防衛装備輸出、残った宿題 「戦闘機だけ」安保協力の壁
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA241K10U4A320C2000000/

『2024年3月26日 11:43
共同開発した防衛装備の第三国輸出について政府が道筋をつけたのは次期戦闘機のみだった。他の装備の扱いは改めて与党内で協議が必要になる。輸出できる対象を警戒・監視など「5類型」の用途に限る規制の撤廃も先送りとなり、日本の安全保障政策は他国と協力する際の制約がなお残る。
政府は26日の閣議などで、日英伊3カ国で共同開発・生産する次期戦闘機の第三国輸出を認めると決定した。
国際共同開発・生産する防衛装備…
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『国際共同開発・生産する防衛装備すべてを対象にした輸出容認は見送った。次期戦闘機の輸出先は日本と防衛装備品・技術移転協定などを結ぶ国に限るといった要件も付けた。
装備輸出に慎重だったのは公明党だ。政府は次期戦闘機の第三国輸出ができなければ共同開発のパートナー国として日本はふさわしくないと国際的に認識されかねないと説明した。』
『次期戦闘機については理解を得たものの、他の装備を共同開発する際、日本が第三国輸出を認める確証は示せなかった。同盟・同志国にとって次期戦闘機の輸出を巡る合意形成におよそ1年を要した政策決定過程は日本を共同開発の相手に選ぶうえでの「政治リスク」に映る。』
『最先端の防衛装備開発は高度な技術が必要で、費用負担も重い。複数の国で共同開発・生産し、技術面などのリスクと増大するコストを分担するのが主流になりつつある。
輸出によって1機あたりのコストを下げつつ、関係する地域の抑止力を高める手法が広がる。日本は世界の潮流に乗れない可能性がある。』
『政府は2022年末、国家安保戦略など安保関連3文書で防衛力の抜本的強化を打ち出した。それから1年3カ月。政府・与党は計画実行への環境整備で2つの課題を積み残している。』
『ひとつは日本と安保協力関係にある国に輸出を認める防衛装備を救難、輸送、警戒、監視、掃海の「5類型」に関わる完成品に絞る制約の変更だ。
他国の特許を使うライセンス生産品や共同開発品かどうかにかかわらず、より幅広い輸出が可能になる規制緩和の「本丸」とされる。
自民党内には輸出拡大に向けて5類型の撤廃論がある。「地雷除去」や「教育訓練」、「防空」などを類型に追加する案もある。実現すれば国内防衛産業の育成に欠かせない国際販路の拡大につながる。
自民党の渡海紀三朗政調会長は15日、記者団に与党協議をすぐ始めるかを問われた。回答は「まだ具体的な話をしていない」だった。』
『もうひとつは重大なサイバー攻撃を未然に防ぐ「能動的サイバー防御」を可能にする法整備だ。安保3文書に導入を明記した。
平時から通信を監視し、攻撃の兆候があれば相手のサーバーに侵入するなどして対処できるようにする。憲法が保障する「通信の秘密」に抵触しないかの解釈を整理したうえで、電気通信事業法や不正アクセス禁止法などの幅広い法改正が要る。
政府は当初、24年の通常国会への法案提出を想定していた。装備輸出の調整に時間がかかり、法案作成の前段階となる政府の有識者会議も設置できていない。「日米同盟の最大の弱点」といわれるサイバー防衛の法整備が置き去りにされたままだ。』