アジアに巨大経済圏 RCEP、日中韓など15カ国署名

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66250890V11C20A1MM8000/

『アジアに世界貿易額の3割を占める経済圏が誕生する。日本など15カ国は15日、東アジアの地域的な包括的経済連携(RCEP)協定に署名。世界最大級の自由貿易協定(FTA)として早期発効をめざす。自由化に消極的だった中国が初の大型FTAに参加する一方、米国や欧州は国内の混乱で足踏みする。アジア主導で世界の通商戦略が変わる可能性がある。

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首脳会合には日本から菅義偉首相が出席し、梶山弘志経済産業相が同席した。15カ国はその後、オンライン形式で署名式に臨んだ。各首脳は「RCEPが世界最大のFTAとして、世界の貿易および投資のルールの理想的な枠組みへと向かう重要な一歩だと信じる」との共同声明を発表した。

RCEPは15カ国が参加する。インドは参加を見送ったが、新型コロナウイルス禍で経済に打撃を受けた各国が早期署名に傾き、8年越しの交渉をまとめた。日中韓が結ぶ初のFTAとなる。

中国は東南アジア諸国連合(ASEAN)やオーストラリアなどと貿易協定を結んだが、環太平洋経済連携協定(TPP)など大型FTAには参加していない。李克強(リー・クォーチャン)首相は「RCEP署名を機に地域経済の一体化がさらに進む」と強調した。市場開放に消極的だった通商戦略を転換した背景には、米国の対中強硬姿勢がある。

中国はバイデン氏が次期大統領に就任しても、米国の姿勢に大きな変化はないとみる。香港問題などで海外との摩擦が常態化する中、周辺国との結びつきを強めて国際的な孤立を防ぐ考えだ。

習近平(シー・ジンピン)国家主席は4月、経済政策を担う共産党組織、中央財経委員会の会議で「国際的なサプライチェーン(供給網)を我が国に依存させ、供給の断絶で相手に報復や威嚇できる能力を身につけなければならない」と強調した。輸入拡大をテコに国際社会で影響力を高めたいとの思惑が透ける。

政権交代に揺れる米国では、RCEP実現で孤立するのを懸念する向きがある。バイデン氏はオバマ前政権でTPPを推し進めた一人。TPPは中国包囲が目的だったが、発足前にトランプ大統領が離脱。バイデン氏は日本などと再交渉した上でTPPに復帰する可能性を一時示唆した。

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ただ民主党は大統領選で、政策綱領に「米国の競争力に投資する前に、新たな貿易協定の交渉はしない」と明記。バイデン氏は政府調達で米国製品を優先する「バイ・アメリカン」なども公約に掲げ、保護主義的な色彩を強める。民主党関係者は「2年後に中間選挙がある。TPPなど野心的な貿易交渉は当面棚上げになる」と話す。

欧州連合(EU)も英国離脱に伴う通商交渉が難航。中国を巻き込んだ初の大型FTAであるRCEPは世界の自由貿易が転換期を迎えたことを映し出す。

RCEPは参加国の事情に配慮し、自由化水準を低めにした面もある。知的財産やデータ流通など先進ルールを盛ったTPPに劣る。TPP、日・EU経済連携協定(EPA)、RCEPなどの大型FTAに参加する日本はかじ取り役としての手腕を問われる。

(学頭貴子、ハノイ=大西智也、北京=川手伊織、ワシントン=河浪武史)』

第1節 メガFTAの進展(CPTPP、日 EU・EPA、RCEP)等
https://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2018/2018honbun/i3110000.html

インドは保護主義 RCEPへの復帰みえず
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66251190V11C20A1FF8000/

RCEP署名へ、対中韓貿易に弾み ルールに甘さも
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66248170V11C20A1EA1000/

RCEP、15カ国首脳が署名へ アジア貿易の転換点に
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66249450V11C20A1I00000/

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https://www.jiji.com/jc/article?k=2020111500303&g=int