中東情勢、日本はなぜバランス外交? G7外相会合で協議

中東情勢、日本はなぜバランス外交? G7外相会合で協議
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA017ZL0R01C23A1000000/

『日米欧など主要7カ国(G7)は7〜8日に都内で外相会合を開く。イスラエルとパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスの衝突で緊迫する中東情勢を主要議題として取り上げる。議長国を務める日本がなぜイスラエルと周辺のアラブ諸国との「バランス外交」を探るのか、3つのポイントでまとめた。

・日本の石油輸入の中東依存度は?
・日本のイスラエルとパレスチナとの関係は?
・日本が議長国を務めるG7での各国の姿勢は?…

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『【1】日本の石油輸入の中東依存度は?

資源・エネルギー庁の資源・エネルギー統計年報によると、2022年の石油輸入量は中東からの割合が94%に達した。同年2月のロシアによるウクライナ侵攻を受け、G7は制裁としてロシア産原油の禁輸を打ち出し、日本の中東への依存度はさらに高まった。

石油は発電、自動車や飛行機の燃料など用途が多様で、価格の動向は国民生活に直結する。1970年代には中東情勢の不安定化に伴う2度の石油危機が世界経済を襲い、日本でも「狂乱物価」という造語が生まれるなど、パニックが広がった。

政府は22年度のエネルギー白書で「(石油の)安定供給の確保に向け、中東産油国との友好関係を深化させていくことは重要だ」と指摘する。

日本は主要な輸入国であるサウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)などアラブ諸国と友好的な結びつきを維持する。イスラム教スンニ派が中心のアラブ諸国と距離を置くシーア派の大国イランとも関係は良好で、地域で独自の地位を確保している。

日本は輸入する石油の9割超を中東に頼っている(サウジアラビアの石油関連施設、2018年)=ロイター

【2】日本のイスラエルとパレスチナとの関係は?

日本はイスラエルとパレスチナ自治政府の間で中立の立場だ。イスラエルと将来の独立したパレスチナ国家が平和かつ安全に共存する「2国家解決」を支持する。

日本企業はハイテク産業が成長を支えるイスラエルに投資を増やしている。同国のコンサルティング会社ハレル・ハーツ・インベストメント・ハウスによると、22年の日本からのイスラエル企業への投資額は15億5800万ドル(約2300億円)だった。過去最高だった前年から減少したものの高水準を保つ。

一方、日本政府は物価上昇や若年層の高失業率に苦しむパレスチナへの財政支援を続ける。隣国ヨルダンを加えた4者の協力による「平和と繁栄の回廊」構想を進め、農産加工団地を整備している。

日本は、イスラエルが最大の後ろ盾とする米国と、パレスチナを支援するアラブ諸国の間で板挟みに陥りやすい。日本の安全保障は同盟国の米国の協力なしでは成り立たない。エネルギーの安定供給にはアラブ諸国との関係維持は不可欠だ。

日本が10月7日のハマスによるイスラエル攻撃を「テロ」と表現するまで4日を要した。ハマスの攻撃は非難しつつ、アラブ諸国の出方を見きわめたためだ。UAEはイスラエルと国交を正常化し、サウジも関係改善に意欲的で、態度を把握するのは難しい。

イスラム組織ハマスに10月7日、攻撃されたイスラエルの住宅=AP

【3】議長国を務めるG7での各国の姿勢は?

日本はG7の中で最もエネルギーの自給率が低い。石油輸入を依存するアラブ諸国との良好な関係を保つ必要がある一方、背後に米国がいるイスラエルへの配慮も欠かせない。地域全体と関係は良好なものの、バランスを強いられ、外交の自由度は高くない。

ハマスによるイスラエルへの攻撃以降、日本のバランス外交の難しさも浮き彫りになっている。日本以外のG7メンバーで中東情勢について協議する場面が目立つ。日本を除く6カ国は10月22日、イスラエルの自衛権を支持することなどを柱とする共同声明を発表した。
米国とイスラエルは「特別な関係」とされる。米国内でユダヤ系米国人が人口に占める割合は全体の2%程度にすぎない。それでもユダヤ系ロビー団体は巨大な資金力やネットワークを持ち、政界での存在感は大きい。米国はこれまで一貫してイスラエルを支援している。

外務省幹部は「中東情勢でG7が日本を除いて動くことは珍しくない」と語る。G7は、ヨルダンが国連総会に提案した人道的休戦を求める10月27日の決議案をめぐり、賛成、反対、棄権と対応が割れた。フランスは賛成、米国は反対、日英などは棄権に回った。

パレスチナ自治区ガザで3日、イスラエル軍による空爆で救急車などが被害を受けた=ロイター

覇権主義的な動きを強める中国やロシアを前にG7の足並みの乱れを見せ続けることは得策ではない。日本は議長国としてG7を結束させ、事態の早期沈静化やガザの人道状況の改善などについて共通のメッセージを国際社会に打ち出せるか。G7外相会合は日本のバランス外交の正念場にもなる。

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