G7外相、中東・ロシア・中国「3正面対応」に危機感

G7外相、中東・ロシア・中国「3正面対応」に危機感
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA025V80S3A101C2000000/

『2023年11月8日 13:45 (2023年11月8日 23:01更新)

日米欧など主要7カ国(G7)の外相会合は8日、都内で2日間の討議を終えて閉幕した。パレスチナ自治区ガザの人道支援に向けて、戦闘を一時的に止める「人道的休止」の支持を訴える共同声明をまとめた。

イスラエルはイスラム組織ハマスへの攻撃を続ける構えを崩しておらず、戦況の転換はなお見通せない。G7は中東とロシア、中国の「3正面対応」を強いられる状況に直面している。

外相会合は2023年G7議長国の日本が…

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『外相会合は2023年G7議長国の日本が主催した。ガザの人道危機に対処するため食料や水、医療などを提供できるように「人道回廊」の設置を呼びかけた。

ハマスによるテロ攻撃を断固として非難し、誘拐された人質の即時解放を改めて求めた。イスラエルと将来のパレスチナ国家が平和的に共存する「2国家解決」が「公正で永続的な平和への唯一の道だ」と申し合わせた。

上川陽子外相は閉幕後の記者会見で「人道的休止やその後の和平プロセスを含め一致したメッセージをまとめることができた」と強調した。

ブリンケン米国務長官は会合後に都内で記者会見し「G7はイスラエルの自衛の権利と義務に対する確固たる支持を再確認した」と語った。戦闘の人道的休止を支持した共同声明を「G7のパートナーたちが信じていることを正確に反映した」と評価した。

日本は当初、ロシアの侵攻を受けるウクライナへの支援や中国の動向を主要議題と位置づけていた。そこにハマスによるイスラエルへの攻撃が起きた。

日本は7日夜の夕食会で中国を含むインド太平洋について話す調整をしていたが、急きょ議題を中東情勢に切り替えた。中東に結束して取り組む姿勢を国際社会に示すためだ。

米国は2000年代にアフガニスタンとイラクの「2正面対応」を迫られた。その間に中国は軍備増強を進めた。

米国にもG7にも3正面への対応は重荷だ。中国は隙をつくようにウクライナや中東の事態収拾に取り組む動きをみせる。中東情勢の混迷が深まれば、米国は日本の頭越しに中国との関係改善に動かざるを得なくなるとの見方がある。

G7が外相会合で「結束」を改めて強調したのは危機感の裏返しといえる。会合では困難な中東情勢下でもウクライナを支援する姿勢は不変だと確認した。中国には率直に関与し、直接懸念を伝えることの重要性で一致した。

G7はウクライナ支援を巡っては実際に強い結束で行動できた。それと比べ、イスラエルとハマスの衝突への対応は手間取っている。メンバーの外相が初めて電話で協議したのはハマスの攻撃から10日後だった。

日本以外の6カ国首脳が10月に発表した共同声明にはイスラエルと同国の自衛権支持を明記した。G7外相の声明はイスラエルの自衛権を強調するにとどめた。共通認識を国際社会に示しはしたが、足並みはそろわない。

議長国の日本は特に難しい立場にある。日本はパレスチナを支持するアラブ諸国に対して石油の輸入を依存しながら独自外交を展開してきた。その一方で、同盟国の米国が後ろ盾となるイスラエルにも配慮する必要があった。

米欧各国ではガザ情勢の沈静化に向けた日本の独自外交に期待する声はほとんどない。外相会合に参加した欧州高官は「軍事プレゼンスが低い日本には手に余る課題だ」と指摘した。

G7の他の6カ国は日本にガザの再建など民生面の貢献を求める立場だ。ガザの貧困がハマスの台頭の背景にあっただけに、日本がすでに進めるパレスチナ人の雇用創出につながるインフラ事業などへの期待が大きい。』