NY自動車ショー「EV一辺倒」が変化 日韓はガソリン車
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN27EEP0X20C24A3000000/
『2024年3月28日 7:16
【ニューヨーク=堀田隆文】米国で自動車見本市「ニューヨーク国際自動車ショー」が27日開幕した。1年前の見本市は電気自動車(EV)の新型車が目立ったが今年は少なく、代わって日韓勢がガソリンエンジン車やハイブリッド車(HV)の新モデルを披露した。EV市場が減速するなか、各社が商品アピールの重心を「EV一辺倒」からずらし始めた様子が垣間見えた。
見本市は東部ニューヨーク市内で毎年開催している。27日に報道公開した。
韓国・現代自動車グループが先陣を切って記者発表した。現代自が披露したのは、多目的スポーツ車「ツーソン」の新型モデルだ。売れ筋の中型サイズのSUVは、排気量2500cc級のガソリンエンジン車のほか、HVとプラグインハイブリッド車(PHV)を用意した。
「EVの将来性は揺るがないが、すべての消費者のニーズに応える必要がある。(新モデルを買う消費者は)HVやPHVを手ごろな価格で選ぶことができる」。登壇した現代自幹部はこう説明した。
続けて記者発表した傘下の起亜がアピールした新型車も、排気量2000cc級などのガソリンエンジンを積むコンパクトセダン「K4」だった。
現代自グループは、米国市場でのEV拡大に最も力を入れている外資メーカーの一つだ。グループのEV販売台数の市場シェアは23年は8%に迫り、6%台の米ゼネラル・モーターズ(GM)や同フォード・モーターをしのぐ。1年前の23年春のニューヨークショーでは新型EVを披露したが、今回の目玉としたのはEVではなかった。
日産は高級車ブランド「インフィニティ」で新型「QX80」を展示した(27日、ニューヨーク市)
日産自動車もガソリンエンジン車を目玉に据えた。高級車ブランド「インフィニティ」の新型SUVだ。価格8万ドル(約1200万円)台からの高級車は、主力のV6ツインターボエンジン(排気量3500cc級)を搭載する。日産は同じくガソリン車の新型「キックス」も披露した。
米国のEV市場は減速感が高まる。「アーリーアダプター」と呼ばれる新しいもの好きの富裕層に行き渡って急成長に陰りがみえたうえ、米政権が最大7500ドルのEV販売補助金の条件を厳格化し、メーカーは価格競争力の高いEVを投入しにくくなった。
各社ともEV普及の旗は下ろしていないものの、3月下旬には米政府が32年のEV普及目標を引き下げ、排出ガス規制の達成にHVとPHVを役立てることも認めた。数年を要する車の開発計画は簡単に変わらないが、今回、日韓勢の出展内容は米政府のEV方針の変化に沿ったものになった。
ポールスターは新型EVを紹介した(27日、ニューヨーク市)
一方、ボルボが親会社の浙江吉利控股集団と共同で立ち上げた高級EVメーカーのポールスター(スウェーデン)はSUVタイプの新型EVを披露し、記者会見でEVの最新モデルを紹介した数少ないブランドとなった。
フォードは主力車「マスタング」の60周年を祝う展示とした(27日、ニューヨーク市)
今回のモーターショーで、記者会見を開いた米国勢はフォードだけだった。フォードは主力車「マスタング」の60周年を祝う展示をし、特別仕様車も出展した。日本車では、トヨタ自動車と日産、ホンダ、SUBARU(スバル)がブースを設けた。ショーは27〜28日に報道陣に公開し、29日から4月7日まで一般公開する。
【関連記事】
・BYDがひそかに蓄えるエンジン技術 EV市場失速に備え
・EV普及は踊り場へ 使いやすさでHVが優位に
多様な観点からニュースを考える
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。
小山堅のアバター
小山堅
日本エネルギー経済研究所 専務理事 首席研究員
コメントメニュー
ひとこと解説
EVの拡大そのものはまだまだ続くことは確実である。
ただし最近までの「EV一人勝ち」的な状況、EVに圧倒的に偏ったシフトの展開には変化の様相が顕在化している。
消費者にとっての経済性・利便性、インフラ普及の制約、経済安全保障問題、など様々な課題・問題が浮上することで、市場が冷静さを取り戻してきた、ということができるかもしれない。
EV拡大の中でも、従来の内燃機関車(ガソリン車など)、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、燃料電池車など、様々なオプションの利害得失を総合的に検討し選択していくことが重要になる。
総合的検討と戦略的選択は、消費者にとっても、国家にとっても、共に必要不可欠である。
2024年3月28日 9:39 』







