国際送電網|よくある質問
(公益財団法人 自然エネルギー財団)
https://www.renewable-ei.org/activities/qa/ASG.php

 ※ 『欧州や北アメリカ大陸などでは、国同士を結ぶ国際送電網が発展しています。この国際送電網を通じた「電力貿易」が常に行われています。』…。

 ※ 欧州には、EUという組織があって、条約で「各国の主権」を自ら「制限」している。さらには、NATOという「安全保障の枠組み」がある。共通通貨「ユーロ」も、導入している…。

 ※ 北米は、アメリカとカナダは、国境に近い都市では、「通勤圏」になっていたりして、「統合」が進んでいる…。

 ※ そういう「基盤」が、存在するからの話しなわけだ…。

 ※ そういう「基盤」の上に、「国際送電網」というものが乗っている…。

 ※ そういう「前提」、「基盤」を一切語らないから、困るよ…。

 ※ だいたい、モンゴルから中国・ロシアの領土を通らないで、送電網が建設できると思っているのか…。

 ※ 地図を見たこと、あるのかな…。

『Q1. 国際送電網とは何か?
「国際送電網」は多国間で電力をやりとりするための送電線のネットワークです。技術的に国内送電網と変わりませんが、国を超えた制度の違いを考慮して運用する必要があります。

国際送電網とは、多国間で電力をやりとりするための送電線からなる送電ネットワークを指します。国家間をつなぐ個別の送電線は「国際連系線」と呼びます。

使う送電線の技術に国際送電網か国内送電網かで違いはありませんが、海を超える連系線では通常、海底ケーブルが使用されることになります。

国内送電網と国際送電網の最大の違いは、国境をまたいで制度が変わることです。送電網の技術規格、事業主体、規制制度、監督官庁はそれぞれの国で違います。国際連系線を建設して運用する際には、これらの違いを考慮して、関係国間で調整や合意をする必要があります。さらに、国を超えた電力の貿易をするには、取引制度はもちろん通貨や関税の違いにも留意が必要です。

欧州や北アメリカ大陸などでは、国同士を結ぶ国際送電網が発展しています。この国際送電網を通じた「電力貿易」が常に行われています。

図: 欧州の送電網(2017 年)
出所 :ENTSO-e, Statistical Factsheet 2017

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Q2:国境や海を越えて電気は輸出入できる?
世界各地で国境を越えた「電気の貿易」が行われています。日本同様に海に囲まれた英国やアイルランドでも、海底送電線を通じて他の国と電力貿易を行っています。

電気は石油やLNGなどと同じく、あたり前に国際取引される品目です。例えば、欧州各国では発電電力量の約1割を輸出入しています。中でもデンマークは、輸出入ともに 30%を越えています。輸入率が高い国(イタリア、ベルギーなど)や輸出率が高い国(ドイツ、スウェーデン、フランス、ノルウェーなど)もあります。

欧州以外の地域では、米国や中国、ロシアにおいても電気の輸出入が行われていますが、その割合は発電電力量の1%前後となっています。

日本と同様に、海に囲まれた島国であるイギリスでは、石炭火力など古い火力発電設備を停止しつつ電力供給力を確保するため、そして国内の電力価格を低減するため、積極的に洋上風力を導入、国際連系線を活用した電力の輸出入を行っています。すでに複数の海底送電線で他国とつながり、複数の新たな国際送電線敷設計画も活発に進行中です。

図:主要国・地域の電力輸出率と輸入率(2014年度)
出所:アジア国際送電網研究会中間報告書 
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Q3:国際送電網をつくるメリットは何か?
国際送電網には、「エネルギー安定供給」「自然エネルギーの導入拡大を促進」「電力価格の競争性を高める」など多くのメリットがあります。

国際送電網には、大きく分けて「災害時などに安定供給が保証できる」「自然エネルギーのさらなる導入・活用に役立つ」「より安い電気が利用できる」といったメリットがあります。

まず、「東日本大震災(2011年3月11日)」や、「平成30年北海道胆振東部地震(2018年9月6日)」など、災害に伴い発生した計画停電や大規模停電(ブラックアウト)を、国際連系線による緊急的電力融通で防止できる可能性もあります。北海道や九州など、国内の他のエリアとの連系線の規模が小さい地域では、特にその効果が大きいと考えられます。

