西側と中国の戦場となる途上国債務問題
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/30821
『英エコノミスト誌調査部門のデマレが、パリでの金融サミットを通じて西側諸国が債務再編交渉や世銀・国際通貨基金(IMF)の役割といった問題で中国に対応する動きが出ており、今後、援助の分野が西側と中国の影響力争いの場となると2023年6月22日付の米国外交専門メディア「フォーリン・ポリシー」で論じている。
(Tinnakorn Jorruang/gettyimages)
6月22日と23日に約50カ国の首脳がパリに集まり、「新たな世界金融取り決めサミット」が開催される。その議題は、気候変動と世界の貧困にどう取り組むかである。共同主催国のフランスとバルバドスは、途上国の債務再編のための新たなルールを作ろうとしているが、中国と西側の競争において、援助が次の戦場となりつつある。
途上国の債務は、近年憂慮すべき段階に達し、新型コロナウイルス、米国の金利上昇、ウクライナ戦争にも起因する。多くの途上国が借金の返済に苦しみ、そのため、教育や医療に充てる資金を失い貧困は悪化している。
さらに、債務の多くは中国に対するもので、パキスタン、ケニア、ラオスなどは、対外債務の30%以上を中国に負っている。中国は今日、世界最大の債権国で、その融資残高はIMFや世銀、22の先進国の融資額の合計より大きい。対中債務の約半分は未公表であり、正確な金額はもっと膨らむかもしれない。
ザンビアは、2010年代にインフラ建設のために中国から数十億ドルを借りたが、新型コロナ危機で大打撃を受け、2020年、中国に利払いの停止を要請したが拒否され、債務不履行に陥った。これは一つの例にすぎない。
中国の融資慣行に対する途上国の憤りの高まりは、西側にとって好機でもある。パリ金融サミットの一つの目的は、債務が再編成される際に、20カ国・地域(G20)の共通債務処理枠組みを推進して西側が交渉の席につくことを確保することだ。ただ、今まで中国の拒否により上手く行っていない。中国は二国間で、密室で債務を再交渉するつもりだ。これでは、債務国の交渉立場は明らかに弱くなる。
西側は、中国の困難が、世銀とIMFが世界をリードする多国間開発金融機関としての地位を回復するという第二の目標に弾みをつけることを期待している。
パリ金融サミットについて、重要なのは象徴的な意味である。西側はようやく、グローバルサウスで影響力を増す中国に対応しようとしている。このことは、援助が急速に中国と欧米の影響力をめぐる戦場となりつつあることを示す。
* * *
この論説は、パリで開催された世界金融サミットを、深刻化しつつある最貧国の債務の再編交渉で西側が中国と同じテーブルに着くことを確保し、また、世銀とIMFの役割を復活させることにより、中国と対抗する好機として位置付けている。その背景には、コロナ後の中国の経済的困難や中国の融資慣行に対する開発途上国の憤りの高まりがあるとしている。』
『そのような見方は一面の真理をとらえているが、マクロンのイニシアティブによるパリの「新たな金融取り決めサミット」は、より広い視点から把握しておくことも必要であろう。
この背景には、2030年のSDGs(持続可能な開発目標)や深刻化する債務問題への対応、及び気候変動防止のパリ協定の目標を達成する上で、現在の金融支援や開発支援のシステムが十分に対応しておらず、更なる資金を動員するための改革の必要があるとの問題意識がある。加えて、ウクライナ戦争と対ロシア制裁をめぐり、西側諸国とグローバルサウスの間に溝が生じていることから、開発途上国との対話の場が必要との判断もあったであろう。
世銀・IMFの役割の復活
パリ金融サミットには、40カ国の首脳とその他の国の閣僚、国連事務総長、世銀・IMF他の国際機関のトップ、市民社会や大企業の代表などが参加した。
議長サマリーでは、持続可能な開発のためには債務問題への対応が不可欠として、ガーナやザンビアの債務再編のためにG20と「パリクラブ」(主要債権国会議)の共通枠組みを通じた努力の継続が必要とされた。重債務問題の解決が最貧国の持続可能な開発や気候変動へ対応する上での前提となることや、そのためのオープンな取り組みの重要性が確認された。
他方、世銀やIMFの様々な関与が議長サマリーの随所で触れられ、特に気候変動対策での途上国向け資金調達や民間投資の促進などの面での役割に期待が表明された。今後のロードマップと称する文書では、G20会合とともに世銀・IMFの年次会合が主要な行事として列挙され、世銀・IMFの役割の復活という狙いはある程度達せられたといえよう。
このサミットで行われた様々な提案や構想は、今後の多国間プロセスで引用され具体化するものもあろう。2024年9月の国連主催の未来サミット(Summit of the Future)で進捗状況を検討するとされ、特に気候変動防止のプロセスとの関係では留意が必要であろう。また、多くの途上国首脳が直接その主張を行う場を設けたことは、グローバルサウス対策として有効であったと思う。今後は、援助問題をめぐる中国と西側の対立が顕在化していく中でのG7の結束や、グローバルサウスとG7全体との調整といった側面への配慮が重要となるであろう。』
