サハリン1も新会社移管 権益巡る判断、日本に再び迫る

サハリン1も新会社移管 権益巡る判断、日本に再び迫る
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR0804A0Y2A001C2000000/

『ロシアのプーチン大統領は7日、極東の資源開発プロジェクト「サハリン1」について、新たに設立する会社に事業を移管する大統領令に署名した。撤退方針を表明している米エクソンモービルら既存株主に圧力をかける狙いとみられる。サハリン1事業には日本政府・企業も参画しており、サハリン2に続いて事業継続についての判断を迫られることになる。

大統領令によると、サハリン1事業を担う新会社を立ち上げ、従来の運営主体からすべての権利を引き継ぐ。国営会社ロスネフチが引き続き20%の出資を保ち、残りの80%については新会社が一時的に保有する。ほかの既存株主には、出資を継続するかどうかの判断を1カ月以内に求めるとしている。

サハリン1はサハリン2とともにロシア極東で進めている石油・天然ガス事業で、米エクソンが30%を出資する。日本のサハリン石油ガス開発(東京・港)も30%、ロシアの国営石油ロスネフチとインドの石油天然ガス公社(ONGC)が20%ずつ出資している。サハリン石油ガス開発には経済産業省、伊藤忠商事、石油資源開発、丸紅などが出資している。

日本政府はこれまで、サハリン1事業の権益を引き続き維持する方針を示している。出資会社は今後、新会社に出資するかどうかの判断を迫られる。

サハリン2を巡っても、ロシアは同様のスキームで新会社に運営を移管した。三井物産と三菱商事が新たな運営会社への参画を申請し、ロシア政府が承認した。

エクソンの反発は必至だ。同社はロシアによるウクライナ侵攻を受け、ロシアから撤退する方針を表明していた。同社はサハリン1の操業主体(オペレーター)で、追加投資や開発手法の判断を主導する立場にある。

プーチン氏は8月、ロシアに経済制裁を発動している国の企業にサハリン1の株式などの取引を禁じる大統領令に署名していた。権益を第三者・第三国と売買することを禁止するためとみられる。

ロシアのウクライナ侵攻後、サハリン1の石油生産は減少している。ロシア通信は9月、エクソンが4月以降に減産しているとして、2022年の原油生産量が従来計画の890万トンから420万トンへと大きく減る見通しだと伝えた。サハリン州のリマレンコ知事は天然ガスの生産も9月に停止しており、今後減少するとの見通しを示した。

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赤川省吾
日本経済新聞社 欧州総局長
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ひとこと解説

日本勢は極東の資源開発から手を引くべきだと私は考えます。
理由は3つあります。

①国際法を無視してウクライナ領を併合した独裁国家にカネを払うことになり、倫理的な問題が生じる。

②ロシアは欧州向けエネルギー供給を実質的に停止した。この教訓から日本も学ぶべき。ロシアの意向に振り回される輸入ルートにこだわるべきではない。

③ロシアは核兵器の使用をちらつかせている。仮に核を使った場合でもサハリン事業は続けるのか。そこまで覚悟して出資するのか。

来年は日本がG7議長国。G7で唯一、ロシアからガスと石油を輸入する国になってはならないと思います。
2022年10月8日 7:37 』