次に、太陽光発電や風力発電などの変動型自然エネルギーの導入拡大を促進できます。国際送電網が整備されている欧州では、国際送電線が「柔軟性」を提供し、変動型自然エネルギー電源による発電量をお互いに融通しあいながら、系統運用が行われています。

そして、日本が国際送電網によって海外とつながることで、発電コストの安い水力や風力・太陽光(例えば中国・モンゴル)の電力を利用できるようになると考えられます。これら電力は日本においても販売され、結果的に私たちの家計における電気代支出削減に寄与します。

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Q4:アジアで国際送電網を作る意味は?
北東アジアでは中国、日本、韓国など市場規模の大きい国が隣接しています。大きな市場をつなぎ、地域の自然エネルギーを共有すれば、経済、環境上のメリットも大きくなります。

国際連系を推進する対象地域として北東アジアを見るとき、最大の特徴は、「大規模需要地(経済活動の中心地)」が隣接していることです。まず経済規模を見ると、中国(2017 年ドル換算名目GDP 世界2 位)、日本(同GDP 世界3 位)、韓国(同GDP 世界11 位)という相対的に大きな国が隣接しています。日中韓モンゴルの四か国で、アジア地域の発電量の76%、電力消費量の77%を占めています。これらの国が送電線でつながれば、巨大な電力市場が成立することになります。

北東アジアは、ロシア極東の水力や風力、モンゴルの太陽光など、自然エネルギー資源の豊富な地域でもあります。モンゴルでは、風力発電・太陽光発電のポテンシャルが高く評価されてきました。例えば2001 年の米国立再生可能エネルギー研究所(NREL)の報告は、モンゴルの風力発電のポテンシャルを年間10,673 TWhと評価しました。2016 年の国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の報告書はモンゴルの太陽光発電のポテンシャルを4,777TWh と評価しています。現在の大型化した風車ではもっと大きな発電量が見込めますが、単純に合計すれば、モンゴルの風力と太陽光で、中国(4876TWh)と日本(949TWh)の総需要(2015年時点-IEA WEO 2017)を大きく上回る電力供給が可能です。北東アジアが送電線でつながれば、大規模な電力市場に安価でクリーンな電気を供給できるようになるのです。

図:モンゴルの風力・太陽光ポテンシャルマップ
参照:アジア国際送電網研究会中間報告書 P.27

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Q5:どのくらいの電気が入ってくるのか?
欧州の一般的な国際連系線の規模は1~1.4GW程度です。まずは第一歩として、日本と隣国の国際連系線については2GWの規模(日本の最大需要の2~3%)を想定しています。

大容量の直流送電線を用いた国際連系線の主な事例を見ると、電気が入ってくる量つまり送電容量は1,000~1,400MW(1~1.4GW)程度です。アジア国際送電網研究会第2次報告書(2018年6月発表)では、日韓、日露の連系線の容量を、第一段階としてそれぞれ2GWで検討しています。

表:世界の既存国際連系線の送電容量など
出所:電力広域的運営推進機関資料

通常の国際連系線の容量は 1GW 程度であり、これを数カ所建設しても、日本の最大需要156GW:電力10社計、2015 年度、電力調査統計)の2、3パーセントにしかなりません。日本の電力需要の何割もを輸入電力に頼るということではありません。

もちろん、日本から電気を輸出することも可能です。今のままでは、日本で電力需要が小さく、自然エネルギーの発電量が余っているときには、出力抑制を余儀なくされます。この国際連系線があれば、最大で2GW分の電力を国外に送電することができます。
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Q6. 日本で作るとしたら、どこの国とつなぐのか?
日本が直接送電線をつなぐ対象国は隣国のロシアと韓国になります。
将来的には韓国を通じて、中国、モンゴルと電気をやり取りすることもできます。

