(IAT)」を行っています。
合計点が40点から69点が「グレーゾーン」、70点以上が「治療が必要なレベル」とされています。
「70点以上だった場合は、まずは各都道府県と政令指定都市に設置されている精神保健福祉センターの依存の相談窓口に相談してみるといいと思います」(樋口さん)
詳しくはこちら
ネットの頻繁な利用が脳の発達を抑制
依存とまでいかなくても、ネットの利用時間が増えることで、子どもの脳の発達に抑制がかかることが脳科学の最新研究から明らかになってきました。川島隆太さん(東北大学加齢医学研究所 所長)らの研究グループは、8歳から14歳の子ども200人余りを対象に、インターネット利用が脳の成長に与える影響を追跡調査しました。
東北大学加齢医学研究所の川島隆太所長
川島さんが注目したのは脳の体積の変化です。脳の体積が増えるということは、脳の神経細胞と神経細胞をつなぐネットワークの複雑さが増し、脳が成長したことを意味します。
そこで脳の認知機能を担う「灰白質」と情報処理能力に関わる「白質」の体積の3年間の増加量を調べたところ、インターネットを利用する頻度が高い子どもほど灰白質も白質も増加量が少ないことがわかりました。特に思考や記憶、コミュニケーションに大事なはたらきを持つ、前頭葉の「前頭前野」での成長の差が大きいことも明らかになりました。
「前頭前野は生涯に2回急成長のチャンスがあります。0歳から5歳の間、そして思春期です。前頭前野の体積が増えなかったということは、脳のつながりが弱いまま3年間が過ぎてしまったということです。インターネット利用が頻繁になり、思春期に爆発的に発達するはずの前頭前野の発達が止まってしまうということは非常に深刻だと思います」(川島さん)
インターネットを頻繁に利用した子どもたちはなぜ脳の体積があまり増加しなかったのか。川島さんたちは前頭前野の血流から脳の活動度を調べる実験を行いました。まず実験の参加者に「僥倖(ぎょうこう)」「憐憫(れんびん)」といった難しい単語10個の意味を、スマートフォンで調べてもらいます。
そして次に、紙の辞書で先ほどとは別の10個の単語の意味を調べます。
血流を比較すると、スマホを使った時よりも、紙の辞書を使った時の方が右脳でも左脳でも脳活動が高くなっていることが分かりました。
脳の血流量の比較
スマホより紙の辞書を使った場合の方が血流量が多く、脳活動が高い「私たちの脳というのはどうも実際の場面でリアルに行動しないと働かないようです。特に前頭前野はそういう性質を持っているんだという風に考えています」(川島さん)
ネットとの適切な距離を取る “ちょっとした工夫”
もし自分がインターネットに依存気味だと感じた時、どう向き合い方を変えていけばよいでしょうか。適切な距離を取りながらインターネットを利用する方法を、スタンフォード大学で行動デザインを研究するスティーブン・クレインさんに聞きました。
スタンフォード大学行動デザインラボ スティーブン・クレインさん
「ネットのサービスは、簡単に楽にそしてスムーズに使えるように考え抜かれた工夫が施されています。残念ながら過剰な利用は私たちユーザーの自己責任になっています。ですから自分でもう少し使いにくく、楽しめないようにする必要があるのです」(クレインさん)
人間は『やりたい』『できる』『きっかけ』という3つの要素がそろった時に行動するというクレインさん。この3つの要素を減らすことでインターネットの過剰な利用を抑えることができるといいます。
クレインさんが提唱するスマートフォンの使い方です。
「きっかけ」を減らす スマホの“お休みモード”をONにして必要な通知以外来ないようにする。通知が来たことをきっかけに、ほかのアプリまでチェックしてしまう行動を減らせる。 「できる」をなくす=やりにくくする パスワードは保存せず、長いものを使う。指紋認証や顔認証など簡単にログインできるものは使わない。 「やりたい」気持ちを抑える 人は本来色にひかれる。スマホの画面の色を赤一色などに変えると、色を見るときの興奮がなくなり、「使いたい」という気持ちが湧かなくなる。
「簡単なことから始めて、頑張って一日それがやり通せたら「成功した!」と思うようにしてみてください」(クレインさん)
樋口さんが患者に強く勧めているのは、家族全員でインターネットを使わない時間帯を作ることです。スマホを使わないことに抵抗する子どもも、親も一緒だと「やってみるか」という気持ちになることがあるといいます。こうすることで親子で会話をする時間が生まれるのもメリットです。
また小さい時から親と楽しい活動をすることも大事だと樋口さんはいいます。ゲームに依存しても他の活動の楽しさを覚えていれば、ゲームから離れられるきっかけになるためです。
さらにいま重要視しているのが、子どもたちへネットの利用や依存についての正しい情報を伝える「予防教育」。
