結局、感情で動く政治
http://blog.livedoor.jp/goldentail/archives/32205126.html
『以前、投稿で、中東やアフリカの移民に対して、腰の重かった欧州の世論が変化したのが、ギリシャに漂着した密航しようとした違法難民の少年の水死体だった事を解説した事があります。それまでは、その後に起きる「移民歓迎ブーム」みたいなムーブは、決して主流の考え方ではありませんでした。当時のドイツのメルケル首相でさえ、割と移民に対しては慎重な発言をしていました。既にドイツには、トルコ系の移民が大量に入り込んでいて、更に違う民族の移民を受け入れるのは、負担になると考えられていたからです。
正確に言うと、この少年の死体と、それを抱きかかえるギリシャ警察官とおぼしき人物の一枚の写真が、大きなムーブメントを起こします。移民を受け入れるのが正義になり、慎重な行動を促すような意見を言うと、「このレイシストめ。今は、そんな事を言っている時ではない」と、罵倒されたり、社会的な立場を失ったりするようになりました。物凄い社会圧力で、メルケル首相が難民受け入れ歓迎のメッセージを出したのも、この頃です。今は、なんと言っているかと言うと、「ドイツの難民政策は失敗だった」と言っています。通常の手続きを、すっ飛ばして難民申請を受け入れた為、単なる経済難民も入り込んできました。本来、難民というのは、政治的に立場が脅かされる事が確認されて認定されるので、受け入れ人数が多いとか少ないとかで評価される事ではないはずです。しかし、当時のドイツは、受け入れた難民の数を誇り、EU諸国にマスコミが説教を垂れるという異常な状態でした。
同じく、マイクロプラスチックの海洋汚染についても、その起点になったのは、ウミガメの鼻に突き刺さったストローの画像です。プラスチック・ゴミの問題を取り上げる時、ストローに関して象徴的に取り上げられるのは、このせいです。国によっては、紙ストローが義務づけられました。しかし、発展途上国ならともかく、ゴミ処理施設が整っている先進国で、ストローが海に投棄される量が、いかほどのものか、効果があるのか疑問です。
言ってしまえば、一枚の写真が思想的なムーヴを引き起こして、「公共の敵」を作り出し、有無を言わせず物事を推進したと言えます。この思想が現実を変えられると考えるのは、欧米では割合の主流でして、一度レッテルが張られてしまうと、善悪の二元論で物事が推進される傾向があります。トヨタのブレーキの問題で、当時のCEOがアメリカの公聴会に呼び出されて、散々に罵倒されましたが、後に問題が無かった事が正式に調査委員会から発表されています。しかし、テスラがカタログで性能を誤魔化したり、誇大な広告をしても、今のところ政府レベルの動きは無いです。ようは、感情のはけ口に波長が合うかどうか程度の話だったりします。
なので、EVに関しても、確かに売り込むというレベルで、巧妙で強引な動きが目立ちますが、いずれ失速すると思っています。政府が政治的に、消費者が買って良いものと悪いものを決めて、強引に市場を操作するというのは、計画経済の共産主義的な発想です。その理由として、CO2排出を持ち出していますが、それも怪しいという事は、最近の調査で明らかになりつつあります。結局、持たれたイメージで、物事が動くという実に感情が支配する実態があります。
そして、恐らく、将来において象徴的になると思われる事件が起きました。自動車専用運搬船である、フリーマントル・ハイウェイがオランダ沖の洋上で火災を起こしました。この船には、3783台の自動車が積載されていて、そのうちの498台がEVです。この火災は1週間に渡って燃え続け、燃えるものが無くなってようやく鎮火しました。船が沈没しなかったので、周囲の環境は守られましたが、その辺りの海域は、ユネスコ遺産にも登録されている干潟の広がる自然豊かな場所です。重油が漏れたりしたら、酷い環境汚染になるところでした。
この火災の原因は、特定されていませんが、EVから発火したのではないかと言われています。少なくても、船上火災が消火できなかったのは、積んでいたEVに次々の延焼したからです。このブログで言っているように、バッテリー火災は、化学反応による燃焼なので、普通の方法では消火できません。そして、バッテリーは、外気の変化や、衝撃で発火します。実際、航空機では、バッテリーの輸送は禁止されています。やはり、貨物運搬輸送機で、荷物のリチウムイオンバッテリーが発火して、離陸しようとしていた飛行機が緊急着陸する事故が起きているからです。この火災で、一名が亡くなり、火に追い詰められた船員が、30メートルの高さから海に飛び込むなど、かなり現場は混乱したようです。
