米政権、鉄・アルミに25%関税 例外停止で日本も対象か
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN10CM10Q5A210C2000000/
『2025年2月11日 8:02 (2025年2月11日 9:19更新)
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渡部恒雄さんの投稿
渡部恒雄
トランプ米政権は鉄鋼関税を強化することで中国の過剰生産品から国内市場を守る構えだ=ロイター
【ワシントン=八十島綾平】トランプ米大統領は10日、鉄鋼・アルミニウム製品に対する25%の追加関税を全ての輸入品に適用するための大統領令に署名した。追加関税は第1次政権で導入されバイデン前政権でも続いていたが、課税を免除する例外措置も多く設けられていた。例外措置の停止により、日本製品も対象になるとみられる。アルミ製品への追加関税は10%から引き上げられた。
3月4日から発効する。通商拡大法232条に基づく措置で、同法のもとで広く認められていた例外措置を全面的に停止する。トランプ氏は例外措置は認めない考えを示したものの、発動まで1カ月弱の猶予期間が設けられたことで今後、例外措置の復活を巡る各国との駆け引きが予想される。
例外措置がそのまま停止されると、これまで適用除外だったカナダ、メキシコ、オーストラリアのほか、欧州連合(EU)、英国、ブラジル、韓国、日本などからの鉄鋼・アルミ製品の関税負担が大幅に上がることは避けられない。
トランプ氏は米フォックスニュースのインタビューで、今後は自動車・半導体・医薬品に対する追加関税も検討することを明らかにした。
鉄鋼・アルミ関税について、ドイツはすでに報復措置を明言している。ロイター通信によると、トランプ氏は署名時に報復は気にしないと述べた。ピーター・ナバロ大統領上級顧問は記者団に、中国を念頭に「(外国製品の)不当廉売を終わらせるための措置だ」と説明した。
鉄鋼・アルミへの追加関税は、第1次トランプ政権時代の2018年3月に発動された。232条に基づく措置だが、19年にカナダ・メキシコについては課税の適用除外にするなど例外も多く設けられている。2カ国に加え、オーストラリアも適用除外対象国になっている。
一定数量までは追加関税なしで輸入できる「関税割当」という例外措置も設けられており、日本や欧州連合(EU)、英国の鉄鋼製品はこの措置の対象になっている。
これらの国・地域ごとの例外措置のほか、米国内の鉄鋼輸入者ごとに申請する適用除外や、国家安全保障のためにどうしても必要な鉄鋼製品に関する適用除外もある。
トランプ米政権の商務長官に指名され、通商政策を担当する実業家のハワード・ラトニック氏は適用除外の申請が約56万件もあったとして「多すぎるように思う。より簡素化・効率化する必要がある」としていた。
バイデン前政権下でも適用除外の対象品目数を減らし、例外措置を縮小してきた経緯がある。昨年7月には中国製品の迂回輸入対策として、メキシコからの輸入品には北米3カ国で原料を溶かして鋳造したことの証明も求めることにした。
トランプ氏は10日の大統領令署名で、この措置をさらに強化。カナダ・メキシコから輸入される鉄鋼・アルミ製品については、北米3カ国で原料を溶かして鋳造したことを証明する新たな基準を設け、同基準を順守することを義務付ける。鋼板を加工した製品もこのルールの対象にする。
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渡部恒雄
笹川平和財団 上席フェロー
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分析・考察 この鉄鋼・アルミニウム製品への25%の関税が実際に遂行された場合に予想できることは、鉄鋼・アルミニウムという多くの製造業が使っている素材の値段が上がり、米国内の物価が上がることです。トランプ大統領は物価を上昇、さらには貿易戦争により景気後退を招くようなことは望んでないはずです。一方で、トランプ大統領は関税という自らのディールの武器も失いたくないため、関税政策の放棄も望んでないでしょう。そうなると今後は、第一次トランプ政権で経験したように、鉄鋼・アルミニウムの課税で深刻な影響を受けるカナダ、メキシコ、EU、ブラジル、韓国、ベトナムなどとの個別の交渉ということになるのではないでしょうか。
2025年2月11日 8:40
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