「私の仲間が神奈川県のとある中学で1時間予防教育をしたんです。(授業の)1週間前と1か月後にインターネットの利用時間を見たところ、インターネットの時間が長くて(依存のリスクが高い)問題がある子どもたちのネット利用の時間が減り、非常に改善していました。やはり教育というのは確かに有効なんですね」(樋口さん)
現代に暮らす私たちの暮らしと切っても切り離せないインターネット。依存や脳への影響といったリスクに関して正しく知りながら、インターネットを「道具」として有効に活用していく方法を大人も子どもも身につけることが、真に豊かな生活を作る上で欠かせないのではないでしょうか。
この記事はサイエンスZERO 2022年4月10日(日) 放送
「インターネットと脳 見えてきた依存のメカニズム」を基に作成しました。情報は放送時点でのものです。
番組HPはこちら』
-
米議会公聴会、メタCEOが謝罪 SNSの若者被害巡り
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN31E830R30C24A1000000/『【シリコンバレー=山田遼太郎】米連邦議会上院の司法委員会は31日、メタなど米SNS大手5社の最高経営責任者(CEO)を呼んで公聴会を開いた。議員は運営企業が有害なコンテンツから若年層の利用者を守っていないと強く批判した。各社は子どもが使える機能の制限や投稿を監視する人員の増加といった対策の説明に追われた。メタのマーク・ザッカーバーグ氏が謝罪に追い込まれる場面もあった。
ザッカーバーグ氏のほか、X…
この記事は会員限定です。登録すると続きをお読みいただけます。』
『31日の公聴会では「各社は安全より利益を優先し、子どもを危険にさらしている」(民主党のダービン議員)と批判が相次いだ。SNSが自殺などを助長したとの報告を踏まえ、共和党のグラム議員は「あなたたちの手は血で汚れ、製品が人々を殺している」と語気を強めた。
議員らは犯罪者が若者をだまして性的な画像などを送らせる事案が増えていると指摘。有害なコンテンツの削除件数や、各社の監視体制が不十分だと非難した。
特にザッカーバーグ氏に非難の集中砲火を浴びせた。
ホーリー議員(共和)は「あなたは犠牲者に自社がしたことの償いをしたのか。いま謝罪したらどうか」と責め立てた。ザッカーバーグ氏は自社が対策を強めていると説明していたが、ホーリー氏に強い調子で迫られると、立ち上がって被害者の家族らに向き合い「あなたたちが経験したことを申し訳なく思う」と述べた。
メタのザッカーバーグCEO(前列右、背中を向けている男性)はSNSで被害を受けた子供らの家族に向き合い、会場で謝罪した=ロイター
クルーズ議員(共和)も「いったい何を考えているのか」とザッカーバーグ氏を追及した。メタが同社のアプリで、子どもに関する不適切な画像の可能性があると警告しつつ「それでも結果を見る」との選択肢を示していたと指摘した。中国・字節跳動(バイトダンス)傘下のTikTokには中国政府との関係をただす質問も相次いだ。周氏は「米国の利用者データを中国政府に求められたことはなく、提供もしていない」と述べた。米国の利用者は1億7000万人に増えたという。
各社は対策を拡充していると訴えた。メタはこのほどインスタグラムで16歳(一部地域は18歳)未満の利用者が知人以外からメッセージを受信できないよう初期設定を変更したほか、保護者が子どもの利用時間やフォローする相手を確認する機能を設けていると説明した。
Xのヤッカリーノ氏は米南部テキサス州に投稿の監視や削除を担う拠点を新設し、人員の採用を進めると述べた。TikTokの周氏は24年にサービスの安全性向上などに「20億ドル(約2900億円)以上を投じ、多くを米国事業に使う」と表明した。
スナップは画像共有アプリ「スナップチャット」を手がけ、動画共有アプリのTikTokなどと並び若い世代の利用が多い。ディスコードはゲーム利用者ら向けに、音声を中心としたSNSを提供する。
これらのサービスは友人らとの交流を便利にする一方、プライバシー侵害や依存症といった弊害の指摘が増えた。投稿や利用者間のやりとりがきっかけで若者が自傷行為に至る例もあり、SNS企業が十分な手立てを講じていないとの声が米国で強まっている。』
-
トランプ氏、日鉄買収「絶対阻止」 米政府審査に影響
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN010C40R00C24A2000000/『【ワシントン=飛田臨太郎】米国のトランプ前大統領は31日、日本製鉄による米鉄鋼大手USスチール買収を巡り「私なら瞬時に阻止する。絶対にだ」と発言した。11月の米大統領選で共和党候補のトップを走る前大統領が反対の立場を表明したことで、バイデン政権の認可審査にも影響を与える。
ワシントンで全米トラック運転手組合の幹部と面会後、記者団に語った。「USスチールは日本に買収されてようとしている。ひどい話だ…
この記事は会員限定です。登録すると続きをお読みいただけます。』