で、今更なんですが、「EVは危険なんじゃないか」とか言い始めたわけです。運搬していた自動車は、ドイツからエジプトに向かっていたのですが、まずはドイツ国内から火災真っ最中に報道を通じて声があがりはじめ、国連の下部組織である世界海運機関が「同様の事故が最近、多発している為、EVの船舶輸送に関する規制を検討している」という声明を出しました。また、ノルウェーの海運業者が、「今後EVは運ばない。これは、火災が起きる事が怖いのではなく、EVの火災は消火できないのが怖いのだ」と言い始めました。
これを発端に、今まで「EV推進は正義。逆らう奴は環境テロリスト」みたいな扱いをしてきた欧州のマスコミも、EVの危険性について記事を出し始めています。このEV火災は、輸入が増えている日本でも起きていて、7月9日には、千葉市のアウディの販売店で、駐車場に停めていたEVが突然発火して、乗用車8台が変形する程焼けてしまいました。これ、海外を習って、市バスとか燃え始めたら、街中が危険という事です。
これは、中国の話ですが、EV化を国を挙げて取り組んでいたので、既に市バスなどがバッテリー劣化で入れ替えの時期に来ています。しかし、EVの価格のほとんどを占めるのがバッテリーの代金です。しかも、大型車となると、その金額も莫大です。武漢肺炎で、外出が抑制されていた事もあり、お客も減ったので、メンテナンスの代金を工面する目処がつかず、稼働率が2/3に下がっています。今後の目処も立っておらず、バス会社の経営を危うくしそうな原因になっています。
こうして、俯瞰して見ると、真剣な対立を引き起こしている問題の大部分は、一枚の写真、一つの事件から始まった「感情の問題」であり、科学は後付で、それを補完する為に組み立てられた理論に過ぎないという関係が見えてきます。つまり、特定の目的を理論付けする為に生み出された、検証のされていない似非科学ですね。データというのは、引用の仕方で、どんな結論でも導き出せるので、特定の勢力に加担する科学者の言うデータや統計は、注意して見ないと危険です。
また、EVはバッテリー劣化で評価が下がるので、中古車市場が、未だに形成されていないという問題もあります。生活の為に自家用車が必要な人は、安い中古車を買い替えて利用するという事がガソリン車では可能なのですが、EVは、そもそも中古車市場が発展していないのですね。つまり、新車使い切りのEVの廃車が、山のように今後出てくるはずなので、それをどうするのか。無理やり誘導した市場というのは、あちこちで新しい問題を引き起こします。
動力シフトを引き起こす事で、欧州の自動車産業は有利になるはずですが、フタを開けるとアメリカのテスラが独走し、世界市場でもリチウム採掘とバッテリー生産で有利な中国の企業がシェアを取っています。既に太刀打ちが不可能な状態になりつつあり、旨味が無くなったので、フォルクスワーゲンなどは、結局、内燃機関車の製造・研究を継続する事になりました。ディーゼルに続いて、EVでもルールを変える事で有利に立とうとして、結局は負けた事になります。
欧州の世論というのは、このように「気まぐれ」で動いているので、何かしらのムーブがあっても、無批判に追随するのは危険です。ある日、気が変わると、今までと180度逆の事を言いだしたり、イチャモンに近い罰金を企業に課してきたりするので、余り真剣に取り合わないほうが良いです。ヒステリックとも言える原子力発電所の廃止についても、ようは足りない電気は原子力発電所大国のフランスから買ってるわけで、国別の数字を整える為の茶番だったりします。
ノルウェーは、新車のEV購買比率が83%と驚異的ですが、EV用のインフラを整える費用を捻出する為に、自国の保有する北海油田から採掘した原油を他国に売りまくり、その量は40倍です。フィンランドという国に限れば、EV化が進んでいますが、その為に今までの40倍の化石燃料を他国に売りまくっているという事です。実際、水資源の豊かなフィンランドは、自国に必要な発電量は水力発電で賄えていたのです。しかし、EVで電力需要が増えると、その為に原油を売りまくらないといけなくなります。
結局、政治的な数字目標を達成する為に、バラバラに動くので、全体で見たら、まったく環境負荷を減らしていないか、むしろ悪化させています。この辺り、中国共産党が捏造する数字を、まったく笑えない状況です。多少はマシという程度ですね。数字を出せば評価されて、選挙でも当選できるのですから、そりゃ、実態はどうあれ、数字を作りに動きますよね。』









