日英、重要鉱物に共同投資 経済安保の閣僚級対話創設へ

日英、重要鉱物に共同投資 経済安保の閣僚級対話創設へ
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『日英両政府はアフリカなどで重要鉱物への共同投資に乗り出す。経済安全保障について協議する閣僚級の対話の枠組みも創設し、サプライチェーン(供給網)構築を議題とする。両国で協力し、巨額の費用とリスクへの対処を求められる鉱山開発を進め、安定供給を狙う。

西村康稔経済産業相が訪英し、ロンドンで6日にも英国のベーデノック・ビジネス貿易相と会談。「日英戦略経済貿易政策対話」の立ち上げを盛り込んだ共同声明を発表…

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『電気自動車(EV)や風力発電といった脱炭素技術に欠かせないコバルトやニッケルなどの開発を念頭に置く。日本はこれらを中国を中心とする特定の国からの輸入に頼る。アフリカをはじめとする鉱物資源が豊富な国や地域で、鉱山の探査や精錬設備の整備を日英が共同で進め、供給網の多様化につなげる。

アフリカではザンビアが銅に加え、ニッケルの産出で知られる。コンゴ民主共和国は世界のコバルトの7割を供給している。マリやガーナには開発途上の地域が多く、各国が関心を寄せる。

英国は8月にザンビアと30億ポンド(およそ5500億円)規模の官民投資をめざす協定に合意した。南アフリカとも重要鉱物に関する定期的な閣僚会合を立ち上げた。西村経産相も8月にナミビアなどアフリカ5カ国を訪問し、関係強化を進めている。

旧植民地諸国を軸とする英連邦(コモンウェルス)にはアフリカ各国が多数加盟している。アフリカと伝統的に関係が深い英国が持つネットワークを生かし、日本の権益確保につなげる。日英など主要7カ国(G7)は5月の首脳会議(G7広島サミット)で採択した共同文書で新興国との連携で一致している。』

『中国は、経済成長の潜在力が高いアフリカ各国で鉱物やインフラなどの巨額開発を進めている。50カ国以上からなるアフリカは国際政治の上で重要なため、日英で協力して中国の影響力増大に歯止めをかける狙いもある。』

『供給網の強化に向けて、日英間で半導体や蓄電池といった重要物資で供給不足の発生を早期に把握する仕組みをつくる。閣僚レベルで迅速に情報共有する枠組みを設け、平時から供給網の混乱に備える。

同様の仕組みは日本と欧州連合(EU)、日米韓3カ国、米国主導の経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」にもある。日本と英国は5月のG7サミットでも経済や安保の協力強化を記した「広島アコード」で合意している。

日英の会談では環太平洋経済連携協定(TPP)に関して「協定のハイスタンダードの維持・強化」をめざす立場を確認する。貿易や投資を通じて圧力を強める「経済的威圧」を繰り返す中国の加盟を厳格に判断する姿勢を内外に示す。中国は8月、日本産水産物の輸入を全面停止するなど、威圧行為を続けている。』

『中国はオーストラリアやニュージーランドなどのTPP加盟国との関係改善を急いでいる。参加をめざすTPPの加盟交渉を優位に進めたい思惑があるとみられる。

中国は8月、新型コロナウイルスの起源を巡って対立していたオーストラリアに対し、大麦への制裁関税を撤廃した。6月にはニュージーランドのヒプキンス首相が北京で中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席と会談している。

英国はEU離脱後も国際社会で影響力を示すため「グローバル・ブリテン」をかかげ、新規加盟したTPPなどを軸にインド太平洋地域との関係強化に注力している。』