習氏「和平協議を」、プーチン氏は仲裁案評価 首脳会談
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR20B680Q3A320C2000000/
『ロシアを公式訪問中の中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は20、21日の両日、モスクワでプーチン大統領と会談し、ロシアの軍事侵攻が続くウクライナ危機について「中国は平和と対話を求めていく」と指摘した。プーチン氏は中国が2月に公表した仲裁案を前向きに「評価」した。両首脳は21日、戦略的パートナー関係の強化へ共同声明を採択した。
習氏はプーチン氏の招待を受け、20〜22日にロシアを公式訪問している…
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『モスクワ到着後の20日夕(日本時間同日深夜)から非公式で一対一の首脳会談と食事会を、21日午後(日本時間夜)には正式な首脳会談を行った。初日の会談は4時間半に及んだ。
21日午後の首脳会談はまず少人数で実施し、経済界の代表を交えた拡大会合も開催した。両首脳は会談後に包括的パートナー関係と戦略的協力の深化、30年までの中ロ経済協力計画の2つの共同声明を発表した。
ウクライナ危機は、20日夕の首脳会談で集中的に話し合った。習氏は2月に発表した「ウクライナ危機の政治解決に関する中国の立場」と題した12項目の仲裁案を説明した。習氏は21日の会談後に「我々は国連憲章を順守する。客観的で偏りのない立場を堅持している。対話を促していく」と主張した。
プーチン氏は会談後に「中国の和平計画は、欧米とウクライナが参加する用意を示した時、ウクライナ問題の平和的解決の基礎になりうる」と前向きに評価する一方、「(欧米とウクライナに)そうした用意はまだ見えない」と批判した。
習氏はプーチン氏との会談に続いてウクライナのゼレンスキー大統領と協議するとの観測がある。「領土の一体性回復」や「ロシア軍の全面撤退」を求めるウクライナとロシアの主張は激しく対立し、中国の案で停戦への糸口を見いだすのは難しい。
習氏は21日、モスクワでミシュスチン首相と会談し、前日の首脳会談で、年内に中国で開く広域経済圏構想を話し合うための「一帯一路国際協力サミット」にプーチン氏を招待したと明らかにした。
共同声明では新たな世界秩序の形成に向け、「戦略的パートナーシップ」を強化することで合意した。「個別の国家に決定権があるような世界秩序」に反対し「多極的世界」の実現を強調する。米欧による一方的な制裁に反対した。
台湾問題などで米国との対立を深める中国と、ウクライナ問題で米国との関係が悪化するロシアが対米で結束する姿勢を誇示した。
30年までの中ロ経済協力計画では、貿易の拡大や資源エネルギーなど様々な分野で協力拡大を盛り込む。習氏は「資源エネルギーの貿易の増加やデジタル経済での協力拡大でプーチン氏と合意した」と指摘した。中国の税関統計によると、両国の貿易額は22年に1903億ドル(約25兆円)と侵攻前の21年から3割増加した。
欧州がロシア産エネルギーの輸入を急減させる中、ロシアは対中依存を深めている。プーチン氏は21日の会談で中国への2本目の基幹ガス輸送管の建設について協議し、「30年までに少なくとも980億立方メートルの天然ガスを中国に輸送する」と述べた。
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高橋杉雄
防衛研究所 政策研究部防衛政策研究室長
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分析・考察 中国の「仲裁案」なるものには、現在ロシアが占領している地域の取り扱いや、停戦合意後のウクライナの安全の保障に関する記述が全くない。
この2点は真剣に停戦協議を進めていくためには避けて通れない論点であり、逆に言えばこうした論点を含めていないということによって、「姿勢」を示すことそのものが目的で、現実的な停戦合意を実現させてように見える。
占領地はロシアが支配した上で、ウクライナの安全を誰も保証しないとすれば、ロシアに一方的に有利な停戦となる。その意味で、中国がロシア側に立っていることを明確に示すものと言うことでもある。
2023年3月22日 0:39 』