日本が直接送電線をつなぐ対象国としては、比較的距離が近い隣国のロシアと韓国が考えられます。北海道の宗谷岬からロシアのサハリンまでの距離は約43km、福岡市から韓国のプサン市までの距離は約200kmで、欧州にある既存の海底送電線(例えばオランダ―ノルウェイ間の国際連系線「NorNed」は580㎞)に比べても短い距離といえます。

ロシアとつなぐ場合、サハリン島の風力資源やロシア極東アムール河流域の水力発電を活用して安価な自然エネルギー電気を日本に送ることができます。日本の北海道も風力発電の適地なので、北海道の風力による電気をロシアに送ることも可能です。

韓国とつなぐ場合には、西日本から近い韓国の南東部(プサン周辺)が送電線の接続候補地となります。日韓の電力取引では、九州など西日本に豊富な太陽光発電の電気を韓国に送ることが考えられます。もちろん、韓国内の自然エネルギー電源から日本に輸出することもできます。

現在、韓国と中国は二国間の国際連系線プロジェクトを推進しています。日本が韓国と送電線でつながれば、将来的には韓国を通じて中国とも電力取引が可能になります。中国とモンゴルの間にはすでに送電線がつながっているので、日・韓・中・モンゴルの間での多国間電力取引も可能になるでしょう。アジアからの太陽光や風力の電気を日本で買うということもできるようになります。

図:サハリン島、プサンと日本の位置関係
作成:自然エネルギー財団
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Q7. 日本のどこの地域とつなぐのか?
北海道や九州につなげば相手国(ロ・韓)との距離が短い反面、国内の需要地(関東や関西)から遠くなります。距離、国内送電線の空き状況など考慮し、複数の候補地が考えられます。

相手国の接続地点から近い日本国内の地域につなげば、海底送電線の距離を短くすることができます。日露では北海道の宗谷岬からロシアのサハリンまで、日韓では福岡市から韓国のプサン周辺までがおおむね最短ルートとなります。

その一方で、北海道や九州につなぐと、日本国内で電気を多く消費する東京や大阪などのエリアまでは遠くなります。せっかく隣国から電気が入ってきても、北海道や九州では使いきれないということもあります。

その意味では、需要地に近い場所につないだ方が、連系線を有効活用できるとも言えます。

さらに、つないだ地点から需要地まで送電線に空きがなければ、日本国内で電気を送ることができません。新たに国内で送電線を作るコストがかかります。

そのため主に、1) 相手国(ロ・韓)の接続地点との近さ、2) 国内需要地(首都圏・関西)との近さ、3) 国内需要地への送電線の空き状況、という三つの観点から複数の候補地を検討することになります。

2018年6月に発表されたアジア国際送電網研究会第2次報告書では、日露連系については、稚内(北海道)、石狩(北海道)、柏崎(新潟県)、日韓連系については、舞鶴(京都府)、松江(島根県)、伊万里(佐賀県)の各3つを日本側の接続地点候補として検討しています。

図:日露・日韓の連系線ルート図(白色の線及び点線は国内の送電線増強必要区間)
出所:アジア国際送電網研究会第2次報告書 

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Q8. 日本で作るとしたら、建設費はどれくらいかかるのか?
日韓、日露連系の場合、ルートの距離や変換機の数によって2千~6千億円程度と試算できます。海底送電線、変換機、国内での架空線・地中線のコストを考慮しています。

アジア国際送電網研究会第2次報告書(2018年6月発表)では、日韓、日露をつなぐ国際連系線の複数のルートを想定し(Q7参照)、それぞれのルートについて、どのくらいのコストで建設できるか試算しています。

建設コストはルートの距離や、直流で送られる電気を交流に切り替えるために必要な変換機の数によって異なります。

日露連系ではサハリンと本州の柏崎を直接海底送電線(1,255㎞)でつなぐルートで4,305億円、サハリン-稚内-石狩-柏崎という北海道内をトランジットするルートの場合5,730億円と試算できます。

日韓連系ではプサン周辺から関西の舞鶴まで(627㎞)直接海底送電線でつなぐルートでは2,465億円、プサンから九州の伊万里までつなぎ四国・中国エリアを通じて関西に電気を届けるルートでは2,123億円という計算が出ています。

