中国に「長期停滞」懸念 消えた爆買い、安値輸出懸念も

中国に「長期停滞」懸念 消えた爆買い、安値輸出懸念も
市場点検・商品編
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB1937U0Z11C23A2000000/

『2023年の商品市場は、様々な品目を最大消費国として「爆買い」してきた中国経済が重荷となった。リオープン(経済再開)期待が空振りに終わり、景気の長期停滞懸念が続く。24年も需要が戻らず相場の反発が遅れる可能性がある。

商品のなかでも、中国の景気動向を反映しやすいとされるのが非鉄だ。「ドクターカッパー」の異名も持つ銅やアルミは消費の5〜6割を中国が占め、建設や製造業など用途も幅広い。

銅価格の国際指標となる、ロンドン金属取引所(LME)の3カ月先物は1月中旬に7カ月ぶりの高値をつけた。ただ、主要な非鉄金属は1月に最高値をつけたあとは軟調に推移した。現在は年初来の高値を9%下回っている。

新型コロナウイルス禍からの経済再開に伴う産業活動が好転しなかった。中国政府は22年12月、ゼロコロナ政策から大幅な規制緩和に転じた。

旧正月(春節)明けにも表れると期待された景気持ち直しの動きは遅れ、低調な経済指標の発表が相次いだ。中国国家統計局のまとめた製造業購買担当者景気指数は8月まで5カ月連続で、好調・不調の境目である50を下回った。

不動産不況は長期化の様相を見せる。同局によると、1〜11月の不動産開発投資は前年同期に比べ9.4%減った。

新築住宅販売面積は同7.3%減るなど、景況の反転は見通しにくい。

景気の停滞は、消費にも影響する。例えば中国の食卓に欠かせない豚肉。中国北部の主要な豚取引地の一つ、河北省滄州市で12月上旬に一時1キロあたり約13元(約260円)。需要の落ち込みで、上海が都市封鎖されていた22年4月以来の安値圏まで下がった。

豚肉は中国の消費者物価指数(CPI)に占める比重が高く、中国の11月のCPIは2カ月連続で前年同月比マイナスだった。

伊藤忠総研の武田淳チーフエコノミストは「消費マインドは改善しておらず、来年も状況はそれほど変わらない。景気の加速は見込みづらい」と話す。

産油国の動向が価格に影響しやすい原油にも、中国の景気が影を落とす。消費の低迷が意識され、指標となるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)は9月の高値比で2割安い。

エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の野神隆之首席エコノミストは「不動産不況や製造業の回復遅れが続く。市場は中国景気が加速するとの確信を持ちきれていない。相場はもたつく可能性がある」と話す。

24年も、不動産不況やデフレ基調の経済が、世界の商品市況を冷え込ませるリスクがある。

住友商事グローバルリサーチの本間隆行チーフエコノミストは「インフラ投資以外に銅の需要を盛り上げる材料がない」と指摘する。その上で「これまで積極的な買いで相場を支えてきた中国が地金を余らせ、安値の輸出に転じて相場を押し下げるリスクもある」と説明する。

すでに鋼材は、アジアなどに安値で輸出される「デフレ輸出」が起きている。不動産不況やインフラ投資の落ち込みで、中国でだぶつくためだ。薄鋼板を巻き取った熱延コイルは東アジア地区価格(運賃込み)が足元で1トン575ドル。3月の高値から14%下落した。

ある商社の担当者は「日本を含む周辺国へ高水準の輸出が続く可能性もある」と警戒する。中国景気が悪化した15年前後の「鉄冷え」の再来を懸念する声も出ている。

(荒川信一)

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