米株売買24時間化の波 私設取引が先行、NY証取も検討
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN11E9D0R10C24A6000000/
『2024年6月12日 5:57 (2024年6月12日 7:18更新)
【ニューヨーク=竹内弘文】米証券取引所ニューヨーク証券取引所(NYSE)が米国株の24時間取引に向けた議論を始めた。背景にあるのが取引所外の売買の急伸だ。私設な取引所は既にNYSEの取引時間外でサービスを提供。超高速取引所業者(HFT)の自己勘定取引も広がり、場外取引の米国株の売買シェアはいまや全体の半分近くを占めている。競争環境の変化がNYSEに変革を迫っている。
NYSEは今春、市場参加者を…
この記事は会員限定です。登録すると続きをお読みいただけます。』
『NYSEは今春、市場参加者を対象に24時間取引に関するアンケート調査を実施した。24時間のメリットや人員確保の可能性といった項目が盛られ、市場参加者の意向聞き取りが主眼だったようだ。現時点で議論は初期段階にあるものとみられるが、実現に至れば主要国・地域の証取で初となる。
「我々の証取が競争力を維持する方法を常に探っている」。NYSEの国際資本市場責任者、カサンドラ・セイアー氏はアンケート調査結果や議論の進捗については明言を避けつつ「米国内外のユーザーとの対話を通じて、何を求めているのか把握するようにしている」と語った。
米国における新規上場先としてNYSEはナスダックと市場を二分して寡占状態を保つ。対照的に、米国株の売買が成立する場所は多極化が進んでいる。
シカゴ・オプション取引所(CBOE)のデータによると、関連証取を含むNYSEグループの売買シェアは足元で約20%。次いでナスダックが約15%、CBOEが約12%だ。一方、証取を経由しない取引所外売買の比率は約47%。2019年6月時点と比べて10ポイント程度上昇した。大手証取からシェアを奪った格好だ。
取引所外売買には、代替取引システム(ATS)経由の売買やHFTの自己勘定取引が含まれる。証券会社などが運営するATSは証取よりも規制が緩めで、気配値を配信する必要がないため「ダークプール」とも呼ばれる。HFTはネット証券などから回送された個人投資家の売買注文に自己勘定で応じるほか、証取やATSでも売買する。
コロナ禍の株式投資ブームで在米個人投資家の売買は急増し、取引所外売買の増加にもつながった。一方でNYSEなどへの恩恵は限られた。暗号資産(仮想通貨)や外為取引と同じように米国株も24時間取引できる環境が整えば、アジアの投資家が現地の日中に売買するニーズを取り込める可能性がある。
米国の夜間取引ではATSが先行している。米ブルーオーシャン・テクノロジーズは米東部時間の午後8時から翌日の午前4時に取引サービスを提供する。この時間帯はNYSEでは取引ができない。約4500銘柄の米国株を取り扱い、1日平均の売買高は5000万株弱に及ぶ。最初の契約相手が韓国のサムスン証券だったこともあり、売買の4?5割は韓国からの注文という。
ブルーオーシャンのブライアン・ハインドマン最高経営責任者(CEO)は「NYSEのような競合他社が(夜間取引に)加わることで、売買のパイは大きくなっていく」と競争を歓迎する。取引時間の延長も視野に入れる同社には東京証券取引所が5%出資している。
米国株をほぼ24時間取引できる証取の新設を目指す動きもある。英領バミューダのフィンテック企業、24エクスチェンジは米証券取引委員会(SEC)に対し、米国内での証取開設を申請中だ。同社には米大手ヘッジファンド、ポイント72のベンチャー投資部門が出資している。
24エクスチェンジのドミトリー・ガリノフCEOは、ブルーオーシャンの成長やNYSEの検討が「米国株の24時間取引に対する需要が明らかに存在していることを裏付けている」と説明。「年内にSECの決定が下ることを期待している」と語った。
もちろん、NYSEの24時間化に向けたハードルは数多い。野村ホールディングス傘下の米インスティネットのジェリー・ミリガン社長は「インフラへの追加投資が必要であるのは確実で、証券会社と証取は人員を増やす必要が生じる」と述べ、業界全体でのコスト増に懸念を示す。SECの承認可否も関門となる。』