墓穴を掘る中国 進む日米韓と日米比の結束
岡崎研究所
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/30777
『6月22日付の米ワシントン・ポスト(WP)紙は「米国のアジア同盟国は静かに中国への対抗に参加」との同紙コラムニストのジョシュ・ロウギンの論説記事を掲載し、中国と対峙する上で、サリバン大統領補佐官訪日と初の日米比韓高官のミニラテラル開催はブリンケン国務長官の訪中より重要だと指摘している。
2023年6月15日、日本、韓国、フィリピンの担当者らとの会談のため来日したジェイク・サリバン米国大統領補佐官(写真:ロイター/アフロ)
ブリンケン訪中で、中国が米国とアジアの同盟国が懸念する安全保障上の問題に対応するつもりがないことが明らかになった。習近平は軍同士の危機管理連絡網さえも拒み、より宥和的な経済閣僚の訪中を待っている。
その一方で、サリバン補佐官が訪日し、最重要パートナーである日韓比のカウンターパートと会合を持った(日米韓/日米比協議)。長期的には、これは中国の台頭に対応する上でブリンケン訪中より重要になるだろう。
史上初めて日米比の安保補佐官が一堂に会した。日米韓の安保補佐官会談は最近まで考えられなかったが、日韓両首脳は過去の怨念から離れ、中国の敵対行動に共に対抗するという大きな政治的リスクを取った。今年後半、日米韓首脳は初めてワシントンで会談する。これらの国の対中姿勢は、中国の軍事力拡大、戦狼外交、経済的威嚇が最大要因だ。
インド太平洋は広大かつ多様で、中国の経済的魅力が引き続き強いのも確かだ。フィリピンなど、米国と同盟国との安保協力強化を目指しているが、中国と完全に敵対もできない。しかし、このようなミニラテラル(少数の有志国による枠組み)は地域の安全保障枠組みを大きく変貌させつつある。中国の反発はその重要性を理解しているからだ。
米国とパートナーは、中国が墓穴を掘っている結果、インド太平洋地域で集団安全保障的対応に傾斜している。中国の台湾への威嚇増大の結果、軍事協力、戦略的計画、外交的調整で大きな進展があることには勇気づけられる。
しかし、多くの地域の同盟国は、バイデン政権の政策には強力な経済的要素が欠け、国際主義への米国の関心が弱まっていると懸念する。技術やエネルギー安保で真の協力を構築しようとする米国の計画は未実現だ。米国の一層の関与とプレゼンスを求めるアジア同盟国の希望に沿うには、米国政府と議会、国民が地域への資源投入拡充を支持しなければならない。
目的は中国封じ込めではなく、地域の同盟国の主権と繁栄を下支えする秩序の維持だ。中国は、アジアの同盟国の米国からの離反と相互対立を目論んでいるが、それは同盟国を団結させている。後は、米国がこの状況を活用できるかどうかだ。
* * *
上記は、インド太平洋地域における米国と同盟国・パートナーとのミニラテラル(以下、ネットワーク)進展の重要性を指摘するロウギンの論説だ。近年、中国がやり過ぎた結果、墓穴を掘り、逆に米国と同盟国の連携を深めたという指摘は正しい。ただ、この論説は米国の同盟国間の協力強化に焦点を当てているが、実際のネットワークの有用性はこれに留まらない。同盟関係には至らないが重要な国への対応でもネットワークは有効な枠組み足り得るのだ。』
『実は、この地域でネットワーク構築を進めた原動力は日本と言って良い。初期は日米韓、そして日米豪、日米印の連携である。これをクアッド(日米豪印)に持って行った。更に、今回は、日米韓比を実現した。
これらのネットワーク構築にはそれぞれ理由がある。米国の同盟国との間のネットワークについては、「ハブ・アンド・スポークス」という伝統的枠組みは、安全保障環境の深刻化と米国の相対的優位の低下により十分ではなくなった。その中で日米豪を立ち上げ、米豪同盟、日米同盟に加え、それまで欠けていた日豪間の安全保障協力を構築すれば同盟網にとりプラスとなるのは明白だった。
同様のことは日米比にも言えるが、それに加え、万一不幸にして台湾有事が発生した場合、地理的位置から言って、日本とフィリピンの両方が米国にとって活動のハブとなるという事情がある。兵員・装備の事前集積や非戦闘員退避、更には実際の戦闘作戦において、日米比の連携は不可欠だ。
日米韓についても同様の背景がある。更に、日韓関係が緊張しがちな中で、両国の同盟相手である米国の力を借り、最低限の協力関係を維持するという目的もある。また、韓国が北朝鮮問題に関心を集中する中、対中抑止を含む地域的課題にも韓国が責任を有することを指摘し、関心の幅を広げる場としても重要な役割を果たす。
インド・インドネシアへの働きかけを
一方、インドは非同盟の大国であるが、同国が重要懸案でできるだけこちら側に近い立ち位置をとるよう働きかけていくためには、各種協力のネットワークが有効だ。それが日米印であり、その後の日米豪印4カ国の枠組み「Quad(クアッド)」である。
東南アジアにおいては、インドネシアの重要性を忘れてはならない。中国のやり過ぎでインドネシアが安全保障上の懸念を深める現在、何らかのネットワークを構想すべきだ。例えば、近年毎年のように海警に守られた中国漁船が来襲するインドネシアのナツナ諸島に対して、日米インドネシアで開発の下支えをすることが考えられる。日本は既に魚市場開発を進めており、米国も空港開発に関心を持っている。
また、中国への懸念を共有し近年接近を強めるインドとインドネシア双方と関与していく枠組みを考えるのも一案だろう。この両国は国際社会で多数派を形成する際のキャスティングボードを握りうる力のある国だ。既に豪州は豪印インドネシアの対話の枠組みを立ち上げている。これに日本が参加する可能性も含め、具体化を進めるべきだと思う。』