三重の圧力の中国経済、「成長市場は常に」日本商会会長
月曜経済観測
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM156NV0V10C23A8000000/
『中国経済の先行きが不透明だ。これまで商社業界が交代で担っていた中国日本商会会長に4月、製造業出身として初めて就いた本間哲朗氏に見通しを聞いた。
――足元の景気動向は。
「厳しい新型コロナウイルス対策が全廃され、市民が喜々として外食する姿を見て、年初には景気の好転を確信した。残念ながら第2四半期の経済成長率は(実質で前年同期比)6.3%と市場予想を下回り、力強さを取り戻していない」
「経済の現状に…
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『「経済の現状について政府が示す『三重の圧力』(需要縮小・供給ショック・先行き期待の低下)の表現に違和感は無い。7月末の中央政治局会議で不動産政策や投資促進など対策骨子が示されたのはよかった」
――今後の見通しは。
「地方政府はコロナ対策で財政赤字を抱え、対策の具体化に時間がかかる可能性がある。一方、中国市場は巨大で変化が早い。常に伸びる市場は存在する。それを見出し、身を寄せる努力をすべきだ。いつか良くなる日が来ると現状に安住するのはもっとも拙い」
――米中対立が経済分野に影響を及ぼしています。
「米国の制裁対象は650社を超す。輸出の不振や先行き不安、それに起因する民間設備投資の鈍化を生んでいるのは否めない」
「一方、米欧IT(情報技術)企業の中国での布陣は非常に大きい。彼らは中国でしっかり稼いでいる。日本企業は彼らのしたたかさを見習うべきだ」
――日本企業にとって中国はどういう市場ですか。
「中国市場で存在感を発揮して利益を出し、配当を日本に送ることができなければグローバルでの生き残りも難しい」
「中国は『製造大国』『市場大国』から『イノベーション大国』『エンジニア大国』となった。先日ある外国商会幹部から『もうひとつある。フィットネスセンターだ』と指摘された。熾烈(しれつ)な競争が繰り広げられる中国市場は競争力を磨く上でもってこいの場所だ」
「家電は最も早く中国との競争にさらされた。中国で(製品の)各分野のベスト3に中国企業が現れたら『バリューチェーンと判断メカニズムを中国に持ち込み、中国企業と同じスピード、コストを目指す』。これが家電業界の教訓だ」
――パナソニックはどう実践しましたか。
「2018年7月に成長停止の真因を探り、浮かび上がった課題は①日本を向いた経営②コスト力の不足③中国のヒト・モノを生かさない経営――だった。19年4月に中国・北東アジア社を設立し、機微技術を含まない地域向け事業は製品開発、製造、販売の権限を独立させた」
「朝から晩まで日本にお伺いを立てていた経営サイクルが一変した。江蘇省宜興市の高齢者向け住宅という象徴的プロジェクトや手のひらに収まるシェーバー、ペット家電など現地発のヒット商品が次々と生まれた。主要製品のシェアが向上し4〜6月期の域内販売もプラス成長を達成した」
――製造業初の商会会長として目指す役割は。
「上海ロックダウン(都市封鎖)のように西側の価値観で想像できない事態に直面し、日本企業の声をもっと中国政府に率直に届けるべきだと訴えてきた」
「今年度は『予見性、透明性、公平性の高い事業環境』『中国が提唱する強靱(きょうじん)なサプライチェーンの中に日本企業を位置付ける』をテーマに発信する。上期も各地で副首相を含む中央・地方政府トップに提言した」
「多くの日本企業が悩んでいるのがデータセキュリティー3法と改正反スパイ法への対応だ。矛盾や疑問は商会として中国政府に訴える。米欧商会の良い部分を学びながら、日本企業に必要な主張をしていく」
(聞き手は中国総局長 桃井裕理)
ほんま・てつろう パナソニックホールディングス副社長兼中国・北東アジア総代表。61歳。』