まとめれば、建設コストは日韓連系で2,000~2,500億円、日露連系では4,000~6,000億円程度と計算できます。

海底線の建設費および変換機の単価は欧州の既存事例を参考に設定しました。海底送電線の単価は約3億円/kmで、交直変換機の単価は1台(1GW)あたり157億円となります。

一方、日本国内の陸上ルートで新たに送電線を建設するコストは日本の調査資料を参考に検討しました。架空線で6.64億円/㎞、地中線の場合9.15億円/kmとなり、欧州の海底送電線のコストよりも単価が高くなります。日本国内の架空線や地中線のコストは、欧米の2倍以上になっており、日本特有の要因が影響しているものと考えられます。

この単価をもとに試算したため、上記の計算では国内で新規送電線建設区間が多いルート(日露連系の北海道内トランジットなど)ほど、建設コストが高くなります。

*海底線の仕様を直流、±500kV、送電容量2GW、1ルートあたり海底送電線三条(双極1回線の導体帰路方式)とした場合の計算になります。

表1:日露連系建設費の全体像
出所:アジア国際送電網研究会第2次報告書

表2:日韓連系建設費の全体像
出所:アジア国際送電網研究会第2次報告書

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Q9. 誰が事業を行うのか?
日本では制度やビジネスモデルの作り方によって、さまざまな事業主体が想定されます。連系相手国となりうる中国や韓国、ロシアは、国営の送電会社が事業化を推進しています。

世界でおこなわれている国際連系線を使った事業の例を見ると、つながる国の送電事業者自身が事業を行う場合や、発電所を持つ電力会社や投資会社が新会社を設立して事業を行う場合など、さまざまな形があります。

送電事業は、各国がそれぞれ規制を設けているのが通常であり、事業主体はその法制度によって決まります。日本の場合、一般送配電事業や特定送配電事業も含めて、送電に関連する事業をするにはライセンスが必要です。しかし日本で国際送電事業に特化した事業ライセンスはありません。国際送電事業を行うためにどのようなライセンスが必要になるのか、など今後の制度整備によって事業主体の要件が変わってきます。

なお、1990年代後半に検討された、サハリンと海底送電線をつなぐ「日露パワーブリッジプロジェクト」では、日本の総合商社とロシアの国営電力会社(当時)が調査に参加しました。

日本にとって連系の相手となりうる韓国、ロシア、中国では、国営の送電会社が北東アジアの国際連系を積極的に進めています。2016年3月には、日本を含む4か国の企業が国際送電網推進のための調査・企画に関する覚書を締結しましたが、中国国家電網公司、韓国電力公社、ロスセチ(ロシア国営送電会社)、日本のソフトバンクが当事者です。
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Q10. 外国に電気の供給を頼りすぎると問題ではないか?
外交問題を抱える国の間でも電気のやり取りが行われています。一つの国に依存しすぎないよう連系線の規模を設定し、複数の国とつなぐなど、リスク分散を図ることができます。

エネルギー安全保障の観点からは、一つの国に多量のエネルギーを依存することにはリスクがあります。国際的な電力取引では一国に多くの電気を頼ることのないよう、送電線の規模を設定し、複数の国とつなぐなど、リスク分散が図られています。

日本と隣国をつなぐ連系線に関するこれまでの調査では、主に2GW程度の送電容量を想定しています。2GWは日本全体の需要の数パーセントで、過度な依存には至りません。

よく引き合いに出される例に、ロシアからウクライナへのガス供給危機がありますが、2013年時点でウクライナは年間ガス輸入量の93%をロシアに依存していました。

現状、火力発電用の化石燃料をほぼ輸入に頼っている日本にとって、隣国との国際連系線は、エネルギー供給ルートの多角化につながるものです。

世界を見ると、外交問題を抱える国の間でも、電気のやり取りが支障なく行われてきました。欧州では、2度の大戦の後、電力を含むエネルギーの国際連系が相互依存関係を促進し、平和で安定した関係の基盤となっていると評価されています。

ただし事故や災害などで連系線には不測の停止がありうるため、停止時の技術的対応や発生した損害への対処などに関する、二国間あるいは企業間の協定・契約も必要です。
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